JP4564276B2 - 磁気共鳴映像診断システム - Google Patents

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Description

本発明は、加熱システムによる温熱治療において、特定部位の温度計測に使用される磁気共鳴映像診断システムに関する。
磁気共鳴映像診断装置は、固有の磁気モーメントを持つ核の集団が一様な静磁場中に置かれたときに、特定の周波数で回転する高周波磁場のエネルギーを共鳴的に吸収する現象を利用して、物質の化学的及び物理的な微視的情報を映像化し、あるいは化学シフトスペクトラムを観測する装置である。
一方、腫瘍組織と正常組織の熱感受性の違いを利用して、患部を超音波等により一定温度以上に加温・維持することで腫瘍組織を選択的に死滅させる温熱治療法というものがある。一般に、この温熱治療方法の治療成績は、対象部位の温度管理に大きく依存しる。
磁気共鳴映像診断装置は、上記温熱治療において治療部位(患部)の温度計測に使用することができる。磁気共鳴映像診断装置を使用した温度計測技術としては、例えば、水プロトン化学シフトの温度依存性を利用した温度分布計測法等がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この方法では被検体の動きなどに伴う対象部位の磁場不均一性の影響により計測精度が悪化する問題があり、これを改善するために、温度変化を示さない領域(例えば、図8に示すような温度計測対象から離れた領域、或いは温度依存性が微小である脂肪組織領域)の位相情報を基準値として誤差を補正する方法が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、従来の水プロトン化学シフトを用いた温度計測法では、磁気共鳴信号の位相情報を基に温度変化を算出している。このため、計測される位相変化が真の温度変化によるものなのか、あるいは、システム変動・被検体の動きによる誤差成分によるものかを区別することが出来ない。
また、温度変化を示さない物質領域の位相情報を基準値として誤差を補正する方法では、磁場不均一性の変化の分布が比較的低次の場合には、対象部位近傍の磁場不均一性の変化を相殺できる。しかしながら、磁場不均一性の変化が高次分布を呈する場合には、これに起因する誤差成分を除去することはできない。
また、従来の各手法では、温度計測中に被検体の急激な動きが発生した場合には、図9に示すように磁気共鳴信号の位相値に不連続点が観測される。そのため、図10に示すように、位相変化後の位相分布を新たな基準として採用し温度変化を算出している。従って、図10に示す加温処理開始時からの継続した温度変化は、体動による誤差を累積的に含んだものとなってしまう。また、不連続点として観測されない体動が発生した場合には、加温処理による温度変化と体動による誤差とを適切に区別することができない。
特開平4−055257号公報 米国特許5378987号公報 特開平7−55642号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、腫瘍等の温熱治療時に加温効果を磁気共鳴イメージングによってモニタリングする場合において、システム、或いは被検体の動きによって生じる磁場不均一性が計測精度に及ぼす影響を除去し、信頼性の高い温度計測を実行することができる磁気共鳴映像診断システムを提供することを目的としている。
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
本発明の第1の視点は、
被検体の特定部位を周期的に加温する加温装置と、加温中の前記特定部位の温度変化を計測する磁気共鳴イメージング装置と、からなる磁気共鳴イメージングシステムであって、前記被検体を配置するための静磁場空間を形成する磁性手段と、前記静磁場空間に配置された前記被検体に対して傾斜磁場及び高周波を印加し、当該傾斜磁場及び高周波の印加によって当該被検体の前記特定部位に発生する磁気共鳴信号を受信する撮影動作を実行する撮影手段と、前記加温装置による加温に同期して前記撮影動作を実行するように、前記撮影手段を制御する制御手段と、前記撮影動作によって得られる前記磁気共鳴信号の位相変化に基づいて、計測温度データを生成する温度データ生成手段と、を具備し、前記制御手段は、前記加温装置による加温に同期させて、当該加温の一周期内において少なくとも前記撮影動作を二回実行することで、発生時刻の異なる前記磁気共鳴信号を受信するように、前記撮影手段を制御し、前記温度データ生成手段は、発生時刻の異なる前記磁気共鳴信号の位相変化に基づいて、前記一周期分の加温に対応する前記特定部位の温度変化を基準温度変化として推定し、前記基準温度変化及び前記計測温度データの少なくとも一方に基づいて、前記特定部位に関する温度変化を生成することを特徴とする磁気共鳴イメージングシステムである。
以上本発明によれば、腫瘍等の温熱治療時に加温効果を磁気共鳴イメージングによってモニタリングする場合において、システム、或いは被検体の動きによって生じる磁場不均一性が計測精度に及ぼす影響を正確に計測し、これを抑制することができる磁気共鳴映像診断システムを実現できる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
また、以下の説明においては、磁気共鳴映像診断装置と、温熱治療の患部加熱に使用される加熱装置とからなるシステムを「磁気共鳴映像診断システム」と呼ぶことにする。
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴映像診断システム10のブロック構成図を示している。同図に示す様に、本磁気共鳴映像診断システム10は、静磁場磁石11、シムコイル12、傾斜磁場コイル13、高周波プローブ14、シムコイル電源16、傾斜磁場電源17、送信部18、受信部19、シーケンス制御部20、計算機システム21、ディスプレイ23、コンソール24、加温部(加温装置)30を具備している。
静磁場磁石11は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石11には、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用され、図示していない冷却系によって冷却される。
シムコイル12は、磁場の均一性を能動的に制御するためのコイルである。このコイルに電流を流すことにより、静磁場の低次成分を補正することができる。
傾斜磁場コイル13は、静磁場磁石11よりも短軸な磁場コイルであり、静磁場磁石11の内側に設けられる。傾斜磁場コイル13は、傾斜磁場コイル駆動装置17から供給されるパルス電流に基づいて、互いに直交するX,Y,Zの三方向に線形傾斜磁場分布を持つ傾斜磁場を形成する。この傾斜磁場コイル13が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
なお、Z軸方向は、本実施形態では静磁場の方向と同方向(被検体の体軸方向)にとるものとする。また、本実施形態において、傾斜磁場コイル13及び静磁場磁石11は円筒形をしているものとする。また、傾斜磁場コイル13は、所定の支持機構によって真空中に配置されていてもよい。これは、静音化の観点から、パルス電流の印加によって発生する傾斜磁場コイル13の振動を、音波として外部に伝播させないためである。
高周波プローブ14は、被検体の撮像領域に対して高周波パルスを印加するための、及び被検体に発生した磁気共鳴信号を受信するための高周波コイルと、この高周波コイルの共振周波数を磁気共鳴信号の周波数(例えばプロトンの共鳴周波数)に同調させるためのチューニング・マッチング部(図示せず)とを有している。
シムコイル電源16は、シムコイル12に所定のタイミングで電流を供給する電源である。
送信部18は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを全身用RFコイル14に送信する。当該送信によって高周波プローブ14から発生した高周波によって、被検体の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
受信部19は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ、A/D変換器(それぞれ図示せず)を有し、各レシーバから受信した各磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、個別に所定の信号処理を施す。すなわち、受信部19は、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
シーケンス制御部20は、所定のパルスシーケンスに従って、シムコイル電源16、傾斜磁場電源17、送信部18、受信部19を駆動・制御する。特に、シーケンス制御部20は、後述する温度計測処理においては、後述するシーケンスに従って温度計測用の磁気共鳴信号を計測する様に、傾斜磁場電源17等を駆動・制御する。
計算機システム21は、受信部19から受け取った磁気共鳴信号に対して所定の信号処理を施し、磁気共鳴画像(MR画像)を生成すると共に、撮影におけるシーケンス制御部20の動作を制御する。
図2は、計算機システム21の構成のブロック構成図を示した図である。同図に示すように、計算機システム21は、記憶部210、システム制御部211、データ収集部212、再構成部213、温度データ生成部214、評価部215を有している。
記憶部210は、受信部19を介して得られた再構成前の磁気共鳴信号データ(生データ)、再構成部213によって再構成された磁気共鳴画像データ等を患者毎に記憶する。
システム制御部211は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、本磁気共鳴イメージング装置を静的又は動的に制御する。
データ収集部212は、受信部19によってサンプリングされたディジタル信号(磁気共鳴信号)を収集する。
再構成部213は、データ収集部212によって収集されたデータに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成等を実行し、被検体内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
温度データ生成部214は、図3に示す様な所定のシーケンスに従って収集された磁気共鳴信号から、次の式(1)に従って加温部位についての計測温度データを生成する。
△T(x,y,z)=[θ(x,y,z)- θ0(x,y,z)]/(αγτB0) (1)
ここで、θは温度変化後に得られた位相分布、θ0は温度変化前に得られた基準位相分布、αは水プロトン化学シフトの温度依存性、γは核磁気回転比、τはエコー時間をそれぞれ意味する。
この計測は、温度変化前後に観測される水プロトンに関する磁気共鳴信号の位相差が温度変化に比例することを利用しており、その内容は、例えばMagn. Reson. Med. No.34 814-823(1995)に詳しい。
また、温度データ生成部214は、後述する評価処理の結果に基づいて、計測温度データ又等に基づいて患部温度データを生成する。
評価部215は、温度データ生成部214によって生成された計測温度データに対して、体動等による誤差(ノイズ)が重畳しているか否かを評価する評価処理を実行する。この評価処理については、後で詳しく説明する。
ディスプレイ23は、計算機システム21を介して演算装置22から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力装置である。
コンソール24は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
加温部30は、温熱治療において、例えば超音波照射等によって患部を所定の温度に加熱する装置である。この加温部30による加温処理は、周期的に実行される。また、一周期における超音波照射は、連続的であってもパルス的であってもよい。
(加温制御及び温度計測シーケンス)
次に、本磁気共鳴イメージング装置10が実行する、加温治療における温度計測のためのスキャンシーケンスについて説明する。
図4は、加温処理と温度計測のための磁気共鳴信号のデータ収集との関係を説明するためのグラフ及びシーケンス図である。同図において、最上段は、加温対象(治療である患部)の相対的な温度変化を示すグラフである。中段は、加温部30によって実行される加温処理の加温タイミングを示したシーケンス図であり、各矢印は加温のための一回の超音波照射を表したものである。さらに、下段は、磁気共鳴映像診断装置によって実行される、温度計測のための磁気共鳴信号のデータ収集タイミングを示したシーケンスであり、各矩形は、図3に示したパルスシーケンスに従う一回のスキャンを表したものである。
図4からわかるように、加温のON/OFFパターンと温度変化のパターンとは相関する。本磁気共鳴イメージングシステム10では、この点に着目し、加温部30による加温タイミングと同期するように、磁気共鳴信号のデータ収集タイミングを制御する。この制御は、シーケンス制御部20によって制御される。
すなわち、加温のON/OFFパターンと温度変化のパターンとの間に相関関係があることから、加温処理と磁気共鳴信号収集との間の時間差をなくすように、加温タイミングと磁気共鳴信号収集とを同期させる。これにより、加温処理と磁気共鳴信号収集との間の時間差において発生していた体動に起因する磁気共鳴信号の位相変化を計測することがなくなる。その結果、体動に起因する誤差の温度データへの重畳を防止することができる。
また、本実施形態では、加温のON/OFFパターンと温度変化のパターンとの相関関係に基づき、加温処理による加温対象の温度上昇推定を行う。
すなわち、図5(a)に示すように、温度データ生成部214は、一周期(例えば、数十秒〜一分程度)内の加温処理による温度変化パターンを評価して、一周期分の加熱処理によって得られる加熱対象の温度変化パターン(基準温度変化パターン)Tを求める。この基準温度変化パターンを利用すれば、図5(b)に示す様に、以後の加温処理による温度上昇を推定することができる。
この推定処理による実益の一つは、基準温度変化パターンのみを正確に取得すれば、以後の加温処理による温度上昇を高精度で推定することができ点である。また、患者の立場からすれば、一周期分の加温処理であれば、体動を起こさないようにすることは一般的に困難でなない。従って、医師、患者の双方に関する治療中の身体的・精神的負担を軽減させることができる。
なお、基準温度変化パターンを取得するためには、加温ON/OFFに応じて少なくとも2回の磁気共鳴信号の収集(すなわち、一周期内における少なくとも2回の磁気共鳴信号収集)が必要である。
また、一周期内における磁気共鳴信号収集の回数は、加温部30の加温能力に応じて制御することが好ましい。例えば、強い超音波による加温や比較的長時間に亘る加温により、患部の温度が急激に変化すると予測される場合には、一周期内における磁気共鳴信号収集の回数を増加させることが好ましい。
さらに、基準温度変化パターンは、上記例では温度変化そのもののパターンとして定義したが、一周期分の加熱処理に同期したスキャンによって得られる磁気共鳴信号の位相変化パターンであってもよい。
(計測温度データの評価処理)
上記加温制御及び温度計測シーケンスに従えば、上記加温制御及び温度計測シーケンスに従って得られた加温制御パターンと加温対象の温度変化パターン(位相変化パターン)とは、理論的には一致すると考えられ、従って、基本的には、上記加温処理と温度計測との同期によって、好適な温度計測を実現することができる。
しかしながら、被検体の温度変化の時定数が長い場合には、上記加温制御及び温度計測シーケンスに従ったとしても、得られる加温制御パターンと位相変化のパターンとは、必ずしも一致しないこともある。係る場合には、患部の加温から磁気共鳴信号の位相変化による温度上昇計測までのレスポンスが遅延することになり、この間(時間差)において発生した体動等に起因するノイズが被検体からの磁気共鳴信号に重畳し、その結果、計測される温度データの信頼性を低下させる。
そこで、本磁気共鳴イメージングシステム10では、加温のON/OFFパターンと温度変化のパターンとの相関関係に基づき、計測温度データの評価を行う。これにより、被検体の温度変化の時定数が長い場合であっても、加温処理に起因する磁気共鳴信号の位相変化のみを抽出することができ、信頼性の高い温度データを所得することができる。
図6は、温度データ評価処理を説明するための図である。同図において、オリジナル波形Aは被検体加温対象の実際の温度変化、計測波形Bは、図3に示すパルスシーケンスで得られ、且つ温度データ生成部214において式(1)に従って計算された温度変化、シフト波形Cは生体の動きに伴う誤差成分をそれぞれ示している。
また、対数計測波形Dは、計測波形Bの各値の対数を取り、これをプロットしたものである。さらに、対数オリジナル波形Eは、オリジナル波形Aの各値の対数を取り、これをプロットしたものである。
一般に、計測波形Bは、温度上昇カーブは基本的に指数関数に従って変化するため、対数計測波形Dは、時定数に応じた直線上にプロットされる。このため、被検体の動きに伴う変化等が重畳しない理想的な状態では、対数計測波形Dは、対数オリジナル波形Eとほぼ同じようになり、温度上昇領域では負の傾きを有する(温度下降領域では正の傾きを有する)直線として表される。
これに対して、上記生体の動きが生じた場合の波形に同様の処理を施した場合には、対数計測波形Dは、図6に示すように誤差が発生した部分で直線から逸脱した特性を示す。
本磁気共鳴イメージングシステム10では、この点に着目し、本評価部215は、この様に対数計測波形Dが予測した対数オリジナル波形Eから所定の閾値以上外れている場合には、検出された位相変化に生体の動き等による誤差が重畳していると評価し、患部温度データの生成から除外する。
すなわち、評価部215は、上記加温制御及び温度計測シーケンスに従う少なくとも二回の位相変化計測によって基準温度変化パターンを生成し、これに基づいてオリジナル波形A、対数オリジナル波形Eを推定する。一方、評価部215は、温度データ生成部214から受け取る計測温度データに基づいて、計測値及びその対数計測値を逐次プロットする。プロットされた対数計測値が対数オリジナル波形Eから所定の閾値以上離れた場合には、当該対数計測値には生体の動き等による誤差が重畳していると評価し、この成分を患部温度データの生成から除外する。計測温度データが除外された場合には、基準温度変化データに基づいて、最終的な患部温度データを生成する。
なお、評価の際の閾値は、任意の設定にすることが可能であり、また、上記対数曲線を得る際には、信号値の平均化処理をする構成であってもよい。
(動作加温処理及び温度計測処理)
次に、本磁気共鳴イメージングシステム10の動作について説明する。
図7は、加温治療に同期する温度計測において実行される各処理の流れを示したフローチャートである。なお、同図には示されていないが、加温治療のための加熱処理は、図4等のシーケンスに従って温度計測と並行して周期的に実行されているものとする。
まず、温度計測のためのスキャンを実行し、得られた磁気共鳴信号に基づいて計測温度データを生成する(ステップS1)。また、得られた計測温度データに基づいて、一周期分の加温処理による計測温度データの変化パターン(基準温度変化パターン)を生成する(ステップS2)。
次に、さらなる加温処理に同期させ、温度計測のためのスキャン及び得られた磁気共鳴信号に基づく計測温度データを生成する(ステップS3)。
次に、得られた計測温度データから基準温度変化パターンを差分し、その差分値が所定の閾値内であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において差分値が閾値以内と判定された場合には、ステップS3において生成した計測温度データを患部温度データであるとする(ステップS5)。一方、ステップS4において差分値が閾値より大きいと判定された場合には、ステップS2において生成した基準温度変化パターンを患部温度データであるとする(ステップS5´)。ステップS5又はS5´において得られた患部温度データは、ディスプレイ23に表示される(ステップS7)。
次に、加温処理を終了するか否かを判定し、終了する場合には当該温度計測処理も終了する。一方、継続して加温処理を行う場合には、ステップS3〜ステップS6までの処理を繰り返す(ステップS7)。
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本磁気共鳴イメージングシステムでは、加温処理と温度計測用磁気共鳴信号の収集との間の時間差をなくすように、加温制御タイミングに同期させてスキャンを事項する。従って、加温処理と磁気共鳴信号の収集との間の時間差において発生する体動に起因する誤差の重畳を防止することができる。その結果、温熱治療等において、信頼性の高い温度計測を実現することができる。
また、本磁気共鳴イメージングシステムでは、一周期分の加温処理に対応する基準温度変化パターンを推定し、これに基づいて計測温度データに体動等に起因する誤差が重畳しているか否かを評価する。従って、被検体の体動等に起因する磁気共鳴信号の位相変化と、加温による磁気共鳴信号の位相変化とを、明確に区別することができる。その結果、温熱治療等において、信頼性の高い温度計測を実現することができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
(1)上記実施形態においては、磁気共鳴信号の位相変化が、加温処理に起因するものであるのか又は被検体の体動に起因するものであるのかの評価を、閾値処理によって実行した。しかし、これに限定されず、例えば磁気共鳴信号の位相変化量の割合に着目して評価する構成であってもよい。
すなわち、被検体の体動に起因する磁気共鳴信号の位相変化は、一般的に線形であると考えることができる。一方、加温処理による患部の温度変化は、一般的に非線形(例えば、指数関数的)であると考えられる。従って、一周期分の加温処理に同期して計測された温度変化から基準温度変化パターンを差し引き、その差分値が略線形であるならば、当該周期に対応して計測された温度データには、体動による誤差が重畳していると評価することができる。
(2)より計測精度を改善するために、上記実施形態に係る手法と、低次分布を補正する従来の方法とを組み合わせる構成であってもよい。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
以上本発明によれば、腫瘍等の温熱治療時において、システム、或いは被検体の動きによって生じる磁場不均一性が計測精度に及ぼす影響を除去し、信頼性の高い温度計測を実行することができる磁気共鳴映像診断システムを実現できる。
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴映像診断システム10のブロック構成図を示している。 図2は、計算機システム21の構成のブロック構成図を示した図である。 図3は、加温処理に同期して実行される温度計測のためのスキャンシーケンスを示した図である。 図4は、加熱処理と温度計測のためのスキャンシーケンスとの実行タイミングを説明するための図である。 図5は、温度データ生成部214によって生成された計測温度データと、基準温度変化パターンとをプロットしたグラフである。 図6は、温度データ評価処理を説明するための図である。 図7は、加温治療及びこれに伴う温度計測において実行される各処理の流れを示したフローチャートである。 図8は、従来の磁気共鳴イメージング装置による温度計測を説明するための図である。 図9は、従来の磁気共鳴イメージング装置による温度計測を説明するための図である。 図10は、従来の磁気共鳴イメージング装置による温度計測を説明するための図である。
符号の説明
10…磁気共鳴映像診断システム、11…静磁場磁石、12…シムコイル、13…傾斜磁場コイル、14…高周波プローブ、16…シムコイル電源、17…傾斜磁場電源、18…送信部、19…受信部、20…シーケンス制御部、21…計算機システム、23…ディスプレイ、24…コンソール、30…加温部、210…記憶部、211…システム制御部、212…データ収集部、213…再構成部、214…温度データ生成部、215…評価部

Claims (4)

  1. 被検体の特定部位を周期的に加温する加温装置と、加温中の前記特定部位の温度変化を計測する磁気共鳴イメージング装置と、からなる磁気共鳴イメージングシステムであって、
    前記被検体を配置するための静磁場空間を形成する磁性手段と、
    前記静磁場空間に配置された前記被検体に対して傾斜磁場及び高周波を印加し、当該傾斜磁場及び高周波の印加によって当該被検体の前記特定部位に発生する磁気共鳴信号を受信する撮影動作を実行する撮影手段と、
    前記加温装置による加温に同期して前記撮影動作を実行するように、前記撮影手段を制御する制御手段と、
    前記撮影動作によって得られる前記磁気共鳴信号の位相変化に基づいて、計測温度データを生成する温度データ生成手段と、
    を具備し、
    前記制御手段は、前記加温装置による加温に同期させて、当該加温の一周期内において少なくとも前記撮影動作を二回実行することで、発生時刻の異なる前記磁気共鳴信号を受信するように、前記撮影手段を制御し、
    前記温度データ生成手段は、発生時刻の異なる前記磁気共鳴信号の位相変化に基づいて、前記一周期分の加温に対応する前記特定部位の温度変化を基準温度変化として推定し、前記基準温度変化及び前記計測温度データの少なくとも一方に基づいて、前記特定部位に関する温度変化を生成することを特徴とする磁気共鳴イメージングシステム。
  2. 前記基準温度変化に基づいて、前記計測温度データを評価する評価手段をさらに具備し、
    前記温度データ生成手段は、前記評価の結果に応じて、前記基準温度変化及び前記計測温度データの少なくとも一方に基づいて、前記特定部位に関する温度変化を生成すること、を特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージングシステム。
  3. 前記評価手段は、前記基準温度変化と前記計測温度データとの差分値に関する閾値処理、又は当該差分値が描く軌跡に基づいて、前記評価処理を実行することを特徴とする請求項2記載の磁気共鳴イメージングシステム。
  4. 前記制御手段は、前記加温装置による加温能力に応じて、当該加温の一周期内における前記撮影回数を制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージングシステム。
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