JP4561974B2 - リング状磁石素材の製造方法 - Google Patents
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Description
このようなリング状磁石の素材は、従来から次のようにして製造されている。まず、例えば希土類磁石合金の超急冷リボンを粉砕して粉末とし、この粉末に冷間プレスを行って圧粉体にする。ついで、この圧粉体を温間プレスまたはホットプレスして高密度化し、例えば所望寸法の円柱体にする。
なお、このリング状磁石素材は、後工程で着磁されることにより、ラジカル異方性を有する磁石として実用に供される。
すなわち、底部の打ち抜きもあり、上記した製造方法では製品の歩留まりが非常に低いという問題がある。
この方法では、次のようにしてリング状磁石素材が製造される。図11で示したように、断面一定の貫通孔1Aが形成されているダイ1の当該貫通孔1Aの中に先端が平坦面になっている円柱状のマンドレル2を配置し、このマンドレルの上に磁性粉末の成形体を装填し、その成形体を押圧パンチ3で押圧する。成形体はマンドレル2とダイ1間の空間に圧入される。図11のように、成形体がカップ状体4’に成形された時点で押圧パンチ3を引き上げて、そのカップ状体の上に新しい粉末成形体を装填し、再び押圧パンチ3で押圧する。新たに装填した粉末成形体が変形加工されて新たなカップ状体4’に成形される過程で、前段のカップ状体4’は、その上端部が新たに成形されたカップ状体4’の下端部と密着し、かつ連結した状態でリング状化しながら貫通孔1Aの下方へと押し出されていく。
第1の問題は、下方に位置するリング状成形体41と上方に位置する新たなカップ状体42との連結部が、図11に示したように形成されるということである。
すなわち、連結部では、リング状成形体41の材料がマンドレル2に沿って内側から外側に回り込み、また新たなカップ状体42の材料はダイ1に沿って外側から内側に回り込み、リング状成形体41の上端面とカップ状体42の下端面とが長手方向に直交するフラットな端面にならないのである。
第2の問題は、要求される磁気特性に対する設計自由度が極度に狭いということである。
しかしながら、この装置を使用した場合、目標製品の仕様(外径と内径)が決まれば、ダイの貫通孔の径、マンドレルの直径は一義的に決まり、したがって減面率も一義的に決まってしまう。そのため目標とする寸法形状が決められた場合、原素材に対する減面率を上げて磁気特性の向上を設計することは、そもそもできないことになる。
これは、ダイの貫通孔内に配置されるマンドレルは比較的長く、しかも、その基端部が図示していないマンドレルバックアップ手段で1点支持された状態で使用されているからである。すなわち、マンドレルは1点支持状態であるため、マンドレル先端部への粉末成形体の装填やそれに続く押圧パンチ3による押圧などの過程で、マンドレル2の先端部が微妙に揺動することがあり、その結果、芯ずれを起こして、製品の寸法精度を低めることになるものと考えられる。
また、背圧を与える円環受圧ダミーを設けて前記成形体に塑性加工を行う構成とすることが好ましい(請求項2)。
より好ましくは、前記円環受圧ダミーの外周の角部が面取りされている構成とする(請求項3)。
更に、前記ダイと前記マンドレルとの間隙でリング状磁石素材を連続的に製造する構成とすることが好ましい(請求項4)。
マンドレル先端部のテーパ部により、装填された成形体は、押圧パンチによる押圧開始と同時に絞り込みの変形加工を受けるので、得られた磁石素材における先端部の磁気特性が向上する。また、成形体は円筒形状になっているので、次の成形体との連結部において材料の相互回り込み現象は抑制される。その結果、先端部の切除部分は短くなって、歩留まりは高くなる。
この装置は、上下方向に一定孔径(D)の貫通孔1Aが形成されているダイ1と、貫通孔1Aの一方(図では下方)の開口部1Bから当該貫通孔に挿入され、そこに配置されているマンドレル2と、貫通孔1Aの他方(図では上方)の開口部1Cから当該貫通孔に挿入され、後述する成形体を押圧する押圧パンチ3とを持って基本構成としている。
マンドレル2の先端部2Aは、テーパ部2aと円柱状芯部2bで構成されている。
テーパ部2aは、マンドレルの円柱部2Bの上端と連設してテーパ角(θ)で形成されていて、マンドレルの先端にいくほど小径になっている。そして、このテーパ部2aと接続して直径(d1)が円柱部2Bの直径(d0)よりも小径の円柱状芯部2bが形成されている。なお、上記した円柱状芯部の直径(d1)は、後述する成形体の面内中心部に形成される貫通孔の直径と略同じか若干小さくなっていて、上記成形体の貫通孔に円柱状芯部2bが嵌入できるようになっている。
本発明では、この装置を用いてリング状磁石素材が次のようにして製造される。
この円筒状成形体は、外径がダイの貫通孔1Aの孔径(D)と略同じか若干小さく、また内径は、マンドレルの円柱状芯部2bの直径(d1)と略同じか若干大きくなっているような円筒体として成形される。
ついで、図示しないマンドレル駆動機構を駆動してダイ1の貫通孔1Aの中に、マンドレルを挿入する。そして、貫通孔の上部開口部1Cから円筒状の成形体4を挿入してマンドレル2の先端部に装填する。
ついで、図示しない加圧機構を作動して、押圧パンチ3で矢印で示したように上記した成形体4を押圧して塑性加工する。
押圧パンチ3は、先端部2Aにまで下降してマンドレルの先端部2Aにおけるテーパ部2aと円柱状芯部2Bの連設箇所で停止するが、その時点までの間に、成形体4は、ダイ1とマンドレル2が形成している円環状の間隙内を下方に向かって押出されることにより、図3で示したような断面形状の成形体41に変形する。なお、この過程で、マンドレルは図示しないマンドレル駆動機構と押圧パンチ3で2点支持された状態になるので、マンドレルの芯ぶれは起こらない。
その結果、押圧パンチ3がマンドレルの先端部におけるテーパ部2aと円柱状芯部2bの連設箇所にまで下降した時点では、図5で示したように、先の成形体41は更に貫通孔1Aの下方へ押出されてダイ1とマンドレルの円柱部2Bが形成する円環状の間隙でリング状に形成され、成形体42は図5で示した形状に成形される。
この一連の操作において、マンドレルの先端部2Aに装填された成形体4は、押圧プレス3で押圧されたときに、ダイ1とテーパ部2aが形成する間隙で絞り込まれた状態で塑性加工されることになる。すなわち、貫通孔の下方へ押出されていく過程で、テーパ部2aの個所では順次大きな変形加工を受け、そしてテーパ部2aを通過してからは、常にその変形加工を受けた状態が維持されることになる。
また、装填される成形体は、マンドレル先端部の円柱状芯部2bの直径(d1)と略同径の貫通孔4Aを有する円筒形状になっているので、押圧プレス3による押圧の過程で材料が略真っ直ぐに下方に押出されていく。
このような効果は、テーパ部2aのテーパ角(θ)を小さくすると顕著に発現する。例えばテーパ角(θ)を1°程度にすると連結部は各成形体の端面が互いに略完全にフラットな状態(互いに直交する状態)で連結する。しかしながら、テーパ角(θ)を小さくすることは、マンドレル2が非常に長くなることであるので、本発明においては、このテーパ角(θ)を20〜80°の範囲内に設定する。テーパ角(θ)を80°より大きくすると、図11で示したような回り込み現象が無視できなくなり、したがって連結部の切除部分の長さが長くなって歩留まり低下が大きくなるからである。
例えば、製造目的のリング状磁石素材の外径はD、内径はd0と一定であったとすると、塑性加工に用いる成形体の外径はDでなければならない。しかし、円柱状芯部2bの直径(d1)に相当する成形体の貫通孔の直径は可変であり得る。
なお、図6で示したように、既に押圧パンチ3で塑性加工を行った成形体41に次の成形体42を装填するときに、成形体41と成形体42の間に、例えば鉄製の円環板5を介装することが好ましい。
とくに1個取りを目的としてリング状磁石素材を製造する場合には、この受圧ダミーの介装は好適である。なお、連続的に製造する場合、3個目以降の製造時にはこの受圧ダミーを介装してもしなくてもよい。
更には、図8で示したように、図7で示した成形体4と成形体41の間に、やはり外周の角部が面取りされている前記した受圧ダミー5を介装すると、連結部における相互の回り込み現象を防止できるだけではなく、相互の分離作業が非常に行いやすくなって好適である。
この粉末を冷間で圧粉成形し、更に、Ar雰囲気下において温度800℃、圧力196MPaのホットプレスを行って、外径23.6mm、内径13mm、長さ16.3mmの円筒状成形体にした。
この装置において、ダイ1の貫通孔1Aの孔径(D)は23.6mmである。また、マンドレル2において円柱部2bの直径(d0)は18.6mm、円柱状芯部2bの直径(d1)は13mm、高さは4.6mmであり、テーパ部2aのテーパ角(θ)は約30°になっている。
比較のために、特許文献1に記載の態様で同様の磁石素材を連続的成形した。
したがって、実施例の場合は、減面率45.6%(=([1−(23.62−18.62)/(23.62−132)]×100)の変形加工が行われ、比較例の場合は56.3%(=([1−(242−82)/242]×100)の変形加工が行われている。
これに反し、比較例の場合は、各成形帯の連結断面で材料の回り込み現象が認められ、相互の分離は困難であった。
ついで、得られた各磁石素材につき、その先端部から隔離した箇所の(BH)maxを測定した。
図9から明らかなように、比較例の場合は先端部から20mmの箇所で(BH)max(相対値)が1になっているが、実施例の場合は、(BH)maxが1になるのは先端部から6〜7mm程度の箇所である。すなわち、実施例の場合は、先端部における磁気特性の劣化は小さく、従って切除部分の長さも短くなっていて製品としての歩留まりは高くなっている。
比較のために、特許文献1に記載の態様で、上記実施例と同形状の磁石素材を製造した。その場合の減面率は56.3%になる。
図10から明らかなように、比較例の場合はある形状の磁石素材に対してその減面率が固定されるので、特定の磁気特性を有する磁石素材しか製造することができない。
これに反し、実施例の場合は、マンドレルの円柱状芯部における直径(d1)を変化させることにより、形状は同じであっても、磁気特性が異なる磁石素材を製造することができる。とくに、円柱状芯部(d1)の直径を大きくして減面率を高めることにより、先端部の切除部分の長さが短い状態で(高い歩留まりで)高い磁気特性の磁石素材を得ることができる。
1A ダイ1の貫通孔
1B,1C 開口部
2 マンドレル
2A マンドレル2の先端部
2B マンドレル2の円柱部
2a 先端部2Aのテーパ部
2b 先端部2Aの円柱状芯部
3 押圧パンチ
3a ガイド孔
4 磁性粉末の成形体
4A 成形体4の貫通孔
41,42 成形された磁性素材
Claims (4)
- 一定孔径の貫通孔を有するダイの前記貫通孔の中に、直径が前記貫通孔より小径のマンドレルを前記ダイの一方の開口部から挿入したのち、前記マンドレルの先端部に磁性粉末の成形体を装填し、ついで、
直径が前記ダイの貫通孔と略同径の押圧パンチを前記ダイの他方の開口部から挿入して前記成形体に塑性加工を行い、前記ダイと前記マンドレルとの間隙でリング状磁石素材を製造する方法において、
マンドレルの前記先端部に、先端にいくほど小径になるテーパ部と前記テーパ部の先端から延出する円柱状芯部とを有したマンドレルを準備する一方、前記円柱状芯部を挿入可能な貫通孔を有するとともに外周角部が面取りされた成形体を準備し、
この後、前記塑性加工を行うことを特徴とするリング状磁石素材の製造方法。 - 背圧を与える円環受圧ダミーを設けて前記成形体に塑性加工を行う請求項1に記載のリング状磁石素材の製造方法。
- 前記円環受圧ダミーの外周の角部が面取りされていることを特徴とする請求項2に記載のリング状磁石素材の製造方法。
- 前記ダイと前記マンドレルとの間隙でリング状磁石素材を連続的に製造する請求項1〜3の何れかに記載のリング状磁石素材の製造方法。
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