JP4565902B2 - 繊維成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維と特定のバインダー樹脂を用いた繊維成形体及びその製造方法に関する。
従来から繊維補強樹脂(FRP)成形体は様々なものが知られている。FRPは繊維としてガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等を用い、樹脂としてエポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル等の熱硬化性樹脂あるいはナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いる。その成形方法としては、繊維織物又は不織布に樹脂を含浸させたプリプレグから加熱加圧成形する方法、液状の樹脂をしみ込ませた繊維の束を芯に巻きつけて成形するフィラメントワインディング法等が知られている(下記非特許文献1)。さらに同非特許文献1には、衣服に使用される接着芯地について、織物、編み物、不織布を接着剤で固定して作成することが記載されている。
また、フィラーを含有する繊維成形体としては、粒子とバインダー樹脂を繊維材料に混合しフリースを形成し、バインダー樹脂で融着した嵩高マットを製造した後、所定の形状にプレス成形する繊維成形体の製造方法が提案されている(下記特許文献1)。さらに、植物繊維、熱融着性繊維、及び粉体状もしくは繊維状の機能性材料からなる機能性繊維シートを熱成形により成形した立体成形体が提案されている(下記特許文献2)。
「繊維の百科事典平成」、平成14年3月25日、丸善、645頁,694頁 特開平9−254264号公報 特開2004−52116号公報
しかし、前記従来のFRP又は芯地における接着剤は、液状樹脂、粉末樹脂、ホットメルト接着剤等であり、人体の肌に接触したときには粗硬感があったり、肌とのなじみが良くないという問題があった。また、成形性にも問題があり、成形コストが高いという問題があった。また前記特許文献1は、粒子とバインダー樹脂を予め混合して繊維表面に粒子を固着するので、粒子がバインダー樹脂に埋没して、粒子の持つ機能を十分に発揮することができないという問題があった。また前記特許文献2は、熱融着性繊維を溶融させて粒子状の機能性材料を固着しようと試みているが、当該方法では熱融着性繊維をかなり高温で溶融させないと粒子を固着することができず、高温で溶融すれば収縮を伴う恐れがあり、均一な成形体を得ることが困難な場合がある。また深絞りの成形体を作製するのが困難な場合がある。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、衣料用途の場合は人体の肌に接触しても柔軟であり、フィラーを繊維表面に有効に固着することができ、成形が均一で、深絞りの形状を得ることができ、一般的用途においても成形コストを安価にできる繊維成形体及びその製造方法を提供する。
本発明の繊維成形体は、繊維とバインダー樹脂を含む繊維集合物が成形されてなる繊維成形体であって、前記バインダー樹脂は、水分存在下で加熱することによってゲル化する湿熱ゲル化樹脂を含み、前記繊維集合物は、水分を含む繊維集合物を、一対の金型内に挿入し、加熱加圧処理する加工により、前記湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化したゲル化物によって前記繊維が固定されるとともに所定の形状に成形されていることを特徴とする。
本発明の繊維成形体の製造方法は、繊維とバインダー樹脂を含む繊維集合物が成形されてなる繊維成形体の製造方法であって、前記バインダー樹脂が水分存在下で加熱することによってゲル化する湿熱ゲル化樹脂を含み、前記繊維及びバインダー樹脂を含む繊維集合物を形成し、水分を含む前記繊維集合物を、一対の金型内に挿入し、加熱加圧処理する加工により、金型内において湿熱雰囲気で前記湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化させて成形加工する(以下、湿熱成形加工という)ことを特徴とする。
本発明の繊維成形体は、バインダー樹脂は湿熱ゲル化樹脂を含み、繊維集合物は繊維が湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化したゲル化物によって固定されて、所定の形状に成形されていることにより、衣料用途の場合は、人体の肌に直接または間接的に接触しても柔軟である。また、成形が均一で、深絞りの形状を得ることができる。さらに、フィラーを繊維表面に有効に固着することもできる。
また、本発明の繊維成形体の製造方法は、繊維と湿熱ゲル化樹脂を含む繊維集合物を形成し、湿熱成形加工することにより、均一に成形することができ、深絞りの形状にも容易に成形することができる。一般的用途においても成形コストを安価にできる。
本発明の繊維成形体においては、バインダー樹脂として、水分存在下で加熱することによってゲル化する湿熱ゲル化樹脂を用いるか、または前記湿熱ゲル化樹脂成分と他の熱可塑性合成繊維成分とを含む複合繊維(以下、「湿熱ゲル化複合繊維」という。)を用いることができる。これにより、他の繊維又は少なくとも他の熱可塑性合成繊維成分は、繊維の形態を保ち、かつ湿熱ゲル化樹脂がゲル化されてゲル化物となして、繊維同士を固着させるバインダーとしての作用機能を発揮する。また、金型内でゲル化した状態で湿熱成形することにより、所定の形状の成形体に成形できる。湿熱ゲル化樹脂の形態は、パウダー状、チップ状、繊維状等が挙げられる。特に、成形加工性を考慮すると、繊維状、すなわち湿熱ゲル化樹脂単独の繊維または湿熱ゲル化複合繊維の形態を採ることが好ましい。
前記湿熱ゲル化樹脂が湿熱ゲル化したゲル化物の表面には、さらにフィラーが固着されていてもよい。フィラーとしては、例えば、研磨剤、有害ガス吸着/分解剤、抗ウイルス吸着/分解剤、抗菌剤、消臭剤、導電剤、制電剤、調湿剤、乾燥剤、防虫剤、防カビ剤、難燃剤等の機能性フィラーを1又は2以上用いることができる。一例として、炭素粉末、シリカゲル、シリカ、アルミナ等どのようなものであってもよい。フィラーは、前記繊維の表面に固定されたゲル化物によって固着されて、フィラー固着繊維の形態をなしている。これにより、フィラーを表面に露出させた状態で繊維表面に固着することができるため、フィラーが脱落することがなく、且つフィラーの比表面積の減少を抑えて、フィラーの機能を十分に発揮することができる。
湿熱ゲル化樹脂の好ましいゲル化温度は、50℃以上である。より好ましいゲル化温度は、80℃以上である。50℃未満で湿熱ゲル化樹脂を用いると、湿熱成形加工の際に金型等への粘着により繊維成形体の生産が難しくなったり、夏場や高温環境下での使用ができなくなったりする場合がある。
湿熱ゲル化樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂であることが好ましい。湿熱によってゲル化することができ、他の熱可塑性合成繊維成分を変質させないからである。エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とは、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を鹸化することによって得られる重合体であり、その鹸化度は95%以上が好ましい。より好ましい鹸化度は、98%以上である。また、エチレン含有率の好ましい下限は、20モル%である。エチレン含有率の好ましい上限は、50モル%である。より好ましいエチレン含有率の下限は、25モル%である。より好ましいエチレン含有率の上限は、45モル%である。鹸化度が95%未満では、湿熱成形加工の際に金型等への粘着により繊維成形体の生産が難しくなる場合がある。また、エチレン含有率が20モル%未満の場合も同様に、湿熱成形加工の際に金型等への粘着により繊維成形体の生産が難しくなる場合がある。一方、エチレン含有率が50モル%を超えると、湿熱ゲル化温度が高くなり、加工温度を融点近傍まで上げざるを得なくなり、その結果、繊維集合物が収縮を伴い、均一な成形体が得られないことがある。
前記繊維集合物は、前記繊維及び前記バインダー樹脂を含むものである。ここでいう繊維集合物とは、繊維束、繊維塊、不織布、織編物等をいう。特に、金型を用いて成形するには、繊維集合物は不織布であることが好ましい。不織布であると、製造コストが安価であり、加工もしやすく、成形加工時に水分を含ませたとき、適度に伸長して金型の形状に沿いやすくなり、深絞りの成形体を得やすいからである。繊維集合物の好ましい目付は、20g/m2以上600g/m2以下であり、好ましい厚さは、0.1mm以上3mm以下の範囲である。
前記繊維及び前記バインダー樹脂の好ましい組み合わせは、
A.湿熱ゲル化樹脂成分と他の熱可塑性合成繊維成分とを含む複合繊維、
B.前記複合繊維と他の繊維を混合したもの、
C.前記複合繊維と湿熱ゲル化樹脂を混合したもの、及び
D.湿熱ゲル化樹脂と他の繊維を混合したもの
から選ばれる少なくとも一つが挙げられる(以下「形態A〜D」という。)。前記形態Aは、「バインダー樹脂」を湿熱ゲル化樹脂成分とし、「繊維」を他の熱可塑性合成繊維成分とした湿熱ゲル化複合繊維である。前記形態Bは、「バインダー樹脂」を湿熱ゲル化複合繊維とし、「繊維」を他の繊維としこれを混合したものである。前記形態Cは、「繊維」を湿熱ゲル化複合繊維とし、さらに「バインダー樹脂」を湿熱ゲル化樹脂としこれを混合したものである。前記形態Dは、「バインダー樹脂」を前記湿熱ゲル化複合繊維以外の形態を採る湿熱ゲル化樹脂(例えば、湿熱ゲル化樹脂単独繊維)とし、「繊維」を他の繊維としこれを混合したものである。
前記形態A〜Cに用いられる前記湿熱ゲル化複合繊維は、湿熱ゲル化樹脂成分が露出しているかまたは部分的に区分されている複合繊維であることが好ましい。その複合形状は、同心円型、偏心芯鞘型、並列型、分割型、海島型等を指す。特に同心円型がフィラーの固着性がよく、好ましい。また、その断面形状が円形、中空、異型、楕円形、星形、偏平形等いずれであってもよいが、繊維製造の容易さから円形であることが好ましい。分割繊維はあらかじめ加圧水流等を噴射して部分的に分割しておくのが好ましい。このようにすると、分割された湿熱ゲル化樹脂成分は、湿熱処理によりゲル化し、ゲル化物を形成して他の繊維の表面に付着し、フィラーを固着する。すなわち、バインダーとして機能する。
前記湿熱ゲル化複合繊維に占める湿熱ゲル化樹脂成分の割合は、10mass%以上90mass%以下の範囲内であることが好ましい。より好ましい含有量は、30mass%以上である。より好ましい含有量は、70mass%以下である。湿熱ゲル化繊維成分の含有量が10mass%未満であると、フィラーの固着性が低下する傾向にある。湿熱ゲル化繊維成分の含有量が90mass%を超えると、複合繊維の繊維形成性が低下する傾向にある。
前記湿熱ゲル化複合繊維における他の熱可塑性合成繊維成分は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等いかなるものであってもよいが、好ましくはポリオレフィンである。湿熱ゲル化樹脂成分としてエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を使用した場合、溶融紡糸による複合繊維(コンジュゲート繊維)を形成しやすいからである。
また、他の熱可塑性合成繊維成分として、湿熱ゲル化樹脂成分をゲル化させる温度よりも高い融点を有する熱可塑性合成繊維成分を用いることが好ましい。他の熱可塑性合成繊維成分がゲル化物を形成させる温度よりも低い融点を有する熱可塑性合成繊維成分であると、他の熱可塑性合成繊維成分自体が溶融して硬くなり、ひいては成形体にしたときに収縮を伴って不均一になることがある。
前記湿熱ゲル化複合繊維が繊維集合物に占める割合は、フィラーを固着することのできる量であれば特に限定されないが、ゲル化物によって繊維を固定し、またはフィラーを有効に固着するのに要する複合繊維の割合は、10mass%以上であることが好ましい。より好ましい複合繊維の割合は、30mass%以上である。さらに好ましい複合繊維の割合は、50mass%以上である。
前記形態Cでは、前記湿熱ゲル化複合繊維に、さらに湿熱ゲル化樹脂を含有させて複合繊維の表面にゲル化物を形成させることも可能である。フィラーの固着効果をより向上させることができる。
前記形態Bまたは前記形態Dに用いられる他の繊維としては、レーヨン等の化学繊維、コットン、麻、ウール等の天然繊維等、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を単独又は複数成分とする合成繊維等、任意なものを選択して使用できる。
前記形態Dにおいて、湿熱ゲル化樹脂は、繊維集合物に対して1mass%以上90mass%以下の範囲内で含有させるのが好ましい。より好ましい含有量は、3mass%以上である。より好ましい含有量は、70mass%以下である。湿熱ゲル化樹脂の含有量が1mass%未満であると、ゲル化物によって他の繊維を固定することが困難であるか、フィラーの固着性が低下する傾向にある。湿熱ゲル化樹脂の含有量が90mass%を超えると、繊維形状が消失してフィルム状になることがあるか、フィラーがゲル化物に埋没することがある。
前記形態Bまたは前記形態Dにおいて、湿熱ゲル化樹脂は、繊維集合物に対して1mass%以上90mass%以下の範囲内で含有させるのが好ましい。より好ましい含有量は、3mass%以上である。より好ましい含有量は、70mass%以下である。湿熱ゲル化樹脂の含有量が1mass%未満であると、ゲル化物によって他の繊維を固定することが困難であるか、有機物吸着性粒子の固着性が低下する傾向にある。湿熱ゲル化樹脂の含有量が90mass%を超えると、繊維形状が消失してフィルム状になることがあるか、有機物吸着性粒子がゲル化物に埋没することがある。
前記フィラーの平均粒子径は、0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。より好ましい平均粒子径は、1μm以上である。より好ましい平均粒子径は、80μm以下である。平均粒子径が0.5μm未満では、フィラーがゲル化物に埋没することがある。一方、平均粒子径が100μmを超える場合は、フィラーの比表面積が小さくなり、フィラーの機能を効率よく発揮できないことがある。
本発明の繊維成形体について、一例を挙げて説明する。本発明の繊維成形体をガス吸着材として用いた場合、前記フィラーは、空気中の気体物質を吸着する機能を有するガス吸着性粒子であれば特に限定されるものではないが、活性炭粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性白土、層状リン酸塩等の多孔質粒子、これらの多孔質粒子に化学吸着剤を担持させた多孔質粒子等が好ましい。多孔質粒子の中では、活性炭粒子が特に好ましい。ガス吸着性粒子の平均粒子径は、0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。平均粒子径が100μmを超えると、十分なガス吸着効果が得られないことがある。
次に、本発明の繊維成形体の製造方法について説明する。本発明において湿熱成形加工とは、繊維集合物に、水分を付与した後に加熱する処理、または水分を付与しながら加熱する処理のことを示す。加熱の方法は、加熱雰囲気中へ晒す方法、加熱体へ接触させる方法等が挙げられる。
前記水分を付与した後に加熱する場合は、湿熱成形加工における繊維集合物の水分の割合は(以下、水分率という)、20mass%以上800mass%以下であることが好ましい。より好ましい水分率は、30mass%以上である。さらにより好ましい水分率は、40mass%以上である。より好ましい水分率は、700mass%以下である。さらにより好ましい水分率は、600mass%以下である。水分率が20mass%未満であると、湿熱ゲル化が充分に起こらないことがある。一方、水分率が800mass%を超えると、湿熱成形加工が繊維集合物の表面と内部との間で均一に行われず、湿熱ゲル化の度合いが不均一となることがある。なお、水分の付与方法としては、スプレー、水槽への浸漬等公知の方法で行うことができる。水分が付与された繊維集合物は、絞りロール等で圧搾する等の方法で所定の水分率に調整することができる。水分を付与すると同時に、フィラーを付与すると効率がよい。
前記湿熱成形加工においては、水分を含む繊維集合物を、一対の金型内に挿入し、加熱加圧処理することが好ましい。水分を含ませた状態で加熱すると、不織布自体が適度に伸長して金型の形状に沿いやすくなって、深絞りの成形体を得やすい。
また、前記湿熱成形加工においては、水分とフィラーを含む繊維集合物を、一対の金型内に挿入し、加熱加圧処理してもよい。
前記水分を付与しながら加熱する場合、例えば、一対の金型内に繊維集合物を挿入し、熱水中(90℃以上)に含浸することにより、成形体を得ることができる。
湿熱成形加工温度は、湿熱ゲル化樹脂のゲル化温度以上融点−20℃以下である。好ましい湿熱成形加工温度は、50℃以上である。より好ましい湿熱成形加工温度は、80℃以上である。また、好ましい湿熱成形加工温度は、湿熱ゲル化樹脂の融点−30℃である。より好ましい湿熱成形加工温度は、湿熱ゲル化樹脂の融点−40℃である。湿熱成形加工温度が湿熱ゲル化樹脂のゲル化温度未満であると、ゲル化物を形成させるのが困難である。湿熱成形加工温度が湿熱ゲル化樹脂の融点−20℃を超えると、湿熱ゲル化樹脂の融点に近くなるため、成形体が不均一となることがある。
本発明においては、湿熱雰囲気で前記湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化させる際に、金型内で接触圧成形加工して繊維成形体を製造することが好ましい。ここで接触圧成形加工とは、繊維集合物と金型とが接触する程度に圧を加える加工のことをいう。接触圧とは、繊維集合物と金型が密着した時金型の自重がかかることになるが、ここまでの圧力を含む概念である。前記湿熱ゲル化樹脂は、湿熱雰囲気でゲル化させると柔らかくなるので、単なる成形だけの場合は、成形圧力はそれほど高くなくても良い。接触圧成形加工によれば、繊維成形体は繊維の形態を維持しつつ、ゲル化物により繊維が固定されるので、嵩高で、柔軟な成形体が得られる。前記金型は、例えば、ステンレススチール板のような軽くて薄い金型で十分であり、緻密なメッシュ状金型であってもよい。
本発明において、成形体に硬さを求める、あるいは湿熱ゲル化樹脂を押し拡げて膜状のゲル化物を求める場合には、通常の繊維成形体を製造する圧力で加熱加圧加工することができる。
次に、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態においては、繊維集合物として不織布を用いた場合について説明する。
図1A〜Cは、本発明の一実施形態における繊維成形体を構成するフィラー固着繊維の断面図である。図1Aは、ポリプロピレンを芯成分2とし、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を鞘成分1とした複合繊維5であって、鞘成分1にフィラー3を固着させた例である。図1Bは、ポリプロピレンを芯成分2とし、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を鞘成分1とした複合繊維6であって、鞘成分6の外側にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂をバインダー4として付着させ、このバインダー4にフィラー3を固着させた例である。図1Cは、ポリプロピレン8とエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂7を多分割に配置した複合繊維9とし、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂7の周辺部にフィラー3を固着させた例である。
図2は、本発明の一実施形態における水分及びフィラーを含む不織布の製造方法の一例工程図である。不織布原反31を、槽32内のフィラーを含む水系液又はフィラーとエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とを含む溶液33に含浸し、絞りロール34で絞る。これにより、不織布に水分及びフィラーが約500mass%付与される。次に、厚さ0.3mmのステンレススチール板製の金型に密着させて接触圧状態にして、加工温度140℃の熱風乾燥機に入れて10分間熱処理して接触圧加工をした。成形体は図3に示す人体の口と鼻を覆うマスク40と、図4に示す空気清浄機用フィルターのプリーツ加工品を作製した。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、前記実施形態では、繊維成形体としてガス吸着材を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、フィラーを使用しない成形体も有用である。
[実施例1]
(不織布原反の作製)
鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH、エチレン含有量38モル%、融点176℃)であり、芯成分がポリプロピレン(PP、融点161℃)であり、EVOH:PPが50:50の割合(容積比)である芯鞘型複合繊維(繊度2.8dtex、繊維長51mm)を準備した。
前記芯鞘型複合繊維をセミランダムカード機で開繊し、目付40g/m2のカードウェブを作製した。次いで、前記カードウェブを90メッシュの平織り支持体に載置し、前記カードウェブの幅方向に一列にオリフィス(径:0.12mm、ピッチ:0.6mm)が配置されたノズルから前記カードウェブに向けて水流を水圧3MPaで噴射した後、更に水圧4MPaで噴射した。続いて、前記カードウェブを裏返して、前記ノズルから水圧4MPaで水流を噴射して、水流交絡不織布原反を作製した。
(湿熱成形加工)
前記不織布原反を、水分散液(20℃)に浸漬し、マングルロールの絞り圧力で水分率を約500mass%になるように調整して、厚さ0.3mmのステンレススチール板製の1対の金型の間に挟み密着させ、加工温度140℃の熱風乾燥機に入れて10分間接触圧で熱処理をした。成形体はお椀型の金型を用いて図3に示す人体の口と鼻を覆うマスク40と、プリーツ型の金型を用いて図4に示す空気清浄機用フィルターのプリーツ加工品を作製した。
[実施例2]
(機能性フィラー)
機能性フィラーとしては、活性炭粒子:「クラレコール PL−D」(クラレケミカル製、ヤシガラ炭、平均粒子径40〜50μm)を使用した。
(フィラー固着湿熱成形加工)
実施例1で使用した不織布原反を、10mass%の前記活性炭粒子を含む水分散液(20℃)に浸漬し、マングルロールの絞り圧力でピックアップ率を調整した。なお、ピックアップ率とは、不織布原反の質量に対する水分量と活性炭粒子量との和に100を乗じた値である。
水分及びフィラーを含む不織布を、厚さ0.3mmのステンレススチール板製の1対の金型の間に挟み密着させ、加工温度140℃の熱風乾燥機に入れて10分間接触圧で熱処理をした。成形体はお椀型の金型を用いて図3に示す人体の口と鼻を覆うマスク40と、プリーツ型の金型を用いて図4に示す空気清浄機用フィルターのプリーツ加工品を作製した。得られたマスク及びプリーツ加工品の質量と、実施例1のマスク及びプリーツ加工品質量から活性炭粒子の固着率を求めると、いずれも約100mass%であった。
図3に示すマスクは、適度な柔軟性を有しており、繊維形態を保持し、繊維が均一に分散した深絞りのお椀型成形体であった。ゲル化物によって固定された活性炭粒子は、成形体から脱落することはなかった。また、マスクを装着しても、息苦しさは感じることはなかった。図4のプリーツ加工品は、繊維形態を保持し、繊維が均一に分散しており、プリーツの山谷(折り目)が明瞭な深絞りの成形体であった。ゲル化物によって固定された活性炭粒子は、成形体から脱落することはなかった。図4のプリーツ加工品は、しっかり折り畳まれているので、プリーツ型カートリッジフィルターへの加工性も良好であった。
本発明の繊維成形体は、衣料用途の場合、例えば肩パット、乳房パッド、ジャケットの襟芯地、袖芯地、ポケット芯地、前身頃、後ろ見頃、見返し、ズボンの腰芯地等がある。また非衣料用途の場合、マスク、空気清浄機やクリーンルームに使用するフィルター濾材のプリーツ加工品、空調された空気ダクトの断熱材、配管、パイプ、プレート、カレンダー加工された表面凹凸模様を有するシート等様々な形に成形できる。
A〜Cは本発明の一実施形態における繊維成形体を構成する粒子固着繊維の断面図である。 本発明の一実施形態における繊維集合物への水分付与の一例工程図である。 本発明の一実施形態における繊維成形体(マスク)の斜視図である。 本発明の一実施形態における繊維成形体(空気清浄機フィルターのプリーツ加工品)の斜視図である。
符号の説明
1 鞘成分
2 芯成分
3 フィラー
4 バインダー
5,6,9 複合繊維
7 エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂
8 ポリプロピレン
40 マスク
50 空気清浄機フィルターのプリーツ加工品

Claims (3)

  1. 繊維とバインダー樹脂を含む繊維集合物が成形されてなる繊維成形体の製造方法であって、
    前記バインダー樹脂が水分存在下で加熱することによってゲル化する湿熱ゲル化樹脂を含み、前記繊維及びバインダー樹脂を含む繊維集合物を形成し、
    水分を含む前記繊維集合物を、一対の金型内に挿入し、加熱加圧処理する加工により、金型内において湿熱雰囲気で前記湿熱ゲル化樹脂を湿熱ゲル化させて成形加工する(以下、湿熱成形加工という)ことを特徴とする繊維成形体の製造方法
  2. 前記湿熱成形加工は、水分とフィラーを含む繊維集合物を、一対の金型内に挿入し、加熱加圧処理する加工である請求項1に記載の繊維成形体の製造方法。
  3. 前記加熱加圧処理する加工は、湿熱雰囲気で、前記繊維集合物と前記金型とが接触する圧力で加工する接触圧成形加工である請求項1又は2に記載の繊維成形体の製造方法。
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