JP4250251B2 - 磁気共鳴画像診断装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は,磁気共鳴診断装置(MRI)に関し,特に被写体の動きの影響を低減した医療用磁気共鳴診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年MRIは組織描出能に優れた画像診断装置として,X線CTと並んで疾病の重要な診断手段となっている。MRIは近年撮影の短時間化,多機能化を達成してきているが,高画質を短時間で得るにはまだ十分とは言えない。例えば呼吸運動を行っている腹部を撮影すると,体動アーチファクトが発生する。これは位相エンコード毎に位置がずれた被写体を計測し,フーリエ変換によって1枚の画像を合成したためである。
【0003】
体動の影響を受けにくい撮影法として,EPIやバースト法などの超高速撮像法がある。これらは50〜100ms程度の時間で1枚の画像を計測するので,この程度の短時間であれば被写体は事実上静止しているとみなすことができる。しかし,画像はS/Nが低く,現状では,一般の臨床撮像法を置き換えるまでには至っていない。
【0004】
別の体動補正法として,動きの時相に合わせてトリガー撮影する方法がある。以下呼吸運動を例にとって説明する。この方法では,べローズ等の機械的な呼吸センサーによって呼吸動を計測し,動きの特定の時相に対して撮影のトリガーを発生させる。これにより,概略周期運動を行っている被写体の特定の変位に対応したデータを収集でき,体動アーチファクトを低減できる。しかし,トリガーを待っている間にはデータ取得ができないため,全体の撮影時間は長くなる。類似の方法として,体動が小さいところへ時間窓を設け,この中でデータを取得する方法が米国特許4,751,462に述べられている。この場合もデータの収集効率は低くなる。
【0005】
別の方法として,ナビゲーションエコーを計測し、これから動きの情報を抽出し,データを補正してから,画像を再構成する方法がある(例えば、A.J.Crespignyら,”Navigated diffusion imaging of normal and ischemic human brain",Magnetic Resonance in Medicine vol.33, 720-728(1995))。ナビゲーションエコーは位相エンコードをかけずリードアウト傾斜磁場のみの存在下で取得したエコーであり,この信号をフーリエ変換したものは被写体のリードアウト軸への投影像となる。投影像のエッジから被写体の動きの時相を得ることができる。または複素投影像の位相から動きの補正データを得ることもできる(R.L.Ehmanら," Adaptive technique for high-definition MR imaging of moving structures ", Radiology, vol. 173, 255-263,(1989))。ナビゲーションによるデータ補正は有効であるが,被写体が剛体でなく,動きが単純な並進や回転でない場合には効果が低減する。
【0006】
ナビゲーションエコーの別の利用法としては,ナビゲーションエコーによって変位を検知し,変位に比例させて位相エンコード軸方向傾斜磁場の振幅を制御することによりこの方向の視野を変化させ,動きの影響を低減する方法が特開昭64−15034号に述べられている。また,ナビゲーションエコーにより体動を監視し,変位が基準値を上回ったデータのみを取り直す方法が米特許4,761,613に述べられている。
【0007】
呼吸などの概略周期運動をしている動きの別の対策として,位相エンコード順制御がある(ML.Wood and R.M.Henkelman,"Suppression of respiratory motion artifacts in magnetic resonance imaging", Med. Pysics, vol.13, 794-805,(1986))。これは,位相エンコード順を単純なリニアオーダー(位相エンコード量を順番に負の最大から正の最大へ単調に変化させる)またはセントリックオーダー(位相エンコード量を単純にk空間の中央から周辺へ変化させる)とせず,体動の時相と対応付けて変化させることによりアーチファクトを減らす方法である。位相エンコード順制御は,体動時相とエンコード量の対応を適当に選べば,撮影時間の大幅な延長を招かずに体動による画像の劣化を大きく低減でき,有効な方法である。空気圧べローズや圧力センサーによって被写体の変位や動きの時相を検出し,これに応じて撮影シーケンスの位相エンコード量を決定する方法が特公平3−52740号に述べられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の位相エンコード順制御はべローズ等の変位センサーによって体動の変位や時相を検出していた。このため変位計測用に専用の機械装置をMRI装置内に持ち込まなければならず,さらに,この装置を患者へセッティングする手間も必要であった。また,近年,MRI装置内で,画像を撮影しながら手術を並行して行うIV-MRが発展しているが,この様な場合にも体動センサーは手術の邪魔になる。本発明は機械的なセンサーを用いずに動きの情報を取得し,体動によるアーチファクトが少ない画像を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明では、位相エンコードの印加順序の制御を、予め作成された変位情報と位相エンコードとの対応関係の中から選択された、被検体の体動の実測曲線に近似した対応関係に基づいて、位相エンコードと変位情報との対応が不連続となるように行う。
好ましくは、磁化の励起毎にナビゲーションエコーを計測し,該エコー信号と別途計測した基準ナビゲーションエコー信号との比較演算処理から被写体の変位に関する情報を抽出し,これに基づいて次に設定すべき位相エンコード量を決定する。体動と位相エンコード量の対応関係は予め予備撮像で決定しテーブル化してセーブしておく。変位計測が行われたTRまたは次のTRの位相エンコード量を上記対応関係に基づいて決定する。以下,位相エンコード方向がy方向と仮定する。
【0010】
腹壁の法線方向変位Δyと位相エンコード量kyの対応を図3に模式的に示す。図3では変位の半周期の間に位相エンコードを全て実施できる場合を仮定している。各図の右側はPSFを示す。PSFはデルタ関数状の1次元物体を撮影した場合の画像の広がりを示している。PSFの幅は画像のぼけを生じ,PSFのピークの分裂は偽像を生じる。図3(a)は変位に対してエンコード量を単調に変化させた場合,(b)は中程度の変位を正負の最大の位相エンコードに対応させるとともに,最大変位と最小変位を位相エンコード零の近傍にスプリットさせて配置した場合,(c)は最小変位を零エンコードに割り当てた場合,(d)は体動がない理想の場合である。体動によるアーチファクトの発生は(b)が最もが少ない。すなわちky=0で変位が最大から最小へ飛躍するように,kyと変位を不連続的に対応付けた場合にPSFが最も良好になる(前述のM L. Wood and R. M. Henkelmanらの文献を参照)。
【0011】
以上から,位相エンコード順を工夫することにより体動によるアーチファクトを大幅に低減できることが分かる。特定の運動-時間曲線に対する最適な位相エンコードの割当ては,次の様な計算機シミュレーションで行うことができる。運動方向の1次元モデルで考える。実空間のデルタ関数をフーリエ変換しk空間データを得る。k空間を計測データによって充填する過程で,呼吸によって特定の位相エンコードkyの計測に際してΔy(ky)の変位が生じたとすると,kyの計測データには次式のような位相回転が生じる。
【数1】
ここで,iは虚数単位,γは磁気回転比,Gyはリードアウト傾斜磁場強度,Δyは変位,tはリードアウト傾斜磁場印加時間である。なお,ここではナビゲーションエコーはy方向のリードアウト傾斜磁場で取得するものとしている。全ての位相エンコードデータに対してその時刻における変位に応じた位相回転を施した後,フーリエ変換を行って実空間へ戻し,PSFを得る。このPSFは運動によってデルタ関数がどのように歪むかを示す。動きがある場合の実画像は,動きがない画像へこのPSFをコンボリュートすることによって得られる。PSFはこのように体動の影響のよい指標となる。
【0012】
図3の31のような変位とkyの対応関係は,実測した体動を元に予めアーチファクトが最小になるように決定し,テーブルとして登録しておく。アーチファクトを低減するための目安は,PSFの形状32が鋭く単峰であることである。
【0013】
変位とkyの対応関係は,中間の変位を正負の最大の位相エンコードに対応させるとともに,最大変位と最小変位を零位相エンコードに配置するのがよい。
【0014】
腹壁の法線方向など,視野内の被検体の動きが最も大きい方向を位相エンコード方向に設定するとともに,位相エンコード方向のリードアウト傾斜磁場によりナビゲーションエコーを磁化の励起毎に計測する。
【0015】
また,3D計測などの複数の位相エンコードループをもつ多次元計測法においては,最外周の位相エンコードループの反復周期が最も長く,体動の影響を受けやすい。そこで,最外周の位相エンコード量をナビゲーションエコー基づいて割り当てることにより,効果的に体動の影響を低減できる。
【0016】
ナビゲーションエコーから変位を抽出するには,次の方法がある。y方向にリードアウト傾斜磁場を印加して取得したナビゲーションエコー信号fn(t)の1次元フーリエ変換fn'(y)は,被写体のy軸上への投影を与える。そこで,別途計測した基準ナビゲーションエコー信号f0(t)の1次元フーリエ変換f0'(y)とfn'(y)を比較することにより,被写体のy方向の変位量を抽出できる。剛体的な変位に対しては相関係数を計算すればよく,非剛体的な変位に対しては,被写体のエッジを比較することで,変位を計測できる。
【0017】
別の変位検出方法としては,ナビゲーションエコー信号のk空間データの位相と,基準ナビゲーションエコー信号のk空間データの位相との比較演算処理から被写体の変位に関する情報を抽出することもできる。ここでは実空間での被写体の平行移動はフーリエシフト理論により,k空間での信号位相に1次の回転を発生させることを利用する。この場合は計測データを用いるため,フーリエ変換が不要であり処理を高速化できる。一方,被写体の動きが剛体の平行移動で近似できない場合は位相変化は単純でなくなり,実空間での動きを推定できなくなる。
【0018】
繰り返し時間TRが短い高速グラディエントエコー(GrE)法や多数のエコー信号を計測するマルチショットEPI法では,ナビゲーションエコーデータを処理するための時間的余裕が少ない。そこで,ナビゲーションエコーデータを処理するためのプロセッサと,画像データを処理するためのプロセッサを別に設けてもよい。
【0019】
ナビゲーションエコーを用いて動きの情報を計測し,これに基づいてほぼリアルタイムに位相エンコード量を決定するため,MRI以外の付加的なセンサーを用いることなく,呼吸運動等の体動の影響を画像から除去できる。
【0020】
また,被検体の動きが最も大きい方向を位相エンコード方向に設定するので,位相エンコード制御の効果を最大限に発揮できる。
【0021】
中間の変位を正負の最大の位相エンコードに対応させるとともに,最大変位と最小変位を零位相エンコードに配置することによりPSFをデルタ関数に近い形状にでき,画像のアーチファクトを効果的に低減できる。
また,複数の位相エンコードループをもつ多次元計測法において,最外周の位相エンコード量をナビゲーションエコーに基づいて割り当てることにより,効果的に体動の影響を低減できる。
【0022】
y方向のナビゲーションエコー信号の1次元フーリエ変換と,基準ナビゲーションエコー信号の1次元フーリエ変換の投影像のエッジを比較することで,容易に変位を計測できる。また,ナビゲーションエコー信号のk空間データの位相と,基準ナビゲーションエコー信号のk空間データの位相の比較演算処理から被写体の変位を抽出する場合は,フーリエ変換が不要であり変位計測処理が高速化できる。
【0023】
ナビゲーションエコーデータを処理するためのプロセッサと,画像データを処理するためのプロセッサを別に設けることにより,次の磁化の励起サイクルまたは位相エンコードステップにおける位相エンコード量の計算が実時間で実行可能になる。従って動きの計測値と位相エンコード量の対応値に大きなずれが生じないようにできる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下,図面を用いて本発明を詳細に説明する。図4は本発明の適応対象である核磁気共鳴診断装置の概略構成図である。同図において402は被検体401の内部に一様な静磁場B0を発生させるための電磁石または永久磁石から成る静磁場発生装置,401は被検体,414aは高周波磁場を発生する送信コイル,414bは被検体から生じる核磁気共鳴信号を検出するための検出コイル,409は直交するx,yおよびzの3方向に強度が線形に変化する傾斜磁場Gx,Gy,Gzを発生する傾斜磁場コイル,410は傾斜磁場に電流を供給するための電源である。また,408はコンピュータ,406は信号処理系,421は操作部である。以上は一般的なMRI装置の構成と同じである。
【0025】
次にMRI装置の動作の概要を説明する。シンセサイザ411により発生させた高周波を変調器412で振幅または位相変調し電力増幅器413で増幅し,コイル414aに供給することにより被検体401の内部に高周波磁場を発生させ,核スピンを励起させる。通常は1Hを対象とするが,31P,12C等の核スピンを有する他の原子核を対象とすることもある。
【0026】
励起核スピンのエネルギー緩和に伴い被検体401から放出される核磁気共鳴信号は,コイル414bにより受信され,増幅器415で増幅された後,検波器416で直交位相検波され,A/D変換器417を経てコンピュータ408へ入力される。コイル414は送受信両用でもよく,別々でもよい。コンピュータ408は信号処理後,前記核スピンの密度分布,緩和時定数でコントラストを付与した密度分布,スペクトル分布等に対応する画像をディスプレイ428に表示する。424と425は計算途中のデータあるいは最終データを収納するメモリである。傾斜磁場発生系403,送信系404,検出系405は全てシーケンサ407によって制御され,このシーケンサ407はコンピュータ408によって制御される。コンピュータ408は操作部421からの指令により制御される。
【0027】
次に本発明の特徴を以下詳細に説明する。ここでは体動の例として図5に示すような呼吸運動を考え,図5(b)に示すようにトランス像における腹壁52の運動の方向をy軸にとり,y方向に位相エンコードを行うものと仮定する。呼吸運動は概略周期運動であり,図5(a)に示すような時間的に周期的な変位51を腹壁に生じる。周期はおよそ1秒である。
【0028】
第1の実施例を図1を参照しつつ説明する。図1はマルチショットEPI法へ本発明を適用した例である。このマルチショットEPI法ではk空間の位相エンコード軸をブロック状に2ないし32程度(図5(b)では5ブロック)に分割し,励起毎に各々のブロックを充填するデータを計測するものとする。便宜上以下では,位相オフセット用Gy15を位相エンコード用Gyと同一視することにする。ブロック状のk空間分割計測では,ブロックを他のシーケンスにおける位相エンコードと同等に扱える。EPIの位相エンコード16間に生じる体動は無視できる。
【0029】
スライス傾斜磁場Gz13と共にRFパルス11を印加し,z方向の所定スライス内の磁化を励起する。位相エンコードオフセット用の位相エンコード傾斜磁場Gy15を印加し,励起パルス11からTE/2経過後に180°RFパルス12を印加する。これにより,磁化が反転され,さらにTE/2経過後に静磁場不均一,ケミカルシフトによるオフレゾナンス成分のリフォーカスが生じる。反転用RFパルス12を印加後,リードアウト傾斜磁場Gx100を印加し,本エコー101を発生させ計測する。リードアウト傾斜磁場Gx100は正負に反転する台形波状状に印加する。Gx100の反転毎に位相エンコード用ブリップパルス16を印加する。本エコー計測後,Gy17により位相戻しを行う。
【0030】
続いてGy18によりナビゲーションエコー102を発生させる。ナビゲーション用Gy18は位相戻しを含む。本エコーはメモリに保存され,全ての位相オフセットについて終了しk空間が計測データによって埋まった後,一括して再構成処理される。一方ナビゲーションエコーは計測後直ちにy方向フーリエ変換され,被検体のy軸上への投影像が再構成される(処理110)。この投影像と後述の基準ナビゲーションエコーの投影像とを比較することにより,被写体のy方向の変位を計算する(処理111)。剛体的な平行移動の場合(図8(a))は投影像同士の相関係数が最大となるずれ量Δyを求める。膨張-伸縮運動では投影像のエッジ同士を比較する(図8(b))。変位の計算方法は被写体の動きの性格に応じて予め選択しておく。
【0031】
予め作成しておいた変位-位相エンコード量対応テーブルを参照し,今の変位に対応する位相エンコード量を決定する。そのエンコード量でのデータが既に取得済みであれば,次に近い位相エンコード量を選択する(処理113)。
【0032】
決定された位相エンコード量は次の繰り返し時間TR2の中で設定される。マルチショットEPI法では生成エコー数は2〜64程度,TRは100ms〜1000ms程度である。ナビゲーションエコーから位相エンコード量を計算する過程は,繰り返し時間TR1の中で終了する必要がある。TR1内でナビゲーションエコーを本エコーに続いて取得する位置は,エコー強度と体動の速さに依存する。後方に設定するとT2減衰によりナビゲーションエコーの強度が減衰して,変位検出の精度が悪化する。前方に設定すると,TR2内の計測時点での被写体の変位がナビゲーションエコーで検出した変位よりも大きくずれることになり,体動補正効果は低減する。
【0033】
MRI処理系の容量とTRの値によっては,処理110〜113がTR1内では完了しない場合もありえる。この場合はTR2の代わりにTR3,TR4....(3,4...番目のTR)でエンコード量を設定してもよい。
【0034】
処理の流れを図2で説明する。TRのサイクルの中で画像データを計測(処理21)した後,ナビゲーションエコーを計測(処理22)し,再構成し投影像を得る(処理23)。この投影像と基準ナビゲーションエコー投影像26との比較から変位を計算する(処理24)。基準ナビゲーションエコーとは変位の基準となるエコーであり,体動が最小の時刻に取得したエコーをこれに当てる。実際的には,本計測の直前に取得したナビゲーションエコーをこれに当ててもよい。対応テーブル27を参照して,変位からこれに対応する位相エンコード量を計算する(処理25)。次のTRサイクルでこの位相エンコードを設定して画像データを得る(処理21)。
【0035】
変位-位相エンコード量対応表を用いる代わりに,変位-位相エンコード量の対応関係を関数で記述しておいてもよい。関数の方がメモリが小さくて済む。一方,表を用いると,計測済みのエンコードを記録できる利点がある。
【0036】
被写体の変位をナビゲーションエコーによる投影像から検出しているので,被写体の動きが最も大きい方向をナビゲーションエコーの軸に設定する。また,この方向に本撮影の位相エンコード方向を設定する。
【0037】
変位Δyとkyの対応曲線(図6の62)は予備撮像の中で決定する。被写体を予備撮像し,ナビゲーションエコーを時系列に複数取ることにより,時間とΔyの曲線を作成し(図6(a)の61),次にΔyとkyとの対応曲線を,PSFが前述の条件になるべく近づくように決定する。時間t1は,kyをカバーするのに最低必要な時間である。呼吸動では1周期は約1秒であり,TR=500msの場合には2ショットが計測できる。k空間を2以上に分割した撮影では複数の周期にわたり計測する。1回の本撮像の間に体動の周期が複数含まれる場合でも図6のΔyとkyの対応曲線は変わらないが,計測済みの位相エンコードは記録しておき,重複して計測しないようにし,代わりに近傍の位相エンコードを計測する。
【0038】
Δyの時間曲線は被写体により異なるため,最適なΔyとkyの対応関係も異なる。しかし,被写体毎に最適なΔyとkyの対応関係を作成するには時間を要し,予備撮像の中では実行困難な場合もある。そこで,典型的な幾つかのΔyとkyの対応関係を予め作成しておき,被写体の体動の実測曲線に合わせて最も近似した曲線を選択して用いてもよい。
【0039】
さて,MRI装置の高度化に伴い,2次元的な撮影が短時間に実行可能となり,同時にz方向に位相エンコードを行う3次元計測法の実用性が高まってきた。これはマルチスライス法と比較して,スライス間の不連続が無く,様々な3Dのデータ処理を行う上で有利である。z方向の位相エンコードは通常スライス計測ループの外に置かれ,このループの周期は長いものとなる。スライスの計測が短時間に行えるシングルショットEPI法,シングルショットFSE法(FSE:高速スピンエコー法)やバースト法(特開平5-253192)であっても,スライス方向に位相エンコードを行う3次元計測は体動の影響を受ける程に時間のかかるものになる。一例としてシングルショットEPI法を考えると,スライス内の計測は100ms前後で終了できるが,TR=0.5秒で16のz方向位相エンコードを行うと8秒を要する。この間に約8周期の呼吸動が生じる。そこで,z位相エンコードに対して本発明を適用することは効果的である。このような例を別の実施例として図7に示す。図7では位相エンコード15がz軸に対して行われ,位相戻し17とナビゲーション用リードアウト18もz軸に対して行われる。
【0040】
ナビゲーションエコーから変位を検出するには,前述の方法以外に計測データの位相を用いる方法もある。ナビゲーションエコーの位相と基準ナビゲーションエコーの位相の比較から被写体の変位に関する情報を抽出する。SEシーケンスにて説明する。y方向を位相エンコード方向とし,x方向に励起毎にナビゲーションエコーを取るものとする。信号S(t)は式2で表される。
【数2】
ここで,ρ(x,y)は磁化密度,tはサンプリング時刻,τは位相エンコード傾斜磁場の印加時間,Gx,Gyはx,y方向の傾斜磁場強度である。
【数3】
式2,式3により信号S'(t)は式4となる。
【数4】
【0041】
これから,変位によりリードアウト方向の位置xに比例した位相回転が信号に発生することが分かる。実施例1にこれを利用すると,y方向をリードアウト方向とするナビゲーションエコーをショット毎に計測し,基準ナビゲーションエコーに対するサンプリング時刻に比例した位相回転量を抽出すれば,ショット間での変位を計測できる。この方法は演算処理がk空間の信号に対して行われるので,逆フーリエ変換が不要であり,処理を高速に行える。一方,被写体全体が励起間に剛体的にΔy変位することを前提にしているので,膨張-伸縮のような非剛体的な変位には適用できない。
【0042】
ナビゲーションエコーから位相エンコードを計算する過程は高速性が要求されるので,専用のプロセッサを設置するのが望ましい。図9にブロック図を示す。ナビゲーションエコーの計測信号はA/D変換後,時系列データとしてプロセッサ901へ入力する。プロセッサ901はこのデータを元にして変位計算,次の位相エンコードの割当てを行い,正規のシーケンサ407へ位相エンコード設定情報を引き渡す。シーケンサ407はこの情報を受けて位相エンコードを設定して本計測を行う。処理速度が十分早ければ,ナビゲーションエコーを計測した同じTRの中で位相エンコードを設定することもできる。これを図10に示す。図10では励起RF11と反転RF12の間にナビゲーションエコー102を取得し,これに基づいて同じTRの中で位相エンコード15を設定している。
【0043】
以上,マルチショットEPI法をベースにして説明してきたが,本発明はSE,FSE,GrE,3D-EPI等種々の公知の位相エンコードループを有するシーケンスへ適用することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば位相エンコードループ間の被写体の変位に起因するアーチファクトを,外部モニター装置を用いることなく低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の代表的な実施例を示す図。
【図2】 本発明の処理の流れを示す図。
【図3】 変位と位相エンコード量の対応を示す図。
【図4】 磁気共鳴画像診断装置の全体の構成を示す図。
【図5】 腹壁の変動を示す図。
【図6】 変位の周期と位相エンコード量の対応を示す図。
【図7】 本発明のバリエーションの1つである3次元計測シーケンスを示す図。
【図8】 変位の検出方法を示す図。
【図9】 専用プロセッサによる処理を示す図。
【図10】 同一サイクル内での処理を示す図である。
【符号の説明】
11.....励起90°RFパルス
12.....リフォーカス傾斜磁場パルス
13,14.....スライス選択傾斜磁場パルス
15.....k空間位相オフセット傾斜磁場パルス
16......位相エンコード傾斜磁場パルス
17........k空間位相オフセット戻し傾斜磁場パルス
18......ナビゲーションエコー生成用傾斜磁場パルス
19.....ワープ傾斜磁場パルス
31....変位と位相エンコード量の対応曲線
32....PSF
51.....呼吸による腹壁の変位曲線
52.....被検体
53.....ベッド
61.....呼吸動
62....変位と位相エンコード量の対応曲線
100......リードアウト傾斜磁場パルス
101.....エコー信号
102.....ナビゲーションエコー信号
114......k空間のブロック
401......被写体
413.....RFアンプ
414a......送信RFコイル
414b....検出RFコイル
415.....プリアンプ
417......A-D変換器
901....専用プロセッサ
Claims (8)
- 被検体からのエコー信号に位相エンコードを印加して計測する計測制御手段を備え、
前記計測制御手段は、前記被検体の変位情報に対応して前記位相エンコードの印加順序を制御して前記被検体の撮影を行う磁気共鳴画像診断装置であって、
前記計測制御手段は、前記位相エンコードの印加順序の制御を、予め作成された前記変位情報と前記位相エンコードとの対応関係の中から選択された、前記被検体の体動の実測曲線に最も近似した対応関係に基づいて、前記位相エンコードと前記変位情報との対応が不連続となるように行うことを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記計測制御手段は、前記位相エンコードの印加順序の制御を、所望の位相エンコードにおける前記変位情報の変化が、他の位相エンコードにおける前記変位情報の変化よりも、大きくなるように行うことを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項2に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記計測制御手段は、零位相エンコードで前記被検体の変位が最大から最小へ飛躍し、正負最大の位相エンコードで前記被検体の変位が中間となるように、前記位相エンコードの印加順序を制御することを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記被検体の動きが最も大きい方向が位相エンコード方向に設定されることを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記計測制御手段は、前記被検体からのエコー信号に複数の位相エンコードを印加して行う多次元計測において、前記変位情報に対応して、最外周の位相エンコードの印加順序を制御することを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項5に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記計測制御手段は、前記最外周の位相エンコード方向にナビゲーションエコー計測シーケンスを挿入して、前記変位情報を取得することを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項1に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記計測制御手段は、ナビゲーションエコー計測シーケンスを用いて、前記被検体の体動情報を含むエコー信号を計測し、
計測された前記ナビゲーションエコー信号の一つを基準として、該基準ナビゲーションエコー信号と他のナビゲーションエコー信号との比較から、前記変位情報を取得する信号処理手段を備えていることを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。 - 請求項7に記載の磁気共鳴画像診断装置において、
前記計測制御手段は、前記被検体の体動が最小のときに取得したナビゲーションエコー信号を前記基準ナビゲーションエコー信号とすることを特徴とする磁気共鳴画像診断装置。
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