JP4564988B2 - 振動・騒音低減装置 - Google Patents
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振動又は騒音発生の抑制の対象物を本明細書では抑制対象物という。
本発明は、周波数帯域が可聴領域の振動又は騒音を受けやすい環境に存在する抑制対象物の振動・騒音の低減にとくに好適である。
(1)エネルギー変換系の問題点
マイクロホンを用いるエネルギー変換系は、マイクロホンを取り付けた位置付近の微小範囲の空間中の音圧を電気信号に変換するだけであり、かつ、侵入音が持つ音響エネルギーを効率的に電気エネルギーに変換することができない(エネルギー変換可能な地域的範囲が狭く、さらに効率が低い)。
また、振動エネルギーから電気エネルギーへの変換器として圧電セラミックス等の圧電材料を用いる場合、圧電材料自体が持っている特性により、変換できる周波数領域が狭い(つまり、圧電材料はエネルギー変換性能に対する周波数依存性が高い)。車両や建築物の壁体又は原動機やその筐体等の抑制対象物の種類によっては、あるいは音響的な環境により、それに伝達する振動又は騒音の周波数やレベルは、種々様々である。従って、実際上、現場で広帯域の振動又は騒音を広周波領域のまま変換性能を発揮することは期待できない。
エネルギー消費手段を構成する従来の共振回路は、一般的にコイルが持つインダクタンスLと圧電素子が持つ静電容量Cとにより構成されており、1/(2π√(LC))による周波数で共振が発生する。すなわち、LとCにより決定される共振周波数近傍においてはエネルギー消費用の抵抗器で効果的に電力を散逸することが可能であるが、それ以外の周波数では電力の散逸が小さい(共振回路の電流増幅に関する周波数依存性)。抑制対象物に伝達する振動又は騒音の周波数帯域は、環境により広範囲に渡る場合がある。従って、共振回路を構成する従来のシャント回路を用いる振動・騒音低減装置は、広帯域の振動又は騒音に対して十分なエネルギー消費効果を発揮することはできない。
これまでの信号あるいはエネルギー変換器は、騒音−電気、振動−電気それぞれ単一系の変換器であるために、騒音と振動を電気に変換する場合は、それぞれの専用変換器を使用する必要がある。
一般に、振動・騒音低減装置を抑制対象物に取り付ける場合は、その装置を抑制対象物に接着するか、ねじ等で機械的に取り付けることが一般的であった。抑制対象物によっては又はその使用環境によっては、振動又は音の強度や侵入方向が変わる場合がある。このような場合は振動・騒音低減装置の取り付け位置の変更や移動及び追加が望まれるが、従来は、一旦取り付けた後は取り外すことができないか、ねじ等を緩めて取り外すなど手間がかかった。
既に市販されている制振材及び各種ANCシステム(Active Noise Control System )はそれぞれ狭帯域毎に使用され、単一システムでの制振効果のみが発揮される。一般的に制振材は高周波領域のみ、またANCシステムは低周波領域において効果的である。従って、車両の壁面、高速道路や鉄道線路や公共通報用スピーカなどの付近の建築物の壁面などが広周波数帯域の振動又は騒音を受ける場合に、満足的な制振効果又は防音効果が得られるためには、複数種類の振動・騒音低減装置の設置が必要となり、コスト高になるため、実現は困難であった。
高周波領域における制振効果と、圧電式スピーカの低周波領域における制振効果が合成された制振効果を奏することができる。
図1は、第1の実施の形態の基本構成を示す概念図、図2は圧電スピーカとエネルギー消費手段の一例を示す回路図、図3は圧電スピーカの抑制対象物に対する取付構造の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は断面図、図4は圧電式スピーカを重ねて取り付ける場合の取付構造を示す概念図であり、(a)は圧電式スピーカを単に重ねて取り付けた場合の断面図、(b)は最初の圧電式スピーカに支柱を備えた場合の断面図概念図、(c)は圧電式スピーカ制振シートの取付構造を示す断面図である。図5は振動低減効果を比較例とともに示すグラフ、図6は圧電スピーカの他の設置例を示す概念図、図7は振動板と抑制対象板の間に支柱を設けない場合(a)と設けた場合(b)の出力の差異を示すグラフ、図8は圧電素子と圧電式スピーカの圧電性能の周波数依存性を示すグラフ(圧電素子と圧電式スピーカのエネルギー変換特性グラフ)である。
抑制対象物1は、鉄道車両その他の車両の壁面、建築物の壁面、機械自体又は機械の筐体などの比較的軽量の物体又は部材であり、本発明の効果を有効に発揮するのは、これらの抑制対象物が比較的広帯域の周波数の振動又は騒音を受けやすい環境に存在する場合である。
圧電式スピーカ2は、圧電セラミックス等で構成された振動板21を弾性支持体22に支持し、その振動板に電極を接続したものであり、本来の音響用スピーカとして使用する場合は、電極を介して音声信号を受けると所定周波数で振動して音波を発生するのであるが、本発明においては、圧電式スピーカ2の振動板21の圧電効果(機械的振動を受けると電荷を発生する現象)を利用して、受けた振動又は騒音による歪みを電気エネルギーに変換する一種のエネルギー変換系として用いている。
音響エネルギーあるいは振動エネルギーを電気エネルギーに変換するのに圧電素子を使用することが提案されているが、この圧電素子は図8に示すように、一般に形状により決まる固有周波数(100〜300Hz)付近では効率的にエネルギー変換が行われるが、その他の周波数では慨してエネルギー変換効率が低い。
本発明は、この広周波数帯域を持つ圧電式スピーカをエネルギー変換器として使用することにより、音響エネルギー及び振動エネルギーを広帯域で電気エネルギーに変換できるようにした点に最大の特徴がある。
上記構成により、抑制対象物1に外来振動又は騒音が侵入した時は、その振動又は騒音が圧電式スピーカ2の振動板21に伝達され、その振動板21に発生する歪みが電荷に変換されて、シャント回路S1に共振電流が流れ、その電流は抵抗器32においてジュール熱に変換されて、大気中に放出されることにより、エネルギーが消費される。
圧電式スピーカ単体では、基本的に印加される音響エネルギーのみが電気エネルギーに変換されるが、圧電式スピーカ2の振動板21と抑制対象物1を支柱5で結合することにより抑制対象物1の振動エネルギーを圧電式スピーカ2の振動板21に直接伝達することができるため、エネルギー変換効率の向上が見込まれる。さらに、抑制対象物の振動が印加される音響エネルギーによって励振される成分のみならず、他要因による振動の固体伝搬振動も合わせて電気エネルギーに変換することが可能である。
図7に示すように、振動板21と抑制対象板1の間に支柱5を設けない場合の出力(同図(a))と、設けた場合の出力(同図(b))を比較すると、支柱ありの場合は抑制対象板の振動に忠実に追従した出力が得られることが判る。
抑制対象物1に直接取り付ける圧電式スピーカ2aに支柱5を取り付けることで抑制対象物1の振動エネルギーを主に圧電式スピーカ2aにより電気エネルギーに変換し、その上の圧電式スピーカ2bには支柱を取り付けないことにより音響エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能となり、それぞれ別のエネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である。
2 圧電式スピーカ
3 エネルギー消費手段
S1,S2 シャント回路
31 コイル
32 抵抗器
5 支柱
Claims (5)
- 振動又は騒音を電気に変換するためのエネルギー変換系と、変換された電気を熱エネルギーとして消費するエネルギー消費手段とからなる振動・騒音低減装置において、
前記エネルギー変換系は、圧電セラミックス等で構成された振動板を弾性支持体に支持し、その振動板に電極を接続してなる複数枚の圧電式スピーカから構成されて、抑制対象物上あるいは空間内に平面的に取り付けられていること、
前記エネルギー消費手段は、前記複数枚の圧電式スピーカの各振動板に接続された両電極の間に直列接続されていること、
前記抑制対象物と前記圧電式スピーカの振動板との間に抑制対象物の振動を振動板に直接伝達させるための支柱が介在させてあること、
を特徴とする振動・騒音低減装置。 - 請求項1に記載された振動・騒音低減装置において、抑制対象物に複数の圧電式スピーカが重ね合わせて取り付けられていること、抑制対象物に直接取り付けられる圧電式スピーカの振動板と前記抑制対象物との間にのみ支柱を介在させ、重ね合わされる圧電式スピーカの振動板同士の間には支柱を介在させていないことを特徴とする振動・騒音低減装置。
- 請求項1又は2に記載された振動・騒音低減装置において、エネルギー消費手段は、圧電式スピーカの振動板に接続された両電極の間に直列接続されたコイルと抵抗器を含むシャント回路で構成されていることを特徴とする振動・騒音低減装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載された振動・騒音低減装置において、圧電式スピーカをシート状の制振材に取り付け、その制振材を抑制対象物に取り付けたことを特徴とする振動・騒音低減装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載された振動・騒音低減装置において、抑制対象物は音響用圧電式スピーカであり、その音響用圧電式スピーカの裏側に音響−電気変換器としての圧電式スピーカを取り付けて、音響用圧電式スピーカの裏側に発生する不必要な騒音が抑制されていることを特徴とする振動・騒音低減装置。
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