JP4566583B2 - 発電機一体形水車 - Google Patents

Description

本発明は、身近な生活環境に存在する流量と落差の割合が多様な未利用水力資源に適用できる発電機と水車が一体となった小形水力発電装置の回転振動を低減するとともに、水流に含まれるスラッジに対する軸受の耐久性を強化し、装置の信頼性を向上することに関する。

従来発電機と水車が一体になっている発電機一体形水車というものがある。これは、小型化を図れること、水漏れが生じ難い等の特徴を有するものである。
近年、環境問題がクローズアップされ環境負荷の小さい水力発電が注目されている一方、山間部でない身近な生活環境においても未利用の水力エネルギの有効活用が望まれている。例えば、工場やビル等における水を扱う設備の水流の持つ水力エネルギーから電力を発電することなどが例示出来る。

しかしながら、これら水力資源は、容量が小さいこと、又は設置スペースも小さいことが多いので、設置上の配慮等が必要となる。したがって、上述の発電機一体型の水車発電機を用いることは、省スペース化に都合の良いものである。この発電機一体型水車の例として、特許文献１がある。
特開平５−１１１２１６号公報

ところで、上述の工場やビル等における水を扱う設備では、配管の曲り、分岐、合流の形態が多くなり、その中を流れる水の偏流によって、水車で振動が発生することがある。振動が発生すると、周辺への騒音の問題、設備の故障の原因となる可能性もあり、対処の必要がある。また、配管内の水流には錆びなどによるスラッジが含まれている場合があることから、これらに対しても長期間故障無く使用できるように機器の信頼性を高める必要がある。
従って、本発明は、このような従来の発電機一体型水車における、振動を低減する技術、信頼性を高める技術、又は、小型化を図る技術について、提供するものである。

上記目的を達成するために、本発明に係る小形発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプは、円筒状ケーシングの内側にステータコイルとステータコアを有するステータを備え、該ステータは該ケーシングを流れる流体が直接該ステータに接触しないように保護部材により保護されているとともに、該ケーシングの軸心部にその軸線方向に沿わせて配置した主軸を、該主軸の両端部で該ケーシングに支持部材により固定し、該主軸にラジアル軸受を備え、該ラジアル軸受に勘合する羽根車ボスと該羽根車ボスに複数枚設けた羽根と該羽根の外周端部に円筒状ロータヨークが固着された羽根車一体形ロータヨークを備え、該羽根が受ける流体力により該固定主軸を軸心として該羽根車一体形ロータヨークが回転する構造の発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプにおいて、該羽根車一体形ロータヨークを該主軸に沿って多段に設け、最上流側と最下流側の該羽根車一体形ロータヨークに該ラジアル軸受を設け、中間段の該羽根車一体形ロータヨークには該ラジアル軸受を設けない構造とし、該多段の羽根車一体形ロータヨークの該ロータヨーク部分を互いに勘合し、全体で円筒形の回転軸を形成したものである。

また、本発明に係る小形発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプは、最下流側の該羽根車一体形ロータヨークの端部を半径方向外側に部材を延長し、該延長部分に該羽根車一体形ロータヨークが流体力として受ける軸方向の圧力荷重、即ち軸方向スラスト荷重を支えるスラスト軸受を設けたものである。

また、本発明に係る小形発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプは、スラスト軸受を該羽根車一体形ロータヨークとともに回転する円板リング形状のスラストメタルと、該スラストメタルを支える複数のスラストパッドによる滑り軸受で構成し、かつ、スラスト軸受を該羽根車一体形ロータヨーク外側の半径位置の大きいところに配置したものである。さらに、該スラストパッドを周方向に複数等間隔で配置し、各々が離れているように構成したものである。

また、本発明に係る小形発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプは、スラストパッドをリング状支持部材に固定し、該リング状支持部材は弾性体を介してケーシングに固定したものである。

また、本発明に係る小形発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプは、スラスト軸受の該スラストメタルの摺動面に超硬合金を溶射し、該スラストパッドの摺動面にシリカを主成分とする複合セラミックス皮膜をコーティングしたものである。

また、本発明に係る小形発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプは、スラストパッドを複数個一列若しくは２列に並べた形態で一体形として形状を成形した後、各々を切断して製作するものである。

以上のように本発明によれば、多段に配置された羽根車一体形ロータヨーク各々がインロー部で勘合し全体が円筒形の一つの大直径回転軸を構成する。したがって、羽根車の中心に回転軸を持つ一般的な流体機械に比べ、回転軸の断面２次モーメントが大きくなり剛性が増すので、回転振動を低減する効果がある。

また、最下流側の該羽根車一体形ロータヨークの端部を半径方向外側に部材を延長し、該延長部分にスラスト軸受を設けたので、水流の偏流により回転軸に対して該羽根車一体形ロータヨークを傾斜させようとする流体力が作用した場合でも、半径位置の大きいところで支えることができるので、回転振動を低減できる。

また、スラスト軸受が該羽根車一体形ロータヨーク外側の半径位置の大きいところに配置されているので、該スラスト軸受摺動面の周速度が大きくなり、摺動面を潤滑する水膜が形成されやすくなるので、軸受の信頼性が高くなる。さらに、該スラストパッドは複数で構成され、各々が離れているので配管錆びなどのスラッジが摺動面に入り込んだ場合でも、スラッジが摺動面に堆積することなく通過離散するので軸受の信頼性が高くなる。

また、スラストパッドをリング状支持部材に固定し、該支持部材が弾性体を介してケーシングに固定されているので、該羽根車一体形ロータヨークが回転振動で軸心に対し傾斜した場合でも、該リング状支持部材が弾性体により傾斜を吸収するので、該スラストメタルと該スラストパッドの摺動面が常に正対し、部分接触をしないので軸受の信頼性が高くなる。

また、該スラストメタルの摺動面に超硬合金を溶射し、該スラストパッドの摺動面にシリカを主成分とする複合セラミックス皮膜をコーティングしたので、配管錆びなどのスラッジが該スラスト軸受摺動面に入り込んだ場合でも、該摺動面の硬度が該スラッジより大きいので該摺動面がキズになることが無く軸受の信頼性が高くなる。さらに、該スラストメタルの摺動面と該スラストパッドの摺動面の硬度が異なるので、摺動面を潤滑する水膜がなくなった場合でも摺動面が焼付くことが少なくなるので軸受の信頼性が高くなる。

また、スラストパッドは複数個を一列若しくは２列に並べた形態で一体形として形状を成形した後、各々を切断して製作するので、該スラストパッドを複数個用いる場合でも製作費用を安価にすることができる。

以下、本発明の実施例を説明する。

以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。図１は本発明に係る発電機一体形水車及び電動機一体形ポンプの構造を示す縦断面図である。円筒状のケーシング８の内側にステータ７が配置されている。ステータにはコイルが巻かれており、ロータヨーク６に取り付けられている永久磁石１６と一体で発電機を構成している。円筒状ケーシング８の軸心部には主軸１が支持部材１５を介し固定されており、主軸１にはスリーブ２とラジアル軸受３が配置されている。そして、ラジアル軸受３に勘合する羽根車ボス４が配置され。ボス外周面には羽根５が固着されている。さらに、羽根５の外周端にはロータヨーク６が固着されている。水流が水車内部を流れると羽根５には流体力が作用し、ロータヨーク６が一体で回転する。

ロータヨーク６には永久磁石１６が取り付けられている。ロータヨーク６が回転すると、永久磁石の磁束がステータコイルをよぎりコイルに誘起電圧が発生する。したがって、発電機の出力端子に負荷をつなぐことにより、電力を供給することができる。

羽根５の上流直前にはガイドベーン１４が設けられている。これは流体の圧力エネルギを運動エネルギに変換する目的で設けられているもので、ガイドベーン１４の形状は羽根５へ流体が滑らかに流入するように設計されている。

４段の羽根車一体形ロータヨーク６のうち最上流側と最下流側にラジアル軸受３が設けられている。中間段の羽根車一体形ロータヨーク６にはラジアル軸受が設けられていない。４段の羽根車一体形ロータヨーク６はそれぞれがインロー部で勘合しており、全体で一つの回転軸を構成している。

最下流側の羽根車一体形ロータヨーク６は端部が半径方向外側に延長部材９が設けられている。延長部材９には、円板リング状のスラストメタル１０が設けられている。スラストメタル１０の摺動面は硬度を高めるため超硬合金であるタングステンカーバイトが溶射されている。スラストメタル１０と正対するようにスラストパッド１１が円周方向に複数個配置され、スラストパッドを支えるリング状支持部材１２に固定されている。スラストパッド１１はシリカを主成分とする複合セラミックス皮膜がコーティングされている。スラストメタル１０とスラストパッド１１とリング状支持部材１２が組になって、水流による流体力である軸方向スラスト荷重を支える滑り軸受構造によるスラスト軸受を構成している。リング状支持部材１２は弾性体１３を介してケーシング８に固定されている。

図２はリング状支持部材１２に複数個取付けたスラストパッド１１及びリング状支持部材１２を支持する弾性体１３の様子を示している。各スラストパッドは離れた状態で円周上に等間隔で配置されている。

図３はスラストパッド１１の製作方法を示している。一列若しくは２列に配置した状態で一体製作し、その後個別に切断する。

本発明に係る発電機一体形水車の縦断面図。 本発明のスラスト軸受を示す説明図。 本発明のスラストパッドの製作方法を示す説明図。

符号の説明

１ 主軸
２ スリーブ
３ ラジアル軸受
４ 羽根車ボス
５ 羽根
６ ロータヨーク
７ ステータ
８ ケーシング
９ 延長部材
１０ スラストメタル
１１ スラストパッド
１２ リング状支持部材
１３ 弾性体
１４ ガイドベーン
１５ 主軸支え
１６ 永久磁石

Claims (6)

1. ケーシングと、
   該ケーシングの内側に設けられ、コイルを有するステータと、
   前記ケーシングの軸心部に設けられた主軸と、
   該主軸の回りを回転する複数段の羽根車と、
   該羽根車にそれぞれ設けられ、互いに勘合して一体となったロータヨークと、
   該ロータヨークに設けられた永久磁石と、を備え、
   前記ケーシング内に水が流入することにより、前記羽根車が回転すると共に前記ロータヨークに備えられた前記永久磁石が回転し、前記永久磁石の磁束が前記コイルをよぎることで前記コイルに誘起電圧が発生する発電機を構成し、
   前記複数段の羽根車のうち、最上流側と最下流側の羽根車が前記主軸とラジアル軸受を介して前記主軸の回りを回転し、中間段の羽根車はラジアル軸受を介さないで前記主軸の回りを回転することを特徴とする発電機一体形水車。
2. 請求項１に記載の発電機一体型水車において、
   前記ロータヨークの最下流側の端部を半径方向外側に部材を延長し、該延長した部材に前記ロータヨークが流体力として受ける軸方向のスラスト荷重を支えるスラスト軸受を備えたことを特徴とする発電機一体形水車。
3. 請求項２に記載の発電機一体型水車において、
   前記スラスト軸受は前記ロータヨークとともに回転する円板リング形状のスラストメタルと、該スラストメタルを支える複数のスラストパッドが各々離れた状態で構成されている滑り軸受であることを特徴とする発電機一体形水車。
4. 請求項３に記載の発電機一体型水車において、
   前記スラストパッドをリング状支持部材に固定し、該支持部材が弾性体を介して前記ケーシングに固定されていることを特徴とする発電機一体形水車。
5. 請求項３に記載の発電機一体型水車において、
   前記スラスト軸受は前記スラストメタルの摺動面に超硬合金を溶射し、前記スラストパッドの摺動面にシリカを主成分とする複合セラミックス皮膜をコーティングしたことを特徴とする発電機一体形水車。
6. 請求項３に記載の発電機一体型水車において、
   前記スラストパッドは複数個を一列若しくは２列に並べた形態で一体形として形状を成形した後、各々を切断して製作することを特徴とする発電機一体形水車。

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