JP4563001B2 - 扁平角形電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、扁平角形電池に係り、特に外装ケースに生じるスプリングバックと、内装ケースの変形を防止し、封口性を向上する扁平角形電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やPDAなどの小型情報端末を中心に使用機器の小型化が加速しており、主電源である二次電池についても小型化を図ることが要求されている。これに対し、特許文献1、特許文献2に示すような負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと、正極端子を兼ねる金属製の正極ケースが、絶縁ガスケットを介し嵌合され、さらに前記正極ケースまたは負極ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し、その内部に少なくとも正極、セパレータ、負極を含む発電要素と、非水電解質を内包した扁平形非水電解質二次電池において、扁平形電池の扁平面に垂直な方向の断面を見た場合に、少なくとも3面以上の正極と負極がセパレータを介し対向している正負極対向面を有した電極群が収納され、かつ、電極群内の正負極対向面積の総和が絶縁ガスケットの開口面積よりも大きい扁平形非水電解質二次電池が小型化の要求を満たす電池として提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−068160号公報
【特許文献2】
特開2001−068143号公報
【0004】
さらに、最近になり液晶をはじめとした表示装置を有する小型機器は、薄型化を進める一方、表示装置の小型化には実使用上限度があるため、機器全体に占める表示装置の占有面積比率を極力大きくして、機器全体を小型化することが検討されている。この表示装置の多くは角形状を有していることから、この形状に機器を合わせるため機器全体が角形状を有するものが多くなっており、機器内での電池の搭載には周縁部に少なくとも2つ以上の直線部を有し、各直線部の端部が略円弧状曲線部により結ばれている角形や小判型に代表される小型の扁平形電池が望まれている。
【0005】
しかしながら、従来のLiイオンやニッケル水素二次電池に見られるような深絞りをした外装ケースに封口板をレーザ溶接して封口している電池では、薄缶の製缶や電極挿入などの組立工程上の制約から電池の小型化に対してほぼ限界に来ている。
【0006】
そこで、より小さく薄い略角形状を有する電池を製作するには新たな封口構造を用いた電池が必要であり、金属製の外装ケースと内装ケースが内部に電極を保持した状態で絶縁ガスケットを介し嵌合され、さらに外装ケースを加締め加工により封口部を形成した電池が望ましい。
【0007】
しかしながら、周縁直線部をもつ扁平角型電池を従来のコイン形やボタン形の電池と同様に外装ケースの開口部を1/8〜1/4円弧に加締めた場合、外装ケースの周縁直線部にスプリングバックが生じ封口が甘くなったり、外装ケースを加締める際に内装ケースの側壁が内側に内傾や湾曲を起こし、十分な封口性を得ることはできなかった。特に電池が蒸気圧の高い高温高湿下に保存された場合、多大な影響を受け、外部から電池内に水分(水蒸気)が浸入し電池の開路電圧を大きく低下させたり、あるいはガス発生を招き電池を膨れさせたりした。前者は電池の電源としての基本機能を低下させ、後者は規格寸法外に電池が膨れ、薄型化された使用機器に変形や損傷を与えるので、その改善が望まれていた。
【0008】
従来のコイン形やボタン形の電池の場合、内装ケースに内傾が生じようとすると、内装ケースの開口部の半径が小さくなるため、ケース基材には円周方向に均一な圧縮応力が働く。これに反発する梁の作用が内装ケースに働くため、円形の内装ケースにはケース側壁の内傾や湾曲(陥没)は生じ難かった。しかしながら、周縁直線部を有する電池において、周縁曲線部は従来の円形電池と同様に梁による作用が働くものの、周縁直線部は実質的に曲げ加工を行われた平板に近いものであり、梁の作用が働かず、外装ケースを加締め加工する際に働く圧縮応力に対し耐力が弱く、内装ケース側壁の内傾や湾曲が生じた。その結果、期待した封口性は得られず、また、内装ケースの湾曲を防止するために外装ケースの加締め加工圧力を弱めた場合、それに伴い、ガスケットの圧縮率の低下と外装ケースのスプリングバックの増加を招き、所望の封口性を得ることはできなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記情況に対処するためになされたもので、その課題は、外装ケースの加締め加工時の内装ケースの内傾及び湾曲と加締め後の外装ケースに生じるスプリングバックを防止し、かつ、封口部の強度を高め、電池が高温高湿下に置かれても開路電圧の低下が少なく、しかも、電池総高の増加の少ない扁平角形電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、金属製の外装ケースと金属製の内装ケースが、電池の扁平面に対し鉛直方向に絶縁ガスケットを介し嵌合され、さらに前記絶縁ガスケットの外周側に配置された前記外装ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し、かつ電池の厚さが外寸よりも小さく、周縁部に少なくとも2つ以上の周縁直線部(以後、周縁直線部Bとする)を有し、前記直線部の各々の端部が周縁曲線部(以後、周縁曲線部Aとする)により結ばれている扁平角形電池において、前記周縁曲線部の加締め形状が曲線であると共に、前記周縁直線部に該当する部位の前記外装ケースが、前記外装ケースの先端と加締め曲げ部との中間に直線部を設けた形状に加締められたことで、加締め加工時の内装ケースの内傾及び湾曲と外装ケースに生ずるスプリングバックを防止するとともに、封口強度を高め、電池が高温高湿下に置かれても外部からの水分の浸入を防止できることを見出した。
【0011】
本発明者等は外装ケースの加締め挙動に注目し解析を行った結果、従来の円型電池と同様に外装ケースの先端を内側に向けて1/8〜1/4円弧を有する形状に加締める場合、周縁直線部において加締めが進行する過程で外装ケースの側壁がケースの底部周辺から一旦、過度に内傾した後、加締め金型のR形状に沿う形に加締められる挙動をとることを見出した。このため、加締めの中間過程で側壁底部から倒れ込んだ外装ケース側壁が内装ケース及び絶縁ガスケットを圧迫し、内装ケース側壁の内傾や湾曲を招いていることをつきとめた。
【0012】
本発明者等は改善を図るために種々の対策を検討した結果、外装ケースの加締め形状を電池の肩R部全体に渡り1/8〜1/4円弧を設けた従来のアール形状から、外装ケースの先端と加締め曲げR部の間に直線部を設けた形状とし、加締め曲げRを従来より小さな円弧として繋いだ形状に変更することで内装ケースに生じていた変形を防止できることを見出した。
【0013】
また、外装ケースに直線部を設けた形状とすることでこの直線の末端である外装ケース側壁の中央付近に折り曲げ荷重が集中するため外装ケースを側壁中央付近から無理無く折り曲げるように加締めることができる。折り曲げの支点がケース側壁底部から側壁中央に移るためケース先端が内寄りに移動する移動量が減るとともに、外装ケース側壁がガスケット側部並びにその内側の内装ケースに加える押し圧を低減することができ、その結果、内装ケースの変形を防止することができる。
【0014】
さらに、側壁中央を折り曲げることで封口部の硬性を向上させることができ、優れた封口性を長期に渡り維持することができる。この時、外装ケースに設けた直線部に繋がる加締め曲げ部の曲げ半径は、外Rで外装ケース基材板厚の4倍以下とするのが特に好ましく、曲げ半径を小さくすることで加締め曲げ部に曲げ荷重が集中し、外装ケースを側壁中央付近から折り曲げ易くなり、ケース底部からの側壁内傾を防止する効果をより高められる。さらに、曲げ半径の小さい方が折り曲げ部に生じる歪も大きくなるためその後のスプリングバックも生じ難い。
【0015】
従来の円形電池では、外装ケース先端の曲げ半径を大きく取る方がガスケットの圧縮率を高められることから封口性は向上し、通常は板厚の5〜6倍の曲げ半径を採用して外装ケース先端を1/8〜1/4周の円弧状に加締めるが、この点で周縁直線部をもつ本発明の電池は従来の円型電池と大きく異なる。
【0016】
ただし、本発明の電池において、加締め曲げ半径が基材厚さの1.5倍未満となる曲げ半径は小さすぎるため加締め曲げ部の金属ケース表面や金型表面に細かな傷が生じやすく、出来あがった電池の外観が劣ることがあり、曲げ半径を基材厚さの1.5倍以上とするのがさらに好ましい。
【0017】
次に、本発明者等は、外装ケースに直線部を残し加締めることで封口部の強度が向上したことに注目し、加締め加工後の外装ケースに設けた直線部の折り曲げ角度について検討を重ねた。その結果、加締め後の直線部を、外装ケース側壁と概ね直交させ、外装ケースに設けた直線部を外装ケース底面に対し、水平角度で25°〜−15°の範囲に保つと水平方向の応力やケース基材の反りに対し、著しく強くなり、厳しい条件の外部環境に電池が置かれた場合でも封口部の変形が生じ難く、外部からの水分の浸入を長期に渡り抑制できることを見出した。また、水平角度が−15°より小さいと、外装ケースの先端の直線部端が内装ケースの張出し部を過度に押し下げてしまい、内装ケースに変形をきたしたり、外装ケース中央の加締め曲げ部が外装ケース先端より高い位置となるため、この部位のガスケットの圧縮が行われずガスケットと外装ケースの間に隙間が生じ封口性の改善効果が比較的小さいことも分かった。
【0018】
また、周縁曲線部の加締め形状は加締め後のケース先端の加締め形状が1/4周以上の弧長を有する曲線、すなわち、曲げ開始点から終点(ケース先端)までの曲げ角度が90°以上の曲線である形に加締めるのがよい。周縁曲線部の外装ケースは円周方向の圧縮作用が働くため周縁直線部ほどスプリングバックは生じ難く、90°以上の曲げ角度を有していれば実用に耐える。無理に直線部を有する形状に加締めようとした場合、ガスケットにストレスを与え反って好ましくない。
【0019】
この場合、曲げ開始点の位置を周縁直線部の曲げ開始点の位置と等しくし、また、曲げ終点の位置を周縁直線部の外装ケース先端の位置に揃えるのがよい。これにより周縁曲線部と周縁直線部の形状差異により両者の境界部分で封口性が劣ることを防止できる。
【0020】
ここで、本発明は扁平角形電池の封口構造について、詳しくは外装ケースの加締め形状を改良し、封口性を向上することに主点を置いたものであり、電極および電極構成については限定されるものではなく、電極構造については、薄膜電極を捲回した捲回電極の他、薄膜電極を積層した積層電極、顆粒を成形したペレット電極等、あらゆる電極について同様の効果が期待できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例及び比較例について、リチウムイオン二次電池に採用した場合を例に、詳細に説明する。
【0022】
(実施例1)
本実施例1の電池の断面図を図1に、平面図を図2にそれぞれ示す。以下本実施例1の電池の製造方法を説明する。
【0023】
まず、LiCoO2100質量部に対し導電材としてアセチレンブラック5質量部と黒鉛粉末5質量部を加え、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5質量部加え、N−メチルピロリドンで希釈、混合し、スラリー状の正極合剤を得た。次にこの正極合剤を、正極集電体である厚さ0.02mmのアルミ箔の片面にドクターブレード法により塗工、乾燥を行い、アルミ箔表面に正極作用物質含有層を形成した。以後、正極作用物質含有層の塗膜厚さが両面で0.15mmとなるまで塗工、乾燥を繰り返し、両面塗工正極を作製した。次に、この電極体の片面の端から20mm部分の作用物質含有層を除去し、アルミ層を剥き出し通電部とし、幅19mm、長さ200mm、厚さ0.15mmの長さに切り出した正極板を作製した。
【0024】
次に、黒鉛化メソフェーズピッチ炭素繊維粉末100質量部に結着剤としてスチレンブダジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ2.5質量部を添加し、イオン交換水で希釈、混合し、スラリー状の負極合剤を得た。得られた負極合剤を負極集電体である厚さ0.02mmの銅箔に作用物質含有層の厚さが0.15mmとなるように正極の場合と同様に塗工、乾燥を繰り返し実施し両面塗工負極を作製した。次に、この電極体の片面の端から20mm部分の作用物質含有層を除去し、銅層を剥き出し通電部とし、幅20mm、長さ200mm、厚さ0.15mmの長さに切り出した負極板を作製した。
【0025】
次に、正負極通電部面を外周巻き終わり側とし、これら正極と負極の間に幅22mm、厚さ25μmのポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介し渦巻状に捲回し、扁平形電池の扁平面に対し水平方向に正負極対向部を持つように一定方向に捲回電極の中心部の空間がなくなるまで加圧した。以上の方法により縦22mm、横22mmの扁平コイル状の電極群3を製作した。
【0026】
次に板厚0.25mmのステンレス材からなる内装ケース(負極金属ケース)4の内面に厚さ0.03mmのステンレス製の金属ネット5を溶接し、絶縁ガスケット6と一体化した。続いて85℃で12h乾燥処理を行った電極群3を電極群の片面塗工負極板の未塗工側が前述の金属ネット5に接するように配置し、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した溶媒に支持塩としてLiPF6を1mol/lの割合で溶解せしめた非水電解質を注液し、さらに電極群の片面塗工正極板の未塗工側に接するように厚さ0.03mmのAl製の金属ネット2が内面に溶接された板厚0.2mmのステンレス材の内面に厚さ50μmのAlがクラッド処理された板厚t0.25mmのクラッド材からなる外装ケース(正極ケース)1を嵌合し、上下反転後、外装ケースに加締め加工を実施し、封口し、厚さ3.2mm、縦30mm、横30mmの実施例1の扁平角形非水電解質二次電池を製作した。
【0027】
ここで封口部を加締める方法であるが、下パンチ上にガスケットや電極を内包し内装ケースと嵌合した外装ケースを置き、その内装ケースの上面にナックアウトピンを当てた状態で、電池の外周部と同形状を有する角筒状の開口部を有し、その開口部の上部に外装ケースの先端を一回り小さな開口寸法に加締めるダイ金型を下降させ、外装ケースの先端を加締めた。ただし、この方法は従来の円型電池の製造方法に類似した製造方法であり、外装ケースの加締め部に直線部を設け加締めるためにはダイ金型の開口部の形状を次のようにするとよい。
【0028】
本発明の如く板厚に対し曲げ半径が比較的小さく、また、先端直線部の形状が短い場合はダイ金型に希望する曲げ半径の1〜2倍の半径を有し、曲げ開始から終点までの曲げ角度が100°〜150°のR形状を有する金型を用いる。加締める際に外装ケースの先端がダイ金型の内Rの上支点(曲げ角度90°)を過ぎたところでダイ金型の残りの先端R部により外装ケース先端を外向きに押し返す応力が働き金型Rの進行方向にケース先端が逃げるのを防止する作用が働く。これにより外装ケース先端がダイ金型先端に固定されながら加圧力が働くため、外装ケース先端が逃げず、ダイ金型のR開始位置から外装ケースの座屈が起こり、先端と加締め曲げR部の間に直線部を有する形状に加締められる。また、加締め加工時に外装ケース先端に強大な圧縮応力が作用するため外装ケースのスプリングバックも抑えられる。
【0029】
ここで、本実施例1の電池を加締めた際の周縁直線部の加締め部の断面拡大図を図3に、周縁曲線部の加締め部の断面拡大図を図4にそれぞれ示す。電池を下パンチ9上に置き、ナックアウトピン8で電池を加圧した状態でダイ金型7を上方から下降させ、図3、図4に示すように封口部を加締めた。
【0030】
この際、外装ケースを加締めるダイ金型に縦横30mm、4角のRが6Rである開口部を有し、その開口部の上端に内方向への曲げR1(カン外R)を有し、その曲げRの曲げ半径(金型内R)R0が0.65mmで、曲げRのR開始点からR終点までの曲げ角度(金型先端Rまでの角度)ω0が135°であるダイ金型を用いて加締め加工を行った。なお、P0はR0,ω0の原点(金型Rの中心)、P1はR1の原点(カン外Rの中心)である。
【0031】
これにより外装ケースの周縁直線部において、加締め後のケース先端形状が長さ0.5mmの直線となり、先端直線部と側壁部を繋ぐ曲線部の曲げ半径R1がカン外Rで0.5mmであり、ケース先端直線部とケース底面のなす角度θ1が0°であり、また、外装ケースの周縁曲線部において、加締め後のケース先端の加締め形状が曲線であり、曲げ半径R2がカン外Rで0.65mmであり、R開始点からR終点(ケース先端)までの曲げ角度ω2が123°である実施例1の電池を得た。この時、加締め加工時に外装ケース先端がダイ金型の先端で押え付けられながら加締められるため、コーナ部では金型Rの中心とカン外Rの中心が同一となり、半径もR2=R0となる形状の電池を得ることができる。
【0032】
(実施例2)
加締める際に曲げ半径R0が0.55mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.375mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.55mm、曲げ角度ω2が126°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0033】
(実施例3)
加締める際に曲げ半径R0が0.8mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.65mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.8mm、曲げ角度ω2が116°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0034】
(実施例4)
加締める際に曲げ半径R0が0.95mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.85mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.95mm、曲げ角度ω2が115°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0035】
(実施例5)
加締める際に曲げ半径R0が1.1mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が1mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が1.1mm、曲げ角度ω2が111°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0036】
(比較例1)
加締める際に図5の断面拡大図に示す曲げ半径R0が1.3mmであり曲げ角度ω0が90°であるダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、外装ケース周縁直線部において、加締め後のケース先端の形状が曲線であり、曲げ半径R1が外Rで1.4mm、R開始点から終点(ケース先端)までの曲げ角度ω1が80°、周縁曲線部の形状が曲げ半径R2が1.3mm、曲げ角度ω2が80°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0037】
この比較例1の電池では、周縁直線部の曲げ半径R1がダイ金型内面の曲げ半径R0より大きくなっており、外装ケースのスプリングバックにより加締め加工後に戻りがでたものと考えられる。
【0038】
(比較例2)
加締める際に曲げ角度ω0が90°であるダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、外装ケース周縁直線部において、加締め後のケース先端の形状が曲線であり、曲げ半径R1が外Rで0.7mm、R開始点から終点(ケース先端)までの曲げ角度ω1が80°、周縁曲線部の形状が曲げ半径R2が0.65mm、曲げ角度ω2が80°である以外は実施例1と同様の電池を得た。この電池の周縁直線部の断面拡大図を図5に示す。
【0039】
この比較例2の電池では、周縁直線部の曲げ半径R1がダイ金型内面の曲げ半径R0より僅かに大きくなっているが、これは外装ケースのスプリングバックにより加締め加工後に戻りがでたものと考えられる。
【0040】
(参考例1)
加締める際に曲げ半径R0が0.43mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.25mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.43mm、曲げ角度ω2が138°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0041】
(参考例2)
加締める際に曲げ半径R0が1.3mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が1.2mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が1.3mm、曲げ角度ω2が108°である以外は実施例1と同様の電池を得た。
【0042】
(実施例6)
加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げR部の曲げ角度ω1を65°、先端直線部とケース底面のなす角度θ1を25°とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0043】
(実施例7)
加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げR部の曲げ角度ω1を75°、先端直線部とケース底面のなす角度θ1を15°とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0044】
(実施例8)
加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げR部の曲げ角度ω1を105°、先端直線部とケース底面のなす角度θ1を−15°とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0045】
(参考例3)
加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げR部の曲げ角度ω1を55°、先端直線部とケース底面のなす角度θ1を35°とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0046】
(参考例4)
加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げR部の曲げ角度ω1を115°、先端直線部とケース底面のなす角度θ1を−25°とした以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0047】
以上の通り、本実施例1〜8、比較例1,2及び参考例1〜4の電池を各100個製作した。電池の外観検査を実施し外観不良率を算出した。その後、4.2V、10mAの定電流定電圧で48h初充電を実施し、3日間室温で放置後、70℃−93%RHの雰囲気下で30日間保存し、保存後の電池の開路電圧と保存試験前に対する電池の総高増加量を測定した。保存後の電池の開路電圧が3.8V以下のものを開路電圧不具合品とし、また、電池総高の増加量が0.5mm以上のものを電池総高不具合品と判定し、それぞれの発生率を集計した。また試験後の電池20個を抜き取り、それらの電池を分解し、内装ケースを取出し、内装ケース側壁の電池中心部に向けての湾曲量を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004563001
【0049】
本発明の実施例の電池は先に述べた通り、外装ケースに生じるスプリングバック量が少なく、また、表1より明らかであるが内装ケースの湾曲量も少ない。その結果、高温高湿下に保存しても電池内への水分の浸入が少なく開路電圧低下品の発生率は極めて低く、また電池の膨れも起こり難い。周縁直線部の外装ケースの先端加締め形状が従来にみられた円弧状の形状となっている比較例1及び比較例2の電池は内装ケースの湾曲量が極端に大きく封口性に劣る。先端加締め形状が直線状になっている本実施例及び参考例の電池と比較するとその効果は明らかである。
【0050】
また、外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が基材板厚と同様の参考例1の電池と水平角度θ1が小さい参考例4の電池では製作直後に外観不良の発生が見られるが、前者は加締め曲げ部に傷が生じたもので、後者は負極ケースの周縁部が過度に押し下げられたことにより負極ケースの平坦部に歪みが生じたものである。
【0051】
また、加締め曲げ半径の大きな参考例2の電池は封口性が若干劣るが、こちらは内装ケースの湾曲が本実施例の電池に比べ若干大きく、周縁直線部の封口性が劣ったものと考えられる。
【0052】
さらに、水平角度θ1が大きな参考例3では内装ケースの湾曲は小さいが封口性が若干劣り、保存期間中に外装ケース先端の加締めが甘くなったものと考えられる。
【0053】
また水平角度θ1が小さい参考例4の電池では、電池製作後に電池の封口部の断面形状を確認したところ加締め曲げ部のガスケットと外装ケースの間に微小な隙間が生じているのが確認された。そのため保存時の封口性が若干低下したものと考えられる。
【0054】
次に、電池サイズを縦20mm、横20mmに変更し表1と同様の測定を行い、その結果について述べる。
【0055】
(実施例9)
負極ケースの基材を厚さ0.2mmのステンレス材とし、正極ケースの基材を厚さ0.15mmのステンレス材の内面に厚さ50μmのアルミをクラッド処理した厚さt0.2mmのクラッド材とし、用いた電極群の寸法を縦13mm、横13mmの扁平コイル状とした以外は実施例1の場合と同様に厚さ3.1mm、縦20mm、横20mmの扁平角形非水電解質二次電池を製作した。
【0056】
この際、外装ケースを加締めるダイ金型に縦横20mm、4角のRが4.8Rである開口部を有し、その開口部の上端に内方向への曲げRを有し、その曲げRの曲げ半径R0が0.5mmで、曲げRのR開始点からR終点までの曲げ角度ω0が135°であるダイ金型を用いて加締め加工を行った。
【0057】
これにより外装ケースの周縁直線部において、加締め後のケース先端形状が長さ0.4mmの直線となり、先端直線部と側壁部を繋ぐ曲線部の曲げ半径R1が外Rで0.4mm、ケース先端直線部とケース底面のなす角度θ1が0°、また、外装ケースの周縁曲線部において、加締め後のケース先端の加締め形状が曲線であり、曲げ半径R2が外Rで0.5mm、R開始点からR終点までの曲げ角度ω2が123°である実施例9の電池を得た。
【0058】
(実施例10)
加締める際に曲げ半径R0が0.45mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例9と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.3mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.45mm、曲げ角度ω2が126°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0059】
(実施例11)
加締める際に曲げ半径R0が0.65mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.5mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.65mm、曲げ角度ω2が116°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0060】
(実施例12)
加締める際に曲げ半径R0が0.75mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.7mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.75mm、曲げ角度ω2が115°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0061】
(実施例13)
加締める際に曲げ半径R0が0.9mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例1と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.8mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.9mm、曲げ角度ω2が111°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0062】
(比較例3)
加締める際に曲げ角度ω0が90°であるダイ金型を用いたこと以外は実施例9と同様に電池を製作し、外装ケース周縁直線部において、加締め後のケース先端の形状が曲線であり、曲げ半径R1が外Rで0.6mm、R開始点から終点(ケース先端)までの曲げ角度ω1が80°、周縁曲線部の形状が曲げ半径R2が0.5mm、曲げ角度ω2が80°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0063】
ここで周縁直線部の曲げ半径R1がダイ金型内面の曲げ半径R0より僅かに大きくなっているが、これは外装ケースのスプリングバックにより加締め加工後に戻りがでたものと考えられる。
【0064】
(参考例5)
加締める際に曲げ半径R0が0.35mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例9と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.2mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が0.35mm、曲げ角度ω2が138°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0065】
(参考例6)
加締める際に曲げ半径R0が1.05mmのダイ金型を用いたこと以外は実施例9と同様に電池を製作し、加締め加工後の外装ケース周縁直線部の曲げ半径R1が0.95mmであり、外装ケース周縁曲線部の曲げ半径R2が1.05mm、曲げ角度ω2が108°である以外は実施例9と同様の電池を得た。
【0066】
以上の通り、本実施例9〜13、比較例3、及び参考例5,6の電池を各100個製作した。電池の外観不良率、70℃−93%RH30日保存後の開路電圧不具合品と電池総高不具合品の発生率、及び試験後の電池20個の抜取り調査による内装ケース側壁の湾曲量を測定し、その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
Figure 0004563001
【0068】
電池サイズ及び正負極ケースの板厚が異なる場合でも、先に示した縦横30mmの電池の場合とほぼ同様の結果が得られた。
なお、本発明の実施例は、非水電解質に非水溶媒を用いた扁平形非水溶媒二次電池を用いて、正極ケースを外装ケースとした場合の加締め加工により封口する扁平角型電池をもとに説明したが、正負極電極を入れ替え、外装ケースとして負極ケースを配置することも可能である。さらに、他の電池系への適用も可能であり、扁平角型の加締め封口については同様の効果が得られる。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば加締め封口時の外装ケース周縁直線部に生じるスプリングバックと内装ケースに生じる変形を防止し、封口性を向上することができるので、工業的価値の非常に大きな扁平角型電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の電池の断面図。
【図2】本発明の実施例1の電池の平面図。
【図3】本発明の実施例1の電池の周縁直線部の封口部断面拡大図。
【図4】本発明の実施例1の電池の周縁曲線部の封口部断面拡大図。
【図5】比較例の電池の周縁直線部の封口部断面拡大図。
【符号の説明】
1…外装ケース(正極ケース)、2…正極集電体、3…扁平渦巻き状電極群、4…内装ケース(負極ケース)、5…負極集電体、6…絶縁ガスケット、7…本発明のダイ金型、8…ナックアウトピン、9…下パンチ、10…従来例のダイ金型、A…周縁曲線部、B…周縁直線部。

Claims (3)

  1. 金属製の外装ケースと金属製の内装ケースが、電池の扁平面に対し鉛直方向に絶縁ガスケットを介し嵌合され、さらに前記絶縁ガスケットの外周側に配置された前記外装ケースが加締め加工により加締められた封口構造を有し、かつ電池の厚さが外寸よりも小さく、周縁部に少なくとも2つ以上の周縁直線部を有し、前記直線部の各々の端部が周縁曲線部により結ばれている扁平角形電池において、前記周縁曲線部の加締め形状が曲線であると共に、前記周縁直線部に該当する部位の前記外装ケースが、前記外装ケースの先端と加締め曲げ部との中間に直線部を設けた形状に加締められたことを特徴とする扁平角形電池。
  2. 前記外装ケースの加締め曲げ部の曲げ半径が、外Rで外装ケース基材板厚の1.5〜4倍に加締められたことを特徴とする請求項1記載の扁平角形電池。
  3. 前記外装ケースに設けた直線部の外装ケース底面に対する水平角度が25°〜−15°の範囲に加締められたことを特徴とする請求項1記載の扁平角形電池。
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