JP4560183B2 - サイクロトロンのビーム遮断装置及びビームモニタ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部イオン源型サイクロトロンのビームを遮断するためのサイクロトロンのビーム遮断装置、及び、サイクロトロン中心部のビームをモニタするためのビームモニタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
放射線取扱施設において、放射線の発生量及び放射能の管理は非常に重要である。
【0003】
放射線発生装置の1つに、直流磁場と高周波電圧を利用して高エネルギの加速ビームを作り出すサイクロトロンがある。このサイクロトロンには、イオン源がサイクロトロン本体の外部に設けられた外部イオン源型と、イオン源がサイクロトロン本体の内部に設けられた内部イオン源型がある。
【0004】
このうち後者の内部イオン源型サイクロトロンは、図1(平面図)及び図2(断面図)に示す如く、サイクロトロン本体10の中心部に設置された内部イオン源12でイオンを発生させ、該内部イオン源12からイオンを引き出して低エネルギビーム14を得る。内部イオン源12から引き出されたイオンは、高周波電源16により加速電極18に印加された高周波電圧によって加速され始める。この加速され始めたイオンは、電磁石20の磁力線22によって形成される磁界(磁場)の作用によって、回転運動を行いながら、繰り返し加速電極18を通過し、次第に高エネルギとなり回転半径を大きくしながら、サイクロトロン最大半径まで加速されて、高エネルギビーム24が作られる。
【0005】
このようにして高エネルギになった加速ビームは、ビーム取り出し装置26によりサイクロトロンの外部に取出され、実験や治療に利用される他、各照射室(図示省略)へ輸送される。
【0006】
各照射室へ輸送されたビームは、患者の入れ替わりや、照射の段取り及び実験準備等、各ビーム利用者の使用条件によって、ビームの輸送及び遮断を行わなければならない。治療照射では、特にビームの供給・停止の迅速な対応が求められる。
【0007】
ビームの輸送、供給及び停止に迅速に対応するため、一般に、ビームシャッタ28がサイクロトロンの出口に設置されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サイクロトロン出口にビームシャッタ28を配置したのでは、加速ビームが高エネルギになっているので、ビームを遮断した時、多量の放射線が発生し、各装置が放射化するという問題点を有していた。従って、ビームシャッタは、この位置にはない方が良い。
【0009】
一方、放射線発生装置について、特にサイクロトロンで放射能の低減化を目的とした装置はないが、同様の効果があると思われる、次のような構成及び方法がある。
【0010】
その一つは、図3に示す如く、サイクロトロン本体10の外部に、イオン源32を含む外部イオン源装置30が設けられた外部イオン源型サイクロトロンとして、サイクロトロン本体10に入射する前の低エネルギビーム14を、ビームシャッタ34で遮断する方法である。このような外部イオン源型サイクロトロンにおいて、外部イオン源32から取出された直後のビーム14は、エネルギが低いので、サイクロトロン本体10に入射する前のビームシャッタ32を利用してビームを遮断しても、サイクロトロン内部及びサイクロトロン室内の放射線の発生や放射化を低減することができる。しかしながら、内部イオン源型サイクロトロンを、このような外部イオン源型サイクロトロンに改造するには、費用及び時間がかかり過ぎるため、得策ではない。
【0011】
又、図1及び図2中に示す如く、ビームの回転軌道及び加速状態をモニタするために挿入されるメインプローブ40を、サイクロトロンの中心領域まで挿入して、ビーム遮断に流用することも考えられる。しかしながら、メインプローブ40は、サイクロトロンのビーム調整を行う時に、サイクロトロンの中心領域からビームを取出す最外周までスイープさせることによって、ビームの回転軌道及び加速状態を知るためのモニタである。そのため、移動速度が遅く、ビーム遮断に利用する場合、中心領域まで移動させる間に、大部分高エネルギのビーム24が当っており、放射化及び放射線の発生は避けられない。又、ビーム遮断を行う場合、ビームの利用目的及び安全性の観点から、速い動作を求められることが多いので、メインプローブ40をビーム遮断に流用するのは実用的ではない。
【0012】
又、高周波電源16を停止することにより、ビーム加速を停止したり、あるいは、内部イオン源12の電源を停止することにより、ビームの発生自体を停止することも考えられる。しかしながら、サイクロトロンを長時間安定に動作させ、安定したビームを供給するためには、ビームを常時生成させておき、必要に応じてビームシャッタを開閉する方法が好ましく、機器動作の安定性の観点から、各電源の頻繁なオン・オフ操作によるビームの停止は望ましくない。
【0013】
以上のように、従来は、放射能の低減化を目的とした有効な方法や装置がなかった。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、非常に効率的に放射化物質の生成を抑え、放射能を低減化することを第1の課題とする。
【0015】
本発明は、又、サイクロトロン中心部のビームを迅速にモニタ可能とすることを第2の課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内部イオン源型サイクロトロンのビームを遮断するためのビーム遮断装置において、内部イオン源の近傍に配置されるシャッタと、通常時はビーム軌道外にある該シャッタを、ビーム遮断時にビーム軌道上に挿入する駆動手段とを備え、前記シャッタによりビームの供給を停止することにより、前記第1の課題を解決したものである。
【0017】
又、前記駆動手段が、L字状先端部にシャッタが配設された回動軸を回動するようにしたものである。
【0018】
あるいは、前記駆動手段が、先端部にシャッタが配設された直動軸を上下動するようにしたものである。
【0019】
本発明によれば、サイクロトロンで高エネルギに加速される前の低エネルギのビームをシャッタで遮断してビームを供給停止してしまうので、効率的に放射化物質の生成を抑え、放射能の低減化することができる。従って、保守、点検、修理等の作業を行う時に、放射能汚染や放射線被爆を低減化することができ、安全性、作業性、及び放射線管理の向上を図ることができる。
【0020】
本発明は、又、前記シャッタを、絶縁物を介して支持することにより、サイクロトロン中心部のビームによって生じるビーム電流をモニタするためのプローブとすることにより、前記第2の課題を解決したものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
本発明の第1実施形態は、図4(全体図)及び図5(シャッタ部分の拡大図)に示す如く、駆動装置50によって回動されるシャッタ軸52の先端をL字状とし、その先端にシャッタ54を配置して、該シャッタ54を内部イオン源12の直近に配置するようにしたものである。
【0023】
前記シャッタ54は、シャッタ軸52を、ビーム軌道からずれた位置に、サイクロトロン側面より挿入して、中心付近の内部イオン源12の近傍に設置される。
【0024】
そして、通常時は、図6に示す水平位置として、シャッタ54をビーム軌道外とし、一方、ビーム遮断時には、駆動装置50によりシャッタ軸52を90°回動することによって、シャッタ54を例えば立ち上げてビーム軌道上に挿入することにより、エネルギの低い中心領域で、ビームを迅速に供給停止することができる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態を詳細に説明する。
【0026】
本実施形態は、図7(全体図)及び図8(シャッタ部分の拡大図)に示す如く、内部イオン源12に衝突しないよう、先端部(図では下端部)がクランク状に加工されたシャッタ軸62の先端にシャッタ54を取り付け、駆動装置60により上下動して、ビーム軌道上に出入れできるようにしたものである。
【0027】
前記シャッタ54は、シャッタ軸62の先端(図では下端)に取り付け、サイクロトロン上部(図の場合)もしくは下部より挿入して、内部イオン源12の近傍に設置する。
【0028】
本実施形態において、ビームを遮断する場合には、図8に示す如く、シャッタ軸62を下げて、シャッタ54をビーム軌道上に挿入する。一方、通常時は、シャッタ軸62によりシャッタ54を引き上げて、ビーム軌道外に外す。
【0029】
前記実施形態においては、いずれも、ビーム軌道上に駆動軸や駆動装置がなく、ビームの供給停止を迅速に行うことができる。
【0030】
なお、前記実施形態においては、いずれも、シャッタ軸52、62の先端にシャッタ54が取付けられ、内部イオン源12から出た直後のビームを遮断するようにされていたが、図9に示す第3実施形態のように、シャッタ54を絶縁物70を介して支持し、例えばシャッタ軸52、62(図では52)の内部にケーブル72を通すことにより、外部の電流計74で、サイクロトロン中心部のビームによって生じるビーム電流をモニタするように構成することも可能である。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、ビーム軌道上に駆動軸や駆動装置を設けることなく、ビームの供給停止やモニタを迅速に行える。
【0032】
このように、高エネルギに加速される前にビームを遮断してビームの供給を停止することにより、機器の放射化を必要最低限に抑えることができる。又、サイクロトロンの停止後、サイクロトロン室内の放射能レベルの減衰時間が早くなり、入室の際の待機時間が短くなって、室内の作業時間が増大する。又、各機器の放射化が低減するため、各機器の放射能冷却時間が短縮され、被曝が低減され、作業能率が向上する。更に、放射線管理上、低コストになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の問題点を説明するための、内部イオン源型サイクロトロンの平面図
【図2】同じく断面図
【図3】同じく、外部イオン源型サイクロトロンの断面図
【図4】本発明の第1実施形態が配設されたサイクロトロンを示す断面図
【図5】同じくシャッタ部分を示す拡大図
【図6】図5の左側面から見た正面図
【図7】本発明の第2実施形態が配設されたサイクロトロンを示す断面図
【図8】同じくシャッタ部分を示す拡大図
【図9】本発明の第3実施形態の要部を示す断面図
【符号の説明】
10…サイクロトロン本体
12…内部イオン源
50、60…駆動装置
52、62…シャッタ軸
54…シャッタ
Claims (4)
- 内部イオン源型サイクロトロンのビームを遮断するためのビーム遮断装置において、
内部イオン源の近傍に配置されるシャッタと、
通常時はビーム軌道外にある該シャッタを、ビーム遮断時にビーム軌道上に挿入する駆動手段とを備え、
前記シャッタによりビームの供給を停止することを特徴とするサイクロトロンのビーム遮断装置。 - 前記駆動手段が、L字状先端部にシャッタが配設された回動軸を回動するようにされている請求項1に記載のサイクロトロンのビーム遮断装置。
- 前記駆動手段が、先端部にシャッタが配設された直動軸を上下動するようにされている請求項1に記載のサイクロトロンのビーム遮断装置。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のビーム遮断装置のシャッタを、絶縁物を介して支持することにより、サイクロトロン中心部のビームによって生じるビーム電流をモニタするためのプローブとしたことを特徴とするビームモニタ装置。
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