JP4567154B2 - 芯体付き袋体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟弱地盤を改良するための工法に用いられる地盤改良の杭体として用いられる筒状袋体及び芯体付き袋体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、軟弱地盤を改良する方法としては、地盤に孔を削孔し、その孔に両端部が閉鎖された筒状袋体を挿入した後、筒状袋体の内部にセメント、モルタル等の硬化材を圧入し、袋体を膨張させることにより袋体を拡幅させ地盤を圧密することが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の地盤改良に用いられる筒状袋体は、一般に縦糸と横糸とで織製され、樹脂等によって形成されている芯体にその両端を固定された芯体付き袋体となっている。この芯体付き筒状袋体内へ硬化材の注入を開始すると、筒長方向及び筒径方向に膨張を始め、削孔された孔壁に筒状袋体が密着した後、地盤からの規制の少ない筒長方向、即ち、孔の上方向に主に膨張していくようになる。このように、孔壁に密着した後、膨張していくので、地盤に軟らかい部分があると、筒状袋体に均等に応力が作用せず、その軟らかい部分が先行して膨張し、筒状袋体が均一に膨張せずに、図7に示すように捩れて膨張し、地盤を締め固める効果が十分に発揮されないでいた。
【0004】
また、図7に示すように、筒状袋体72は、芯体70にその両端で固定されているため孔の上下方向への膨張は、この芯体70によって拘束される。そのため、筒状袋体72に膨張途中で孔の上下方向へ膨張する余裕があれば、例えば、捩れて膨張した場合、両端部71に近い部分、特に上端部に近い部分では、孔壁による規制が弱いため、図に示すように隆起73が形成されることが多い。この場合、この隆起73によって、地面も隆起してしまうおそれがある。
【0005】
また、筒状袋体72を芯体70に取り付ける時は、筒長方向にたるみが生じやすく、このように、たるみが生じたまま硬化材が注入されると、前述のように捩れが発生しやすく、均一に膨張しにくくなる。
【0006】
そこで、本発明は、筒状袋体の膨張が、筒状袋体を芯体へ取り付ける時のたるみ、筒状袋体の構造による糸の伸び、また、筒状袋体を構成する糸自身の伸びによって影響を受けることから、筒長方向に引張力を作用させて、主に筒径方向へ膨張するような芯体付き袋体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1は、縦糸と横糸とで織製された筒状袋体を、芯体の外周面に被せ、前記縦糸を筒長方向に引っ張って緊張状態にして、前記筒状袋体の両端部を、前記芯体に固定具によって固定してなる芯体付き袋体である。
筒長方向に引っ張って縦糸を緊張状態にして筒状袋体を芯体に固定しているため、縦糸によって横糸が拘束された状態となり、縦糸の筒径方向へのずれが生じにくい。また、筒長方向に引っ張ることで、異径の筒状袋体の場合は、筒状部に規則正しいひだが形成される。
【0012】
また、請求項2の発明は、削孔された孔に埋設され、軟弱地盤等の地盤改良の杭体として使用される芯体付き袋体であって、前記芯体付き袋体は、縦糸と横糸とで織製された筒状袋体を、芯体の外周面に被せ、前記縦糸を前記孔の上下方向に引っ張って緊張状態にして、前記筒状袋体の両端部を、前記芯体に固定具によって固定してなり、前記孔内に設置され、前記袋体内に硬化材が注入されて、前記孔内で前記孔の径方向に膨張して地盤改良の杭体となる芯体付き袋体である。
前述したように、筒状袋体の縦糸が引っ張られた状態で、芯体に固定されているため、縦糸によって横糸が拘束された状態になっており、この袋体内に硬化材が注入された場合であっても、縦糸の筒径方向への膨張が拘束され、削孔された孔内で均一に膨張し、地盤改良の杭体となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態例を説明する。図1は、本発明に係る異径の筒状袋体を芯体の外周に固定具によって固定した状態を示す全体概略図である。図において、1は筒状袋体、2は芯体、5は固定具である。
【0014】
筒状袋体1は、縦糸及び横糸にポリエステル繊維、ナイロン繊維等の一般的に使用される繊維を用いて織製される。この時、中央部の径が両端の径に比べて大きくなるような異径織物となるように織製され、例えば、後述する芯体2の取付部8の外径と同じか少し大きく織製されたものであることが好ましい。これによって、後述するように、芯体2へ取り付ける時に取り付けやすくなり、取り付けた時に袋体の両端部には、ひだ等が形成されず、この取付部からの硬化材の漏れを防止できる。
【0015】
ここで、織製に際し、縦糸と横糸が図3に示すような織物構造となるように織製する。即ち、縦糸の張力を強くし、横糸の張力を弱くすることで、縦糸6は直線状に延びた状態とし、横糸を屈曲した状態とする。このような織物構造で織製されることによって、筒状袋体1は、横糸7の織製方向(筒径方向)には、伸縮可能となるが、縦糸6の織製方向(筒長方向)は、糸自身の伸縮による伸縮だけとすることができる。
【0016】
このような織物構造の筒状袋体1が固定される芯体2は、図2に示すように、筒状袋体1が取り付けられて、固定される取付部8と、取付部8よりも小径な円筒部3とで構成されている。円筒部3には、外部より注入されるセメントやモルタル等の硬化材を筒状袋体1に充填する開口4が形成されている。
【0017】
これら筒状袋体1は、芯体2へ次のようにして取り付けられる。先ず、筒状袋体1の一方の端部を芯体2の一方の取付部8に取り付けて、金属や樹脂等からなる締付バンド等の固定具5で固定する。この時、筒状袋体1の端部は、取付部8の径よりも少し大きい程度の径となるように織製されているため、取り付けた時に袋体の両端部には、ひだ等が形成されず、隙間なく芯体2の取付部8に固定することができる。次に、筒状袋体1の他方の端部を引っ張りながら芯体2の他方の取付部8に、金属や樹脂等からなる締付バンド等の固定具5で固定する。この時の引張荷重は、筒状袋体1の筒長方向の引張破断強度の1.0%〜3.0%が好ましく、特に2.0%前後が好ましい。この程度の引張荷重で引っ張ることによって、筒状袋体1をたるみなく芯体2に取り付けることができ、硬化材が注入されたときに、図5に示すように、織物構造による筒長方向への膨張が抑制されて、筒長方向は縦糸の糸自身の伸びによる膨張に止めることができ、筒径方向に略同心状に膨張させることができ、筒状袋体1の変形(隆起)を抑制できる。
【0018】
このように、引っ張りながら筒状袋体1を芯体2に固定すると、筒状袋体1はその中央部が、図4に示すように、その断面が規則正しくひだ状に折り畳まれた状態となる。このため、削孔した孔内に挿入するときにも作業を行いやすくなる。
【0019】
また、このように筒状袋体1に引張荷重をかけて引っ張りながら芯体2に取り付けて、固定することで、例えば、本実施形態例のように縦糸6が直線状に延びた状態でなく、一般的な織物のように本実施形態例に係る筒状袋体1の横糸7のように屈曲した状態で織製された筒状袋体であっても、縦糸が引っ張られて、直線上に延びた状態となり、前述した本実施形態例と同様の効果を得ることができる。
【0020】
また、筒状袋体1の縦糸に、例えば、ケブラーやテクノーラ等の高強度、低伸度糸を用い、横糸には、前述のポリエステル繊維、ナイロン繊維等の一般的に使用される繊維を使用して織製すると、本実施形態例に示したように、縦糸を直線状に伸ばさなくても、硬化材が注入されたときに筒長方向への膨張が抑制される。このため、筒状袋体1に硬化材が注入された時に地盤の上方向への変形(隆起)を防止することが可能となる。
【0021】
次に、以上のようにして構成された芯体付き袋体を用いた軟弱地盤の地盤改良法を図6を参照しながら説明する。
【0022】
先ず、図6(a)に示すように、所定の大きさ、深さの孔10を削孔する。そして、この孔10の孔壁が崩れないようにするために、図6(b)に示すように、この孔10に筒体11を挿入する。この筒体11内に筒状袋体1の外周をビニールテープ等の仮止め材12で仮止めされた芯体付き袋体20を挿入する。この芯体付き袋体20を挿入後、先に孔10に挿入していた筒体11を抜き出し、図6(c)に示す状態とする。ついで、この袋体内部に、セメントやモルタル等の硬化材を注入する(図6(d))。この時、筒状袋体1は、縦糸が引っ張られた状態であるため、孔10の上下方向(筒長方向)への膨張は抑止されるため、図に示すように孔10の径方向(筒径方向)に略同心状に膨張し、捩れの発生もなく、また、孔10周囲の地面の隆起も見られなかった。
【0023】
本実施形態によると、以上のように、筒状袋体1の筒長方向の膨張を抑止することで、硬化材を注入したときの捩れの発生を防止するとともに、筒状袋体の変形による地盤の隆起も防止することができ、削孔した孔に圧接させることができるため、軟弱地盤の地盤改良を効果的に行うことができる杭体とできる。
【0024】
なお、本実施形態例では、地盤改良用袋体として説明したが、本発明に係る芯体付き袋体は、本実施形態例に限定されるものではなく、例えば、土木・建築分野で用いられる芯体付き杭や、袋体付きアンカー体としても使用することができる。
【0025】
また、本実施形態例では、芯体に袋体のみを取り付けた例を説明したが、例えば、袋体内にチューブを挿入することにより、このチューブに空気や水などの気体や液体を注入して用いることも可能である。この場合、チューブをこれら気体や液体で膨張させた後に、これら気体や液体を抜きこのチューブを取り出して、この袋体に硬化材を注入する。また、袋体の外表面を樹脂やゴム等で被覆して、袋体内部に注入された硬化材を袋体の外部に流出させないようにすることもできる。なお、チューブとしては、ゴムチューブや、筒状にしたポリエチレン樹脂等のフィルムが使用できる。フィルムの場合には、袋体よりも大きなものを使用すればよい。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0027】
(実施例1)
縦糸及び横糸にポリエステル繊維を用いて長さ3m、両端の小径部の直径がφ100mm、中央部の大径部の直径がφ600mm、この大径部の長さが2mの異径の筒状袋体を織製した。織製時には、縦糸の張力を通常よりも強くし、横糸の張力は、通常よりも弱くし、縦糸が直線状に延びるようにした。そして、硬化材を注入したときに、袋体の捩じれが確認できるように縦糸の一部に色糸を用いた。この筒状袋体の一端をφ50mmの円筒部とその両端にφ100mmの取付部を有する芯体の取付部に金属製の締付バンドを用いて、固定した後、他方側を手で引っ張りながら芯体の他方側の取付部に金属製の締付バンドを用いて固定した。次に、その外周面にビニールテープをらせん状に巻き回し、棒状にした。次に地面にφ130mm、深さ3.5mの孔を削孔し、棒状になった芯体付き袋体を挿入した。そして、芯体に設けた取付部から突出した硬化材の注入口がかろうじて見えるまで盛り土を施し、この注入口より、W/C=60%のセメントミルクを所定の注入量、圧力になるまで注入し、24時間放置して、杭体とした。
【0028】
(実施例2)
縦糸及び横糸にポリエステル繊維を用いて長さ3m、両端の小径部の直径がφ100mm、中央部の大径部の直径がφ600mm、この大径部の長さが2mの異径の筒状袋体を織製した。織製時の縦糸の張力及び横糸の張力は、通常のままであり、縦糸と横糸が共に屈曲していた。そして、硬化材を注入したときに、袋体の捩じれが確認できるように縦糸の一部に色糸を用いた。この筒状袋体の一端をφ50mmの円筒部とその両端にφ100mmの取付部を有する芯体の取付部に金属製の締付バンドを用いて、固定した後、他方側を、4.9kN(筒状袋体の筒長方向の引張破断強度の2.0%)の引張荷重で引っ張りながら芯体の他方側の取付部に金属製の締付バンドを用いて固定した。2.0%の引張荷重で引っ張ることにより筒状袋体の筒長方向に17cm伸びた。そして、筒状袋体の縦糸は直線状に伸び、織物の構造による伸びが取り除かれた。次に、その外周面にビニールテープをらせん状に巻き回し、棒状にした。次に地面にφ130mm、深さ3.5mの孔を削孔し、棒状になった芯体付き袋体を挿入した。次に、芯体に設けた取付部から突出した硬化材の注入口がかろうじて見えるまで盛り土を施し、この注入口より、W/C=60%のセメントミルクを所定の注入量、圧力になるまで注入し、24時間放置して、杭体とした。
【0029】
(比較例1)
筒状袋体を芯体に取り付ける時に引張荷重をかけないで取り付けた以外、実施例1と同様にして芯体付き袋体を作製し、実施例2と同様にして孔内に設置して硬化材を注入して杭体とした。
【0030】
硬化材を注入したところ、実施例1及び2の芯体付き袋体を埋設した側の地面には隆起は確認できなかったが、比較例1のの芯体付き袋体を埋設した側の地面には隆起が確認された。そして、24時間後、それぞれの芯体付き袋体を地中から掘り起こし、筒状袋体の膨張率及び色糸を確認し、各筒状袋体の膨張状況を確認した。
【0031】
実施例1の芯体付き袋体の筒状袋体は、芯体を中心に略同心状に膨張していた。また、膨張時における織り目の目ずれ等は確認されず、袋体の筒長方向に設けた色糸も図5に示すように殆ど蛇行していなかった。また、袋体を芯体に固定した後の袋体の筒長方向の伸びは5.0%であり、織物構造による若干の伸びはあるが、略縦糸の糸自身の伸びに抑えられていることがわかった。
【0032】
実施例2の芯体付き袋体の筒状袋体は、芯体を中心に略同心状に膨張していた。また、膨張時における織り目の目ずれ等は確認されず、袋体の筒長方向に設けた色糸も図5に示すように殆ど蛇行していなかった。また、袋体を芯体に固定した後の袋体の筒長方向の伸びは4.4%であり、略縦糸の糸自身の伸びに抑えられていることがわかった。
【0033】
一方、比較例1の芯体付き袋体の筒状袋体は、偏平状に膨張しており、袋体の大径部が小径部にかけて盛り上がっていた。また、膨張時における織り目の目ずれが確認された。また、袋体の筒長方向に設けた色糸も図7に示すようにかなり蛇行していた。また、袋体を芯体に固定した後の袋体の筒長方向の伸びは7.4%であり、縦糸の糸自身の伸び及び織物構造による伸びがあったものと推測される。
【0037】
【発明の効果】
請求項1の発明によると、筒長方向に引っ張って縦糸を緊張状態にして筒状袋体を芯体に固定しているため、縦糸によって横糸が拘束された状態となり、縦糸の筒径方向へのずれが生じにくい。また、筒長方向に引っ張ることで、異径の筒状袋体の場合は、筒状部に規則正しいひだが形成される。このため、袋体が棒状となり、孔内に挿入しやすくなる。また、ひだが均一に規則正しく形成されているため、硬化材が注入されて膨張するとき、均等に膨張し、同心状に膨張しやすくなる。また、筒長方向に引っ張られて固定されているため、縦糸の周方向の目ずれが少なくなり、硬化材を注入しても縦糸同士が均一な幅の状態で膨張し、耐圧性に優れたものとなる。
【0039】
また、請求項2の発明によると、筒状袋体の縦糸が引っ張られた状態で、芯体に固定されているため、縦糸によって横糸が拘束された状態になっており、この袋体内に硬化材が注入された場合であっても、縦糸の筒径方向への膨張が拘束され、削孔された孔内で均一に膨張する。また、孔壁との摩擦や突起物などにより織り目がずれることが少なくなり、耐圧性に優れた地盤改良の杭体となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る芯体付き袋体の全体概略図を示す。
【図2】本発明に係る芯体の全体概略図を示す。
【図3】本発明の第1の実施形態に用いられる筒状袋体の織物構造を示す図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】本発明に係る芯体付き袋体が硬化材の注入により膨張した状態を示す全体概略図を示す。
【図6】本発明に係る芯体付き袋体を用いた地盤改良工法を説明するための図である。
(a)は削孔した孔を示し、(b)は削孔した孔に本発明に係る芯体付き袋体を挿入する状態を示し、(c)は芯体付き袋体を孔に挿入した状態を示し、(d)は芯体付き袋体が孔内で膨張した状態を示す図である。
【図7】従来の芯体付き袋体が膨張した状態を示す全体概略図である。
【符号の説明】
1 筒状袋体
2 芯体
3 芯体円筒部
4 開口
5 固定具
6 縦糸
7 横糸
8 取付部
10 孔
11 筒体
12 仮止め材
20 芯体付き袋体
Claims (2)
- 縦糸と横糸とで織製された筒状袋体を、芯体の外周面に被せ、前記縦糸を筒長方向に引っ張って緊張状態にして、前記筒状袋体の両端部を、前記芯体に固定具によって固定してなる芯体付き袋体。
- 削孔された孔に埋設され、軟弱地盤等の地盤改良の杭体として使用される芯体付き袋体であって、
前記芯体付き袋体は、縦糸と横糸とで織製された筒状袋体を、芯体の外周面に被せ、前記縦糸を前記孔の上下方向に引っ張って緊張状態にして、前記筒状袋体の両端部を、前記芯体に固定具によって固定してなり、前記孔内に設置され、前記袋体内に硬化材が注入されて、前記孔内で前記孔の径方向に膨張して地盤改良の杭体となる芯体付き袋体。
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