ドアのラッチ機構を電磁式とした場合に,前述した携帯機を利用してラッチ,アンラッチを切換制御することが考えられる。すなわち,電磁ラッチ機構が設けられたドアに設けられたリクエストスイッチを操作することにより,リクエスト信号を携帯機に無線送信して,携帯機から返信されるID信号の照合が一致したときに,ラッチとアンラッチとを切換えることが考えられる。
電磁ラッチ機構が設けられる所定のドアは,前述のように,バックドア(リフトゲート)やトランクリッドとされることが多い。この場合,閉状態にある所定のドアを車外から開くには,乗員が車外からリクエストスイッチを操作することによりアンラッチさせる一方,開いた所定のドアを閉じた後に,車外から乗員が再度リクエストスイッチを操作してラッチさせることになる。
しかしながら,電磁ラッチ機構が設けられる所定のドアは,開状態(特に全開状態)のときに,その開放側端部が車両本体からかなり離間した状態となっていることが多い(特にリフトゲートの場合)。このため,所定のドアを閉じるときは,開いている所定のドアの開放側端部に対して閉方向の操作力を与えるべく,乗員が車両本体から数歩分離間した位置になるという状況が発生しやすくなる。特に,バックドアのように開閉にかなり大きな操作力を要するときは,開閉の操作力を所定のドアの開放側端部に対して与える必要性が高くなる。
このように,開状態にある所定のドアが閉状態とされた直後では,ラッチするために,乗員は車両本体つまり閉状態にある所定のドアに対してわざわざ数歩分近寄る動きが必要となる場合が多くなり,この数歩分の動きを必要とするだけ,所定のドアをラッチするまでの手間が面倒になるという問題を生じることになる。また,上述のようなラッチのための面度な手間を避けるために,所定のドアを閉状態とした直後のラッチのための操作を省略してしまうおそれも考えられ,この場合はセキュリティの面で問題を生じることになる。
そこで,ドアを閉状態とするだけで,ドアをラッチすることが考えられる。ところが,この場合は,リクエストスイッチの操作によってアンラッチするように設定した場合,特にドアハンドルを微少操作することによってリクエスト信号を発生させるように設定した場合に,ハーフラッチであるか否かの確認が行いにくいという問題を新たに生じることになる。すなわち,乗員は,ドアを閉じ操作した後に,ハーフラッチであるか否かを確認するためにドアハンドルを押し引き操作して,がたつきがあるか否かを確認することが行われる(ドアががたつけばハーフラッチであると判断される)。しかしながら,ハーフラッチであるか否かの確認のためにドアハンドルを操作すると,この操作が電磁ラッチ機構をアンラッチさせるリクエスト信号の発生要求となってしまって,ハーフラッチであるか否かの確認のためのドアハンドルの操作がドアを開く操作となってしまって,ハーフラッチであるか否かの確認を行うことが困難になってしまうことになる。
また,ハーフラッチと思った乗員の中には,一旦閉動作された後のドアを再度開いて,その後再び確実な閉じ操作を行うこと多い。この場合、乗員は,ドアの閉動作直後に開動作を行ない,その後再び閉動作を行うまでの一連の操作を短い時間内で行うことになる。しかしながら,再度の閉動作を行う前提として一旦ドアを開くために,ID信号の照合一致を確認してアンラッチするまでにはかなりの時間を要してしまい,このアンラッチされるまでの時間が乗員にとってかなりの待ち時間となって面倒な感じを与えてしまうとことにもなりかねない。
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の目的は、セキュリティの問題を生じさせることなく,携帯機と電磁ラッチ機構とを利用することによる利便性をより十分に発揮できるようにしつつ,ハーフラッチであるか否かの確認も行えるようにした車両用スマートエントリーシステムを提供することにある。
本発明の第2の目的は,セキュリティの問題を生じさせることなく,携帯機と電磁ラッチ機構とを利用することによる利便性をより十分に発揮できるようにしつつ,一旦閉動作された直後においてはすみやかにドアを開くことができるようにした車両用スマートエントリーシステムを提供することにある。
前記第1の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
運転席用ドア以外の所定のドアに設けられた電磁ラッチ機構と,
リクエスト信号を無線送信する車載送信機と,
リクエスト信号を受信したときにID信号を無線送信する携帯機と,
該携帯機からのID信号を受信する車載受信機と,
前記電磁ラッチ機構のラッチとアンラッチとを切換制御する制御手段と,
を備え,
前記携帯機が,前記電磁ラッチ機構がアンラッチになることを要求するアンラッチ要求信号を送信できるように設定され,
前記車載受信機が,前記アンラッチ要求信号を受信するように設定され,
前記制御手段は,
前記所定のドアが閉状態のときであって,該所定のドアのドアハンドルが所定の微少操作されたときにおいて,前記車載送信機からリクエスト信号を送信させて,前記車載受信機が受信する前記ID信号が照合一致したときには前記電磁ラッチ機構をアンラッチし,
該所定のドアが開状態から閉状態へと変化されたときには該電磁ラッチ機構をラッチ状態に向けて変化するように制御し,
しかも該所定のドアが閉状態へと変化されてから所定時間経過するまでは,前記車載受信機が前記アンラッチ要求信号を受信していないと判断していることを条件に,該ドアハンドルを該所定の微少操作とは異なる特定操作を行ったときにのみ,該電磁ラッチ機構をアンラッチするように設定されている,
ようにしてある。
上記解決手法によれば,閉状態にある所定のドアを開くときは,乗員が車外からドアハンドルを微少操作するだけで,つまりアンラッチのための大きな操作量をドアハンドルに与えることなく容易にアンラッチされる。また,開状態にある所定のドアを閉じたときは,自動的にラッチされることになる。このように,所定のドアのラッチ,アンラッチを極めて容易に行うことが可能となって利便性が著しく向上されると共に,自動的なラッチによってセキュリティの点でも問題も生じないものとなる。
以上に加えて,ハーフラッチ確認のために,閉動作された後にドアハンドルを押し引き操作したときに,リクエスト信号発生のための所定の微少操作に対応した操作が含まれることになっても,この所定の微少操作とは異なる特定の操作を行わない限りアンラッチされないので,上記押し引き操作によって所定のドアにがたつきを生じるか否かを確認することによって,ハーフラッチであるか否かを確認することができる。ハーフラッチであることが確認されたときは,上記特定操作を行うことによりアンラッチされるので,このアンラッチ後に所定のドアを一旦開いた後に,所定のドアを確実に閉操作すればよい。勿論,ハーフラッチ状態にあることが確認されたときは,所定のドアを強く押し込むことにより閉状態へと移行させることも可能である。なお,所定のドアがラッチされてから所定時間が経過した後は,セキュリティの面で優れたID信号の照合一致を前提としたアンラッチが行われる状態へと移行されることになる。
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項6に記載のとおりである。すなわち,
前記制御手段は,前記所定のドアが閉状態へと変化してから前記所定時間経過するまでに前記ドアハンドルが前記特定操作されたときは,ID信号の照合を行うことなく前記電磁ラッチ機構をアンラッチするように設定されている,ようにすることができる(請求項2対応)。この場合、再度の閉じ操作を行うためにドアを開くことが可能になるまでの時間を,ID信号の照合に必要な時間分だけ短くすることができる。
前記制御手段は,前記所定のドアが閉状態に変化してから前記所定時間が経過したときに警報を行なうように設定されている,ようにすることができる(請求項3対応)。この場合、ドアハンドルを押し引き操作することによるハーフラッチの確認ができない状態であること,つまり上記特定操作によるアンラッチが不可能になっている状態であって,ドアハンドルを微少操作すればアンラッチされてしまう状態になっていることを乗員に明確に認識させることができる。
前記制御手段は,前記所定のドアが閉状態であってもハーフラッチ状態のときには,前記ドアハンドルが前記所定の微少操作されたときに前記電磁ラッチ機構をアンラッチするように設定されている,ようにすることができる(請求項4対応)。この場合、ハーフラッチであることから,ドアハンドルの所定の微少操作によるアンラッチを許容して,再度の閉じ操作を行わせる上で好ましいものとなる。
前記制御手段は,前記所定のドアが閉状態であってもハーフラッチ状態のときには,前記ドアハンドルが前記所定の微少操作されたときにID信号の照合を行うことなく前記電磁ラッチ機構をアンラッチするように設定されている,ようにすることができる(請求項5対応)。この場合、再度の閉じ操作を行う前提として所定のドアを開くことが可能になるまでの時間を,ID信号の照合に必要な時間分だけ短くすることができる。
前記制御手段は,前記所定のドアが閉状態であってもハーフラッチ状態のときは,前記電磁ラッチ機構をラッチすると共に該ラッチが行われてから所定時間が経過するまでは,前記ドアハンドルが前記所定の微少操作されたときにID信号の照合を行うことなく前記電磁ラッチ機構をアンラッチするように設定されている,ようにすることができる(請求項6対応)。この場合、ハーフラッチのときに,強制的にラッチすることにより閉状態として,ハーフラッチのまま走行してしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
前記第2の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項7に記載のように、
運転席用ドア以外の所定のドアに設けられた電磁ラッチ機構と,
リクエスト信号を無線送信する車載送信機と,
リクエスト信号を受信したときにID信号を無線送信する携帯機と,
該携帯機からのID信号を受信する車載受信機と,
前記電磁ラッチ機構のラッチとアンラッチとを切換制御する制御手段と,
を備え,
前記制御手段は,
前記所定のドアが閉状態のときにおいて,該所定のドアのドアハンドルが所定の微少操作されたときに前記車載送信機からリクエスト信号を送信させて,前記車載受信機が受信する前記ID信号が照合一致したときには前記電磁ラッチ機構をアンラッチし,
該所定のドアが開状態からハーフラッチ状態へと変化されたときには該電磁ラッチ機構をラッチして該所定のドアが閉状態となるように制御し,
しかも該ラッチされてから所定時間経過するまでは,該ドアハンドルが該所定の微少操作されたときにID信号の照合を行うことなく該電磁ラッチ機構をアンラッチするように設定されている,
ようにすることができる。
上記解決手法によれば,閉状態にある所定のドアを開くときは,乗員が車外からドアハンドルを微少操作するだけで,つまりアンラッチのための大きな操作量をドアハンドルに与えることなく容易にアンラッチされる。また,ハーフラッチ状態にあるときは,強制的にラッチすることにより,ハーフラッチのまま走行してしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。このように,所定のドアのラッチ,アンラッチを極めて容易に行うことが可能となって利便性が著しく向上されると共に,自動的なラッチによってセキュリティの点でも問題も生じないものとなる。
以上に加えて,ハーフラッチ防止のために乗員が再度の閉じ操作を行う場合には,ドアハンドルを微少操作することにより,ID信号の照合を行うことなくすみやかにアンラッチされて,所定のドアを開くことが可能な状態へとすみやかに移行させることができる。なお,一旦ラッチされてから所定時間が経過した後は,セキュリティの面で優れたID信号の照合一致を前提としたアンラッチが行われる状態へと移行されることになる。
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項8に記載のとおりである。すなわち,
前記所定のドアがハーフラッチ状態とされたときは,警報を行った後に前記電磁ラッチ機構がラッチされる,ようにすることができる(請求項8対応)。この場合、ハーフラッチ状態であったこと,およびラッチされて閉状態になったことを乗員に明確に認識させることができる。また,今回の閉じ操作がハーフラッチをまねくような操作であったことを乗員に明確に認識させて,今後のハーフラッチ防止の上で好ましいものとなる。
前記各好ましい態様を前提として,さらに次のような好ましい態様を採択することができる。すなわち,
前記所定の微少操作が,前記所定のドアを開く方向となる前記ドアハンドルの引き方向への微少変位として設定されている,ようにすることができる(請求項9対応)。この場合、アンラッチに必要なリクエスト信号発生のためのドアハンドルの微少操作方向を,その後の所定のドアを開くための操作方向と一致させて,所定のドアを開くための操作性向上の上で好ましいものとなる。
前記所定のドアが,車体後面に形成された後面開口部を開閉するためのバックドアとされている,ようにすることができる(請求項10対応)。この場合、本発明を適用して特に好適なドアが特定される。
請求項1に記載された発明によれば,所定のドアのラッチ,アンラッチを極めて容易に行うことが可能となって利便性が著しく向上されると共に,自動的なラッチによってセキュリティの点でも問題も生じないものとなる。また,一般的に行われているドアハンドルの押し引き操作によってハーフラッチであるか否かの確認を行うことができ,しかもハーフラッチであると確認されたときには,ドアハンドルを特定操作することによりアンラッチして再度の閉じ操作を行うこともできる。
請求項7に記載された発明によれば,所定のドアのラッチ,アンラッチを極めて容易に行うことが可能となって利便性が著しく向上される。また,自動的なラッチによって,セキュリティの点で問題を生じないと共に,ハーフラッチのまま走行してしまう事態をも防止できる。さらに,確実な閉状態確保のために行われることの多い再度の閉じ操作を行うために,所定のドアを開くことが可能になるまでの時間を短くすることができる。
図1において,車両Vは,側部ドアとして,運転席ドア1,助手席ドア2,左右一対の後席用ドア3,4を有し,各ドア1〜4はそれぞれ後開きとされている。各ドア1〜4のドアハンドルが符号1a〜4aで示される。ドアハンドル1a,2aには,後述するID信号を利用したロック,アンロックのために,例えば軽く押圧操作することによりオンとされるリクエストスイッチ1bあるいは2b(図6,図7参照)が装備されている。
図2〜図5にも示すように,車両Vは,その後面に後部開口部5が形成されて,この後部開口部5がバックドアとしてのリフトゲート6によって開閉される。リフトゲート6は,実施形態では下開きとされて,その閉状態が図3に示され,その開状態が図4に示され,わずかに開かれた状態が図5に示される。リフトゲート6のドアハンドルが,図2において符号6aで示されるが,リフトゲート6は大きくて重量物とされる一方,上方へ持ち上げるように開くために,その開放側端部にドアハンドル6aが設けられている。ドアハンドル6aは,携帯機KからのID信号を利用したアンラッチのために,リクエスト信号の送信を要求するリクエストスイッチとしても機能するようになっており,ドアハンドル6aはリフトゲート6が開く方向に微少変位可能となっていて,このドアハンドル6aの微少変位が,リクエスト信号要求の操作となる。図3〜図5において,Jは乗員であり,乗員Jに保持された(携帯された)後述する携帯機が符号Kで示される。
ここで,ハーフラッチ状態は,いわゆる半ドアといわれるように,ラッチがかかっているも,完全にはかかっておらず,ドアががたつく状態である。リフトゲート6が,ハーフラッチであるか否かは,例えば,閉状態(全閉状態)のときにのみオンされる閉検出スイッチと,リフトゲート6が若干開かれた状態から全開状態までの間の状態でオンされる開検出スイッチとを設けて,閉検出スイッチと開検出スイッチとが共にオンでないときにハーフラッチ状態であると判断することができる。この他,ラッチあるいはこれに連動して機械的に変位される特定部材の変位位置を連続可変的あるいは段階的に検出するセンサ等によって,ハーフラッチ状態であるか否かを判断する等,適宜の手法によってハーフラッチ状態であるか否かを判断することができる。
側部用の各ドア1〜4は,それぞれドアハンドルによって手動操作されるラッチ機構と,ラッチ機構をロック,アンロックするためのロック機構とを有する。すなわち,閉状態にあるドア1〜4を開くには,まずアンロックとした後,ドアハンドル1a〜4aを乗員が操作してアンラッチすることになる。また,開状態にあるドア1〜4を閉状態とすると機械式にラッチが行われる。各ドア1〜4のロック,アンロックは,携帯機Kに装備されたメカニカルキー28(図6参照)を利用したマニュアル操作によって行わなわれる他,携帯機Kから無線送信されるID信号を利用して行われる。携帯機KからのID信号の送信要求のために,前席用のドアハンドル1a,2aに設けたリクエストスイッチ1b,2bが操作されると,リクエスト信号が無線送信されることになる。なお,後席用ドア3,4については,直接にロック,アンロックする操作は行われずに,例えば運転席用ドア1のロック,アンロックに連動したものとされるが,各ドア1〜4にリクエストスイッチを設けることもできる。また,各ドア1〜4は,車内に設けた集中ロック制御スイッチ37(図6参照)を操作することにより,同時にロック,アンロックすることが可能となっている。
一方,リフトゲート6は,電磁ラッチ機構10のみを有して(図2参照),そのロック機構は別途有しないものとなっている。この電磁ラッチ機構10は,後述する携帯機Kから無線送信されるID信号を利用したアンラッチと,リフトゲート6を閉じることによる自動ラッチとが行われる他,車内からの操作スイッチの操作によってアンラッチ可能とされ,さらに携帯機Kに装備したメカニカルキー28(図6参照)を利用したマニュアル操作によってもラッチ,アンラッチが可能となっている。携帯機KからのID信号の送信要求のために,ドアハンドル6aを開方向へ軽く引き操作して微少変位させると,これがリフトゲート6用のリクエスト信号発生のための要求操作となって,リクエスト信号が無線送信されることになる。なお,ドアハンドル6aは,もっぱらリクエスト信号発生のためとされて,強く引き操作してもアンラッチされないものとなっている(アンラッチさせるために必要な大きな機械的変位が行われないように設定されている)。リフトゲート6のラッチ,アンラッチのための制御については後に詳述する。
車両Vには,携帯機Kに関連させて,合計5個の車載送信機(送信アンテナ)7a〜7eと,1つの車載受信機(受信アンテナ)8が搭載されている。各車載送信機7a〜7eはそれぞれ後述するリクエスト信号を所定範囲でもって無線送信するものである。車載送信機7aの送信エリアが,その送信モード切換によって選択的にA1あるいはA2とされる。送信エリアA1は運転席付近の室内への送信エリアであり,送信エリアA2は運転席ドア1の車外側方の送信エリアとなる。車載送信機7bの送信エリアが,その送信モード切換によって選択的にB1あるいはB2とされる。送信エリアB1は助手席付近の室内への送信エリアであり,送信エリアB2は助手席ドア2の車外側方の送信エリアとなる。
車載送信機7cの送信エリアCは,車体後方への送信エリア,つまり閉状態にあるバックドア6の後方部位のエリアとなるもので,車載送信機7cはリアバンパ9の車幅方向略中間部に設けられている。車載送信機7dの送信エリアDは,車内のうち,運転席および助手席よりも後方部分への送信エリアとなる。車載送信機7eの送信エリアEは,車内のうち運転席および助手席の前方部分への送信エリアとなる。
車内用となる各送信エリアA1,B1,DおよびEを重ねた送信エリアは,車内の全エリアがカバーされるようになっている。また,車載受信機8は,全送信エリアA〜Eに対応した範囲にある携帯機Kから無線送信されるID信号を受信可能とされている。
送信エリアを利用して,携帯機Kの存在位置を検出可能である。例えば,車内の4つの送信エリアA1,B1,D,Eのうち,例えばA1,B1,D,Eの順にわずかに時間をずらして1つの送信エリア毎にリクエスト信号の送信を行なう。この1つの送信エリアについてのリクエスト信号送信から次の1つの(別の)送信エリアについてのリクエスト信号送信が行われるまでの間の所定時間内に,携帯機Kから返信されるID信号が存在するか否かを検出すればよい。次の送信エリアに対するリクエスト信号送信までの間に,携帯機KからのID信号を受信したときは,直前にリクエスト信号が送信された送信エリア内に携帯機Kが存在することになる。このことは,車外の送信エリアについても同じであり,全ての送信エリアのうちどのエリアに携帯機Kが存在するかを知ることができる。
ドアが開いているとき,例えばリフトゲート6が開いているときは,車内用の送信エリアと車外用の送信エリアとの間で干渉を生じる可能性がある。すなわち,例えばリフトゲート6が開いているときに,送信エリアDが車体後方にまで拡大される可能性が考えられ,逆に,車体後方の送信エリアCが車内にまで拡大される可能性が考えられる。このような送信エリア間での干渉は,リフトゲート6がハーフラッチ状態のときでもわずかではあるが生じる可能性がある。後述する携帯機Kの存在位置の検出に際しては,特に車体後方位置と車内との間での送信エリアの干渉を考慮したものとしてある。
車両Vには,図6に示すように,制御手段としてのCPU等を有するマイクロコンピュータを利用して構成された制御ユニットUVが搭載されている。この制御ユニットUVと無線通信される携帯機Kは,既知のように,CPU等を有してマイクロコンピュータを利用して構成された制御ユニットUKを有して,全体として胸ポケットに収納できる程度の大きされたカード状に形成されている。携帯機Kは,電源としての電池21,警報器としてのブザー22,リクエスト信号を受信するための受信アンテナ23,ID信号を無線送信するための送信アンテナ24,それぞれ乗員によりマニュアル操作されるドア1〜4用のロックスイッチ25およびアンロックスイッチ26,リフトゲート6のアンラッチ要求となるリフトゲートスイッチ27,およびメカニカルキー28を有する。メカニカルキー28は,その操作部にトランスポンダが内蔵されて,メカニカルキー28を利用したロック(ラッチ),アンロック(アンラッチ)やエンジン始動等のときに,車両側でもって照合(認証)が行われるようになっている(ID信号は照合用の暗号(パスワード)を含む)。
車両Vに搭載された制御ユニットUVには,次のような各種機器類が接続されている。すなわち,31は側部ドア1,2に設けられたドアキーシリンダ(メカニカルキー28を利用するときのため),32は各側部ドア1〜4に設けられて電磁式にドアをロック,アンロックするためのアクチュエータである。33は,リフトゲート6のキーシリンダである(メカニカルキー28を利用するときのため)。34,35は後述するイグニッションスイッチIGS用であって,34はマニュアル操作されるイグニッションノブであり,35はメカニカルキー28のトランスポンダの照合を行うために必要なリーダ(読み取り機)である。36は,エンジンの燃料噴射量や点火時期等を制御する制御ユニットである。37は,側部ドア1〜4の全てについて同時にロックあるいはアンロックするためのマニュアル操作される集中ロックスイッチである。38はエンジン回転数センサ,39は車速センサ,40は側部ドア1〜4について個々に設けられた開状態検出用のスイッチ,41はリフトゲート6が開状態にあることを検出するスイッチ,42はリフトゲート6が閉状態にあることを検出するスイッチである。43は,側部ドア1〜4について個々に設けられたロック検出用のスイッチである。44は,インストルメントパネルに設けられたメータ(ランプによる警報用),ブザー(音による単純な警報),音声ガイド(警報内容を含む音声警報),車体外部のランプ(例えば方向指示ランプを点滅させる等による視覚的な警報)等のいずれか1つあるいこれらの任意の組み合わせによって構成される警報器である。
図8は,イグニッションスイッチ部分をステアリングロック部分と共に示すものである。この図8において,ロック位置にあるイグニッションノブ34を押圧しつつ時計方向に回動させることによって,順次,ACC位置(アクセサリ位置で,オーディオ等の作動を可能とする位置),IG位置(エンジンの運転継続可能位置),IGスタータ位置(スタータモータを作動させてエンジン始動を行う位置)となる。イグニッションノブ34を手前に引き操作して外すことにより,メカニカルキー28の使用が可能とされる(キーシリンダのキー差し込み孔が露出される)。上記ロック位置では,電磁式のステアリングロック機構STRが作動されて,ステアリングハンドル11(図1をも参照)がロックされるようになっている。
次に,図9以下のフローチャートを参照しつつ,携帯機Kを利用した各種制御の詳細について説明する。なお,以下の説明でPおよびQはそれぞれステップを示すが,Pが車載側の制御ユニットUVの制御内容を示し,Qは携帯機K側の制御ユニットUKの制御内容を示す。
まず,図9は車載側の制御ユニットUVのメインルーチンであり,図10は,図9に対応した携帯機K側の制御ユニットUKのメインルーチンである。すなわち,P1がQ1に対応し,P2がQ2に対応し,P3がQ3に対応し,P4がQ4に対応している。
図9のP1(図10のQ1)の詳細について,図11,図12を参照しつつ説明する。まず,図11のP11において,エンジン回転数があるか否かが判別される。このP11の判別でYESのときは,P12において,集中ロックスイッチ37が操作されたか否かが判別される。このP12の判別でYESのときは,P13において,現在のドア1〜4の状態がロック状態のときは各ドア1〜4についてアンロックされ,現在のドア1〜4の状態がアンロック状態のときは各ドア1〜4についてロックされる。このP13の後あるいはP12の判別でNOのときは,それぞれP14において,メカニカルキー28によるロックあるいはアンロック操作が行われたか否かが判別される。このP14の判別でYESのときは,P15において,メカニカルキー28の操作に応じて,ドア1〜4のロックあるいはアンロックが行われる。P15の後,あるいはP14の判別でNOのときは,そのまま終了される。
前記P11の判別でNOのときは,P16において,前席用のドア1,2のドアハンドル1aあるいは2aに設けられたリクエストスイッチ1bあるいは2bが操作されたか否かが判別される。このP16の判別でYESのときは,P17において,車内および車外に対してリクエスト信号が送信される(送信エリアはA1,A2,B1,B2,D,E)。この後,P18において,リクエスト信号送信から所定時間内にID信号を受信したか否かが判別される。すなわち,P17の処理によって,携帯機Kが上記送信エリアA1,A2,B1,B2,D,Eのいずれかに存在するときは,携帯機Kがリクエスト信号を受けて,その返信としてID信号を出力することになる(図12のQ11,Q12の処理)。
上記P18の判別でYESのときは,P19において,受信したID信号があらかじめ記憶されているその車両特有の暗号(パスワード)と照合される。P19の後,P20において,照合一致するか否かが判別される。P20の判別でYESのときは,携帯機Kが車外に存在するか否かが判別される。このP21での判定は,例えば,前記P17での処理において,車外エリアA2,B2と車内エリアA1,B1とを短時間の間に切換えて,車外エリアA2,B2を送信エリアとしているときにID信号を受信したときは携帯機Kが車外に存在し,車内エリアA1,B1を送信エリアとしているときにID信号を受信したときは携帯機Kが車内に存在すると判定することができる。P21の判別でYESのとき,つまり携帯機Kが車外に存在していると判断されたときは,P22において,ドア1,2の現在のロック状況に応じて,ロックあるいはアンロックされる。すなわち,現在ロック状態であればアンロックに切換えられ,現在アンロック状態であればロック状態に切換えられる。
前記P22の後,P16の判別でNOのとき,P18の判別でNOのとき,P20の判別でNOのとき,あるいはP21の判別でNOのときは,それぞれP23において,携帯機Kからのロック信号あるいはアンロック信号を受信したか否かが判別される。すなわち,携帯機Kのアンロックスイッチ26が操作されたときあるいはロックスイッチ25が操作されたときは,この操作に対応した信号が携帯機Kから無線送信されるので(図10のQ13,Q14の処理),この無線信号を受信したか否かが判別される。このP23の判別でYESのときは,P24,P25の処理が行われる(P19,P20の処理に対応)。そして,P25において照合一致したと判定されたときに,P26において,携帯機Kからの無線信号の内容に応じて,ドア1,2のロックあるいはアンロックが行われることになる。P26の後,P23の判別でNOのとき,あるいはP25の判別でNOのときは,それぞれ前述したP12に移行される。
次に,図9のP2(図10のQ2)の詳細について,図13,図14を参照しつつ説明する。まず,車載側での制御内容を示す図13のP31において,リフトゲートハンドル6aが微少変位されたか否か,つまりリフトゲート6についてのリクエスト信号発生の要求があるか否かが判別される。このP31の判別でNOのときは,P32において,携帯機Kからのリフトゲート6をアンラッチ要求する無線信号があるか否かが判別される。すなわち,携帯機Kのリフトゲートスイッチ27がオン操作されると,携帯機Kからは,ID信号とリフトゲート信号とが無線送信されるので(図14のQ33,Q34の処理),この無線信号を受信したか否かが判別されることになる。このP32の判別でNOのときは,P33において,室内に設けられたリフトゲート6のアンラッチを要求するためのスイッチ41(図6)がオン操作されたか否かが判別される。このP33の判別でNOのときは,P34において,携帯機Kに設けられているメカニカルキー28によるリフトゲート6のアンラッチ操作が行われたか否かが判別される。このP34の判別でNOのときは,P35において,現在リフトゲート6が開状態であるか否かが判別される。このP35の判別でNOのときは,そのまま終了される。
前記P31の判別でYESのとき,つまりリフトゲートハンドル6aが微少変位されたときは,P37において,車内および車外後方にリクエスト信号が無線送信される(送信エリアはA1,B1,C,D,E)。この後P38において,リクエスト信号送信から所定時間内にID信号を受信したか否かが判別される。すなわち,上記送信エリアに携帯機Kが存在するときは,携帯機KがID信号を返信することになる(図14のQ31,Q31の処理)。また,P38においては,携帯機Kが,車体後方の送信エリアCに存在する携帯機Kからのものであるか否かも含めて判断されることになる。このP38の判別でYESのとき,つまり,ID信号を受信し,かつ携帯機Kが送信エリアCに存在する場合は,P39,P40の処理が行われる。そして,P40の判別でYESのとき,つまり受信したID信号が照合一致されたときは,P41において,リフトゲート6(の電磁ラッチ機構10)がアンラッチされる。上記P41でのアンラッチによって,乗員は,例えばリフトゲートハンドル6aを把持して上方へ持ち上げるだけで,リフトゲート6を上方へと開くことが可能になる。上記P38の判別でNOのとき,あるいはP40の判別でNOのときは,アンラッチが行われることなく,P32へ移行される。
前記P32の判別でYESのとき,つまり携帯機Kのリフトゲートスイッチ27をオン操作したことに伴って,ID信号とアンラッチ要求信号とを受信したときは(図14のQ33,Q34の処理に対応),P42〜P44の処理が行われる。すなわち,P42でID信号の照合が行われ,P43で照合一致が確認されると,P44においてリフトゲート6がアンラッチされることになる。なお,P43の判別でNOのとき,つまり照合一致しなかったときは,アンラッチすることなくP33に移行する。
前記P33の判別でYESのとき,つまり車内に設けられたリフトゲート6をアンラッチするためのスイッチがオン操作されたときは,P45において,リフトゲート6がアンラッチされた後,P34に移行する。このP34の判別でYESのとき,つまりメカニカルキー28によるアンラッチ操作があったときは,P46において,リフトゲート6をアンラッチした後,P35へ移行する。なお,メカニカルキー28を利用したアンラッチの場合は,メカニカルキー28の機械的操作(変位)によって直接アンラッチを行うようにしてもよい。
前記P35の判別でYESのとき,つまり現在リフトゲート6が開状態のときは,次にリフトゲート6を閉状態とするための制御となる後述するP47の処理が行われた後(携帯機K側での対応処理は図14のQ35),終了される。
前述した図13におけるP47(図14のQ35)の詳細について,図15,図16(携帯機K側の対応処理は図17)を参照しつつ説明する。まず,図15のP51〜P60の処理によって,フラグを0または1にセットする処理が行われる。フラグは,リフトゲート6が閉状態から開状態へと変化したときに0にリセットされるもので,携帯機Kが車外のみに存在することが検出されたとき,あるいは車外および車内に存在することが検出されたときに0とされ,携帯機Kが車内のみに存在することが検出されたときに1にセットされるものである。
以上のことを前提として,まずP51において,リフトゲート6が開状態とされたことに伴ってフラグが0にリセットされる。この後,P52において,車内への送信エリアA1,B1,D,Eと,車外後方への送信エリアCとに対する送信強度がそれぞれ基準値よりも弱くなるように調整される。これは,リフトゲート6を開いたときに,車内用送信エリア(特に送信エリアD)が車外後方へと大きく広がってしまう事態を防止し,逆に車外後方への送信エリアCが車内にまで大きく広がってしまう事態を防止するための処理となる。この後,P53において,上記各送信エリアに対してリクエスト信号が送信される(単発的なリクエスト信号の送信でもよいが,車内および車外共に周期的にリクエスト信号を送信するのが好ましい)。
上記P53の後,P54において,所定時間内に車内に存在する携帯機KからのID信号が受信されたか否かが判別される。このP54の判別でYESのときは,P55において,照合一致するか否かが判別される。このP55の判別でYESのときは,P56において,携帯機Kが車内に存在するということで,フラグがとりあえず1にセットされる。なお,上記P53,P54に対応する携帯機K側の処理が,図15のQ51,Q52である。
上記P56の後,前記P54の判別でNOのとき(車内に携帯機Kが検出されないとき),あるいはP55の判別でNOのときは,それぞれP57に移行する。P57では,フラグが0であるか否かが判別される。このP57の判別でNOのとき,つまり携帯機Kが車内で検出されたときは,P58において,所定時間内に車外に存在する携帯機KからのID信号が受信されたか否かが判別される。このP58の判別でYESのときは,P59において照合一致するか否かが判別されて,P59の判別でYESのときにP60においてフラグが0にリセットされる。なお,P60を経るときは,携帯機Kが車内および車外にそれぞれ存在することが検出されたときとなる。
前記P60の後,P57の判別でYESのとき,P58の判別でNOのとき,P59の判別でNOのときは,それぞれ図16のP61に移行する。このP61では,リフトゲート6が閉状態に変化したか否かが判別される。このP61の判別でNOのときは,P62において,リフトゲート6がハーフラッチ状態であるか否かが判別される。P62の判別でNOのとき(このときはリフトゲート6が閉状態のときとなる)は,そのまま終了される。
前記P61の判別でYESのときは,P63において,フラグが0であるか否かが判別される。このP63の判別でYESのとき,つまり携帯機Kが少なくとも車外に存在するときは,P64において,リフトゲート6がラッチされた後,P67において,ラッチが行われたことの報知(例えばブザーの作動や,リアの方向指示器等のランプ点滅)が行われる。
上記P63の判別でNOのとき,つまり携帯機Kが車外に存在しないで車内のみに存在するときは,このままリフトゲート6をラッチすると,携帯機Kを車内に閉じこめてしまう可能性が考えられるときである。このときは,P66において警報を行った後,P67において警報実行から所定時間だけ経過したことを確認した後,P64に移行してラッチが行われる。上記P66での所定時間は,リフトゲート6が閉状態となってからの時間であり,車内にある携帯機Kを取り出すのに必要な時間(例えば10秒〜15秒程度)に設定される。
前記P67の後は,P68〜P75の処理が行われるが,これらの処理は,一旦閉状態とされたリフトゲート6を短時間の間に再び開く必要性を考慮してアンラッチを行うための処理となる。すなわち,まずP68において,リフトゲートハンドル6aが微少変位された否かが判別される。このP68の判別でYESのときは,一旦閉状態とされたリフトゲート6を再び開くことの要求であることを確認するために,リフトゲートハンドル6aが特定の微操作が行われたか否かが判別される。この特定の微操作は,長時間閉状態にあったリフトゲート6を開くときの微少変位の操作とは区別するためのもので,例えば,所定時間(例えば3秒)に所定の複数回(例えば3回)だけ微少変位操作が行われたとき,あるいは微少変位されている時間が所定時間(例えば3秒)継続して行われたときとして設定することができる。このP69の判別でYESのときは,P70において,リフトゲート6がアンラッチされる。
上記P68の判別でNOのとき,あるいはP69の判別でNOのときは,それぞれP71において,携帯機Kからリフトゲート信号を受信したか否か(携帯機Kのリフトゲートスイッチ27がオン操作されたか否か)が判別される。このPの71の判別でYESのときは,P72においてID信号が照合された後,P73において照合一致しているか否かが判別される。このP73の判別でYESのときはP70に移行してアンラッチが行われる。なお,上記P71に対応した携帯機K側の処理が,図17のQ53,Q54である。
上記P73の判別でNOのとき,あるいはP71の判別でNOのときは,それぞれP74において,リフトゲート6をラッチしてから所定時間経過したか否かが判別される。このP74の判別でNOのときは,P68に戻る。また,P74の判別でYESのときは,P75において,ラッチから所定時間(例えば10秒)が経過していて,P70でのアンラッチはもはや行われないときであることが乗員に報知される(例えばブザーの作動や,車外ランプや室内ランプの点滅,さらには音声案内)。P70の後あるいはP75の後は,それぞれP62に移行される。
前記P62の判別でYESのとき,つまりリフトゲート6がハーフラッチ状態のときは,P76においてブザーによる警報が行われた後,P77において,リフトゲート6の閉状態を確実に確保すべく,ラッチが行われる。P77の後,P78において,リフトゲートハンドル6aが微少変位されたか否かが判別される。このP78の判別でYESのときは,P79において,リフトゲート6がアンラッチされる。また,P78の判別でNOのときは,P80においてラッチ後所定時間(例えば5秒)経過したか否かが判別され,このP80の判別でNOのときはP78に戻る。なお,携帯機Kが車内および車外に共に検出されないときは,警報を行ってから所定時間経過後に,ラッチさせるようにしてもよい(P65,P66を経てP64へ移行する処理と同じ処理を実行)。
図18は,図9のP4におけるエンジン始動制御の詳細を示すものであり,これに対応した図10のQ4の制御内容は,リクエスト信号を受けたときにID信号を送信するものである。まず,図18のP121において,エンジン始動を要求するIGスタータ操作が行われた否かが判別される。このP121の判別でYESのときは,P122において,メカニカルキー28によるIGスタータ操作された場合に対応すべくそのトランスポンダが照合された後,P123において,照合一致したか否かが判別される。このP123の判別でYESのときは,P124において,IGスタータの制御が行われ,これによりエンジンが始動されることになる。
前記P123の判別でNOのときは,P125において,リフトゲート6が開状態であるかハーフラッチ状態であるかが判別される。このP125の判別でNOのとき,つまりリフトゲート6が閉状態(完全に閉)のときは,P127において,室内の送信エリアA1,B1,D,Eと,車体後方の送信エリアCに対してそれぞれリクエスト信号が送信される。上記P125の判別でYESのときは,P126において,室内の送信エリアを前方部分のみの送信エリアA1,B1,Eに限定した後,P127に移行される。このP126の処理は,後面開口部5を通して車内用の送信エリアが車体後方(車外)に拡大してしまう事態を防止するためである。
P127の後は,P128において,リクエスト信号送信から所定時間以内に,車内にある携帯機KからID信号が受信されたか否かが判別される。このP128の判別でYESのときは,P129において,リフトゲート6が開状態であるかハーフラッチ状態であるかが判別される(P125の判別と同じ)。このP129の判別でNOのとき,つまりリフトゲート6が閉状態であることが確認されたときは,P130において,車内にある携帯機KからのID信号の照合が行われた後,P131において照合一致しているか否かが判別される。このP131の判別でYESのときは,P132において,IGスタータ制御が実行されて,エンジンが始動されることになる。
前記P129の判別でYESのときは,リフトゲート6が閉状態でないときである。このときは,P133において,リクエスト信号の送信から所定時間内に車体後方にある携帯機KからのID信号を受信したか否かが判別される。このP133の判別でYESのときは,車体後方にある携帯機Kを車内にある携帯機Kと誤認している可能性が高いということで,エンジン始動の制御が実行されることなくそのまま終了される。
上記P133の判別でNOのときは,P134において,前回(例えば3秒前以内)に車内で受信されたID信号情報が,リフトゲート6を閉状態にしたときから所定時間以内(例えば10秒以内)に車体後方で検出された携帯機KからのID信号情報と同じであるか否かが判別される。このP134の判別でYESのときは,車体後方にある携帯機Kを車内にある携帯機Kと誤認している可能性が高いときであるとして,エンジン始動を行うことなくそのまま終了される。このP134の判別でNOのときは,リフトゲート6が閉状態ではないが,IGスタータ操作を優先させるべく,P130以降の処理が行われる(照合一致すればエンジン始動を行う)。前記P128の判別でNOのとき,あるいはP133の判別でYESのときは,それぞれ,エンジン始動を行うことなくそのまま終了される。上述したエンジン始動の制御では,P124,P132においてエンジンを始動させる制御を行う以外は,エンジン始動のための制御は行われないものとなる。なお,エンジン停止状態からエンジン始動を行った後は,車内の送信エリアは前方位置に限定されることなく,車内全送信エリアA1,B1,D,Eに拡大した状態に復帰させるようにすることができる。
図18の変形として,次のようにすることもできる。まず,P126の処理を次のように変更してもよい。すなわち,車体後方の送信エリアCへの送信強度を弱くおよび/または送信方向を上方に変更し(車体後方の送信エリアCが車内側に拡大されることの防止),また車内の送信エリアA1,B1,D,Eへの送信強度を弱くおよび/または送信方向を前方へ変更する(車内の送信エリアが車体後方へ拡大するのを防止)。
以下の条件のいずれかを満足したときにリクエスト信号を送信して,図18におけるP130の照合を他のステップに先取って行うようにしてもよい(その次のP130で照合一致されたときにエンジンを始動させる制御の実行)。すなわち,第1に,IGオフの状態からACCがオンに操作されたとき(IGACCのオンによって作動許可される機器類がオン操作されたとき)である。第2に,IGACCがオン操作されたときである。第3に,ACCオンの状態で,3秒経過する毎である。第4に,IGオンの状態で,60秒経過する毎である。第5に,全てのドア1〜4,6が閉じている状態から,いずれかのドアが開かれたときである。第6に,いずれかのドアが開いている状態から,全てのドアが閉じられたときである。
図19は,図9のP3におけるステアリングロック制御の詳細を示すものであり,これに対応した図10のQ3の制御内容は,リクエスト信号を受けたときにID信号を送信するものである。図19に示すステアリングロック制御は,実質的に図18のエンジン始動制御の場合にほぼ対応しているので,エンジン始動と相違する場合のみ説明する。まず,図18のP121に対応するP141では,IGスタータ操作の有無判別に代えて,イグニッションノブが操作されたか否かが判別される。また,図18のP124およびP132に対応するP144,P152では,IGスタータ制御に代えてステアリングをアンロックする制御とされる。
なお,図19のステアリングロック制御では,図18のP129,P133,P134は有しないものとなっており,また,P144あるいはP152においてステアリングアンロックの制御を実行しない限り,ステアリングはロック状態とされる。また,図19において,P145,P146のステップが存在しないようにしてもよく,この場合、P147でのリクエスト信号は車内のみに送信するものとし,したがってP148でのID信号も車内にある携帯機Kからのものとなる。ステアリングをアンロックすることは,エンジン始動を許容する場合よりも車両盗難の可能性が低いので,ステアリングアンロックの条件をエンジン始動許可の条件よりも緩く設定することが可能であるが,ステアリングアンロックを行う条件をエンジン始動許可の条件と全く同じように厳しく設定することもできる。
以下の条件のいずれかを満足したときにリクエスト信号を送信して,図19におけるP150の照合を他のステップに先取って行うようにしてもよい(その次のP1151で照合一致されたときにステアリングアンロックさせる制御の実行であり,)。すなわち,第1に,エンジン停止時で,かついずれかのドアが開作動されたときである。第2に,エンジン停止時で,かつ全てのドアが閉じられたときである。第3に,ACCオフでかつIGオフへ動作されたときである。
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。リフトゲート6のアンラッチを要求するドアハンドル6aの所定の微少操作としては,リフトゲートハンドル6aの引き方向の微少変位のみならず,押し方向の微少変位等,適宜のものが採択し得る。
リフトゲート6は横開きであってもよく,また本発明の適用対象となる所定のドアとしては,後面開口部5を開閉するリフトゲート(バックドア)以外に,例えば横開きあるいは下開きされる後部側部ドア(特に車内後部が荷室とされた車両においてもっぱら荷室用ドアとして機能される側部ドア)であってもよく,さらには運転席以外の前部側部ドアであってもよい(例えば宅配便専用車両のように,助手席用ドアの位置にもっぱら荷室への出入り用とされる特定のドアを設定したものにあっては,この特定のドアを所定のドアとしてもよい)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。