JP4565779B2 - 音響光学チューナブルフィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響光学効果を利用したモード変換に基づいて光信号の選択を行う選択波長可変の音響光学チューナブルフィルタに関し、特に、フィルタ特性の平坦化を図った音響光学チューナブルフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、波長多重(WDM)光通信においては、光伝送路等を伝搬するWDM信号光に対し所要の波長の光信号を分岐または挿入するために、光分岐挿入装置が利用される。この光分岐挿入装置としては、例えば、アレイ型導波路格子(Arrayed Waveguide Grating;以下AWGとする)を利用したものや、音響光学チューナブルフィルタ(Acousto-Optic Tunable Filter;以下AOTFとする)を利用したものなどが知られている。
【0003】
従来のAWGを用いた光分岐挿入装置は、基本的に、分岐または挿入する光信号の波長を自由に選択できない波長固定型の構成になるため、固定的なネットワークのみに適用可能であって、光回線の増設や変更などが頻繁に行われるようなネットワークへの適用は難しい。そこで、AWGと光スイッチを組み合わせることで波長を選択可能にした光分岐挿入装置も提案されている。しかしながら、このようなAWGと光スイッチを組み合わせた光分岐挿入装置は、構成が複雑になり高価なものになってしまうという欠点がある。
【0004】
一方、従来のAOTFを用いた光分岐挿入装置は、その構成が単純であって安価なものになる。このAOTFは、例えば170MHz帯の電気信号の印加を基に1.5μm帯の光信号を選択することができ、しかも、一度に複数の周波数の電気信号を印加することで、複数の波長の光信号を同時に選択できるという利点がある。
【0005】
しかし、従来のAOTFを用いた光分岐挿入装置には、AOTFのフィルタ特性に起因する問題点がある。すなわち、例えば図17(A)に示すようなAOTFを用いた光分岐装置により入力光から所要の波長の光信号を選択して分岐する場合を考えると、一般的なAOTFは、図17(B)に示すように、選択する光信号の波長に一致した波長(以下、選択中心波長とする)の近傍において、波長に対する分岐特性(分岐光の透過率)が急峻に変化するフィルタ特性を持つ。これに対して、AOTFへの入力光に含まれる各波長の光信号は、図17(C)に示すように、そのスペクトラムが変調の影響等により中心波長から僅かに広がっている。このため、AOTFによって分岐される光信号のスペクトラムは、図17(D)に示すように、中心波長に対して短波長側および長波長側で光パワーが低下してしまうことになる。このような特性を持つ光分岐装置を使用して構成した光通信システムでは、回線エラーの増加等を招く可能性があり問題となる。
【0006】
上記のようなAOTFのフィルタ特性に起因する問題に対しては、例えば、Janet L. Jackel et al., "A Passband-Flattened Acousto-Optic Filter", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS., VOL.7 NO.3, pp318-320 1995.などの文献において、AOTFのフィルタ特性を平坦化する技術が提案されている。この文献に記載された技術は、方向性結合型のAOTFについて、フィルタ特性の平坦化を可能にする弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAWとする)の強度関数を、半周期のsin波を2つ組み合わせることによる近似に基づいて予測し、その強度関数に従うSAWの駆動方式を提案したものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来技術においては、平坦化される波長帯域の幅が比較的広いという欠点がある。具体的には、0.5dB以下の変動量に平坦化される帯域幅が1nm程度になると報告されている。近年のWDM光通信においては、例えば0.8nm(100GHz)や0.4nm(50GHz)等の波長間隔で光信号を波長多重して伝送するための技術開発が進められており、このような狭い波長間隔のWDM信号光について、上記のような広い帯域幅を有する従来のAOTFを適用して光分岐挿入装置などを構成することは困難である。
【0008】
また、従来のAOTFでは、フィルタ特性の平坦化を可能にする強度関数に従ったSAWを実現するために、1つの電極から発生するSAWを光導波路に沿って長い距離に亘り伝搬させなければならず、AOTFの全長が長くなってしまうという欠点もある。
本発明は上記の点に着目してなされたもので、選択中心波長の近傍における波長特性が平坦であって、その帯域幅が十分に狭いフィルタ特性を実現した音響光学チューナブルフィルタを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のAOTFは、音響光学効果を利用したモード変換に基づいて光信号の選択を行う選択波長可変の光フィルタ構造を備えた複数の領域が、モード分岐器を介してそれぞれ接続されたものであって、それら複数の領域のうちの少なくとも1つの領域は、光信号の選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が光導波路に沿って伝搬することにより、該光導波路内を通る光信号のうちの前記弾性表面波の周波数に対応した光信号をモード変換するモード結合部として機能し、また、他の少なくとも1つの領域は、前記光信号の選択波長に対応した周波数を有し、かつ、前記モード結合部を伝搬する弾性表面波の強度よりも小さな強度を有する弾性表面波が光導波路に沿って伝搬することにより、該光導波路内を通る前記モード結合部でモード変換された選択光信号の中心波長近傍の一部の光成分のみを前記弾性表面波の強度に応じて再度モード変換する波長特性平坦化部として機能する。そして、波長特性平坦化部の出力側に接続されたモード分岐器が、波長特性平坦化部でモード変換された光成分を除いた選択光信号を分岐して出力することにより、選択光信号の中心波長近傍における波長特性の平坦化が行われるようにしたものである。
【0010】
かかる構成のAOTFでは、入力された光信号がモード結合部に送られることにより、選択波長に対応した光信号がTEモードからTMモード(またはTMモードからTEモード)に変換され、そのモード結合部の出力光が後段のモード分岐器を通過することで、モード変換された光信号が分岐されて、選択光信号として波長特性平坦化部に送られる。波長特性平坦化部では、モード結合部で与えられる弾性表面波よりも強度の小さい弾性表面波を作用させることにより、選択光信号の中心波長近傍における一部の光成分のみがTMモードからTEモード(またはTEモードからTMモード)に再度変換され、その波長特性平坦化部の出力光が後段のモード分岐器を通過することで、波長特性平坦化部における2回目のモード変換を受けなかった光成分が分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された選択光信号が出力されるようになる。
【0012】
また、上記AOTFの具体的な構成として、モード結合部および波長特性平坦化部は、それぞれ、電気信号の印加によって弾性表面波を発生する電極と、その電極からの弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、そのガイドを伝搬する弾性表面波を吸収して終端する吸収体と、を有するようにしてもよい。このような構成では、モード結合部および波長特性平坦化部の各電極において、周波数が同一で強度が異なる弾性表面波がそれぞれ発生し、各々の弾性表面波がガイドを通って吸収体まで伝搬されるようになる。
【0013】
あるいは、モード結合部は、電気信号の印加によって弾性表面波を発生する電極と、その電極からの弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、そのガイドを伝搬する弾性表面波を減衰させた後に波長特性平坦化部に伝える吸収体と、を有し、波長特性平坦化部は、モード結合部の吸収体から伝えられる減衰された弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、そのガイドを伝搬する弾性表面波を吸収して終端する吸収体と、を有するようにしもてよい。かかる構成では、モード結合部の電極で発生した弾性表面波がガイドを通って吸収体まで伝搬した後、その吸収体を通過して所要の強度まで減衰された弾性表面波が波長特性平坦化部のガイドを通って吸収体まで伝搬されるようになる。このような構成によれば、弾性表面波を発生させるための電極を波長特性平坦化部に設ける必要がなくなり、構成の簡略化を図ることが可能になる。
【0014】
また、前述したAOTFの他の態様とし、モード結合部は、光信号の選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が、その周波数に対応した光信号をモード変換することが可能な所定の干渉長に亘り光導波路に沿って伝搬し、また、波長特性平坦化部は、光信号の選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が、前記所定の干渉長とは異なる干渉長に亘り光導波路に沿って伝搬するようにしてもよい。
【0015】
このような構成のAOTFでは、波長特性平坦化部における光信号と弾性表面波の干渉長が、選択する光信号のすべての成分をモード変換することが可能な最適な干渉長からずらして設定されることにより、選択光信号の中心波長近傍の平坦化が行われるようになる。これにより、モード結合部および波長特性平坦化部について同様の弾性表面波を与えることが可能になるため、各部での弾性表面波の調整が殆ど不要になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図1は、本発明にかかる音響光学チューナブルフィルタ(AOTF)の第1の基本構成を示す平面図である。また、図2は、図1のAOTFの各点での波長に対する光パワーおよび偏光モードを例示した図である。
【0017】
図1において、第1の基本構成のAOTFは、例えば、基板S上に形成した光導波路1上に、音響光学効果を利用した選択波長可変の光フィルタ構造をそれぞれ有するモード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bを光の伝搬方向に沿って順に配置すると共に、そのモード結合部Aと波長特性平坦化部Bの間にモード分岐器2Aを挿入し、かつ、波長特性平坦化部Bの後段にモード分岐器2Bを挿入したものである。
【0018】
光導波路1は、その両端に入力ポート1INおよび出力ポート1OUTを有する。この光導波路1には、TEモードまたはTMモードの光信号が入力ポート1INに入力され、モード分岐器2Bから出力される選択光が出力ポート1OUTから出力される。ここでは、例えば図2(A)に示すように、波長λ1,λ2,λ3の各光信号を含んだTEモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力されるものとする。
【0019】
なお、光導波路1への入力光は上記に限定されるものではなく、偏光モードの揃えられた任意の波長数の光信号を入力光とすることが可能である。また、入力ポート1INとモード結合部Aの間に、図示しないがモード分岐器を挿入するようにすれば、入力光の偏光状態には依存しないAOTFとすることも可能である。モード結合部Aは、選択する光信号の中心波長(選択中心波長)に対応した周波数を持つ弾性表面波(SAW)が、基板S上を光導波路1に沿ってSAW吸収体3Aまで伝搬することによって、そのSAWの周波数に対応した波長の光信号のみをモード変換する。SAW吸収体3Aは、ここでは、伝搬してきたSAWをほぼ完全に吸収して実質的に後段には伝えない特性を持つものとする。なお、モード結合部Aの具体的な構成については後述する。
【0020】
波長特性平坦化部Bは、選択中心波長に対応した周波数を持つSAWであって、その強度がモード結合部Aで与えられるSAWの強度に比べて十分に小さいSAWが、基板S上を光導波路1に沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬することによって、そのSAWの周波数に対応した波長の光信号の一部をSAWの強度に応じてモード変換する。なお、図1にはSAWの強度が矢印線の太さに応じて表してある。SAW吸収体3Bは、伝搬してきたSAWをほぼ完全に吸収する。このような波長特性平坦化部Bの具体的な構成についても後述する。
【0021】
モード分岐器2Aは、モード結合部Aを通過した光信号のうちから、ここではTMモードの成分のみを分岐して波長特性平坦化部Bに送る。また、モード分岐器2Bは、波長特性平坦化部Bを通過した光信号のうちから、ここではTMモードの成分のみを分岐して出力ポート1OUTに送る。各モード分岐器2A,2Bとしては、例えば偏光ビームスプリッター(Polarization Beam Splitter;以下、PBSとする)等を使用することが可能である。
【0022】
図3は、モード分岐器2A,2Bとして使用可能な一般的なPBSの一例を模式的に示す平面図である。
図3のPBSは、例えば、2つの入力ポート21,22および2つの出力ポート23,24を有し、図3(A)には、TEモードおよびTMモードの光信号が一方の入力ポート21に入力されたときの出力状態が示してあり、図3(B)には、各モードの光信号が他方の入力ポート22に入力されたときの出力状態が示してある。このPBSでは、いずれかの入力ポートに入力されたTEモードの光信号は、入力ポートとは異なる側(クロス側)に位置する出力ポートから出力され、TMモードの光信号は、入力ポートと同じ側(バー側)に位置する出力ポートから出力される。したがって、前述の図1に示したように入力光からTMモードのみを選択して出力するモード分岐器として、図3のPBSを使用する場合には、入力ポート21と出力ポート23(または入力ポート22と出力ポート24)を光導波路1にそれぞれ接続すればよい。一方、入力光からTEモードのみを選択して出力するモード分岐器としてPBSを使用する場合には、入力ポート21と出力ポート24(または入力ポート22と出力ポート23)を光導波路1にそれぞれ接続すればよい。なお、ここでは、TMモードを選択出力するモード分岐器とTEモードを選択出力するモード分岐器と区別して表記するために、図3の右側に示すような略記号を使用することにする。
【0023】
上記のような第1の基本構成を有するAOTFでは、図2(A)に示すように、波長λ1〜λ3の光信号を含んだTEモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力されると、そのWDM信号光は光導波路1を伝搬してモード結合部Aに送られる。モード結合部Aでは、例えば、選択中心波長として波長λ1が設定されている場合、その波長λ1に対応させて予め設定された周波数f1のSAWが生成され、基板S上を光導波路1に沿ってSAW吸収体3Aまで伝搬されて、この周波数f1のSAWによる音響光学効果によって、光導波路1内を伝搬するWDM信号光のうちの波長λ1の光信号のみがTEモードからTMモードに変換される。このモード結合部Aにおいて生成されるSAWは、波長λ1の光信号(上述の図17(C)に示したように波長λ1を中心にした僅かな広がりを持っている)のすべての成分をモード変換するのに十分な強度を持つように設定されている。その結果、モード結合部Aの出力端部(図1のP1点)に達したWDM信号光は、図2(B)に示すように、波長λ1の光信号のみがTMモードに変換され、波長λ2,λ3の各光信号がTEモードのままとなる。
【0024】
そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光は、モード分岐器2Aに入力され、TMモードの光信号、すなわち、ここでは波長λ1の光信号のみが分岐されて波長特性平坦化部Bに送られる。波長特性平坦化部Bでは、モード結合部Aで与えられていたSAWに比べて強度が十分に小さくなるように設定された周波数f1のSAWが生成され、基板S上を光導波路1に沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬されて、この微弱な周波数f1のSAWによる音響光学効果によって、光導波路1内を伝搬する波長λ1の光信号の一部がTMモードからTEモードに変換される。波長特性平坦化部Bでモード変換を受ける光の割合は、SAWの周波数f1に対応した中心波長λ1で最も大きくなり、中心波長λ1から外れるほど小さくなる。その結果、波長特性平坦化部Bの出力端部(図1のP2点)に達した光信号は、図2(C)に示すように、中心波長λ1近傍の一部の成分がTEモードに変換され、他の成分がTMモードのままとなる。なお、図ではTEモードに相当する成分を概念的に斜線部分で示してある。
【0025】
そして、波長特性平坦化部Bを通過した光信号は、モード分岐器2Bに入力され、TMモードの光成分のみが分岐されて出力ポート1OUTに送られる。したがって、出力ポート1OUTから出力される波長λ1の光信号は、図2(D)に示すように、中心波長λ1近傍のTEモード成分が取り除かれて光パワーが平坦化されたものとなる。
【0026】
このように、第1の基本構成を有するAOTFでは、前段のモード結合部Aで選択した波長λ1の光信号に対し、後段の波長特性平坦化部Bにおいて周波数f1の微弱な強度のSAWを作用させることにより、中心波長λ1近傍における光パワーの波長特性を平坦化することが可能になる。また、このような構成のAOTFでは、平坦化される波長帯域の幅を1nmよりも狭くすることができ、具体的には、例えば0.5nm以下に狭帯域化することも可能である。さらに、一般的な構成のAOTFに対して、異種類の光学的素子を新たに追加することなく、同様の音響光学効果を利用してフィルタ特性の平坦化を実現しているため、その製造も容易である。加えて、AOTFに与えるSAWの関数的な近似によりフィルタ特性の平坦化を図る従来の方式に比べて、SAWを光導波路に沿って伝搬させる距離を短くすることができるため、小型のAOTFを提供することが可能になる。このようなAOTFは、例えば、WDM光通信における波長分岐素子、波長選択素子、波長リジェクト素子および光分岐挿入素子等として有効であり、これらを利用して光通信システムを構築すれば、回線エラーの発生率を改善させる効果が期待できる。
【0027】
次に、上記のような第1の基本構成を有するAOTFの具体的な実施形態について説明する。
図4は、本発明の実施形態1−1にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
図4において、実施形態1−1のAOTFは、薄膜型SAWガイドを用いたAOTFに対して本発明の第1の基本構成を適用したものである。具体的には、基板S上に形成した光導波路1上に、櫛形電極(Interdigital Transducer:以下、IDTとする)4A、SAWガイド5AおよびSAW吸収体3Aがモード結合部Aとしてそれぞれ配置され、また、IDT4B、SAWガイド5BおよびSAW吸収体3Bが波長特性平坦化部Bとしてそれぞれ配置される。さらに、SAW吸収体3AとIDT4Bの間に位置する光導波路1には、モード分岐器2Aが挿入され、SAW吸収体3Bの後段に位置する光導波路1には、モード分岐器2Bが挿入される。
【0028】
各IDT4A,4Bは、図示しないRF信号生成回路で生成された所要の周波数のRF信号が印加され、そのRF信号に対応した周波数のSAWをそれぞれ発生する。IDT4Aに印加されるRF信号は、周波数が選択中心波長に対応し、振幅が選択中心波長の光信号のすべてをモード変換可能なSAWの強度に対応するように設定される。IDT4Bに印加されるRF信号は、周波数が選択中心波長に対応し、振幅がIDT4Aに印加されるRF信号の振幅に比べて十分に小さくなるように設定される。なお、選択中心波長を複数設定する場合には、各々の波長に対応した複数の周波数のRF信号を各IDT4A,4Bに同時に印加することが可能である。
【0029】
各SAWガイド5A,5Bは、基板S表面の所要の領域にそれぞれ形成した薄膜であって、各IDT4A,4Bで発生した各々のSAWを光導波路1に沿って各SAW吸収体3A,3Bまで伝搬させるためのものである。各SAW吸収体3A,3Bは、各SAWガイド5A,5BのIDT4A,4Bとは反対側に位置する端部に設けられ、各々のSAWガイド5A,5Bを伝搬してきたSAWをほぼ完全に吸収して終端するものである。
【0030】
ここでは、モード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bについて、例えば、各IDT4A,4Bを入力ポート1IN側にそれぞれ配置し、各々のIDT4A,4Bから各SAW吸収体3A,3Bに向けて光導波路1に沿うように各SAWガイド5A,5Bをそれぞれ設けて、光導波路1内の光の伝搬方向に対して各SAWが同じ方向に伝搬するような構成としている。なお、本発明は上記の構成に限らず、例えば、モード結合部Aまたは波長特性平坦化部Bに与えるSAWが光の伝搬方向に対して逆方向に伝搬するように、IDTとSAW吸収体の配置を入れ替えるようにしてもよい。この場合、光の伝搬方向に対するSAWの伝搬方向がモード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bで互いに異なるときには、いわゆるドップラー効果による周波数シフトの影響を考慮する必要がある。すなわち、このようなときには、ドップラー効果による周波数シフトの方向が各部A,Bで逆方向になるため、各々の周波数シフトの差分が補正されるように各IDT4A,4Bに印加するRF信号の周波数を調整して、各部A,Bでモード変換を受ける光信号の周波数(波長)を一致させる必要がある。
【0031】
上記のような構成のAOTFでは、入力ポート1INに入力されたTEモード(またはTMモード)のWDM信号光が光導波路1を伝搬して、IDT4AおよびSAWガイド5Aが位置するモード結合部Aに導かれる。
モード結合部Aでは、IDT4Aによって誘起されたSAWがSAWガイド5Aに沿ってSAW吸収体3Aまで伝搬し、光導波路1内を伝搬するWDM信号光に対して図4の下段に示すようなほぼ一定の強度で干渉することで、SAWの周波数に対応した波長の光信号のみがTEモードからTMモードに(またはTMモードからTEモードに)変換される。そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光はモード分岐器2Aに送られ、モード結合部Aでモード変換を受けた波長の光信号のみが分岐されて、IDT4BおよびSAWガイド5Bが位置する波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0032】
波長特性平坦化部Bでは、IDT4Bによって誘起されたSAWがSAWガイド5Bに沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬し、光導波路1内を伝搬する光信号に対して図4の下段に示すようなほぼ一定の微弱な強度で干渉することで、その光信号の中心波長近傍の一部の成分がTMモードからTEモードに(またはTEモードからTMモードに)変換される。そして、波長特性平坦化部Bを通過した光信号はモード分岐器2Bに送られ、2回目のモード変換を受けなかったTMモード(またはTEモード)の光成分のみが分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTに出力される。
【0033】
このように実施形態1−1によれば、選択中心波長に対して平坦化された狭帯域のフィルタ特性を有し、製造が容易であって小型化を図ることも可能な薄膜型SAWガイドを用いたAOTFを実現することができる。
なお、上記の実施形態1−1では、各SAWガイド5A,5Bの長手方向が光導波路1の軸方向にほぼ一致するような配置としたが、例えば図5に示すように、各SAWガイド5A,5Bの長手方向が光導波路1の軸方向に対して所要量だけ傾くように設定し、SAWの伝搬軸と光軸とが斜角に交差するような配置としてもよい。このような配置を採用することによって、光が感じる弾性表面波の強度について長手方向に重み付けが行われるようになり、AOTFのフィルタ特性についてサイドローブレベルの抑圧を図ることが可能になる。
【0034】
次に、第1の基本構成を有するAOTFの他の実施形態について説明する。
図6は、本発明の実施形態1−2にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
図6において、実施形態1−2のAOTFは、いわゆる方向性結合型SAWガイドを用いたAOTFに対して本発明の第1の基本構成を適用したものである。具体的には、基板S上に形成した光導波路1に沿って、IDT4AおよびSAW吸収体3Aがモード結合部Aとして配置され、また、IDT4BおよびSAW吸収体3Bが波長特性平坦化部Bとして配置され、さらに、各IDT4A,4Bで発生し各SAW吸収体3A,3Bに向けて伝搬する各々のSAWが、光導波路1内を伝搬する光信号に対して図6の下段に示すような強度変化に従って干渉(方向性結合)するように、所要の形状のSAWガイド5が所定の位置にそれぞれ設けられる。また、SAW吸収体3AとIDT4Bの間に位置する光導波路1には、モード分岐器2Aが挿入され、SAW吸収体3Bの後段に位置する光導波路1には、モード分岐器2Bが挿入される。
【0035】
なお、図6の上段には、IDT4A,4BからSAW吸収体3A,3Bに向けて伝搬する各SAWの経路が曲線矢印を用いて概念的に示してあり、各曲線矢印の太さが各々のSAWの強度を表している。また、ここでも、光導波路1内の光の伝搬方向に対して各SAWが同じ方向(順方向)に伝搬するような構成としているが、前述した実施形態1−1の場合と同様にして、モード結合部Aまたは波長特性平坦化部Bに与えるSAWが光の伝搬方向に対して逆方向に伝搬するように、IDTとSAW吸収体の配置を入れ替えるようにしてもよい。この場合においてもドップラー効果による周波数シフトの影響を考慮する必要がある。
【0036】
上記のような構成のAOTFでは、前述した実施形態1−1の場合と同様にして、入力ポート1INに入力されたWDM信号光がモード結合部Aに導かれ、そのWDM信号光と、IDT4AからSAW吸収体3Aに向けて伝搬するSAWとが方向性結合することで、SAWの周波数に対応した波長の光信号のみがモード変換される。そして、モード結合部Aでモード変換された光信号がモード分岐器2Aで分岐されて波長特性平坦化部Bに導かれる。波長特性平坦化部Bでも、光導波路1内を伝搬する光信号と、IDT4BからSAW吸収体3Bに向けて伝搬する微弱な強度のSAWとが方向性結合することで、中心波長近傍の一部の成分がモード変換される。そして、2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTに出力される。
【0037】
このように実施形態1−2によれば、選択中心波長に対して平坦化された狭帯域のフィルタ特性を有し、製造が容易であって小型化を図ることも可能な方向性結合型SAWガイドを用いたAOTFを実現することができる。
次に、本発明にかかるAOTFの第2の基本構成について説明する。
図7は、本発明にかかるAOTFの第2の基本構成を示す平面図である。
【0038】
図7において、第2の基本構成のAOTFは、上述の図1に示した第1の基本構成について、モード結合部Aを伝搬するSAWをほぼ完全に吸収するSAW吸収体3Aに代えて、吸収度を低くしたSAW吸収体3A’を用い、そのSAW吸収体3A’を通過することで減衰された微弱な強度のSAWが、波長特性平坦化部BをSAW吸収体3Bまで伝搬されるようにしたものである。このような第2の基本構成では、選択中心波長に対応した周波数のSAWを発生させるための構成をモード結合部Aについてのみ設ければよく、第1の基本構成に比べて波長特性平坦化部Bの構成を簡略化することが可能になる。
【0039】
上記のような第2の基本構成を有するAOTFでは、上述した第1の基本構成の場合の動作と同様にして、入力ポート1INに入力されたWDM信号光が光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれ、モード結合部Aを伝搬するSAWの周波数に対応した波長の光信号のみが異なる偏光モードに変換される。そして、モード結合部Aでモード変換を受けた光信号がモード分岐器2Aで分岐されて波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0040】
波長特性平坦化部Bでは、モード分岐器2Aからの光信号がSAW吸収体3A’を通過した微弱な強度のSAWと干渉することにより、選択中心波長近傍の一部の成分がモード変換される。そして、2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTに出力される。
【0041】
具体的には、例えば上述の図2(A)に示したような波長λ1〜λ3の光信号を含んだTEモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力されると、AOTF内のP1点、P2点および出力ポート1OUTにおける各光信号は、図2(B)、(C)および(D)にそれぞれ示したような状態となる。
このように第2の基本構成のAOTFによっても、第1の基本構成のAOTFの場合と同様の効果を得ることができると共に、波長特性平坦化部Bについて、選択中心波長に対応した周波数のSAWを発生させるための構成を設ける必要がないため、より簡略な構成のAOTFを実現することが可能になる。
【0042】
次に、上記のような第2の基本構成を有するAOTFの具体的な実施形態について説明する。
図8は、本発明の実施形態2−1にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
図8において、実施形態2−1のAOTFは、薄膜型SAWガイドを用いたAOTFに対して本発明の第2の基本構成を適用したものであって、上述の図4に示した実施形態1−1のAOTFを変形させたものに対応する。具体的に、本AOTFの構成が実施形態1−1の構成と異なる部分は、モード結合部AのSAW吸収体3Aに代えて、吸収度を低くしたSAW吸収体3A’を用い、波長特性平坦化部BのIDT4Bを省略した部分である。
【0043】
また、実施形態1−1では、光信号とSAWとが干渉する領域の長さ(以下、干渉長とする)が、モード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bで互いに等しくなるように、各IDT4A,4Bから各SAW吸収体3A,3Bまでの距離を揃えていた。実施形態2−1では、IDT4Bを省略したことに伴って、SAW吸収体3Bの位置を変更し、IDT4AからSAW吸収体3A’までの距離と、SAW吸収体3A’からSAW吸収体3Bまでの距離とがほぼ等しくなるようにしている。
【0044】
このような構成のAOTFでは、入力ポート1INに入力されたWDM信号光が光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれ、モード結合部Aでは、IDT4Aによって誘起されたSAWがSAWガイド5Aに沿ってSAW吸収体3A’まで伝搬し、光導波路1内を伝搬するWDM信号光に対して図8の下段に示すようにほぼ一定の強度で干渉することで、SAWの周波数に対応した波長の光信号のみがモード変換される。そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光はモード分岐器2Aに送られ、モード結合部Aでモード変換を受けた波長の光信号のみが分岐されて、波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0045】
波長特性平坦化部Bには、SAW吸収体3A’を通過することで所要の強度まで減衰されたIDT4AからのSAWが伝えられ、そのSAWがSAWガイド5Bに沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬し、光導波路1内を伝搬する光信号に対して図4の下段に示すようなほぼ一定の微弱な強度で干渉することで、その光信号の中心波長近傍の一部の成分がモード変換される。そして、波長特性平坦化部Bを通過した光信号は、2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTから出力される。
【0046】
このように実施形態2−1によれば、選択中心波長に対して平坦化された狭帯域のフィルタ特性を有し、製造が容易であって構成の簡略化により更なる小型化が可能な薄膜型SAWガイドを用いたAOTFを実現することができる。
次に、第2の基本構成を有するAOTFの他の実施形態について説明する。
図9は、本発明の実施形態2−2にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【0047】
図9において、実施形態2−2のAOTFは、方向性結合型SAWガイドを用いたAOTFに対して本発明の第2の基本構成を適用したものであって、上述の図6に示した実施形態1−2のAOTFを変形させたものに対応する。具体的に、本AOTFの構成が実施形態1−2の構成と異なる部分は、モード結合部AのSAW吸収体3Aに代えて、吸収度を低くしたSAW吸収体3A’を用い、波長特性平坦化部BのIDT4Bを省略した部分である。また、前述した実施形態2−1の場合と同様に、IDT4Bの省略に伴って、SAW吸収体3Bの位置を変更し、IDT4AからSAW吸収体3A’までの距離と、SAW吸収体3A’からSAW吸収体3Bまでの距離とがほぼ等しくなるようにしている。
【0048】
このような構成のAOTFでは、入力ポート1INに入力されたWDM信号光がモード結合部Aに導かれ、モード結合部Aでは、IDT4Aによって誘起されたSAWがSAWガイド5Aに沿ってSAW吸収体3A’まで伝搬し、光導波路1内を伝搬するWDM信号光に対して図9の下段に示すような強度変化に従って方向性結合することで、SAWの周波数に対応した波長の光信号のみがモード変換される。そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光はモード分岐器2Aに送られ、モード結合部Aでモード変換を受けた波長の光信号のみが分岐されて、波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0049】
波長特性平坦化部Bには、SAW吸収体3A’を通過することで所要の強度まで減衰されたIDT4AからのSAWが伝えられていて、その微弱なSAWがSAWガイド5Bに沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬し、光導波路1内を伝搬する光信号に対して図9の下段に示すような強度変化に従って方向性結合することで、中心波長近傍の一部の成分がモード変換される。そして、2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTから出力される。
【0050】
このように実施形態2−2によれば、選択中心波長に対して平坦化された狭帯域のフィルタ特性を有し、製造が容易であって構成の簡略化により更なる小型化が可能な方向性結合型SAWガイドを用いたAOTFを実現することができる。
次に、本発明にかかるAOTFの第3の基本構成について説明する。
図10は、本発明にかかるAOTFの第3の基本構成を示す平面図である。
【0051】
図10において、第3の基本構成のAOTFは、上述の図1に示した第1の基本構成について、波長特性平坦化部Bでの干渉長LB(光信号とSAWとが干渉する領域の長さ)を最適値LOからずらすことにより、モード結合部AにおけるSAWと同様の強度を持つSAWを波長特性平坦化部Bに伝搬させても、第1の基本構成の場合と同様なフィルタ特性の平坦化が実現できるようにしたものである。干渉長の最適値LOは、与えられるSAWの周波数に対応した波長の光信号が、TEモードからTMモードに(またはTMモードからTEモードに)完全に変換されるようになる干渉長のことである。
【0052】
なお、図10の構成例では、波長特性平坦化部Bの干渉長LBが最適値LOよりも短くなるような場合(LB<LO)を示したが、本発明はこれに限らず、干渉長LBが最適値LOよりも長くなるような構成(LB>LO)とすることも可能である。ただし、モード結合部Aでの干渉長LAは、最適値LOに一致するように設定されている。
【0053】
このような第3の基本構成を有するAOTFでは、上述した第1の基本構成の場合の動作と同様にして、入力ポート1INに入力されたWDM信号光が光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれ、干渉長LAが最適値LOとなるように設定されたモード結合部Aを伝搬するSAWの周波数に対応した波長の光信号のみが異なる偏光モードにすべて変換される。そして、モード結合部Aでモード変換を受けた光信号がモード分岐器2Aで分岐されて波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0054】
波長特性平坦化部Bでは、干渉長LBが最適値LOからずらして設定されているため、モード結合部AにおけるSAWと同様の強度を持つSAWが伝搬しても、そのSAWの周波数に対応する波長の光信号について干渉長LBに応じた一部の成分のみがモード変換される。この波長特性平坦化部Bでモード変換を受ける光の割合は、選択中心波長で最も大きくなり、選択中心波長から外れるほど小さくなる。そして、波長特性平坦化部Bにおいて2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTから出力される。
【0055】
具体的には、例えば上述の図2(A)に示したような波長λ1〜λ3の光信号を含んだTEモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力されると、AOTF内のP1点、P2点および出力ポート1OUTにおける各光信号は、図2(B)、(C)および(D)にそれぞれ示したような状態となる。
このように第3の基本構成のAOTFによっても、第1の基本構成のAOTFの場合と同様の効果を得ることができると共に、モード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bについて同じ周波数で同じ強度のSAWを伝搬させることが可能になるので、各部A,Bで所要のSAWを発生させるための調整作業が殆ど不要になり、調整フリーによる生産性の向上も期待できる。
【0056】
次に、上記のような第3の基本構成を有するAOTFの具体的な実施形態について説明する。
図11は、本発明の実施形態3−1にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
図11において、実施形態3−1のAOTFは、薄膜型SAWガイドを用いたAOTFに対して本発明の第3の基本構成を適用したものであって、上述の図4に示した実施形態1−1のAOTFを変形させたものに対応する。具体的に、本AOTFの構成が実施形態1−1の構成と異なる部分は、波長特性平坦化部Bの干渉長LBが最適値LOよりも短くなるように、IDT4Bに対してSAW吸収体3Bを近づけるようにしたものである。モード結合部Aの干渉長LAは最適値LOに一致させてあるため、ここでは干渉長LB<干渉長LAとなっている。なお、波長特性平坦化部Bの干渉長LBは最適値LOよりも長くなるようにしてもよく、この場合には干渉長LB>干渉長LAとなる。
【0057】
このような構成のAOTFでは、入力ポート1INに入力されたWDM信号光が光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれ、モード結合部Aでは、IDT4Aによって誘起されたSAWがSAWガイド5Aに沿ってSAW吸収体3Aまでの干渉長LAを伝搬し、光導波路1内を伝搬するWDM信号光に対して図11の下段に示すようなほぼ一定の強度で干渉することで、SAWの周波数に対応した波長の光信号のすべての成分がモード変換される。そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光はモード分岐器2Aに送られ、モード結合部Aでモード変換を受けた波長の光信号のみが分岐されて、波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0058】
波長特性平坦化部Bでは、モード結合部Aと同様の強度を有するSAWがIDT4Bによって誘起され、SAWガイド5Bに沿ってSAW吸収体3Bまでの干渉長LBを伝搬し、光導波路1内を伝搬する光信号に対して図11の下段に示すようなほぼ一定の強度で干渉することで、その光信号の中心波長近傍の一部の成分がモード変換される。そして、波長特性平坦化部Bを通過した光信号は、2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTから出力される。
【0059】
このように実施形態3−1によれば、選択中心波長に対して平坦化された狭帯域のフィルタ特性を有し、製造がより一層容易であって小型化を図ることも可能な薄膜型SAWガイドを用いたAOTFを実現することができる。
次に、第3の基本構成を有するAOTFの他の実施形態について説明する。
図12は、本発明の実施形態3−2にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【0060】
図12において、実施形態3−2のAOTFは、方向性結合型SAWガイドを用いたAOTFに対して本発明の第3の基本構成を適用したものであって、上述の図6に示した実施形態1−2のAOTFを変形させたものに対応する。具体的に、本AOTFの構成が実施形態1−2の構成と異なる部分は、波長特性平坦化部Bの干渉長LBが最適値LOよりも短くなるように、IDT4Bに対してSAW吸収体3Bを近づけるようにしたものである。モード結合部Aの干渉長LAは最適値LOに一致させてあるため、ここでは干渉長LB<干渉長LAとなっている。なお、波長特性平坦化部Bの干渉長LBは最適値LOよりも長くなるようにしてもよく、この場合には干渉長LB>干渉長LAとなる。
【0061】
このような構成のAOTFでは、入力ポート1INに入力されたWDM信号光が光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれ、モード結合部Aでは、IDT4Aによって誘起されたSAWがSAWガイド5Aに沿ってSAW吸収体3Aまでの干渉長LAを伝搬し、光導波路1内を伝搬するWDM信号光に対して図12の下段に示すような強度変化に従って方向性結合することで、SAWの周波数に対応した波長の光信号のすべての成分がモード変換される。そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光はモード分岐器2Aに送られ、モード結合部Aでモード変換を受けた波長の光信号のみが分岐されて、波長特性平坦化部Bに導かれる。
【0062】
波長特性平坦化部Bでは、モード結合部AのSAWと同様の周波数および強度を有するSAWがIDT4Bによって誘起され、SAWガイド5Bに沿ってSAW吸収体3Bまでの干渉長LBを伝搬し、光導波路1内を伝搬する光信号に対して図12の下段に示すような強度変化に従って方向性結合することで、その光信号の中心波長近傍の一部の成分がモード変換される。そして、波長特性平坦化部Bを通過した光信号は、2度目のモード変換を受けなかった光成分のみがモード分岐器2Bで分岐されて、中心波長近傍の光パワーが平坦化された光信号が出力ポート1OUTから出力される。
【0063】
このように実施形態3−2によれば、選択中心波長に対して平坦化された狭帯域のフィルタ特性を有し、製造がより一層容易であって小型化を図ることも可能な方向性結合型SAWガイドを用いたAOTFを実現することができる。
次に、いわゆるモードダイバーシティ型の構造を有するAOTFに対して、上述した第1〜第3の基本構成を適用した場合の応用例について説明する。なお、以下では、第1の基本構成を適用した場合の一例について説明し、第2、第3の基本構成を適用した場合については、第1の基本構成を適用した場合と同様にして考えることができるため、ここでの説明を省略する。
【0064】
図13および図15は、第1の基本構成を適用したモードダイバーシティ型のAOTFの構成例を示す平面図であって、図13には、入力ポートにTMモードの光信号を入力した場合の状態が例示してあり、図15には、入力ポートにTEモードの光信号を入力した場合の状態が例示してある。また、図14および図16は、図13および図15の各AOTFの各点での波長に対する光パワーおよび偏光モードを例示した図である。
【0065】
図13および図15において、本AOTFは、2つの入力ポートおよび2つの出力ポートを有するモード分岐器6a,6bと、モード分岐器6aの各出力ポートとモード分岐器6bの各入力ポートとの間をそれぞれ接続する光導波路1とを基板S上に形成し、その光導波路1上にモード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bを光の伝搬方向に沿って順に配置すると共に、モード結合部Aと波長特性平坦化部Bの間に位置する各光導波路1にモード分岐器6c,6dをそれぞれ挿入したものである。
【0066】
各モード分岐器6a,6bとしては、例えば上述の図3(A)(B)に示したようなPBS等を使用することが可能である。モード分岐器6aについては、一方の入力ポート(例えば図13で上側の入力ポート)がWDM信号光の入力を受けるポート1INに設定され、その入力ポート1INと同じ側(バー側)に位置する出力ポートからTMモードの光信号が出力され、入力ポート1INとは異なる側(クロス側)に位置する出力ポートからTEモードの光信号が出力される。モード分岐器6bについては、入力ポート1INの位置に対応した一方の出力ポート(例えば図13で下側の出力ポート)が、本AOTFで選択した光信号を出力するポート1OUTに設定されるものとする。
【0067】
モード結合部Aは、選択中心波長に対応した周波数を持つSAWが光導波路1に沿ってSAW吸収体3Aまで伝搬される。具体的には、図13に示したように、モード分岐器6aの入力ポート1INにTMモードの光信号が入力される場合には、モード分岐器6aのTMモード出力ポートに接続する図で上側の光導波路1に沿ってSAWが伝搬される。また、図15に示したように、モード分岐器6aの入力ポート1INにTEモードの光信号が入力される場合には、モード分岐器6aのTEモード出力ポートに接続する図で下側の光導波路1に沿ってSAWが伝搬される。さらに、図示しないがモード分岐器6aの入力ポート1INにTMモードおよびTEモードの両モードの光信号が入力される場合にあっては、モード分岐器6aの各出力ポートに接続する各々の光導波路1に沿って同様のSAWがそれぞれ伝搬される。SAW吸収体3Aは、ここでは、各光導波路1に沿って伝搬してきた各々のSAWをほぼ完全に吸収して実質的に後段には伝えない特性を持つものとする。
【0068】
波長特性平坦化部Bは、選択中心波長に対応した周波数を持つSAWであって、その強度がモード結合部Aで与えられるSAWの強度に比べて十分に小さいSAWが、光導波路1に沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬される。なお、SAWがいずれの光導波路1に沿って伝搬されるかは、モード結合部Aの場合と同様にして、入力光の偏光モードに応じて設定されるものとする。SAW吸収体3Bは、各光導波路1に沿って伝搬してきた各々のSAWをほぼ完全に吸収する。
【0069】
モード分岐器6aのTMモード出力ポートに接続する上側の光導波路1に挿入されたモード分岐器6cは、モード結合部Aを通過した光信号のうちからTEモードの成分のみを分岐して波長特性平坦化部Bに送る。また、モード分岐器6aのTEモード出力ポートに接続する下側の光導波路1に挿入されたモード分岐器6dは、モード結合部Aを通過した光信号のうちからTMモードの成分のみを分岐して波長特性平坦化部Bに送る。各モード分岐器6c,6dとしても、例えば上述の図3(A)(B)に示したようなPBS等を使用することが可能である。
【0070】
上記のような構成のAOTFでは、図14(A)に示すように、波長λ1〜λ3の光信号を含んだTMモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力された場合、そのWDM信号光は、図13に示したように、モード分岐器6aのバー側に位置する出力ポートに接続する光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれる。モード結合部Aでは、例えば、選択中心波長として波長λ1が設定されている場合、その波長λ1に対応した周波数f1のSAWが、図で上側の光導波路1に沿ってSAW吸収体3Aまで伝搬され、波長λ1の光信号のみがTMモードからTEモードに変換される。その結果、モード結合部Aの出力端部P1に達したWDM信号光は、図14(B)に示すように、波長λ1の光信号のみがTEモードに変換され、波長λ2,λ3の各光信号がTMモードのままとなる。そして、モード結合部Aを通過したWDM信号光は、TEモードに変換された波長λ1の光信号のみがモード分岐器6cで分岐されて波長特性平坦化部Bに送られる。
【0071】
波長特性平坦化部Bでは、モード結合部Aで与えられていたSAWに比べて強度が十分に小さくなるように設定された周波数f1のSAWが、図で上側の光導波路1に沿ってSAW吸収体3Bまで伝搬され、波長λ1の光信号の一部がTEモードからTMモードに変換される。その結果、波長特性平坦化部Bの出力端部P2点に達した光信号は、図14(C)に示すように、中心波長λ1近傍の一部の成分がTMモードに変換され、他の成分がTEモードのままとなる。そして、波長特性平坦化部Bを通過した光信号は、モード分岐器6bの一方の入力ポートに送られ、その入力ポートのクロス側に位置する出力ポート1OUTにTEモードの光成分のみが出力される。したがって、出力ポート1OUTから出力される波長λ1の光信号は、図14(D)に示すように、中心波長λ1近傍の光パワーが平坦化されたものとなる。
【0072】
一方、図16(A)に示すように、波長λ1〜λ3の光信号を含んだTEモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力された場合には、そのWDM信号光は、図15に示したように、モード分岐器6aのクロス側に位置する出力ポートに接続する光導波路1を伝搬してモード結合部Aに導かれる。そして、モード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bでは、前述したTEモードのWDM信号光が入力ポート1INに入力された場合の同様の動作(ただし、TE/TMモードの関係を入れ替える)が行われ、モード結合部Aの出力端部P1、波長特性平坦化部Bの出力端部P2および出力ポート1OUTにそれぞれ到達した光信号は、図16(B),(C)および(D)に示すような状態となる。
【0073】
このように、モードダイバーシティ型の構造を有するAOTFに対して第1の基本構成を応用するようにしても、上述してきたような本発明の効果を得ることができる。特に、TE/TMモードの光信号を同一の入力ポート1INに入力し、各モードの光信号が伝搬する各々の光導波路1に沿ってSAWをそれぞれ作用させるようにした場合には、入力光の偏光状態に依存しないAOTFを実現することが可能になる。
【0074】
なお、上記モードダイバーシティ型への応用例については、薄膜型および方向性結合型のいずれのSAWガイドを用いたAOTFに対しても適用することが可能である。
また、上述した各実施形態のAOTFでは、モード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bが同一の基板S上に配置される場合を示したが、本発明はこれに限らず、別個の基板上にモード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bをそれぞれ配置するようにしてもよい。さらに、モード結合部Aおよび波長特性平坦化部Bをそれぞれ1つづつ設ける構成を示し、複数の選択中心波長を設定する場合には、各選択中心波長に対応した複数のSAWを各部A,Bに同時に印加することが可能であると説明したが、もちろん、各選択中心波長に応じて複数のモード結合部および複数の波長特性平坦化部をそれぞれ設けるようにしても構わない。
【0075】
以上、本明細書で開示した主な発明について以下にまとめる。
【0076】
(付記1) 音響光学効果を利用したモード変換に基づいて光信号の選択を行う選択波長可変の光フィルタ構造を備えた複数の領域が、モード分岐器を介してそれぞれ接続された音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域のうちの少なくとも1つの領域が、選択波長に対応した光信号をモード変換するモード結合部として機能し、
前記複数の領域のうちの少なくとも1つの領域が、前記モード結合部でモード変換された選択光信号について中心波長近傍の一部の光成分のみを再度モード変換する波長特性平坦化部として機能し、
該波長特性平坦化部の出力側に接続された前記モード分岐器が、前記波長特性平坦化部でモード変換された光成分を除いた前記選択光信号を分岐して出力することにより、前記選択光信号の中心波長近傍における波長特性の平坦化が行われることを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0077】
(付記2) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部は、選択波長に対応した周波数を有し、かつ、該周波数に対応した光信号をモード変換することが可能な強度を有する弾性表面波が光導波路に沿って伝搬し、
前記波長特性平坦化部は、選択波長に対応した周波数を有し、かつ、前記モード結合部を伝搬する弾性表面波の強度よりも小さな強度を有する弾性表面波が光導波路に沿って伝搬することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0078】
(付記3) 付記2に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部および前記波長特性平坦化部は、それぞれ、電気信号の印加によって前記弾性表面波を発生する電極と、該電極からの弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、該ガイドを伝搬する弾性表面波を吸収して終端する吸収体と、を有することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0079】
(付記4) 付記2に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部は、電気信号の印加によって前記弾性表面波を発生する電極と、該電極からの弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、該ガイドを伝搬する弾性表面波を減衰させた後に前記波長特性平坦化部に伝える吸収体と、を有し、
前記波長特性平坦化部は、前記モード結合部の吸収体から伝えられる減衰された弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、該ガイドを伝搬する弾性表面波を吸収して終端する吸収体と、を有することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0080】
(付記5) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部は、選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が、前記周波数に対応した光信号をモード変換することが可能な所定の干渉長に亘り光導波路に沿って伝搬し、
前記波長特性平坦化部は、選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が、前記所定の干渉長とは異なる干渉長に亘り光導波路に沿って伝搬することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0081】
(付記6) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記選択波長が複数設定されることを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0082】
(付記7) 付記6に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部および前記波長特性平坦化部は、それぞれ、前記複数の選択波長に対応した複数の周波数の弾性表面波が同時に与えられることを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0083】
(付記8) 付記6に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の選択波長に対応した複数の前記モード結合部および複数の前記波長特性平坦化部を備えたことを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0084】
(付記9) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域は、光導波路と重なるように配置した薄膜型の弾性表面波ガイドを有することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0085】
(付記10) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域は、光導波路と平行になるように配置した方向性結合型の弾性表面波ガイドを有することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0086】
(付記11) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域は、同一の基板上に配置されていることを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0087】
(付記12) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域は、複数の基板上に分割して配置されていることを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0088】
(付記13) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域は、TEモードおよびTMモードのうちの一方のモードの光信号が入力され、該光信号が単一の光導波路を伝搬することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0089】
(付記14) 付記1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域は、TEモードおよびTMモードの光信号が入力可能であり、各モードに対応した複数の光導波路を有し、モード別に分離された光信号が前記各光導波路を伝搬することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の音響光学チューナブルフィルタによれば、モード結合部で選択した光信号に対し、波長特性平坦化部において、モード結合部で与えられる弾性表面波よりも強度の小さい弾性表面波を作用させて中心波長近傍の一部の光成分のみを再度モード変換するようにしたことにより、選択中心波長の近傍における波長特性が平坦化された狭帯域のフィルタ特性を実現することが可能になる。また、音響光学効果を利用してフィルタ特性の平坦化が実現されるため、音響光学チューナブルフィルタを容易に製造することができる。さらに、従来の関数近似によるフィルタ特性の平坦化に比べて、弾性表面波の伝搬距離を短くすることが可能であるため、小型の音響光学チューナブルフィルタを提供できる。このような音響光学チューナブルフィルタを利用した光通信システムでは、回線エラーの発生率を低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるAOTFの第1の基本構成を示す平面図である。
【図2】図1のAOTFの各点での波長に対する光パワーおよび偏光モードを例示した図である。
【図3】本発明にかかるAOTFのモード分岐器として使用可能なPBSの一例を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態1−1にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【図5】同上実施形態1−1に関連する他の構成例を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態1−2にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【図7】本発明にかかるAOTFの第2の基本構成を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態2−1にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【図9】本発明の実施形態2−2にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【図10】本発明にかかるAOTFの第3の基本構成を示す平面図である。
【図11】本発明の実施形態3−1にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【図12】本発明の実施形態3−2にかかるAOTFの構成を示す平面図である。
【図13】本発明の第1の基本構成を適用したモードダイバーシティ型のAOTFの構成例を示す平面図であって、入力ポートにTMモードの光信号を入力した場合の状態を例示した図である。
【図14】図13のAOTFの各点での波長に対する光パワーおよび偏光モードを例示した図である。
【図15】本発明の第1の基本構成を適用したモードダイバーシティ型のAOTFの構成例を示す平面図であって、入力ポートにTEモードの光信号を入力した場合の状態を例示した図である。
【図16】図15のAOTFの各点での波長に対する光パワーおよび偏光モードを例示した図である。
【図17】従来のAOTFの問題点を説明する図であって、(A)はAOTFを用いた光分岐装置の構成、(B)は従来のAOTFのフィルタ特性、(C)は入力される光信号のスペクトラム、(D)は従来のAOTFで分岐される光信号のスペクトラムをそれぞれ示した図である。
【符号の説明】
A モード結合部
B 波長特性平坦化部
S 基板
1 光導波路
1IN 入力ポート
1OUT 出力ポート
2A,2B,6a,6b,6c,6d モード分岐器
3A,3A',3B SAW吸収体
4A,4B 櫛形電極(IDT)
5A,5B SAWガイド
Claims (4)
- 音響光学効果を利用したモード変換に基づいて光信号の選択を行う選択波長可変の光フィルタ構造を備えた複数の領域が、モード分岐器を介してそれぞれ接続された音響光学チューナブルフィルタであって、
前記複数の領域のうちの少なくとも1つの領域は、光信号の選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が光導波路に沿って伝搬することにより、該光導波路内を通る光信号のうちの前記弾性表面波の周波数に対応した光信号をモード変換するモード結合部として機能し、
前記複数の領域のうちの少なくとも1つの領域は、前記光信号の選択波長に対応した周波数を有し、かつ、前記モード結合部を伝搬する弾性表面波の強度よりも小さな強度を有する弾性表面波が光導波路に沿って伝搬することにより、該光導波路内を通る前記モード結合部でモード変換された選択光信号の中心波長近傍の一部の光成分のみを前記弾性表面波の強度に応じて再度モード変換する波長特性平坦化部として機能し、
該波長特性平坦化部の出力側に接続された前記モード分岐器が、前記波長特性平坦化部でモード変換された光成分を除いた前記選択光信号を分岐して出力することにより、前記選択光信号の中心波長近傍における波長特性の平坦化が行われることを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。 - 請求項1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部および前記波長特性平坦化部は、それぞれ、電気信号の印加によって前記弾性表面波を発生する電極と、該電極からの弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、該ガイドを伝搬する弾性表面波を吸収して終端する吸収体と、を有することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。 - 請求項1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部は、電気信号の印加によって前記弾性表面波を発生する電極と、該電極からの弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、該ガイドを伝搬する弾性表面波を減衰させた後に前記波長特性平坦化部に伝える吸収体と、を有し、
前記波長特性平坦化部は、前記モード結合部の吸収体から伝えられる減衰された弾性表面波を光導波路に沿って伝搬させるガイドと、該ガイドを伝搬する弾性表面波を吸収して終端する吸収体と、を有することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。 - 請求項1に記載の音響光学チューナブルフィルタであって、
前記モード結合部は、前記光信号の選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が、前記周波数に対応した光信号をモード変換することが可能な所定の干渉長に亘り光導波路に沿って伝搬し、
前記波長特性平坦化部は、前記光信号の選択波長に対応した周波数を有する弾性表面波が、前記所定の干渉長とは異なる干渉長に亘り光導波路に沿って伝搬することを特徴とする音響光学チューナブルフィルタ。
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