JP4565531B2 - ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna - Google Patents

ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna Download PDF

Info

Publication number
JP4565531B2
JP4565531B2 JP2000266261A JP2000266261A JP4565531B2 JP 4565531 B2 JP4565531 B2 JP 4565531B2 JP 2000266261 A JP2000266261 A JP 2000266261A JP 2000266261 A JP2000266261 A JP 2000266261A JP 4565531 B2 JP4565531 B2 JP 4565531B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
bikunin
gene
dna
mouse
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000266261A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002065281A (ja
Inventor
麗聖 卓
雅彦 米田
弘治 木全
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seikagaku Corp
Original Assignee
Seikagaku Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seikagaku Corp filed Critical Seikagaku Corp
Priority to JP2000266261A priority Critical patent/JP4565531B2/ja
Publication of JP2002065281A publication Critical patent/JP2002065281A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4565531B2 publication Critical patent/JP4565531B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビクニン遺伝子のターゲッティングに使用できるDNA、このDNAを含むベクター、これを用いて作出されるビクニン遺伝子のノックアウトマウス等に関する。
【0002】
【従来の技術】
血清蛋白質の1つとして高濃度(0.4 mg/ml)に存在しているインター-α-トリプシンインヒビター(以下、ITIともいう)は、2本の重鎖(HC1およびHC2)とビクニン(bikunin)と呼ばれる低分子コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの3種類の異なる蛋白質からなる複合体であり、ビクニンのコア蛋白質は 2個のKunitz型トリプシンインヒビタードメインを持ち、ITIの名前の由来であるプロテアーゼ阻害活性能はこれに起因する。ビクニンコア蛋白質のN末端から10番目のセリン残基にはグリコサミノグリカンの1つであるコンドロイチン硫酸糖鎖が結合している。2本の 重鎖(HC1およびHC2)は、そのコンドロイチン硫酸鎖の側鎖に共有結合している。
【0003】
同様な構造体としてプレ-α-トリプシンインヒビター(PαI)やインター-α-トリプシン様インヒビター(ITLI)が存在することが知られており、ITIファミリーを形成している。これらは、コアとなるビクニンは共通しているが、側鎖HC蛋白質は1本のみであり、PαIはITIとは異なった構造のHC3鎖、ITLIはHC2鎖で構成されている。
【0004】
一方、ヒアルロン酸(HA)は細胞外マトリックスの普遍的な成分として存在するグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの二糖繰り返し構造からなる超高分子のグリコサミノグリカン糖鎖である。多くの細胞膜表面外層にはヒアルロン酸リッチマトリックスといわれる構造体が存在し、その主成分であるヒアルロン酸はある種の蛋白質と共有結合しており、その蛋白質はSHAP(血清由来ヒアルロン酸結合蛋白質)と名付けられた。この結合体をSHAP-HA複合体といい、ヒアルロン酸が豊富に存在するゲル状の組織中や体液成分、例えば、リウマチ患者の関節液、慢性肝炎・肝硬変患者の血清、排卵された卵細胞の表面や子宮内膜などに多く存在している。そのSHAPはITIファミリーのHC1、HC2およびHC3と同一物質であり、やはり血清由来であることが判明した。
【0005】
これら蛋白質の糖鎖への結合様式は非常にユニークであり、成熟蛋白質のC末端アスパラギン酸残基のαカルボキシル基と、ビクニンのコンドロイチン硫酸N-アセチルガラクトサミン残基、あるいはヒアルロン酸のN-アセチルグルコサミン残基の6位水酸基との、エステル結合により繋がっていることが分かった。この結合はHC1、HC2、HC3共通である。また、SHAP-HA複合体は直接遊離HC鎖と結合するのではなく、コンドロイチン硫酸鎖と結合したITIファミリー分子のHC鎖が転移して結合体を作っていることが示唆された。このときITIからはビクニンが遊離され、それが尿中に排泄されたものがUTI(尿中トリプシンインヒビター)と言われる。
【0006】
ヒアルロン酸リッチマトリックスに重要と考えられるSHAP-HA複合体の生理的役割を追求するために、その形成を阻害することが考えられる。そのためには、SHAPであるITIファミリーのHC鎖を欠損させることが考えられるが、HC鎖は複数存在し、それら全てをノックアウトするのは非常に困難である。ITIファミリー分子の共通な構成成分はビクニンであることから、ビクニン蛋白質を遺伝的にノックアウトすることで、ITIファミリー分子を全て産生させなくし、それにより結果としてSHAP-HA複合体の形成を阻害することが考えられた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ビクニン遺伝子のターゲッティングに有用なDNA、このDNAを含むベクター、これを用いて作出されるビクニン遺伝子のノックアウトマウス等を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、ビクニン遺伝子のターゲッティングに有用なDNAおよびこのDNAを含むベクターを提供するに至り、さらにこれらを用いてビクニン遺伝子のノックアウトマウスや不妊のモデルマウスを作出するに至り、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA(以下、本発明DNAという)を提供する。
また本発明は、本発明DNAを含むベクター(以下、本発明ベクターという)を提供する。
【0010】
また本発明は、ゲノム中のAMBP遺伝子のエキソン7のビクニン遺伝子に相当する部分をノックアウトした、ビクニン遺伝子のノックアウトマウス(以下、本発明マウスという)を提供する。本発明マウスは、ゲノム中に配列番号1の塩基番号6145〜6250で表される塩基配列を含んでいることを特徴とする、ビクニン遺伝子のノックアウトマウスを包含する。本発明マウスは、α―1―ミクログロブリン遺伝子が正常に保持されているものが好ましく、相同染色体の両方に配列番号1の塩基番号6145〜6250で表される塩基配列を含んでいるものが好ましく、雌性マウスであることが特に好ましい。
さらに本発明は、雌性の本発明マウスからなる不妊のモデルマウス(以下、本発明モデルマウス)を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
<1>本発明DNAおよび本発明ベクター
本発明DNAは、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAであり、ビクニン遺伝子のターゲッティングに用いることができ、特にビクニン遺伝子のノックアウトに好ましく用いられる。
【0012】
マウスビクニン遺伝子は、同じく血清蛋白質であるα-1-ミクログロブリン
(以下、α-1-Mともいう)遺伝子と繋がっており、共通のmRNAからα-1-ミクログロブリンとビクニンが結合した前駆体蛋白質として翻訳される。前駆体蛋白質は翻訳後に特異的プロテアーゼにより切断を受け、α-1-ミクログロブリンとビクニンに分かれる。染色体上には、α-1-ミクログロブリン/ビクニン前駆体遺伝子(AMBP gene)として存在し、10個のエキソンからなり、前半エキソン1から7がα-1-ミクログロブリンをコードし、後半エキソン7から10がビクニンをコードしている。
【0013】
エキソン7は、成熟α-1-ミクログロブリンのC末端のアミノ酸残基、コンドロイチン硫酸鎖が結合する10番目のセリン残基を含むビクニンのN末端部分および切断サイトから構成されている。ビクニンのノックアウトマウスを作出するには、このエキソン7の位置をターゲティングサイトにするのが最も好ましい。
また、α-1-ミクログロブリンの産生や前駆体切断酵素への影響を少なくするため、エキソン7の5'側のα-1-ミクログロブリン-ビクニン前駆体の切断部位はそのまま保存することが好ましい。また同時にビクニン分子の発現を阻止し、しかもコンドロイチン硫酸鎖が結合する10位セリン残基付近の部分ペプチドをも翻訳させないために、ビクニンN-末端をコードする塩基配列を変異させることが好ましい。特にその塩基の数を変化させることは翻訳コードのフレームをずらすことで、たとえペプチドが作られてもビクニン様のコンドロイチン硫酸結合性のペプチドは産生されないため特に有効である。
【0014】
また、ノックアウトマウスの作出に使用するDNAには、陽性選別を行うための陽性マーカー遺伝子を含有させることが好ましい。陽性マーカー遺伝子は、目的のDNAが細胞に導入された場合に発現して、これにより選別を行うことができるものである。陽性マーカー遺伝子としてはネオマイシン耐性遺伝子を用いることが好ましい。
【0015】
本発明DNAはこのような思想に基づいて設計されたものであり、後述する実施例に記載の方法で製造することができるが、他の方法で製造されたものも当然に本発明DNAに包含される。
【0016】
本発明DNAをノックアウトマウス作出に用いる場合には、本発明を適当なベクターに組み込んで使用することが好ましく、これにより本発明ベクターが提供される。用いるベクターは当業者が適宜選択することができるが、陰性選別を行うための陰性マーカー遺伝子を含んでいるベクターであることが好ましい。
【0017】
陰性マーカー遺伝子は、目的の相同組換えが起こらなかった場合に発現して選別を行うことができるものである。陰性マーカー遺伝子としては、染色体DNAに導入されたときに宿主細胞において発現するものであれば特に限定されず、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子などが挙げられる。好ましくはチミジンキナーゼ遺伝子である。
【0018】
<2>本発明マウスおよび本発明モデルマウス
本発明マウスは、ゲノム中のAMBP遺伝子のエキソン7のビクニン遺伝子に相当する部分をノックアウトした、ビクニン遺伝子のノックアウトマウスである。本発明マウスは、ゲノム中に、配列番号1の塩基番号6145〜6250で表される塩基配列を含んでいることを特徴とする、ビクニン遺伝子のノックアウトマウスあることが好ましい。このマウスは、ビクニン遺伝子の発現を完全に欠いているか(ビクニン欠損ホモタイプ(-/-);以下単に「(-/-)」と略記する)、または当該遺伝子の発現量が低下しており(ビクニン欠損ヘテロタイプ(+/-);以下単に「(+/-)」と略記する)、かつ配列番号1の塩基番号6145〜6250で表される塩基配列を含んでいる点が特徴である。
【0019】
また本発明マウスはさらに、ビクニン遺伝子に隣接するα―1―ミクログロブリン遺伝子が正常に保持されているものが好ましく、このような本発明マウスを用いることにより、ビクニン特異的な機能解析を行うことができる。
【0020】
また本発明マウスは、さらに、相同染色体の両方に配列番号1の塩基番号6145〜6250で表される塩基配列を含んでいるもの((-/-))が好ましく、これによりビクニン遺伝子の発現を完全に欠いたマウスとすることができる。またこのようなマウスが雌性マウス、特に(-/-)の雌マウスの場合には、妊娠率が顕著に低いことが明らかになったことから、このような本発明マウスを不妊のモデルマウスとすることができ、これにより本発明モデルマウスが提供される。
【0021】
本発明マウスは、本発明ベクター等を用いて通常のノックアウトマウスの作出手法により作出することができ、その一具体例として後述の実施例に記載した方法を挙げることができる。一般的には、本発明ベクターをES細胞(胚性幹細胞)に導入し、本発明ベクターが組み込まれた細胞を選択し、これをマウスの胚に組み込み、キメラマウスを作出する手法が採用される。
【0022】
また、後述の実施例で説明する通り、(+/-)のマウス同士を掛け合わせて産まれる仔の遺伝子型を調べるとほぼメンデルの法則に従っており、雄雌の差もあまり見られないことから、このような掛け合わせによりほぼ一定の割合で本発明マウスの雌を作出することができ、またほぼ一定の割合で(-/-)の雌の本発明マウスを作出することができる。
【0023】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。しかしながら、これらにより本発明の技術的範囲が限定されるべきものではない。
<1>ターゲッティングベクターの構築
図1に示す通り、マウスゲノムDNAライブラリーからクローニングされ、エキソン5、エキソン6およびエキソン7を含むプラスミドベクターから、エキソン7にあるビクニンの7位セリン残基をコードするヌクレオチド 2塩基(AG)を 3塩基(CGC)に置換したミュータントを、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社)を用いて作製し、同時にその部分に制限酵素(Eco47III)切断サイトを創製した。そしてその切断サイトをEco47IIIで処理し、HpaIで切断した終止コドンを含むSV40 poly Aシグナルを持ち、さらにその下流に陽性マーカーである抗生物質耐性能を示すネオマイシン耐性遺伝子(neo)を含んだDNAカセットを結合させた。なお、ターゲッティングベクター構築のための基本ベクターには、ブルースクリプトIISK+プラスミドベクター(pBluescript II SK+:ストラタジーン社製)を用いた。
【0024】
上記の方法で得たミュータントプラスミドベクターは、ターゲッティング位置(エキソン7)から上流がエキソン5および6を含む約4.4kb であったが、ターゲッティングベクターのロングアームとしては短いと考えられたため、別途マウスゲノムDNAからPCRによってエキソン3およびエキソン4領域を含むDNAフラグメントを作製し、ブルースクリプトIIクローニングベクターでサブクローニングした後、上記ミュータントベクターとXbaIサイトで結合させて、上流約6kbのロングアームを持つミュータントプラスミドベクターとした。
【0025】
なお、PCRで得られたDNAフラグメントについては、シークエンシングによりエキソン3及びエキソン4の配列に変異がないことを確認した。
【0026】
ショートアームとしては、マウスゲノムDNAクローンからサブクローニングしたプラスミドDNAから、制限酵素EcoRIおよびPvuIIを使って、エキソン9および10を含む約1.8kbのDNAフラグメントを切り出し、ブルースクリプトIIクローニングベクターにサブクローニングした後、ベクターのSalIサイトで、上記ミュータントプラスミドベクターの neo遺伝子の下流に結合させた。最終的に制限酵素ClaIとSalIで切り出したもの(配列番号1)を、陰性マーカーとしてチミジンキナーゼ遺伝子(tk)を含んだDNAカセットを持つベクター(pBSII2SX neo/tk)のClaIおよびSalIサイトの間に挿入して、目的のビクニン特異的ターゲッティングベクター(コンストラクト)を構築した(図2;Target Construct)。
【0027】
<2>ES細胞の樹立
上記のコンストラクトを、ES細胞(E14)にBioRad Gene Pulser IIを用いてエレクトロポレーションした。すなわち、まず上記ターゲッティングベクターをPvuIで切断して線状化したDNAをフェノール/クロロホルムで処理後、エタノール沈殿し、遠心後、沈殿を70%エタノールで洗浄して乾燥させた。この乾燥物をTE緩衝液(10mM Tris-HCl(pH8.0)/1 mM EDTA)を用いて 1μg/μlとなるように溶解し、プラスミド溶液とした。
【0028】
また、前日に培養液を交換しておいたES細胞をトリプシン処理によって培養皿から剥離して、トリプシン処理とピペッティングにより細胞を単細胞として遊離させ、細胞数をカウント後、ES細胞をリン酸緩衝生理的食塩水(PBS(-))で洗浄して、5×107個/mlとなるようにPBS(-)に浮遊させた。
【0029】
この細胞浮遊液 0.7 mlを、前記プラスミド溶液30μlと混合した後、エレクトロポレーション用ディスポーザブルキュベット内に移し、室温で5分間放置した。その後、細胞に電気パルス(250V、500μF)を加えた。室温で5分間放置後、30mlのES培地を添加して(1.2×106 個/ml)、これを予めフィーダー細胞をまいてあり、9mlのES培地が入った100mm径の培養皿に3ml(3.5×106 個)の細胞をまいた。
【0030】
24時間後からG418(200μg/ml)を含む培地を用いて陽性選択を開始した。また3日後、さらにガンシクロビルを終濃度2μMとなるように加えて、陰性選択を開始した。
9日目から顕微鏡下で培養中のES細胞を観察して、400個のコロニーを採取した。それらのコロニーから、後述するPCR法及びサザンハイブリダイゼーション法により、9個のクローンを相同組み換え体として選択した。
【0031】
<3>ノックアウトマウスの作成
上記で得られた相同組換えES細胞(#162)を、凝集法によってマウス(C57BL/6)の8細胞胚に組み込み、キメラマウスを作出した。得られたキメラマウス(雄4匹)を雌C57BL/6マウスと交配させ、産まれた仔マウス(F1)の尾先端から抽出したDNAを後述のPCR法およびサザンハイブリダイジェーション法により調査して、(+/-)のマウスを選択した。そのヘテロマウス同士を交配させて、(-/-)のマウスを作成した。
【0032】
<4>PCR法によるビクニン欠損遺伝子の同定
コロニーを形成したES細胞、あるいは仔マウスの尾先端部からDNAを抽出して、分析に用いた。
【0033】
正常なビクニン遺伝子(ワイルドタイプ、Bik+)の同定には、エキソン7領域の正方向(Forward)配列 mL-C6(配列番号2)と、エキソン8領域の逆方向(Reverse)配列 mL-C9(配列番号3)を一次プライマーとしてGene Amp PCR System 9600(パーキンエルマー社)を用いて、以下の条件でPCR反応を行った。すなわち、95℃で5分間保持した後、95℃の変性30秒、54℃のアニーリング45秒および72℃の伸長反応2分間からなるサイクルを25回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。得られた一次PCR反応液を再度、より内側に位置するエキソン7領域の正方向配列 mL-C7(配列番号4)およびエキソン8領域の逆方向配列 mL-C8 (配列番号5)を2次プラーマートしてネスティングPCRを行った。反応条件は95℃で5分間保持した後、95℃の変性30秒、56℃のアニーリング45秒および72℃の伸長反応2分間からなるサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。
【0034】
また、相同組換えが起こった(Bik-)遺伝子の同定には、neo領域の正方向
(Forward)配列 neo1(配列番号6)と、相同組換え配列の外側下流のPvuIIサイトで挟まれたイントロン領域の逆方向(Reverse)配列 mL-C41(配列番号7)を一次プライマーとしてGene Amp PCR System 9600(パーキンエルマー社)を用いて、以下の条件でPCR反応を行った。すなわち、95℃で5分間保持した後、95℃の変性30秒、54℃のアニーリング45秒および72℃の伸長反応2分間からなるサイクルを25回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。得られた一次PCR反応液を再度、より内側に位置するneo領域の正方向配列 neo7(配列番号8)および下流イントロン領域の逆方向配列 mL-C40 (配列番号9)を2次プライマーとしてネスティングPCRを行った。反応条件は95℃で5分間保持した後、95℃の変性30秒、56℃のアニーリング45秒および72℃の伸長反応2分間からなるサイクルを30回繰り返し、最後に72℃で5分間伸長反応を行った。
【0035】
2回目のPCR反応液をアガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウムブロマイドで染色して紫外線によりバンドを検出した。Bik+のプライマーセットで増幅された約1kbのDNA断片はワイルドタイプ(+/+)とヘテロタイプ(+/-)に現れ、Bik-のプライマーセットで増幅された約1.8kb のDNA断片はホモタイプ(-/-)とヘテロタイプ(+/-)に現れた。
【0036】
<5>サザンハイブリダイジェーション法によるビクニン欠損遺伝子の同定
コロニーを形成したES細胞あるいは仔マウスの尾先端部からDNAを抽出して、分析に用いた。該DNA を制限酵素 BalI, BamHIあるいはKpnI で37℃18時間消化した後、1%アガロースゲル電気泳動を行い分離したDNA 断片をニトロセルロース膜に常法に従って転写した。ビクニン染色体遺伝子のさらに下流域に含まれるPvuII切断サイトに挟まれたDNA断片(0.7kbp)をプローブ1とし、ターゲッティングベクターのneo遺伝子領域にあたるDNA断片(0.8kbp)をプローブ2とした。それぞれのプローブを常法に従ってラベルし、上記ニトロセルロース膜上の転写DNA断片にハイブリダイズさせた。当該ニトロセルロース膜を充分に洗浄後、オートラジオグラフィーによって生じたバンドを検出した。
【0037】
その結果、BalIで消化したDNA断片ではワイルドタイプ(正常細胞および正常マウス)で6.6kbのバンドがプローブ1でハイブリダイズしたとき観察されたのに対し、組換え体細胞やF1のヘテロタイプではプローブ1で新たに3.7kbのバンドが現れ、プローブ2では3.7kbとともに2.9kbのバンドが観察された。また、BomH1消化断片に対し、プローブ1でハイブリダイズすると、ワイルドタイプで11.3kbのバンドのみが観察され、組換え体では10kbのバンドが新たに現れた。KpnI消化断片に置いてプローブ1でハイブリダイズすると、ワイルドタイプでは12.9kbのバンドのみが見え、ヘテロタイプでは12.9kbに加え 4.8kbのバンドが観測され、ホモタイプ(-/-)では4.8kbのみのバンドが観測された。
これらの結果から、得られた組換え体は目的の通りビクニン染色体遺伝子の位置にターゲッティングベクターが組み込まれたことが示された。
【0038】
<6>RT-PCRによるmRNAの発現解析
ビクニンノックアウトに伴い関連する分子の転写状況を調べるために、RT-PCRを行った。下表のプライマーセットを用いて行った。
【0039】
(-/-)マウスでは全くバンドが見られないことから、ビクニンmRNAは発現していないと考えられる。これに対し、(+/-)マウスやワイルドタイプ(+/+)では該当するバンドが見られたことから、ビクニンmRNAの発現は正常であると考えられる。
【0040】
ITIのもう一方の成分であるHC1、HC2 のmRNAはビクニン欠失に関わらず正常と同様な発現を維持していた。α-1-ミクログロブリン(α-1-M)はヘテロマウスで正常(ワイルド)と同等のmRNAの発現が見られたが、ホモマウスでは若干の減少が見られたものの、mRNAの発現は確実に確認できた。
以下に、mRNAの発現解析の際に用いたプライマーを示す。
【0041】
Figure 0004565531
【0042】
<7>ノーザンブロッティングによるmRNA発現の確認
ビクニンとα-1-ミクログロブリンのmRNAの発現を更に詳しく調べるために、ビクニンcDNAとα-1-ミクログロブリンcDNAをプローブとして、ノーザンブロッティングを行った。ワイルドタイプ(+/+)ではビクニンプローブでもα-1-ミクログロブリンプローブを使っても、α-1-ミクログロブリン/ビクニン前駆体のmRNAがハイブリダイズされ、(+/-)マウスでは量は少ないものの同じ位置にハイブリダイズされた。しかし、(-/-)マウスではビクニンプローブとはハイブリダイズせず、α-1-ミクログロブリンプローブでハイブリダイズするとより低分子のバンドが現れた。これはターゲッティングベクター構築の際作成したミュータント配列に対応したα-1-ミクログロブリンと切断サイトを介したビクニンN-末端短縮配列に相当すると思われる。
【0043】
<8>ウエスタンブロッティングによる蛋白質発現の確認
蛋白質レベルでのITIの発現を調べるために、抗UTI抗体を使用してウエスタンブロッティングを行った。ワイルドタイプ(+/+)および(+/-)マウスでは、ITIに相当する230kDのバンドと、PαI(プレ-α-トリプシンインヒビター)に相当する130kDのバンドが見られたのに対し、(-/-)マウスでは全くITIファミリーの形成は見られなかった。
【0044】
また、α-1-ミクログロブリン蛋白質の発現は、抗α-1-ミクログロブリン抗体を使って調べたところ、ワイルドタイプ(+/+)でも(+/-)および(-/-)マウスでも、変わらず同じパターンで成熟α-1-ミクログロブリン由来のバンドが見られた。これは、α-1-ミクログロブリン前駆体の蛋白質翻訳がすべて正常に行われていることに加え、切断酵素による成熟蛋白質の形成をも正常に行われていることを示唆するものである。
【0045】
<9>ビクニン遺伝子ノックアウトマウスの解析
(+/-)マウス同士を掛け合わせて産まれる仔の遺伝子型を調べるとほぼメンデルの法則に従って生まれ、雄雌の差もあまり見られなかった(表1)。
【0046】
【表1】
表1
Figure 0004565531
【0047】
また、(-/-)マウスは雄雌とも正常に生まれ、成長にも異常は見られなかった。膣垢で見た性周期と交尾行動も正常であった。
ところが、(-/-)の雌マウスを交配させると、雄の遺伝子型に関わらず妊娠率が顕著に低く、(-/-)の雌マウスでは平均8匹の仔が生まれるのに対し、生まれないマウスが多く、もし生まれても1匹から2匹程度であった。雄の(-/-)マウスではそのような傾向は見られず、(-/-)の雌マウスに特異的であった(表2)。
【0048】
【表2】
表2
Figure 0004565531
【0049】
受精5日目の子宮内を観察すると、ワイルドタイプ(+/+)のマウスや(+/-)の妊娠マウスでは、7ないし10個の胚が並んでいるのに対し、(-/-)の雌マウスは1個ないし2個の胚しか見られなかった。しかしその胚自体は正常な胚と変わりなく、成長していた。また出生した仔マウスは、そのままでは2〜3日で死亡するが、(+/-)マウスから生まれた(-/-)マウスは正常に発育することや、代理親につけると正常に発育するので、(-/-)母マウスの育児行動が問題と考えられる。交尾を行った(-/-)の雌マウスの輸卵管を調べてみると、受精卵は存在するが、排卵の数が少なく、卵細胞の周りの卵丘(cumulus oophorus)の形成がほとんど見られなかった。卵細胞自身は正常と思われるが、その卵細胞の回りのヒアルロン酸リッチマトリックスが極端に少ないためと考えられ、ビクニン欠損のために、ITIファミリーが作られず、その結果SHAP-HA複合体が形成されないこととの関連が示唆される。
【0050】
【発明の効果】
本発明DNAはビクニン遺伝子のターゲッティングに有用である。また本マウスはビクニン遺伝子のみが欠損しており、ビクニン遺伝子に隣接するα-1-ミクログロブリン遺伝子は正常なまま完全に維持されていることから、ビクニンやビクニン遺伝子の機能解析等に極めて有用である。また本発明モデルマウスは、不妊症のモデルマウスとして極めて有用である。
【0051】
【配列表】
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531
Figure 0004565531

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明DNAにおいて、変異が導入された部位を示す図である。
【図2】 本発明DNAの構成の概略を示す図である。

Claims (2)

  1. 以下の(1)〜(4)のすべての特徴を有する不妊のモデルマウス;
    (1)ビクニン遺伝子のノックアウトマウスである、
    (2)ゲノム中のAMBP遺伝子のエキソン7に相当する部分をノックアウトしている、
    (3)相同染色体の両方に配列番号1の塩基番号6145〜6250で表される塩基配列を含んでいる、
    (4)雌性マウスである。
  2. α−1−ミクログロブリン遺伝子が正常に保持されていることを特徴とする、請求項1に記載のモデルマウス。
JP2000266261A 2000-09-01 2000-09-01 ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna Expired - Fee Related JP4565531B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000266261A JP4565531B2 (ja) 2000-09-01 2000-09-01 ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000266261A JP4565531B2 (ja) 2000-09-01 2000-09-01 ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002065281A JP2002065281A (ja) 2002-03-05
JP4565531B2 true JP4565531B2 (ja) 2010-10-20

Family

ID=18753385

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000266261A Expired - Fee Related JP4565531B2 (ja) 2000-09-01 2000-09-01 ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4565531B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005168385A (ja) * 2003-12-10 2005-06-30 Seikagaku Kogyo Co Ltd ノックアウトマウスを用いた炎症惹起物質のスクリーニング方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05308988A (ja) * 1992-05-12 1993-11-22 Mochida Pharmaceut Co Ltd 新規ポリペプチド、新規dna、新規ベクター、新規形質転換体、新規医薬組成物、および新規ポリペプチドの製造方法
WO1998056916A1 (de) * 1997-06-13 1998-12-17 Bayer Aktiengesellschaft Aprotininvarianten mit verbesserten eigenschaften und bikunine von aprotininvarianten
WO2001001766A1 (fr) * 1999-06-30 2001-01-11 Mochida Pharmaceutical Co., Ltd. Animal dont la fonction du gene uti est defectueuse

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05308988A (ja) * 1992-05-12 1993-11-22 Mochida Pharmaceut Co Ltd 新規ポリペプチド、新規dna、新規ベクター、新規形質転換体、新規医薬組成物、および新規ポリペプチドの製造方法
WO1998056916A1 (de) * 1997-06-13 1998-12-17 Bayer Aktiengesellschaft Aprotininvarianten mit verbesserten eigenschaften und bikunine von aprotininvarianten
WO2001001766A1 (fr) * 1999-06-30 2001-01-11 Mochida Pharmaceutical Co., Ltd. Animal dont la fonction du gene uti est defectueuse

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002065281A (ja) 2002-03-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH09500534A (ja) トランスジェニック動物でのヒトインターロイキン―1βの発現
KR20040015711A (ko) 약물학적 및 독성학적 연구용 트랜스제닉 비인간 동물
WO2020240876A1 (ja) エクソンヒト化マウス
JP4565531B2 (ja) ビクニン遺伝子のターゲッティング用dna
CN114591957B (zh) 一种重症a型血友病动物模型的构建方法及其应用
US6284944B1 (en) Gene-targeted non-human mammal with a human fad presenilin mutation and generational offspring
WO1993019166A1 (en) Small animal model for studying cholesterol metabolism
AU700224B2 (en) Alpha-lactalbumin gene constructs
AU712016B2 (en) Ikaros transgenic cells and animals
US7449562B2 (en) PERV screening method and use thereof
EP1208200B1 (en) Transgenic animal model for neurodegenerative diseases
AU2001245843A1 (en) Transgenic mice containing targeted gene disruptions
AU7871300A (en) Atp-binding cassette transporter (abc1) modified transgenic mice
EP1263985A2 (en) Methods for amplifying genetic material and uses thereof
JPH10507637A (ja) インターロイキン−1β欠損トランスジェニック動物
WO2007097509A1 (en) Production method of cyst expressed transgenic animal using pkd2 gene
JP4303907B2 (ja) ラディキシンノックアウト動物
CN116323651A (zh) 表达人cr1的啮齿动物
JP2005058162A (ja) ノックアウト動物
WO2005037994A2 (en) Transgenic rodents selectively expressing human b1 bradykinin receptor protein
JP2010011854A (ja) ノックアウト動物
JP2003339273A (ja) カテプシン関連遺伝子改変非ヒト哺乳動物
JP2004105051A (ja) 部位特異的突然変異導入法
KR20050022811A (ko) 여윈 표현형을 갖는 유전자 이식 생쥐

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070531

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100512

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100712

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100728

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100730

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130813

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees