JP4565142B2 - 試料の組織を映像化する為の観察面処理方法 - Google Patents

試料の組織を映像化する為の観察面処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4565142B2
JP4565142B2 JP2004219684A JP2004219684A JP4565142B2 JP 4565142 B2 JP4565142 B2 JP 4565142B2 JP 2004219684 A JP2004219684 A JP 2004219684A JP 2004219684 A JP2004219684 A JP 2004219684A JP 4565142 B2 JP4565142 B2 JP 4565142B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fine
polishing
mechanical polishing
electron image
carbon steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004219684A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005062173A (ja
JP2005062173A5 (ja
Inventor
嘉則 小野
正夫 早川
三郎 松岡
佳之 古谷
恵 木村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute for Materials Science
Original Assignee
National Institute for Materials Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute for Materials Science filed Critical National Institute for Materials Science
Priority to JP2004219684A priority Critical patent/JP4565142B2/ja
Publication of JP2005062173A publication Critical patent/JP2005062173A/ja
Publication of JP2005062173A5 publication Critical patent/JP2005062173A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4565142B2 publication Critical patent/JP4565142B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)
  • Sampling And Sample Adjustment (AREA)

Description

この出願の発明は、走査型電子顕微鏡(SEM)または背面電子散乱パターン(EBSP)計測により試料の組織を映像化する為の観察面処理方法に関するものである。
鉄鋼材料は多くの機械・構造物に用いられており、社会インフラを支える基幹材料であるため、その特性にはトータル・エネルギー負荷の低減化のための軽量化すなわち高強度化と、希少元素を用いないリサイクルの容易性が要求されている。
この出願の発明者らも、鋼の高性能化のために、希少元素を用いないリサイクルの容易性を保ちつつ、鋼の高強度・長寿命化を目指して検討を進めている。しかしながら、高強度鋼として一般に知られる中高炭素鋼の焼もどしマルテンサイト組織では、疲労や遅れ破壊が高強度化の阻害因子となっており、それらの破壊現象を克服しない限り、マルテンサイトの特性を十分に使いこなしているとは言えない。マルテンサイト組織は、大きな順から旧オーステナイト粒、パケット、ブロック、ラスから構成される階層構造である。この内、旧オーステナイト粒界、パケット境界、ブロック境界が大角粒界で、最小単位のブロックが強度を支配する有効結晶粒である。含有炭素量が多くなると、マルテンサイト組織は微細になり、有効結晶粒であるブロックサイズは1μm以下となるために、ブロック及びラスの組織解析は容易ではない。このように組織の実態を明確にできないことが、マルテンサイト鋼の疲労や遅れ破壊メカニズム解明の障害となっている。
また近年、結晶粒1μm以下のフェライト微細粒鋼が実験室レベルのみではなく、生産現場においても量産できるプロセス技術が確立されるに至って、フェライト微細粒鋼は、希少元素を用いずに高強度化するジレンマを解決できる新しい材料として注目されている。結晶粒の微細化によって金属が高強度化することは、結晶粒界に集積する転位モデルによって導き出されたホール・ペッチ則で理論的に説明されている。従って、フェライト微細粒鋼の特性評価にとって、結晶粒径の分布を把握することは極めて重要である。
以上のような課題に対応するためにも1μm以下の超微細組織の観察は欠かせないものとなっているが、現状においてはこのことは容易ではない。それと言うのも、1μm以下の有効結晶粒の測定には、通常の金属組織の観察手段である光学顕微鏡では困難であるために、透過型電子顕微鏡(TEM)やSEM が用いられる(たとえば、非特許文献1を参照)。しかし、TEM観察のためには、サンプルを薄膜化する過程が必要であることに加え、観察視野が狭いという問題点がある。また、SEM観察には、通常ナイタールやピクラール等の化学腐食面が用いられるが、1μm以下の微細粒組織では、化学腐食によって
導入される表面凹凸のために明瞭な組織像を得ることが難しい。特に、高強度化・高靱化を図るために析出物(第二相粒子)を分散・析出した微細複相材料では、析出物に母地組織が覆われるために結晶粒の映像化が困難である。
「Ultrafine Grained Materials」(The Minerals , Metals and Materials Society , 2000) p.247-254
この出願の発明は、上記の背景を踏まえてなされたものである。TEM観察のためには、サンプルを薄膜化する過程が必要であることに加え、観察視野が狭いという問題点がある。また、SEM観察には、通常ナイタールやピクラール等の化学腐食面が用いられるが、1μm以下の微細粒組織では、化学腐食によって導入された表面凹凸のために明瞭な組織像を得ることが難しい。特に、高強度化・高靱化を図るために析出物(第二相粒子)を分散・析出した微細複相材料では、析出物に母地組織が覆われるために微細結晶粒組織の映像化が困難である。この出願の発明は、このような従来技術の問題点を解消し、微細結晶粒に析出物が分散・析出した微細複相材料に対して、析出物の影響を受けることなく、結晶粒を明瞭かつ簡便に映像化観察することのできる、観察面処理方法を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、前記試料の観察面を化学研磨と機械研磨とを同時に行って表面高低差50nm以下とすることを特徴とする。
上記のとおりのこの出願の発明によって、第二相粒子を分散・析出した微細複相鉄鋼材料の組織を、第二相粒子の影響を取り除いて、明瞭かつ簡便に映像化可能とする。この方法によれば、化学研磨と機械研磨を同時に行なう表面処理方法によって、表面歪が導入されないように高低差50nm以下に平滑化した表面を作製し、その平滑面を用いることでサンプルを薄膜化することなくバルク材のままで、第二相粒子を分散・析出した材料の微細結晶粒のみを明瞭に映像化することが可能となる。
この出願の発明は上記のとおりの特徴を有するものであり、以下にその実施の形態について説明する。
この出願の発明においては、その対象は、金属材料であって、第二相粒子を有しない材料では、組織の映像化は従来技術でも可能であるので、第二相粒子を有する微細複相の鉄鋼等の材料に限定している。また、表面高低差は50nm以下に限定している。表面高低差の下限は数原子レベル(約1nm)程度である。表面高低差がこの範囲であると、第二相粒子を有する微細複相組織の明瞭な映像化が可能となる。
化学研磨と機械研磨を同時に行なう表面処理(以下、化学機械研磨とも称する)により実現した平滑面を用いた結晶粒映像化方法について説明する。まず、この出願の発明で用いる化学機械研磨について述べる。化学機械研磨とは、研磨粒子を含む化学研磨液を研磨布に染み込ませ、被研磨体を研磨ヘッドで圧力を加え、研磨布に対して相対的に移動させて研磨を行う方法である。化学研磨液に含ませる研磨粒子としては、二酸化けい素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、硝酸アルミニウム等を用いることができる。これらの研磨粒子は、通常の機械研磨用に市販されているものでよい。化学研磨液の主成分は水であるが、それに二酸化けい素や酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を混合させて、酸性からアルカリ性まで種々のものを用いることができる。好ましい化学研磨液は被研磨体の種類により異なり、後述の実施例の場合には二酸化けい素を水に含有させた化学研磨液の使用が望ましい。この表面処理を行う場合、単結晶材料では、時間に依存して平滑化が進行するので、所定の平滑度に達するまでの処理時間を設定すればよい。しかし、結晶粒界あるいは析出物を有する微細複相金属では、処理時間が短すぎると平滑化が不十分となる。逆に処理時間が長すぎると結晶粒界あるいは析出物が選択的に腐食され、そこに研磨粒子が入り込むために平滑化できない。従って、複相組織を有する金属に対しては、最適な研磨時間が存在する。たとえば、焼もどしマルテンサイト鋼やフェライト微細粒鋼を化学機械研磨処理する場合においては、10分では表面凹凸を消すことができないが、1時間では選択腐食された粒界に研磨粒子が入り込み、表面が白く濁って見える。表面の凹凸が消えて、平滑面が得られる最適時間は20分〜40分程度である。
1μm以下の組織の表面観察にはSEMが用いられる。SEMには二次電子像と反射電子像の2種類の観察モードが存在する。二次電子像は、大部分が試料表面形状によってコントラストが形成されるために、表面形状の凹凸を解析するのに用いられる。一方、反射電子像は、試料の組成、表面の凹凸、結晶性、磁性などによりコントラストが形成されるために、化学組成や結晶性の違いによるコントラストの差を強調する場合に用いられる。
ただ、反射電子像は二次電子像に比べて分解能が劣るのに加え、試料自身には組成の違いと共に、試料表面の凹凸が混在しているので、単純に化学組成や結晶性の違いを抽出できない。
一般にSEM観察では、垂直分解能が水平分解能に比べて1/5程度劣るため、ミクロンオーダーの微細組織に対しては、微細組織に対応した適切な表面凹凸がなければ、微細組織の判別ができないと言われている。そのため、ミクロンオーダーの微細組織を有する金属組織の観察には、化学腐食処理を施し、析出物等の結晶相あるいは結晶方位に依存した表面高低差を利用して、微細組織を判別している。一方、この出願の発明では、その常識に反して、微細組織を有する材料に対して、SEMの垂直分解能では表面凹凸が捉えられない極めて平滑な表面を用いてSEM観察を行うことで、微細組織の観察を可能としている。
従来技術に関して補足説明すると、結晶粒径が20μmを超えるようなフェライト鋼やステンレス鋼あるいはインコネル等の高合金では、化学腐食を施すまでも無く、機械研磨による鏡面仕上げ面を用いて、結晶方位に依存した反射電子像のコントラストを得ることが可能である。しかし、結晶粒径1μm以下で第二相粒子を分散・析出させた微細複相鉄鋼材料においては、結晶粒の大きさが機械研磨による表面凹凸と歪が導入される範囲の大きさと同程度かそれ以下のサイズなので、上記の従来技術法を用いても、結晶粒を映像化することはできない。
この出願の発明においては、第二相粒子を分散・析出させた結晶粒径1μm程度以下の微細複相組織材料を対象とした化学機械研磨によって、試料全面に渡って表面高低差50nm以下の極めて平滑な表面を作製できることにより、通常の化学腐食面あるいは電解研磨面上では不可能であった第二相粒子に覆われた母地の結晶粒のみを映像化することが可能である。これにより、焼もどしマルテンサイト鋼の疲労や遅れ破壊を防止する組織設計指針の確立、及び結晶粒を微細化することによって発現される高強度化・高靱化のメカニズム解明を進めることが可能となり、マルテンサイト鋼の高性能化及び超微細粒鋼の実構造物への適用が加速される。
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
中炭素鋼の焼もどしマルテンサイト組織(実施例1)と、溝ロール圧延により強加工を施し、結晶粒を微細化した低炭素鋼と中炭素鋼のフェライト微細粒組織(実施例2)との2種類のものに対して、この出願の発明による組織の映像化方法を実施した。
(実施例1)
実施例1として、階層構造を有する微細で複雑な中炭素鋼の焼もどしマルテンサイト組織に対して、この出願の発明による組織の映像化方法を実施した。その詳細は以下のとおりである。
マルテンサイト組織は、図1の模式図に示すとおり、大きい順から旧オーステナイト粒、パケット、ブロック、ラスから構成される階層構造である。通常、このような組織を観察するためには、機械研磨による鏡面仕上げ面、化学腐食面、電解研磨面が用いられる。
一方、この実施例では、化学研磨と機械研磨を同時に行なう表面処理(化学機械研磨)を適用した。微細複相組織を有する材料では、化学機械研磨処理時間が短いと表面を平滑化できない反面、処理時間が長すぎると粒界や第二相粒子が選択的に腐食されるか、通常の機械研磨面と同じように研磨剤による研磨痕が残るために平滑面が得られない。すなわち、微細複相材料においては化学機械研磨の最適時間が存在する。この実施例での最適処理時間は30分であった。
平滑化した化学機械研磨面における組織の映像結果を示す前に、まず表面研磨処理による表面仕上り状態を確認した。0.4mass%炭素を含有したJIS−SCM440中炭素鋼を723Kで焼もどし、その試料についてマルテンサイト組織に対する機械研磨面、化学腐食面、電解研磨面、化学機械研磨面の原子間力顕微鏡(AFM)観察と断面プロファイルの測定を行った。その結果を以下に説明する。なお、機械研磨はエメリー紙による粗研磨後、粒子径が1μmのダイヤモンド粒子によって行った。化学腐食は5%ナイタールで10秒間行った。電解研磨は8vol.%過塩素酸、10vol.% ブトキシエタノール、70vol.%エタノール、12vol.%蒸留水の溶液により行った。化学機械研磨は二酸化けい素を水に含有させた化学研磨液により行った。
図2には、機械研磨による鏡面仕上げ面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−50nm〜50nm)並びに断面模式図を示した。この図2から明らかなように、研磨粒子による研磨痕に表面が覆われているために、表面形状からは組織を全く識別することができない。断面は研磨粒子による研磨痕のために鋸状になっていることがわかる。また、機械研磨により表面歪層が導入されており、その深さは1μm 程度と考えられる。
図3には、ナイタールによる化学腐食面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−100nm〜100nm)並びに断面模式図を示した。図3によれば、化学腐食によって、結晶相と結晶方位に依存して表面高低差が形成されるために、炭化物とブロックが識別できることがわかる。しかし、断面プロファイルからわかるように、表面高低差が炭化物やブロックに比べて大きいために鮮明なAFM像が得られない。
このような化学腐食処理に対して、結晶相及び結晶方位に依存した表面凹凸を小さくできる研磨方法として電解研磨が知られている。図4には、電解研磨面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−50nm〜50nm)並びに断面模式図を示した。電解研磨速度は、結晶相と結晶方位に依存するために、組織を反映した表面凹凸が形成される。ただし、断面プロファイルからわかるように、形成される表面高低差が小さいために、AFM像上において炭化物と大角粒界を有するブロックを明瞭に識別することができる。しかし、方位差角が小さい小角(3°以下)のラスは、電解研磨速度差による表面高低の違いからは捉えることができない。
図5は、化学機械研磨面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−10nm〜10nm)並びに断面模式図を示したものである。化学機械研磨面では表面高低差10nm以下の平滑な表面が得られている。断面プロファイルからわかるように、化学機械研磨面では電解研磨面より表面高低差が小さいために、AFMでも炭化物や組織の判別は困難である。また、研磨粒子による研磨痕が認められないことから研磨による表面歪が導入されていないことがわかる。
以上のAFM像を用いた各種研磨法による表面仕上り状態の観察の結果より、AFMによる組織観察には電解研磨面が最適であり、ブロックを鮮明に映像化できるが、小角粒界を有するラスを映像化することはできないことが判明した。
一方、通常の組織観察では、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる。しかし、光学顕微鏡の分解能では、1μm以下の組織の観察は困難である。そこで、SEMを用いた各種研磨面上における組織映像化について以下に説明する。
結晶粒径20μmを超えるフェライト鋼やステンレス鋼並びにインコネル等の高合金では、化学腐食を施すまでも無く、機械研磨による鏡面仕上げ面においてSEMの反射電子像で結晶粒を映像化できることが知られている。しかし、図6に示したように、機械研磨面では、微細組織を有する中炭素鋼の焼もどしマルテンサイト組織の映像化は全く不可能である。
また、通常、20μm以下の微細組織のSEM観察においては、化学腐食面が用いられる。図7にナイタールによる化学腐食面の二次電子像を示したように、反射電子像では分解能が劣るために微細炭化物の判別が容易でないのに対して、二次電子像では表面より突出ているために白く見える微細な炭化物粒子の判別が可能である。しかし、ナイタールエッチングにより導入される表面凹凸が大きいため、微細なブロック、ラス等の母地組織を明瞭に映像化することが二次電子像、反射電子像共に困難である。
化学腐食処理に対して、電解研磨では結晶相及び結晶方位に依存した表面凹凸を小さくできることが知られている。図8と図9は、電解研磨面の二次電子像と反射電子像をそれぞれに示したものである。図8から、二次電子像では析出物を明瞭に判別することはできるが、SEMの垂直分解能はAFMに比べて劣るためにブロックは鮮明ではないことがわかる。また、図9の反射電子像において、炭化物に覆われていない一部の領域ではラスの方位差に依存したコントラストの違いが見えかかっているものの、大部分の領域では炭化物が表面から突出ているので障害となって、ラスを映像化することは困難である。
以上のSEM観察結果より、母地組織(ラス)の映像化の阻害因子は、研磨による表面歪と表面から突出ている炭化物であることが確認される。
以上の検討の結果を踏まえて、化学機械研磨面の二次電子像と反射電子像について評価を行った。図10、図11および12はそれぞれ中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の化学機械研磨面の二次電子像及び反射電子像である。図10の二次電子像においては、形状像の他に結晶方位に依存する反射電子の成分が混じるために、ラスが見えている。更に図11および図12の反射電子像では結晶方位差に依存するコントラストが強調されるために、ラスを明瞭に識別することができる。これまで、ラスは幅0.1〜0.5μmと微細でなおかつ、同一ブロック内では方位差がほとんど無い小角粒界であるために、TEMでしか判別することができなかったが、TEMのようにサンプルを薄膜化する必要も無く、しかもSEMとおなじ広い視野でラスを観察できることは、微細で複雑なマルテンサイトの組織形態を解明する上で大きな利点である。
そして、化学機械研磨面は反射電子像のみならず、背面電子散乱パターン(EBSP)計測においても有効である。EBSP計測は通常機械研磨により導入された歪を取り除いた平滑な電解研磨面上において取得される。析出物の存在しない微細結晶粒においては電解研磨面上でのEBSP計測は全く問題がない。図13には、電解研磨面の同一場所におけるEBSPマッピングとAFM像を示した。電解研磨面上の表面から突出した多量の炭化物粒子が、母地の結晶方位に依存して放出される背面電子散乱の検出器への入射を邪魔するために、EBSP計測が困難になっている。これに対して、化学機械研磨面のEBSP計測は、図14に示したとおり、試料全面の多くの領域で可能であり、EBSP計測には電解研磨面を用いるよりも化学機械研磨面を用いる方が適していることがわかる。また、EBSP計測では結晶方位差の角度を求めることができるので、ラスとブロックを同一視野で識別することが可能である。
(実施例2)
実施例2では、図15の模式図に示すような組織構成が単純なフェライト微細粒組織に対して、この出願の発明を適用した。従って、実施例1の階層構造を有する複雑なマルテンサイト組織に適用する以上に、この出願の発明による結晶粒映像化の効果を明確に示すことができる。なお、機械研磨はエメリー紙による粗研磨後、粒子径が1μmのダイヤモンド粒子によって行った。化学腐食は5%ナイタールで10秒間行った。電解研磨は8vol.%過塩素酸、10vol.%ブトキシエタノール、70vol.%エタノール、12vol.%蒸留水の溶液により行った。化学機械研磨は二酸化けい素を水に含有させた化学研磨液により行った。
この実施例2では、0.15mass%と0.45mass%の炭素量を含有する低炭素鋼と中炭素鋼に対して、溝ロール圧延を繰返し行いながら大きな歪みを付与することによって、フェライト鋼微細粒組織を創製した。これらの低炭素鋼と中炭素鋼のフェライト微細粒組織に対して、化学腐食処理、電解研磨処理並びに化学機械研磨処理を施し、SEMを用いて組織の映像化を行った。以下にその結果を詳細に説明する。なお、機械研磨による鏡面仕上げ面においては、実施例1と同様にフェライト微細粒を全く判別することはできなかった。
図16には、低炭素鋼フェライト微細粒組織のナイタールエッチングによる化学腐食面の二次電子像と反射電子像をそれぞれ示した。この図16から明らかなように、二次電子像では白い粒状の炭化物粒子が無数に存在し、炭化物の存在しない領域においてもほとんど結晶粒を判別できない。反射電子像においても炭化物は小さく見えるが、ほとんど結晶粒を判別できない。このように結晶粒が映像化できない原因は主として二点ある。一つはナイタールエッチングにより導入される表面凹凸が微細結晶粒径より大きいことにより、結晶粒内もエッチングされて粒界が判別できなくなることであり、もう一つは第二相粒子である炭化物に表面が覆われて母地の結晶粒が隠れてしまうためである。特に後者は中炭素鋼において結晶粒を映像化する上で顕著な阻害要因である。
図17と図18には、各々、低炭素鋼と中炭素鋼フェライト微細粒組織の電解研磨面の二次電子像と反射電子像を示した。図17の低炭素鋼では炭化物の存在しない領域では結晶粒の方位に依存した表面高低差によって結晶粒を判別できるが、炭化物に覆われている領域では結晶粒を判別できない。同様に図18の中炭素鋼では視野の大部分が炭化物に覆われており、結晶粒の判別は低炭素鋼以上に困難である。
以上のように、フェライト微細粒組織では、機械研磨面、化学腐食面、電解研磨面において、炭化物に覆われた微細結晶粒を映像化することは困難であった。
一方、図19には、化学機械研磨面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−10nm〜10nm)を、中炭素鋼フェライト微細粒組織を代表例として示した。実施例1と同様に、化学機械研磨処理によって表面高低差10nm以下の極めて平滑な表面が得られており、低炭素鋼フェライト微細粒組織においても同様である。化学機械研磨面は平滑すぎるので微細組織に対応した表面凹凸像では、マルテンサイト組織と同様にAFMでは微細組織を識別できないことがわかる。
図20と21には、低炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面の二次電子像と反射電子像をそれぞれ示した。また図22と23には中炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面の二次電子像と反射電子像をそれぞれ示した。これらの図からわかるように、二次電子像では表面にわずかに突出ている炭化物と結晶粒が見えている。反射電子像では炭化物は捉えられなくなり、二次電子像より鮮明に結晶粒を識別することができる。また、中炭素鋼においても化学機械研磨面では結晶粒のみを鮮明に映像化している。結晶粒径の平均値は0.5μmで、粗大な結晶粒の無い均一な微細結晶粒組織が得られていることがわかる。
以上の結果より、第二相粒子を有する微細複相材料においては、従来では第二相粒子の影響を除いて微細結晶組織を明瞭に映像化することが困難であるのに対して、この出願の発明による表面高低差50nm以下の化学機械研磨面では簡便かつ明瞭に組織を映像化することが可能であることが確認される。従って、この出願の発明は、第二相粒子を有する微細複相材料の組織を評価する有効な方法であり、この出願の発明により、焼もどしマルテンサイト組織及び第二相粒子を有するフェライト鋼微細粒組織の高強度化・高靱化のメカニズム解明及び疲労や遅れ破壊のメカニズム解明が促進されるものと期待される。
以上説明したとおり、この出願の発明によって、従来では困難であったが、微細結晶粒に析出物が分散・析出した微細複相組織を有する鋼や合金等の材料に対して、析出物の影響を受けることなく、結晶粒を明瞭かつ簡便に映像化観察することができる。これによって、超微細粒鋼等の革新的材料の特性とその組織との関係等の評価が可能となり、新しい材料の創製に大きく貢献することになる。
階層構造を有するラスマルテンサイト組織の模式図である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の機械研磨による鏡面仕上げ面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−50nm〜50nm)並びに断面模式図である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織のナイタールによる化学腐食面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−100nm〜100nm)並びに断面模式図である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の電解研磨面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−50nm〜50nm)並びに断面模式図である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の化学機械研磨面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−10nm〜10nm)並びに断面模式図である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の機械研磨による鏡面仕上げ面の反射電子像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の化学腐食面の(a)低倍率と(b)高倍率の二次電子像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の電解研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の二次電子像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の電解研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の反射電子像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の化学機械研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の二次電子像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の化学機械研磨面の(a)低倍率と(b)中倍率の反射電子像である。 図11につづく(c)(d)高倍率の反射電子像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の電解研磨面の同一場所における(a)EBSPマッピングと(b)AFM像である。 中炭素鋼焼もどしマルテンサイト組織の化学機械研磨面のEBSPマッピングである。 フェライト鋼微細組織の模式図である。 低炭素鋼フェライト微細粒組織のナイタールによる化学腐食面の(a)二次電子像と(b)反射電子像である。 低炭素鋼フェライト微細粒組織の電解研磨面の(a)二次電子像と(b)反射電子像である。 中炭素鋼フェライト微細粒組織の電解研磨面の(a)二次電子像と(b)反射電子像である。 中炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面のAFM像と断面プロファイル(高さ表示:−10nm〜10nm)である。 低炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の二次電子像である。 低炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の反射電子像である。 中炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の二次電子像である。 中炭素鋼フェライト微細粒組織の化学機械研磨面の(a)低倍率と(b)高倍率の反射電子像である。

Claims (1)

  1. 走査型電子顕微鏡(SEM)または背面電子散乱パターン(EBSP)計測により、第二相粒子を分散・析出した微細複相鉄鋼材料試料の組織を映像化する為の観察面処理方法であって、前記試料の観察面を化学研磨と機械研磨とを同時に20分から40分間施して表面高低差50nm以下とすることを特徴とする観察面処理方法
JP2004219684A 2003-07-31 2004-07-28 試料の組織を映像化する為の観察面処理方法 Expired - Fee Related JP4565142B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004219684A JP4565142B2 (ja) 2003-07-31 2004-07-28 試料の組織を映像化する為の観察面処理方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003284142 2003-07-31
JP2004219684A JP4565142B2 (ja) 2003-07-31 2004-07-28 試料の組織を映像化する為の観察面処理方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005062173A JP2005062173A (ja) 2005-03-10
JP2005062173A5 JP2005062173A5 (ja) 2007-09-13
JP4565142B2 true JP4565142B2 (ja) 2010-10-20

Family

ID=34380251

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004219684A Expired - Fee Related JP4565142B2 (ja) 2003-07-31 2004-07-28 試料の組織を映像化する為の観察面処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4565142B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4797509B2 (ja) * 2005-08-22 2011-10-19 株式会社Ihi 破壊原因推定装置及び破壊原因推定方法
JP2007248390A (ja) * 2006-03-17 2007-09-27 Ihi Corp 破壊寿命評価装置
JP4612585B2 (ja) * 2006-05-24 2011-01-12 新日本製鐵株式会社 フェライト鋼板の変形組織の評価方法
JP5489488B2 (ja) * 2009-02-26 2014-05-14 京セラ株式会社 強誘電体試料観察方法
JP5994624B2 (ja) * 2011-12-21 2016-09-21 Jfeスチール株式会社 試料観察方法
JP5772647B2 (ja) * 2012-02-16 2015-09-02 新日鐵住金株式会社 薄片試料作製装置及び薄片試料作製方法
JP6380910B2 (ja) * 2014-08-29 2018-08-29 日産自動車株式会社 高強度ボルト用鋼及び高強度ボルト
WO2017149785A1 (en) * 2016-03-02 2017-09-08 Jfe Steel Corporation Method of visualizing austenite phase in multiphase steel and multiphase steel specimen for microstructure observation
CN106524957A (zh) * 2016-09-22 2017-03-22 武汉钢铁股份有限公司 珠光体团尺寸的测定方法
CN107290379A (zh) * 2017-06-23 2017-10-24 西安热工研究院有限公司 一种s30432锅炉管中马氏体组织的定量分析方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000310585A (ja) * 1999-04-27 2000-11-07 Nippon Steel Corp 透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料作製方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3302569B2 (ja) * 1996-07-09 2002-07-15 科学技術振興事業団 電子スピン偏極度の計測方法及びその装置
JP3750762B2 (ja) * 1997-01-17 2006-03-01 石川島播磨重工業株式会社 金属の疲労損傷度の評価法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000310585A (ja) * 1999-04-27 2000-11-07 Nippon Steel Corp 透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料作製方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005062173A (ja) 2005-03-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Jia et al. Microstructure, hardness and toughness of nanostructured and conventional WC-Co composites
Rigney et al. Low energy dislocation structures caused by sliding and by particle impact
Veprek et al. Composition, nanostructure and origin of the ultrahardness in nc-TiN/a-Si3N4/a-and nc-TiSi2 nanocomposites with HV= 80 to≥ 105 GPa
Wilkinson et al. High-resolution electron backscatter diffraction: an emerging tool for studying local deformation
JP4565142B2 (ja) 試料の組織を映像化する為の観察面処理方法
Fréchard et al. AFM and EBSD combined studies of plastic deformation in a duplex stainless steel
Castle et al. Characterization of surface topography by SEM and SFM: problems and solutions
JP2005062173A5 (ja)
Favero et al. Effect of the applied potential of the near surface microstructure of a 316L steel submitted to tribocorrosion in sulfuric acid
Tiley et al. Novel automatic electrochemical–mechanical polishing (ECMP) of metals for scanning electron microscopy
CN109959670A (zh) 采用电子背散射衍射技术测量双相钢中马氏体含量的方法
Lu et al. Potential application of electron work function in analyzing fracture toughness of materials
Montero-Ocampo et al. Effect of cold reduction on corrosion of carbon steel in aerated 3% sodium chloride
Li et al. Crack initiation and early growth behavior of TC4 titanium alloy under high cycle fatigue and very high cycle fatigue
Linz et al. Heterogeneous Strain Distribution and Saturation of Geometrically Necessary Dislocations in a Ferritic–Pearlitic Steel during Lubricated Sliding
Edwards et al. Characterization of U-Mo foils for AFIP-7
JP2005023313A (ja) 研磨用組成物および研磨方法
Höring et al. Characterization of reverted austenite during prolonged ageing of maraging steel CORRAX
Umbrello et al. Evaluation of microstructural changes by X-ray diffraction peak profile and focused ion beam/scanning ion microscope analysis
RU2522724C2 (ru) Способ металлографического анализа
Huang et al. Strain partitioning in dual-phase eutectic high-entropy alloy: Dependence on phase boundary morphology
Waterworth Quantitative characterisation of surface finishes on stainless steel sheet using 3D surface topography analysis
Hirsekorn et al. MICROSTRUCTURE CHARACTERIZATION AND IMAGING OF FINE‐GRAINED STEEL BY MICROSCOPIC ULTRASONIC TECHNIQUES
Northover et al. Applications of electron backscatter diffraction (EBSD) in archaeology
Wynick et al. Electron backscattered diffraction characterization technique for analysis of a Ti2AlNb intermetallic alloy

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070726

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070726

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100222

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100302

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100426

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100706

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100706

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130813

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130813

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130813

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees