JP4560750B2 - 金属被覆繊維とその用途 - Google Patents
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Description
本発明は、繊維体に対する金属被膜の密着性に優れた導電性金属被覆繊維に関する。詳しくは、ナイロン繊維やポリエステル繊維などの高分子材料からなる繊維体表面に金属被膜をコーテングした金属被覆繊維において、金属被膜が優れた密着強度と導電性を有し、かつ金属被膜として銀などをコーテングしたものは白色度が高く、かつ抗菌性に優れた金属被覆繊維に関する。
本発明の金属被覆繊維は導電性ないし抗菌性を有する各種の布材や衣料品の材料として用いることができ、また電磁波シールド材、静電防止材料、電極ないし電線の代替材料などの産業材料として用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン繊維やポリエステル繊維などの高分子材料からなる繊維表面に金属薄膜をコーテングした導電性繊維が従来から知られており、金属コーテング膜の密着性を高めるために種々の方法が試みられている。例えば、硫化銅をコーテングする場合に、高分子材料を銅イオン捕捉基を有する染料で前処理し、これに銅イオンを結合させた後に硫化する方法(特公平01-37513号)や、アルカリ処理して粗面化した繊維表面に銅イオン捕捉基を付着させ、これに硫化銅を結合させる方法(特開平06-298973号)などが知られている。また、アラミド繊維などのように金属メッキを施し難いものについては、ポリビニルピロリドン(PVP)を利用して金属イオンを付着させ、これを還元して金属メッキを形成する方法(特表平06-506267号)などが知られている。
【0003】
ところが、上記PVPを利用するメッキ方法は繊維の種類が限られるので一般的ではない。また、銅イオン捕捉基を導入するコーテング方法は金属被膜が銅やその化合物に限られ、しかも金属被膜の付着強度が必ずしも十分ではないと云う問題がある。なお、繊維体をアルカリ処理して粗面化すれば概ね金属被膜の付着強度を高めることができるが、粗面化の程度と金属被膜の状態が適切ではないと十分な効果が得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来の金属被覆繊維における上記問題を解決したものであり、金属被膜が優れた密着強度を有し、従って導電性に優れ、さらに金属被覆として銀等を施したものは白色度が高く、抗菌性に優れる金属被覆繊維を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は、表面がオレンジピール(ユズ肌ないし梨地肌)を呈する金属被膜が高い密着強度を有することを見出し、この知見に基づいて金属被膜の密着性に優れた金属被覆繊維を達成したものである。すなわち、本発明によれば以下の構成からなる金属被覆繊維とその用途が提供される。
【0006】
〔1〕繊維体表面に金属被膜を設けた繊維であって、該繊維体を巻取軸に巻装して巻糸体とし、これをメッキ槽に入れて薬液を加圧循環し、脱脂処理、アルカリ処理および中和処理、活性化処理を行った後、上記巻取軸を通じてメッキ液が巻取軸から巻糸体内部を経てメッキ槽に流れ出す液流を形成し、この液流下で繊維体に無電解メッキを施すことによって、オレンジピールを有する金属被覆を形成したことを特徴とする金属被覆繊維。
〔2〕金属被膜表面が表面粗さ0.01〜1μmのオレンジピールを呈する上記[1]に記載する金属被覆繊維。
〔3〕金属被膜が剥離強度試験において3等級以上の基準強度を有する上記[1]または時上記[2]に記載する金属被覆繊維。
〔4〕繊維体がポリエステル繊維、ナイロン繊維またはアクリル繊維であり、金属被膜が銀、金、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、またはこれらの合金からなる導電性金属である上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する金属被覆繊維。
〔5〕単繊維の比抵抗が0.01Ω・cm以下である上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する金属被覆繊維。
〔6〕金属被膜が銀、白金、ニッケル、スズ、またはこれらの合金であり、白色度(L値)が50以上である上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する金属被覆繊維。
〔7〕金属被膜が銀であり、銀イオンによる抗菌性を有する上記[1]〜上記[6]の何れかに記載する金属被覆繊維。
〔8〕金属被覆に防錆処理および/またはオイル処理が施されている上記[1]〜上記[7]の何れかに記載する金属被覆繊維。
〔9〕上記[1]〜上記[8]の何れかに記載されている金属被覆繊維からなる織布、不織布、編物、抗菌衣料、電磁波シールド材、静電防止材、電極、電線の代替材料、または繊維強化プラスチックの導電性補強材。
〔10〕繊維体を巻取軸に巻装して巻糸体とし、これをメッキ槽に入れて薬液を加圧循環し、脱脂処理、アルカリ処理および中和処理、活性化処理を行った後、上記巻取軸を通じてメッキ液が巻取軸から巻糸体内部を経てメッキ槽に流れ出す液流を形成し、この液流下で繊維体に無電解メッキを施すことによって、表面にオレンジピールを有する金属被覆を繊維体表面に形成することを特徴とする金属被覆繊維の製造方法。
【0007】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を実施態様に基づいて詳細に説明する。
本発明の金属被覆繊維は、繊維体に被覆した金属被膜の表面がオレンジピールを呈することを特徴とする。オレンジピール(orange peel)とはオレンジの皮に似た肌の粗い表面状態を云い、ユズ肌ないし梨地肌と称されている。金属被膜表面がオレンジピールを呈するとはこの金属被膜表面がオレンジピールの状態であることを云う。金属被膜表面がこのオレンジピールの状態を有し、好ましくは後述する適度な粒径の金属粒によって形成されているものであるとき、この金属被膜は高い密着強度を有し、従って耐久性に優れる。
【0008】
このオレンジピールは金属被膜表面の微細な金属粒によって形成されている。本発明に係る金属被膜のオレンジピールは粒径0.01〜1μmの金属粒によって形成されたもの、すなわち0.01〜1μmの表面粗さを有するものが好ましく、さらに0.05〜0.5μmの表面粗さを有するものがより好ましい。なお、金属被膜の表面粗さが0.01μmよりも小さいと被膜表面が滑らかな外観を有するようになり、かつ金属被膜が厚くなって剥がれ易くなる。一方、表面粗さが1μmを上回るものは金属粒が剥離し易くなるので好ましくない。
【0009】
繊維体に被覆した金属被膜が0.01μm〜1μmの表面粗さを有するオレンジピールの状態であるとき、この金属被膜は高い密着強度を有する。具体的には、金属被膜のメッキ方法等にもよるが、規格(JIS L 0849)に準じた剥離強度試験において、汚染判定基準が3等級以上の剥離強度(3等級以上の強度)を有する。因みに、上記規格試験(JIS L 0849)は繊維や布の染色堅ろう度を示す試験であり、染色布に白色布を重ね、所定荷重下で規定回数擦り合わせた場合に生じる白色布の汚染度によって染色の付着性を判定する。汚染度の高い順(付着性の低い順)に1等級から5等級までの基準が定められており、5等級の汚染度が最も低く、従って密着性が最も高い。本発明の金属被覆繊維は3等級以上、概ね4等級ないし5等級の高い密着強度を有する。
【0010】
このオレンジピールの金属被膜はそのメッキ条件、とくにメッキの成長速度を調整することによって形成される。金属メッキはメッキ開始直後に下地(繊維表面)に金属粒子の核が生成し、これが成長することによって被膜になる。このとき、メッキ温度が高すぎたり、触媒の量が多すぎるとメッキの成長速度が早すぎて下地表面に超微粒子の金属粒子核が同時に多数成長してしまい(結果的には表面が平坦に見える)、密着性に優れた緻密な金属被膜になり得ない。一方、適度な成長速度でメッキしたものはメッキ開始直後に下地表面に生成した金属粒子を核として、その金属粒子の形状を保って徐々に成長するので、密着性に優れた緻密な金属被膜となる。なお、既に述べたように、金属被膜表面のオレンジピールの状態はその施工条件等によって異なり、金属被膜の膜厚によって一義的に定まるものではないので、金属被膜は膜厚に拘わらずオレンジピールの状態を有することが重要である。もっとも金属被膜が厚すぎると剥がれ易くなることに変わりない。ただし、同程度の膜厚を有するものでもオレンジピールの被膜は密着強度が大きく平滑な表面の被膜より剥離し難い。
【0011】
本発明の金属被覆繊維に用いる繊維体としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ナイロンなどの高分子材料を主成分とするもの。および木綿やレーヨンなどのセルロース系材料。これら高分子材料およびセルロース系材料からなる有機繊維のほかにガラスファイバーなどの無機繊維、あるいは金属繊維を含めたこれらの材料を複合した繊維などが挙げられる。このうち、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維について有用である。特に、ポリエステルの長繊維は従来から金属被覆が難しいが、本発明によれば密着強度の大きい金属被覆繊維が得られる。これらの繊維は単繊維の太さが0.1〜15d(デニール)のものが適当である。この繊維径が0.1dより細いと繊維の強度が不足するので好ましくなく、また、15dより太いと金属被膜を施した際に繊維が硬くなり可撓性が失われるので適当ではない。
【0012】
繊維体表面に被覆する金属の種類は特に限定されない。具体的には、例えば、銀、金、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、およびこれらの合金などを用いることができる。このうち白色導電繊維を得るには銀、白金、スズ、ニッケルおよびこれらの合金などの白色光沢を有する導電性の高い金属が用いられる。これらの金属は電解メッキ、化学メッキ、あるいは真空蒸着などにより繊維体表面に被覆することができる。この金属被膜が上記オレンジピールを有する条件ないし方法であれば他の施工条件は限定されない。
【0013】
本発明によれば、繊維体にオレンジピールを有する金属被膜を被覆することにより、好ましくは上記表面粗さのオレンジピールを有する金属被膜を被覆することによって密着強度に優れた導電性繊維を得ることができる。具体的には、単繊維の比抵抗が0.01Ω・cm以下、好ましくは0.001Ω・cm以下、さらに好ましくは10-4〜10-5Ω・cm程度の導電性繊維を得ることができる。また、特に銀や白金、ニッケル、スズなどの白色光沢金属を被覆したものは白色度(L値)50以上の白色度の高い導電性繊維を得ることができる。なお、白色度はハンターの式に基づくLab法によって測定される。
【0014】
従来、種々の白色導電繊維が知られているが、繊維材料自体に導電性の白色成分を混入して製造したものは比抵抗が104〜106Ω・cm以上と高く、電磁波シールド材等の用途には導電性が十分ではない。また、染料を用いて繊維を前処理した後に金属被膜をコーテングすることにより0.01Ω・cm程度の導電性を有するようにした繊維も知られているが、これは青味や緑色味を帯びた繊維であって白色度の高い導電性繊維は得られていない。一方、本発明の金属被覆繊維はオレンジピールの金属被膜とすることによってその密着性を高めたものであるので染料による着色がなく、従って高い白色度を有し、かつ被膜の剥離強度(密着強度)が大きいので優れた導電性を有する。
【0015】
さらに、本発明の金属被覆繊維は被膜金属として銀を用いることにより、白色性および導電性と共に銀イオンによる優れた抗菌性を有することができる。本発明に係る銀被覆繊維は長期間にわたって銀イオンが定常的に微量(例えば1ppb〜1ppm)放出されるので、抗菌性を長く持続することができる。
【0016】
本発明の金属被覆繊維は金属被覆にさらに表面処理を施したものでも良い。表面処理としては防錆処理やオイル処理(オイリング)が施される。防錆処理を施すことにより白色度の経時的な低下や密着性(剥離強度)の低下を防止することができる。また、オイル処理を施すことにより繊維表面の滑り性が向上する。また、このオイル処理は繊維を織機や編機によって加工する際にその滑りを良くするので金属被膜の密着性の保護にもなる。
【0017】
これらの表面処理は前工程で行われる繊維の脱脂処理や活性化処理と同様に、図2のメッキ装置を用い、処理液を加圧循環することにより施すことができる。防錆剤としては、銀用水溶性変色防止剤(商品名:キレスライトACW-1、キレスト社製品)、金銀変色防止剤(商品名:プレコートAG、日本高純度化学社製品)、銀変色防止剤(商品名:EL、日進化成社製品)などを用いることができる。また、オイル処理剤としては市販品(竹本油脂工業社製品)のデリオン480(商品名)とSMA−2(商品名)の混合物等が推奨される。
【0018】
本発明の金属被覆繊維は織布または不織布などの布地材料や編物材料などとして用いることができる。この場合、銀やスズ、ニッケルなどを用いたものは高い白色度を有するので染色した際に発色性に優れ、テキスタイルや衣料品の布材に適する。さらに、銀などをコーテングしたものは抗菌繊維および抗菌衣料として利用することができる。具体的な用途としては、抗菌性の靴下、下着、上着、白衣、寝具、シーツ、ナプキン、手袋、シャツ、ズボン、あるいは作業衣などが挙げられる。
【0019】
また、本発明の金属被覆繊維は布地材料等に限らず、その導電性を利用して電磁波シールド材、無塵服や手袋ないし靴、カバー、作業衣など静電防止材料、あるいは電極や電線の軽量化を図る代替材料などに用いることができる。さらに、繊維強化プラスチックの導電性補強材として用いることができる。
【0020】
製造方法
本発明の金属被覆繊維は、上記有機繊維などの繊維体(原糸)の表面に上記金属をオレンジピールとなるように電解メッキあるいは化学メッキなどによって被着させることによって得られる。なお、この金属被膜を被着する際に、あらかじめ繊維体表面をアルカリ等によってエッチング処理し、粗面化することにより、被覆されるメッキ金属がこの粗面に入り込んでアンカー効果を発揮するので更に好ましい。
【0021】
繊維体(原糸)に金属被膜を被着させる際、特願平11−145537号に記載されている製造方法および装置を利用すると良い。この製造方法は、図2に示すように、多数の通液孔(11)を有する巻取軸(10)に原糸(12)をチーズ巻の状態に巻装して巻糸体(20)を形成し、この巻糸体(20)をメッキ槽(30)に装入し、上記巻取軸(10)を通じてメッキ液(31)を巻糸体内部に浸透させることにより、巻取軸から巻糸体内部を経てメッキ槽に流れ出す液流を形成し、この液流下で原糸に無電解メッキを施すことを特徴とする製造方法である。この方法によれば、メッキ液は巻取軸を通じて巻糸体の内側から供給され、巻糸体の外部に向かって流れるので繊維間の間隙がメッキ液によって外側に押し広げた状態となり、繊維間の細部にまでメッキ液が浸透するので、長繊維の連続糸をチーズ巻きの状態にしたものでも繊維表面に金属メッキが均一に形成される。
【0022】
なお、このメッキ方法において、巻取軸へのメッキ液の導入を一時的に停止して、メッキ槽に貯留したメッキ液を巻糸体内部に浸透させ、巻取軸を通じて排出することにより、最初の液流とは逆にメッキ槽から糸巻体内部を経て巻取軸に向かう液流を一時的に形成し、これにより金属メッキの均一性を更に向上させることができる。
【0023】
巻糸体をメッキ槽に装入後、アルカリ処理、中和処理および活性化処理の後に銀、白金またはニッケル、スズなどの無電解メッキを施すことにより白色度(L値)50以上、比抵抗0.01Ω・cm以下、好ましくは0.001Ω・cm以下の高導電性白色連続繊維を得ることができる。また、これに防錆処理を施すことにより上記白色度を長期間維持することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に示す。
実施例1
図2のメッキ装置を用い、表1に示す高分子材料からなる繊維体を巻取軸にワインデングしてチーズ巻の巻糸体とし、これをメッキ槽に入れて以下の(イ)脱脂処理、(ロ)アルカリ処理・中和処理および(ハ)活性化処理を行った後、表1の金属について(ニ)無電解メッキを施し、さらに(ホ)表面処理[防錆処理]を施した。なお各処理は薬液を加圧循環して行った。
【0025】
(イ)脱脂処理:脱脂液(エースクリーンA-220:奥野製薬工業社製品)の5wt%溶液を55℃でメッキ槽に5分間循環させた後、イオン交換水を通じて十分に洗浄した。
(ロ)アルカリ処理:脱脂処理後に20wt%水酸化ナトリウム溶液を70℃でメッキ槽に20分間循環させ、さらにイオン交換水を通じて十分に洗浄した後に5wt%濃塩酸溶液を室温でメッキ槽に2分間循環させた。
(ハ)活性化処理:アルカリ処理後に濃塩酸溶液と塩化パラジウム混合溶液(キャタリストC:輿野製薬工業社製品)をメッキ槽に室温で3分間循環させた後にイオン交換水を通じて十分に洗浄した。さらに10wt%硫酸溶液をメッキ槽に45℃で3分間循環させて活性化した。
(ニ)メッキ工程:以上の前処理によって繊維表面に触媒を付着させた後に、表1に示す白金、銀およびニッケルについて、各々のメッキ液をメッキ槽に循環させてオレンジピールを有する金属被膜を形成した。また、比較例として各金属についてオレンジピールを有しない他は略同一の条件で金属被覆を形成した。
(ホ)表面処理[防錆処理]:防錆剤(キレスライトACW-1,キレスト社製品)を水で3倍に希釈したものをメッキ槽に入れ、これに上記処理工程によって金属被膜を施した繊維を浸して表面処理を施した。
【0026】
これらの金属被覆繊維について被膜の密着(剥離)強度、導電性および白色度を測定した。この結果を表1に示した。また、市販品を比較例として示した。なお、本発明に係る実施試料No.A1の金属被膜(Ag)について、オレンジピールを呈する被膜表面の状態を図1の顕微鏡写真に示した。
【0027】
密着強度は繊維や布の染色堅ろう度を示す規格試験(JIS L 0849)に準じた剥離強度試験に基づいて測定した。具体的には、試験試料の金属被覆繊維の束に白色布を重ね、200gの荷重を加え、毎分30回の往復速度で100回往復摩擦を行い、白色布に付着した汚染度に基づき、汚染度の高い順(付着性の低い順)に1等級から5等級までの基準に従って剥離強度(密着強度)を判定した。導電性は約10cm長さの金属被覆繊維の両端に電極を接続し、デジタルマルチメータで端子間抵抗値(Ω)を測定し、繊維の長さ(cm)と断面積(cm2)から比抵抗(Ω・cm)を算出した。白色度はハンターの式に基づきLab法によってL値を測定した。L値が大きいほど白色度が高い。
【0028】
図1の顕微鏡写真に示すように、本発明に係る金属被膜表面は概ね粒径0.05〜1μmの金属粒によって形成されたオレンジピールを有している。このオレンジピールを有する金属被覆は、表1に示すように、剥離強度が3等級以上、大部分は4等級、5等級であり従来のものより格段に大きな密着性を有する。さらに比抵抗は5×10-5〜10-3Ω・cmであり優れた導電性を有する。また、白色度は60以上、一部は65〜70であり、優れた白色性を有する。一方、市販品および金属被膜の表面が平滑な比較例(B1〜B3)は何れも剥離強度が1〜2等級であり、密着性が悪く、白色度も低い。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
本発明の金属被覆繊維は繊維表面に被着された金属被膜が高い密着性を有するので耐久性が良く、かつ優れた導電性を有する。さらに、金属被膜として銀やニッケルなどの白色金属を被覆したものは高い白色性を有する。また金属被膜として銀メッキを施したものはその銀イオンによって優れた抗菌性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属被膜についてオレンジピールの状態を示す顕微鏡写真。
【図2】本発明の金属被覆繊維を製造する装置例を示す概念図。
【符号の説明】
10−巻取軸、11−通液孔、12−繊維体(原糸)、20−巻糸体、30−メッキ槽、31−メッキ液等
Claims (10)
- 繊維体表面に金属被膜を設けた繊維であって、該繊維体を巻取軸に巻装して巻糸体とし、これをメッキ槽に入れて薬液を加圧循環し、脱脂処理、アルカリ処理および中和処理、活性化処理を行った後、上記巻取軸を通じてメッキ液が巻取軸から巻糸体内部を経てメッキ槽に流れ出す液流を形成し、この液流下で繊維体に無電解メッキを施すことによって、オレンジピールを有する金属被覆を形成したことを特徴とする金属被覆繊維。
- 金属被膜表面が表面粗さ0.01〜1μmのオレンジピールを呈する請求項1に記載する金属被覆繊維。
- 金属被膜が剥離強度試験において3等級以上の基準強度を有する請求項1または請求項2に記載する金属被覆繊維。
- 繊維体がポリエステル繊維、ナイロン繊維またはアクリル繊維であり、金属被膜が銀、金、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、またはこれらの合金からなる導電性金属である請求項1〜請求項3の何れかに記載する金属被覆繊維。
- 単繊維の比抵抗が0.01Ω・cm以下である請求項1〜請求項4の何れかに記載する金属被覆繊維。
- 金属被膜が銀、白金、ニッケル、スズ、またはこれらの合金であり、白色度(L値)が50以上である請求項1〜請求項5の何れかに記載する金属被覆繊維。
- 金属被膜が銀であり、銀イオンによる抗菌性を有する請求項1〜請求項6の何れかに記載する金属被覆繊維。
- 金属被覆に防錆処理および/またはオイル処理が施されている請求項1〜請求項7の何れかに記載する金属被覆繊維。
- 請求項1〜請求項8の何れかに記載されている金属被覆繊維からなる織布、不織布、編物、抗菌衣料、電磁波シールド材、静電防止材、電極、電線の代替材料、または繊維強化プラスチックの導電性補強材。
- 繊維体を巻取軸に巻装して巻糸体とし、これをメッキ槽に入れて脱脂処理、アルカリ処理および中和処理、活性化処理を行った後、上記巻取軸を通じてメッキ液が巻取軸から巻糸体内部を経てメッキ槽に流れ出す液流を形成し、この液流下で繊維体に無電解メッキを施すことによって、表面にオレンジピールを有する金属被覆を繊維体表面に形成することを特徴とする金属被覆繊維の製造方法。
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