JP4549553B2 - 熱プラズマを用いた成膜装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱プラズマを用いた成膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラズマを用いた成膜法としては、プラズマ溶射法、プラズマCVD法、プラズマPVD法が知られている。プラズマ溶射法は粉末状の各種材料を高温プラズマで溶融しながら加速して基板表面に吹き付け、被膜を形成する手法である。プラズマCVD法はプラズマを利用した化学的気相成長法であり、プラズマ中のラジカルを利用し、化学反応で生じた生成物質を基板上に堆積させる手法である。また、プラズマPVD法はプラズマを利用した物理的気相成長法である。従来、これらの成膜法は全く別個の独立したものとして採用されており、しかも、成膜プロセスや成膜速度が異なることから、これらを組み合わせて成膜を行なうという考えは全く存在しなかった。
【0003】
一方、プラズマ溶射に用いられる熱プラズマを利用した熱プラズマCVD法について研究が進められており、熱プラズマCVD法によれば、通常のプラズマCVD法やプラズマPVD法に比べてかなり高速の成膜が可能なことがわかってきた。したがって、プラズマ溶射法と熱プラズマCVD法とを組み合わせて基板上に成膜することが可能であると考えられる。異なる成膜法を組み合わせて被膜を行なうことにより、新規な組成・構造を有する被膜形成が可能となるが、このような成膜を行なう装置は存在しなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、全く新規な着想に基づいて創案されたものであって、熱プラズマを用いた複数の成膜法の組合せを可能とする成膜装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために本発明が採用した技術手段は、
熱プラズマを用いたプラズマ溶射用のプラズマトーチと、熱プラズマPVD用のプラズマトーチと、を含む複数のプラズマ流を生成する複数のプラズマトーチと、
該複数のプラズマトーチに対応する複数の成膜源と、
被成膜基板を保持する可動基板保持手段と、を備え、
前記複数のプラズマトーチは、軸心の異なる複数の独立のプラズマ流を生成するように間隔を存して配設されており、
前記可動基板保持手段によって該基板を移動させながら、前記被成膜基板を夫々のプラズマトーチの下方に位置させて、前記プラズマ溶射用のプラズマトーチによって生成されるプラズマ流と前記熱プラズマPVD用のプラズマトーチによって生成されるプラズマ流を交互に前記被成膜基板に供給することで、当該被成膜基板上に凝固粒子と気相堆積層の層状あるいは混在状の構造を備えた膜を形成するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
基板を移動させる構成は、例えば、基板を回転自在の基板保持手段に載置して、該基板保持手段を回転させることで、基板を夫々のプラズマトーチの下方に位置させるようにする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る熱プラズマを用いた成膜装置の概略図であって、該装置は、二つのプラズマトーチ1,1と、チャンバ2と、チャンバ2内に回転自在に配設された回転ステージ3とを有し、回転ステージ3には基板が載置されるようになっており、回転ステージ3の回転によって基板が周方向に移動する。各プラズマトーチ1には、夫々に対応する成膜源4,4が連結されており、プラズマトーチ1,1によって生成されるプラズマ流に成膜材料を供給するようになっている。例えば、プラズマ溶射法が採用される場合には、各プラズマトーチに対応する成膜源は一つあるいは複数の粉末供給源であり、熱プラズマCVDが採用される場合には、各プラズマトーチに対応する成膜源は一つあるいは複数のガス源である。また、成膜装置は図示しないプラズマガス源(例えばAr、H、O、N等)を有している。
【0010】
基板保持手段を構成する回転ステージ3は円板であり、円板の表面には、周縁に近接した部位に周方向に所定間隔を存して複数の凹状の基板受部30が形成されている。二つのプラズマトーチ1,1の夫々のプラズマ軸心は回転ステージ3の回転中心からずらして基板受部30に対応するように配置されている。二つのプラズマトーチ1,1は間隔を存して配設されており、基板表面に向かって、軸心の異なる複数の独立のプラズマジェット(プラズマ流)を生成する。
【0011】
トーチの先端と基板との距離は可変であり、諸条件に応じて調整可能となっている。また、二つのプラズマトーチによりプラズマジェットが生成される夫々の空間の間に障壁(図示せず)を設けて、夫々の空間を区画することが望ましい。
【0012】
可動基板保持手段は図示のものに限定されず、基板を一方向に直進させるもの、あるいは双方向に往復移動させるものでもよい。あるいは、基板自体をさらに回転させながら移動させるように構成してもよい。
【0013】
図示の装置では、プラズマ発生部は、上部側の直流プラズマトーチ5と下部側の高周波プラズマトーチ6とからなるハイブリット型プラズマトーチである。直流プラズマトーチ5は陰極電極と陽極電極とを備えており、直流電源50から両電極間に直流電圧を放電させてプラズマジェットを発生させる。高周波プラズマトーチ6には高周波誘導コイルが巻回されており、高周波電源60から高周波誘導コイルに高周波を供給し、トーチ内に熱プラズマを発生させる。ハイブリッド型プラズマトーチを採用することで、熱プラズマCVD法、熱プラズマPVD法による成膜速度が速くなると考えられる。ハイブリッド型プラズマ装置自体は公知であり、例えば、特公昭62−34416号に開示されている。
【0014】
成膜装置は制御部7を有しており、成膜時におけるプラズマ入力、成膜源の供給量(ガス量、ガス濃度、パウダー量)等は制御部7によって制御される。尚、チャンバ2には排気管8が設けてあり、成膜後のガスあるいは粉末は排気管8から導出され、フィルタ9を通過させて排出される。
【0015】
次に、複数のプラズマトーチを用いた成膜装置に採用される成膜手段について説明する。二つのプラズマトーチを備えた装置を例にとって説明すると、成膜法の組合せには、同種の組合せ(プラズマ溶射法とプラズマ溶射法、熱プラズマCVD法と熱プラズマCVD法、熱プラズマPVD法と熱プラズマPVD法)、および異種の組合せ(プラズマ溶射法と熱プラズマCVD法、プラズマ溶射法と熱プラズマPVD法、熱プラズマCVD法と熱プラズマPVD法)が採用し得る。
【0016】
同種の成膜法を組み合わせる場合(プラズマ溶射法とプラズマ溶射法、熱プラズマCVD法と熱プラズマCVD法、熱プラズマPVD法と熱プラズマPVD法)には、好適には、夫々異なる種類の成膜源が選択される。異なる種類とは、異種の材料同士の場合、粒径の異なる同材料同士、形状の異なる同材料(中空の有無を含む)同士を含む。また、溶射法では、材料によってプラズマの最適条件が異なるので、各最適条件で溶射し、かつ材料比を時間的に制御することが可能となり、溶射法―溶射法の組合せでは、新規な組成・構造の制御が可能となる。
【0017】
溶射法―熱プラズマCVD法、あるいは溶射法―熱プラズマPVD法の組合せでは、凝固粒子と気相堆積層の層状あるいは混在状の組成・構造が制御された新規なコーティングが得られる。例えば、熱遮蔽コーティング(TBC)におけるイットリウム安定化ジルコニウム中にアルミナの反射薄膜層を分散させる、あるいは、アルミナ−イットリウム安定化ジルコニウムの傾斜組成コーティング、あるいは、BNやSICの微粒子を分散させたコーティングが行なわれる。
【0018】
熱プラズマCVD法―熱プラズマPVD法においては、両者で結晶成長モードが異なるため、組成・構造が制御されたコーティングが得られる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、熱プラズマを用いた複数の成膜法の組合せが可能となり、複数の成膜法を組み合わせて被膜を行なうことによって新規な被膜構造の創出、成膜プロセスの効率化、複合材料コーティングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱プラズマを用いた成膜装置の概略図である。
【図2】 基板ホルダの平面図である。

Claims (2)

  1. 熱プラズマを用いたプラズマ溶射用のプラズマトーチと、熱プラズマPVD用のプラズマトーチと、を含む複数のプラズマ流を生成する複数のプラズマトーチと、
    該複数のプラズマトーチに対応する複数の成膜源と、
    被成膜基板を保持する可動基板保持手段と、を備え、
    前記複数のプラズマトーチは、軸心の異なる複数の独立のプラズマ流を生成するように間隔を存して配設されており、
    前記可動基板保持手段によって該基板を移動させながら、前記被成膜基板を夫々のプラズマトーチの下方に位置させて、前記プラズマ溶射用のプラズマトーチによって生成されるプラズマ流と前記熱プラズマPVD用のプラズマトーチによって生成されるプラズマ流を交互に前記被成膜基板に供給することで、当該被成膜基板上に凝固粒子と気相堆積層の層状あるいは混在状の構造を備えた膜を形成するように構成されていることを特徴とする熱プラズマを用いた成膜装置。
  2. 前記熱プラズマを用いたプラズマ溶射用のプラズマトーチ、前記熱プラズマPVD用のプラズマトーチは共に、上部側の直流プラズマトーチと下部側の高周波プラズマトーチとからなるハイブリット型プラズマトーチである、請求項1に記載の成膜装置。
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