JP4547558B2 - 形状記憶素子 - Google Patents
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Description
本発明は、図1(a)に示すように、ポリマー2と、シクロデキストリン(ホスト)3と、親和性化合物(内部ゲスト)4とを含む形状記憶素子1であって、ホスト3内に内部ゲスト4が包摂されることにより形成されるホスト・ゲストブリッジHGBが、ポリマー2のらせん構造を固定する。以下、各構成について説明する。
ポリマー2はらせん構造を形成し得る繰り返し単位で構成されもので、例えば、ポリペプチド、ポリペプトイド、DNA、RNA、PNA(ポリアミド核酸あるいはペプチド核酸)等である。また、ポリマー2は、化学合成により容易に合成できるポリペプチドが好ましい。
ホスト3は、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合等の化学結合によりポリマー2の位置P1に結合され、臼状の立体構造の空洞内に、後記する親和性化合物(内部ゲスト)4を包摂し、内部ゲスト4と共に、ホスト・ゲストブリッジHGBをポリマー2の上に形成する。ここで、ホスト3とポリマー2との前記結合は、ホスト・ゲストブリッジHGBの安定性から、アミド結合が好ましい。そして、ホスト3としては、例えば、以下の化学式(2)で示される6個のグルコース分子がグルコシド結合で環状に結合されたα−シクロデキストリン、化学式(3)で示される7個のグルコース分子がグルコシド結合で環状に結合されたβ−シクロデキストリン、化学式(4)で示される8個のグルコース分子がグルコシド結合で環状に結合されたγ−シクロデキストリンが使用される。また、空洞の最大内径D(図1(b)参照)はα−シクロデキストリンの場合で約4.5Å、β−シクロデキストリンの場合で約7.0Å、γ−シクロデキストリンの場合で約8.5Åである。さらに、ホスト3は、ポリマー2と前記結合を形成するため、結合前にあらかじめ所定の官能基で修飾したものを使用する。
内部ゲスト4は、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合等の化学結合により、前記ホスト3の結合位置P1と異なる位置P2で、ポリマー2に結合され、前記ホスト3に対して親和性を有するもので、前記ホスト3の空洞内にホスト3との相互作用により包摂され、ホスト3と共に、ホスト・ゲストブリッジHGBをポリマー2の上に形成する。ここで、内部ゲスト4とポリマー2との前記結合は、前記ホスト3とポリマー2との結合と異種の結合であってもよいが、ホスト・ゲストブリッジHGBの安定性から同種の結合が好ましい。また、内部ゲスト4は、その分子の大きさがホスト3の空洞の最大内径D(図1(b)参照)より小さいものが好ましい。内部ゲスト4の分子の大きさが内径Dより大きいと、内部ゲスト4がホスト3に包摂され難く、ホスト・ゲストブリッジHGBが形成され難くなる。すなわち、内部ゲスト4の分子の大きさは、ホスト3がα−シクロデキストリンの場合には約4.5Å以下が好ましく、ホスト3がβ−シクロデキストリンの場合には約7.0Å以下が好ましく、ホスト3がγ−シクロデキストリンの場合には約8.5Å以下が好ましい。さらに、内部ゲスト4が脂溶性または疎水性であることが好ましい。以下に、内部ゲスト4として好ましい化合物を例示する。
内部ゲスト4としては、(a1)および(a2)が好ましい。
(a1)n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール等の直鎖状アルコール。(a2)ベンゼン、ベンゼン誘導体、スチルベン(異性体を含む)、スチルベン誘導体、アゾベンゼン(異性体を含む)、アゾベンゼン誘導体等の芳香環式化合物。
内部ゲスト4は、(b1)〜(b7)が好ましい。
(b1)t−ブタノール、i−ブタノール、i−ペンタノール等の分枝状アルコール。
(b2)n−ヘキサノール等の直鎖状アルコール。
(b3)ベンゼン、ベンゼン誘導体、スチルベン(異性体を含む)、スチルベン誘導体、アゾベンゼン(異性体を含む)、アゾベンゼン誘導体等の芳香環式化合物。
(b4)ナフタレン、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ピレン、ピレン誘導体等の多芳香環式化合物。
(b5)メンソール、フェンコン、ボルネオール、アダマンタンカルボン酸、アダマンタノール等の環式あるいは複環式化合物。
(b6)コール酸等のステロイド誘導体。
(b7)ダンシル、ダブシル、クマリンのような色素。
内部ゲスト4は、(c1)〜(c5)が好ましい。
(c1)ベンゼン、ベンゼン誘導体、スチルベン(異性体を含む)、スチルベン誘導体、アゾベンゼン(異性体を含む)、アゾベンゼン誘導体等の芳香環式化合物。
(c2)ナフタレン、ナフタレン誘導体、アントラセン、アントラセン誘導体、ピレン、ピレン誘導体等の多芳香環式化合物。
(c3)ボルネオール、アダマンタンカルボン酸、アダマンタノール等の環式あるいは複環式化合物。
(c4)コール酸等のステロイド誘導体。
(c5)ダンシル、ダブシル、クマリンのような色素。
また、前記(a)〜(c)に例示された内部ゲスト4は、ポリマー2と前記結合を形成するため、結合前にあらかじめ所定の官能基で修飾したものを使用する。
ホスト・ゲストブリッジHGBは、ホスト3に内部ゲスト4が包摂されることにより形成され、ポリマー2のらせん構造を固定する。図2(a)、(b)にホスト・ゲストブリッジHGBの結合状態を模式的に示す。ここで、図2では、ホスト3および内部ゲスト4を簡略化した線で示した。
図4に示すように、形状記憶素子1においては、ポリマー2の上にホスト・ゲストブリッジHGBが形成されることによって、ポリマー2のらせん構造が誘起され、ホスト・ゲストブリッジHGB形成前に比べて、ポリマー2のらせん構造の割合が増加する。そして、らせん構造の割合が増加したポリマー2がホスト・ゲストブリッジHGBで固定されることによって、形状記憶素子1にポリマー2の形状が記憶される。
に噴霧する方法、(C)外部ゲスト5をガス状に気化させ、その雰囲気下に前記形状記憶素子1を置く方法等が用いられる。外部ゲスト5の除去方法としては、(a)前記溶液を溶媒で希釈する方法(例えば、内部ゲスト4に一般的な脂溶性または疎水性な化合物を使用した場合)、(b)前記溶液の極性(pH)を変化させる方法(例えば、内部ゲスト4にフェノールの誘導体またはアニリン誘導体を使用した場合)、(c)外部ゲスト5を透析、フィルター等でろ過または吸着する方法等が用いられる。
(A)ポリマーの合成
公知の化学合成法または細菌合成法等を用いて、あらかじめ設定された位置に、ホストおよび内部ゲストと結合する繰り返し単位が配列されると共に、らせん構造を有するポリマーを合成する。例えば、ポリマーがポリペプドの場合には、化学合成法としてはFmoc固相法、液相法、フルオラス法等が用いられ、細菌合成法としては大腸菌、酵母菌、小麦胚芽等が用いられる。らせん構造を誘起するアミノ酸、ホストおよび内部ゲストと化学結合しやすいアミノ酸が所定の位置に配列したポリペプチドを得るためには、Fmoc固相法が好ましい。また、Fmoc固相法においては、後工程において、合成されたポリペプチドにホストおよび内部ゲストを導入するために、公知のtert−ブチル、tert−ブチルオキシカルボニル、ベンジルおよびペンタメチルジヒドロベンゾフランスルホニル等の保護基を持つアミノ酸を用いて合成する。
ポリマーとホストとの間、およびポリマーと内部ゲストとの間の化学結合の種類、例えば、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合およびジスルフィド結合に適した公知の化学縮合法を用いて、前記(A)で合成されたポリマーの所定に位置に、ホストおよび内部ゲストを導入し、ホスト・ポリマー複合体を合成する。また、前記(A)で保護基を用いた場合には、トリフルオロ酢酸、トリメチルトリフロメタンスルホネイト、チオアニソール、メタクレゾール等の試薬を用いて、ホストおよび内部ゲストが導入されるアミノ酸の保護基を除去した後、ホストおよび内部ゲストをポリマーに化学結合する。
前記ホスト・ポリマー複合体を、ゲルろ過、高速液体クロマトグラフィー等を用いた公知の精製方法で精製し、形状記憶素子を作製する。前記(A)で保護基を用いた場合には、トリフルオロ酢酸、トリメチルトリフロメタンスルホネイト、チオアニソール、メタクレゾール等の試薬を用いて、導入された全ての保護基を除去した後、精製を行う。
<ポリマー(ポリペプチド)の合成>
9個のアラニン(Ala)と、4個のグルタミン酸(Glu)と、2個のリジン(Lys)と、3個のアルギニン(Arg)とから、Fmoc固相法(反応条件:室温、1アミノ酸縮合あたり15〜30分)を用いて、配列番号1のアミノ酸配列を持つ、以下の化学式(5)に示すポリペプチド(2)を合成した。
ホストとしてアミノ化したβ−シクロデキストリン、内部ゲストとしてカルボキシル化したナフタレンを用いた。前記ポリペプチドのグルタミン酸(Glu:配列位置2、7、13番目)の保護基(ベンジル)以外を、トリフルオロ酢酸、メタクレゾールを用いて除去した。ポリペプチドのリジン(Lys:配列位置16番目)にナフタレンカルボン酸を化学縮合法(反応条件:室温、24時間)にて導入し、リジン(Lys:配列位置16番目)とナフタレンとをアミド結合で結合した。続いて、ポリペプチドのグルタミン酸(Glu:配列位置9番目)にアミノ化したβ−シクロデキストリン(文献「シクロデキストリン」(1995、産業図書)参照)を化学縮合法(反応条件:室温、24時間)にて導入し、グルタミン酸(Glu:配列位置9番目)とβ−シクロデキストリンとをアミド結合で結合した。その結果、ポリペプチドの側鎖にナフタレンおよびβ−シクロデキストリンが導入されたシクロデキストリン・ペプチド複合体が合成された。
前記のシクロデキストリン・ペプチド複合体の全ての保護基を、トリメチルトリフロメタンスルホネイト、トリフルオロ酢酸、チオアニソール、メタクレゾールを用いて除去し、ODSカラム(YMC社製、YMC−Pack C18 RS)高分解能液体クロマトグラフィー(日立社製、L−7000)で精製し、配列番号1のアミノ酸配列を持つ、以下の化学式(6)で示す形状記憶素子(1a)を作製した(表1参照)。
前記の形状記憶素子(1a)の20マイクロモラー水溶液をトリス塩酸緩衝溶液でpH=7.5に調整し、円偏光二色性分散計(日本分光社製、J720)を用いて、この溶液の円二色性スペクトルを測定した。内部ゲストとしてナフタレンの替わりにコール酸を使用し、形状記憶素子(1a)と同様にして、形状記憶素子(1b)を作製した(表1参照)。前記で合成したポリペプチド(2)の全ての保護基を、トリメチルシリルトリフロメタンスルホネイト、トリフルオロ酢酸、チオアニソール、メタクレゾールを用いて除去し、対照ポリペプチドを作製した。そして、形状記憶素子(1a)と同様にして、形状記憶素子(1b)、対照ポリペプチド各々の円二色性スペクトルを測定した。
2 ポリマー
3 シクロデキストリン(ホスト)
4 親和性化合物(内部ゲスト)
5 外部ゲスト
HGB ブリッジ(ホスト・ゲストブリッジ)
P1、P2 位置
Claims (4)
- らせん構造を形成し得るポリペプチドからなるポリマーと、
前記ポリマーに結合されたシクロデキストリンと、
前記シクロデキストリンに対して親和性を有し、前記シクロデキストリンが結合された位置と異なる位置でポリマーに結合された親和性化合物とを含み、
前記シクロデキストリンと前記親和性化合物が、前記ポリマーのらせん軸を有する仮想的に示す平面に対して同一側にあり、
前記シクロデキストリン内に前記親和性化合物が包摂されることにより、前記ポリペプチドを構成するアミノ酸の4n(nは2以上の整数)個の間に形成されるブリッジが、前記ポリマーのらせん構造を固定することを特徴とする形状記憶素子。 - 前記親和性化合物が、脂溶性および/または疎水性であることを特徴とする請求項1に記載の形状記憶素子。
- 前記ポリマーと前記シクロデキストリンとの結合、および前記ポリマーと前記親和性化合物との結合の両者が、アミド結合であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の形状記憶素子。
- 前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の形状記憶素子。
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