JP4561195B2 - 磁性金属被検体の欠陥の検出方法及びその検出装置 - Google Patents
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Description
また、厚板鋼材、鋼管などにおいても、欠陥が割れの起源となり得ることから、表面欠陥、表層欠陥、および内部欠陥を減少させることは非常に重要である。鋼以外の磁性金属を使用した磁性金属材料でも、表面欠陥、表層欠陥、および内部欠陥の有無が品質上非常に重要であることは同様である。
以下、自動車用めっき鋼板を例にして、さらに詳細に説明する。
自動車用めっき鋼板は、製鋼工程、熱延工程、酸洗工程、冷延工程、めっき工程、プレス工程を通して製造される。自動車用めっき鋼板における重大欠陥の1つは、ヘゲと一般に呼ばれるものであり、これは最終製品(自動車)において、欠陥部がその他の健全部と明らかに異なって見えるため、外観を損ねるという問題を引き起こし、あるいは非常に程度の悪いものになると、プレス成型時にプレス機を損傷するなどの弊害が生ずる。
ヘゲ等の表面欠陥を検出するためには、光学式の表面欠陥計が一般的には使用されているが、表面に露出していない表層欠陥をも含めて検出するためには、プローブ型渦流探傷器なども使用される。
この検出方法は、脚部にコイルが巻回された櫛型形状の強磁性体の4本以上の脚部を磁性金属被検体の検出面に対向して略垂直に、かつ磁性金属被検体の幅方向に略平行に並べて配置し、隣り合う3本の脚部の組の選択を時間的に切り替えながら、選択された3本の脚部のうち、中央の脚部に巻回された1次コイルに交流電流を印加して励磁し、外側の2つの脚部のそれぞれに巻回された2次コイルに誘起された電圧の差分信号を基に、欠陥の検出を行うことで非常に小さな欠陥を検出するものである。
図7において、3は磁化電源、6は差動増幅器、10は櫛型強磁性体、10a〜10eは脚部、11a〜11eはコイルである。櫛型形状を有する櫛型強磁性体10の各脚部が、被検体である鋼板の表面に略垂直に、かつ、それぞれが鋼板の幅方向に並ぶように配置されている。各脚部には、図示のようにコイルが巻回されている。
まず、図7(a)に示すように、同図の左端の3つの脚部10a,10b,10cを選択し、その中央の脚部10bに巻回されたコイル11bを磁化電源3に接続し、交流磁束を発生させる。そして、その磁束をその両側に位置する脚部10a,10cに巻回されたコイル11a,11cにより検出し、この検出信号を差動増幅器6に導く。差動増幅器6からは、その両者の差に対応する電圧が出力される。
以下、これを繰り返せば、被検体である鋼板の幅方向に向けて検出器を走査していることに相当し、広い幅の範囲にわたって機械的な動きを伴うことなく走査を行うことができる。
この不感帯は、図7(a)〜(c)に示す各検出の度に発生し、この検出ごとに発生する各不感帯は図8(a)〜(c)に示すようになる。図8において、斜線部は各検出の際の検出可能領域であり、この検出可能領域に挟まれた領域が不感帯となる。従って、不感帯は、櫛型強磁性体10の各脚部の直下ごとに存在することになる。
しかし、その提案の場合には、櫛型の強磁性体を用いた磁気センサを複数列設ける必要があるので、それぞれの櫛型の強磁性体を用いた磁気センサを配列した方向にもずれが生じる。このため、例えば配列方向に移動する被検体を対象とする場合、同時刻に櫛型の強磁性体を用いたセンサが検査している位置は、移動方向にずれがあるため、この移動方向のずれを補正する必要が生じる。その移動方向のずれは、測定した時間のずれとして認識され、測定時間のタイミングを補正したものを、移動方向に同一の位置とみなすことで解決することができる。
そこで、本発明の目的は、櫛型磁気センサを使用して欠陥検出を行う場合に、その検出ができない不感帯の発生を防止でき、その装置の実現に際して構成の簡易化、コンパク化、および制作費用の低価格化を達成できる磁性金属被検体の欠陥の検出方法および検出装置を提供することにある。
すなわち、請求項1に係る発明は、磁性金属被検体を交流磁化し、この磁化に基づく磁束を磁気センサで検出し、この検出に基づいて磁性金属被検体の欠陥の検出を行う検出方法であって、6つ以上の脚部を有する櫛型形状の強磁性体と、前記各脚部にそれぞれ巻回されるコイルとを含む櫛型磁気センサの各脚部を、磁性金属被検体の検出面に対向して配置し、前記6つ以上の脚部の中から、隣り合わない等間隔に離れた3つの脚部を1組とする各組を所定の順序で選択していき、その各組が選択されるたびに、その選択された各組の3つの脚部のうち、中央の脚部に巻回されたコイルに交流を供給して励磁し、中央以外の両側の2つの脚部のそれぞれに巻回された両コイルに誘起される両電圧の差分信号に基づいて前記磁性金属被検体の欠陥の検出を行い、この検出の際に、選択された中央の脚部と中央以外の脚部との間に存在する脚部の真下を含む欠陥検出を行なうようにした。
請求項3に係る発明は、磁性金属被検体の検出面と対向する複数の脚部を有する櫛型形状の強磁性体と、前記複数の各脚部に巻回される複数のコイルとを含む櫛型磁気センサと、前記複数の脚部のうち、選択された2つの脚部に巻回されるコイルの両誘起電圧の差分を求める演算手段と、前記櫛型磁気センサの複数の脚部の中から、隣り合わない等間隔に離れた3つの脚部を1組とする各組のうちの所定の1組を選択し、この選択された各組の3つの脚部のうち、中央の脚部に巻回されたコイルに交流を供給して励磁し、中央以外の両側の2つの脚部のそれぞれに巻回された両コイルに誘起される両電圧を前記演算手段に導く選択手段と、前記演算手段で演算された差分信号に基づいて前記磁性金属被検体の欠陥の検出を行う欠陥検出手段と、を備え、前記欠陥検出手段は、前記選択された中央の脚部と中央以外の脚部との間に存在する脚部の真下を含む欠陥検出を行なうようにした。
図1は、本発明の検出装置に係る実施形態の全体の構成を示すブロック図である。
この検出装置に係る実施形態は、図1に示すように、櫛型磁気センサ1と、磁化電源3と、選択回路4と、選択回路5と、差動増幅器6と、位相検波器7と、欠陥レベル判別器8と、制御回路9とを備えている。
ここで、図1に示す櫛型磁性体10の脚部10a〜10gの配列の間隔は、図7に示す従来の櫛型磁性体の脚部の間隔の1/2に設定されている。また、脚部の配列個数は、この例では説明の便宜上7つとしたが、6つ以上であれば良く、測定対象の大きさなどを考慮して決定される。
磁化電源3は、選択回路4のスイッチ4a〜4gを介して櫛型磁気センサ1のコイル11a〜11gのうちの1つと接続し、その接続されたコイルを励磁するものである。このため、磁化電源3は、その一端側がスイッチ4a〜4gにそれぞれ接続され、その他端側がアースに接続されている。
位相検波器7は、差動増幅器6からの出力信号を入力し、この入力信号を磁化電源3の波形に同期した信号により位相検波し、これにより磁性金属被検体の欠陥の大きさに応じた信号を得るものである。
制御回路9は、欠陥検出の指示があると、その指示に基づいてあらかじめ定められた手順で選択回路4のスイッチ4a〜49のオンオフ制御、および選択回路5の選択出力制御を行うものである。
まず、図1に示す櫛型磁気センサ1の各脚部10a〜10gを、例えば図4(b)に示すように磁性金属被検体aの検出面に対向させる。
この状態で、櫛型磁気センサ1の左端から1つおきに5つ目までの3つの脚部10a,10c,10eを選択し、この選択された脚部10a,10c,10eに巻回されるコイル11a,11c,11eを使用して欠陥の検出を行う。
このときには、選択回路4のスイッチ4dがオンとなり、脚部10dに巻回されるコイル11dが磁化電源3に接続され、脚部10b,10fに巻回されるコイル11b,11fの両誘起電圧が選択回路5で選択されて差動増幅器6に出力される。このときのコイルと各部の接続状態は、図2(b)に示すようになる。
さらに、櫛型磁気センサ1の左端から3つ目から7つ目の脚部のうち、1つおきに3つの脚部10c,10e,10gを選択し、この選択された脚部10c,10e,10gに巻回されるコイル11c,11e,11gを使用して欠陥の検出を行う。
この結果、コイル11eは磁化電源3により励磁されて交流磁束が発生し、コイル11c,11gにより検出された検出信号は差動増幅器6に入力される。
また、この実施形態の検出方法によれば、図2(a)に示すように、強磁性体10の脚部10a,10c,10eを使用して検出する場合には、図3(a)に示すように脚部10cの真下に不感帯が生じる。次に、図2(b)に示すように、脚部10b,10d,10fを使用して検出する場合には、図3(b)に示すように脚部10dの真下に不感帯が生じるが、この検出の際には、先に脚部10cの真下に生じた不感帯の領域は検出可能領域となる。以下、同様の結果が得られる。
なお、上記の説明では、欠陥の検出を図2の(a)(b)(c)の順序で行うようにしたが、本発明はその手順に限定されず、例えば(a)(c)(b)の順序というように所定の順序で行うようにすれば良い。
図4では、上記のように、(b)に示す実施形態に係る櫛型磁気センサ1の脚部の間隔は、(a)に示す櫛型磁気センサの脚部の間隔の約1/2となっている。
一方、図3(b)に示す場合には、脚部10cに巻かれたコイル11cに磁化電源3から交流電流を流すと、図示のような磁束12が生じる。しかし、励磁用の脚部10cと検出用の脚部10a,10eとの間に、脚部10b,10dが存在するため、磁束12は脚部10a,10eの他に脚部10b,10dを通る。このため、検出用の脚部10a,10eを通る磁束は、脚部10b,10dがない場合に比べて相対的に減少するため、検出性能が低下されることが懸念される。
この実験では、測定対象となる人工欠陥として、その幅が0.2mm、その深さが0.5mmのものを用意した。そして比較のために、以下の2つの櫛型磁気センサA,Bを用意した。
ここで、脚部の間隔とは、隣り合う2つの脚部の幅方向の中心間距離のことである(図5参照)。
そして、櫛形磁気センサAでは、隣合う3つの脚部を使用して、図5(a)に示すような接続により検出を行った。また、櫛形磁気センサBでは、1つおきに3つの脚部を使用して、図5(b)に示すような接続により検出を行った。この比較試験では、励磁コイルの励磁周波数は、750〔kHz〕とした。
そこで、その検出に直接寄与しない脚部に巻回されるコイルを、図6(a)に示すように電気的に開放させた開放状態、図6(b)に示すように短絡させて接地しない状態(短絡非接地状態)、および図6(c)に示すように短絡させて接地させた状態(短絡接地状態)の3状態における比較試験を、以下のような条件の下で行った。
表1に、測定結果である3つの状態における欠陥の信号出力の強度を示す。表1に示す信号強度は、信号出力の正負のピーク値の差を表している。表1によれば、励磁用と検出用の間の脚部に巻回されるコイルの状態が、開放状態、短絡接地状態、および短絡非接地状態のいずれの場合でも信号は検出可能であった。
従って、この実施形態では、欠陥検出の際に、励磁用と検出用の間の脚部に巻回されるコイルはその両端を短絡するようにするのが好ましい。なお、そのコイルを短絡するための回路は、図1に示す検出装置には含まれていないが、スイッチの組み合わせにより選択回路4などに含ませることができる。
なお、上記の実施形態の検出方法では、図2(a)に示すように、例えば、櫛型磁気センサ1の左端から1つおきに5つ目までの3つの脚部10a,10c,10eを選択し、この選択された脚部10a,10c,10eに巻回されるコイル11a,11c,11eを使用して欠陥の検出を行う場合について説明した。
また、上記の実施形態では、上記のように、欠陥の検出に寄与しない脚部に巻回されるコイルは短絡させるのが好ましい。図6では、その短絡させるコイルは、検出用のコイルが巻回される脚部の内側に配置される脚部に巻回されるコイルとしたが、その脚部の内側のみならずその脚部の外側に配置される脚部に巻回されるコイルを含めるようにしても良い。
1 櫛型磁気センサ
3 磁化電源
4、5 選択回路
6 差動増幅器
7 位相検波器
8 欠陥レベル判別器
9 制御回路
10 櫛型の強磁性体
10a〜10g 脚部
11a〜11f コイル
Claims (4)
- 磁性金属被検体を交流磁化し、この磁化に基づく磁束を磁気センサで検出し、この検出に基づいて磁性金属被検体の欠陥の検出を行う検出方法であって、
6つ以上の脚部を有する櫛型形状の強磁性体と、前記各脚部にそれぞれ巻回されるコイルとを含む櫛型磁気センサの各脚部を、磁性金属被検体の検出面に対向して配置し、
前記6つ以上の脚部の中から、隣り合わない等間隔に離れた3つの脚部を1組とする各組を所定の順序で選択していき、
その各組が選択されるたびに、その選択された各組の3つの脚部のうち、中央の脚部に巻回されたコイルに交流を供給して励磁し、中央以外の両側の2つの脚部のそれぞれに巻回された両コイルに誘起される両電圧の差分信号に基づいて前記磁性金属被検体の欠陥の検出を行い、
この検出の際に、選択された中央の脚部と中央以外の脚部との間に存在する脚部の真下を含む欠陥検出を行なうことを特徴とする磁性金属被検体の欠陥の検出方法。 - 前記磁性金属被検体の欠陥の検出時には、少なくとも前記中央の脚部と、前記中央以外の両側の2つの各脚部との間に位置する脚部に巻回されるコイルは、その両端を短絡するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の磁性金属被検体の欠陥の検出方法。
- 磁性金属被検体の検出面と対向する複数の脚部を有する櫛型形状の強磁性体と、前記複数の各脚部に巻回される複数のコイルとを含む櫛型磁気センサと、
前記複数の脚部のうち、選択された2つの脚部に巻回されるコイルの両誘起電圧の差分を求める演算手段と、
前記櫛型磁気センサの複数の脚部の中から、隣り合わない等間隔に離れた3つの脚部を1組とする各組のうちの所定の1組を選択し、この選択された各組の3つの脚部のうち、中央の脚部に巻回されたコイルに交流を供給して励磁し、中央以外の両側の2つの脚部のそれぞれに巻回された両コイルに誘起される両電圧を前記演算手段に導く選択手段と、
前記演算手段で演算された差分信号に基づいて前記磁性金属被検体の欠陥の検出を行う欠陥検出手段と、を備え、
前記欠陥検出手段は、前記選択された中央の脚部と中央以外の脚部との間に存在する脚部の真下を含む欠陥検出を行なうことを特徴とする磁性金属被検体の欠陥の検出装置。 - 前記選択手段が、前記各組の3つの脚部を選択したときには、少なくとも選択した前記中央の脚部と、前記中央以外の両側の2つの各脚部との間に位置する脚部に巻回される各コイルの両端を短絡するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の磁性金属被検体の欠陥の検出装置。
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