JP3302569B2 - 電子スピン偏極度の計測方法及びその装置 - Google Patents

電子スピン偏極度の計測方法及びその装置

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JP3302569B2 JP17953096A JP17953096A JP3302569B2 JP 3302569 B2 JP3302569 B2 JP 3302569B2 JP 17953096 A JP17953096 A JP 17953096A JP 17953096 A JP17953096 A JP 17953096A JP 3302569 B2 JP3302569 B2 JP 3302569B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子スピン偏極度
の計測方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子線衝撃により強磁性体試料から放出
される2次電子のスピン偏極度Pを画像信号として使用
するスピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)の成功
と、その後の磁性材料評価研究への利用の進展、空間分
解能の向上により、「電子スピン」は単なる学術研究の
対象から産業科学領域における計測対象へと進展した。
スピンSEMの次の段階の発展の一つの方向として、表
面の原子層の数を限定して、その限定された原子層だけ
のスピン偏極度を計測可能にすることが表面スピン計測
の発展の一方向と想定される。
【0003】以下、電子スピン計測の歴史について概観
する。
【0004】電子スピン計測の研究は、Mottによる
電子スピンを考慮した重い原子核の中心力場による散乱
理論(以下、Mott散乱という)、Davisson
とGermerが電子の波動性の発見(1927)直後
に行った2結晶LEEDによるスピン偏極とスピン分析
の実験的試みが最初である。その後、Mott散乱理論
の実験的検証、ベータ崩壊電子のスピン偏極現象、低エ
ネルギー電子の重原子による散乱とスピン偏極の発生な
どの研究の発展を経て、現代のGaAsスピン偏極電子
源、スピンSEM、スピン偏極STMファミリー開発の
試みへと展開しつつある。
【0005】A.本発明の着想とその背景 (1)電子線のスピン偏極 スピン1/2のフェルミ粒子の集まりにおいて、各粒子
のスピンは一般には様々な方向を持つことが可能であ
る。各粒子のスピンの方向を全粒子にわたり平均した量
を偏極度Pと定義すると、 P=1/N・Σ<σ>i …(1) で与えられる。ここで、<σ>i はi番目の粒子のスピ
ン状態の期待値、Nは全粒子数である。
【0006】(2)Mott散乱の理論の要約 100keV程度の運動エネルギーを持つ電子が、Au
のような重い原子核により大角度散乱される場合を考え
る(図5参照)。
【0007】この場合の中心力ポテンシャルは、 V=h2 /8π2 m・〔U(r)+l・s(l/r・dU/dr)〕…(2) で与えられる。ここで、lとsはそれぞれ、散乱される
電子の軌道角運動量ベクトル及びスピン角運動量ベクト
ルである。上記(2)式の角括弧内の第2項がスピン軌
道相互作用である。
【0008】U(r)は一般にl/rの形を持つので、
U(r)とdU/drの符号は異なる。したがって、ス
ピン角運動量sと軌道角運動量lが反平行のとき、上記
(2)式の角括弧内の第2項は、U(r)と同符号、平
行のときは反対符号になる。図5に示すように、原子核
61の左側を通り右側に大角度散乱(〜120°)され
る電子の軌道角運動量は下向きベクトルであるので、方
向の異なるアップスピン電子の方がダウンスピン電子よ
りも、より大きい角度で散乱される。右側の軌道を通る
電子の軌道角運動量は上向きベクトルなので、状況は逆
転する。なお、62はスピンを分析する電子線(被分析
電子線)、63,64は電子検出器を示している。
【0009】以上のように、Mott散乱では、散乱面
に垂直なスピンベクトルを持つ電子の散乱に、スピンを
持つことの効果が現れ、後述する(3)式のスピン偏極
度計測へとつながる。
【0010】現実の計測装置では、散乱標的である金原
子は可能な限り薄く、かつ自立できる金薄膜(〜50n
m)の形で使用する。
【0011】(3)スピン偏極度Pの計測 同一の電子検出特性を持つ2個の電子検出器を、散乱標
的に対して左右同一の散乱角で、散乱標的に対して等し
い散乱距離の位置に設置する。左右検出器の散乱電子検
出に関わるパルス信号出力数をN左、N右とすると、被
分析電子線のスピン偏極度Pは、 P=l/S・(N左−N右)/(N左+N右) …(3) で与えられる。ここで、Sはシャーマン関数、または非
対称関数と呼ばれる定数で、被分析電子線の運動エネル
ギーに依存して変化する。
【0012】(4)本発明にかかる電子スピン計測技術 本願発明者は、1984年にスピンSEMの原理実験に
成功した。このスピンSEMに使用した電子スピン分析
器は100kV−Mott散乱型である。
【0013】(5)反射電子回折における表面波共鳴 単結晶の劈開表面、またはシリコン単結晶等の低次結晶
表面を機械化学研磨し、その試料表面を超高真空中で加
熱清浄化した表面を試料として使用する。この試料表面
に100keV〜数100keVの電子線を小さな視射
角で入射させると、原子レベルで平坦な結晶表面から得
られ、斑点状回折図形の典型的な高速反射電子回折像が
得られる。
【0014】図6はそのシリコン(001)表面の反射
電子回折像の1例を示す図であり、その反射電子回折像
を散乱電子線が試料表面で遮られた領域の境目をシャド
ーエッジ(SE)、試料表面による1次電子線の等角反
射線を鏡面反射(S)、結晶表面方向に存在し、かつ結
晶表面内に励起された回折線SWを表面波(図6の反射
電子回折像ではシャドーエッジSE線に垂直で、かつ長
く伸びた形状を持ち、入射点OとSを結ぶ線に関して対
称な位置に2個の表面波が観察される)、シャドーエッ
ジSE線に平行な菊池線(00h,h=4,8)は結晶
表面に平行な結晶格子面で回折された菊池線である。
【0015】図6に示すように、表面波が励起された反
射電子回折条件を、特に、表面波共鳴条件と呼ぶ。
【0016】B.表面波共鳴現象に関する諸付随現象と
その考察 (1)これまでの研究の総括 これまでに観察された表面波共鳴に付随して観察される
諸付随現象の研究を、以下に項目別にまとめる。
【0017】Overall Intensity
Enhancement:表面波共鳴条件が成立し、回
折斑点強度が増大している時に、これらの回折斑点のみ
ならず回折像全体の背景散乱強度、温度散漫散乱、菊池
線の強度はともに増大する。
【0018】特性X線放出強度の減少:閃亜鉛鉱単結
晶劈開面を試料にした反射電子回折で、Zn−K線
(8.6keV)の放出強度が減少することが観測され
ている。表面波共鳴現象がある場合には、X線放出が可
能な励起原子の試料表面の厚さは0.1nm程度の領域
に高密度に生成されるであろう。このエネルギーのX線
の固体中での平均吸収距離は数μm程度であるので、こ
の場合の特性X線は試料で吸収を受けることなく、試料
外に放出されると考えて良い。
【0019】したがって、表面波共鳴が存在する場合の
表面単位面積当りの励起原子の総数(=密度)と、表面
波共鳴がない場合に平均吸収距離深さに生成される同一
電子線による励起原子の密度との競り合いになる。この
試料のZn−KX線の場合には、表面波共鳴が存在する
場合の方が、励起原子の総数が少ないと考えて良いよう
である。
【0020】オージェ電子放出強度の増大:オージェ
電子を放出する可能性のある励起原子の存在する深さ領
域は上記と同一である。オージェ電子の脱出深さは概
ね、1nm以下と見積ることができるので、表面波共鳴
が存在する場合には、放出される全てのオージェ電子が
元のエネルギーを保存したまま真空へ放出されるであろ
う。これに対して、表面波共鳴のない場合には、表面層
深さ1nm領域からだけの強度の寄与になる。この結
果、表面波共鳴のある場合の方がオージェ電子収率は高
くなると言えよう。
【0021】反射電子回折顕微鏡像のコントラスト:
表面波共鳴のある場合の方が、ない場合に比較してコン
トラストは非常に高くなるとともに、表面の幾何学的微
細構造も鮮明に観察することができる。これは表面波共
鳴がある場合には、局所的表面波共鳴条件の成立、また
はそれが反射電子回折顕微鏡像のコントラスト形成に寄
与しているためと考えられる。
【0022】Wangの計算機シミュレーションにつ
いては下記(2)を参照のこと。
【0023】表面の高さ測量への応用:表面波共鳴条
件が成立する条件下で、反射電子線フォログラフィーに
より、表面の高さ測量を0.1nmレベルで計測する試
みがある。この方法を使用して、表面にらせん転位が顔
を出した時、転位周辺の表面領域に発生する応力緩和
と、それに基づく表面格子の盛り上がり変形を実測する
ことに成功した。
【0024】(2)表面波共鳴条件下におけるプロービ
ング電子の結晶表面層における挙動電子線が真空から結
晶に入射する場合、図7(a)に示すように、入射電子
線72は>1の屈折率となる。このため真空側から結晶
71に入射した電子線は、結晶71内に引き込まれるよ
うに屈折する。
【0025】一方、図7(b)に示すように、結晶71
内部で散乱回折を受け、結晶表面方向に進む電子線は、
結晶の内側表面(結晶→真空境界)で屈折率<1とな
る。内表面での視射角が全反射の臨界角より小さい場合
には、全反射を受ける。
【0026】その結果、プロービング電子は、真空→結
晶表面での(I)屈折、(II)結晶表面近傍のごく内側
の結晶部分での回折効果と、結晶内→真空界面での(II
I )全反射の集積結果として、図7(c)に示すよう
に、表面の数原子層にトラップされると考えられる。
【0027】Wangは計算機シミュレーションによ
り、プロービング電子の表面原子層へのトラップ状況を
定量的に検討した。図8は、結晶表面近傍のプロービン
グ電子の波動関数分布を、結晶表面方向に進行するプロ
ービング電子の通過原子層(結晶表面に垂直な原子層)
スライス数の関数として示した。
【0028】このシミュレーションはGaAs単結晶劈
開(110)表面を例として、125keVの電子線を
利用して〔001〕結晶方位の場合について実行され
た。図8(a)は表面波共鳴条件が成立している場合、
図8(b)は表面波共鳴条件から外れている場合のシミ
ュレーション結果を示す。それぞれに添付した白丸印
(GaAs原子)、黒丸印(As原子)の正方面心格子
配列図は1次電子線にほぼ垂直なGaAs結晶断面の原
子配列を示す。この正方面心格子図の右側の縁線が、結
晶表面の位置を示している。
【0029】この原子配列図とプロービング電子の波動
関数分布を比較する。図8(a)では波動関数分布は表
面第1原子層と、その外側にだけ存在することが明らか
に読み取れる。これに対して、図8(b)の場合には、
結晶表面方向に進行するプロービング電子の通過電子層
数とともに結晶内部へ進入する深さが増加して、図8
(b)の(J)図では表面第1原子層から第4原子層に
まで達していることがわかる。
【0030】Wangのこの結果を要約すると、プロー
ビング電子の波動関数分布は、表面波共鳴条件が成立し
ている時は、ほぼ表面第1原子層、及び真空側だけに局
在する。表面波共鳴条件から外れている場合には、
(I)プロービング電子の結晶表面に沿った進行ととも
に第n原子層にまで進入すると規定できること、(II)
電子の進入深さは表面に平行な原子層単位で進行するこ
とがわかる。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】上記した単結晶表面に
おける反射電子回折現象で、プロービング電子の進入深
さを制御する方法を用いることにより、この結晶試料か
ら発生する2次電子は、プロービング電子が存在する原
子層からだけ発生/放出される。更に、スピン偏極2次
電子の源として試料内に磁性を担うスピン偏極が存在す
る強磁性体を採用することによって、2次電子の発生場
所を表面第1〜第n原子層に特定して、その2次電子の
スピン偏極度を計測することができる。
【0032】このように、本発明は、反射電子回折条件
を制御して2次電子の発生場所を表面第1原子層に特定
して、その2次電子のスピン偏極度を計測可能にした電
子スピン偏極度の計測方法及びその装置を提供すること
を目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、 〔1〕電子スピン偏極度の計測方法において、表面から
深さ方向に積層された原子層において、表面から深さ方
向の原子層の限定された原子層数のスピン偏極度を計測
する方法において、試料としての反射電子回折で表面波
共鳴を生起し得る結晶表面に1次電子ビームを照射位置
を走査させながら照射し、前記結晶表面から表面波共鳴
で第1原子層だけをピックアップし、放出される2次電
子を引き込み電極系、加速管を通して加速して、金散乱
標的に垂直に衝突させ、前記金散乱標的の両側に設置し
た電子検出器のカウント数に基づいて被分析電子線の偏
極度を求めるとともに、前記結晶表面での結晶とスピン
規則格子の形成過程と、結晶とスピン規則格子の崩壊過
程の両方を計測するようにしたものである。
【0034】〔〕表面の限定された原子層数のスピン
偏極度を計測する装置において、照射位置を走査させな
がら1次電子ビームを照射する1次電子ビーム照射手段
と、この1次電子ビームが照射される試料としての反射
電子回折で表面波共鳴を生起し得る結晶表面と、この結
晶表面から表面波共鳴で第1原子層だけをピックアップ
し、放出される2次電子を引き込み、分析する電子スピ
ン分析装置と、分子線エピタキシャル蒸着装置を備え、
この電子スピン分析装置は前記結晶表面から放出される
2次電子を引き込み電極系、加速管を通して加速して、
金散乱標的に垂直に衝突させ、両側に設置した電子検出
器のカウント数に基づいて被分析電子線の偏極度を求め
る。
【0035】なお、上記〔1〕又は〔〕記載の電子ス
ピン偏極度の計測方法またはその装置において、「限定
された原子層数のスピン偏極度」は、 表面電子層に
存在する磁性電子(3d,4f電子など)のスピン偏極
度、 外部電子線励起で、表面電子層に存在する電子
を叩き出し、2次電子として取得すると、上記の磁性
電子(3d,4f電子など)が前記2次電子に必然的に
含まれるので、「2次電子スピン」の偏極度となり、2
側面を有するスピン偏極度を計測することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】図1は本発明の実施例を示す反射電子回折
−電子スピン計測複合装置の概略構成図である。
【0038】図1に示すように、この複合装置では、1
次電子線コラム2は、最大エネルギー30keVを採用
した。1次電子線の方向と電子スピン分析装置4の加速
管6の円筒軸は垂直に配置して、両者の中心軸が試料1
表面位置で直交する配置とした。なお、5は引き込み電
極系、7は金散乱標的、8は耐電圧容器、9は蛍光性ス
クリーン、11,13は電子検出器である。
【0039】この複合装置の真空は、イオンスパッタポ
ンプを主排気ポンプにより達成し、到達圧力は1×10
-10 Torr以下である。この複合装置にはMBE(分
子線エピタキシャル)蒸着装置(図示なし)も付属して
いる。
【0040】図2は本発明の実施例を示す複合装置に搭
載した電子スピン分析装置の断面図である。
【0041】この図に示すように、この電子スピン分析
装置4は、先行技術で示した高速Mott散乱法の原理
に基づく。
【0042】試料1(図1参照)から放出される2次電
子を、多段加速管6を通して100keVに加速して約
50nm厚さの金散乱標的7に垂直に衝突させ、±12
0°方向に設置した2個の電子検出器11,13のカウ
ント数N左とN右の値から、下記の式によって被分析電
子線の偏極度Pを求める。すなわち、 P=1/S・(カウント数N左−カウント数N右)/
(カウント数N左+カウント数N右)の式によって被分
析電子線の偏極度Pを求める。
【0043】+100kVの空間に設置されている電子
検出器11,13の出力信号は増幅後、電子/光変換に
より、光パルスに変換後、光ファイバーで信号を接地レ
ベルで伝送して、接地レベルでパルス計測を行い、接地
レベルで信号を取得することができるようにしている。
【0044】図2に示す電子スピン分析装置4の下部の
ノーズ部は、試料1から放出される被分析電子を多段加
速管6へ導くための引き込み電極系5である。この部分
は、引き込み電極、偏向器、集束アインツエルレンズが
シリーズに配列されている。
【0045】図2に示す電子スピン分析装置4の上部の
最外側チャンバは、エポキシ樹脂製の耐電圧容器8であ
る。これは実験者が+100kV電子スピン分析装置の
ごく近傍で安全に実験作業を行うことを保証している。
【0046】図2に示す電子スピン分析装置4の構造
は、様々な工夫を凝らすことで、当初装置に比べて高さ
を1/2、直径を6/10に縮小することができた。因
みに、耐電圧容器8の高さL1 は400mm、引き込み
電極系5(下部のノーズ部)の高さL2 は322.8m
mである。
【0047】その結果、体積を2/10に縮小し、装置
の大幅な軽量化を図ることに成功した。
【0048】これにより、加速管6の円筒軸を、重力方
向に対して斜めにした空間配置で、スピン分析装置を稼
動させることも可能になり、使い方と用途が著しく拡大
すると考えられる。
【0049】次に、本発明の反射電子回折−電子スピン
計測複合装置を用いた強磁性体表面のスピン偏極度計測
方法について説明する。
【0050】図3は本発明の実施例を示す強磁性体表面
のスピン偏極度計測を行うための装置の概略構成図、図
4はその強磁性体表面のスピン偏極度計測方法の説明図
である。
【0051】図3において、21は試料としての結晶表
面、22はMBEソースであり、結晶表面21上にMB
E蒸着を行いながら、強磁性体表面のスピン偏極度計測
を行うことができる。
【0052】30は電子ビームコラムであり、電子銃3
1、コンデンサレンズ32、走査用偏向電極33などを
有している。40は電子スピン分析装置であり、引き込
み電極系41により、試料としての結晶表面21から放
出される被分析電子34を加速管42へ導き、加速管4
2を通して100keVに加速して、約50nm厚さの
金散乱標的43に垂直に衝突させ、±120°方向に設
置した2個の電子検出器44,45にて、電子スピン分
析を行うようにしている。なお、35は蛍光性スクリー
ンである。
【0053】以下、その強磁性体表面のスピン偏極度計
測方法を図4を参照しながら説明する。
【0054】(1)まず、図4(a)に示すように、非
磁性単結晶基板51に1原子層相当程度の磁性原子52
を堆積する。この段階では、電子及びスピンはランダム
な配列である。
【0055】(2)次に、図4(b)に示すように、非
磁性単結晶基板51の温度を制御して、堆積した磁性原
子52を非磁性単結晶基板51結晶表面に対してエピタ
キシャル成長させる。つまり、堆積した磁性原子52の
結晶化を行う。
【0056】(3)次に、図4(c)に示すように、堆
積した磁性原子52を、原子52のスピンを整列する操
作を工夫して、表面に1原子層のスピン規則格子52A
を形成させる。
【0057】そこで、堆積した磁性原子52の結晶格子
形成は反射電子回折でモニターする。スピン規則格子5
2Aの形成確認は、電子線励起で堆積原子層から発生す
る2次電子のスピン偏極度でモニターする。
【0058】ここでは、結晶とスピン規則格子の形成過
程と、崩壊過程の両方を計測することを想定している。
【0059】この強磁性体表面のスピン偏極度計測の
(1)極限性と、(2)それに基づく制約について説明
する。
【0060】(1)表面波共鳴で第1原子層だけをピッ
クアップすることができる。
【0061】(2)反射電子回折で表面波共鳴を起こす
ことができる結晶表面であることが必要である。
【0062】このように、本発明によれば、電子線を利
用するスピン分析装置としては、表面の第1層の感度は
極限であり、それを十分に活かして電子スピン計測を行
うことができる。
【0063】また、本発明によれば、上記実施例に限定
されることなく、以下のような利用形態を有する。
【0064】(1)磁性薄膜の観察を行うことができ
る。
【0065】(2)非磁性物質等の表面の遊離スピン計
測が可能である。
【0066】なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能
であり、これらを本発明の範囲から排除するものではな
い。
【0067】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、以下のような効果を奏することができる。
【0068】1次電子ビームを照射し、表面波共鳴で第
1原子層だけをピックアップするこにより、放出される
2次電子から磁性体表面の第1原子層のスピン偏極度を
計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す反射電子回折−電子スピ
ン計測複合装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例を示す複合装置に搭載した電子
スピン分析装置の断面図である。
【図3】本発明の実施例を示す強磁性体表面のスピン偏
極度計測を行うための装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施例を示す非磁性体結晶表面上に堆
積した強磁性体原子のスピン偏極に関わるスピン偏極度
計測方法の説明図である。
【図5】電子スピン分析方法の説明図である。
【図6】シリコン(001)表面のRHEED像を示す
図である。
【図7】電子線の結晶表面での反射、回折状態を示す図
である。
【図8】RHEEDにおける結晶表面近傍でのプロービ
ング電子の存在位置分布を示す図である。
【符号の説明】
1 試料 2 1次電子線コラム 4,40 電子スピン分析装置 5,41 引き込み電極系 6,42 加速管 7,43 金散乱標的 8 耐電圧容器 9,35 蛍光性スクリーン 11,13,44,45 電子検出器 21 試料としての結晶表面 22 MBEソース 30 電子ビームコラム 31 電子銃 32 コンデンサレンズ 33 走査用偏向電極 34 被分析電子 51 非磁性単結晶基板 52 1原子層相当程度の磁性原子 52A スピン規則格子
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−361144(JP,A) 特開 平1−110253(JP,A) 特開 平7−244144(JP,A) 特開 平1−258350(JP,A) 特開 昭62−73184(JP,A) 特開 昭59−187281(JP,A) 特開 昭61−283890(JP,A) 特開 平1−217288(JP,A) 特開 昭61−284690(JP,A) 実開 昭56−92354(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01T 1/32 G01N 23/225

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面から深さ方向に積層された原子層に
    おいて、表面から深さ方向の原子層の限定された原子層
    数のスピン偏極度を計測する方法において、 (a)試料としての反射電子回折で表面波共鳴を生起し
    得る結晶表面に1次電子ビームを照射位置を走査させな
    がら照射し、 (b)前記結晶表面から表面波共鳴で第1原子層だけを
    ピックアップし、放出される2次電子を引き込み電極
    系、加速管を通して加速して、金散乱標的に垂直に衝突
    させ、 (c)前記金散乱標的の両側に設置した電子検出器のカ
    ウント数に基づいて被分析電子線の偏極度を求めるとと
    もに、前記結晶表面での結晶とスピン規則格子の形成過
    程と、結晶とスピン規則格子の崩壊過程の両方を計測す
    ことを特徴とする電子スピン偏極度の計測方法。
  2. 【請求項2】 表面の限定された原子層数のスピン偏極
    度を計測する装置において、 (a)照射位置を走査させながら1次電子ビームを照射
    する1次電子ビーム照射手段と、 (b)該1次電子ビームが照射される試料としての反射
    電子回折で表面波共鳴を生起し得る結晶表面と、 (c)該結晶表面から表面波共鳴で第1原子層だけをピ
    ックアップし、放出される2次電子を引き込み、分析す
    る電子スピン分析装置と (d)分子線エピタキシャル蒸着装置を備え、(e) 該電子スピン分析装置は前記結晶表面から放出さ
    れる2次電子を引き込み電極系、加速管を通して加速し
    て、金散乱標的に垂直に衝突させ、両側に設置した電子
    検出器のカウント数に基づいて被分析電子線の偏極度を
    求めることを特徴とする電子スピン偏極度の計測装置。
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