新規に端末設備をPONに接続するためには、光スプリッタの光出力端子に空きがあるか否かを確認する必要がある。空き光出力端子がある場合、光スプリッタの光出力端子の端面に汚れや異物の付着を防止する終端器が接続しているか否か、さらに終端器を接続していない場合は良好な通信が可能か否か光出力端子の端面の清浄性を確認する必要がある。
しかし、従来は、光スプリッタの光出力端子の接続状況及び端面の清浄性を遠隔で確認する手段がなく、光スプリッタの設置場所まで確認に行かなくてはならず、PONの管理の作業性に課題があった。
そこで、本願発明は、係る課題を解決するため、光スプリッタの光出力端子の状態を容易に確認できる光スプリッタ及び光スプリッタ監視システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本願第一の発明に係る光スプリッタは光入力端子の端面から各光出力端子の端面までの光路長を光出力端子毎に異なるものとした。
具体的には、本願第一の発明は、M(M:1以上の整数)個の光入力端子からの入力光を分岐してN(N:2以上の整数)個の光出力端子に出力する光スプリッタであって、前記M個の光入力端子のうち一つの光入力端子の端面から前記N個の光出力端子の各端面までの光路長が前記N個の光出力端子毎に固有値を有することを特徴とする光スプリッタである。
前記光スプリッタは任意の光入力端子の端面から各光出力端子の端面までの光路長を光出力端子毎に異なることとすることで、光入力端子に入力した光による前記光スプリッタの各光出力端子の端面で反射する反射光(以下、光入力端子に入力した光による前記光スプリッタの各光出力端子の端面で反射する反射光を「出力端反射光」とする。)は、前記光スプリッタの各光出力端子が有する固有の光路長(以下、光スプリッタの各光出力端子が有する固有の光路長を「固有光路長」とする。)に応じて前記光入力端子に戻る伝搬往復時間が異なる。従って、前記光入力端子において前記光出力端子毎の出力端反射光を識別することが可能となり、前記光出力端子毎の出力端反射光から前記光スプリッタの各光出力端子の状態を容易に確認することができる。
本願第一の発明に係る光スプリッタは前記N個の光出力端子のうち一つの光出力端子に所定の反射減衰量を有する終端器を備えてもよい。
一つの光出力端子に所定の反射減衰量を有する終端器を備えることで、前記終端器で反射する光(以下、終端器で反射した光を「終端器反射光」とする。)は常に所定量減衰され反射される。本願第一の発明に係る光スプリッタは、前記出力端反射光の前記光入力端子に戻る伝搬往復時間の違いからいずれの光出力端子の出力端反射光かを識別することができるため、前記終端器反射光は終端器を備えていない他の光出力端子の出力端反射光の参考値として光強度を比較することで、光出力端子の状態を簡易に判断することができる。さらに、前記終端器での減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の状態をモニターする時の参考値としても使用することができる。
本願第一の発明に係る光スプリッタにおいて、前記N個の光出力端子は、それぞれ、(1)所定の反射減衰量を有する終端器が接続されているか、(2)光コネクタにより延伸用光ファイバが前記所定の反射減衰量と異なる反射減衰量で接続されているか、(3)空気にさらされているか、の何れかの接続状態であることを特徴とする。
前記光スプリッタの各光出力端子の端面での反射減衰量は、各光出力端子における接続状態、すなわち(1)終端器が接続されている、(2)延伸用光ファイバが接続されている、(3)開放状態の各状態により変化するため、各光出力端子の接続状態によって出力端反射光の光強度が変化する。本願第一の発明に係る光スプリッタは、前記出力端反射光の前記光入力端子に戻る伝搬往復時間の違いからいずれの光出力端子の出力端反射光かを識別することができるため、前記出力端反射光の光強度の違いから前記光スプリッタの各出力端子が状態(1)、状態(2)又は状態(3)の何れであるかを容易に判断することができる。
本願第一の発明に係る光スプリッタに前記M個の光入力端子からの入力光を前記N個の光出力端子へ分岐する光分岐回路と、前記光分岐回路の出力の一つを前記所定の反射減衰量とする光終端回路と、を基板上に有するプレーナ型光導波路を備えてもよい。
本願第一の発明に係る光スプリッタにM個の入力光を合成し、N個の光出力端子へ分岐する光分岐回路と前記入力光を所定の反射減衰量で減衰し反射する光終端回路とを基板上に設置するプレーナ型光導波路を備えることで、別途前記終端器を光出力端子の一つに接続しなくとも、前記光終端回路で光は常に所定量減衰され反射される(以下、光終端回路で反射した光を「終端回路反射光」とする。)。前記光終端回路の光路長は前記固有光路長と異なるため、前記終端回路の反射光は前記出力端反射光と識別することができ、前記出力端反射光の参考値とすることができる。従って、前記出力端反射光と前記終端回路の反射光の光強度を比較することで光出力端子の状態を簡易に判断することができる。
さらに、前記光終端回路での反射減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の状態をモニターする時の参考値としても使用することができる。また、プレーナ型光導波路は量産に適しているので光ファイバを融着させる方法より容易に前記光スプリッタを生産することができる。
上記目的を達成するために、本願第二の発明に係る光スプリッタ監視システムは、本願第一の発明に係る光スプリッタの光入力端子に光パルスを入力し、前記光パルスが各光出力端子の端面において反射した出力端反射光パルスを測定することとした。
具体的には、本願第二の発明は、本願第一の発明に係る光スプリッタと、光ファイバ伝送路を介して接続される前記光スプリッタの前記M個の光入力端子のうちの一つの光入力端子に光パルスを入力し、前記入力した光パルスが前記光スプリッタの前記N個の光出力端子の各端面で反射する反射光パルスのパルス強度及び前記N個の光出力端子までの伝搬往復時間により前記光スプリッタの前記光出力端子における接続状況を監視する光パルス試験器と、を備える光スプリッタ監視システムである。
前記光パルス試験器が前記光ファイバ伝送路に入力した光パルスによる前記光スプリッタの各光出力端子の端面で反射する反射光パルス(以下、光スプリッタの各光出力端子の端面で反射する反射光パルスを「出力端反射光パルス」とする。)は、前記光スプリッタの各光出力端子が有する固有光路長に応じて前記光入力端子に戻る伝搬往復時間が異なる。従って、前記光パルス試験器は前記光ファイバ伝送路を介して前記光出力端子毎の出力端反射光パルスを識別することが可能となり、前記出力端反射光パルスの光強度により前記光スプリッタの光出力端子の状態を遠隔から容易に確認することができる。
本願第二の発明に係る光スプリッタ監視システムにおいて、本願第一の発明に係る光スプリッタの前記N個の光出力端子毎に有する前記固有値の差が前記光パルス試験器の距離分解能より長いことを特徴とする。
本願第一の発明に係る光スプリッタの各光出力端子が有する固有の光路長の差長を前記光パルス試験器の距離分解能より長く設定することにより、前記各出力端反射光パルスは重畳せずに分離した状態で前記光ファイバ伝送路を介して前記光パルス試験器に戻る。従って、前記光パルス試験器は前記光スプリッタの光出力端子毎の出力端反射光パルスを測定することができるため、前記光スプリッタの光出力端子の状態を遠隔から容易に確認することができる。
本願第三の発明は、M(M:1以上の整数)個の光入力端子からの入力光を分岐してN(N:2以上の整数)個の光出力端子に出力する光スプリッタであって、前記M個の光入力端子のうち一つの光入力端子の端面から前記N個の光出力端子の各端面までの光路長が全て同じであることを特徴とする光スプリッタである。
前記光スプリッタは一の光入力端子の端面から各光出力端子の端面までの光路長を全て同じ長さ(以下、一の光入力端子の端面から各光出力端子の端面までの同じ長さの光路長を「統一光路長」とする。)とすることで、前記光スプリッタの各光出力端子の出力端反射光は、重畳して前記光入力端子に戻る(以下、各出力端反射光が重畳して前記光入力端子に戻る光を「合成反射光」とする。)。従って、前記合成反射光の強度の変化により前記光出力端子の異常を容易に確認することができる。
本願第四の発明は、M(M:1以上の整数)個の光入力端子からの入力光を分岐してN(N:2以上の整数)個の光出力端子に出力する光スプリッタであって、前記N個の光出力端子のうち一つの光出力端子に所定の反射減衰量を有する終端器が設置され、前記M個の光入力端子のうち任意に定めた一つの光入力端子の端面から前記終端器が設置されていない光出力端子の各端面までの光路長が全て同じであり、かつ前記一つの光入力端子の端面から前記終端器が設置された光出力端子の端面までの光路長が前記終端器が設置されていない光出力端子の各端面までの光路長と異なることを特徴とする光スプリッタである。
前記終端器が設置されていない光出力端子の光路長を統一光路長とすることで、前記終端器が設置されていない光出力端子毎の出力端反射光は、重畳して合成反射光として前記光入力端子に戻る。一方、前記終端器が設置されている光出力端子の光路長(以下、終端器が設置されている光出力端子の光路長を「終端器光路長」とする。)を前記統一光路長と異なる長さとすることで、前記合成反射光が前記光入力端子に戻る伝搬往復時間と前記終端器反射光が前記入力端子に戻る伝搬往復時間は異なり、前記合成反射光と前記終端器反射光は重畳しない。さらに、前記終端器で反射する光は常に所定量減衰され反射される。従って、前記終端器反射光は、終端器を備えていない光出力端子の合成反射光の参考値として光強度を比較することで、前記光出力端子の異常を簡易に判断することができる。また、前記終端器での反射減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の異常をモニターする時の参考値としても使用することができる。
本願第三の発明に係る光スプリッタに前記M個の光入力端子からの入力光を前記N個の光出力端子へ分岐する光分岐回路と、前記光分岐回路の出力の一つを前記所定の反射減衰量とする光終端回路と、を基板上に有するプレーナ型光導波路を備えてもよい。
本願第三の発明に係る光スプリッタにM個の入力光を合成し、N個の光出力端子へ分岐する光分岐回路と前記入力光を所定の反射減衰量で減衰し反射する光終端回路とを基板上に設置するプレーナ型光導波路を備えることで、別途光出力端子の一つを終端器光路長とし、前記終端器を接続しなくとも、前記光終端回路で光は常に所定量減衰され反射される。前記光終端回路の光路長は前記統一光路長と異なるため、前記終端回路の反射光は前記出力端反射光と識別でき、前記出力端反射光の参考値とすることができる。従って、前記合成反射光と前記終端回路の反射光の光強度を比較することで光出力端子の異常を簡易に判断することができる。
また、前記光終端回路での反射減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の異常をモニターする時の参考値としても使用することができる。また、量産に適したプレーナ型光導波路を備えることで光ファイバを融着させるより容易に前記光スプリッタを生産することができる。
本願第五の発明は、本願第三の発明又は本願第四の発明に係る光スプリッタと、光ファイバ伝送路を介して接続される前記光スプリッタの前記M個の光入力端子のうちの一つの光入力端子に光パルスを入力し、前記入力した光パルスが前記光スプリッタの前記N個の光出力端子の各端面で反射する反射光パルスのパルス強度及び前記N個の光出力端子までの伝搬往復時間により前記光スプリッタの前記光出力端子における接続状況を監視する光パルス試験器と、を備える光スプリッタ監視システムである。
本願第五の発明に係る光パルス監視システムにおいて、前記光パルス試験器が前記光ファイバ伝送路に入力した光パルスによる本願第三の発明及び本願第四の発明に係る光スプリッタの前記終端器が接続されていない光出力端子は統一光路長であるため、各出力端反射光パルスは重畳して合成反射光パルスとして前記光入力端子に戻る。従って、前記光パルス試験器は、前記光ファイバ伝送路を介して前記合成反射光パルスの強度を測定することにより本願第三の発明又は本願第四の発明に係る光スプリッタの光出力端子に異常があるか否かを遠隔から容易に確認することができる。
また、本願第四の発明に係る光スプリッタあるいは前記プレーナ型光導波路を備えた本願第三の発明に係る光スプリッタの場合、前記終端器反射光パルス又は前記光終端回路の反射光パルスを前記合成反射光パルスの光強度の参考値とすることで前記光スプリッタの光出力端子に異常があるか否かを遠隔から容易に確認することができる。
本願第六の発明は、本願第四の発明に係る光スプリッタあるいは前記プレーナ型光導波路を備えた本願第三の発明に係る光スプリッタと、光ファイバ伝送路を介して接続される前記光スプリッタの前記M個の光入力端子のうちの一つの光入力端子に光パルスを入力し、前記入力した光パルスが前記光スプリッタの前記N個の光出力端子の各端面の間で反射する反射光パルスのパルス強度及び前記N個の光出力端子までの伝搬往復時間により前記光スプリッタの前記光出力端子における接続状況を監視する光パルス試験器と、を備える光スプリッタ監視システムであって、前記光スプリッタにおける前記M個の光入力端子のうちの一つの光入力端子の端面から前記終端器が接続された光出力端子の端面までの光路長又は前記光終端回路の光路長と前記終端器が接続されていない光出力端子の各端面までの光路長との差が前記光パルス試験器の距離分解能より長いことを特徴とする光スプリッタ監視システムである。
本願第六の発明に係る光パルス監視システムにおいて、前記光パルス試験器が前記光ファイバ伝送路を介して光入力端子に入力した光パルスによる本願第四の発明に係る光スプリッタの前記終端器が接続されていない光出力端子毎の出力端反射光パルスは、前記統一光路長のため重畳して合成反射光パルスとして前記光入力端子に戻る。一方、前記終端器が接続されている光出力端子の終端器光路長又は前記光終端回路の光路長は前記統一光路長と異なる長さであり、前記合成反射光パルスが前記光入力端子に戻る伝搬往復時間と前記終端器反射光パルス又は前記終端回路反射光パルスが前記入力端子に戻る伝搬往復時間は異なる。前記光スプリッタの統一光路長と前記終端器光路長又は前記終端回路の光路長との差長を前記光パルス試験器の距離分解能より長く設定することにより、前記合成反射光パルスと前記終端器反射光パルス又は前記終端回路反射光パルスは重畳しない。従って、前記光パルス試験器は前記光ファイバ伝送路を介して前記合成反射光パルスと前記終端器反射光パルス又は前記終端回路反射光パルスを識別することができる。前記終端器又は前記終端回路で光パルスは常に所定量減衰され反射されるため、前記終端器反射光パルス又は前記光終端回路の反射光パルスを前記合成反射光パルスの光強度の参考値として比較することで、前記光スプリッタの光出力端子に異常があるか否かを遠隔から簡易に判断することができる。
さらに、前記終端器又は前記光終端回路での減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の異常をモニターする時の参考値としても使用することができる。
本願発明によれば、光スプリッタの光出力端子の出力端反射光を測定することで、光スプリッタの光出力端子の状態を容易に確認でき、PONの管理の作業性を向上させることができる。
添付の図面を参照して本願発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本願発明の構成の例であり、本願発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本願第一の発明の一実施形態である光スプリッタ101を備えた本願第二の発明の一実施形態である光スプリッタ監視システム111を示す図である。
光スプリッタ監視システム111はM=2、N=8の場合を示しているが、本発明は、M=2、N=8の場合に限られるものではない。図2に光スプリッタ監視システム111を構成する光スプリッタ101を示す。光スプリッタ101は光入力端子21、光入力端子22、結合分岐部15、光出力端子31〜38、ピグテイル光ファイバ21a〜22a及びピグテイル光ファイバ31a〜38aを有する。光スプリッタ監視システム111は光スプリッタ101と、光ファイバ伝送路51と、光パルス試験器52と、を備える。
光入力端子21、22及び光出力端子31〜38は光スプリッタ101の外部の光ファイバと接続する光コネクタである。
ピグテイル光ファイバ21a〜22aは光スプリッタ101の光入力端子21及び/又は22に入力された光信号を結合分岐部15へ伝える光ファイバである。ピグテイル光ファイバ31a〜38aは結合分岐部15から光出力端子31〜38へ光信号を伝える光ファイバである。PONに使用する光の波長帯によりガラス系光ファイバ又はプラスチック系光ファイバ等の光ファイバを使用でき、光ファイバの径も特に限定されない。また、通信方式によりステップインデックス光ファイバ、グレーデッドインデックス光ファイバ又はシングルモード光ファイバ等の光ファイバを使用できる。
光スプリッタ101は、光入力端子21又は22の端面から光出力端子31〜38の各端面までの光路長が光出力端子毎の固有光路長となるように、異なる長さのピグテイル光ファイバ31a〜38aで構成される。また、光出力端子31〜38のいずれかの光出力端子の端面から光入力端子21及び22の各端面までの光路長が光入力端子毎に異なるように、異なる長さのピグテイル光ファイバ21a〜22aで構成してもよい。
結合分岐部15は光入力端子21及び22からの光信号を合流させ、合流した光信号を光出力端子31〜38へ分岐する素子である。逆に光出力端子31〜38からの光信号を合流させ、合流した光信号を光入力端子21及び22へ分岐することもできる。結合分岐部15としてロッドレンズと誘電体多層膜を組み合わせた微小光学型又は光ファイバを融着したファイバ等の結合分岐素子を使用することができる。
光ファイバ伝送路51は基地局と光スプリッタ101との間に敷設された光通信用光ファイバである。PONに使用する光の波長帯によりガラス系光ファイバ又はプラスチック系光ファイバ等の光ファイバを使用でき、光ファイバの径も特に限定されない。また、通信方式によりステップインデックス光ファイバ、グレーデッドインデックス光ファイバ又はシングルモード光ファイバ等の光ファイバを使用できる。
光パルス試験器52は光ファイバ伝送路51の基地局側の端に接続される。光パルス試験器は光パルスを発生させ、前記光パルスを光ファイバ伝送路51に入力し、前記入力した光パルスが光ファイバ伝送路51の光パルス入力端に戻る光パルスを受光し、光パルス強度を測定する測定器である。光パルス試験器として、例えばOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を使用することができる。OTDRは光パルスを光ファイバ等の検査対象に入射し、前記入射した光パルスによる入射端に戻る後方散乱光等の光の光強度を時間軸で測定できることから、光ファイバの光損失の測定、欠陥箇所検出、破断点検出及びベースバンド周波数特性の測定に用いられる測定器である。
OTDRを用いて欠陥点及び破断点の位置を正確に特定するためにはOTDRの距離分解能を向上させることが必要である。OTDRの距離分解能は光ファイバに入射する光パルスのパルス幅に依存し、高距離分解能の測定をするためにはパルス幅の狭い光パルスが必要となる。例えば、1cmの距離分解能で測定するためには、パルス幅は50ps以下10cmの距離分解能で測定するためには、パルス幅は500ps以下としなければならない。
OTDRの光源として、例えば、LEDを使用した場合、光パルスのパルス幅は20ns程度であり距離分解能は4m程度である。半導体レーザを使用すると光パルスのパルス幅は100ps程度であり距離分解能は2cm程度である。一方、フォトンカウンティング型OTDRを使用することで距離分解能は1cm程度とすることができる。
光スプリッタ監視システム111は次のように動作する。図1において光スプリッタ101の光出力端子31〜38は開放状態である。光パルス試験器52は発生させた光パルスを光ファイバ伝送路51に入力する。光ファイバ伝送路51は前記入力された光パルスを光スプリッタ101の光入力端子21へ結合する。前記結合された光パルスはピグテイル光ファイバ21aを通り、結合分岐部15に到達する。光入力端子22には光信号を入力していないため、前記結合された光パルスは結合分岐部15で8つに分岐されピグテイル光ファイバ31a〜38aを通じて光出力端子31〜38に到達する。例えば、ピグテイル光ファイバ31a〜38aがガラス系光ファイバの場合、コアの屈折率は1.5程度であり、空気の屈折率は1.0なので光出力端子31〜38の端面での光反射率は4%程度になる。従って、光出力端子が開放されている光出力端子31〜38に到達する光パルスは14dB程度減衰され、反射する。しかし、光出力端子の端面に異物や汚れの付着がある場合、光が吸収又は散乱されるため清浄な端面に比べ反射減衰量が大きくなり反射光パルスの光強度が下がることになる。
光出力端子31〜38の端面で反射をした出力端反射光パルスは結合分岐部15へ戻るが、ピグテイル光ファイバ31a〜38aは固有光路長を有しているため、それぞれ結合分岐部15への伝搬往復時間が異なる。従って、光パルス試験器52は、ピグテイル光ファイバ21a、光入力端子21及び光ファイバ伝送路51を通り戻る光出力端子31〜38の出力端反射光パルス毎に識別し、光強度を測定することができる。各出力端反射光パルスの光強度の測定結果より光スプリッタ101の光出力端子31〜38の端面の状態、すなわち、前記端面が清浄に保たれているのか、あるいは異物又は汚れの付着があるのかを判断することができる。
以上のように、光スプリッタ監視システム111は、光出力端子31〜38の出力端反射光パルスを識別して測定することができるため、光出力端子31〜38の各端面の清浄性を遠隔から容易に確認することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
光スプリッタ101は、8個の光出力端子のうち一つの光出力端子に終端器19を接続することが好ましい。光スプリッタ監視システム111を構成する光スプリッタ101の光出力端子38に終端器19が接続されている図を図3に示す。終端器19は光出力端子38から出力される光信号の光強度を一定量(反射減衰量)減衰させて反射させる光コネクタである。終端器19の反射減衰量は光スプリッタ監視システム111の監視目的に応じて、例えば50dBと大きいものや10dBと小さいものを使用する事もでき、全反射するものも使用することができる。
光スプリッタ101に接続された終端器19で反射する光は常に光強度を反射減衰量分減衰される。光スプリッタ監視システム111の光パルス試験器52は光スプリッタ101の各光出力端子の出力端反射光パルスを識別することができるため、終端器19で反射された終端器反射光パルスを認識することができる。前記終端器反射光パルスを、終端器19を備えていない光出力端子31〜37の出力端反射光パルスの参考値として光強度を比較することで、遠隔から簡易に光出力端子31〜37の端面の状態を判断することができる。
例えば、反射減衰量が14dBの終端器19を光スプリッタ101の光出力端子38に接続することで、光出力端子38の光パルスは常に14dB減衰し、反射することになる。開放されている光出力端子31〜37の端面が清浄であれば端面での反射減衰量は14dB程度のため、光出力端子31〜37の出力端反射光パルスの光強度は、前記終端器反射光パルスの光強度と同程度の強度となる。一方、光出力端子の端面に汚れ又は異物の付着があれば端面での反射減衰量は14dBより大きくなるので、端面に汚れ又は異物の付着のある光出力端子の出力端反射光パルスの光強度は、前記終端器反射光パルスの光強度より小さくなる。従って、光出力端子31〜37の出力端反射光パルスの光強度と前記終端器反射光パルスの光強度とを比較することで光出力端子の端面の清浄性を簡易に判断することができる。
さらに、終端器19での反射減衰量は変動しないため、前記終端器反射光パルスは長期にわたる光出力端子の状態をモニターする時の参考値としても使用することができる。
なお、図3における光スプリッタ監視システム111の光スプリッタ101においては、結合分岐部15とは別に設けられた終端器接続用の結合分岐部にピグテイル光ファイバを介して終端器19を接続してもよい。
光スプリッタ101において、8個の光出力端子は、それぞれ、(1)所定の反射減衰量を有する終端器が接続されているか、(2)光コネクタにより延伸用光ファイバが前記所定の反射減衰量と異なる反射減衰量で接続されているか、(3)空気にさらされているか、の何れかであることが好ましい。
図4は光スプリッタ101の光出力端子32、35及び37に延伸用光ファイバ71が接続され、光出力端子31及び38に終端器19が接続され、光出力端子33、34及び36が開放されている場合の光スプリッタ監視システム111を示した図である。図4において、図1、図2及び図3で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。
延伸用光ファイバがPC接続されている場合の反射減衰量は40dB程度である。従って、延伸用光ファイバ71がPC接続された光スプリッタ101の光出力端子で光信号は40dB程度減衰され反射する。光スプリッタ監視システム111の光パルス試験器52は光スプリッタ101の各光出力端子の出力端反射光パルスを識別することができるため、測定した出力端反射光パルスの光強度から光スプリッタ101の光出力端子31〜38の接続状態、すなわち、(1)終端器が接続されているか、(2)延伸用光ファイバが接続されているか、(3)開放状態かを確認することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
例えば、反射減衰量を25dBの終端器19を接続すれば、光パルス試験器52で測定する光強度が小さい出力端反射光パルスの光出力端子には延伸用光ファイバ71が接続され、光強度が大きい出力端反射光パルスの光出力端子は開放され、光強度が中程度の出力端反射光パルスの光出力端子には終端器19が接続されていることが簡易に判断できる。
なお、図4の光スプリッタ101に接続された終端器19の反射減衰量は光スプリッタ監視システム111の監視目的に応じて、例えば50dBと大きいものや10dBと小さいものを使用する事もでき、全反射するものを使用することができる。また、互いに異なる反射減衰量を有する終端器19を接続しても良い。
例えば、光出力端子31に反射減衰量14dBの終端器19を接続し、光出力端子38に反射減衰量40dBの終端器19を接続すれば、光出力端子31の光パルスは常に14dB、光出力端子38の光パルスは常に40dB減衰し、反射することになる。光出力端子31の終端器反射光パルスの光強度と開放されている光出力端子33、34及び36の端面での出力端反射光パルスの光強度を比較することで光出力端子33、34及び36の端面の清浄性を簡易に判断することができる。一方、光スプリッタ101の光出力端子と延伸用光ファイバ71との接続が不良の場合、反射減衰量が40dBから変動する。従って、光出力端子38の反射光パルスの光強度と延伸用光ファイバ71が接続されている光出力端子32、35及び37の端面での出力端反射光パルスの光強度を比較することで延伸用光ファイバ71の接続に不良があるか否かを簡易に判断することができる。
従って、光スプリッタ監視システム111は、光出力端子31〜38の端面で反射する出力端反射光パルスを測定することで、光スプリッタの光出力端子31〜38の接続状態を確認するだけでなく、開放されている光出力端子の端面の清浄性や延伸用光ファイバの接続状態を遠隔の場所から容易に確認することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
光スプリッタ監視システム111は光スプリッタ101の前記8個の光出力端子毎の固有光路長の差が光パルス試験器52の距離分解能より長いことが好ましい。
光出力端子31〜38の固有光路長の差長が光パルス試験器52の距離分解能より短ければ、光出力端子31〜38の出力端反射光パルスは結合分岐部15で合成されたときに重畳してしまい、光パルス試験器52で受光したとしても光出力端子毎に出力端反射光パルスの光強度を測定することができない。従って、光出力端子毎に出力端反射光パルスの光強度を測定する場合には、光出力端子31〜38の固有光路長の差長が使用する光パルス試験器52の距離分解能より長くなるようにピグテイル光ファイバ31a〜38aの長さを設定する、あるいは光出力端子31〜38の固有光路長の差長より短い距離分解能の光パルス試験器52を使用することが好ましい。例えば、フォトンカウンティング型OTDRのように距離分解能が短い光パルス試験器52を使用することで固有光路長の差長を短くすることができるため、ピグテイル光ファイバ31a〜38aの差長を短くすることができ、小型の光スプリッタとすることができる。
図4における光スプリッタ監視システム111の光パルス試験器52で測定した測定結果の一例を図5に示す。図5において横軸Tは時間を示し、縦軸Pは測定した出力端反射光パルスのパルス強度を示す。また、図4における光スプリッタ101に接続される終端器19の反射減衰量は25dBとしている。固有光路長の違いにより波形は重畳せず測定できる。波形98は最も早く光パルス試験器52に帰還した光パルスの波形であり、光路長が最も短い光出力端子38の終端器19で反射した終端器反射光パルスであることがわかる。波形97、波形96、波形95、波形94、波形93、波形92の順に光パルスが光パルス試験器52に帰還しているため、それぞれ光出力端子37、36、35、34、33、32で反射した出力端反射光パルスであり、波形91が光路長の最も長い光出力端子31の終端器19で反射した終端器反射光パルスであることがわかる。
波形92、波形95及び波形97は光強度が小さいため光出力端子32、35及び37には延伸用光ファイバ71が接続されていると判断することができる。また、波形91及び98は光強度が中程度のため、光出力端子31及び38には終端器19が接続されていると判断することができる。さらに波形93、波形94及び波形96は光強度が大きいため光出力端子33、34及び36は開放されていることが判断できる。
図6は予め開放光出力端子の清浄性確認用の終端器19が光出力端31に、延伸用光ファイバ接続状態確認用の終端器19が光出力端子38に接続されている光スプリッタ101を光スプリッタ監視システム111の光パルス試験器52で測定した測定結果の一例である。光出力端子31の終端器反射光パルスの光強度P0及び光出力端子38の終端器反射光パルスの光強度P1を参照光強度としている。
図6の結果より、波形93及び94は光強度P0と光強度が同等のため、光出力端子33及び34は開放されていることがわかり、光出力端子の端面の清浄性は良好であると判断できる。一方、波形96は光強度P0より光強度が小さく、光強度P1より大きいため、光出力端子36の端面は汚れ又は異物の付着があると判断でき、新たに端末設備を接続する場合、端面の清掃が必要であることが判断できる。
さらに、波形92及び97は光強度P1と光強度が同等のため、光出力端子32及び37には延伸用光ファイバ71が接続されていることが判断できる。一方、反射光95は光強度P1より光強度が大きく、光強度P0より光強度が小さいため、光出力端子35において延伸用光ファイバ71の接続不良が生じていると判断することができる。
以上のように、光スプリッタ監視システム111は、光スプリッタ101の各光出力端子の出力端反射光パルスを分離して測定することができるため、光出力端子毎の接続状態及び光出力端子が開放されている場合の各端面の清浄性を遠隔から容易に確認することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
なお、光出力端子31〜38の一の端面から光入力端子21までの光路長と光入力端子22までの光路長を異なる長さとし、光パルス試験器52を光ファイバ伝送路51を介して光出力端子31〜38の何れかに接続することで、光入力端子21、22の接続状態及び光入力端子が開放されている場合の各端面の清浄性を遠隔から容易に確認することもできる。
(実施の形態2)
図7は、本願第三の発明の一実施形態である光スプリッタ102を使用した本願第五の発明の一実施形態である光スプリッタ監視システム112を示す図である。
光スプリッタ監視システム112はM=2、N=8の場合を示しているが、本発明は、M=2、N=8の場合に限られるものではない。図8に光スプリッタ監視システム112を構成する光スプリッタ102を示す
光スプリッタ監視システム112は光スプリッタ102、光ファイバ伝送路51、光パルス試験器52及び延伸用光ファイバ71を備える。図7及び図8において、図1、図2、図3及び図4で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。光スプリッタ102の光スプリッタ101との違いは光入力端子21又は22の端面から光出力端子31〜38の各端面までの光路長が統一光路長となるように、同じ長さのピグテイル光ファイバ31a〜38aで構成されたことである。
光スプリッタ監視システム112は次のように動作する。図7において光スプリッタ102の光出力端子31、33、34、35、36及び38は開放状態である。光出力端子32及び37には延伸用光ファイバ71が接続されている。光パルス試験器52は発生させた光パルスを光ファイバ伝送路51に入力する。光ファイバ伝送路51は前記入力された光パルスを光スプリッタ102の光入力端子21へ結合する。前記結合された光パルスはピグテイル光ファイバ21aを通り、結合分岐部15に伝わる。光入力端子22には光信号を入力していないため、前記結合された光パルスは結合分岐部15で8つに分岐されピグテイル光ファイバ31a〜38aを通じて光出力端子31〜38に到達する。光出力端子31、33、34、35、36及び38に到達する光パルスは光出力端子が開放状態のため14dB程度減衰され、反射する。光出力端子32及び37に到達する光パルスは延伸用光ファイバ71が接続されているため、40dB程度減衰され、反射する。光出力端子31〜38の出力端反射光パルスは結合分岐部15へ戻るが、ピグテイル光ファイバ31a〜38aの長さは同一であるため、光出力端子31〜38の出力端反射光パルスは同時に結合分岐部15に到達し、合成され一つの合成反射光パルスとなる。従って、前記合成反射光パルスはピグテイル光ファイバ21a、光入力端子21及び光ファイバ伝送路51を通り、光パルス試験器52で測定される。
図7における光スプリッタ監視システム112の光パルス試験器52で測定した測定結果の一例を図9に示す。図9において横軸Tは時間を示し、縦軸Pは測定した光パルスの光強度を示す。波形99は前記合成反射光パルスの波形である。
光スプリッタ102の光出力端子31〜38のいずれかに異常があれば、前記合成反射光パルスの光強度は正常時と異なり、波形99は正常時と異なる値を示す。従って、光スプリッタ監視システム112は光スプリッタ102の光出力端子における異常の有無を遠隔の場所から判定することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
また、光パルス試験器52において波形99の位置は光出力端子31〜38の位置を示すことになる。従って、波形81は光パルス試験器52からみて光出力端子31〜38の位置より遠い位置で反射した反射光パルスの波形であり、光出力端子32及び37に接続された延伸用光ファイバ71に異常点があることが判断できる。一方、波形82は光パルス試験器52からみて光出力端子31〜38の位置より近い位置で反射した反射光パルスの波形であり、光パルス試験器52から光出力端子31〜38の間に異常点があることが判断できる。
以上のように、光スプリッタ監視システム112は、光スプリッタ102の光出力端子の異常と共に、PONの健全性も遠隔の場所から容易に確認することもできる。
(実施の形態3)
図10は、本願第四の発明の一実施形態である光スプリッタ103を使用した本願第五の発明の他の実施形態である光スプリッタ監視システム113を示す図である。
光スプリッタ監視システム113はM=2、N=8の場合を示しているが、本発明は、M=2、N=8の場合に限られるものではない。図11に光スプリッタ監視システム113を構成する光スプリッタ103を示す。
光スプリッタ監視システム113は光スプリッタ103、光ファイバ伝送路51、光パルス試験器52、終端器19及び延伸用光ファイバ71を備える。図10及び図11において、図1、図2、図3、図4、図7及び図8で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。光スプリッタ103の光スプリッタ102との違いは光入力端子21又は22の端面から光出力端子31〜37の各端面までの光路長が統一光路長となるように、同じ長さのピグテイル光ファイバ31a〜37aで構成し、終端器19が接続される光出力端子38の端面までの終端器光路長を前記統一光路長と異なるようにピグテイル光ファイバ31a〜37aと異なる長さのピグテイル光ファイバ38aで構成されたことである。
光スプリッタ監視システム113は次のように動作する。図10において光スプリッタ103の光出力端子31、33、34、35及び36は開放状態である。光出力端子32及び37には延伸用光ファイバ71が接続されている。光パルス試験器52は発生させた光パルスを光ファイバ伝送路51に入力する。光ファイバ伝送路51は前記入力された光パルスを光スプリッタ103の光入力端子21へ結合する。前記結合された光パルスはピグテイル光ファイバ21aを通り、結合分岐部15に伝わる。光入力端子22には光信号を入力していないため、前記結合された光パルスは結合分岐部15で8つに分岐されピグテイル光ファイバ31a〜38aを通じて光出力端子31〜38に到達する。光出力端子31、33、34、35及び36に到達する光パルスは光出力端子が開放状態のため14dB程度減衰され、反射する。光出力端子32及び37に到達する光パルスは延伸用光ファイバ71が接続されているため、40dB程度減衰され、反射する。光出力端子38に到達する光パルスは終端器19が接続されているため、所定の反射減衰量分減衰され、反射する。ピグテイル光ファイバ31a〜37aの長さは同一であるため、光出力端子31〜37による出力端反射光パルスは同時に結合分岐部15に到達し、合成され一つの合成反射光パルスとなる。一方、光出力端子38の終端器光路長は光出力端子31〜37の統一光路長と異なるため、伝搬往復時間の違いから光出力端子38の終端器反射光パルスは前記合成反射光パルスと重畳しない。従って、光パルス試験器52は、前記合成反射光パルスと前記終端器反射光パルスを識別し、測定することができる。
光スプリッタ監視システム113において光スプリッタ103の光出力端子38の終端器光路長と光出力端子31〜37の統一光路長との差長が光パルス試験器52の距離分解能より長いことが好ましい。
統一光路長と終端器光路長との差長が光パルス試験器52の距離分解能より短ければ、光出力端子31〜37の出力端反射光パルスが結合分岐部15で合成されるときに光出力端子38の出力端反射光パルスも重畳してしまい、光パルス試験器52で受光したとしても前記合成反射光パルスと前記終端器反射光パルスを識別して測定することができない。従って、前記合成反射光パルスと前記終端器反射光パルスを識別して測定する場合には、前記統一光路長と前記終端器光路長との差長が使用する光パルス試験器52の距離分解能より長くなるようにピグテイル光ファイバ31a〜37aの長さとピグテイル光ファイバ38aの長さを設定する、あるいは前記差長より短い距離分解能の光パルス試験器52を使用することが好ましい。例えば、フォトンカウンティング型OTDRのように距離分解能が短い光パルス試験器52を使用することで前記差長を短くすることができるため、ピグテイル光ファイバ31a〜37aの長さとピグテイル光ファイバ38aの長さの差長を短くすることができ、小型の光スプリッタとすることができる。
図10における光スプリッタ監視システム113の光パルス試験器52が測定した測定結果の一例を図12に示す。図12において横軸Tは時間を示し、縦軸Pは測定した光パルスの光強度を示す。波形98は光路長が短い光出力端子38の終端器19で反射した終端器反射光パルスの波形である。波形99は前記合成反射光パルスの波形である。光スプリッタ監視システム113において、終端器反射光パルスの光強度P0を参照光強度とすることができ、例えば、波形99が波形98より大きい場合に光出力端子31〜37のいずれかに異常があると判断することができる。
以上のように、光スプリッタ監視システム113は、波形99とP0を比較することで前記光スプリッタ103の光出力端子における異常の有無を遠隔の場所から容易に判定することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
さらに、終端器19での反射減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の異常をモニターする時の参考値としても使用することができる。
また、実施の形態2で説明した光スプリッタ監視システム112と同様に、光パルス試験器52において波形99の位置は光出力端子31〜37の位置を示すことになる。従って、波形81は光パルス試験器52からみて光出力端子31〜37の位置より遠い位置で反射した反射光パルスの波形であり、光出力端子32及び37に接続された延伸用光ファイバ71に異常点があることが判断できる。一方、波形82は光パルス試験器52からみて光出力端子31〜37の位置より近い位置で反射した反射光パルスの波形であり、光パルス試験器52から光出力端子31〜37の間に異常点があることが判断できる。
以上のように、光スプリッタ監視システム113は、光スプリッタ103の光出力端子の異常と共に、PONの健全性も遠隔の場所から容易に確認することもできる。
(実施の形態4)
図13は、本願第一の発明に係る光スプリッタの他の実施形態である光スプリッタ101aを示す図である。
図13において、図2で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。光スプリッタ101と光スプリッタ101aとの違いは、結合分岐部15を備えず、プレーナ型光導波路17を備えていることである。プレーナ型光導波路とはシリコンや石英基板上に、光の通るコア部とそれを囲むクラッド部からなる光回路を形成し、その光回路パターンにより、光信号の分岐や合成等の各種機能を実現したものである。プレーナ型光導波路17として光信号の光エネルギーを均等に分岐するもの、又は不均等に分岐するものを使用することができる。
プレーナ型光導波路17は入力された光信号を合成する光合成回路と、前記合成された光信号を八つの光路に分岐する分岐光回路と、前記八つに分岐した光路の一つの信号光を所定量(反射減衰量)減衰させて反射させる光終端回路18と、を有する。光終端回路18の反射減衰量は目的に応じて、例えば50dBと大きいものや10dBと小さく設定する事もでき、全反射するように設定することもできる。光スプリッタ101aはM=2、N=7の場合を示しているが、本発明は、M=2、N=7の場合に限られるものではない。また、前記光分岐回路からの光路の一つに光終端回路18を設置するのではなく、プレーナ型光導波路17は前記光合成回路と前記光分岐回路との間に光終端回路18のみへ光信号を分岐する終端分岐回路を有してもよい。
光スプリッタ101aは、光入力端子21又は22の端面から光出力端子31〜37の各端面までの光路長が固有光路長となるように、異なる長さのピグテイル光ファイバ31a〜37aで構成される。従って、光出力端子31〜37の端面及び光終端回路18で反射する反射光は伝搬往復時間に違いを生ずるため、光スプリッタ監視システムに使用すれば、図4の光スプリッタ監視システム111と同様の効果を得ることができる。
図14は光スプリッタ101aを備えた本願第二の発明の他の実施形態である光スプリッタ監視システム111aを示す図である。図14において、図1、図2、図3、図4及び図13で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。
光スプリッタ監視システム111aは次のように動作する。図14において光スプリッタ101aの光出力端子31〜37は開放状態である。光パルス試験器52は発生させた光パルスを光ファイバ伝送路51に入力する。光ファイバ伝送路51は前記入力された光パルスを光スプリッタ101aの光入力端子21へ結合する。前記結合された光パルスはピグテイル光ファイバ21aを通り、プレーナ型光導波路17に伝わる。光入力端子22には光信号を入力していないため、前記結合された光パルスはプレーナ型光導波路17で八つに分岐される。前記分岐された光パルスの一つは光終端回路18に到達し、設定された反射減衰量減衰され、反射する。一方、前記分岐された他の七つの光パルスはピグテイル光ファイバ31a〜37aを通じて光出力端子31〜37に到達し、各端面で反射する。光出力端子31〜37の出力端反射光はプレーナ型光導波路17へ戻るが、ピグテイル光ファイバ31a〜37aの固有光路長及び光終端回路18までの光路長の違いからプレーナ型光導波路17への伝搬往復時間が異なる。従って、光パルス試験器52は、ピグテイル光ファイバ21a、光入力端子21及び光ファイバ伝送路51を通り戻る光出力端子31〜37の各出力端反射光パルス及び光終端回路18で反射をした反射光パルスを識別し、光強度を測定することができる。
従って、光スプリッタ監視システム111aは光スプリッタ101aの光出力端子に別途終端器19を接続しなくても図3の光スプリッタ監視システム111と同様の効果を得ることができる。さらに、光終端回路18での反射減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の状態をモニターする時の参考値としても使用することができる。
光スプリッタ101aにおいて、7個の光出力端子は、それぞれ、(1)所定の反射減衰量を有する終端器が接続されているか、(2)光コネクタにより延伸用光ファイバが前記所定の反射減衰量と異なる反射減衰量で接続されているか、(3)空気にさらされているか、の何れかであることが好ましい。
図15は光スプリッタ101aの光出力端子32及び37に延伸用光ファイバ71が接続され、光出力端子31に終端器19が接続され、光出力端子33、34、35及び36が開放されている場合の光スプリッタ監視システム111aを示した図である。図15において、図1、図2、図4、図13及び図14で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。
図4の光スプリッタ監視システム111と同様に、図15の光スプリッタ監視システム111aの光パルス試験器52は光スプリッタ101aの各光出力端子の出力端反射光パルスを識別することができるため、測定した出力端反射光パルスの光強度から光スプリッタ101aの光出力端子31〜37の接続状態、すなわち、(1)終端器が接続されているか、(2)延伸用光ファイバが接続されているか、(3)開放状態かを確認することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
例えば、光終端回路18の反射減衰量を終端器19と同じ反射減衰量の25dBとしておくことで、光終端回路18の反射光パルスと同程度の光強度の反射光パルスである光出力端子には終端器19が接続され、光終端回路18の反射光パルスより小さい光強度の反射光パルスである光出力端子には延伸用光ファイバ71が接続され、光終端回路18の反射光パルスより大きい光強度の反射光パルスである光出力端子は開放されていることが遠隔から簡易に判断できる。
なお、終端器19を複数接続する場合、終端器19の反射減衰量は全て同じ値であってもよいし、全て異なる値であってもよい。
また、光終端回路18の反射減衰量を14dBとすれば、開放されている光出力端子の端面の清浄性を簡易に判断することができ、光終端回路18の反射減衰量を40dBとすれば、延伸用光ファイバ71の接続に不良があるか否かを簡易に判断することもできる。
従って、光スプリッタ監視システム111aは、光出力端子31〜37の端面で反射する反射光パルスを測定することで、光スプリッタの光出力端子31〜37の接続状態を確認するだけでなく、開放されている光出力端子の端面の清浄性や延伸用光ファイバの接続状態を遠隔の場所から容易に確認することができ、PONの管理の作業性を向上することができる。
なお、光スプリッタ監視システム111aにおいて、各光出力端子の出力端反射光パルス及び光終端回路18での反射光パルスがプレーナ型光導波路17で重畳しないように、光スプリッタ101aの光出力端子毎に有する固有光路長及び光終端回路18の光路長との各差長が光パルス試験器52の距離分解能より長く設定しておくことが好ましい。
(実施の形態5)
図16は本願第三の発明に係る光スプリッタの他の実施形態である光スプリッタ103aを示す図である。
図16において、図2、図13で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。光スプリッタ103と光スプリッタ103aとの違いは、結合分岐部15を備えず、プレーナ型光導波路17を備えていることである。また、他の光出力端子の統一光路長と異なる終端器19が接続される終端器光路長の光出力端子が無いことである。図16の光スプリッタ103aはM=2、N=7の場合を示しているが、本発明は、M=2、N=7の場合に限られるものではない。
光スプリッタ103aは、光出力端子31〜37が統一光路長となるように、同じ長さのピグテイル光ファイバ31a〜37aで構成される。従って、光出力端子31〜37の出力端反射光はプレーナ型光導波路17で合成され合成反射光となる。光終端回路18で反射する反射光は前記統一光路長と異なり、前記合成反射光と伝搬往復時間に違いを生ずる。従って、光スプリッタ監視システムに使用すれば、図10の光スプリッタ監視システム113と同様の効果を得ることができる。
図17は光スプリッタ103aを備えた本願第五の発明の他の実施形態である光スプリッタ監視システム113aを示す図である。図17において、図1、図2、図10及び図16で用いた符号と同じ符号は同じ機能及び同じ動作をする。
光スプリッタ監視システム113aは次のように動作する。図17において光スプリッタ103aの光出力端子31、33、34,35及び36は開放状態である。光パルス試験器52は発生させた光パルスを光ファイバ伝送路51に入力する。光ファイバ伝送路51は前記入力された光パルスを光スプリッタ103aの光入力端子21へ結合する。前記結合された光パルスはピグテイル光ファイバ21aを通り、プレーナ型光導波路17に伝わる。光入力端子22には光信号を入力していないため、前記結合された光パルスはプレーナ型光導波路17で八つに分岐される。前記分岐された光パルスの一つは光終端回路18に到達し、設定された反射減衰量減衰され、反射する。一方、前記分岐された他の七つの光パルスはピグテイル光ファイバ31a〜37aを通じて光出力端子31〜37に到達し、各端面で反射する。光出力端子31〜37の出力端反射光パルスはプレーナ型光導波路17へ戻り、合成反射光パルスとなる。一方、光終端回路18の光路長は前記統一光路長と異なるため、光終端回路18の反射光パルスは光出力端子31〜37の出力端反射光パルスとプレーナ型光導波路17への伝搬往復時間が異なる。従って、光パルス試験器52は、ピグテイル光ファイバ21a、光入力端子21及び光ファイバ伝送路51を通り帰還する前記合成反射光パルスと光終端回路18の反射光パルスを識別し、光強度を測定することができる。
従って、光スプリッタ監視システム113aは光スプリッタ103aの光出力端子に別途終端器19を接続しなくても図10の光スプリッタ監視システム113と同様の効果を得ることができる。さらに、光終端回路18での反射減衰量は変動しないため、長期にわたる光出力端子の状態をモニターする時の参考値としても使用することができる。
以上のように、光スプリッタ監視システム113aは、光スプリッタ監視システム113と同様に光スプリッタ103aの光出力端子の異常と共に、PONの健全性も遠隔の場所から容易に確認することもできる。
なお、光スプリッタ監視システム113aにおいて、前記合成反射光パルスと光終端回路18での反射光パルスがプレーナ型光導波路17で重畳しないように、光スプリッタ103aの光出力端子の統一光路長と光終端回路18の光路長との差長を光パルス試験器52の距離分解能より長く設定しておくことが好ましい。