JP4555823B2 - 架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン抗生物質 - Google Patents

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Description

(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、抗生物質として有用な新規の架橋されたバンコマイシン−セファロスポリン化合物を目的とする。また、本発明は、該化合物を含む薬学的組成物、該組成物を含む薬学的組成物を用いる方法、および該化合物を調製するための方法および中間生成物も目的とする。
(当該分野の状況)
さまざまな種類の抗生作用化合物、例えばセファロスポリンなどのβラクタム系抗生物質、およびバンコマイシンなどのグリコペプチド系抗生物質などが、当技術分野において知られている。架橋された抗生作用化合物も当技術分野において知られている。例えば、W.L.Truettに対して発行された「Antibiotics and Process for Preparation」という名称の米国特許第5,693,791号、および1999年12月16日に公開された「Novel Antibacterial Agent」という名称の国際公開公報第99/64049A1号を参照のこと。さらに、2003年4月17日に公開された「Cross−Linked Glycopeptide−Cephalosporin Antibiotics」という名称の国際公開公報第03/031449A2号は、セファロスポリンのオキシム部分に共有結合したグリコペプチドを有する化合物を開示している。
しかし、細菌には抗生物質に対する耐性を発達させる能力があるため、ユニークな化学構造を有する新しい抗生物質に対する必要性が存在する。さらに、例えとして、グラム陽性細菌に対する高効能など、改良された抗菌特性を有する新規の抗生物質に対する必要性が存在する。特に、メチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(Staphylococci aureus:MRSA)のような抗生物質耐性菌株に対して高度に有効な新規の抗生物質に対する必要性が存在する。
(発明の要旨)
本発明は、抗生物質として有用な架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン化合物を提供する。本発明に係る化合物は、グリコペプチドがセファロスポリンのピリジニウム部分に共有結合しているというユニークな化学構造を有する。その他の特性のうち、本発明に係る化合物は、メチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(Staphylococci aureus:MRSA)などのグラム陽性細菌に対して意外で予想できない効能を有することが分かっている。
したがって、一つの態様において、本発明は、式Iの化合物:
またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、
式中、XおよびXの各々は独立して水素またはクロロであり、
WはNまたはCClであり、
およびRは独立して選択された水素およびC1−6アルキルであり、
各Rは独立して、C1−6アルキル、OR、ハロ、−SR、−S(O)R、−S(O)Rおよび−S(O)ORであって、ここで、各Rは、独立して、COOHまたは1〜3個のフルオロ置換基で必要に応じて置換されたC1−6アルキルであり、
およびRの一方が水酸基であって、他方が水素であり、
およびRは独立して水素またはメチルであり、
は水素または以下の式:
の基であり、
は水素、C1−6アルキルおよびC3−6シクロアルキルであって、アルキルおよびシクロアルキルは、COOHまたは1〜3個のフルオロ置換基であり、
は−Y−R”であって、R”はC1−12アルキレン、C2−12アルケニレン、C2−12アルキニレン、C3−6シクロアルキレン、C6−10アリーレン、C2−9ヘテロアリーレン、C3−6複素環、およびそれらの組み合わせであり、必要に応じて、Zから選択される1個または2個の基で置換されており、ここで各Zは、各Zが−OR’、−SR’、−F、−Cl、−N(R’)、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−NHC(O)R’、−C(O)N(R’)、−CF、−OCF、および天然に存在するアミノ酸の側鎖から独立して選択される1個または2個の基で置換されており、ここで、各R’は独立して水素またはC1−4アルキルであり、また、R”は最大20個の非水素原子を含んでおり、また、Yは、R”にメタ位またはパラ位でピリジニウム環に結合しているが、YおよびR”におけるヘテロ原子間の直接結合以外の直接結合、NR’、O(エーテル)、S(スルフィド)、C(O)(カルボニル)、NR’C(O)、およびC(O)NR’からなる群より選択され、
各RおよびRは、独立して、C1−16アルキル、C2−6アルケニルおよびC2−6アルキニルから選択され、
各Rは、独立して直接結合または−Y’−R”−Y’であって、各Y’は、独立して、Y’およびR”におけるヘテロ原子間の直接結合以外の直接結合、O(エーテル)およびNR’からなる群より選択され、
各Rは、上記でR”として定義されている群から独立して選択され、
nは0〜3の整数であり、
xは0〜2の整数であり、
yは0〜2の整数である。
その組成物の態様のもう一つにおいて、本発明は、式IIの化合物:
またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、
式中、WはNまたはCClであり、
は水素、C1−6アルキルおよびC3−6シクロアルキルであって、ここで、アルキルおよびシクロアルキルは、COOHまたは1〜3個のフルオロ置換基で必要に応じて置換されており、
ピリジニウム環はメタ位またはパラ位の置換を有し、
10は水素、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニルであり、
11はC1−12アルキレンまたはC2−12アルケニレンであり、また、
12は水素、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニルである。
その組成物の態様のもう一つにおいて、本発明は、本明細書において検討されている具体的実施態様のいずれかを含む、薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を提供する。
本発明に係る化合物は抗細菌剤として有用である。したがって、その方法の態様の一つにおいて、本発明は、哺乳動物の細菌感染症を治療する方法であって、本明細書において検討されている具体的実施態様のいずれかを含む、薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
理論によって制約を受けようとするものではないが、本発明に係る化合物は、細菌の細胞壁の生合成を阻害して、細菌の増殖を阻害するか、細菌の溶解をもたらすと考えられている。したがって、その方法の態様のもう一つにおいて、本発明は、細菌の増殖を阻害する方法であって、細菌に、本明細書において検討されている具体的実施態様のいずれかを含む、増殖阻害量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を接触させることを含む方法を提供する。
さらに、その方法の態様のさらにもう一つにおいて、本発明は、細菌の細胞壁の生合成を阻害する方法であって、細菌に、本明細書において検討されている具体的実施態様のいずれかを含む、細胞壁の生合成を阻害できる量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を接触させることを含む方法を提供する。
また、本発明は、式Iの化合物またはその塩を調製する方法も目的としている。したがって、本発明は、その方法の態様のもう一つにおいて、式Iの化合物またはその塩を調製する方法であって、式1の化合物またはその塩または保護誘導体を、式2の化合物またはその塩、活性化誘導体、または保護誘導体、および式3の化合物またはその塩、活性化誘導体、または保護誘導体と反応させて、式Iの化合物を生成させる方法を提供するが、ここで、式1、2および3の化合物は本明細書で定義されているとおりである。
一つの実施態様において、上記方法は、式Iの化合物の医薬として許容できる塩を生成させる工程をさらに含む。また、本発明は、本明細書に記載されているこれらの方法のいずれかによって調製される生成物も目的とする。
また、本発明は、治療に使用するための式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩も目的とする。さらに、本発明は、哺乳動物における細菌感染症を治療するための医薬など、医薬を製造するために式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を使用することを目的とする。
(発明の詳細な説明)
本発明は、式Iの新規のグリコペプチド−セファロスポリン化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。これらの化合物は、複数のキラル中心をもち、これに関して、該化合物は示された立体化学をもつよう意図されている。特に、該化合物のグリコペプチド部位は、対応する天然に存在するグリコペプチド(すなわちバンコマイシンやクロロオリエンチシンA(chloroorienticin A)など)の立体化学を有するよう意図されている。この分子のセファロスポリンは、既知のセファロスポリン化合物の立体化学を有するよう意図されている。しかしながら、示されている立体化学とは異なる立体化学を有する少量の異性体が本発明に係る組成物中に存在しうることは、組成物の有用性が全体として、そのような異性体が存在することによって排除されない場合には、当業者によって理解できるところである。
さらに、本発明に係る化合物の結合部位は、1個以上のキラル中心を含むことができる。典型的には、分子のこの部位は、ラセミ混合物として調製される。しかしながら、所望であれば、純粋の立体異性体(すなわち、各エナンチオマーまたはジアステロマー)を使用するか、立体異性体が増幅された混合物を用いることができる。このような立体異性体のすべておよび増幅された混合物が、本発明の範囲に含まれる。
また、本発明に係る化合物は、いくつかの酸性基(すなわち、カルボン酸)といくつかの塩基性基(すなわち、第一級および第二級のアミン)を含むため、式Iの化合物は、さまざまな塩の形態で存在することができる。そのような塩の形態はすべて、本発明の範囲に含まれる。また、式Iの化合物はピリジニウム環を含むため、該ピリジニウム環のためのアニオン性対イオンは、必要に応じて、塩化物イオンなどのハロゲン化物や酢酸などのカルボン酸などを含んで存在する。
(定義)
以下の用語は、本明細書において使用する場合、別段の記載がない限り以下の意味を有する。
「アルキル」という用語は、直鎖状または分枝状の1価で飽和状態の炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなアルキルは、一般的に1〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキルには、例を挙げれば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどがある。
「アルキレン」という用語は、直鎖状または分枝状の2価で飽和状態の炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなアルキレンは、一般的に1〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキレンには、例を挙げれば、メチレン、エタン−1,2−ジイル(エチレン)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどがある。
「アルケニル」という用語は、直鎖状または分枝状であって、少なくとも1個、および一般的には1,2または3個の炭素−炭素二重結合を有する1価で非飽和状態の炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなアルケニルは、一般的に2〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルケニルには、例を挙げれば、エチニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−but−2−エニル、n−ヘキシ−3−エニルなどがある。
「アルキニル」という用語は、直鎖状または分枝状であって、少なくとも1個、および一般的には1個,2個または3個の炭素−炭素三重結合を有する1価で非飽和状態の炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなアルケニルは、一般的に2〜10個の炭素原子を含む。代表的なアルキニルには、例を挙げれば、エチニル、n−プロピニル、n−but−2−イニル、n−ヘキシ−3−イニルなどがある。
「アリール」という用語は、単環(すなわちフェニル環)または縮合環(すなわちナフタレン環)を有する1価の芳香族炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなアリールは、一般的に6〜10個の炭素環原子を含む。代表的なアリールの例を挙げれば、フェニル、およびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどがある。
「アリーレン」という用語は、単環(すなわちフェニレン環)または縮合環(すなわちナフタレンジイル環)を有するニ価の芳香族炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなアリールは、一般的に6〜10個の炭素環原子を含む。代表的なアリーレンには、例を挙げれば、1,2−フェレン、1,3−フェレン、1,4−フェレン、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルなどがある。
「シクロアルキル」という用語は、2価で飽和状態の炭素環状炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなシクロアルキルは、一般的に3〜10個の炭素原子を含む。代表的なシクロアルキルには、例を挙げれば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどがある。
「シクロアルキリン」という用語は、2価で飽和状態の炭素環状炭化水素を意味する。別途定義されない限り、このようなシクロアルキリンは、一般的に3〜10個の炭素原子を含む。代表的なシクロアルキリンには、例を挙げれば、シクロプロパン−1,2−ジイル、シクロブチル−1,2−ジイル、シクロブチル−1,3−ジイル、シクロペンチル−1,2−ジイル、シクロペンチル−1,3−ジイル、シクロヘキシル−1,2−ジイル、シクロヘキシル−1,3−ジイル、シクロヘキシル−1,4−ジイルなどがある。
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
「ヘテロアリール」という用語は、単環または2個の縮合環を有し、その環中に、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(一般的には1〜3個のヘテロ原子)を有する1価の芳香族を意味する。別途定義されない限り、このようなヘテロアリールは、一般的に5〜10個の全環原子を含む。代表的なヘテロアリールには、例を挙げれば、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの1価種などであり、その場合、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素の環原子である。
「ヘテロアリーレン」という用語は、単環または2個の縮合環を有し、その環中に、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(一般的には1〜3個のヘテロ原子)を有する2価の芳香族を意味する。別途定義されない限り、このようなヘテロアリールは、一般的に5〜10個の全環原子を含む。代表的なヘテロアリールには、例を挙げれば、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの1価種などであり、その場合、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素の環原子である。
「ヘテロシクリル」または「複素環」という用語は、単環または複数の縮合環を有し、その環中に、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(一般的には1〜3個のヘテロ原子)を有する1価または2価の飽和型または不飽和型の(非芳香族)を意味する。別途定義されない限り、このような複素環は、一般的に2〜9個の全環原子を含む。代表的な複素環には、例を挙げれば、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、3−ピロリンなどの1価種などであり、その場合、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素の環原子である。
本明細書において、「セファロスポリン」という用語は、当該技術分野において認められた状態では、以下の一般式および番号付け方式を有するβ−ラクタム環系を意味する:
式中、RおよびRは、セファロスポリンの残りの部分を表す。
本明細書において「グリコペプチド系抗生物質」または「グリコペプチド」という用語は、当該技術分野において認められた状態では、グリコペプチド類またはダルバーペプチド類(dalbahpeptides)として知られている抗生物質の種類を意味する。例えば、R.Nagarajan,”Glycopeptide Antibiotics”,Marcel Dekker,Inc.(1994)および該文献における引用文献を参照されたい。代表的なグリコペプチドには、バンコマイシン、A82846A(エレモモイシン(eremomycin))、A82846B(クロロオリエンチシンA)、A82846C、PA−42867−A(オリエンチシンA)、PA−42867−C、PA−42867−Dなどが含まれる。
本明細書において「バンコマイシン」という用語は、当該技術分野において認められた状態では、バンコマイシンとして知られているグリコペプチド系抗生物質を意味する。本発明に係る化合物にバンコマイシンを用いた場合、架橋部分の結合点は7位アミノ酸(AA−&)のC−29位である。この位置は、バンコマイシンの「7d」または「レゾルシノール」とも呼ばれることもある。
「架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン化合物」という用語は、グリコペプチド成分のセファロスポリン成分への共有結合を意味する。
「薬学的に受容可能な塩」という用語は、哺乳動物などの患者に投与することが認められる塩(例えば、所与の投薬用量について哺乳動物に対して安全と認められる塩類)を意味する。このような塩類は、薬学的に受容可能な無機性または有機性の塩基、および薬学的に受容可能な無機性または有機性の酸にから得ることができる。薬学的に受容可能な無機性塩基由来の塩類には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に好適なのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムの塩類である。薬学的に受容可能な有機性塩基由来の塩類には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチレンアミン、2−ジエチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン、レジン、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなどを含む第一級、第二級および第三級のアミン類が含まれる。薬学的に受容可能な無機性の酸に由来する塩類には、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルフィン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが含まれる。特に好適なものは、クエン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、および酒石酸である。
「その塩」という用語は、金属カチオンまたは有機陽イオンなど(例えば、NH カチオンなど)、ある酸の水素が陽イオンで置換されるときに形成される化合物を意味する。好適には、この塩は薬学的に受容可能な塩であるが、ただし、このことは、患者に投与するつもりのない中間化合物の塩にとっては必要ではない。
「治療有効量」という用語は、治療を必要としている患者に投与した場合に、治療効果を生じさせるのに十分な量を意味する。
本明細書において、「治療すること」または「治療」という用語は、哺乳動物(特にヒトまたはコンパニオン・アニマルなど、患者の病気または病状(細菌感染症など)を治療することまたは治療法であって以下を含む。
(a)該病気または症状が発生するのを防止すること、すなわち患者の予防的治療;
(b)該病気または症状を改善すること、すなわち、患者の病気または症状を消失させるか、退縮をもたらすこと;
(c)該病気または症状を抑制すること、すなわち、患者において該病気または症状が発症するのを遅らせるか停止させること;または、
(d)該病気または症状の患者における病状を緩和すること。
「増殖阻害量」という用語は、微生物の増殖または生殖を阻害するのに十分であるか、または、グラム陽性菌などの微生物の死または溶菌をもたらすのに十分な量を意味する。
「細胞壁生合成を阻害する量」という用語は、グラム陽性菌などの微生物における細胞壁の生合成を阻害するのに十分な量を意味する。
「脱離基」という用語は、求核置換反応などの置換反応において、別の官能基または原子と置換することができる官能基または原子を意味する。例を挙げると、代表的な離脱機には、クロロ、ブロモ、およびヨード;メシル、トシル、ブロシル、ノシルなどのスルホン酸エステル;7−アザベンゾトリアゾール−1−オキシなどの活性化エステル;アセトキシ、トリフルオロアセトキシなどのアシルオキシが含まれる。
「その保護誘導体」という用語は、一つ以上の官能基が、保護基または封鎖基によって望ましくない反応から保護されている特定の化合物の誘導体を意味する。保護されうる官能基には、例を挙げれば、カルボン酸、アミノ、ヒドロキシル、チオール、カルボニルなどが含まれる。代表的な保護基は、カルボン酸に対しては。エステル(p−メトキシベンジルエステルなど)、アミド、ヒドラジド;アミノに対しては、カルバミン酸(tert−ブトキシカルボニルなど)およびアミド;ヒドロキシに対しては、エーテルおよびエステル;チオールに対しては、チオエーテルおよびチオエステル;カルボニルに対しては、アセタールおよびケタール;などが含まれる。このような保護基は、当業者に周知されており、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley,New York,1999、および該文献で引用されている文献に記載されている。
「アミノ保護基」という用語は、アミノ基における望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基は、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)を含むが、これらに限定されるものではない。
「カルボキシ−保護基」という用語は、カルボキシル(すなわち−COOH)における望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味する。代表的なカルボキシ保護基には、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などのエステル基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
カルボン酸またはその保護誘導体について、「活性化誘導体」またはそのような酸または誘導体で「活性化型」のものは、カルボン酸または誘導体を、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT)、またはその他本明細書に記載されているもの、またはその他当技術分野において知られているものなどの活性化剤と反応させて得られる産物であって、一般的には、反応性エステルを意味する。
「天然に存在するアミノ酸側鎖」は、式HOOC−CHR−NHにおけるRを意味するが、この式は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択される群など、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンから選択されるアミノ酸を表す。
(代表的な実施態様)
以下の置換基および数値は、本発明の多様な側面の代表的実施例および実施態様を提供するためのものである。これらの代表的数値は、そのような側面および実施態様をさらに定義するためのものであって、他の実施態様を排除したり、本発明の範囲を制限したりするためのものではない。これに関して、特定の数値または置換基が好ましいとの表現は、特段に記載がない限り、如何なる意味においても、本発明から他の数値や置換基を排除するものではない。
式Iの化合物において、各ヘテロアリールまたは複素環は、R”に存在する場合、好適には5個また6個の全環原子を有し、また、各アリールは、それが存在する場合には、好適には6個の全環原子を有する。R”は、好適にはC1−12アルキレンであり、好適には直鎖状である。
具体的な実施態様において、Rは水素、またはメチルまたはエチルなどのC1−4アルキルである。別の実施態様において、Rは水素である。
別の具体的な実施態様において、Rは水素、またはメチルまたはエチルなどのC1−4アルキルである。別の実施態様において、Rは水素である。
が存在する場合には、各Rは、好適には、独立して、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、フルオロ、およびクロロから選択される。一つの実施態様において、nが1または2、各Rが、独立して、メチル、メトキシ、フルオロ、およびクロロから選択される。別の実施態様において、nは0であり、それによって、Rは存在しない。
式Iのピリジニウム環は、一般的には、メタ位またはパラ位が置換されており、より一般的には、パラ位が置換されている。
一つの実施態様において、Rは水素である。別の実施態様において、Rは以下の式:
の基である。
具体的な実施態様において、Rは水素、C1−4アルキルおよびC3−5シクロアルキルであって、該アルキルは、必要に応じてCOOHまたは1〜3個のフルオロ置換基であって、水素、メチル、エチル、2−フルオロエチル、2−カルボキシプロプ−2−イルおよびシクロペンチルなどである。
一つの実施態様において、WはCClである。別の実施態様において、WはNである。
式Iのその他の変数の具体的な実施態様には、独立して、XおよびXはどちらクロロであり、RおよびRは、それぞれOHおよび水素であり、RおよびRは、それぞれ水素およびメチルである。
一つの実施態様において、Rは−Y−R”−であって、ここで、R”はC1−6アルキレン、C2−6アルケニレンまたはC2−6アルキニレンであり、Yは、直接結合、NR’、エーテル、スルフィド、カルボニル、NR’C(O)、およびC(O)NR’から選択され、R’は、水素またはメチルである。具体的な実施態様において、Rにおいて、Yは直接結合であり、R”は、例えばメチレンなど、C1−4アルキレンを含むC1−6アルキルである。
具体的な実施態様において、xおよびyは独立して0および1から選択される。したがって、具体的な実施態様には、x+y=0である化合物、x+y=1である(すなわち、xが1でyが0、またはxが0でyが1の)化合物、およびx+y=2である化合物が含まれる。さらに、具体的な実施態様には、式I中、−R−[NR−C(O)−R−[C(O)−NR−R−NRで表される「リンカー」構造は、約40原子長以下であり、好適には、約30原子長以下である(リンカー中で連続した原子のもっとも少ない数を用いて測定する)。
選択された実施態様において、xは0ではなく、好適には1であり、Rは水素、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニルである。
一つの実施態様において、Rは−Y’−R”−Y’−であって、ここで、Y’は、独立して、直接結合、O(エーテル)、およびNR’から選択され、R’は、水素またはメチルであり、R”は、C1−12アルキレン、C2−12アルケニレンまたはC2−12アルキニレンからなる群より選択される。好適には、Rにおいて、Y’は直接結合であり、R”はC1−12アルキレンである。より好適には、Rにおいて、R”はC2−6アルキレンである。
別の選択された実施態様において、yは0でなく、好適には1であり、変数Rは水素、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニルであって、好適には水素またはメチルであり、より好適には水素である。
一つの実施態様において、RおよびRは、独立して、水素またはメチルである。
一つの実施態様において、Rは、C1−12アルキレン、C2−12アルケニレンおよびC2−12アルキニレンから選択され、好適には、C1−6アルキレン、C2−6アルケニレンおよびC2−6アルキニレンから選択され、より好適には、C1−4アルキレンから選択される。
式Iの化合物の例示的な仲間は、式中、xが0または1であり、yが0または1であり、Rがメチレンであり、(xが1のとき)Rが水素、メチレン、またはエチルであり、(xが1のとき)Rは、例えば、n−ブチレン(−(CH−)またはn−デシレン(−(CH10−)などのC2−12アルキレンであって、−COOHで置換されていてもよく、(yが1のとき)Rは水素であり、(yが1のとき)Rはエチレン(−CHCH−)である。
一つの実施態様において、本発明に係る化合物は、式IIの化合物である。式IIにおいて、Wに関する具体的実施態様はCClである。
の具体的な実施態様は、水素、C1−4アルキルおよびC3−5シクロアルキルであって、アルキルは、水素、メチル、エチル、2−フルオロエチル、2−カルボキシプロプ−2−イルおよびシクロペンチルなど、必要に応じて−COOHまたは1〜3個のフルオロ置換基で置換されている。
10の具体的な実施態様は、水素またはメチルである。
11の具体的な実施態様は、水素、−CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、および−(CHなど、C1−6アルキレンを含む、C1−10アルキレンである。
12の具体的な実施態様は、水素、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニルであって、水素またはメチルなどである。
式IIの化合物の具体的な実施態様は、WがCClであり、Rがメチルであり、R10が水素であり、R11が−(CH−であり、R12が水素であり、また、ピリジニウム環がパラ位で置換されている。
上記式Iについて、式IIのピリジニウム環は、一般的に、メタ位またはパラ位で置換されており、より一般的には、パラ位で置換されている。
本発明に係る化合物の具体的な実施態様には、式IIの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であって、その置換基は表Iに規定されている。
理論によって制約されるものではないが、式Iの化合物は、細菌の細胞壁の生合成を阻害して、細菌の増殖を阻害するか、細菌の溶解をもたらす。したがって、式Iの化合物は、抗生物質として有用である。
他にも特性はあるが、本明細書で下記にさらに詳しく説明されているように、本発明に係る化合物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などのグラム陽性細菌に対して驚くような予想外の効能を有することが発見されている。
(一般的合成手順)
本発明に係る架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン化合物は、本明細書に記載されている中間化合物1〜3のように、簡単に利用することができる出発物質から調製することができる。典型的なまたは好適な処理条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合には、別段の記載がない限り、当業者の決定にしたがって、他の処理条件を用いることも可能であると理解されよう。最適な反応条件は、用いる具体的な反応物質または溶媒によって多様でありうるが、そのような条件は、当業者によって、通常の最適化処理によって容易に決定することができる。
さらに、当業者に明らかなように、伝統的な保護基は、ある官能基を望ましくない反応を行うことを防止するために必要または望ましい。具体的な官能基に対する適当な保護基は、そのような官能基の保護および脱保護に適当な条件同様、当技術分野においてよく知られている。本明細書に記載された手順において例示されている保護基以外の保護基を用いることも、それが望ましければ可能である。例えば、数多くの保護基、およびそれを導入および消去する方法が、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999、およびそこで引用されている文献に記載されている。
合成法の一つにおいて、式Iの化合物は、式Iの化合物、またはその塩もしくは保護誘導体を生成させるために、下記の式1の化合物、またはその塩、もしくはその活性化および/または保護誘導体を、下記の式3の化合物、またはその塩、またはその活性化および/または保護誘導体存在下で下記の式2の化合物、またはその塩もしくはそのカルボキシを保護誘導体と反応させることによって調製される:
式中、R−R、R、RおよびXは、本明細書において定義されているとおりである:
式中、W、R、R、Ra−eおよびnは、本明細書において定義されているとおりである:
式中、Rは、本明細書において定義されているとおりである。1、2および3における変数の好適な実施態様は、本明細書に記載されているとおりである。
式IIの化合物を調製する際に、構造式1、2および3における変数は以下のとおり定義される。nは0、RはCH、Rは水素、C1−4アルキルまたはC2−4アルケニル(上記R10について定義されているとおり)、RはC1−12アルキレンまたはC2−12アルキレン(R11について定義されているとおり)、R、RおよびRは水素、RおよびRはCH、RはOH、およびXおよびXはクロロである。
一般的に、x=y=1である式Iの化合物を調製するためには、図示されているような第一級または第二級のアミノ基(−R−NHR)を有するラクタム系中間体2を、活性化型にした過剰量の二官能性連結試薬3と反応させる(図3参照)。過剰な3を用いる(一般的には、3倍〜10倍のモル濃度過剰、例えば、実施例3で示されるように5倍のモル濃度過剰)と、2の分子を2個有する二価の付加化合物3ではなく、一価の付加化合物2および3の形成に好適である。好適には、3は、ビス−HOAT誘導体など、活性化型誘導体として提供される、その反応は、2,4,6−コリジンなどのアミンによって触媒される。そして、付加物を、当初のラクタム3に対して約0.5当量〜約2.5当量の、好適には約1.5当量のグリコペプチド1またはその塩と、2,4,6−コリジンなどの触媒を含む、DMFなどの不活性溶媒中で反応させる。カップリング反応は、通常、約−20℃〜約25℃の温度範囲、好適には氷浴(約0〜4℃)中で約15分〜3時間、または該反応が完了するまで行われる。
次に、式1の中間体は、実施例2に記載されるように、所望のジアミン(HRN−R−NHR)、アルデヒド(RCHO、好適には、式中R=H)、および塩基を用いて、バンコマイシン型グリコペプチド上のフェノールA−環のマンニッヒ反応(アミノアルキル化)によって調製することができる。式1の中間体を調製するためのグリコペプチドは、市販されているものであるか、または、適当なグリコペプチド産生生物を発酵させた後、得られた発酵液から、当技術分野において認められた手順および装置を用いて単離することによって調製することもできる。
セファロスポリン中間体2は、市販の出発物質および試薬から常法によって簡単に調製できる。一例を挙げると、式2の中間体は、図2に示され、実施例1に記載されるとおりに調製することができる。端的には、図2の6に示される2−アミノ−5−クロロ−α−メトキシイミノ−4−チアゾール酢酸を、EDACで触媒させてアミノセファロスポリンエステル7と反応させて、アミド結合を形成する。この生成物(8)を、アセトン中でヨウ化ナトリウムと反応させ、その後、一級ヨウ化物を保護されたアミノアルキルピリジン誘導体によって置換した。このピリジン誘導体は、上記構造式2に示されているように、選択的な置換基Rを含む。図2に示される調製法において、化合物4−(N−tert−BOCアミノ)メチルピリジン(9)が用いられており、その結果、Rがメチレン基であり、Rが水素である。この反応によって、中間体(10)が保護された形で生じ、TFA/アニソールによって脱保護すると、中間体2a(WがCCl、RがMe、nが0、RがCH、Rが水素である中間体2)を生じる。
x=0である式Iの化合物を調製するためには、下記の式4の化合物などの中間体であって:
式中、R、R、R、Wおよびnは本明細書において定義されているとおりの中間体を式1の中間体と縮合させる。中間体4は、アミノアルキル置換されたピリジンの代わりに保護されたカルボキシアルキル基(−RCOOH)で置換されているピリミジン誘導体が使用されている実施例1に記載された処理手順を変えることによって調製することができる。
y=0である式Iの化合物を調製するためには、下記の式5のグリコペプチド誘導体であって:
式中、R−R、R、XおよびXが本明細書において定義されているとおりの誘導体、またはその塩もしくは活性化型および/または保護誘導体(すなわち、(NHR−R−NHRがNHR−R−COOHで置換されている式1)を、式2の中間体と縮合させる。式5の中間体は、ジアミンではなくアミノ酸(カルボキシル基を保護された形のRHN−R−COOH)がマンニッヒ反応で使用されている実施例2に記載された調製法を変えることによって調製することができる(例えば、J.H.Short and C.W.Ours,J.Heterocyc.Chem.12(5):869−76,Oct 1975参照)。
x>1である式Iの化合物を調製するためには、上記したとおりの3および1との反応前に、中間体2の反応性アミン(R−NHR)に式HOOC−R−NHRのアミノ酸を1個以上付加することができる。同様に、y>1である式Iの化合物を調製するためには、上記したとおりの付加物2および3との反応させる前に、中間体1の反応性アミン(NHR)に式HOOC−R−NHRのアミノ酸を1個以上付加することができる。
これらの反応において使用するのに好適なカップリング試薬、または活性化試薬には、ベンゾトリアゾル−1−イル・オキシトリピロリジノホスホニウム・ヘキサフルオロリン酸(PyBOP)を、好適には約0.5〜約1.5当量、好適には約0.9〜約1.1当量で、約0.5〜約1.5当量の、好適には約0.9〜約1.1当量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT)と組み合わせたものなどがある。この他の適当なカップリング試薬には、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸(HATU)、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BOP−Cl)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ジフェニルホスフィン酸クロリド、ジフェニルクロロリン酸(DPCP)およびHOAT、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸(EDAC)、ペンタフルオロフェニル・ジフェニルホスフィン酸などが含まれる。
カップリング反応が終了した後、通常の手順および試薬を用いて、生成物に存在する保護基を除去する。例えば、N−トリチル基、N−BOC(N−tert−ブトキシカルボニル基)および/またはCOO−PMB(パラ−メトキシベンジルエステル基)の脱保護は、ジクロロメタンまたはヘプタンのような不活性希釈液中で、過剰量のトリフルオロ酢酸および過剰量のアニソールもしくはトリエチルシランで、室温で約1時間〜12時間、または反応が完了するまで処理することによってもたらすことができる。脱保護された生成物は、カラムクロマトグラフィー、HPLC、再結晶化など常法を用いて精製することができる。
上記の反応に使用するため、または本明細書に開示されているように、Rおよび/またはRにさまざまな置換をもつ化合物を調製するための多様な置換ピリジンが、市販されているか、常法を用いて、市販されている出発物質および試薬から調製することができる。例えば、Rがメチレンであるアミノメチルピリジン、およびRがエチレンであるアミノエチルピリジンなど、さまざまなアミノアルキル置換ピリジンが市販されており、または、標準的な有機合成法を用いて調製することができる。この反応に使用される代表的な置換ピリジン誘導体には、Rが、メチル、メトキシ、チオメトキシ、カルボキシチオメトキシ、フルオロ、クロロ、フェニル、シクロプロピル、カルボキシル、カルボキシアミド、およびこれらを組み合わせたものなどが含まれる。ピリジニウム環にR”を連結させるYが、NR’、O(エーテル)、S(スルフィド)、カルボニル、NR’C(O)、およびC(O)NR’からなる群より選択される化合物を調製するために、出発ピリジン化合物は市販されており、あるいは、周知された方法によって調製することができる。例えば、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、4−メルカプトピリジン、ニコチン酸およびイソニコチン酸は、Aldrich Chemical Co,Milwaukee,WIから購入することができる。
リンカーRにあるY’が、O(エーテル)およびNR’(直接結合ではなく)から選択される化合物を調製する際に、Rを含む結合部分は、アミド結合よりも、カルバミン酸結合または尿素結合を一つ以上含む。このような結合は、常法によって形成させることができる。例えば、アミン(中間体3における−NHR)は、イソシアン酸またはクロロギ酸と反応して、それぞれ、尿素結合またはカルバミン酸結合を形成させることができる。
本発明に係る代表的な化合物またはそれに対する代表的な中間体を調製するための具体的な反応条件および方法についてのさらなる詳細は下記の実施例に記載される。
(薬学的組成物)
本発明に係る架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン化合物は、一般的には、薬学的組成物の形で患者に投与される。したがって、その組成物としての一側面において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤、および治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を目的とする。
本発明に係る薬学的組成物においては、従来のキャリアまたは賦形剤のいずれを使用することも可能である。特定のキャリアもしくは賦形剤またはキャリアもしくは賦形剤の併用剤の選択は、特定の患者または特定のタイプの細菌感染症を治療するために利用される投与方式に応じて変わる。これに関して、経口、局所、吸入または非経口投与など、特定の投与方式ごとに適当な薬学的組成物を調製することが、薬学技術分野における技術の範囲に十分に含まれる。さらに、そのような組成物のための成分を、例えば、Sigma,P.O.Box14508,St.Louis,MO63178などから購入することができる。さらなる例示として、従来の調剤技術については、Remeington’s Pharmaceitucal Science,Mace Publising Co.,Philadelphia,PA 17thEd.(1985)および「Modern Pharmaceutics」、Marcel Dekker, Inc.3rd Ed.(G.S.Banker&C.T.Rhodes,Eds)に記載されている。
本発明に係る薬学的組成物は、一般的には、治療上有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む。一般的には、該薬学的組成物は、重量で約0.1%〜約90%の有効成分、また、より一般的には、約10%〜約30%の有効成分を含む。
本発明に係る好適な薬学的組成物は、非経口投与、特に静脈内投与に適している。このような薬学的組成物は、一般的には、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む滅菌された生理学的に許容されうる水性溶液を含む。
有効成分の静脈内投与に適した生理学的に許容されうる水性キャリア溶液は、当技術分野において周知されている。そのような水性溶液には、例を挙げれば、5%デキストロース、リンゲル溶液(乳酸加リンゲル注射液、乳酸加リンゲル+5%デキストロース注射液、アシル化リンゲル注射液)、ノーモソール−M(Normosol−M)、イソタイプEなどがある。
必要に応じて、このような水性溶液は、例えばポリエチレングリコールなどの共溶媒、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、例えばシクロデキストリンなどの可溶化剤、例えばメタ重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤を含むことができる。
所望であれば、本発明に係る水性の薬学的組成物は、凍結乾燥した後、投与する前に適当なキャリアによって再構築することもできる。好適な実施態様において、薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む凍結乾燥組成物である。好適には、この組成物のキャリアは、スクロース、マンニトール、デキストロース、デキストラン、ラクトース、またはこれらを組み合わせたものを含む。より好適には、キャリアはスクロース、マンニトール、またはこれらを組み合わせたものを含む。
一つの実施態様において、本発明に係る薬学的組成物はシクロデキストリンを含む。本発明に係る薬学的組成物に用いられる場合、シクロデキストリンは、好適にはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。このような調合剤において、シクロデキストリンは、調合剤の約1〜25重量パーセント、好適には約2〜10重量パーセントを構成する。さらに、シクロデキストリンに対する有効成分の重量比は、一般的には約1:1〜約10:1の範囲であろう。
本発明に係る薬学的組成物は、好適には、単位投薬形態にパッケージされている。「単位投薬形態」という用語は、患者に用量投与するのに適した物理的に分離された単位を意味し、すなわち、各単位が、単独、または一種類以上の補助単位とともに所望の治療効果を生じさせるよう計算された所定の有効成分量を含むことを意味する。例えば、このような単位投薬形態は、滅菌され密封されたアンプルなどにパッケージすることができる。
以下の調合剤は、本発明に係る代表的な薬学的組成物を例示するものである。
(処方例A)
注射液を調製するのに適した凍結溶液は以下のように調製する:
成分
本願化合物 10〜1000mg
賦形剤(例、デキストロース) 0〜50g
注射液用の水 10〜100mL

典型的な処理手順:賦形剤がある場合には、それを約80%の注射液用水に溶解させてから、活性化合物を加えて溶解させる。1M水酸化ナトリウムでpHを3〜4.5に調整してから、容量が最終容量の95%になるよう調整する。pHを確認して、必要ならば調整してから、注射液用水で最終容量になるよう調整する。そして、この調合剤を0.22ミクロンのフィルターで滅菌濾過してから、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。バイアルに蓋をして凍結保存する。
(処方例B)
成分
本願化合物 10〜1000mg
賦形剤(例、マンニトールおよび/またはスクロース) 0〜50g
緩衝化剤(例、クエン酸) 0〜500mg
注射液用の水 10〜100mL

典型的な処理手順:賦形剤および/または緩衝化剤がある場合には、それらを約60%の注射液用水に溶解させる。活性化合物を加えて溶解させ、1M水酸化ナトリウムでpHを3〜4.5に調整してから、容量が最終容量の95%になるよう注射液用水で調整する。pHを確認して、必要ならば調整してから、最終容量になるよう注射液用水で調整する。そして、この調合剤を0.22ミクロンのフィルターで滅菌濾過してから、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。次に、適当な凍結乾燥サイクルを用いて、調合剤を凍結乾燥させる。このバイアルに蓋をして(必要に応じて、部分真空下または乾燥窒素下で)、ラベルを付けてから冷蔵庫で保存する。
(処方例C)
患者に静脈内投与するための注射液を、上記処方例Bから以下のようにして調製する。
典型的な処理手順:処方例Bの凍結乾燥された粉末(例えば、10〜1000mgの活性化合物を含む)を、20mLの滅菌水で再構築し、得られた溶液を、100mLの輸液バッグの中で、80mLの滅菌食塩水でさらに希釈する。そして、この希釈溶液を30分〜120分にわたって静脈から患者に投与する。
(有用性)
本発明に係る架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン化合物は、抗生物質として有用である。例えば、本発明に係る化合物は、ヒトおよび彼らのコンパニオン動物(すなわちイヌ、ネコなど)などの哺乳動物における細菌感染症およびその他細菌に関連した医学的症状であって、本発明に係る化合物に感受性の微生物が原因となっている感染症および症状を治療または予防するのに役立つ。
したがって、この方法の側面の一つにおいて、本発明は、哺乳動物における細菌感染症を治療する方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を投与することを含む方法を提供する。
例示として、本発明に係る化合物は、グラム陽性細菌およびそれに近縁の部生物が原因となる感染症を治療または予防するのに特に有用である。例えば、本発明に係る化合物は、ある種のエンテロコッカス種(Enterococcus spp.)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)などのスタフィロコッカス種(Staphylococcus spp.)、ストレプトコッカス種(Sterptococcus spp.)、リステリア種(Listeria spp.)、クロストリジウム種(Clostridium spp。)、バシラス種(Bacillus spp.)などが原因となる感染症を治療または予防するのに効果的である。本発明に係る化合物によって効果的に治療できる細菌種の例には、メチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性連鎖ブドウ球菌(MSSA)、グリコペプチド中間体感受性連鎖ブドウ球菌(GISA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)、メチシリン感受性表皮ブドウ球菌(MSSE)、バンコマイシン感受性大便連鎖球菌(EFSVS)、バンコマイシン感受性大便連鎖球菌(EFMVS)、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(PRSP)、化膿連鎖球菌などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
下記の実施例6の表IIに示すように、化合物Ia−cは、メチシリン感受性連鎖ブドウ球菌とメチシリン耐性連鎖ブドウ球菌に対してバンコマイシンよりも10倍以上効果的であった。化合物Icも、そのdes−クロロ類似化合物である「des−Cl Ic」よりもかなり活性が高かった。ただし、この化合物は、MSSAに対してもバンコマイシンより活性が高かった。「時間−殺菌」アッセイ法では、実施例7に記載されているように、式Iの化合物、すなわち化合物Ibが、濃度1.0μg/mLで4時間以内にMRSAに対して殺菌性を示した。ちなみに、バンコマイシンは、4μg/mLの濃度で24時間以内にMRSAに対して殺菌活性を示した。好中球減少マウスにおけるインビボアッセイ法では、実施例8に記載されているように、式Iの化合物、すなわち化合物Ibは、ivで0.1mg/kgよりも低いED50を示したが、これに対して、バンコマイシンでは、ED50はivで9mg/kgであった。
通常、本発明に係る化合物は、グリコペプチドまたはセファロスポリンのいずれかに対して感受性の細菌系統によって引き起こされる感染症を治療または予防するのに好適である。
本発明に係る化合物によって治療または予防することができる感染症または細菌に関連した医学的症状の種類には、皮膚および皮膚組織の感染症、尿道感染症、肺炎、心内膜炎、カテーテル関連血流感染症、骨髄炎などが含まれるが、これらに限定されるものではない。このような症状を治療するとき、患者はすでに治療対象となる微生物に感染しているかもしれないし、あるいは、単に感染症に感受性であるだけかもしれないが、この場合には、有効成分は予防的に投与される。
本発明に係る化合物は、一般的には、許容できる投与経路によって、治療上有効な量にして投与される。好適には、該化合物は非経口投与される。該化合物は、1日に1回の容量にして投与することも可能であり、1日に複数の用量にして投与することも可能である。治療計画は、長期間にわたる、例えば数日間、または1週間〜6週間またはそれよりも長い期間にわたる投与を必要とするかもしれない。1回投薬あたり投与される有効成分の量または投与される全量は、一般的には、患者の担当医によって決定され、感染症の性質および重篤度、患者の年齢および全体的な健康状態、有効成分に対する患者の耐性、感染症の原因となる微生物、投与経路などの要素に応じて変化する。
通常、適当な用量は、約0.25〜約10.0mg/kg/日の有効成分の範囲であり、好適には、約0.5〜約2mg/kg/日である。平均70kgのヒトでは、これは1日あたり約15〜約700mgの有効成分であり、または、好適には、1日あたり約35〜約150mgである。
さらに、本発明に係る化合物は、細菌の増殖を阻害するのに有効である。この実施態様では、細菌に、インビトロまたはインビボで、増殖阻害量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を接触させる。一般的には、増殖阻害量は、約0.008μg/mL〜約50μg/mLの範囲であり、好適には、約0.008μg/mL〜約25μg/mLであり、より好適には、約0.008μg/mL〜約10μg/mLである。細菌の増殖阻害は、細菌による生殖の低下もしくは欠如、および/または細菌の溶解によって証拠づけられる。すなわち、所定の時間にわたり(すなわち、時間あたり)、所定の容量において(すなわち、mL当り)、非処理の細菌と比較してコロニー形成単位が減少することによって証拠付けられる。
また、本発明に係る化合物は、細菌における細胞壁の生合成を阻害する上でも有効である。この実施態様では、細菌に、インビトロまたはインビボで、細胞壁生合成阻害量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を接触させる。一般的には、細胞壁生合成阻害量は、約0.04μg/mL〜約50μg/mLの範囲であり、好適には、約0.04μg/mL〜約25μg/mLであり、より好適には、約0.04μg/mL〜約10μg/mLである。細菌における細胞壁生合成阻害は、一般的には、細菌の溶解を含む、細菌増殖の阻害もしくは欠如によって証拠づけられる。
さらに、本発明に係る化合物は、驚くほど予想外の速さで、メチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)など、一定の細菌に対して殺菌性を示すことが分かっている。これらの特性は、本発明に係る化合物の抗生物質としての有用性と同様、当業者に周知されているインビトロおよびインビボのさまざまなアッセイ法を用いて実証することができる。例えば、代表的なアッセイ法が、以下の実施例において詳細に説明されている。
以下の合成例および生物学的実施例は、本発明を例示するためのものであり、いかなる意味においても、本発明の範囲を制限するものと解してはならない。
以下の実施例において、別段の記載がない限り、以下の略語は以下の意味をもつ。下記に記載されていない略語は、通常認められている意味をもつ。
BOC=tert−ブトキシカルボニル
CFU=コロニー形成単位
DCM=ジクロロメタン
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EtOAc=エチル酢酸
HOBT=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOAT=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
MIC=最小阻害濃度
MS=質量分析
PMB=p−メトキソベンジル
PyBOP=ベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリピロリジノ−ホスホニウム・ヘキサフルオロリン酸
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
TFA=トリフルオロ酢酸
以下の実施例で報告されている温度は、別段の記載がない限り、すべてセ氏温度(℃)である。また、別段の記載がない限り、試薬、出発物質および溶媒は、供給業者(Aldrich、Fluka、Sigmaなど)から購入したものであり、さらに精製を行うことなく使用した。塩酸バンコマイシンの半水和物は、Alpharma,Inc.,Fort Lee,NJ07024(Alpharma AS,Oslo,Norway)から購入した。
逆相HPLCは、別段の記載がない限り、一般的には、C18カラムおよび(A)98%の水、2%のアセトニトリル、0.1%TFAを用いて、(B)10%の水、90%のアセトニトリル、0.1%TFAの上昇勾配(例えば、0〜約70%)によって行った。
(実施例1:2aの調製:(7R)−7−[(Z)−2−(2−アミノ−5−クロロチアゾル−4−イル)−2−(メトキシイミノ)アセトアミド]−3−[(4−(アミノメチル)−1−ピリジニオ)メチル]−3−セフェム−4−カルボキシル酸ビス−トリフルオロ酢酸塩(図2参照))
(A.2−アミノ−5−クロロ−α−(メトキシイミノ)−4−チアゾール酢酸(6)の調製)
500mLのDMFを、50.0g(250mmol)の2−アミノ−α−(メトキシイミノ)−4−チアゾール酢酸および35g(260mmol)のN−クロロスクシンイミドに加えた。この混合液を室温で一晩撹拌し、その後、質量分析によって、もう出発物質が存在していないことを明らかにした。それ以上の精製はせずに薄茶色の溶液を用いた。
(B.セファロスポリン誘導体(8)の調製)
工程(a)で得られたDMF中の酸6の溶液に、101.5g(250mmol)のアミノセファロスポロンエステル7、34g(250mmol)を加えた。この混合液を0℃まで冷却して、33.5mL(250mmol)の2,4,6−コリジンを加えた。この溶液に、53g(275mmol)の1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸を加えた。2時間後、この溶液を3Lの水の中に沈殿させて濾過した。この固体を水(2×1L)、飽和重炭酸ナトリウム(500mL)、および水(4×500mL)で洗浄してから真空下で乾燥させた。乾燥した固体を、室温で500mLの塩化メチレンに入れ、この溶液をゆっくりと撹拌して沈殿を形成させた。結晶を濾過して回収し、洗浄液が茶色でなくなるまで塩化メチレンで洗浄し、真空下で乾燥させてアミド8(74g)を得た。
分析データ:MS m/z 計算値586.04、観察値586.2(M+1);H NMR(DMSO−d):δ9.60(d、1H)、7.35(m、3H)、6.91(d、2H)、5.82(m、1H)、5.17(m、3H)、4.56(m、2H)、3.84(s、3H)、3.76(s、3H)、3.62(m、2H)。
(C.セファロスポリン誘導体(10)の調製)
アセトン(250mL)を、窒素下暗黒中で、50g(85mmol)のクロロメチルセファロスポリンエステル8および13g(85mmol)のヨウ化ナトリウムに加えた。30分間撹拌した後、27g(130mmol)の4−(N−tert−ブトキシカルボニル)アミノメチルピリジン(9)および30mLのアセトンを加えた。さらに2時間撹拌した後、1.4Lの0.1NHClを加えて、ゴム状の沈殿物を生じさせた。溶媒部分をデカントして、ゴム状の残滓を800mLの水で処理して固体を得た。この水をデカントして、固体を1Lの4:1エチル酢酸/エタノールに溶解させた。この溶液を500mLの飽和ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥するまで蒸発させて、HPLC(254nm)によって測定したところ78%の純度をもつ70g(79mmol、93%)の生成物10を得た。
(D.セファロスポリン誘導体(2a)の調製)
セファロスポリン誘導体、10、を以下のようにして脱保護した。粗生成物(70g、79mmol)を、窒素下で、550mLの塩化メチレンに溶解させて、35mL(320mmol)のアニソールを加えた後、150mLのトリフルオロ酢酸を加えた。2時間後、この混合液を真空下で濃縮した。この生成物に1Lのジエチルエーテルを加えて沈殿させた。濾過によって、この固体を単離し、エーテルで洗浄し、200mLの水の中で撹拌して濾過した。濾液を凍結乾燥して乾燥してから、逆相HPLCによって精製して、ビス−TFA塩として、30g(約50%)の化合物2aを回収し、それ以上の精製を行うことなく使用した。
(実施例2:1aの調製:R、R、R、R、R=H;R=OH;R=Me;X、X=Cl;R=H;およびR=−CHCH−である式I)
窒素下で、塩酸バンコマイシン一水和物(20g、13mmol)を水(100mL)に溶解して、氷浴槽中で冷却した。エチレンジアミン(7mL、100mmol)を加えた後、1N NaOH(50ml、50mmol)を加えた。ホルムアルデヒド(1.3mL37%HCO水溶液、17mmol)を加えてから、反応混合液を4℃で暗黒中に一晩置いた。反応混合液のHPLC分析によって、78%の所望の生成物1aに加えて、未処理のバンコマイシンおよびビス−付加生成物があることが分かった。この反応混合液を4℃で酸性化してから、生成物を回収して、HPLCで精製した。
(実施例3:化合物Ibの調製(図3参照))
アジピン酸(3、ここで、R=n−ブチレン)ビス−HOATエステル(3a、6.5mmol)をDMF(50mL)に溶解させて、上記実施例1に記載されているとおりに調製されたピリジニウムラクタムビス−トリフルオロ酢酸2a(1.0g、1.3mmol)を加えた。そして、氷浴槽中でこの溶液を冷却してから、2,4,6−コリジン(342μL、2.6mmol)を加え、そして、この混合液を氷浴槽中で15分間撹拌した後、300μLTFA(3.9mmol)でクエンチした。そして、この反応混合液を、400mLのエチル酢酸の中に注ぎ込み、沈殿した固体を遠心分離によって回収した。
実施例2に記載されたとおりに調製された3.86g(1.95mmol)の溶液1a
を、DMF(40mL)中において、回収した沈殿物に加えて、得られた混合液を氷浴槽で冷却した後、2,4,6−コリジン(1.03μL、7.8mmol)を加えた。この混合液を氷浴槽中で20分間撹拌した後、トリフルオロ酢酸を加えた(800μL、10.4mmol)。次に、この反応混合液を、アセトニトリル(400mL)の中に注ぎ込み、沈殿した固体を逆相HPLCによって精製して、生成物Ib(740mg、0.29mmol、收率22%)を得た。
分析データ:MSm/z 2171.8(MH)。
(実施例4:化合物Ia、IcおよびIdの調製)
これらの化合物を、適切な出発物質に置き換えて、実施例1、2および3に記載の手順に従って、調製した。
分析データ:
化合物Ia:MSm/zフラグメント 1127.7、1681.6、1824.8(MH);
化合物Ic:MSm/z 2171.5(MH);および
化合物des−Cl Ic:比較のために、化合物Icのdes−クロロ誘導体(すなわち、トリアジアゾール環のクロロ原子が水素によって置換されている)を調製した。
(実施例5:水溶性の測定)
以下の方法を用いて、本発明に係る化合物の水溶性を測定した。1mLの1N塩酸(Aldrich)を99mLの5重量%のデキストロース水溶液に加えて、pH2.2の5重量%のデキストロース緩衝溶液を調製した(Baxter)。次に、1mgの試験化合物を1mLのDhMSOに溶解して、較正基準用の1mg/mL保存溶液を調製した。この溶液を30秒間ボルテックスしてから、10秒間超音波破砕した。そして、この保存溶液を水で希釈して、以下の濃度の較正基準を調製した。50、125、250、375および500μg/mL。
各試験化合物(30mg)の重さを量ってMillipore未滅菌Ultrafree−MC0.1μmフィルターユニット(MilliporeUFC30VVOO)に入れて、磁気撹拌棒を各ユニットに加えた。次に、5重量%のデキストロース緩衝溶液(750μL)を各ユニットに加えて、これらの混合液を5分間ボルテックスした。そして、このフィルターユニットをエッペンドルフチューブのラックの中に置いて、チューブラックを磁気撹拌装置の上に置いた。そして、1N NaOH(VWR)を用いて各ユニットをpH3まで滴定し、得られた溶液を7000rpmsで5分間遠心分離した。そして、5%デキストロース緩衝溶液で各ユニットを200倍に希釈し、希釈したサンプルを、分析のために自動サンプル用バイアルに移した。
以下の条件を用いて、逆相HPLCによって較正標準および試験サンプルを分析した。
カラム:Luna150×4.6mm;C18;5μ
移動相:A=5/95、B=95/5、両者=MeCN/HO;0.1%TFA
方法:10mLido100(6分間で0〜100%B)
注入容量:20μL
波長:214nm
試験サンプルのピーク領域を較正曲線と比較し、希釈係数を乗じて各試験サンプルの可溶性を計算した。
上記の方法によって、pH3の5%デキストロース緩衝溶液における化合物Ibの可溶性は、7mg/mLよりも大きいと測定された。
(実施例6:最小阻害濃度(MIC)の測定)
NCCLSガイドライン(NCCLS.2000.Methods for Dilution Antimicorbial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically;Approved Standard−Fifth Ed.,Vol.20,No.2参照)に示されている微量液体希釈法を用いて最小阻害濃度(MIC)アッセイ法を行った。細菌菌株は、アメリカン・タイプ・ティシュー・カルチャー・コレクション(ATCC)、Stanford University Hospital(SU)、Kaiser Permanente Rigional Laboratory in Berkeley(KPB)、Massachusetts General Hospital(MGH)、theCenters for Disease Control(CDC)、the San Francisco Veterans’ Administration Hospital(SFVA)、またはUniversity of California San Francisco Hospital(UCSF)から入手した。バンコマイシン耐性腸球菌を、テイコプラニンに対する感受性に基づいて、VanAまたはVanBの表現型に分けた。VanA、VanB、VanCl、またはVanC2と遺伝子型判定されたバンコマイシン耐性腸球菌の中には、Mayo Clinicから入手したものもあった。
このアッセイ法においては、低温保存された参照用の細菌培養物および臨床菌株を、単離するために、適当な寒天培地(すなわちTrypticase Soy Agar,脱線維素ヒツジ赤血球入りTrypticase Soy Agar、Brain Hert Infusion Agar、Chocolate Agar)上に塗抹培養した。コロニーを形成させるためにインキュベートした後、これらの培養皿をパラフィルムで封をして、最長2週間低温保存した。アッセイ用の接種源を調製するため、また変動を確実に低くするために、寒天培養皿上で培養した細菌の単離株由来のコロニーをいくつか、接種用ループでつついて、無菌的に(製造業者の証明書に基づいて必要とされる量の2価カチオンを添加した)ミューラーヒントン培地に移した。この培地での培養菌を35℃で一晩増殖させ、予め暖めておいた新しい培地で希釈して、対数期まで増殖させたが、これは、マックファーランド0.5標準比濁液または1ミリリットル当り1×10コロニー形成単位(CFU/mL)に相当する。濁度がマックファーランド標準比濁液と同じであっても、種の変異によって、すべての細胞懸濁液が、1×10CFU/mLを含んでいるわけではなかった。このため、さまざまな細菌菌株の希釈液において、許容されうる調整(NCCLSガイドラインに基づく)を行った。接種源を希釈して、ミューラーヒントン培地、添加ミューラーヒントン培地、またはヘモフィルス試験用培地の中でこの培養菌100μLが、これも100μLの対応する培地において、2倍段階希釈された抗生物質濃度の上に載せたときに、96ウエル微量滴定プレートでは5×10CFU/mLという出発細菌濃度が得られた。次に、このプレートを35℃で18〜24時間インキュベートした。細菌増殖していない最低濃度のウエルとしてMICを目で読み取った。細菌の増殖は、ピンの先端ほどのコロニーが3個以上あるか、直径2mmよりも大きな沈殿細胞の塊があるか、あるいは、明らかに濁っていることと規定されている。
最初のスクリーニングで日常的にテストされる菌株は、メチシリン感受性連鎖ブドウ球菌(MSSA)、メチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(MRSA)、ペニシリナーゼ産生連鎖ブドウ球菌、メチシリン感受性表皮ブドウ球菌(MSSE)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)、バンコマイシン感受性腸球菌(EFMVS)、バンコマイシン感受性大便連鎖球菌(EFSVS)、テイコプラニンにも耐性のバンコマイシン耐性腸球菌(EFMVR VanA))、テイコプラニンには感受性のバンコマイシン耐性腸球菌(EFMVR VanB))、テイコプラニンにも耐性のバンコマイシン耐性大便連鎖球菌(EFSVR VanA))、テイコプラニンには感受性のバンコマイシン耐性大便連鎖球菌(EFSVR VanB))、ペニシリン感受性肺炎連鎖球菌(PSSP)およびペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(PSRP)などであった。PSSPおよびPSRPはミューラーヒントン培地ではうまく増殖できなかったため、脱線維素血液を添加したTS培地またはヘモフィルス試験培地のいずれかを用いて、それらの菌株によるMICを測定した。
次に、上記した菌株に対する有意な活性をもつ試験化合物を、上記に列挙した種、また種を形成していないコアグラーゼ陰性のスタフィロコッカスであって、メチシリンに対しては感受性および耐性のもの(MS−CNSおよびMR−CNS)を含む、臨床菌株のより大きなパネルの中でMIC値について試験した。さらに、これらの試験化合物を、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter
cloacae)、アシネトバクター・バオマニル(Acinetobacter baumannil)、インフルエンザ菌、およびカタラリス菌のようなグラム陰性微生物に対するMICについてもアッセイした。
表IIは、既知のグリコペプチド系抗生物質であるバンコマイシンと比較したときの、メチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性連鎖ブドウ球菌(MSSA)に対する本発明に係る化合物のMIC90のデータを示している。
表IIのデータは、本発明に係る化合物(すなわち、Ia、IbおよびIc)が、des−クロロ類似化合物またはバンコマイシンのいずれと較べても驚くほど予想外の抗菌活性をMRSA33591に対してもつことを示しており、また、本発明に係る化合物が、バンコマイシンと較べても驚くほど予想外の抗菌活性をMRSA13709に対してもつことを示している。
(実施例7:時間−殺菌アッセイ法)
時間−殺菌アッセイ法は、試験化合物の殺菌活性の速度を測定する方法である。これらの方法は、V.Lorian,”Antibiotics in Laboratory Medicine”、Fourth Edition,William and Wilkins (1996),104〜105頁に記載されている方法と同じである。細菌のコロニー形成を速やかに防止して、宿主の組織損傷を抑えるためには迅速な時間−殺菌が望ましい。
MICを測定するために、実施例6に記載されているとおりに細菌の接種源を調製した。細菌を、振とうフラスコの中で予め温めておいた培地で希釈して、振とう(200rpm、35℃)しながらインキュベートした。0、1、4および24時間後のサンプルをフラスコから採取して、プレート計数によって細菌の数を数えた。最初のサンプリングの後、振とうフラスコ培養液に、アッセイすべき試験化合物を加えた。該化合物を加える前およびその後これらの間隔でプレート計数結果を、グラフによって時間−殺菌曲線として表現した。殺菌活性は、24時間までに細菌の数が3対数分の減少(99.9%以上の減少)として定義される。
このアッセイ法においては、式Iの化合物、すなわち化合物Ibは、濃度1.0μg/mLでは4時間でMRSA33591に対して殺菌効果があった。ちなみに、バンコマイシンは、濃度4μg/mLでは24時間でMRSA33591に対して殺菌効果があった。
(実施例8:好中球減少マウスにおけるインビボでの効能試験)
Charles Rivers Laboratories(Gilroy,CA)から動物を入手して、不断に食餌と水を与えた。細菌を接種する4日および2日前に投与された、シクロホスファミドの200mg/kg腹腔内(IP)注射液によって好中球減少症を誘発した。
使用した生物は、メチシリン感受性連鎖ブドウ球菌(MSSA13709)およびメチシリン耐性連鎖ブドウ球菌(MRSA33591)など、臨床に関係するグラム陽性病原菌の感受性菌株および耐性菌株のいずれかであった。細菌の接種源濃度は、ほぼ10CFU/mLであった。動物をイソフルレンで軽く麻酔して、50mLの細菌接種源を大腿前部に注入した。接種してから1時間後に、賦形剤または適当な用量の試験化合物を静脈から投薬した。処理後0時間および24時間に動物を安楽死させて(CO窒息死)、大腿前部と後部を無菌的に採集した。腿を10mLの滅菌食塩水の中に入れて、ホモジナイズした。このホモジネートの希釈液をトリプトンダイズ寒天プレート上に塗って、一晩インキュベートした。所定のプレート上の細菌コロニーの数に希釈係数を乗じて、腿の重さ(グラム表示)で割って、対数CFU/gとして表示した。ED50(腿の滴定値の最大減少値の50%を生じさせるのに必要な用量)を、各試験サンプルについて評価した。
このアッセイ法において、式Iの化合物、すなわち化合物Ibは、ivで7mg/kgよりも低いED50を示したが、これに対して、バンコマイシンでは、ED50はivで9mg/kgであった。
本発明の具体的な実施態様に関連して、本発明を説明してきたが、本発明の真の精神と範囲から離れることなく、さまざまな変化を作出したり、等価物で代用したりすることも可能であると、当業者は理解すべきである。さらに、具体的な状況、材料、組成物、方法、方法の工程に適合させるために、本発明の目的、精神、および範囲に対して数多くの変更を行うことも可能である。そのような変更はすべて、本明細書に添付された請求の範囲に含まれるものである。さらに、適用されうる特許法および規則によって許容される程度まで、本明細書において引用されている刊行物、特許、および特許文献のすべてを、それらを個別に参照して本明細書に組み込まれたのと同じように、それらの全体を参照して本明細書に組み込こむ。
図1は、選択された本発明の実施態様にしたがった、架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン抗生物質の代表例を示す。 図2は、本発明に係る化合物の中間生成物として有用なセファロスポリン中間生成物を調製するための代表的な方法を示す。 図3は、本発明に係る架橋されたグリコペプチド−セファロスポリン抗生物質を調製するための代表的な方法を示す。

Claims (3)

  1. 以下の式の化合物:

    またはその薬学的に受容可能な塩。
  2. 薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の請求項に記載の化合物を
    含む、薬学的組成物。
  3. 哺乳動物における細菌感染症を治療するための組成物であって、該組成物は、
    薬学的に受容可能なキャリア、および治療有効量の請求項に記載の化合物を
    含む、組成物。
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