JP4550980B2 - エアゾール容器の継続排出機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、エアゾール容器の継続排出機構に関し、さらに詳しくは、使用済みのエアゾール容器の残留ガスを容易に排出させうる継続排出機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の継続排出機構を備えた肩カバー付エアゾール容器としては、図6及び図7に示すものがある。このエアゾール容器101の上端には、操作部材102を有する肩カバー103が嵌合されている。操作部材102には押圧部104とスパウト105が設けられており、押圧部104を指で押圧することにより、エアゾールバルブのステム(図7の符号106)を開放してスパウト105から内容物を噴出させることができる。また操作部材103はヒンジ状の連結部107によって肩カバー104と連結されている。
【0003】
肩カバー103の上面には、押圧部104に隣接して係止壁108が立設されている。その係止壁108には、図7に示すように、押圧部104を強く押し下げた状態で押圧部の角部104aと係合しうる段状の係合部109が形成されている。
【0004】
このエアゾール容器101では、角部104aが係合部109に達しない程度に押圧部104を押し下げると、押しているときだけ内容物をスパウト105から噴出させることができる。そして内容物がなくなり、エアゾール容器101を廃棄する場合には、押圧部104を通常使用時より強く押圧する。そうすると、押圧部104の角部104aが係止壁108の係合部109に堅固に係合する。
この場合、指による押圧を解除しても、操作部材103及びステム106は、押圧状態が維持されるので、エアゾール容器101内の残留ガスは、すべて外部に排出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の機構は、通常使用中に押圧部104を指で強く押しすぎると、押圧部の角部104aと係止壁108の係合部109とが意に反して係合してしまい、内容物及びガスがすべて外部に噴出されてしまうという欠点がある。このような誤操作を防止するには、たとえば通常使用中に操作部材102が押圧によって著しく降下しないように、連結部107の剛性を強くすることが考えられる。その場合、連結部107以外に係止壁108の撓みの程度、押圧部104の作動時における係止壁108と押圧部104の干渉の程度などを考慮する必要があり、頗る面倒である。
【0006】
この発明は、このような従来の機構の問題に着目してなされたものであり、簡易な構成で、通常使用時に操作部材を強く押しても全量が噴射されず、しかも残留ガスの排出など、必要なときには容易に全量を排出することができる継続排出機構を提供することを技術課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の継続排出機構(請求項1)は、容器の上部に取り付けられ、バルブによって上向きに付勢され、下方に押すことにより内容物を排出する操作部材と、その操作部材に隣接して容器の上部に固定される固定部材と、その固定部材に対し、樹脂ヒンジからなる連結ヒンジによって、操作部材と干渉する内側の位置と干渉しない外側の位置との間で、容器の中心軸と平行な軸周りに屈曲自在に連結される係止片とを備えており、前記係止片または固定部材のうちいずれか一方に爪が形成され、他方にその爪が係合する溝が形成されており、前記爪と溝が、内側に撓めた係止片が外側に戻るのを阻止するストッパの作用を奏することを特徴としている。
【0008】
このような継続排出機構では、前記係止片の自由端の下面に前記爪が形成され、前記固定部材の上面に前記溝が形成されているものが好ましい(請求項2)。さらに前記係止片が、操作部材の左右に位置するように、一対で設けられているものが好ましい(請求項3)。さらに前記操作部材が固定部材に対し、樹脂ヒンジによって水平方向の軸周りに傾動自在に連結されており、操作部材、固定部材および係止片が合成樹脂の一体成形品であるものが好ましい(請求項4)。さらに前記係止片から連結ヒンジを通って固定部材まで、薄肉の縦リブが設けられているものが一層好ましい(請求項5)。
【0009】
【作用および発明の効果】
本発明の継続噴射機構(請求項1)では、係止片を操作部材と干渉しない位置と干渉する位置との間で揺動自在に設けている。このものは、通常の使用時には、係止片を操作部材と干渉しない位置にしておく。それにより自由に操作部材を押圧・解除操作することができ、しかも操作部材を強く押し下げ操作しても、全量が噴射されることがない。他方、エアゾール容器の内容物がなくなったときなど、全量噴射が必要なときは、操作部材を押し下げた状態で係止片を操作部材と干渉する位置に揺動させる。それにより操作部材は係止片と係合し、係合部材を上向きに付勢する。しかし係合部材は容器の軸心と平行の軸周りに揺動するものであるので、上向きには傾かない。そのため、操作部材が元の位置に上昇することを阻止することができる。したがって操作部材は押し下げた状態に維持され、残存する内容物がすべて排出される。
【0010】
さらに係止片または固定部材のうちいずれか一方に爪が形成され、他方にその爪が係合する溝が形成されており、前記爪と溝が、内側に撓めた係止片が外側に戻るのを阻止するストッパの作用を奏するので、継続排出状態のときに係止片が移動して継続排出が中断することが防止される。係止片を操作部材の左右に位置するように一対で設けた継続排出機構(請求項3)では、操作部材の上昇を左右一対の係止部材で阻止することができる。そのため、操作部材の上昇を一層確実に阻止することができ、継続排出が中断するおそれが少ない。
【0011】
係止片の自由端の下面に前記爪が形成され、前記固定部材の上面に前記溝が形成されている継続排出機構(請求項2)では、爪を溝に係合させやすく、しかも一旦噛み合わすと、両者が分離しにくい。そのため、操作部材による上向きの付勢力で係止片にねじりの力が加わっても、係止片が操作部材から外れにくい。それにより一層確実に継続排出が行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜3は、本発明に係る継続排出機構の第1実施形態を示している。この第1実施形態では、継続排出機構10は、概略的構成として、エアゾール容器11の上端に固定される肩カバー12と、エアゾール容器11のステム13に嵌合されている操作部材14と、肩カバー12に連結ヒンジ15を介して連結される係止片16とから構成されている。肩カバー12と係止片16を同じ合成樹脂から成形する場合は、連結ヒンジ15は樹脂ヒンジで構成しうる。ただし通常のピンで連結するヒンジとしてもよい。操作部材14は肩カバー12に対して樹脂ヒンジ17によって傾動自在に連結されており、肩カバー12および操作部材14は全体として合成樹脂で一体成形されている。
【0014】
肩カバー12は請求項1における固定部材であり、この実施形態では、円筒状の外筒21と、その内側に設けられる円筒状の内筒22と、内筒の上面に設けられる天板23とを有する。外筒21の上部はテーパー状にすぼまり、その上端は内筒22の上端と連結されている。外筒21の下端はエアゾール容器11の肩部24の外周縁の上に乗っている。エアゾール容器11の肩部24の途中には円筒状の首部25が形成され、その途中に環状溝26が形成されている。内筒22の下端はその環状溝26に弾力的に係合している。
【0015】
肩カバー12の天板23の中央には略円形の開口部27が形成されており、その中に前記操作部材14が配置されている。操作部材14は通常の状態では天板23と面一になる円板状のベース31と、そのベース上に設けられるブロック状の押圧部32と、押圧部の一端から上方に延びるスパウト33とからなる。スパウト33の内部はステム13と連通している(図5b参照)。図2aに示すように、ベース31と天板23の開口部27の間には、樹脂ヒンジ17の部分を残してスリット34が形成されている。
【0016】
以上の肩カバー12と操作部材14の構成および作用は図8の従来のエアゾール装置と実質的に同じであり、エアゾール容器11の胴部の上端近辺を掴み、操作部材14の押圧部32を押し下げると、操作部材14は樹脂ヒンジ17の部分で曲がり、下方に傾く。それによりステム13が押し下げられ、容器の内容物がスパウト33の上端から噴出する。押圧部32を押すのをやめると、エアゾールバルブ内のステム13を復帰させるバネ(図示していない)の付勢力で操作部材14がもとの水平の状態に戻り、噴出が止まる。
【0017】
継続噴出機構10は、上記の構成において、以下のように実現される。すなわち肩カバー12の天板23の左右端には凹部40が設けられており、その凹部40の前側の段部41に、連結ヒンジ15を介して、平面視が円弧状で断面矩形状の係止片16が連結されている。凹部40の内側はスリット34に達している。
図2aに明瞭に示すように、段部41と係止片16との間には、半径方向に延びるスリット43が形成されており、係止片16は連結ヒンジ15で段部41と連結されている以外は、肩カバー12から離れている。そのため、係止片16は肩カバー12に対し、操作部材14と干渉しない開口部27の外側と、干渉する開口部の内側との間で、水平方向に揺動自在である。すなわちエアゾール容器11の中心軸と平行な軸心まわりに揺動自在である。なお、連結ヒンジ15での水平方向のみの揺動をより確実にするため、係止片16から連結ヒンジ15を通って肩カバー12まで、薄い縦リブ45を設けるのが好ましい(図2c参照)。
【0018】
係止片16の自由端の下面には、爪46が形成されている。爪46は図2bに示すように、内側が傾斜する断面直角三角形状にしている。爪46の長さは比較的短く、その幅と同程度とするのが好ましい。他方、操作部材14のベース31の上面には、爪46が係合する溝47が形成されている。溝47の断面形状は爪46の断面形状に合わせている。この実施形態では、爪46がどの部位でも係合可能なように、溝47はほぼ環状にしているが、爪46と対応する部位のみに設けてもよい。爪46および溝47は請求項1におけるストッパである。
【0019】
上記のように構成される継続排出機構10は、図1aおよび図2の状態では係止片16は操作部材14に干渉しない。そのため押圧部32を押して自由に操作することができる。他方、図1bに示すように、押圧部32を押して操作部材14を下方に傾けた状態で左右の係止片16を矢印P方向に押し曲げると、係止片16が連結ヒンジ15を中心として水平方向に回動する。そして図3a、図3bに示すように爪42が溝47に係合する。そのとき、操作部材14は前述のステムを上方に付勢するバネの付勢力で上向きに付勢されるが、係止片16は上向きに容易には回動しない。そのため、操作部材14は継続的に噴射状態が維持される。
【0020】
また、操作部材14が上昇しようとするとき、連結ヒンジ15の曲げ剛性およびねじれ剛性が低い場合は、係止片16が外側に屈曲して元の位置に戻ろうとする場合があるが、爪46と溝47の係合により係止片16は内側に屈曲した状態に維持される。そのため安定して噴射状態を継続しうる。さらに連結ヒンジ15の部分の上下方向の厚さが少ない場合は、係止片16が操作部材14の付勢力に負けて上向きに湾曲する場合がある。しかしこの実施形態では連結ヒンジ15の下面に薄い縦リブ45が設けられているので、上向きに撓みにくく、より確実に噴射状態が維持される。ただし連結ヒンジ15の剛性が高く、あるいは塑性変形の強度が高いため、内側に屈曲した状態が確実に維持されるような場合は、爪42と溝47によるストッパは不要である。また、連結ヒンジ15の上向きの曲げ剛性が高く、上向きに屈曲するおそれがない場合は、前述の縦リブ45は不要である。
【0021】
このような継続排出操作は、エアゾール容器10の使用が完了して、内容物がなくなってガスのみが残ったとき、そのガスを完全に排出してエアゾール容器10を安全に廃棄する場合に行う。ただし、薫蒸タイプのエアゾール容器において、全量噴射する場合などにも採用しうる。
【0022】
前記第1実施形態では、操作部材14と肩カバー12を連結する樹脂ヒンジ17に関して左右対称に一対の係止片16、16を設けている。そのため、操作部材14は安定して押し状態が維持される。しかし場合によっては片方のみでもよい。係止片16を1個にする場合は、樹脂ヒンジ17の反対側、すなわち後端に設けるのが好ましい。また前記実施形態では係止片16に爪46を設け、操作部材14に溝47を設けているが、係止片16に溝を設け、操作部材に爪を設けても同じ作用効果を奏する。さらに肩カバー12の上面に、係止片16と係合する突起や段部を設け、係止片16の元に戻ろうとする回動を阻止するストッパを構成することもできる。その場合は係止片16を内側に屈曲させるときにそのような突起や段部を乗り越えさせて屈曲させた上で、突起や段部に係合させる。
【0028】
前述の継続排出機構の実施形態では、操作部材として、スパウトおよび押圧部を備えたものを示したが、図4に示す継続排出機構のように、噴射ノズル60を有する押しボタンの形態を有する操作部材61とすることもできる。この場合は、操作部材61の下部に係止片16が係合するフランジ部62あるいは段部または係合溝などを設ける。係止片16や爪46、溝47などは、第1実施形態のものと同じものを採用しうる。その場合でも、前述の場合と実質的に同じ作用効果を奏する。
【0029】
また、肩カバーと操作部材61を樹脂ヒンジ(図1の符号17)で連結せず、分離してもよい。このことはスパウトを備えた操作部材についても同じであり、スパウトを設けた操作部材を肩カバーと別個に構成することもできる。ただし操作部材を肩カバーから分離する場合は、操作部材を均等に下向きに押すように、複数個、好ましくは3個以上の係止片を軸対称的に配置するのが好ましい。なお操作部材と肩カバーとが分離している場合は、たとえば操作部材をステムまわりに回動させて、操作部材の一部と肩カバーの一部とを係合させるなどにより、比較的容易に種々の継続排出機構を実現できるが、操作部材と肩カバーとが樹脂ヒンジで連結している場合はそのような構成がとれない。そのため、本発明における縦方向の軸まわりに回動ないし屈曲する係止片を用いた構成は、操作部材を独立して回動できない後者のタイプのエアゾール容器に対してとくに有効である。
【0030】
さらに図1の実施形態では、肩カバー12は内筒22の下端を首部25に形成した環状溝26に嵌合させているが、図5に示すように、バルブのマウンティングカップを容器にクリンプしたときのカール部64を利用して肩カバー12をエアゾール容器11の上端に固定してもよい。
【0031】
なお前記実施形態では、肩カバーの天面に凹部を形成して係止片を配置しているが、これは操作していない状態で操作部材のベースやフランジを肩カバーの天面と面一にするというデザイン上の要請に基づくものである。したがってその必要がなければ、凹部を設けず、逆にベースなどに係止片と係合する突起を設けることもできる。また、肩カバーを設けない場合は、肩カバーに代えてリング状などの固定部材を容器上端に固定し、その固定部材に係止片を設けることもできる。なお肩カバーや操作部材は通常は合成樹脂で製造するが、金属など他の材料を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1aは本発明の継続排出機構の第1実施形態を示す一部切り欠き斜視図、図1bはその継続排出状態を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】 図2aは図1aの継続排出機構の平面図、図2bは図1aのII-II線断面図、図
2cはその機構の係止片を示す要部斜視図である。
【図3】 図3aは図1aの継続排出機構の継続排出状態を示す平面図、図3bは図3aのIII-III線断面図である。
【図4】 本発明の継続排出機構のさらに他の実施形態を示す一部断面側面図である。
【図5】 本発明の継続排出機構のさらに他の実施形態を示す一部断面側面図である。
【図6】 従来の継続排出機構の一例を示す斜視図である。
【図7】 図6の機構の作動状態を示す一部断面側面図である。
【符号の説明】
10 継続排出機構
11 エアゾール容器
12 肩カバー
13 ステム
14 操作部材
15 連結ヒンジ
16 係止片
17 樹脂ヒンジ
21 外筒
22 内筒
23 天板
24 肩部
25 首部
26 環状溝
27 開口部
31 ベース
32 押圧部
33 スパウト
34 スリット
40 凹部
41 段部
43 スリット
45 縦リブ
46 爪
47 溝
60 噴射ノズル
61(押しボタンの形態の)操作部材
62 フランジ部
64 カール部
Claims (5)
- 容器の上部に取り付けられ、バルブによって上向きに付勢され、下方に押すことにより内容物を排出する操作部材と、
その操作部材に隣接して容器の上部に固定される固定部材と、
その固定部材に対し、樹脂ヒンジからなる連結ヒンジによって、操作部材と干渉する内側の位置と干渉しない外側の位置との間で、容器の中心軸と平行な軸周りに屈曲自在に連結される係止片とを備えており、
前記係止片または固定部材のうちいずれか一方に爪が形成され、他方にその爪が係合する溝が形成されており、
前記爪と溝が、内側に撓めた係止片が外側に戻るのを阻止するストッパの作用を奏するエアゾール容器の継続排出機構。 - 前記係止片の自由端の下面に前記爪が形成され、前記固定部材の上面に前記溝が形成されている請求項1記載の継続排出機構。
- 前記係止片が、操作部材の左右に位置するように、一対で設けられている、請求項1または2記載の継続排出機構。
- 前記操作部材が固定部材に対し、樹脂ヒンジによって水平方向の軸周りに傾動自在に連結されており、
操作部材、固定部材および係止片が合成樹脂の一体成形品である請求項1、2または3のいずれかに記載の継続排出機構。 - 前記係止片から連結ヒンジを通って固定部材まで、薄肉の縦リブが設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の継続排出機構。
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