JP4556081B2 - カード処理装置、およびカード取引端末装置 - Google Patents

カード処理装置、およびカード取引端末装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カード処理装置、およびカード取引端末装置に関し、特に、ICカードもしくはICカードとしての機能を含むカードとの情報の授受に用いられる電磁波の出力を大きくすることなく、高速で、安定した通信を可能にする、カード処理装置、およびカード取引端末装置に関する
【0002】
【従来の技術】
電子マネーシステム、セキュリティシステム(例えば、入退出管理に用いられる身分証)、あるいは、アミューズメント施設のチケットなどにおいて、非接触式IC(Integrated circuit)カードの利用が増加している。
【0003】
ICカードを用いたデータ授受システムの構成を図1に示す。
【0004】
ICカード1は、リーダ/ライタ(ICカード読み取り機)2に対して非接触の状態でデータを授受する(無線通信を行う)。ICカード1は、リーダ/ライタ2の信号処理部11と、アンテナ12を介して情報の授受を行うためのアンテナ、並びに、各種処理を行うCPU(Central Processing Unit)、および処理に必要なデータなどを記憶するメモリを含んだICを内蔵しており、リーダ/ライタ2と、電磁波を利用して非接触でデータの送受信を行い、一般に、その電磁波により、必要な電力が供給される。
【0005】
リーダ/ライタ2は、ICカード1と電磁波を用いて通信するためのアンテナ12と、アンテナ12によって送信するデータ、およびアンテナ12によって受信されたデータを処理する信号処理部11より構成されている。
【0006】
リーダ/ライタ2は、図2に示すように、アンテナ12から電磁波を発生し、ICカード1とのデータの授受を行う。信号処理部11は、ICカード1から送信されたデータを、アンテナ12を介して受信し、受信したデータが、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)やBPSK(Binary Phase Shift Keying)を用いて変調されている場合、所定の処理により、受信したデータを復調し、コントローラ3に供給するとともに、コントローラ3から供給されたデータを、ASKやBPSKを用いて変調し、アンテナ12を介して、ICカード1に送信する。また、信号処理部11は、内部に図示しないメモリを有しており、例えば、ICカード1との認証処理などといった各種処理に必要なデータを記録している。
【0007】
コントローラ3は、例えば、パーソナルコンピュータなどで構成され、リーダ/ライタ2によって読み取られたICカード1から送信されたデータを処理し、例えば、図示しないシステムサーバに送信したり、ICカード1に送信するデータを生成して、リーダ/ライタ2に供給する。
【0008】
リーダ/ライタ2は、コントローラ3からコマンドの入力を受け、信号処理部11において、コマンドを変調して、アンテナ12を介してICカード1に送信する。コマンドを受信したICカード1は、コマンドに対するレスポンスを、アンテナ12を介して信号処理部11に送信する。信号処理部11は、受信したレスポンスを復調して、コントローラ3に供給する。
【0009】
また、磁気ストライプおよびエンボス文字により所定のデータが記録または記載されたカードからデータを読み取ることができるものとして、例えば、銀行や郵便局に設置されているATM(Automatic Teller Machine(自動取引装置))などのカード処理機がある。ATMは、CD(Cash Dispenser/キャッシュ・ディスペンサ/現金自動支払機)と、AD(Automatic Depository/現金自動預入機)の機能を兼ね備えた、銀行、もしくは郵便局の業務の一部を行う端末装置である。個人の情報は、キャッシュカードなどに書き込まれている。最近では、記帳機能、振込機能などを有する多機能型ATMも登場し、銀行などの事務負担を軽減し、ユーザの待ち時間の短縮などに貢献している。ATMは、その内部に、挿入されたカードを搬送して、磁気データおよびエンボスデータを読み取るためのカードローダを備えている。図3は、カードローダ21の側面透視図である。
【0010】
カード挿入部32に挿入されたカード31は、カード搬送ローラ34−1およびカード搬送ローラ34−2によって、金属部材を有する筐体35内に搬送される。カード31は、筐体35内で、カード31の幅に対応して備えられている2本のカード案内レール33に沿って、進行方向に対して左右にずれないように案内され、カード案内レール33にはさまれるようにして備えられているカード位置決め板(図示せず)上を搬送される。
【0011】
筐体35内に搬送されたカード31は、まず、駆動シャフト36−1および駆動シャフト36−2によって駆動されるカード搬送ローラ37−1乃至カード搬送ローラ37−4により、図中右方向に搬送される。そして、搬送されたカード31が、カード31上の磁気ストライプの位置に対応して備えられている磁気ヘッド38と接して、その下を通過するとき、磁気ヘッド38は、磁気ストライプに記録されたデータを読み取る。
【0012】
カード31は、図中右方向に更に搬送され、カード31上のエンボス文字の位置に対応して備えられている光センサ39の下を通過して、光センサ39により、エンボス文字が読み取られる。データ読み取りが終了したカード31は、カード搬送ローラ37−1乃至カード搬送ローラ37−4により、図中左方向に搬送されて、カード挿入部32より排出される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ICカード1の利用拡大に伴い、図1および図2を用いて説明したリーダ/ライタ2を、図3を用いて説明したカードローダ21の機構を用いて実現する、もしくは、図3を用いて説明したカードローダ21に、リーダ/ライタ2を組み込むことが要求されている。
【0014】
例えば、ATMにおいては、図3を用いて説明したカードローダ21のように、カード挿入部からキャッシュカードなどを挿入するようになされている。そして、ICカード1の利用拡大に伴い、キャッシュカードにICカード1の機能を含ませ、広く普及されているATMを用いて、ICカード1に記録されたデータを読み書きすることが求められている。
【0015】
リーダ/ライタ2を、カードローダ21の機構を用いて実現した場合(すなわち、筐体35内にICカード1を搬送して、その内部において、電磁波を用いた情報の授受を行う場合)の透過斜視図を図4に示す。ここでは、図3を用いて説明した筐体35の上面および下面を省略して図示し、筐体35の両側の側面部分を支持構造部材51−1および51−2として図示している。
【0016】
カード搬送ローラ37−1および37−2によって、カード案内レール33−1およびカード案内レール33−2に沿って、カード位置決め板52上を搬送されるICカード1(図4においては図示を省略している)とのデータの授受を行うため、アンテナ12が、ICカード1との通信に適した距離だけ上部に、支持構造部材51−1および51−2(図3を用いて説明した筐体35の側面部分)にはさまれる位置に備えられる。
【0017】
支持構造部材51−1および51−2(すなわち、筐体35)は、金属で構成されているか、もしくは金属部材を有する。このため、図5に示されるように、アンテナ12から送信され、ICカード1内の図示しないアンテナに受信される電磁波の磁力線は、筐体35の金属部分に入射し、金属内で、渦電流を生じてしまい、エネルギーが無駄に消費されてしまう。このエネルギーの損失の結果、ICカード1とアンテナ12との電磁波による無線通信は不安定となり、場合によっては、通信不能になってしまう。
【0018】
アンテナ12付近の金属部分によるエネルギーの損失を補うために、アンテナ12から送信される電磁波の出力を大きくする方法も考えられるが、電波法による制約のため、電磁波の出力を無制限に大きくすることは不可能であり、また、電磁波の出力を大きくすることによって、消費電力の増大を招いてしまう。
【0019】
また、ICカード1の搬送を制御し、アンテナ12が出力する電磁波に対して最大の感度を持つ位置で、ICカード1をいったん停止させ、通信を実行させるという方法も考えられるが、この場合、ICカード1とアンテナ12とのデータの授受にかかる処理時間が大幅に長くなってしまうため、使用者にとって、非常に不便なものとなってしまう。
【0020】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ICカードもしくはICカードとしての機能を含むカードとの情報の授受に用いられる電磁波の出力を大きくすることなく、高速で、安定した通信を可能にするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明のカード処理装置は、金属部材を有する筐体で覆われ、電磁波を用いた非接触通信により第1のデータの授受を行うカードを筐体に受け入れ、かつ、カードを筐体から排出するカード入出手段と、カードを搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送されるカードに対してほぼ平行に設けられ、カードとの非接触通信に用いられる第1のアンテナと、筐体と第1のアンテナとの間に設けられ、第1のアンテナからの磁界を金属部材に入射する前に偏向する第1の偏向手段と、搬送手段と筐体との間に設けられ、第1のアンテナからの磁界を金属部材に入射する前に偏向する第2の偏向手段とを備える。
【0022】
偏向手段は、磁性体により構成されているものとすることができる。
【0023】
搬送手段と第2の偏向手段との間に、第1のアンテナに対してほぼ平行で、かつ、搬送手段により搬送されるカードとの距離が、カードと第1のアンテナとの距離とほぼ同じになるように設けられた第2のアンテナを更に備えさせ、第1の偏向手段および第2の偏向手段には、第1のアンテナおよび第2のアンテナからの磁界を金属部材に入射する前に偏向させるようにすることができる。
【0024】
第1のアンテナには、搬送手段により搬送されるカードの所定の搬送速度において、第1のデータを充分授受することができるデータ授受時間を確保することができるだけの、カードの搬送方向の長さを有する第2のアンテナを用いて第1のデータを授受させるようにすることができる。
【0025】
第1のデータと異なる第2のデータをカードと授受するデータ授受手段を更に備えさせることができる。
【0026】
データ授受手段は、カードが有する第1の金属端子と接触して接触型ICデータを授受する第2の金属端子、磁気データを読み取る磁気センサ、エンボスデータを読み取る第1の光センサ、バーコードデータを読み取る第2の光センサのうちの少なくともひとつであるものとすることができる。
【0027】
本発明のカード取引端末装置は、金属部材を有する筐体で覆われ、電磁波を用いた非接触通信により第1のデータの授受を行うカードを筐体に受け入れ、かつ、カードを筐体から排出するカード入出手段と、カードを搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送されるカードに対してほぼ平行に設けられ、カードとの非接触通信に用いられるアンテナと、筐体とアンテナとの間に設けられ、アンテナからの磁界を金属部材に入射する前に偏向する第1の偏向手段と、搬送手段と筐体との間に設けられ、アンテナからの磁界を金属部材に入射する前に偏向する第2の偏向手段とを備えるカード処理装置と、カード処理装置により読み取られた第1のデータを処理する第1の処理手段とを備える。
【0028】
第1のデータと異なる第2のデータを処理する第2の処理手段を更に備えさせることができ、カード処理装置には、カードと第2のデータを授受するデータ授受手段を更に備えさせることができる。
【0029】
第1の処理手段および第2の処理手段にはそれぞれ独立して第1のデータおよび第2のデータを処理させるようにすることができる。
【0033】
本発明のカード処理装置においては、カードが筐体に挿入され、カードが搬送され、電磁波を用いた非接触通信により、搬送されたカードと第1のデータが授受され、第1のアンテナからの磁界が、金属部材に入射する前に偏向され、カードが筐体から排出される。
【0034】
本発明のカード取引端末装置においては、カードが筐体に挿入され、カードが搬送され、電磁波を用いた非接触通信により、搬送されたカードと第1のデータが授受され、第1のデータが処理され、アンテナからの磁界が、金属部材に入射する前に偏向され、カードが筐体から排出される。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0037】
図6は、本発明を適応したATM61を示す外観斜視図である。
【0038】
ATM61は、前面が操作面となっており、取引を実行するための紙幣入出金ユニット71、紙幣出入口72、硬貨入出金ユニット73、硬貨出入口74、通帳プリンタ75、通帳出入口76、カード処理装置77、カード出入口78、主制御部79、タッチパネル80、液晶表示制御部81により構成されている。
【0039】
紙幣入出金ユニット71および硬貨入出金ユニット73は、タッチパネル80を用いて利用者が入力した各種操作を受けた主制御部79の制御を受け、紙幣出入口72および硬貨出入口74から入金される紙幣および硬貨の金額を確認したり、指定金額の紙幣および硬貨を、紙幣出入口72および硬貨出入口74から排出する処理を行う。
【0040】
通帳プリンタ75は、タッチパネル80を用いて利用者が入力した各種操作を受けた主制御部79の制御を受け、通帳出入口76から挿入された通帳に所定のデータを印刷し、処理終了後の通帳を、通帳出入口76から排出する処理を行う。
【0041】
カード処理装置77は、図7、図11、および、図16を用いて後述するカードローダを含んでおり、カード出入口78から挿入されたカードに記録されたデータを読み込み、所定の処理を実行した後、カードをカード出入口78から排出する処理を行う。カード処理装置77には、取引の記録を印字し、発行する機能を持たせるようにしても良い。
【0042】
このカード処理装置77は、例えば、従来のキャッシュカードなどと同様に、エンボス文字および磁気テープによって、所定のデータが記録されているのに加えて、所定のデータを記録し、処理するICと、カード処理装置77と非接触通信によりICデータを授受するためのアンテナを備えた複合ICカードを処理することができるようになされている。複合ICカードについては、図8を用いて後述する。
【0043】
主制御部79は、液晶表示制御部81を制御して、タッチパネル80に表示される表示画面を制御し、利用者がタッチパネル80を操作した場合、その操作内容を示す信号の入力を受け、ATM61の各部を制御したり、遠隔の図示しないホストコンピュータとオンラインでデータを授受するものである。
【0044】
図7は、本発明を適応した複合ICカード処理用のカードローダの、第1の実施の形態について説明するための、カードローダの内部を示す概略図である。なお、従来の場合と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する(以下、同様)。
【0045】
図7に示すカードローダは、エンボスデータ、磁気データ、およびICデータが記録されている複合ICカード91と、アンテナ12によって非接触通信を行い、磁気ヘッド38によって、磁気ストライプ101のデータを読み込み、更に、光センサ39によって、エンボス文字102を読み取ることができるようになされている。複合ICカード91は、カード案内レール33−1および33−2に沿って、カード位置決め板52上を、図示しないカード搬送ローラによって、図中左から右方向に搬送される。以下、カード案内レール33−1および33−2を個々に区別する必要がない場合、単にカード案内レール33と総称する。
【0046】
図7に示した各部は、図3を用いて説明した場合と同様に、図示しない筐体(例えば、図3を用いて説明した筐体35)で覆われ、カードローダとして1体のユニットを構成している。アンテナ12と、図示しない筐体35の上面との間、および、カード位置決め板52と、図示しない筐体35の下面との間には、例えば、フェライト製の磁性体板94−1および94−2が備えられている。
【0047】
複合ICカード91には、図8に示されるように、複合ICカード91の片側の端部であり、かつ、ICカード外装材103の表面に、磁気ストライプ101によってデータが記録され、磁気ストライプ101と異なる端部に、エンボス文字102が形成され、カード中央部のICカード外装材103の内部に、アンテナ12との情報の授受を行うためのアンテナ105、並びに、各種処理を行うCPU、および処理に必要なデータなどを記憶するメモリを含んだIC104が備えられている。複合ICカード91には、ICデータ、エンボスデータ、磁気データ以外に、例えば、バーコードデータを記録させるようにしても良い。
【0048】
図中左から右方向に搬送された複合ICカード91の磁気ストライプ101に記録されたデータは、磁気ヘッド38によって読み込まれる。複合ICカード91は、続いて、アンテナ12の下部に搬送されるので、複合ICカード91のアンテナ105は、アンテナ12から送信される電磁波を受信して、IC104に供給し、IC104は受信したコマンドを処理して、必要なレスポンスを、アンテナ105を介して、アンテナ12へ送信する。更に、複合ICカード91は、図中右方向へ搬送され、エンボス文字102が、光センサ39によって読み取られ、その後、図示しないカード搬送ローラによって、図中右から左に搬送され、排出される。
【0049】
図9は、図7のカードローダを有するカード処理装置77における、カードローダに関する処理を実行する部分の電気的構成を示すブロック図である。
【0050】
メインコントローラ111は、図6の主制御部79の制御に基づいて、カードローダの各部を制御するようになされている。メインコントローラ111は、複合ICカード91に送信するコマンドを、リーダ/ライタコントローラ112に出力する。リーダ/ライタコントローラ112は、必要に応じて、ICデータ用メモリ113に保存されている、例えば、複合ICカード91との認証処理に用いられる暗号鍵などを読み出して、コマンドとともに、信号処理部11に出力する。信号処理部11は、入力されたコマンドを、ASKやBPSKなどの所定の方式を用いて変調し、アンテナ12を介して、複合ICカード91に送信する。
【0051】
アンテナ12で受信された複合ICカード91からのレスポンスは、信号処理部11に供給されて、ASKやBPSKなどの所定の方式を用いて復調され、リーダ/ライタコントローラ112に入力される。リーダ/ライタコントローラ112は、入力されたレスポンスを処理し、必要に応じて、データをICデータ用メモリ113に保存し、かつ、レスポンスの処理結果をメインコントローラ111に出力する。
【0052】
磁気ヘッド38から入力された磁気ストライプ101の磁気データは、磁気データ読み取りコントローラ115によって制御されている磁気データ読み取り部114によって読み取られ、読み取り結果が、磁気データ読み取りコントローラ115に供給される。磁気データ読み取りコントローラ115は、メインコントローラ111の制御に従って、入力された磁気データの読み取り結果を、必要に応じて磁気データ用メモリ116に保存したり、所定のタイミングでメインコントローラ111に出力する。
【0053】
光センサ39から入力されたエンボスデータ(すなわち、光センサ39によって検出されたエンボス文字102)は、エンボスデータ読み取りコントローラ118によって制御されているエンボスデータ読み取り部117によって読み取られ、読み取り結果が、エンボスデータ読み取りコントローラ118に供給される。エンボスデータ読み取りコントローラ118は、メインコントローラ111の制御に従って、入力されたエンボスデータの読み取り結果を、必要に応じてエンボスデータ用メモリ119に保存したり、所定のタイミングでメインコントローラ111に出力する。
【0054】
以上説明したように、ICデータ、磁気データ、およびエンボスデータは、メインコントローラ111の制御に基づいてそれぞれ独立して読み取られて処理される。メインコントローラ111は、それぞれの処理データのうち、必要なデータを所定のタイミングで要求し、処理する。このような構成をとることにより、複数の形態(この場合、ICデータ、磁気データ、およびエンボスデータ)でデータを授受することができる複合ICカード91に対するデータ処理速度を大幅に短縮することが可能となる。
【0055】
また、図7を用いて説明したように、アンテナ12と、図示しない筐体35の上面との間、および、カード位置決め板52と、図示しない筐体35の下面との間には、例えば、フェライト製の磁性体板94−1および94−2が備えられている。
【0056】
筐体35は、その強度の問題や、材料コストの関係で、金属により構成されるか、もしくは、金属部材を有する。そこで、磁力線が、筐体35の金属部分に入射し、そこで、渦電流の発生によるエネルギーの損失を起こさないように、アンテナ12と筐体35の上面との間、および、カード位置決め板52と筐体35の下面との間に、フェライト製の磁性体板94−1および94−2を備え、図10に示すように、磁力線が筐体35に入射する前に、その進行方向を偏向させるようにして、エネルギーの損失を防ぎ、アンテナ12と複合ICカード91との通信を安定したものにすることができる。
【0057】
図11は、本発明を適応した複合ICカード処理用のカードローダの、第2の実施の形態について説明するための、カードローダの内部を示す概略図である。
【0058】
図11においては、アンテナ12に代わって、アンテナ121−1およびアンテナ121−2が、複合ICカード91の搬送経路をはさむように備えられている。なお、図11においても、図7を用いて説明した場合と同様に、その全体が筐体35で覆われ、筐体35と、アンテナ121−1およびアンテナ121−2の間に磁性体板94−1および94−2が備えられ、カードローダとして1体のユニットとなっている。また、カード処理装置としての電気的構成は、アンテナ12に代わって、アンテナ121−1およびアンテナ121−2が備えられている以外は、基本的に、図9を用いて説明した場合と同一である。
【0059】
アンテナ121−1およびアンテナ121−2から出射される電磁波は、交流の磁界であり、周期的に磁界の向きが切り替えられるため、アンテナ121−1およびアンテナ121−2から出力される電磁波の磁界の向きが常に同一方向になるように、それぞれの出力電磁波は、同位相でなければならない。また、アンテナ121−1およびアンテナ121−2は、複合ICカード91のアンテナ105に対して、距離が同一であるように備えられる。
【0060】
また、アンテナ121−1およびアンテナ121−2から出力される電磁波の合計出力は、電波法によって定められた最大出力を超えてはならない。すなわち、アンテナ121−1およびアンテナ121−2それぞれの出力は、アンテナ12を1つだけ備える場合の半分の出力強度しか許されない(アンテナを2つ備えても、全体の磁界強度は、アンテナ1つの場合と変わらない)。
【0061】
ここで、図12を用いて、複合ICカード91のアンテナ105に対して入射する電磁波の磁界ベクトルと受信効率について説明する。アンテナ105に対して垂直に入射する磁界ベクトルAは、最も効率よい受信を行うことが可能な磁界ベクトルである。それに対して、入射角度を有する磁界ベクトルBでは、その通信効率が低下し、磁界ベクトルCのように、アンテナ105に対して平行に入射した磁界ベクトルでは、まったく通信することができない。
【0062】
磁力線は、図13に示されるように、実際には、アンテナ12の片側の面(この場合、図中下方向)から出発し、最終的には、アンテナ12の出力面と逆側の面に戻るような曲線(磁力線)を描く。そのため、アンテナ12を1つだけ用いて複合ICカード91との非接触通信を行った場合、アンテナ12の端部から送信される電磁波の磁界ベクトルは、図中Dで示される位置において、複合ICカード91(すなわち、アンテナ105)に対して、垂直ではなく、斜めに(すなわち、図12を用いて説明した磁界ベクトルBと同様に)入射されてしまうので、その通信効率は低下してしまう。
【0063】
それに対して、図14に示されるように、複合ICカード91に対して、それぞれ距離Dとなるように備えられたアンテナ121−1およびアンテナ121−2から、それぞれ同位相の電磁波を出力した場合、その磁力線は、アンテナ121−1から、複合ICカード91を透過して、アンテナ121−2に入射し、アンテナ121−2から出力された電磁波は、アンテナ121−1に入射される。このような構成にすることにより、複合ICカード91付近の磁界ベクトルは、図15に示されるように、アンテナ121−1およびアンテナ121−2の端部から出力される電磁波においても、複合ICカード91(すなわち、アンテナ105)に対して、ほぼ垂直となる。従って、同一の磁界強度であっても、非常に効率の良い通信を行うことができる。
【0064】
また、図11を用いて説明したカードローダにおいても、図7を用いて説明したカードローダと同様に、アンテナ121−1と筐体35の上面との間、および、アンテナ121−2と筐体35の下面との間に、フェライト製の磁性体板94−1および94−2を備えることにより、磁力線が筐体35に入射する前に、その進行方向を偏向させるようにして、エネルギーの損失を防ぎ、アンテナ121−1およびアンテナ121−2と複合ICカード91との通信を、更に安定したものとなるようになされている。
【0065】
ところで、電気的接触により通信を行う接触型ICカードにおいては、ICカードと接触端子を接触させ、通信を行うようになされている。そのために、接触型ICカードは、接触端子に対して、必ず1度、停止させなければならない。それに対して、非接触型ICカードによる通信の場合、非接触型ICカードがその内部に有するアンテナも、非接触型ICカードとの通信を行うための、リーダライタのアンテナも、双方とも、ある程度の大きさ(受送信面の面積)を有するため、双方のアンテナの位置は、厳密に固定されている必要はない。すなわち、非接触型ICカードによる通信の場合、リーダライタのアンテナに対して、非接触型ICカードを停止させることなく、通信を行うことが可能である。
【0066】
本発明に用いられる複合ICカード91は、非接触型ICカードの機能を有するものである。すなわち、第1の実施の形態および第2の実施の形態とも、複合ICカード91を停止させることなくデータ読み取り処理を行うことが可能であり、更に、ICデータ、磁気データ、およびエンボスデータをそれぞれ独立して処理するようになされているため、高速な処理が可能である。
【0067】
しかしながら、磁気データ、およびエンボスデータとは異なり、ICデータを処理するリーダ/ライタ2は、複合ICカード91内のIC104からデータを受信するのみならず、必要なデータをIC104に送信して記憶させる場合もあり、その処理内容によっては、IC104とリーダ/ライタ2の間で、複数回のデータの送受信が行われる場合も考えられる。ICデータの授受に要する時間が長くなる場合、カードローダ内の複合ICカード91の搬送速度を低下させる必要が生じてしまう。
【0068】
図16は、本発明を適応した複合ICカード処理用のカードローダの、第3の実施の形態について説明するための、カードローダの内部を示す概略図である。第3の実施の形態においては、ICデータの授受に要する時間が長い場合においても、カードローダ内の複合ICカード91内の搬送速度を低下させずに、安定した通信を行うことができるような構成、換言すれば、ICデータの授受に必要な時間が同一である場合は、安定した通信を行いつつ、複合ICカード91の搬送速度を早くすることができるような構成を有している。
【0069】
図16のカードローダにおいても、その全体が、筐体35で覆われ、カード位置決め板52と筐体35の上面との間、および、アンテナ131と筐体35の下面との間に、磁性体板94−1および94−2が備えられている。また、カード処理装置としての電気的構成は、アンテナ12に代わって、アンテナ131が備えられている以外は、基本的に、図9を用いて説明した場合と同一である。
【0070】
図16のカードローダにおいては、複合ICカード91の搬送経路に沿ってアンテナ131が長く形成されて、カード位置決め板52の下部に備えられている。アンテナ131は、複合ICカード91の搬送位置に対して上部に備えられても良いが、図16においては、磁気ヘッド38および光センサ39を備える必要があるため、それらとの位置関係により、アンテナ131の設置位置を、カード位置決め板52の下部としている。
【0071】
複合ICカード91との通信に必要な時間をTとし、図17に示されるように、例えば、第1の実施の形態で用いられたアンテナ12で複合ICカード91との通信を実行した場合、その搬送速度Vの上限(通信時間Tを確保することのできる搬送速度)は、アンテナ12の搬送方向に対する長さによって制限される。すなわち、アンテナ12の搬送方向に対する長さをLとすると、搬送速度Vの上限は、L/Tとなる。
【0072】
それに対して、アンテナ131は、図18に示されるように、複合ICカード91の搬送方向に対して長く形成されているので、アンテナ131の長さをL'とすると、複合ICカード91の搬送速度V'の上限は、L'/Tとなり、L'が長くなれば長くなるほど、搬送速度V'を速く設定することが可能となり、磁気ヘッド38および光センサ39による磁気データおよびエンボスデータの読み込みと並行して、IC104とのデータの授受を行うことができるため、複合ICカード91の総処理時間を短縮することができる。
【0073】
また、図16を用いて説明したカードローダにおいても、図7を用いて説明したカードローダと同様に、カード位置決め板52と筐体35の上面との間、および、アンテナ131と筐体35の下面との間に、フェライト製の磁性体板94−1および94−2を備えることにより、磁力線が筐体35に入射する前に、その進行方向を偏向させるようにして、エネルギーの損失を防ぎ、アンテナ131と複合ICカード91との通信が、更に安定したものとなるようになされている。
【0074】
また、図11を用いて説明したカードローダにおいても、アンテナ121−1およびアンテナ121−2を、アンテナ131のように、複合ICカード91の搬送経路に沿って、細長い形状にすることにより、更に安定した通信を行うことができるのはもちろんである。
【0075】
なお、以上説明した第1の実施の形態乃至第3の実施の形態においては、非接触型ICカードの機能と、磁気ストライプによる磁気データ、および、エンボス文字によるエンボスデータを1枚のカードとして有する、複合ICカード91のデータを読み取って処理することが可能なカード処理装置について説明したが、複合ICカード91に、磁気データおよびエンボスデータ以外のデータ(例えば、接触型通信により授受されるICデータや、バーコードを印刷することにより記録されるバーコードデータなど)が記録されている場合においても、本発明を適応することができる。
【0076】
なお、本実施の形態においては、本発明を適応したカードローダを、ATM61のカード処理装置77に実装するものとして説明したが、本発明は、例えば、MMK(Multi Media KIOSK)、CD(Cash Dispenser)もしくは、AD(Automatic Depository)といった、様々なカード取引端末装置に適応することができる。
【0077】
【発明の効果】
本発明のカード処理装置によればICカードもしくはICカードとしての機能を含むカードとの情報の授受に用いられる電磁波の出力を大きくすることなく、高速で、安定した通信を可能にすることができる。
【0078】
本発明のカード取引端末装置によればICカードもしくはICカードとしての機能を含むカードとの情報の授受に用いられる電磁波の出力を大きくすることなく、高速で、安定した通信を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の非接触型ICカード読み取りシステムについて説明するための図である。
【図2】非接触型ICカードとリーダ/ライタとの通信方法について説明するための図である。
【図3】従来のカードローダの構成について説明するための図である。
【図4】図3のカードローダの構成で非接触型ICカードからデータを読み取る場合について説明するための図である。
【図5】図3のアンテナ付近の金属体によって発生する渦電流について説明するための図である。
【図6】本発明を適応したATMの外観斜視図である。
【図7】本発明を適応したカードローダの第1の実施の形態について説明するための図である。
【図8】複合ICカードについて説明するための図である。
【図9】図7のカードローダを有するカード処理装置の電気的構成について説明するための図である。
【図10】図7の磁性体板について説明するための図である。
【図11】本発明を適応したカードローダの第2の実施の形態について説明するための図である。
【図12】複合ICカードのアンテナに対する磁界ベクトルの向きと通信効率について説明するための図である。
【図13】アンテナが1つの場合における複合ICカードに対する磁界ベクトルの入射角について説明するための図である。
【図14】アンテナが2つの場合における磁界ベクトルについて説明するための図である。
【図15】アンテナが2つの場合における磁界ベクトルについて説明するための図である。
【図16】本発明を適応したカードローダの第3の実施の形態について説明するための図である。
【図17】複合ICカードの処理時間および搬送速度と、アンテナの搬送方向に対する長さとの関係を説明するための図である。
【図18】複合ICカードの処理時間および搬送速度と、アンテナの搬送方向に対する長さとの関係を説明するための図である。
【符号の説明】
12 アンテナ, 38 磁気ヘッド, 39 光センサ,61 ATM, 77 カード処理装置, 91 複合ICカード, 94 磁性体板, 101磁気ストライプ, 102 エンボス文字, 104 IC, 105 アンテナ, 111 メインコントローラ, 112 リーダ/ライタコントローラ, 113 ICデータ用メモリ, 114 磁気データ読み取り部, 115磁気データ読み取りコントローラ, 116 磁気データ用メモリ, 117エンボスデータ読み取り部, 118 エンボスデータ読み取りコントローラ, 119 エンボスデータ用メモリ, 121,131 アンテナ

Claims (9)

  1. 金属部材を有する筐体で覆われ、
    電磁波を用いた非接触通信により第1のデータの授受を行うカードを前記筐体に受け入れ、かつ、前記カードを前記筐体から排出するカード入出手段と、
    前記カードを搬送する搬送手段と、
    前記搬送手段により搬送される前記カードに対してほぼ平行に設けられ、前記カードとの前記非接触通信に用いられる第1のアンテナと、
    前記筐体と前記第1のアンテナとの間に設けられ、前記第1のアンテナからの磁界を前記金属部材に入射する前に偏向する第1の偏向手段と、
    前記搬送手段と前記筐体との間に設けられ、前記第1のアンテナからの磁界を前記金属部材に入射する前に偏向する第2の偏向手段と
    を備えるカード処理装置。
  2. 前記偏向手段は、磁性体により構成されている
    請求項1に記載のカード処理装置。
  3. 前記搬送手段と前記第2の偏向手段との間に、前記第1のアンテナに対してほぼ平行で、かつ、前記搬送手段により搬送される前記カードとの距離が、前記カードと前記第1のアンテナとの距離とほぼ同じになるように設けられた第2のアンテナを
    更に備え、
    前記第1の偏向手段および前記第2の偏向手段は、前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナからの磁界を前記金属部材に入射する前に偏向する
    請求項1に記載のカード処理装置。
  4. 前記第1のアンテナは、前記搬送手段により搬送される前記カードの所定の搬送速度において、前記第1のデータを充分授受することができるデータ授受時間を確保することができるだけの、前記カードの搬送方向の長さを有する
    請求項1に記載のカード処理装置。
  5. 前記第1のデータと異なる第2のデータを前記カードと授受するデータ授受手段を更に備える
    請求項1に記載のカード処理装置。
  6. 前記データ授受手段は、前記カードが有する第1の金属端子と接触して接触型ICデータを授受する第2の金属端子、磁気データを読み取る磁気センサ、エンボスデータを読み取る第1の光センサ、バーコードデータを読み取る第2の光センサのうちの少なくともひとつである
    請求項5に記載のカード処理装置。
  7. 金属部材を有する筐体で覆われ、
    電磁波を用いた非接触通信により第1のデータの授受を行うカードを前記筐体に受け入れ、かつ、前記カードを前記筐体から排出するカード入出手段と、
    前記カードを搬送する搬送手段と、
    前記搬送手段により搬送される前記カードに対してほぼ平行に設けられ、前記カードとの前記非接触通信に用いられるアンテナと、
    前記筐体と前記アンテナとの間に設けられ、前記アンテナからの磁界を前記金属部材に入射する前に偏向する第1の偏向手段と、
    前記搬送手段と前記筐体との間に設けられ、前記アンテナからの磁界を前記金属部材に入射する前に偏向する第2の偏向手段と
    を備えるカード処理装置と、
    前記カード処理装置により読み取られた前記第1のデータを処理する第1の処理手段と
    を備えるカード取引端末装置。
  8. 前記第1のデータと異なる第2のデータを処理する第2の処理手段を更に備え、
    前記カード処理装置は、
    前記カードと前記第2のデータを授受するデータ授受手段を
    更に備える
    請求項7に記載のカード取引端末装置。
  9. 前記第1の処理手段および前記第2の処理手段はそれぞれ独立して前記第1のデータおよび前記第2のデータを処理する
    請求項8に記載のカード取引端末装置。
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