JP4563084B2 - チューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法 - Google Patents

チューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法 Download PDF

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本発明は、チューブ状に形成することにより、コストを低減し、かつ小型化が可能なチューブ型燃料電池に用いられるチューブ型燃料電池用膜電極複合体に関する。
従来の平板構造の固体高分子電解質型燃料電池(以下、単に燃料電池と称する場合がある。)の最小発電単位である単位セルは、一般に固体電解質膜の両側に触媒電極層が接合されている膜電極複合体を有し、この膜電極複合体の両側にはガス拡散層が配されている。さらに、その外側にはガス流路を備えたセパレータが配されており、ガス拡散層を介して膜電極複合体の触媒電極層へと供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスを通流させるとともに、発電により得られた電流を外部に伝える働きをしている。
しかしながら、現在このような従来の平板構造の燃料電池においては、単位セルの構成要素である固体電解質膜、触媒電極層、ガス拡散層、セパレータの厚さや耐久性等設計限界に近づきつつある。例えば、単位体積当たりの発電反応面積を大きくするためには、固体電解質膜の厚さを薄くする必要があるが、現在汎用されているナフィオン(商品名:Nafion、デュポン株式会社製)の膜は厚さが一定以下になるとガス透過性が大きくなりすぎ、セル内でガスのクロスリークが生じて発電電圧が低下する等の問題がある。このようなことから、現在以上に単位体積当たりの出力密度を向上することは構造上困難である。
そこで、中空糸等を用い、その内面および外面に電解質膜や触媒電極層等を積層したチューブ形状の膜電極複合体を用いて燃料電池を構成することにより出力密度を高める研究が行なわれている。しかしながら、径の極めて小さなチューブ状に膜を精度よく形成することは容易ではないため、従来の平板構造では問題にならなかったことがチューブ形状の膜電極複合体において問題となる場合がある。
例えば、チューブ型の燃料電池においては、発電反応により発生した電力はチューブの軸方向に流し、集電されるが、効率よく集電するためにはチューブ形状の固体電解質膜の内側および外側に配置された触媒電極層と集電体とを密着させる必要がある。従来の平板構造の燃料電池においては、平板形状であることから触媒電極層と集電体とを密着させることは容易であるためそのことは問題にはならなかった。しかしながらチューブ形状の燃料電池においては、特に、チューブの内側の集電体をその外側に位置する触媒電極層に圧力をもって密着させることが困難であるため、集電を効率よく行うことが困難であった。
なお、特許文献1には、中空形状のガス拡散電極層上に固体高分子電解質層、さらにガス拡散電極層が形成された固体高分子型燃料電池、およびその製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1においては、上記ガス拡散電極層をガスの流路のみならず集電体としても用いる旨が記載されており、このような方法では効率的な集電は困難であることが考えられる。
特開2002−124273号公報
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、固体電解質膜の内側に位置する内側集電体と内側触媒電極層とを密着させることにより、チューブの軸方向の集電機能を向上させ、発電反応により発生した電力を効率よく集電できるチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、チューブ状の固体電解質膜と、上記固体電解質膜の外周面に形成された外側触媒電極層と、上記固体電解質膜の内周面に形成された内側触媒電極層と、上記外側触媒電極層の外周面に配置された外側集電体と、上記内側触媒電極層の内周面に配置された管状の内側集電体とを有するチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法において、上記固体電解質膜は、硬化時に収縮する硬化収縮性電解質材料からなる電解質前駆体層を硬化させてなるものであり、チューブ状に成形された上記電解質前駆体層の内周側に、上記管状の内側集電体の外周面上に上記内側触媒電極層が形成された内側積層体を配置し、上記内側積層体が配置された状態で上記電解質前駆体層の硬化を行い、固体電解質膜とすることを特徴とするチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法を提供する。
本発明のチューブ型燃料電池用膜電極複合体(以下、単に膜電極複合体と称する場合がある。)の製造方法によれば、固体電解質膜の製造時の硬化収縮を利用して、内側集電体と内側触媒電極層とを密着させることができるので、チューブの軸方向の集電機能を向上させることができ、発電反応により発生した電力を効率よく集電することができる。
本発明のチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法は、軸方向の集電機能が高く、発電反応により発生した電力の集電効率が良好な膜電極複合体を製造することが可能であるといった効果を奏する。
以下、本発明のチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法について詳細に説明する。
本発明においては、内側集電体上に内側触媒電極層が形成された内側積層体を、チューブ形状に形成された硬化前の硬化収縮性電解質材料である電解質前駆体層の内側に配置し、上記内側積層体が挿入された状態で電解質前駆体層の硬化反応を進行させる。本発明においては、固体電解質膜の形成に用いられる硬化収縮性電解質材料は、反応して硬化する際に収縮するので、硬化前よりも硬化後の方が電解質膜のチューブ径は小さくなり、その結果固体電解質膜の内側に挿入された内側積層体に圧力がかかる。
チューブ形状の膜電極複合体においては、内側触媒電極層と内側集電体とを密着させるために応力を加えることが困難であるため、効率的な集電を行うことができなかった。しかしながら、上述したように本発明においては、硬化収縮性電解質材料により形成されたチューブ状の電解質前駆体層が硬化して収縮することにより、内側積層体に外周側から圧力を加えることができ、これを内側触媒電極層と内側集電体とを密着させる応力とし、両者の密着性を向上させることにより効率的な集電が可能になる。
まず、本発明の膜電極複合体の製造方法により製造された膜電極複合体の構造について図を用いて説明する。
図1は、本発明の膜電極複合体の製造方法により製造された膜電極複合体の一例を示す概略構造図である。図1に示すように、本発明の製造方法により製造された膜電極複合体1は、チューブ形状の最内面に内側集電体2が設けられており、その外側面上に内側触媒電極層3、固体電解質膜4、外側触媒電極層5、および外側集電体6がこの順に積層された構造を有する。なお、本発明においては、内側集電体2上に内側触媒電極層3が形成されたものを内側積層体7とする。
以下、上述したような各層の形成方法について、それぞれ説明する。
1.内側積層体の形成方法
本発明の膜電極複合体の製造方法においては、内側集電体上に内側触媒電極層が形成された内側積層体を形成する。その際に用いられる内側集電体は、管状、且つポーラスで導電性を有し、電解質前駆体層の収縮による圧力によって破損等されない程度の剛性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボンまたは、ステンレス鋼、チタン、白金、金、TiC、TiSi、SiO,B,NdO,TiB等の金属等を用いることができる。
このような内側集電体の形状は、中心部は燃料ガスや酸化剤ガスなどの気体がチューブの軸方向に通過できるような管状形状であり、かつ壁面部には、上記気体が内側集電体の内側から外側へ、チューブの径方向に通過できるような空隙を有する形状であることが好ましい。このような形状の例としては、バネ形状のもの、管の壁面部に、その壁面を貫通する孔を多数有する形状や、管の壁面部が網目構造のもの等を挙げることができる。
本発明においては、上述したような管状の内側集電体上に内側触媒電極層を形成する。これは、上記内側集電体上に触媒電極層形成用塗工液を塗布し、乾燥等により固化すること等により形成することができる。その際に用いられる触媒電極層形成用塗工液は、一般的に燃料電池の触媒電極層に用いられる固形成分を溶媒中に分散させることにより得ることができる。含有される固形成分としては、白金等の触媒、カーボン粉末等の上記触媒が担持される担体、およびナフィオン(商品名:Nafion、デュポン株式会社製)等の電解質材料等を挙げることができ、粘度調整などの必要に応じてその他の添加物を添加することができる。
触媒電極層形成用塗工液に用いられる溶媒は、上記固体成分を分散させることができる溶媒であれば特に限定されるものではない。用いることができる溶媒の例としては、アルコール、水、グリコール、脂肪酸エステル、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。
上述したような触媒電極層形成用塗工液を上記内側集電体上に塗布する厚さ、つまり内側触媒電極層の厚さは特に限定されるものではないが、1〜100μmの範囲内、中でも3〜10μmの範囲内であることが好ましい。また、上記触媒電極層形成用塗工液を塗布する方法は、上記触媒電極層形成用塗工液を上記内側集電体上に上記範囲内の厚さで均一に塗布できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、静電塗工スプレー法、ディッピング法等の塗布方法を挙げることができる。
2.固体電解質膜の形成方法
本発明においては、硬化収縮性電解質材料をチューブ形状に成形して電解質前駆体層を形成し、上記電解質前駆体層の内側に上記内側積層体を挿入し、その状態で上記電解質前駆体層の硬化反応を進行させる。なお、本発明においては、上記チューブ形状に成形された硬化収縮性電解質材料の硬化前の状態を電解質前駆体層とし、該電解質前駆体層の硬化後の状態を固体電解質膜とする。
このような硬化収縮性電解質材料は、硬化する際に収縮する材料であり、硬化後にプロトン伝導性を有する絶縁性材料であれば特に限定されるものではない。
例えば、ゾル−ゲル法で形成される細孔を有するプロトン伝導性ガラス(例えば、化学と工業 第57巻 第4号(2004年)p410〜p413)、多孔質ガラスの細孔内表面のOH基にメルカプトプロピルトリメトキシシランのシランカップリング剤を反応させ、その後にメルカプト基の−SHを酸化することにより、プロトン伝導性を有するスルホン酸基を導入したもの(例えば、化学と工業 第57巻 第1号(2004年)p41〜p44)、リン酸ガラスを応用したもの(例えば、燃料電池 Vol.3 No.3 2004 p69〜p71)等を挙げることができる。
本発明においては、中でもゾル−ゲル法による材料が好ましい材料であるといえる。後述するようにチューブ状に押出して硬化させることが可能であり、収縮力も大きいからである。
なお、本発明においては、上述したように硬化する際に収縮する材料であり、硬化後にプロトン伝導性を有する絶縁性材料であれば有機材料でも用いることが可能である。
本発明における電解質前駆体層は、予めチューブ状に形成される。このようにチューブ状に形成する方法としては、上述したようにゾル−ゲル法によるプロトン伝導性ガラスの場合のようにある程度形状を保つ材料の場合は、チューブ状に押出す方法を採ることができる。この場合、上記電解質前駆体層の内径は、その内側に挿入される内側積層体の外径、および内側積層体の外側面にかける面圧等に応じて適宜調整することができる。
具体的には、例えば図2に示すような、硬化前の硬化収縮性電解質材料をチューブ形状に押し出し成形して電解質前駆体層8を形成し、その内側に上記内側積層体7を挿入する方法を挙げることができる。
また、硬化収縮性電解質材料が液状等であり、チューブ状の形状を保つことが困難な場合は、上述した内側積層体の内側触媒電極層外周面に上記硬化収縮性電解質材料を塗布することにより、チューブ状の電解質前駆体層とすることができる。
チューブ形状に成形された電解質前駆体層の厚さは特に限定されるものではないが、1〜100μmの範囲内、中でも5〜10μmの範囲内の厚さで成形されることが好ましい。
このような電解質前駆体層を硬化させ、固体電解質膜とする方法は、用いる材料により種々の方法が用いられ、硬化時に電解質前駆体層の内周面の径が減少する方向に収縮させることができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、内側触媒電極層に悪影響を与えない程度に加熱する方法や、電子線照射等の活性放射線を照射して硬化させる方法等を挙げることができる。
なお、硬化時もしくは硬化後に、例えば酸処理を施してプロトン伝導基を付加する工程を有するものであってもよい。
上記のように形成された電解質前駆体層は、硬化反応が進行するにしたがって収縮するので、硬化収縮性電解質材料が硬化した後の固体電解質膜の内径は、硬化収縮性電解質材料が硬化する前の電解質前駆体層の内径に比べて小さくなる。そのため、固体電解質膜の内壁は、その内側に位置する上記内側積層体の外壁に面圧をかけることとなり、これにより、固体電解質膜と内側積層体とを密着させることが可能となり、内側積層体中の内側触媒電極層と内側集電体の密着性を向上させて集電効率を向上させることができると同時に、固体電解質膜と内側触媒電極層との密着性も向上させることができるので、プロトン伝導性を向上させることも可能となる。
3.その他
本発明においては、上記電解質前駆体層が硬化収縮して固体電解質膜とされた後、この固体電解質膜上に外側触媒電極層、さらにその上に外側集電体を形成が形成される。外側触媒電極層は、固体電解質膜上に触媒電極層形成用塗工液を塗布して固化させること等により形成することができる。この際に用いられる触媒電極層形成用塗工液や、その塗布方法等については特に限定されるものではなく、上記内側触媒電極層の形成に関する記載と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明においては、上記外側触媒電極層上にさらに外側集電体が形成される。このような外側集電体は、特に限定されるものではなく、上記内側集電体と同様な材質により、同様な形状に形成されたものを用いることができる。
上記外側集電体の配置方法としては、外側集電体に管状のものを用いる場合は、外側集電体を加熱等により膨張させ、これに上記外側触媒電極層が上述した固体電解質膜上に形成された積層体を挿入し、冷却する方法等を挙げることができる。また、外側集電体にバネ形状のものを用いる場合は、バネを拡げた状態で上記積層体を挿入し、バネの拡がりを元に戻す方法等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、上記説明においては、外側触媒電極層と外側集電体と、さらには内側触媒電極層と内側集電体とを別々の構成であるかのように記載されているが、集電体自体に触媒が担持されたカーボンチューブが形成されている場合等のように、集電体と触媒電極層とが一体化され両機能を有するような構成とされる場合もある。本発明は、このような構成をも含むものである。
本発明の膜電極複合体の製造方法により製造された膜電極複合体の一例を示す概略構成図である。 本発明の膜電極複合体の製造方法における、電解質前駆体層の内側に上記内側積層体を挿入する方法の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 … 膜電極複合体
2 … 内側集電体
3 … 内側触媒電極層
4 … 固体電解質膜
5 … 外側触媒電極層
6 … 外側集電体
7 … 内側積層体

Claims (1)

  1. チューブ状の固体電解質膜と、前記固体電解質膜の外周面に形成された外側触媒電極層と、前記固体電解質膜の内周面に形成された内側触媒電極層と、前記外側触媒電極層の外周面に配置された外側集電体と、前記内側触媒電極層の内周面に配置された管状の内側集電体とを有するチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法において、
    前記固体電解質膜は、硬化時に収縮する硬化収縮性電解質材料からなる電解質前駆体層を硬化させてなるものであり、チューブ状に成形された前記電解質前駆体層の内周側に、前記管状の内側集電体の外周面上に前記内側触媒電極層が形成された内側積層体を配置し、前記内側積層体が配置された状態で前記電解質前駆体層の硬化を行い、固体電解質膜とすることを特徴とするチューブ型燃料電池用膜電極複合体の製造方法。
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