JP4568571B2 - 熱安定性又は熱活性dnaポリメラーゼ及びそれをコードするdna - Google Patents
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Description
例えば、PCRには、熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼの利用が必要不可欠である。熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼは二本鎖DNAの変性の際に失活することがないので、酵素の追加等の手間を省くことができる。また、熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼを利用して高温でDNA鎖の伸長反応を行うことにより、プライマーの非特異的なアニーリング、一本鎖DNAの分子内高次構造(例えばヘアピンループ等)の形成等を防止することができ、目的の伸長反応を効率よく進行させることができる。
また、本発明は、新規な熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼを含むPCR用キットを提供することを目的とする。
(1)以下の(a)又は(b)に示すアミノ酸配列からなる熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼ。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列のうち、1〜572番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列及び/又は789〜832番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
(2)前記(1)記載の熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼをコードするDNA。
(3)以下の(c)又は(d)に示すDNAを含む前記(2)記載のDNA。
(c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA
(d)前記(c)に示すDNAと相補的なDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼをコードするDNA
(4)前記(2)又は(3)記載のDNAを含む組換えベクター。
(5)前記(4)記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(6)前記(1)記載の熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼを含むPCR用キット。
本発明の熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼと比較して優れたDNAポリメラーゼ活性(プライマー伸長活性)を有しているので、PCRを行う際に有用である。
本発明の熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼは、以下の(a)又は(b)に示すアミノ酸配列からなる。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列のうち、1〜572番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列及び/又は789〜832番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列
〔組換えベクター及び形質転換体の作製〕
組換えベクターを作製する際には、まず、目的とするタンパク質のコード領域を含む適当な長さのDNA断片を調製する。目的とするタンパク質のコード領域の塩基配列において、宿主細胞における発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換してもよい。
発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター等を使用することができる。プラスミドベクターとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pRSET、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13、YEp24、YCp50)を使用することができ、ファージベクターとしては、例えば、λファージ(例えば、Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP)等を使用することができ、ウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス等の動物ウイルス、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスを使用することができる。
昆虫細胞への組換えベクターの導入方法は、昆虫細胞にDNAを導入し得る限り特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等を使用することができる。
目的とするタンパク質をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを導入した形質転換体を培養する。形質転換体の培養は、宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
形質転換体の培養物より目的とするタンパク質を採取することにより、目的とするタンパク質が得られる。ここで、「培養物」には、培養上清、培養細胞、培養菌体、細胞又は菌体の破砕物のいずれもが含まれる。
(1)高温環境土壌の採取
DNAポリメラーゼを有効に利用するためには、PCR等に使用できるような耐熱性を有することが重要であると考えられる。そして、耐熱性酵素を得るためには、高温環境から試料を取得することが最も効率的である。そこで、高温環境として性質(pH)の異なる温泉地帯を選択した。一つは強酸性を示す九州鹿児島霧島温泉地域で、もう一つは中性に近いpHを示す宮城県鬼首温泉地域及び秋田県大噴湯温泉地域である。
採取された土壌1gを滅菌したエッペンドルフチューブに分取した後、土壌に含まれる微生物に由来するゲノムDNAを抽出した。土壌からのゲノムDNAの抽出は、土壌からのDNA抽出キットであるUltra CleanTM Soil DNA Purification kit(MO Bio社製,カタログNo.12800-50,フナコシカタログNo.LM128000)を用いて行った。操作は本キットに添付されている操作手順書に従った。
実際に抽出したDNA溶液の1/50量である2μLを分取し、18μLのTAE緩衝液(0.04M Tris,0.02M 酢酸,0.001M EDTA(pH8.0))及び2μLの電気泳動用濃縮染色液(0.25%ブロモフェノールブルー,0.25%キシレンシアノール,30%グリセロール)を加え、0.8%アガロースゲル電気泳動で確認した。
(1)ファミリーA型DNAポリメラーゼ特異的プライマーの設計
複数の微生物(Bacillus subtilis、Bacillus caldotenax、Thermus aquaticus、Themus thermophilus、Escherichia coli)に由来するファミリーA型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のアライメントに従い、結果を図2及び図3に示す。なお、図3は図2の続きである。
10種類の微生物(Bacillus caldotenax,Bacillus caldolyticus,Escherichia coli,Bacillus subtilis,Lactobacillus bulgaricus,Lactobacillus homohiochii,Lactobacillus heterohiochii,Thermus aquaticus,Themus thermophilus,Sulfolobus solfataricus)から抽出したゲノムDNA 0.5ngの存在下、上記縮重プライマー100pmolを用いて、50μLの10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、15mM MgCl2、200μM dNTP及び5ユニット TAKARA Ex Taqポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を含む溶液中でPCRを行った。PCRは、94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で2分間からなる温度サイクルを30サイクル行った。
PCR終了後の反応液に等量の10mM Tris−HCl(pH7.5)及び1mM EDTA溶液を加えた後、水溶液と等量の水飽和フェノール/クロロフォルム液を加えてよく攪拌し、70℃で10分間加温した後、10,000rpmで5分間遠心し、上層水溶液画分を注意して分取した。分取した水溶液画分を、Microcon100(ミリポア社製)に加え、2500rpmで15分間遠心した。再度、10mM Tris−HCl(pH7.5)及び1mM EDTA溶液を200μL加え、2,500rpmで15分間遠心した。以上の操作により、未反応プライマー、ヌクレオチド、塩等を除去した。
寒天培地上に増幅した大腸菌のコロニーを100μg/mL アンピシリン約2mLを含むLB培地に植菌し、一晩37℃で震盪培養した。増殖した菌体を10,000rpmで10分間の遠心で集菌し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製,カタログNo.27104)を用いてプラスミドDNAを回収した。回収されたプラスミドDNAを鋳型とし、塩基配列解読用プライマー(M13プライマー M4及びTプロモータープライマー)を用いてPCRを行った。PCRには、ダイターミネーターサイクルシーケンシングキット(ABI社製)を使用し、塩基配列の解読には、ABI社製3700自動塩基配列検出装置を使用した。
決定されたPCR増幅断片の塩基配列は機械的な誤差を含む場合があるので、塩基配列を人手によって修正して機械的な誤差を除いた後、塩基配列にコードされるアミノ酸配列を決定した。公共のタンパク質データベースを使用して相同性検索を行い、PCR増幅断片にコードされるアミノ酸配列と、既知のファミリーA型DNAポリメラーゼ(Thermus aquaticus由来のDNAポリメラーゼ(Taq DNAポリメラーゼ))のアミノ酸配列と比較を行った。
(1)制限酵素部位を導入するためのプライマーの設計
実施例2で得られたPCR増幅断片は、DNAポリメラーゼ活性の中心を担う領域をカバーするものであるから、Taq DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のうち、PCR増幅断片にコードされるアミノ酸配列と相同性を示す領域が、PCR増幅断片にコードされるアミノ酸配列で置換された改変DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼとは異なるDNAポリメラーゼ活性を示すと考えられ、向上したDNAポリメラーゼ活性を示す可能性がある。また、改変DNAポリメラーゼの機能は、高温土壌中に存在する未知ファミリーA型DNAポリメラーゼの機能を反映していると考えられる。
Taq DNAポリメラーゼをコードするDNAをプラスミドベクターpTV1N(タカラバイオ社)にクローニングした。(Ishino Y, Ueno T, Miyagi M, Uemori T, Imamura M, Tsunasawa S, Kato I.“Overproduction of Thermus aquaticus DNA polymerase and its structural analysis by ion-spray mass spectrometry” (1994) J Biochem (Tokyo), 116(5), 1019-24に掲載の文献を参照した)。10ngの存在下、プライマーA及びB 2pmolを用いて、50μLの10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、15mM MgCl2、200μM dNTP及び2.5ユニット PfuUltra DNAポリメラーゼ(Stratagene社製)を含む溶液中でPCRを行った。PCRは、95℃で1分間、55℃で1分間、72℃で15分間の温度サイクルを20サイクル行った。
PCR増幅断片を制限酵素BlpI及びBglIIで切断した。すなわち、各PCR増幅反応液50μLに10倍濃縮制限酵素用緩衝液(200mM Tris−HCl (pH8.2)、100mM MgCl2、600mM NaCl、10mM DTT)5μL、滅菌蒸留水42μL及び制限酵素BlpI 3μLを加えて、十分に混合した後、37℃で3時間保温した。次に、5M NaCl溶液を4μL及び制限酵素BglII 3μLを加えて、十分に混合した後、60℃で3時間保温した。保温終了後、10μLの10mM EDTA及び2%SDS液を加えて、反応を止めた。
(4)制限酵素処理されたDNA断片のライゲーション
回収・精製された各DNA断片0.5μg(1μL)を氷上で混合し、10mM Tris−HCl(pH7.5)及び1mM EDTA溶液3μL加え、さらにタカラバイオ社製 Takara Ligation Kit version2を5μL加えて、よく混合した後、16℃で1時間保温した。
ライゲーション反応液のうち1μLをカルシウム処理済大腸菌JM109菌体液20μLと氷上で混合し、30分間静置し、42℃で30秒間の熱処理後、LB液体培地980μLを加え、37℃で60分間震盪培養を行った。次いで、100μLを分取し、100μg/mLアンピシリンを含む寒天LB培地上に均一に植菌した後、一晩37℃で保温した。
寒天培地上に植菌された大腸菌のうち、プラスミドDNAを有するもののみが寒天培地上で増殖しコロニーを形成した。形成されたコロニーのうち、無作為に10個を選択し、2mLのLB液体培地に植菌し、37℃で一晩震盪培養した後、QIAGEN社製 QIAprep Spin Miniprep Kit(カタログNo.27104)を用いてプラスミドDNAを回収した。回収したプラスミドDNAをBlpI及びBglIIで処理し、BlpI/BglII断片を切り出した。その結果、図7に示すように、Taq DNAポリメラーゼをコードするDNAを含むプラスミドにPCR増幅断片が組み込まれていること、すなわち、改変DNAポリメラーゼをコードするDNAを有すると予想される発現用プラスミドを構築できたことが確認された。なお、図7中、「M」はマーカーを表し、レーン1〜3は、それぞれ異なる地点から回収されたゲノムDNAを鋳型として得られたPCR増幅断片が組み込まれた組み換えプラスミドに関する結果を示す。
図7のレーン2に示した改変DNAポリメラーゼをコードするDNAのうち、PCR増幅断片部分の塩基配列を以下のように決定した。
組み換えプラスミドを鋳型として用い、Beckman Coulter社のCQE Dye terminator cycle sequencing with quick start kitを用いてサイクルジデオキシ反応を行った。この際、5’側のプライマーとして、5'-tccaccccaggacgggccgcctccac-3'を用い、3’側のプライマーとして、5'-cccctccatgacctccttggccagcc-3'を用いた。300ngの鋳型DNA及び5pmolのプライマーを用いて、96℃で20秒、50℃で20秒、60℃で4分を1サイクルとして30サイクルの反応を行った。反応溶液をSephadex G-50カラムに通すことによって未反応基質を除いた。反応溶液を乾固させた後、40μLの電気泳動用溶液に溶解した後、Beckman Coulter 社のCEQ 2000XL DNA Analysis Systemで塩基配列を決定した。
(1)組み換えプラスミドの発現用大腸菌への導入
図7のレーン2に示した改変DNAポリメラーゼをコードするDNAを有する発現用プラスミドを、大腸菌JM109株に形質転換した。
大腸菌BL21-CodonPlus(DE3)-RILのコンピテント細胞を融解して、ファルコンチューブに0.1mLずつ移した。その中に、発現用プラスミド10ngに相当する溶液を加え、氷中に30分間放置した後、42℃のヒートショックを30秒間行い、そこにSOC培地0.9mLを加え、37℃で1時間振とう培養した。その後、アンピシリンを含むLB寒天プレート上に適量まき、37℃で一晩培養し、形質転換体大腸菌BL21-CodonPlus(DE3)-RIL/ST0452-1を得た。
寒天培地上に現れた形質転換体を、アンピシリンを含むLB培地5mL中、37℃で、600nmにおける吸光度(A600)が0.4〜0.6に達するまで培養した後、IPTG(Isopropyl-b-D-thiogalactopyranoside)を1mMになるように加え、さらに30℃で10時間培養した。培養後、遠心分離(6,000rpmで20分間)により集菌を行った。
(2)で精製されたDNAポリメラーゼを用いて、デオキシヌクレオチドの取り込み活性を測定し、図8のレーン2に示した改変DNAポリメラーゼの比活性を求めた。反応溶液として、20mM Tris−HCl(pH8.0)、2mM MgCl2、2mM 2−メルカプトエタノール、0.2mg/mL 仔牛胸腺DNA(DNAaseにより活性化したもの)、各40μM dATP、dGTP、dCTP、60nM [メチル3H] dTTPを含む溶液を用意し、反応溶液45mLに対して、フラクション溶液5mLを加え、70℃で反応させた後、その一部をDE81ペーパーにスポットし、次いで、これを5%Na2HPO4溶液で5回洗浄した。そして、DE81ペーパーフィルター上に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。これにより、各酵素標品の活性濃度をユニットで表示したところ、Taq DNAポリメラーゼの比活性は3.9×105ユニット/mg、改変DNAポリメラーゼの比活性は2.8×105ユニット/mgであった。
プライマー伸長活性測定は、以下のように行った。まず、0.1pmolの32P標識プライマーを20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.8)、5mM塩化マグネシウム、14mM 2−メルカプトエタノールに溶解した0.2μgのM13mp18一本鎖DNAに加えた。100℃で5分間熱処理を行った後、ゆっくり冷ますことによってアニーリングさせた。このDNA溶液に0.2mMになるようにdNTP溶液を加えた。改変DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼをそれぞれ0.25ユニット加え、74℃で反応を行った(反応系30μL)。反応開始後2.5、5、10分にそれぞれ8μLを取り、2μLの反応停止液(98%脱イオン化ホルムアミド、1mM EDTA、0.1% キシレンシアノール、0.1% ブロモフェノールブルー)を加え、電気泳動に供した。電気泳動には、50mM NaOH、1mM EDTAを含む1%アガロースゲルを用い、30mAで16時間泳動を行った。
Claims (6)
- 配列番号2記載のアミノ酸配列からなる熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼ。
- 請求項1記載の熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼをコードするDNA。
- 以下の(c)又は(d)に示すDNAを含む請求項2記載のDNA。
(c)配列番号1記載の塩基配列からなるDNA
(d)前記(c)に示すDNAと相補的なDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼをコードするDNA - 請求項2又は3記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項4記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項1記載の熱安定性又は熱活性DNAポリメラーゼを含むPCR用キット。
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