JP4551568B2 - 常磁性粒子を用いた集細胞及びライセート清澄化 - Google Patents

常磁性粒子を用いた集細胞及びライセート清澄化 Download PDF

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Description

【0001】
(関連出願に対するクロスレファレンス)
この出願は、1999年5月14日出願の米国仮出願第60/134,156号の利益を主張する。
(連邦政府後援による研究又は開発に関する陳述)
適用なし。
(技術分野)
この発明は、一般的には、細胞又は生物組織を収集、つまり集めるために、磁気応答性シリカゲル粒子又は磁気応答性イオン交換粒子のような磁気応答性粒子を使用することに関する。この発明は、このような細胞又は組織のライセート又はホモジネートを清澄化するために、このような粒子を使用することにも関する。さらに、この発明は、プラスミドDNA、染色体DNA、DNA断片、全RNA、mRNA、又はRNA/DNAハイブリッドのような標的核酸を、細胞ライセート中の非標的物質から単離するために、このような粒子を使用することに関する。
【0002】
(発明の背景)
液体培養中の細胞を集め、つまり収集してからでければ、後で使用するために保存し、直接解析のために染色し、又はその細胞から標的の特定物質を単離するために処理できない。ほとんどの細胞収集及び集中技法は、遠心分離、ろ過、又は遠心分離とろ過の組合せを含む。(例えば、分子クローニング,(1989)出版Sambrookら,222ページ及びろ過システム参考文献を参照せよ)。残念なことに、ろ過も遠心分離も自動化には受け入れられない。具体的には、どちらもBiomec(登録商標)のような基礎的なピペット−希釈ロボットステーションで実行できない。細胞内部の標的核酸又はタンパク質のような特種な物質を単離又は解析することが必要になる場合、細胞膜は破壊されて、その細胞の内容が細胞周囲の溶液中に放出されなければならない。このような破壊は、機械的手段(例えば、超音波又はミキサー内でのブレンディングによって)、酵素的消化(例えば、プロテアーゼによる消化によって)、又は化学的手段(例えば、アルカリ溶解後中和溶液を添加することによって)達成できる。どの手段を使用して細胞を破壊しても、最終生成物(以後本明細書ではライセート溶液という)は、標的物質と、細胞デブリを含む多くの混入物から成る。このライセート溶液は、その大量の混入物ができる限り多く清澄化されてからでなければ、そこからさらに標的物質を単離することはできない。上記と同じ2つの手段、すなわち遠心分離及びろ過のどちらか又は両方を使用して、次の処理の前にライセート溶液を清澄化している。しかし、上述した理由のため、いずれのライセート溶液の清澄化手段も自動化には受け入れられない。
【0003】
多くの異なったシステムの材料及び方法が、清澄化ライセート溶液から核酸を単離する用途で開発されてきた。このようなシステムの多くは、制御された細孔ガラス、シリカ粒子が埋め込まれたフィルター、シリカゲル粒子、珪藻土形態のシリカを含有する樹脂、ガラスファイバー又は上記の混合物を利用する手段のようにシリカベースである。このようなシリカベースの固相分離システムは、それぞれカオトロピック剤の存在下でこのような物質を含有する媒体に接触して置かれたときに、核酸物質と可逆的に結合するように構成される。このシリカベースの固相は、この核酸物質に結合された状態でいるように設計される一方、その固相は遠心分離又は減圧ろ過のような外力にさらされて、そのマトリックスとそれに結合された核酸物質とを、残存する媒体成分から分離する。そして、その固相を水又は溶出緩衝液のような溶出溶液にさらすことによって核酸物質が固相から溶出される。多くの市販元は遠心分離及び/又はろ過単離システム、例えば、Promega Corporation(Madison,Wisconsin,U.S.A.)製のWizard(登録商標)DNA精製システム製品、又はQtagen Corp.(Chatsworth,California,U.S.A.)製のQiaPrep(登録商標)DNA単離システムで使用するために設計されたシリカベースの樹脂を提供している。残念なことに、上述したタイプのシリカベースの固相はすべて、各方法の種々の単離工程を達成するのに一用途の遠心分離又はろ過を必要とし、このような固相を自動化システムで利用するのを制限している。
【0004】
常磁性又は超常磁性粒子のような磁気応答性の固相は、上記シリカベースの固相のいずれによっても提供されない利点を提供する。このような粒子は、磁力場を点滅することにより、又は磁気分離器に容器を入れたり出したりすることによって、溶液から分離されうる。このような活性は、自動化に容易に適合される。
【0005】
磁気応答性粒子は、核酸の単離用に開発されている。このような粒子は、一般に2つのカテゴリー、すなわち核酸物質を直接可逆的に結合するように設計されるもの、及び中間物を介して核酸物質を可逆的に結合するように設計されるもののどちらかに分類される。第1タイプの粒子の例としては、Promega製のMagneSilTM粒子、又はPerSeptive Biosystems製のBioMag(登録商標)磁性粒子のような、DNAを直接可逆的に結合するように設計されたシリカベースの多孔性粒子を参照せよ。ある特定タイプの核酸(mRNA)を可逆的に結合するように設計された第2タイプの粒子及びシステムの例としては、Promega Corporation(Madison,Wisconsin,U.S.A.)製のPolyATract(登録商標)シリーズ9600TMmRNA単離システム;又はBangs Laboratories(Carmel,Indiana,U.S.A.)製のストレプトアビジンコート小球体粒子を参照せよ。これらシステムは両方とも、共有結合されたストレプトアビジンサブユニットを有する磁気応答性粒子、及び共有結合されたオリゴ(dT)部分を有するビオチンを利用している。ビオチン−オリゴ(dT)分子は、mRNA分子のポリ(A)末端に接して置かれると、中間物のように作用し、それにハイブリダイズし、それから粒子上のストレプトアビジンに結合する。そして、そのmRNA分子が水中に放出される。
【0006】
核酸の単離又は分離用の間接結合性磁気分離システムは、少なくとも3種の成分、すなわち磁性粒子、中間物、及び問題の核酸物質を含有する媒体を必要とする。中間物/核酸ハイブリダイゼーション反応及び中間物/粒子結合反応は、相互に異なった溶液及び/又は温度の反応条件を必要とすることが多い。核酸単離手順で使用される各添加成分又は溶液は、その単離された最終生成物のヌクレアーゼ、金属、及び他の有害物によるコンタミネーションの危険を増す。
【0007】
直接又は間接的な核酸結合単離法における固相としての用途で種々のタイプの磁気応答性のシリカベース粒子が開発されている。このような粒子タイプの1つは、好ましくは細孔サイズが制御された磁気応答性ガラスビーズである。例えば、CPG,Inc.(Lincoln Park,New Jersey,U.S.A.)製の磁性多孔性ガラス(MPG)粒子;又は米国特許第4,395,271号;第4,233,169号;若しくは第4,297,337号に記載された多孔性磁性ガラス粒子を参照せよ。しかし、核酸物質はガラスに密接に結合する傾向があるので、一旦ガラスに結合すると離すのが難しい。従って、磁性ガラス粒子からの溶出効率は、シリカのような核酸結合性物質の量が少ない粒子からの溶出効率よりも低い傾向がある。
【0008】
核酸、特にDNAを直接結合して単離する場合に固相として使用するために設計された別のタイプの磁気応答性粒子は、小さい強磁性粒子が埋め込まれ、かつガラスで被膜されたアガロースを含む粒子、例えば、米国特許第5,395,498号である。核酸を直接結合して単離するために設計されたさらに別のタイプの磁気応答性粒子は、磁性材料を高分子二酸化ケイ素化合物のマトリックスに組み込んで製造され、例えばドイツ国特許出願番号DE4307262である。後者の2つのタイプの磁性粒子、すなわちアガロース粒子と高分子二酸化ケイ素マトリックスは、このような各磁性粒子に直接核酸物質を結合するのに必要な条件下で、鉄を媒体中に浸出する傾向がある。このような粒子を完全に均質かつ濃縮された磁気容量で生成し、そこに結合される核酸物質の速くかつ効率的な単離を確実にすることは難しい。
【0009】
核酸のような標的高分子の単離用に設計された磁気応答性ビーズ、及びそれに使用する方法は、米国特許第5,681,946号及び国際特許出願番号WO91/12079に記述されている。これら最近のビーズは、標的高分子が、標的高分子とビーズを含有する溶液から沈殿された後だけ、その標的高分子と非特異的に結合されるように設計されている。磁力を用いて、ビーズ及びそれと結合している高分子を溶液から単離する。この最近のシステムで使用するのに推奨される磁気応答性ビーズは、「有機高分子中に封入された微細な磁化可能材料」である('946特許、第2欄、53行目)。
【0010】
種々の固相が、核酸と交換可能なイオン交換リガンドと共に開発されている。しかし、このようなシステムは一般的に液体クロマトグラフシステムの固相としての使用、ろ過システムでの使用、又は遠心分離で種々の溶液から固相を分離するのに使用するために設計されている。このようなシステムは、DEAE改変フィルター(例えば、CONCERT(登録商標)単離システム、Life Technology Inc.,Gaithersburg,MD,U.S.A.)におけるようなフィルターの表面に共有結合された単一種のリガンドから、多孔性デバイダーによって分離される2種の異なった固相を含有するカラム(例えば、米国特許第5,660,984号)、そこに共有結合されるpH依存性イオン化可能なリガンドを有するクロマトグラフィー樹脂(例えば、米国特許第5,652,348号)まで複雑さが及ぶ。
【0011】
細胞又は哺乳類組織から標的核酸を速くかつ効率的に単離するためにできる限り多くの工程を自動化可能な材料及び方法が必要である。具体的には、細胞の集中又は収集のため、破壊された細胞又は組織の溶液の清澄化のため、かつこのような清澄化溶液から標的核酸を単離するための方法及び材料であって、ろ過又は遠心分離のような労働集約的工程を必要としない方法及び材料が必要である。本発明は、これら各要求に焦点を当てている。本方法に従って単離された核酸は、消化制限及び配列決定を含む種々の用途に使用できる。
【0012】
(発明の簡単な概要)
本発明の方法では、磁性粒子を用いて生体物質を処理する。一実施形態では、本発明は、細胞を集め、つまり収集する方法であって、以下の工程:(a)増殖培地中の細菌又は全血中の白血球の一晩培養のような、中に細胞が含まれる溶液を、磁性粒子と、その細胞が該磁性粒子と複合体を形成する条件下で混ぜる工程;及び(b)磁力を適用して、例えば磁石を用いて、その磁性粒子/細胞複合体を前記溶液から単離する工程を包含する方法である。
他の実施形態では、本発明は、哺乳類組織の細胞ライセート又はホモジネートのような破壊された生体物質を清澄化する方法であって、以下の工程:(a)細胞ライセート又はホモジネート組織のような破壊された生体物質を含有する溶液を供給する工程;(b)その溶液を、磁性粒子と、前記破壊された生体物質が該磁性粒子と複合体を形成する条件下で混ぜる工程;及び(c)磁力を適用して、その複合体を前記溶液から単離する工程を包含する方法である。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、標的核酸を、該標的核酸、第1の非標的物質、及び第2の非標的物質を含有する破壊された生体物質の溶液から単離する方法であって、以下の工程:(a)第1の磁性粒子を、その破壊された生体物質の溶液と、前記第1の磁性粒子がその第1の磁性粒子と第1の複合体を形成する条件下で混ぜる工程;(b)磁力を適用して、その第1の複合体を、前記破壊された生体物質の溶液から分離して、前記標的核酸と前記第2の非標的物質を含有する清澄化溶液を生成する工程;(c)この清澄化溶液を、第2の磁性粒子と、前記標的核酸がその第2の磁性粒子に吸着する条件下で混ぜて、第2の複合体を生成する工程;(d)この第2の複合体を、前記清澄化溶液から単離する工程;(e)この第2の複合体を洗浄液と混ぜ、かつ磁力によってその洗浄液から前記第2の複合体を分離することによって、前記第2の複合体を洗浄する工程;及び(f)この洗浄された第2の複合体を、前記標的物質が第2の磁性粒子から脱着される条件下で、溶出溶液と混ぜる工程を含む方法である。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、上述の1種以上の本発明を実施するのに必要な少なくとも1タイプの磁性粒子と、少なくとも1種の溶液を有するキットをも構成する。このような一実施形態では、本発明は以下を含むキットである:(a)第1の非標的物質と標的核酸とを含有する破壊された生体物質の第1の溶液中で第1の非標的物質と第1の複合体を形成可能な第1の磁性粒子の第1の容器;及び(b)前記標的核酸の前記第2の磁性粒子への特異的な吸着を促進するように設計された溶液条件下で、前記標的核酸と第2の複合体を形成可能な第2の磁性粒子の第2の容器。
本発明の方法及び材料を用いて、限定するものではないが、プラスミドDNA、全RNA、mRNA、RNA/DNAハイブリッド、増幅された核酸、及びゲノムDNAを含む標的核酸を、限定するものではないが、細菌のアガロース及び成分、動物組織、血液細胞、及び非標的核酸を含む種々の混入物から単離することができる。以下の発明の詳細な説明から、種々の異なった媒体から核酸を単離するための本発明の方法及び組成物の適用が明らかになるだろう。この発明の技術の当業者は、本発明の詳細な説明が単に例示であり、本発明の範囲を制限するものとみなされるべきでないことを理解するだろう。
【0015】
(発明の詳細な説明)
以下、一部次の定義を参照しながら本発明について詳述する。
ここで、用語「固相」は標準のクロマトグラフ的意味で使用され、溶質、この場合は組織若しくは細胞又は標的核酸と溶質混合物内で相互作用する不溶性で、通常は硬いマトリックス又は固定相を意味する。本発明の方法及びキットにおいて、磁性粒子は種々の溶質混合物に添加されると固相として機能する。
用語「表面」は、ここで使用される場合、固相が溶液と混ぜられたとき、固相の支持体の、溶液と直接接触するようになる部分を意味する。
【0016】
用語「シリカゲル」は、ここで使用される場合、クロマトグラフィーグレードのシリカゲルで、多くの種々の販売元から市販されている物質である。シリカゲルは、最も一般的にはシリケート含有溶液を酸性化して、例えばケイ酸ナトリウムを酸性化してpHを11未満にして、その酸性化された溶液をゲルに与えることによって調製される。例えば、化学技術のKurt-Othmer百科事典,第21巻,第4版,Mary Howe-Grant編集、John Wiley & Sons出版,1997,1021ページのシリカ調製の議論を参照せよ。
ここで使用する場合、用語「シリカ磁性粒子」は、磁場は持っていないが、磁場にさらされると磁気双極子を形成する物質、すなわち、磁場が存在する場合磁化しうるが、そのような磁場がない場合はそれ自体磁性でない物質をさらに含んで成るシリカベースの固相を意味する。
【0017】
用語「磁性」は、ここで使用される場合、フェリ磁性又は強磁性体のような一時的な磁性体を意味する。この用語は、常磁性及び超常磁性体を包含する。
用語「磁性粒子」は、常磁性又は超常磁性体のコア及び問題の溶質と複合体を形成可能な固相を含有するマトリックスを意味する。
用語「シリカ磁性粒子」は、ここで使用される場合、含水シリカ質オキシド吸着面(すなわち、シラノール基の存在を特徴とする表面)を有するシリカ質オキシドで被膜された超常磁性コアを含んでなる常磁性粒子を意味する。
用語「磁性イオン交換粒子」は、ここで使用される場合、イオン交換リガンドが共有結合されている常磁性粒子を意味する。
【0018】
用語「pH依存性イオン交換磁性粒子」は、ここで使用される場合、複数のイオン交換リガンドが共有結合されており、あるpHではカチオン交換体として作用し、別のpHではアニオン交換体として作用しうる磁性粒子を意味する。このような磁性粒子は、その種々の物質に対する結合能力を、溶液のpH又は塩状態を変えることのみによって調節できるので、特に本発明の方法及びキットでの使用に好適である。
用語「pH依存性イオン交換シリカ磁性粒子」は、ここで使用される場合、複数のイオン交換リガンドが共有結合されており、あるpHではカチオン交換体として作用し、別のpHではアニオン交換体として作用しうるシリカ磁性粒子を意味する。このような磁性粒子は、基質が疎水性相互作用によってその粒子の含水シリカ質オキシド吸着面に吸着するか、イオン交換によってイオン交換リガンドに吸着するか、又は表面及びイオン交換リガンドの両方に吸着するか、溶液状態によって選択的に吸着できるので、特に本発明の方法及びキットでの使用に好適である。
【0019】
用語「核酸」は、ここで使用される場合、いずれのDNA若しくはRNA分子又はDNA/RNAハイブリッド分子をも意味する。この用語は、プラスミドDNA、増幅されたDNA又はRNA断片、全RNA、mRNA、ゲノムDNA、及び染色体DNAを包含する。
用語「標的核酸」は、ここで使用される場合、本発明の方法の磁性粒子を用いて単離されるいずれの特定種の核酸をも意味する。標的核酸は、好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも100ヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも1,000ヌクレオチド長である。
【0020】
本発明の方法及びキットを使用して、細胞を収集し、つまり集め、破壊された生体物質の溶液を清澄化し、及び/又は溶液から、好ましくは破壊された生体物質の清澄化溶液から標的核酸を単離することができる。このような各方法の少なくとも1工程で、溶液中に溶質と磁性粒子との間で複合体が形成される。その結果生成した複合体は、磁力を適用して溶液から単離又は除去される。本発明の方法及びキットのいずれかの所定工程で使用するのに適した磁性粒子は、本方法の当該特定工程で問題の溶質と複合体を形成する能力を有する。
溶質は、本発明の方法に従い、磁性粒子を用いて溶液から単離又は除去される種類の物質である。集められる、つまり収集されるべき細胞が、本発明の収集法の溶質である。破壊された生体物質が、本発明のライセート又はホモジネート清澄化における溶質である。磁性粒子を使用して、清澄化ライセート又はホモジネート溶液のような、標的核酸と他の物質を含有する溶液から標的核酸を単離する場合は、標的核酸が溶質である。
【0021】
本発明の一局面では、細胞と複合体を形成できる磁性粒子を用いて、その複合体の形成を促進するように設計された溶液条件下で、細胞が収集つまり集められる。シリカ磁性粒子と、pH依存性イオン交換磁性粒子は、両方とも本発明の方法に従った細胞の収集つまり集中での使用に適する。しかし、当業者は本発明のこの特定の実施形態で使用するのに好適な他の磁性粒子を容易に選択できるだろう。
【0022】
磁性粒子/溶質複合体の形成を促進する条件は、溶質の性質及び磁性粒子の固相構成要素の特性によって変わる。例えば、磁性粒子がイオン交換磁性粒子又はpH依存性イオン交換粒子である場合、複合体は、好ましくは該粒子の表面における溶質とイオン交換リガンドとの間のイオン交換の結果として形成される。このようなイオン交換相互作用を促進するためには、溶液中に少なくともいくらかの塩が存在して、その溶質とのイオン交換を促し、かつ溶液のpHは、イオン交換リガンドが溶質と交換するのに適した電荷を有する範囲内でなければならない。磁性粒子がシリカ磁性粒子である場合、複合体は、好ましくは溶質と粒子との間の疎水性相互作用の結果として形成される。磁性粒子がpH依存性イオン交換シリカ磁性粒子である場合、複合体は、溶質と粒子のシリカ質オキシド表面との間の疎水性相互作用の結果として、又は溶質とイオン交換リガンドとの間のイオン交換の結果として、又はその2タイプの相互作用の組合せの結果として形成されうる。本方法に従い、又は本キットを使用して単離される特定の好ましい基質との複合体の形成を促進するのに使用すべき好ましい塩、pH、及び他の溶液条件については後述する。
【0023】
溶質が無傷細胞である場合、複合体は、好ましくはエタノール又はイソプロパノールのような低分子量アルコールの存在下で形成される。
溶質が、細胞ライセート又は組織ホモジネート中で見られるような破壊された生体物質であり、かつ磁性粒子がシリカベース粒子である場合、磁性粒子/溶質複合体は、好ましくは痕跡量より多いアルコール又はカオトロピック塩を含まない溶液中で形成される。アルコールも、グアニジンチオシアネート又はグアニジンイソシアネートのようなカオトロピック塩も両方とも核酸物質のこのような粒子への吸着を促す。しかし、アルコール又はカオトロピック塩の存在下でも、ホモジネート又はライセート溶液中の磁性粒子の濃度が、該溶液を清澄化するのに十分低いが、溶液中の標的核酸の有意な量に付着するには十分高くないならば、本方法の細胞ライセート清澄化を実行できると考えられる。
【0024】
溶質が標的核酸である場合、複合体の形成は、好ましくは該標的核酸の磁性粒子への可逆的吸着を促進することが知られている少なくとも1種の薬剤の存在下で為される。この可逆的吸着反応は、好ましくは標的核酸と磁性粒子との間の特異的な吸着によって為され、溶液中に非標的物質を残す。例えば、標的核酸が清澄化ライセート溶液から単離されたプラスミドDNAである場合、このプラスミドDNAは磁性粒子と複合体を形成するが、タンパク質、脂質、及び染色体DNAのような非標的物質は溶液中に残存する条件下で、プラスミドDNAが磁性粒子と混ぜられる。磁性粒子がイオン交換磁性粒子である場合、複合体は、対イオンの存在下、かつイオン交換リガンドが標的核酸とイオン交換できるpHの溶液中で形成される。磁性粒子がシリカ磁性粒子である場合、複合体の形成は、好ましくは低分子量アルコール、高濃度の非カオトロピック塩、及びカオトロピック塩、又は上記いずれかの組合せからなる群より選択される薬剤の存在下で為される。本発明での使用に好適な標的核酸のシリカ磁性粒子への吸着及び脱着の方法については、WO98/31840として公開され、参照文献として本明細書に取り込まれている、国際特許出願番号PCT/US98/01149「シリカ磁性粒子を用いた生体標的物質の単離方法」を参照せよ。
【0025】
本発明で用いられる磁性粒子の固相は、アガロース、ポリアクリルアミド、若しくはセルロースのような軟質ゲル支持体、又はポリスチレン、ラテックス、メタクリレート、若しくはシリカのような硬質支持体を含むいずれの一般的な支持体からも作ることができる。
固相支持体がシリカである場合、それは、シリカゲル、シリカ質オキシド、ガラス若しくは珪藻土のような固体シリカ、又は上記2種以上の混合物の形態が好ましい。本発明のpH依存性イオン交換マトリックスに使用するのに好適なシリカベースの固相としては、米国特許第5,658,548号に記載のシリカゲルとガラスの混合物、PCT公開番号WO98/31840に記載のシリカ磁性粒子、及びプラスミドDNA単離用にPromega Corporationによって販売されている固相、すなわちWizard(登録商標)Minipreps DNA Purification Resinが挙げられる。シリカゲル粒子は、本発明のpH依存性イオン交換マトリックス及び方法で固相として使用するのに特に好ましい。シリカゲル粒子は、軟質ゲル支持体から作られた固相よりも、ずっと高圧で安定であり、LC及びバッチ分離適用のみならず、HPLCにも好適なシリカゲル固相を構成する。
【0026】
本発明の方法に従い、シリカ磁性粒子を用いて細胞を集め、ライセートを清澄化し、又は標的核酸を単離することができる。シリカ磁性粒子を利用すると、該粒子のシリカベース表面物質が、それによって単離又は除去される種々の溶質と特異的に相互作用する。
シリカ磁性粒子が、共有結合されたイオン交換リガンドを有している場合、シリカベース表面物質は、主にそのイオン交換リガンドの固体支持体として作用し、該粒子が、所定溶液から単離又は除去されるべき種々の溶質と複合体を形成できるようにする。標的核酸を単離するのに使用される場合、イオン交換リガンドは、好ましくは、あるpHではそれとともに交換することによって標的核酸と複合体を形成でき、かつ別のpHでは標的核酸を放出できる。最も好ましいイオン交換リガンドは、中性のpHより低いpHでは核酸と複合し、中性あたりのpH及び低塩条件では標的核酸を放出して、放出された標的核酸が集中又はさらに単離することなく、そこで即座に使用できるようなものである。このような好ましいイオン交換リガンド及びこのようなリガンドを取り込んだpH依存性イオン交換マトリックスは、米国特許出願番号09/312,172、発明の名称「pH依存性イオン交換マトリックス及び核酸の単離での使用方法」に記載されており、これは参照文献として本明細書に取り込まれており、仮出願ではない本出願が基づいている仮特許出願と同時に提出された出願である。
【0027】
pH依存性イオン交換マトリックスの固体支持成分がシリカ磁性粒子である場合、粒子の大きさは、好ましくは以下のように選択される。より小さいシリカ磁性粒子は複数のイオン交換リガンドに共有結合するために大きい表面積(基準質量単位当たり)を与えるが、小さい粒子はより大きい粒子と比べて取り込むことのできる磁性体の量が制限される。本発明の特定の好ましい実施形態で使用されるシリカ磁性粒子の平均粒径は、約1〜15μm、さらに好ましくは約3〜10μm、最も好ましくは約4〜7μmである。粒度分布を変えることもできる。しかし、比較的狭いモノダル(monodal)粒度分布が好ましい。このモノダル粒度分布は、好ましくは約80質量%の粒子が10μmの範囲内の平均粒径であり、さらに好ましくは8μmの範囲内、最も好ましくは6μmの範囲内であるような粒度分布である。
【0028】
本発明の磁性粒子は、多孔性でも非多孔性でもよい。磁性粒子が多孔性である場合、孔のサイズは、好ましくは標的核酸物質を固相粒子の内部に収容し、かつ孔の内面で官能基又はシリカに結合するのに十分な大きさの範囲に制御される。磁性粒子が多孔性シリカ磁性粒子である場合、窒素BET法で測定される各シリカ磁性粒子の全孔容積は、好ましくは粒子質量の少なくとも約0.2ml/gである。本発明のpH依存性イオン交換マトリックスの成分としての使用に特に好ましい多孔性シリカ磁性粒子の全孔容積は、窒素BET法で測定した場合、好ましくは、直径600Å以上の孔に含まれる孔容積の少なくとも約50%である。
【0029】
シリカ磁性粒子は、遷移金属又は揮発性有機物のような物質を含むことがあり、このような物質で実質的に汚染されて標的核酸の有用性に逆効果を及ぼす。具体的には、このような混入物は下流加工、分析、及び/又はこのような物質の使用、例えば酵素活性を阻害し又はそれとともに単離された標的核酸に切れ目を入れ若しくは分解することによって影響しうる。本発明で使用されるシリカ磁性粒子中に存在するいずれのこのような物質も、容易には粒子から、本発明の方法によって生成された単離生体標的物質中に浸出しない形態で存在することが好ましい。特に生体標的物質が標的核酸である場合、鉄が、このような望ましくない混入物の1つであることは確かである。
【0030】
磁鉄鉱の形態の鉄は、本発明のpH依存性イオン交換マトリックスの固相成分として使用されるシリカ磁性粒子の特に好ましい形態のコアに存在する。鉄は260と270ナノメーター(nm)の間に広い吸収ピークを有する。標的核酸が約260nmに吸収ピークを有すると、標的核酸試料中の鉄の混入は、このような試料の定量的な分光光度的分析の結果の精度に悪影響を及ぼしうる。本発明を使用して標的核酸を単離するのに使用されるいずれの鉄含有シリカ磁性粒子も、好ましくは260nm若しくはその近辺におけるその物質の分光光度的分析を鉄が妨害するのに十分なほど鉄が混入された単離標的核酸物質を生成しない。
【0031】
本発明のマトリックス及び方法に使用される最も好ましいシリカ磁性粒子は、シリカ質オキシド被膜シリカ磁性粒子であり、以下のように分析される場合、50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、最も好ましくは5ppm以下の遷移金属を浸出する。具体的には、粒子は以下のように分析される:0.33gの粒子(110℃でオーブン乾燥された)を20mlの1N HCl水溶液(脱イオン水を使用)と混ぜる。その結果の混合物を、粒子を分散させるためだけに撹拌する。全体で約15分の触時間後、その混合物から取った液体の一部を金属含量について分析する。生成した液体中の遷移金属の量を定量するのにいずれの従来の元素分析法も利用できるが、誘導結合プラズマ分光分析(ICP)が好ましい。
【0032】
一応、以下の2種の市販シリカ磁性粒子、PerSeptive Biosystems製のBioMag(登録商標)磁性粒子、及びPromega Corporation(Madison,Wisconsin)から入手可能なMagneSilTM粒子が、本発明で使用するのに特に好ましい。溶液からシリカ磁性粒子を分離するのに十分強力などんなソースの磁力も、本発明の核酸単離法での使用に適するだろう。しかし、磁力は、好ましくはPromega Corporation製のMagneSphere(登録商標)Technology Magnetic Separation Stands(cat.番号Z5331〜3、又はZ5341〜3)の1つのような磁気分離スタンドの形態で提供される。
【0033】
破壊された生体物質の溶液を清澄化し、そこから標的核酸を単離する両方で磁性粒子を使用する場合、清澄化と単離用に同一タイプの粒子か又は異なったタイプの粒子を使用できる。この開示の目的のため、かつ本発明のフレキシビリティーを強調するため、破壊された生体物質の溶液を清澄化するために使用する粒子を第1の磁性粒子と呼び、標的核酸を単離するために使用する粒子を第2の磁性粒子と呼ぶ。
【0034】
標的核酸がプラスミドDNAである場合、第2の磁性粒子は、該プラスミドDNAで形質転換された細菌の清澄化ライセートに直接添加することができ、このライセートは、アルカリ溶解後上述した第1の磁性粒子を用いた清澄化によって生成される。本発明での使用に好適なアルカリ溶解手順については、Sambrookら,分子クローニング,第1巻,第2版(1989年Cold Spring Harbor Laboratory Press出版),1.25〜1.28ページ、及び技術報告第202、205、及び259号(Promega Corp.)に記述されている。第2のシリカ磁性粒子がpH依存性イオン交換粒子である場合、上述のように調製されたライセート溶液からのプラスミドDNAは、マトリックスの全体的な電荷が正であり、かつ電荷密度が第1のpHでプラスミドDNAがマトリックスのイオン交換リガンドとアニオン交換に関与できるのに十分な高さであるならば、pH依存性イオン交換粒子と混合されるとすぐに複合体を形成する。一度マトリックスに吸着されて複合体が形成されると、この複合体は、そのプラスミドDNAが洗浄工程の間中マトリックスに吸着されたままであることを確実にするように設計された緩衝液及び塩溶液条件の洗浄溶液中で洗浄され、その間に少なくとも1種の汚染物を除去することができる。最終的には、ライセート溶液及び洗浄溶液のpHより高い第2のpHの溶出緩衝液と複合体を混ぜることによって、複合体からプラスミドDNAが溶出される。ここで、第2のpHは、マトリックスからのプラスミドDNAの脱着を促進するのに十分高い。
【0035】
本発明の材料及び方法を用いて、限定するものではないが、血液、精液、膣細胞、毛、頬組織、唾液、組織培養細胞、植物細胞、胎盤細胞、又は羊水及び体液の混合物に存在する胎児細胞を含む生きている組織からゲノムDNAを単離することができる。標的核酸がゲノムDNAである場合、組織を破壊して標的ゲノムDNAを該組織内の他の物質との連関から離す必要があり、そうすると標的ゲノムDNAが第1のpHの溶液の存在でpH依存性イオン交換マトリックスに付着できる。その結果生じるマトリックスとゲノムDNAとの複合体は、その破壊された組織かつ洗浄されて付加混入物が除去される(必要ならば)。そして、複合体を第1のpHより高い第2のpHの溶出溶液と混ぜることによって、ゲノムDNAが複合体から溶出される。
【0036】
以下、限定的でない実施例によって本発明の種々の実施形態を教示する。これら実施例、及び本明細書及び特許請求の範囲のどこでも、特に言及しない限り室温における体積及び濃度である。以下の実施例で使用される磁性シリカ粒子は、すべて一般的な好ましい寸法及び好ましいと上述したシリカ質オキシド被膜を有する多孔性又は非多孔性MagneSilTM粒子である。さらに具体的には、以下の実施例で使用される多孔性MagneSilTM粒子は、以下の特性を有する粒子の2つのバッチのどちらかから取られた:(1)55m2/gの表面積、直径<600Åの粒子では0.181ml/gの孔容積、直径>600Åの粒子では0.163ml/gの孔容積、5.3μmの平均粒径、及び上述したようにICPで測定された場合2.8ppmの鉄浸出;又は(2)49m2/gの表面積、0.160ml/gの孔容積(直径<600Å)、0.163ml/gの孔容積(直径>600Å)、5.5μmの平均粒径、及び2.0ppmの鉄浸出。
【0037】
本発明の技術の専門家は、本開示の教示を利用して、以下の実施例で本発明の方法及びキットを説明するために用いたシリカベースの磁性粒子及びイオン交換磁性粒子以外の磁性粒子を選択し、かつ使用できるだろう。
実施例は、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではない。細胞を集め、破壊された生体物質の溶液を清澄化し、かつ破壊された生体物質から標的核酸を単離するための他の磁性シリカ粒子及び本発明でそれらを使用することは、クロマトグラフィー分離及び分子生物学の技術の当業者には明かだろう。
【0038】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明の種々の局面を説明するために与えられる。
(実施例1−ゲル電気泳動)
以下の実施例で述べる手順に従って単離された標的核酸の試料を、非標的核酸の混入と大きさについて次のように分析した。試料を適宜の密度のアガロースゲル上で分画した(例えば、1.0%アガロースゲルを用いてプラスミドDNAを分析し、1.5%アガロースゲルを用いてRNAを分析した)。分画された核酸を、蛍光識別を用いて、又は臭化エチジウム若しくは銀染色法のようなDNA感受性染料でゲルを染色することによって可視化した。その結果分画され、可視化された核酸を撮影するか又は蛍光イメージャー(fluorimager)で可視化して、その結果得られた画像をレーザープリンターで印刷した。
【0039】
時には、サイズ標準物質を標的核酸と同一のゲル上で分画し、標的核酸の近似サイズを決定するのに使用した。ゲル分析を行った場合はいつでも、非標的核酸の混入について、その分画された核酸の写真又は蛍光画像を調べた。例えば、プラスミドDNAの分画試料の画像では、同一ゲル上をDNAよりかなり速く流れるRNAについて、また同一ゲル上をプラスミドDNAよりかなり遅く流れる染色体DNAについて調べた。単離されたプラスミドDNAの画像を調べて、その画像に示されているプラスミドDNAの大部分が無傷の高次コイルプラスミドDNAであるかどうかも決定した。
【0040】
(実施例2−吸収分光光度法)
後述するように、種々の媒体から単離された標的核酸の試料は、吸収分光光度法によっても分析した。吸収値は、260、280、及び230ナノメーター(nm)の波長で測定した。その測定値からA260/A280吸収比率を計算した。1.80以上のA260/A280吸収比率は、そこで分析された試料が比較的タンパク質混入がないことを示すと解釈される。各試料中の核酸の濃度は、260nmにおける吸収表示度数(A260)から決定した。
【0041】
(実施例3−グリシジル−ヒスチジン及びグリシジル−アラニンシリカ磁性イオン交換粒子の合成)
以下の手順に従い、種々の2つの異なったpH依存性イオン交換リガンド、グリシジル−ヒスチジン及びグリシジル−アラニンを、多孔性シリカ磁性粒子に付着させた。ここで述べるように合成されたシリカ磁性pH依存性イオン交換粒子を用いて、後述する実施例で述べるように、細胞を集め、ライセートを清澄化し、又は標的核酸を単離した。
【0042】
A.グリシジル修飾シリカ磁性粒子の調製
1.一晩中減圧下110℃で加熱することによって、シリカ磁性粒子を活性化した。
2.その活性化粒子10gをフラスコ内で100mlのトルエンに懸濁させ、そこに3.2mlの3−グリシジルプロピル−トリメトキシシランを添加した。
3.その混合物を含んだフラスコにコンデンサーを取り付け、反応を5時還流させた。反応混合物を室温に冷却後、室温で48時間静置した。
4.反応混合物をろ過し、還流反応で生成されたグリシジル−修飾シリカ磁性粒子を含む残留物をトルエン(2×100ml)、ヘキサン(2×100ml)及びエチルエーテル(1×150ml)で洗浄した。その洗浄生成物を空中に放置して乾燥した。
5.その生成物の小部分を110℃のオーブンでさらに乾燥し、元素分析に供した。その結果(%C 0.75;%H 0.58)は、下記式(I)に示されるようなシリカ粒子のグリシジル修飾と一致する。ここで、また後述する残りの実施例で示されるこの式及び他の式中の波線は固相、この特定の実施例では多孔性シリカ磁性粒子の表面を表す。
【化1】
Figure 0004551568
式中、Rは−OH、OCH3、又は−OCH2CH3である。
6.上述したように生成されたグリシジル−修飾シリカ磁性粒子を、後述するように、グリシジル部分の末端環と反応させることによって、ヒスチジン、アラニン、又はシステインのようなアミノ酸をその粒子に連結してさらに修飾した。
【0043】
B.グリシジル−ヒスチジン修飾シリカ磁性粒子の合成
1.2.0gのD,L−ヒスチジンを、20mlのテトラヒドロフランと20mlの水との混合物に入れ、その溶液を加熱還流して溶解した。
2.この溶液に、2gのグリシジル−修飾シリカ磁性粒子を添加し、その結果の懸濁液を一晩中(18時間)還流させた。
3.反応混合物を室温に冷却後、ろ過し、グリシジル−ヒスチジン修飾シリカ粒子を含む残留物を100mlのアセトンで1回、150mlの水で3回、かつ150mlのエーテルで1回洗浄した。その固体を空気乾燥した。
4.工程3で得られた乾燥固体の小部分を110℃でさらに乾燥し、元素分析に供した。結果:%C 1.35;%H 0.68;%N 0.50。この結果は、下記式(II)に示されるような、グリシジル−ヒスチジン結合と一致する。
【化2】
Figure 0004551568
式中、Rは−OH、OCH3、又は−OCH2CH3である。
【0044】
C.グリシジル−アラニン修飾シリカ磁性粒子の合成
1.3−(3−ピリジル)−D−アラニン(1g)を20mlの水に溶解した。
2.この溶液に、2gのグリシジル−修飾シリカ磁性粒子を添加し、その結果の混合物を一晩中還流させた。
3.反応混合物を室温に冷却後、ろ過し、エーテルで1回洗浄した。
4.工程3の生成物の試料の元素分析は、以下のとおりだった:%C 0.98;%H 0.56;%N 0.20。この結果は、下記式(III)に示されるような、グリシジル−アラニン修飾と一致する。
【化3】
Figure 0004551568
式中、Rは−OH、OCH3、又は−OCH2CH3である。
【0045】
(実施例4−プラスミドDNAのライセートの調製)
大腸菌細胞、DH5α株をpGL3制御ベクター(Promega)プラスミドDNAで形質転換し、37℃のルリアブロス(“LB”)培地で一晩中成長させて、遠心分離で収集した。
次の溶液を用いて、後述するように、収集した細胞のライセートを調製した。
細胞再懸濁溶液:
50mMトリス−HCl、pH7.5
10mM EDTA
100μg/ml DNアーゼ−フリーリボヌクレアーゼA(RNアーゼA)
Wizard(登録商標)中和緩衝液(Promega Corp.):
1.32M KOAc(酢酸カリウム)、pH4.8
細胞溶解溶液:
0.2M NaOH
1%SDS(ナトリウムドデシルサルフェート)。
【0046】
以下のように、形質転換細胞のライセートを生成した。
1.微細遠心機中、最高速度で1〜10mlの細菌培養を1〜2分間遠心分離して細胞を収集した。収集した細胞を250μlの細胞再懸濁溶液に再懸濁させ、微細遠心分離管に移した。細胞が再懸濁された溶液は濁っていた。
2.その再懸濁細胞の溶液に250μlの細胞溶解溶液を添加し、溶液が比較的透明になり、すなわち再懸濁細胞が溶解したことを示すまで逆さにして混合した。
3.そのライセート溶液に350μlのWizard(登録商標)中和緩衝液を添加し、逆さにして混合した。中和溶液を添加後ライセートは濁った。
上述したように調製した各試料を、以下の実施例で述べるように、遠心分離(対照試料)によって、又はシリカ磁性粒子若しくはシリカ磁性イオン交換粒子(検査試料)を用いて清澄化した。
【0047】
(実施例5−遠心分離又はシリカ磁性粒子によるライセート清澄化、その後のグリシジル−ヒスチジン又はグリシジル−アラニンシリカ磁性粒子を用いたプラスミドDNAの単離)
A.清澄化ライセートの調製
一晩LBに代えてCirclegrow培地で24時間培養すること以外、上記実施例4に記載されているように、DH5α(pGL3)の1ml培養のライセートの4試料を調製した。その試料のうちの2つは遠心分離で清澄化した。他の2試料は、ライセートを150μlのシリカ磁性粒子(100mg/ml)と混合し、ライセート中のデブリが粒子に吸着するまでその混合物をボルテックスし、かつ磁気分離器を用いて、磁力でその溶液からシリカ磁性粒子を分離することによって清澄化した。
【0048】
B.清澄化ライセートからプラスミドDNAの単離
清澄化ライセートの試料から以下のようにプラスミドDNAを単離した。
1.両セットの試料から得られた清澄化ライセート溶液を、グリシジル−ヒスチジンシリカ磁性イオン交換粒子(以後、“Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン”粒子)か、又はグリシジル−アラニンシリカ磁性イオン交換粒子(以後、“Mag-IE-グリシジル-アラニン粒子”)のどちらかが150μl入っている無菌管に移し、ボルテックスによって混合した。Mag-IE-グリシジル-アラニン及びMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子は、上記実施例3で述べたように生成した。
2.DNAが粒子に結合するのに5分待った後、その溶液を磁気ラック上に置いて2分間静置し、溶液を除去した。
3.粒子を1.0mlのナノピュア水中に再懸濁させ、管を逆さにして側壁及びキャップを洗い流し、磁気分離器中に戻し、反転させて管のキャップを洗い流して懸濁粒子を除去した。
4.全部で4回洗浄するため、工程3(水洗浄)を3回繰返した。
5.管から溶液を取り出し、(1)Mag-IE-グリシジル-ヒスチジンに対しては10mM トリス−HCl pH8.5、又は(2)Mag-IE-グリシジル-アラニンに対しては20mM トリス−HCl pH9.5を用いてDNAを溶出した。
【0049】
C.分析結果
実施例2で述べたように、各溶出試料について分光光度的分析を行った。Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子溶出液から得られた分光光度的結果は、DNAの収量26μgかつ高純度を示し、A260/A280比は1.85だった。Mag-IE-グリシジル-アラニン粒子溶出液から得られた分析結果は、DNAの収量25μgとA260/A280比1.90を示し、上記のもう一種のIE粒子から得られた溶出液に匹敵する純度を示している。
上述のように生成された全溶出液は、上記実施例1で述べたようにゲル電気泳動法によっても分析した。各試料で無傷のプラスミドDNAが検出され、どの試料も分解又はRNA混入の証拠はなかった。
【0050】
(実施例6−シリカ磁性粒子又は量を変えたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子によるライセート清澄化)
以下に述べる分析を行って、少量のシリカ磁性イオン交換粒子が、そこから無傷のプラスミドDNAを単離可能なほど十分効率的に、すなわち実質的に混入物がないようにライセートを清澄化できるかを決定した。4mgのシリカ磁性粒子で清澄化したライセートを対照として用いた。Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用いて、後述する同一の手順によって対照及び検査試料の両方の清澄化ライセートからプラスミドDNAを単離した。
【0051】
A.ライセート清澄化
シリカ磁性粒子及び量を変えたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用いて、以下のように清澄化ライセートを調製した。以下の全工程は、1.5ml管中、室温で行った。
1.pGEM-3Zf+プラスミドDNAで形質転換されたDH5α大腸菌の50ml一晩培養の遠心分離によって収集された細胞のペレットを、2.5mlのWizard(登録商標)再懸濁溶液に再懸濁させた。
2.8本の各管に265μlの再懸濁細胞を添加した。
3.再懸濁細胞の各管に250μlのWizardTM溶解溶液を添加し、穏やかに混合して、ゲノムDNAが向きを変える(sheering)可能性を回避した。
4.溶解された細胞の各管に350μlのWizard中和溶液を添加し、穏やかかつ完全に混合した。
5.工程4の試料の6つに、以下のようにMag-IE-ヒスチジン粒子(100mg/ml)を添加した:ライセート管毎に(二通りに)10μl又は20μl又は40μl。残りの2試料にそれぞれ40μlのシリカ磁性粒子(100mg/ml)を添加した。全試料をボルテックスによって完全に混合した。
6.生成した粒子/細胞デブリ複合体を、磁気分離器を用いて各管内でライセートから分離した。各管を逆さにして管のキャップを4回洗い流した。管を1分間静置した。
【0052】
B.DNA単離
上記各清澄化ライセート試料から、以下に述べるようにDNAを単離した。
1.上記の各清澄ライセート溶液試料を、150μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン(100mg/ml)が入っている無菌1.5ml管に移し、ボルテックスし、5分間静置した。
2.その結果得られたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン/DNA複合体を、磁気分離器を用いて各管内で溶液から分離した。逆さにして管のキャップを4回洗い流した。管を1分間静置した。
3.各管から液体を除去して捨てた。
4.以下のように、ナノピュア水で粒子を洗浄した。各管に1.0mlのナノピュア水を添加し、その中で粒子を再懸濁させる。磁気分離器を用いて、各管内で溶液からMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を分離した。逆さにして管のキャップをそれぞれ4回洗い流した。管を1分間静置した。磁気分離器を用いて各管及びキャップから液体を除去して捨て、各管中に粒子を保持しながら洗浄溶液を捨てた。
5.工程4を2回繰返し、全部で3回洗浄した。
6.各管に100μlの10mM トリスHCl、pH8.0を添加し、ボルテックスによってその中に粒子を再懸濁させた。
7.各管中に生じた溶出溶液から得られた粒子からプラスミドDNAを磁気的に分離し、無菌管に移した。
【0053】
C.分析結果
上述したように生成された各溶出液試料を、実施例2で述べたように分光光度的に分析した。分析結果を下表1にまとめた。
Figure 0004551568
【0054】
上述したように分光光度的分析で検査した試料は、実施例1で述べたように、ゲル電気泳動法によっても分析した。図1は、ゲル電気泳動で分画し、臭化エチジウムで染色した後の上記各溶出液試料の写真を示す。上表1に示した同順で、ゲル上に左から右に試料を装填した。どの試料もいかなる明白なRNAも示さず、プラスミドDNAバンドの強度は吸光分析で得られたデータと一致している(実施例2で述べたように)。
【0055】
(実施例7:遠心分離による場合に対するシリカ磁性粒子を用いたライセート清澄化、その後のシリカ磁性粒子を用いた清澄化ライセートからのプラスミドDNAの単離)
以下の分析では、遠心分離又はシリカ磁性粒子を用いて、同一形質転換体の一晩培養の量を変えた細胞ライセートを清澄化した。そして、シリカ磁性粒子を用いて各清澄化ライセート溶液からプラスミドDNAを単離し、後述するように試験した。
【0056】
A.ライセートの清澄化
1.DH5α(pGL3)の一晩培養を6度繰り返し、遠心分離して1.5ml管に1.0ml、2.0ml、及び3mlの細胞ペレットを得た。各管に、250μlの再懸濁緩衝液を加え、ボルテックスによって細胞を再懸濁させた。
2.管ごとに250μlのWizard溶解溶液を添加し、穏やかに混合してゲノムDNAが向きを変えないようにした。
3.管ごとに350μlのWizard中和溶液を添加し、穏やかかつ完全に混合した。
4.1セットの3通りの試料につき、管を12,000Xgで10分間遠心分離してライセートデブリを清澄化した。その清澄化された上清を無菌の1.5ml管に移し、以下のセクションBで述べるように処理した。
5.別セットの3通りの試料については(3つの1.0ml、3つの2ml、3つの3ml)、ライセート管ごとに50μlの再懸濁シリカ磁性粒子(100mg/ml)を添加し、完全にボルテックスした。
6.その結果生じた粒子/細胞デブリ複合体を、磁性分離器を用いて管内で溶液から分離した。逆さにして(4×)管のキャップを洗い流した。管を1分間静置した。その結果の清澄化ライセートを各管から移し、以下のセクションBで述べるように処理した。
【0057】
B.清澄化ライセートからのDNAの単離
1.上記の工程4及び6で生成された清澄化溶液をそれぞれ200μlの5.0Mグアニジンチオシアネートが入っている無菌1.5ml管に入れ、ボルテックスした。管ごとに50μlのシリカ磁性粒子(15mg)を添加し、ボルテックスし、10分間静置した。
2.その結果得られたシリカ磁性粒子/DNA複合体を、磁気分離器を用いて各管内で溶液から分離した。管を逆さにして管のキャップを4回洗い流し、分離器内で1分間静置した。
3.キャップを含む各管から液体を除去して捨てた。
4.1mlの60mM KOAc/10mM トリス−HCl(pH7.5、25℃)/60%エタノールで各管を洗浄し、ボルテックスによって粒子を再懸濁させた。
5.磁気分離器を用いて、管内でその洗浄溶液からシリカ磁性粒子/DNA複合体を分離した。管を逆さにして管のキャップを4回洗浄し、分離器内で1分間静置した。
6.管及びキャップから液体を除去して捨てた。
7.工程4〜6を繰返し、全部で2回洗浄した。
8.管を30分間空気乾燥させて、残存エタノールを除去した。
9.管ごとに100μlのナノピュア水を添加し、ボルテックスして粒子を完全に再懸濁させた。周囲温度で10分後、管を磁気分離器内に入れ、その結果生じた溶出液を無菌の1.5ml管に移した。
【0058】
C.分析結果
上記実施例3に記載されるように、各試料から得られた溶出液を吸収分光光度計で、230、260、及び280nmにおいて分析した。上述したように調製された各セットの3試料の溶出液から得られた試験結果の平均値を下表2に示した。
Figure 0004551568
上表2に示される結果は、遠心分離又はシリカ磁性粒子のどちらかによって清澄化されたライセートの同一容量から、比較できるほどのプラスミドDNAが単離されることを示している。上述した2つの各手段で溶解かつ清澄化された同一容量の培養から単離された試料のA230及びA260/A280測定値は、両方の単離方法によって、低分子量アルコール又はタンパク質によるコンタミネーションが無いと思われる単離DNAを生成されたことを示している。
【0059】
上述したように単離されたプラスミドDNAの各試料は、実施例1で述べたようにアガロースゲル電気泳動法によっても分析した。最初に、その上に上記試料が装填されたアガロースゲルで、プラスミドDNAがゲル中に移動し、各試料内に存在するいずれのRNAからも分離されるのに十分な時間だけ行った。図2は、臭化エチジウムでゲルを染色した後、この初期段階のUV光下撮られたゲルの写真である。図2に示されるいずれのレーンのゲルにもRNAコンタミネーションの徴候がないことは明かである。そして、同じゲルをさらなる時間電気泳動させて、そのゲル上に装填された各試料中のいずれの染色体DNAからも、プラスミドDNAが分離できるようにした。図3は、ゲルがより長い時間実験作業された後、上記と同一条件下で撮られた同一ゲルの写真である。図3により、いずれのレーンのゲルにも染色体DNAによるコンタミネーションの徴候が無いことは明かである。
【0060】
(実施例8:Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用いた集細胞、ライセート清澄化、及びDNA単離)
以下のように、Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用いて、溶解前に細胞を集め、その集めた細胞を溶解したらすぐにそのライセートを清澄化し、かつその結果の清澄化ライセートからDNAを単離した。
【0061】
A.集細胞
1.50μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン懸濁液を、2本の1.5ml管にそれぞれ分割した。
2.DH5α/pGem3Zf+の一晩培養500μlを、工程1で調製した2つの管に分割した。これら2つの試料を、以下の工程4〜6で述べるように処理して細胞を収集した。
3.工程2で用いたのと同じ培養の500μlも、1.5mlのからの遠心分離管にそれぞれ分割し、遠心機内で回転させて細胞を収集した。上清を捨て、以下のセクションBで述べるように収集された細胞を処理した。
4.Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン及び一晩培養の各管に300μlの5M NaClを添加し、完全に混合した。
5.800μlの室温のイソプロパノールを各管に添加し、最終濃度が94M NaCl/50%IPAになるように完全に混合した。
6.生じたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン/細胞複合体を、磁気分離器内で各管中の溶液から分離した。その溶液を捨て、収集された細胞を以下のセクションBで述べるように処理した。
【0062】
B.ライセート清澄化及びDNA単離
1.遠心機内のペレット化細胞を有する管と、Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子と複合された細胞を有する管の両セットの管に、250μlのWizard再懸濁溶液を添加した。両者とも、細胞が各溶液中に再懸濁するまで完全に溶液を混合した。
2.各管に250μlのWizard溶解溶液を添加し、穏やかに混合して、ゲノムDNAが向きを変えないようにした。
3.350μlのWizard中和溶液を添加し、穏やかかつ完全に混合した。
4.生じたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン/細胞デブリ複合体を、磁気分離器を用いて各管内でそのライセートから分離した。
5.それぞれ清澄化されたライセート溶液を、50μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジンが入っている無菌の1.5ml管に移し、室温で2分間インキュベートし、DNAが粒子に付着できるようにした。
6.生じたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン/DNA複合体を、磁気分離器を用いて各管中の溶液から分離した。
7.管内の液体を除去し、捨てた。
8.各管を1.0mlのナノピュア水で洗い流し、その中に粒子を再懸濁させた。磁気分離器を用いて、各管中の水から粒子を分離した。その液体を除去して捨てた。
9.工程8を3回繰り返し、全部で4回洗浄した。
10.それから、100μlの20mM トリスpH9.5、溶出緩衝液を各管に添加した。溶出緩衝液中に粒子を再懸濁させた。
11.その結果生じた溶出溶液から、磁力を使ってMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を分離した。
【0063】
C.分析結果
上述したように、遠心分離又はMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子のどちらかによって集められた細胞から単離されたDNAの4試料は、上記実施例1で述べたように、分光光度的にも分析した。分光光度的分析の結果を下表3に示した。
Figure 0004551568
【0064】
(実施例9:Mag-IE-グリシジル-ヒスチジンを用いたマウス組織ホモジネートの清澄化、及びそこからのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用いたDNA及びRNAの単離)
以下の手順を使って、凍結マウスの肝臓、腎臓、及び脾臓組織のホモジネートを清澄化し、そこからRNA及びDNAを単離した。
A.ホモジネート清澄化
1.各組織の試料を4.5Mグアニジンチオシアネート(GTC)/132mM KOAc pH4.8の溶液中で均質化した。ここで、各1mgの組織に対して、1μlの均質化溶液を用いた。120mgの肝臓、320mgの腎臓、及び142mgの脾臓を均質化した。
2.その結果均質化された混合物を、マウス肝臓では7倍(7×)のRNアーゼの無いナノピュア水、腎臓では6倍(6×)のRNアーゼの無いナノピュア水、及び脾臓では12倍(12×)のRNアーゼの無いナノピュア水で希釈した。ナノピュア水(肝臓=840μl、脾臓=1.7ml、及び腎臓=1.9ml)の添加後、各試料をボルテックスした。
3.“1/2×”量のMag-IE-グリシジル-ヒスチジン(100mg/ml)を各溶液に添加し、ボルテックスした。その結果生じた混合物を10分間磁気的に分離した。
【0065】
B.清澄化ホモジネートからの核酸の単離
1.上述したようにMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子から分離された各清澄化溶液の1アリコートを、Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子が入っている無菌管に移した。肝臓と脾臓の試料については、100μlの清澄化溶液を100μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン(100mg/ml)に添加し、その混合物をボルテックスして2分間静置し、それから磁気分離器内で2分間静置した。腎臓の試料については、400μlの清澄化溶液を1mlのRNアーゼの無いナノピュア水に添加し、それから100μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン(100mg/ml)を添加し、その混合物をボルテックスして2分間静置し、それから磁気分離器内で2分間静置した。
2.そして、各管から溶液を除去し、各管を1.0mlのRNアーゼの無いナノピュア水で洗浄し、ボルテックスし、かつ分離器内に戻した。磁気ラック内で管を逆さにして管のキャップを洗い流した。2分後、その洗浄溶液を除去した。この洗浄工程を2回繰返し、全部で3回洗浄した。
3.100μlの10mM トリスHCl、pH9.5中に核酸を溶出した。
【0066】
C.分析結果
その溶出されたDNA及びRNAを、図4、5、及び6に示されるようにゲル電気泳動法(実施例1参照)によって可視化した。図4は、上述したように単離されたマウス肝臓のDNA及びRNAの写真を示し、λ Hind IIIマーカーを伴うゲル電気泳動によって分画されている。DNAもRNAの共に各溶出液に存在しているようである。
図5は、上述したようにマウスの脾臓及び腎臓から単離されたDNA及びRNAの、ゲル電気泳動による分画後を示す。ゲル上に装填された試料は以下のとおりである。
レーン1;λ Hind IIIマーカー
レーン2;脾臓、0μl除去
レーン3;脾臓、20μl除去
レーン4;脾臓、40μl除去
レーン5;脾臓、すべて除去
レーン6;λ Hind IIIマーカー
レーン7;腎臓、0μl除去
レーン8;腎臓、20μl除去
レーン9;腎臓、すべて除去
レーン10;λ Hind IIIマーカー
図6は、上述したように単離され、DNアーゼによる消化及びゲル電気泳動による分画後のマウス肝臓のRNA及びDNAの試料を示す。レーン1及び4は、λ Hind IIIマーカーを含み、レーン2及び3は、上記手順に従い、それぞれ200μl及び400μlのホモジネートから単離されたマウス肝臓の核酸を含む。
【0067】
(実施例10:ヒト全血を用いたMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子、非多孔性Magnesil-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子、及びMagnesilTM粒子による全血からの白血球の集中、ライセート清澄化、及びDNA単離)
Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子、非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子及びMagnesilTM粒子を用いて、(a)白血球を集め、その集めた細胞を溶解させてすぐにそのライセートを清澄化し、かつその結果の清澄化ライセートからDNAを単離するか、又は(b)遠心分離で集めた白血球から生成されたライセートを清澄化し、そのライセートを清澄化し、かつその結果の清澄化ライセートからDNAを単離した。
【0068】
A.イオン交換洗浄を伴うMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子の使用
血液ライセートの磁気的な清澄化及びゲノムDNAの精製は、PromegaのWizardゲノムDNA精製キット(Promegaの技術マニュアル#TM50参照)にある溶液、及びMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用い:すべての工程は室温で行った。以下のように、イオン交換洗浄と共にMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を使用して白血球を集め、白血球のライセートを清澄化し、そこからゲノムDNAを単離した。
1.1.0mlの血液を3.0mlのWizardゲノム細胞溶解溶液が入っている15ml管に入れ、混合し、10分間インキュベートした。
2.1.0mlの5.0M NaClを添加し、混合した。
3.Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子の100mg/ml溶液50μlを管に添加し、混合した。
4.5.0mlのイソプロパノールを添加して混ぜ、2分間インキュベートしてから5分間磁気ラック上に置いた。
5.溶液を除去して捨てた。
6.管を磁気ラックから取り出し、5秒間ボルテックスした。
7.1.0mlの核溶解溶液を添加し、管を5秒間ボルテックスし、5分間インキュベートした。
8.330μlのWizardゲノムタンパク質沈降溶液を添加し、管を5秒間ボルテックスし、管を5分間磁気ラック上に置いた。
9.この清澄化ライセート溶液を、この第1の管から取り出し、200μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子(100mg/ml)が入っている第2の管に入れ、混合した。
10.0.5mlの0.5Mクエン酸ナトリウム、pH5.0(pHはクエン酸で5.0に調節される)を添加し、その溶液を混ぜた。8.0mlのナノピュア水を添加し、その溶液を混ぜ、管を1分間インキュベートして、2分間磁気ラック上に置いた。
11.溶液を除去して捨てた。
12.5.0mlの66mM 酢酸カリウム、pH4.8(pHは酢酸で調節される)を添加し、管を5秒間ボルテックスして、2分間磁気ラック上に置いた。
13.溶液を除去して捨て、2.0mlの66mM 酢酸カリウム/600mM NaCl、pH4.8を添加し、管を混ぜ、2分間磁気ラック上に置いた。
14.溶液を除去して捨てた。
15.2.0mlの66mM 酢酸カリウム、pH4.8、450mM NaClを添加し、管を5秒間ボルテックスして、2分間磁気ラック上に置いた。
16.溶液を除去して捨てた。
17.10mlのナノピュア水を添加し、混ぜ、管を2分間磁気ラック上に置き、その後溶液を捨てた。
18.工程17を2回繰返し、全部で3×10mlのナノピュア水洗浄をした。
19.磁気ラックから取り出した後、400μlの90mM トリスHCl、pH9.5中に5分間DNAを溶出した。そして、管を5分間磁気ラック上に置いた。
【0069】
Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子は、遠心分離で単離された白血球のライセートを清澄化した後、そこから同一粒子を用いてゲノムDNAを単離するのにも使用された。工程2〜4が、10分間の800Xgの遠心分離後、その溶解された赤血球デブリの除去、及びその細胞ペレットをボルテックスして白血球を再懸濁すること以外、上記と同様の手順を用いた。また、工程8では、ボルテックス工程後、管を磁気ラック中に載置する前に、50μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を加え、次いで5秒ボルテックスした。
【0070】
B.MagneSilTM粒子及びグアニジンチオシアネート
PromegaのWizard(登録商標)ゲノムDNA精製キットにある溶液とMagneSilTM粒子を用いた血液ライセートの磁気的清澄化及びゲノムDNAの精製:後述するようなグアニジンチオシアネート手順。すべての工程は室温で行った。
1.1.0mlの血液を3.0mlのWizardゲノム細胞溶解溶液が入っている15ml管に入れ、混合し、10分間インキュベートした。
2.1.0mlの5.0M NaClを添加し、混合した。
3.50μlのMagneSilTM粒子(100mg/ml)を管に添加し、混合した。
4.5.0mlのイソプロパノールを添加して混ぜ、2分間インキュベートしてから5分間磁気ラック上に置いた。
5.溶液を除去して捨てた。
6.管を磁気ラックから取り出し、5秒間ボルテックスした。
7.1.0mlの核溶解溶液を添加し、管を5秒間ボルテックスし、5分間インキュベートした。
8.330μlのWizardゲノムタンパク質沈降溶液を添加し、管を5秒間ボルテックスし、管を5分間磁気ラック上に置いた。
9.200μlのMagneSilTM粒子(100mg/ml)を無菌管に添加し、1分間磁気ラック上に置き、溶液を除去した。この管に、工程8の管から清澄化されたライセート溶液を添加し、混合した。
10.2.0mlの5Mグアニジンチオシアネート(GTC)を添加し、管を混合し、2分間インキュベートし、5分間磁気ラック上に置いた。
11.溶液を除去して捨てた。
12.5.0mlのSV全RNAカラムウォッシュを添加し、管を5秒間ボルテックスして、2分間磁気ラック上に置いた。
13.溶液を除去して捨てた。
14.工程12〜13を繰返し、全部で2回洗浄した。
15.5.0mlの80%エタノールを添加し、管を5秒間ボルテックスして、管を2分間磁気ラック上に置いた。
16.溶液を除去して捨てた。
17.工程15〜16を2回繰返し、全部で3回洗浄した。
18.管を磁気ラック内で60分間空気乾燥した。
19.磁気ラックから取り出した後、400μlのWizardゲノム再生溶液中に5分間DNAを溶出した。そして、管を5分間磁気ラック上に置いた。
20.そのDNA含有溶液を無菌管に取り出した。
【0071】
遠心分離による白血球の単離については、ライセートの清澄化及びMagneSilTM粒子によるDNAの単離が続く:工程2〜4は、10分間の800Xgの遠心分離後、その溶解された赤血球デブリの除去、及びその細胞ペレットをボルテックスして白血球を再懸濁させた。さらに、工程8では、ボルテックス工程後、管を磁気ラック中に載置する前に、50μlのMagneSilTM粒子を加え、次いで5秒ボルテックスした。
【0072】
C.非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子及びイソプロパノール
以下のような、PromegaのWizard(登録商標)ゲノムDNA精製キットにある溶液及び非多孔性MagneSil-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を用いた血液ライセートの磁気的清澄化及びゲノムDNAの精製。すべての工程は室温で行った。
1.1.0mlの血液を3.0mlのWizardゲノム細胞溶解溶液が入っている15ml管に入れ、混合し、10分間インキュベートした。
2.1.0mlの5.0M NaClを添加し、混合した。
3.100mg/mlの非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン溶液100μlを管に添加し、混合した。
4.5.0mlのイソプロパノールを添加して混ぜ、2分間インキュベートしてから5分間磁気ラック上に置いた。
5.溶液を除去して捨てた。
6.管を磁気ラックから取り出し、5秒間ボルテックスした。
7.1.0mlの核溶解溶液を添加し、管を5秒間ボルテックスし、5分間インキュベートした。
8.330μlのWizardゲノムタンパク質沈降溶液を添加し、管を5秒間ボルテックスし、管を5分間磁気ラック上に置いた。
9.この清澄化ライセート溶液をこの第1の管から取り出し、20mgの非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン(200μlの100mg/ml)が入っている第2の管に入れ、磁気ラック上に置き、溶液を除去し、混合した。
10.1.0mlのイソプロパノールを添加し、その溶液を混合し、2分間インキュベートしてから2分間磁気ラックに置いた。
11.溶液を除去して捨てた。
12.2.0mlの66mM 酢酸カリウム、pH4.8(pHは酢酸で調節される)を添加し、管を5秒間ボルテックスして、1分間インキュベートし、かつ2分間磁気ラック上に置いた。
13.溶液を除去して捨てた。
14.2.0mlのナノピュア水を添加し、混合し、管を2分間磁気ラック上に置き、その後溶液を捨てた。
15.工程14を2回繰返し、全部で3×2mlのナノピュア水洗浄をした。
16.磁気ラックから取り出した後、400μlの90mM トリスHCl、pH9.5中に5分間DNAを溶出した。そして、管を5分間磁気ラック上に置いた。
17.そのDNA含有溶液を無菌管に取り出した。
【0073】
遠心分離による白血球の単離については、ライセートの清澄化及び非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジンによるDNAの単離が続く:工程2〜4は、10分間の800Xgの遠心分離後、その溶解された赤血球デブリの除去、及びその細胞ペレットをボルテックスして白血球を再懸濁させた。さらに、工程8では、ボルテックス工程後、管を磁気ラック中に載置する前に、100μlのNP-Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を加え、次いで5秒ボルテックスした。
【0074】
D.MagneSil-IE-グリシジル-ヒスチジン及びイソプロパノール
上述の“非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン及びイソプロパノール”法は、多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子でも使用した。この手順での唯一の変化は、工程3で100μlの非多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子に代えて50μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を使用し、かつ工程8で多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を使用することである。
遠心分離による白血球の単離については、Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子によるライセートの清澄化及びDNAの単離が続く:工程2〜4は、10分間の800Xgの遠心分離後、その溶解された赤血球デブリの除去、及びその細胞ペレットをボルテックスして白血球を再懸濁させた。さらに、工程8では、ボルテックス工程後、管を磁気ラック中に載置する前に、50μlのMag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子を加え、次いで5秒ボルテックスした。
【0075】
E.分析結果
260/A280データ及びDNA収量は、以下を除きUV分光光度法で計算した。多孔性Mag-IE-グリシジル-ヒスチジン粒子の白血球集中試料は、ゲル電気泳動法による測定値を使用し、以下に“(ゲル)”で表示した。これら結果を下表4にまとめた。
Figure 0004551568

【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例6で述べられているように、MagneSilTM粒子(Promega)又は量を変えたMagIE−グリシジル−ヒスチジン粒子で単離し、ゲル電気泳動で分画し、かつ臭化エチジウムで染色して可視化されたプラスミドDNA試料の写真である。
【図2】 実施例7で述べられているように、量を変えた大腸菌DH5α細胞の形質転換体の培養から、MagneSilTM粒子(Promega社)(“Mag”)で遠心分離(“Spin”)を用いて単離後、短行程ゲルを用いたゲル電気泳動で分画し、かつ臭化エチジウムで染色して可視化されたプラスミドDNA試料の写真である。
【図3】 電気泳動が長時間継続された後に撮影された、図2と同一ゲルの写真である。
【図4】 実施例9で述べられているように、マウス肝臓ホモジネートから、MagIE−グリシジル−ヒスチジン粒子を用いて単離され、ゲル電気泳動で分画し、かつ臭化エチジウムで染色して可視化された後のDNA及びRNA試料の写真である。
【図5】 実施例9で述べられているように、マウスの脾臓(レーン2〜5)及び腎臓(レーン7〜9)から、MagIE−グリシジル−ヒスチジン粒子を用いて単離され、その試料をゲル電気泳動で分画し、かつ臭化エチジウムで染色して可視化された後のDNA及びRNA試料の写真である。
【図6】 DNアーゼによる消化、ゲル電気泳動による分画、及び臭化エチジウムによる染色で可視化された後のマウス肝臓のRNA及びDNAの写真である。

Claims (6)

  1. 磁性粒子を用いて細胞を収集する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)細胞が磁性粒子に選択的に直接吸着して複合体を形成する条件下で該細胞と該磁性粒子を混ぜる工程であって、前記磁性粒子が、(1)グリシジル−ヒスチジン修飾シリカ磁性pH依存性イオン交換粒子及び(2)水和シリカ酸化物吸着表面を有するシリカ酸化物を被覆した磁性コアを含むシリカ磁性粒子からなる群から選ばれたものであり;及び
    (b)磁力を適用して、前記複合体を前記溶液から単離する工程。
  2. 中に細胞が含まれる前記溶液が、その中で懸濁された細菌を培養している増殖培地である請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞が、血液細胞である請求項1に記載の方法。
  4. 前記細胞が哺乳類の白血球であり、かつ中に細胞が含まれる前記溶液が全血である請求項3に記載の方法。
  5. 前記磁性粒子が、シリカ磁性粒子である請求項1に記載の方法。
  6. 前記磁性粒子が、グリシジル−ヒスチジン修飾シリカ磁性pH依存性イオン交換粒子である請求項1に記載の方法。
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