(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。図において1は、画像形成装置の各部の制御及び各種の演算等を行うCPUである。CPU1には、ROM2、RAM3、操作部4、表示部5、メモリ装着部6、画像処理装置10、画像入力装置25、画像メモリ26及び画像出力装置27等がバスを介して接続されており、これらの制御を行うようにしてある。なお、本図に示す画像形成装置は、所謂デジタルカラー複写機である。
ROM2は、マスクROM、EEPROM又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成され、CPU1が実行するプログラム及び実行に必要なデータ等が予め記憶されている。画像形成装置の電源投入後に、CPU1はROM2からプログラムを読み出して実行することにより処理を開始するようにしてある。RAM3は、SRAM、DRAM又はフラッシュメモリ等による容量が大きくデータの書き換えが可能なメモリ素子により構成され、CPU1が演算処理を行う際に発生するデータ及びユーザが設定する各種の設定値等を記憶するようにしてある。RAM3は不揮発性のメモリ素子であるか、又はバックアップ用の電池を備えていることが望ましく、また、ハードディスクで構成されていてもよい。
操作部4は、ファンクションキー、スタートキー、テンキー及び電源キー等を備えており、ユーザからの複写スタート指令又は複写設定の入力等の操作を受け付けることができるようにしてある。操作部4は、受け付けたユーザの操作をCPU1へ与えるようにしてある。表示部5は、液晶ディスプレイを備え、CPU1からの表示命令に基づいて、画像形成装置の動作状態、ユーザへの警告メッセージ、及びユーザの操作を補助する各種のメニュー等を液晶ディスプレイに表示するようにしてある。なお、操作部4及び表示部5は、両者を一体に構成したタッチパネルであってもよい。
メモリ装着部6は、所謂メモリカードスロットであり、SDメモリカード又はメモリスティック等のメモリカード50を着脱自在に装着することができるようにしてある。メモリ装着部6にメモリカード50が装着された場合、CPU1はメモリカード50に記憶されたデータの読み出し及びメモリカード50へのデータの書き込みを行うことができる。また、メモリカード50にプログラムコード51が記憶されている場合には、CPU1はメモリカード50からプログラムコード51を読み出してRAM3に記憶すると共に、プログラムコード51を実行してプログラムコード51に係る処理を行うことができるようにしてある。なお、ROM2が書き換え可能なメモリ素子で構成されている場合には、メモリカード50から読み出したプログラムコード51をROM2に記憶してもよい。
画像入力装置25は、原稿に光を照射する光源、CCD(Charge Coupled Device)などのイメージセンサが並設された受光部等を備えるスキャナにて構成されている。画像入力装置25は、CPU1の制御に基づいて、光源により原稿へ光を照射すると共に、受光部を一方向へ移動させて、原稿からの反射光をR(赤)G(緑)B(青)の3つの色成分に分解して受光部で読み取り、RGBのアナログ信号として画像処理装置10へ与えるようにしてある。
画像処理装置10は、A/D変換部11、シェーディング補正部12、入力階調補正部13、領域分離処理部14、色補正部15、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17及び階調再現処理部18等を備えている。A/D変換部11は、画像入力装置25から与えられたRGBのアナログ信号をデジタル信号、即ちRGBの画像データに変換するものであり、変換したRGBの画像データをシェーディング補正部12に与えるようにしてある。
シェーディング補正部12は、A/D変換部11から与えられたRGBの画像データに対して、画像入力装置25の照明系、結像系及び撮像系等において生じる各種の歪みを、予め取得してある情報に従って取り除くシェーディング処理を行い、シェーディング処理されたRGBの画像データを入力階調補正部13へ与えるようにしてある。入力階調補正部13は、シェーディング補正部12から与えられたRGBの画像データに対して、カラーバランスの調整、下地濃度の除去、及びコントラストの調整等の処理を行い、領域分離処理部14へ与えるようにしてある。
領域分離処理部14は、入力階調補正部13から与えられたRGBの画像データ中の各画素を、文字領域、網点領域、写真領域、下地領域又は万線領域等のいずれに属するかを判定し、各画素を分離するようにしてある。また、領域分離処理部14は、分離結果に基づいて、各画素がいずれの領域に属しているかを示す情報を、色補正部15、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17及び階調再現処理部18へ与えると共に、入力階調処理部13から与えられたRGBの画像データをそのまま色補正部15へ与えるようにしてある。なお、領域分離処理部14が行う処理の詳細は後述する。
色補正部15は、領域分離処理部14から与えられた各画素の領域情報に応じて、領域分離処理部14から与えられたRGBの画像データを、C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)の画像データに変換し、且つ、画像出力装置27での色再現の忠実化実現のために、CMYの各色成分に色補正処理を行うようにしてある。色補正処理は、具体的には、不要吸収成分をそれぞれ含むCMYのトナー又はインク等の分光特性に基づいた色濁りを、CMYの各色成分から取り除く処理である。色補正部15は、変換したCMYの画像データを黒生成下色除去部16へ与えるようにしてある。
黒生成下色除去部16は、領域分離処理部14から与えられた各画素の領域情報、及び色補正部15から与えられたCMYの画像データの各色成分に基づいて、K(黒)の色成分を生成する黒生成処理を行うと共に、CMYの各色成分に対して下色除去処理を行うようにしてある。下色除去処理は、黒生成処理にて生成されたKの色成分をCMYの色成分から差し引いて新たなCMYの色成分を取得する処理である。黒生成処理及び下色除去処理の結果、CMYの3つの色成分により構成される画像データは、CMYKの4つの色成分により構成される画像データに変換され、空間フィルタ処理部17へ与えられるようにしてある。
空間フィルタ処理部17は、領域分離処理部14から与えられた各画素の領域情報に応じて最適なデジタルフィルタ処理を選択し、黒生成下色除去部16から与えられたCMYKの画像データに対して空間フィルタ処理を行うようにしてある。これにより、画像の空間周波数特性が補正され、画像出力装置27が出力する画像にぼやけ又は粒状性劣化等を生じることが防止される。空間フィルタ処理部17は、空間フィルタ処理を施したCMYKの画像データを階調再現処理部18へ与えるようにしてある。
階調再現処理部18は、領域分離処理部14から与えられた各画素の領域情報に応じて、空間フィルタ処理部17から与えられたCMYKの画像データに対して、階調再現処理を行うようにしてある。階調再現処理は、画像データを複数の画素に分類して中間調を再現できるようにする処理であり、2値又は多値のディザ法又は誤差拡散法等を用いることができる。また、階調再現処理部18にて画像データの濃度値を画像出力装置27の特性値である網点面積率に変換する処理を行うことも可能である。階調再現処理部18は、階調再現処理を行った画像データを画像メモリ26へ与えるようにしてある。
例えば、領域分離処理部14にて文字領域に分離された領域は、空間フィルタ処理部17にて高周波を強調する空間フィルタ処理が施され、更に、階調再現処理部18にて高周波領域の再現に適した高解像度のスクリーンでの2値化又は多値化処理が施されて、黒文字又は色文字の再現性を高められるようにしてある。
また、領域分離処理部14にて網点領域に分離された領域は、空間フィルタ処理部17にて網点成分を除去するためのローパスフィルタ処理が施され、更に、階調再現処理部18にて画像データの濃度値を画像出力装置27の特性値である網点面積率に変換する処理を行った後、階調再現処理が施されるようにしてある。
また、領域分離処理部14にて万線領域に分離された領域は、空間フィルタ処理部17にて網点領域を処理する場合と比較してより平滑化を強く行うことができるフィルタ処理が施されるようにしてある。また、領域分離処理部14にて写真領域に分離された領域は、階調再現処理部18にて階調再現性を重視したスクリーンでの2値化又は多値化処理が施されるようにしてある。
画像処理装置10にて画像処理された画像データは、画像メモリ26に一時的に蓄えられるようにしてある。CPU1は、画像メモリ26に蓄えられた画像データを適宜のタイミングで読み出し、読み出した画像データを画像形成のタイミングに合わせて画像出力装置27へ与えるようにしてある。なお、画像メモリ26は、大容量のDRAM又はSRAM等により構成してある。
画像出力装置27は、与えられた画像データを紙などの記録媒体上に出力するものであり、電子写真方式又はインクジェット方式等の出力装置である。例えば、電子写真方式の場合には、画像出力装置27は、感光体ドラムを所定の電位に帯電する帯電器、与えられた画像データに応じてレーザ光を発して感光体ドラム表面に静電潜像を生成するレーザ書込器、感光体ドラム表面に生成された静電潜像にトナーを供給して顕像化する現像器及び感光体ドラム表面に形成されたトナー像を紙上に転写する転写器等を備える。
本実施の形態に係る画像形成装置は、画像入力装置25が原稿を読み取って取得した画像データを、領域分離処理部14にて領域毎に分離し、各領域の種類に応じて画像処理を行うことによって、より高画質な原稿の複写を行うことができるようにしてある。特に、画像データに万線領域が含まれているか否かを判定し、万線領域を分離することができるため、万線により中間調を再現された原稿の複写をより高画質に行うことができるようにしてある。
図2は、万線領域の一例を示す模式図であり、画像データから所定の大きさの万線領域を抜き出して拡大して図示したものである。万線領域では、例えば、画像の水平方向に対して0°の方向に平行に描かれた複数の直線70よって、原稿の画像の階調を擬似的に表現している(図2(a)参照)。また、画像の水平方向に対して0°の方向のみでなく、90°(図2(b)参照)、45°(図2(c)参照)、又は135°(図2(d)参照)等の他の方向に平行な複数の直線70によって描かれる場合もある。いずれの場合であっても、万線領域を構成する平行な複数の直線70は方向依存性を有しており、所定領域内で直線70の方向依存性の有無を判定することにより、所定領域が万線領域であるか否かを判定することができる。
図3は、万線領域の判定方法を説明するための模式図である。本実施の形態に係る画像形成装置の領域分離処理部14は、画像データ中の注目画素(図3にはハッチングを付して示してある)を含む7×7の正方形の領域(以下、7×7領域という)毎に、領域内に平行な複数の直線が存在し、この複数の直線が方向依存性を有しているか否かを判定することによって、注目画素が万線領域内の画素であるか否かを判定するようにしてある。この処理を画像データの全画素について繰り返し行うことによって、画像データから万線領域を特定し、分離することができる。
7×7領域内に平行な複数の直線が存在し、この複数の直線が方向依存性を有しているか否かの判定は、例えば0°(図3(A)参照)、90°(図3(B)参照)、45°(図3(C)参照)、135°(図3(D)参照)の4つの方向について、隣接する画素間での濃度(画素値)の差の絶対値の総和(以下、総和濃度繁雑度という)をそれぞれ算出し、予め定められた閾値とそれぞれ比較することによって行うことができる。図4は、総和濃度繁雑度を4つの方向について算出した算出結果を示す図表であり、図2(a)〜(d)の領域に対する算出結果を表1〜4にそれぞれ示してある。
このように、4つの方向のいずれかの方向に対して方向依存性を有している場合、特定の方向にのみ総和濃度繁雑度の値が小さく、他の方向では総和濃度繁雑度の値が大きくなる。よって、算出した4つの総和濃度繁雑度と閾値とを比較し、特定の方向についての総和濃度繁雑度のみが閾値より小さい場合、この領域の注目画素を万線領域に含まれる画素であると判定することができる。または、0°及び90°の総和濃度繁雑度の差分と、45°及び135°の総和濃度繁雑度の差分とを更に算出し、2つの差分のいずれかが閾値より大きい場合に、この領域の注目画素を万線領域に含まれる画素であると判定することもできる。
また、領域分離処理部14は、画像データから万線領域を分離するのみではなく、その他に下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域等の領域を分離することができるようにしてある。これらの領域が画像データ中に存在するか否かの判定は、上述の総和濃度繁雑度と、7×7領域中の最大濃度値及び最小濃度値の差分である最大濃度差とを算出し、予め定められた閾値と比較することによって行うことができる。
(1)下地領域の濃度分布は濃度変化が非常に少ないため、最大濃度差及び総和濃度繁雑度が共に非常に小さい値である。
(2)写真領域の濃度分布は滑らかに濃度変化するため、最大濃度差及び総和濃度繁雑度は共に小さい値であるが、最大濃度差は下地領域の場合よりは大きい値である。
(3)網点領域の場合、最大濃度差は網点の種類により異なるが、網点の数だけ濃度変化が存在するため、最大濃度差に対する総和濃度繁雑度の割合が大きい。よって、総和濃度繁雑度が、最大濃度差と網点領域判定用の閾値との積よりも大きい場合には、注目画素が網点領域に含まれる画素であると判定することができる。
(4)文字領域の場合、最大濃度差が大きく、総和濃度繁雑度が大きいが、網点領域よりも濃度変化が少ないため、網点領域より総和濃度繁雑度は小さい。よって、総和濃度繁雑度が、最大濃度差と上述の網点領域判定用の閾値との積よりも小さい場合には、注目画素が文字領域に含まれる画素であると判定することができる。
以上の条件により、注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定することができる。図5は、本発明に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理の手順を示すフローチャートである。領域分離処理部14は、まず、入力階調補正部13から与えられた画像データから注目画素と、注目画素を含む7×7領域とのデータを抽出し(ステップS1)、抽出したデータから最大濃度値を算出し(ステップS2)、最小濃度値を算出して(ステップS3)、最大濃度差を算出する(ステップS4)。
次いで、一の方向について隣接する画素間での濃度差の絶対値の総和を求めることにより総和濃度繁雑度を算出する(ステップS5)。0°、90°、45°及び135°の全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了したか否かを調べ(ステップS6)、全ての方向について算出を終了していない場合には(S6:NO)、ステップS5へ戻り、未算出の方向について算出を行う。全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了した場合(S6:YES)、注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定する領域判定処理を行う(ステップS7)。
図6は、本発明に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域判定処理の手順を示すフローチャートであり、図5のステップS7にて行われる処理を示してある。ステップS5にて算出した4つの総和濃度繁雑度を比較して方向依存性の有無を判定し(ステップS21)、方向依存性がある場合には(S21:YES)、注目画素が万線領域に含まれる画素であると判定する(ステップS26)。
総和濃度繁雑度に方向依存性がない場合(S21:NO)、ステップS4にて算出した最大濃度差と、下地領域・写真領域又は文字領域・網点領域を区別するための第1の閾値Th1とを比較して、最大濃度差が閾値Th1より小さいか否かを調べる(ステップS22)。最大濃度差が閾値Th1より小さい場合(S22:YES)、4つの総和濃度繁雑度と第2の閾値Th2とをそれぞれ比較し、全ての方向について総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さいか否かを調べる(ステップS23)。
総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さい場合(S23:YES)、最大濃度差と、閾値Th1より値が小さい第3の閾値Th3とを比較して、最大濃度差が閾値Th3より小さいか否かを調べる(ステップS24)。最大濃度差が閾値Th3より小さい場合(S24:YES)、注目画素が下地領域に含まれる画素であると判定し(ステップS27)、最大濃度差が閾値Th3以上の場合(S24:NO)、注目画素が写真領域に含まれる画素であると判定する(ステップS28)。
最大濃度差が閾値Th1以上の場合(S22:NO)、又は少なくとも1つの総和濃度繁雑度が閾値Th2以上の場合(S23:NO)、4つの総和濃度繁雑度と、最大濃度差及び第4の閾値Th4の積とをそれぞれ比較し、全ての総和濃度繁雑度が最大濃度差及び閾値Th4の積より小さいか否かを調べる(ステップS25)。総和濃度繁雑度が最大濃度差及び閾値Th4の積より小さい場合(S25:YES)、注目画素が文字領域に含まれる画素であると判定し(ステップS29)、少なくとも1つの総和濃度繁雑度が最大濃度差及び閾値Th4の積以上の場合(S25:NO)、注目画素が網点領域に含まれる画素であると判定する(ステップS30)。
注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定した後、判定結果を領域分離処理部14内の図示しない記憶部に記憶し(ステップS8)、画像データの全ての画素について処理を終了したか否かを調べる(ステップS9)。全ての画素について処理を終了していない場合(S9:NO)、ステップS1へ戻り、上述の処理を全ての画素について繰り返し行う。全ての画素について処理を終了した場合(S9:YES)、領域分離処理部14は領域分離処理を終了する。ステップS8にて記憶した全ての画素についての判定結果が領域分離の結果であり、これを色補正部15、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17及び階調再現処理部18へ与えるようにしてある。
なお、これらの処理を行うためのプログラムのプログラムコード51は、ROM2に予め記憶しておく構成であってもよく、ROM2に記憶されていない場合にはメモリカード50に記憶されたプログラムコード51を読み出すことで処理を行う構成としてもよい。また、プログラムコード51の供給媒体はメモリカード50に限らず、磁気テープ若しくはカセットテープ等のテープ媒体、フレキシブルディスク又はハードディスク等の磁気ディスク媒体、CD、MD、MO若しくはDVD等のディスク媒体、又はICカード若しくは光カード等のカード媒体等の他の媒体であってもよく、画像形成装置がインターネットなどのネットワークを利用した通信を行う機能を有している場合には、ネットワークを介してプログラムコードを取得する構成としてもよい。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
図7は、本発明に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理を説明するための模式図である。領域分離処理部14に与えられた7×7領域の入力データは、最小濃度値算出部151、最大濃度値算出部152及び総和濃度繁雑度算出部154にそれぞれ与えられるようにしてある。最小濃度値算出部151は、図5及び図6に示したフローチャートのステップS3に相当する処理を行うものであり、入力データ中の各画素の最小濃度値を算出して最大濃度差算出部153へ与えるようにしてある。最大濃度値算出部152は、ステップS2に相当する処理を行うものであり、各画素の最大濃度値を算出して最大濃度差算出部153へ与えるようにしてある。最大濃度差算出部153は、ステップS4に相当する処理を行うものであり、最大濃度値算出部152が算出した最大濃度値と最小濃度値算出部151が算出した最小濃度値との差分を算出して領域判定部157へ与えるようにしてある。また、総和濃度繁雑度算出部154は、ステップS5及びS6に相当する処理を行うものであり、各方向の総和濃度繁雑度を算出して領域判定部157へ与えるようにしてある。
領域判定部157は、ステップS21〜S23に相当する処理を行うものであり、第1閾値設定部155に設定された閾値Th1、第2閾値設定部156に設定された閾値Th2、最大濃度差算出部153から与えられた最大濃度差、及び総和濃度繁雑度算出部154から与えられた総和濃度繁雑度を基に、入力データが文字領域若しくは網点領域であるか、万線領域であるか、又は、下地領域若しくは写真領域であるかを判定する。このとき、総和濃度繁雑度が方向依存性を有する場合、入力データが万線領域であると判定し、万線領域特定部164に判定結果を通知するようにしてある。総和濃度繁雑度が方向依存性を有しておらず、最大濃度差が閾値Th1より小さく、全方向の総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さい場合には、入力データが下地領域又は写真領域であると判定し、下地/写真領域判定部160に判定結果を通知するようにしてある。また、これら以外の場合には、入力データが文字領域又は網点領域であると判定し、文字/網点領域判定部159に判定結果を通知するようにしてある。
文字/網点領域判定部159は、ステップS25に相当する処理を行うものであり、全方向の総和濃度繁雑度が最大濃度差と第4閾値設定部158に設定された閾値Th4との積より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合には入力データが文字領域であると判定して、文字領域特定部162へ判定結果を通知し、この条件が成立しない場合には入力データが網点領域であると判定して、網点領域特定部163へ判定結果を通知するようにしてある。下地/写真領域判定部160は、ステップS24に相当する処理を行うものであり、最大濃度差が第3閾値設定部161に設定された閾値Th3より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合には入力データが下地領域であると判定して、下地領域特定部165へ判定結果を通知するようにしてあり、この条件が成立しない場合には入力データが写真領域であると判定して、写真領域特定部166へ判定結果を通知するようにしてある。
文字領域特定部162、網点領域特定部163、万線領域特定部164、下地領域特定部165及び写真領域特定部166は、領域判定部157、文字/網点領域判定部159又は下地/写真領域判定部160から通知される判定結果に応じて入力データの特定を行い、特定結果を領域識別信号として出力するようにしてある。
以上の構成の画像形成装置においては、画像入力装置25にて読み取った原稿に係る画像データを、画像処理装置10にて万線領域、下地領域、写真領域、網点領域及び文字領域等の複数の領域に分離し、各領域に最適なフィルタ処理及び階調再現処理等を行うことによって、画像出力装置27が出力する画像の画質を高めることができる。特に、万線領域を確実に特定することができるため、万線領域を含む画像を高画質で出力することができる。また、万線領域を簡単に且つ精度よく特定することができるため、万線領域を特定する機能を追加することによる画像形成装置のコストの増加を抑制することができる。
なお、本実施の形態においては、領域分離処理部14は、与えられた画像データから注目画素を含む7×7領域毎に処理を行う構成としたが、これに限るものではなく、別のサイズの領域毎に処理を行う構成であってもよい。また、総和濃度繁雑度を0°、90°、45°及び135°の4方向について算出する構成としたが、これに限るものではなく、3方向以下又は5方向以上について総和濃度繁雑度を算出し、方向依存性を判定する構成としてもよい。また、総和濃度繁雑度を基に方向依存性を判定する構成としたが、これに限るものではなく、他の方法で方向依存性を判定する構成としてもよい。例えば、与えられた画像データを2値化し、図3に示す4つの方向に関して、隣接する画素の画素値が”0”から”1”へ、又は”1”から”0”へ反転する回数をカウントし、カウントした反転回数を総和濃度繁雑度に代えて方向依存性の判定に用いることができる。また、画像形成装置を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、画像処理を行う機能を有する他の装置に同様の構成を適用することができる。例えばパーソナルコンピュータ、スキャナ及びプリンタ等を備えるコンピュータシステムに同様の構成を適用することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る画像形成装置は、注目画素が万線領域に含まれる画素であるか否かを判定する条件が、実施の形態1に係る画像形成装置の場合と若干異なる。実施の形態1においては、最大濃度差を7×7領域中の最大濃度値及び最小濃度値の差分としたが、実施の形態2においては、最大濃度差を0°、90°、45°及び135°の4つの方向についてそれぞれ算出する。即ち、例えば図3(A)の場合には、まず横方向(0°方向)の各列について7つの画素の最大濃度差をそれぞれ算出し、それぞれ算出した7つの最大濃度差のうちの最も値が大きいものを、この方向での最大濃度差(以下、方向最大濃度差という)とする。これを各方向についてそれぞれ算出する。図8は、総和濃度繁雑度及び方向最大濃度差を4つの方向について算出した算出結果を示す図表であり、図2(a)〜(d)の領域に対する算出結果を表5〜8にそれぞれ示してある。
このように、4つの方向のいずれかの方向に対して方向依存性を有している場合、特定の方向にのみ総和濃度繁雑度及び方向最大濃度差の値が小さく、他の方向では総和濃度繁雑度及び方向最大濃度差の値が大きい。よって、総和濃度繁雑度と共に、各方向についての方向最大濃度差を判定の条件として用いることができる。
図9は、本発明の実施の形態2に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理の手順を示すフローチャートである。領域分離処理部14は、まず、入力階調補正部13から与えられた画像データから注目画素と、注目画素を含む7×7領域とのデータを抽出する(ステップS41)。次いで、抽出したデータから、一の方向について総和濃度繁雑度を算出すると共に(ステップS42)、方向最大濃度差を算出する(ステップS43)。0°、90°、45°及び135°の全ての方向について総和濃度繁雑度及び方向最大濃度差の算出を終了したか否かを調べ(ステップS44)、全ての方向について算出を終了していない場合には(S44:NO)、ステップS42へ戻り、未算出の方向について算出を行う。全ての方向について総和濃度繁雑度及び方向最大濃度差の算出を終了した場合(S44:YES)、注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定する領域判定処理を行う(ステップS45)。
図10は、本発明の実施の形態2に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域判定処理の手順を示すフローチャートであり、図9のステップS45にて行われる処理を示してある。領域判定処理では、まず、ステップS43にて算出した4つの方向最大濃度差と第1の閾値Th1とをそれぞれ比較して、全ての方向について方向最大濃度差が閾値Th1より小さいか否かを調べる(ステップS61)。方向最大濃度差が閾値Th1より小さい場合(S61:YES)、ステップS42にて算出した4つの総和濃度繁雑度と第2の閾値Th2とをそれぞれ比較して、全ての方向について総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さいか否かを調べる(ステップS62)。
総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さい場合(S62:YES)、更に4つの方向最大濃度差と第3の閾値Th3とをそれぞれ比較して、全ての方向について方向最大濃度差が閾値Th3より小さいか否かを調べる(ステップS63)。方向最大濃度差が閾値Th3より小さい場合(S63:YES)、注目画素が下地領域に含まれる画素であると判定し(ステップS67)、少なくとも1つの方向最大濃度差が閾値Th3以上の場合(S63:NO)、注目画素が写真領域に含まれる画素であると判定する(ステップS68)。
ステップS61にて少なくとも1つの方向最大濃度差が閾値Th1以上の場合(S61:NO)、又はステップS62にて少なくとも1つの総和濃度繁雑度が閾値Th2以上の場合(S62:NO)、4つの総和濃度繁雑度を比較して方向依存性の有無を判定し(ステップS64)、方向依存性がある場合には(S64:YES)、更に4つの方向最大濃度差を比較して方向依存性の有無を判定する(ステップS65)。方向最大濃度差に方向依存性がある場合(S65:YES)、注目画素が万線領域に含まれる画素であると判定する(ステップS69)。
万線領域の場合、図8の表5〜表8に示すように、方向最大濃度差及び総和濃度繁雑度が少なくとも1つの方向について小さい値であるため、方向最大濃度差と閾値Th1とを比較し、総和濃度繁雑度と閾値Th2とを比較して、いずれかの方向について方向最大濃度差及び総和濃度繁雑度が閾値以上の場合のみ、注目画素を万線領域に含まれる画素と判定する条件を加えることによって、より判定の精度を高めることができる。
ステップS64にて総和濃度繁雑度に方向依存性がない場合(S64:NO)、又はステップS65にて方向最大濃度差に方向依存性がない場合(S65:NO)、4つの総和濃度繁雑度と、4つの方向最大濃度差の中で最も値が大きな最大濃度差(以下、領域最大濃度差という)及び第4の閾値Th4の積とを比較し、全ての方向について総和濃度繁雑度が領域最大濃度差及び閾値Th4の積より小さいか否かを調べる(ステップS66)。総和濃度繁雑度が領域最大濃度差及び閾値Th4の積より小さい場合(S66:YES)、注目画素が文字領域に含まれる画素であると判定し(ステップS70)、少なくとも1つの総和濃度繁雑度が領域最大濃度差及び閾値Th4の積以上の場合(S66:NO)、注目画素が網点領域に含まれる画素であると判定する(ステップS71)。
注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定した後、判定結果を領域分離処理部14内の図示しない記憶部に記憶し(ステップS46)、画像データの全ての画素について処理を終了したか否かを調べる(ステップS47)。全ての画素について処理を終了していない場合(S47:NO)、ステップS41へ戻り、上述の処理を全ての画素について繰り返し行う。全ての画素について処理を終了した場合(S47:YES)、領域分離処理部14は領域分離処理を終了する。
図11は、本発明の実施の形態2に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理を説明するための模式図である。領域分離処理部14に与えられた7×7領域の入力データは、方向最大濃度差算出部201及び総和濃度繁雑度算出部202にそれぞれ与えられるようにしてある。方向最大濃度差算出部201は、図9及び図10に示したフローチャートのステップS43及びS44に相当する処理を行うものであり、入力データ中の各画素の最大濃度差を各方向について算出し、領域判定部205へ与えるようにしてある。総和濃度繁雑度算出部202は、ステップS42及びS44に相当する処理を行うものであり、各方向の総和濃度繁雑度を算出して領域判定部205へ与えるようにしてある。
領域判定部205は、ステップS61及びS62に相当する処理を行うものであり、第1閾値設定部203に設定された閾値Th1、第2閾値設定部204に設定された閾値Th2、方向最大濃度差算出部201から与えられた各方向の最大濃度差、及び総和濃度繁雑度算出部202から与えられた総和濃度繁雑度を基に、入力データが文字領域、網点領域若しくは万線領域であるか、又は、下地領域若しくは写真領域であるかを判定するようにしてある。このとき、領域判定部205は、全方向の方向最大濃度差が閾値Th1より小さく、且つ、全方向の総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合は入力データが下地領域又は写真領域であると判定し、判定結果を下地/写真領域判定部209へ通知するようにしてある。また、この条件が成立しない場合には、入力データが文字領域、網点領域又は万線領域であると判定し、判定結果を文字・網点/万線領域判定部206へ通知するようにしてある。
文字・網点/万線領域判定部206は、ステップS64及びS65に相当する処理を行うものであり、総和濃度繁雑度が方向依存性を有し、且つ、方向最大濃度差が方向依存性を有するか否かを調べ、この条件が成立する場合は入力データが万線領域であると判定し、判定結果を万線領域特定部213へ通知する、また、この条件が成立しない場合には、入力データが文字領域又は網点領域であると判定し、文字/網点領域判定部208へ判定結果を通知するようにしてある。
文字/網点領域判定部208は、ステップS66に相当する処理を行うものであり、全方向の総和濃度繁雑度が領域最大濃度差と第4閾値設定部207に設定された閾値Th4との積より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合には入力データが文字領域であると判定して、文字領域特定部211へ判定結果を通知し、この条件が成立しない場合には入力データが網点領域であると判定して、網点領域特定部212へ判定結果を通知するようにしてある。下地/写真領域判定部209は、ステップS63に相当する処理を行うものであり、全方向の方向最大濃度差が第3閾値設定部210に設定された閾値Th3より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合には入力データが下地領域であると判定して、下地領域特定部214へ判定結果を通知するようにしてあり、この条件が成立しない場合には入力データが写真領域であると判定して、写真領域特定部215へ判定結果を通知するようにしてある。
文字領域特定部211、網点領域特定部212、万線領域特定部213、下地領域特定部214及び写真領域特定部215は、文字・網点/万線領域判定部206、文字/網点領域判定部208、又は下地/写真領域判定部209から通知される判定結果に応じて入力データの特定を行い、特定結果を領域識別信号として出力するようにしてある。
以上の構成の実施の形態2に係る画像形成装置においては、注目画素が万線領域に含まれる画素であるか否かを判定する場合に、0°、90°、45°及び135°の4つの方向についての総和濃度繁雑度のみでなく、方向最大濃度差を用いて判定を行う構成とすることにより、より判定の精度を高めることができる。
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の構成は、実施の形態1に係る画像形成装置の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。実施の形態3に係る画像形成装置が有する画像処理装置110は、図1に示した実施の形態1に係る画像形成装置が有する画像処理装置10に対して、シェーディング補正部12及び入力階調補正部13の間に原稿種別判別部119を設けた構成である。
シェーディング補正部12は、A/D変換部11から与えられたRGBの画像データに対してシェーディング処理を行い、シェーディング処理を行ったRGBの画像データを原稿種別判別部119へ与えるようにしてある。原稿種別判別部119は、シェーディング補正部12から与えられたRGBの画像データから、画像入力装置25が読み取った原稿の種別を判別する処理(詳細は後述する)を行い、判別結果を入力階調補正部13、領域分離処理部14、色補正部15、黒生成下色除去部16、空間フィルタ処理部17及び階調再現処理部18へ与えるとともに、RGBの画像データを入力階調補正部13へ与えるようにしてある。入力階調補正部13は、原稿種別判別部119から与えられたRGBの画像データに対して、カラーバランスの調整、下地濃度の除去、及びコントラストの調整等の処理を行い、領域分離処理部14へ与えるようにしてある。
原稿種別判別部119は、与えられた画像データを基に、画像入力装置25が読み取った原稿が、文字原稿、文字網点原稿、文字万線原稿、網点原稿、万線原稿、写真原稿又は文字写真原稿の7種の原稿のいずれであるかを判別するようにしてある。なお、文字網点原稿(文字印刷写真原稿)とは文字領域及び網点領域(印刷写真)の両方を含む原稿であり、文字万線原稿とは文字領域及び万線領域の両方を含む原稿であり、文字写真原稿とは文字領域及び写真領域(例えば、印刷紙写真)の両方を含む原稿である。原稿種別判別部119は、領域分離処理部14と同じ方法により、与えられた画像データの各画素の判定を行って、各画素が万線領域、下地領域、写真領域、文字領域又は網点領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを調べると共に、各領域の画素数をカウントし、得られた各領域の画素数の全画素数に対する比率を算出し、算出した比率に応じて原稿種別を判別するようにしてある。
例えば、文字領域の比率及び網点領域の比率が予め定められた閾値Th11より大きい場合には、原稿の種別を文字網点原稿と判別し、文字領域の比率及び万線領域の比率が予め定められた閾値Th12より大きい場合には、原稿の種別を文字万線原稿と判別し、文字領域の比率及び写真領域の比率が予め定められた閾値Th13より大きい場合には、原稿の種別を文字写真原稿と判別するようにしてある。また、文字領域の比率が30%より大きい場合には、原稿の種別を文字原稿と判別し、網点領域の比率が20%より大きい場合には、原稿の種別を網点原稿と判別し、万線領域の比率が20%より大きい場合には、原稿の種別を万線原稿と判別し、写真領域の比率が10%より大きい場合には、原稿の種別を写真原稿と判別するようにしてある。
原稿種別判別部119による原稿種別の判別結果は後段の各部に与えられ、原稿種別に適した画像処理を各部が行うことができるようにしてある。例えば、原稿種別判別部119にて原稿が文字万線原稿と判別された場合、領域分離処理部14は文字検知を行わないように設定することができる。また、空間フィルタ処理部17は、網点領域を処理する場合と比較してより平滑化を強く行うことができるフィルタ処理を施すことができる。フィルタ係数については、種々の画像サンプルを用いてフィルタ処理を行い、適切な画像が形成される値を設定すれば良い。
図13乃至図15は、本発明の実施の形態3に係る画像形成装置の原稿種別判別部119が行う原稿種別の判別処理の手順を示すフローチャートである。原稿種別判別部119は、文字領域、網点領域、万線領域、写真領域及び下地領域の画素数をそれぞれカウントする5つのカウンタ(図示せず)を有しており、原稿種別の判別処理では、まずこの5つのカウンタを初期化する(ステップS91)。次いで、シェーディング補正部12から与えられた画像データから注目画素と、注目画素を含む7×7領域とのデータを抽出し(ステップS92)、抽出したデータから最大濃度値を算出し(ステップS93)、最小濃度値を算出して(ステップS94)、最大濃度差を算出する(ステップS95)。
次いで、一の方向について総和濃度繁雑度を算出し(ステップS96)、0°、90°、45°及び135°の全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了したか否かを調べ(ステップS97)、全ての方向について算出を終了していない場合には(S97:NO)、ステップS96へ戻り、未算出の方向について算出を行う。全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了した場合(S97:YES)、注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定する領域判定処理を行う(ステップS98)。ステップS98にて行う領域判定処理は、図6に示す処理と同じであるので図示を省略する。
領域判定処理終了後、判定結果に応じて5つのカウンタのうちの対応する1つのカウンタをカウントアップする更新を行い(ステップS99)、画像データの全ての画素について領域判定処理を終了したか否かを調べる(ステップS100)。全ての画素について領域判定処理を終了していない場合(S100:NO)、ステップS92へ戻り、ステップS92〜S99の処理を全ての画素について繰り返し行う。
全ての画素について領域判定処理を終了した場合(S100:YES)、5つのカウンタの値及び画像データの全画素数を基に、画像データに対する各領域の比率を算出する(ステップS101)。文字領域の比率が閾値Th11より大きく、且つ、網点領域の比率が閾値Th11より大きいか否かを調べ(ステップS102)、この条件が成立する場合(S102:YES)、原稿が文字網点原稿であると判別する(ステップS103)。この条件が成立しないときは(S102:NO)、文字領域の比率が閾値Th12より大きく、且つ、万線領域の比率が閾値Th12より大きいか否かを調べ(ステップS104)、この条件が成立する場合(S104:YES)、原稿が文字万線原稿であると判別する(ステップS105)。この条件が成立しないときは(S104:NO)、文字領域の比率が閾値Th13より大きく、且つ、写真領域の比率が閾値Th13より大きいか否かを調べ(ステップS106)、この条件が成立する場合(S106:YES)、原稿が文字写真原稿であると判別する(ステップS107)。
文字領域の比率が閾値Th13以下、又は、写真領域の比率が閾値Th13以下のとき(S106:NO)、文字領域の比率が30%より大きいか否かを調べ(ステップS108)、文字領域の比率が30%より大きい場合(S108:YES)、原稿が文字原稿であると判別する(ステップS109)。文字領域の比率が30%以下のとき(S108:NO)、網点領域の比率が20%より大きいか否かを調べ(ステップS110)、網点領域の比率が20%より大きい場合(S110:YES)、原稿が網点原稿であると判別する(ステップS111)。網点領域の比率が20%以下のとき(S110:NO)、万線領域の比率が20%より大きいか否かを調べ(ステップS112)、万線領域の比率が20%より大きい場合(S112:YES)、原稿が万線原稿であると判別する(ステップS113)。万線領域の比率が20%以下のとき(S112:NO)、写真領域の比率が10%より大きいか否かを調べ(ステップS114)、写真領域の比率が10%より大きい場合(S114:YES)、原稿が写真原稿であると判別する(ステップS115)。写真領域の比率が10%以下のとき(S114:NO)、原稿がその他の原稿であると判別する(ステップS116)。ステップS103、S105、S107、S109、S111、S113、S115又はS116にて原稿種別を判別した後、原稿種別の判別処理を終了する。
図16は、本発明の実施の形態3に係る画像形成装置の原稿種別判別部119が行う原稿種別の判別処理を説明するための模式図である。原稿種別判別部119に与えられた7×7領域の入力データは、最小濃度値算出部301、最大濃度値算出部302及び総和濃度繁雑度算出部304にそれぞれ与えられるようにしてある。最小濃度値算出部301は、図13に示したフローチャートのステップS94に相当する処理を行うものであり、入力データ中の各画素の最小濃度値を算出して最大濃度差算出部303へ与えるようにしてある。最大濃度値算出部302は、ステップS93に相当する処理を行うものであり、各画素の最大濃度値を算出して最大濃度差算出部303へ与えるようにしてある。最大濃度差算出部303は、ステップS95に相当する処理を行うものであり、最大濃度値算出部302が算出した最大濃度値と最小濃度値算出部301が算出した最小濃度値との差分を算出して領域判定部307へ与えるようにしてある。また、総和濃度繁雑度算出部304は、ステップS96及びS97に相当する処理を行うものであり、各方向の総和濃度繁雑度を算出して領域判定部307へ与えるようにしてある。
領域判定部307は、図6に示すフローチャートのステップS21〜S23に相当する処理を行うものであり、第1閾値設定部305に設定された閾値Th1、第2閾値設定部306に設定された閾値Th2、最大濃度差算出部303から与えられた最大濃度差、及び総和濃度繁雑度算出部304から与えられた総和濃度繁雑度を基に、入力データが文字領域若しくは網点領域であるか、万線領域であるか、又は、下地領域若しくは写真領域であるかを判定する。このとき、総和濃度繁雑度が方向依存性を有する場合、入力データが万線領域であると判定し、万線カウンタ314をカウントアップするようにしてある。総和濃度繁雑度が方向依存性を有しておらず、最大濃度差が閾値Th1より小さく、全方向の総和濃度繁雑度が閾値Th2より小さい場合には、入力データが下地領域又は写真領域であると判定し、下地/写真領域判定部310に判定結果を通知するようにしてある。また、これら以外の場合には、入力データが文字領域又は網点領域であると判定し、文字/網点領域判定部309に判定結果を通知するようにしてある。
文字/網点領域判定部309は、ステップS25に相当する処理を行うものであり、全方向の総和濃度繁雑度が最大濃度差と第4閾値設定部308に設定された閾値Th4との積より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合には入力データが文字領域であると判定して、文字カウンタ312をカウントアップし、この条件が成立しない場合には入力データが網点領域であると判定して、網点カウンタ313をカウントアップするようにしてある。下地/写真領域判定部310は、ステップS24に相当する処理を行うものであり、最大濃度差が第3閾値設定部311に設定された閾値Th3より小さいか否かを調べ、この条件が成立する場合には入力データが下地領域であると判定して、下地カウンタ315をカウントアップし、この条件が成立しない場合には入力データが写真領域であると判定して、写真カウンタ316をカウントアップするようにしてある。
文字カウンタ312、網点カウンタ313、万線カウンタ314、下地カウンタ315及び写真カウンタ316は、カウンタの値をそれぞれ原稿判定部317へ与えるようにしてある。原稿判定部317は、図13乃至図15に示したフローチャートのステップS101〜S116に相当する処理を行うものであり、5つのカウンタから与えられた5つの値を基に、文字領域、網点領域、万線領域、下地領域及び写真領域の比率を算出して、入力データに係る原稿が文字網点原稿、文字万線原稿、文字写真原稿、文字原稿、網点原稿、万線原稿又は写真原稿のいずれであるかを判定し、判定結果を原稿種別判別信号として出力するようにしてある。
以上の構成の実施の形態3に係る画像形成装置においては、原稿種別を予め判別しておくことによって、後段の各部が原稿種別に最適な画像処理を行うことができるという利点がある。なお、原稿種別の判別は、画像入力装置25にてプレスキャンを行って原稿に係る画像データを取得した場合に行う構成であってもよく、予め他の記憶手段に一旦格納された画像データを読み出して行う構成であってもよい。また、原稿を文字網点原稿、文字万線原稿、文字写真原稿、文字原稿、網点原稿、万線原稿又は写真原稿の7種に判別する構成としたが、これに限るものではなく、その他の種類の原稿を判別する構成としてもよい。また、文字原稿、網点原稿、万線原稿及び写真原稿の判別の閾値として示した比率は一例であってこれに限るものではない。
なお、実施の形態3に係る画像形成装置のその他の構成は、実施の形態1に係る画像形成装置の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
(実施の形態4)
実施の形態4に係る画像形成装置は、注目画素が文字領域、網点領域、万線領域、下地領域又は写真領域のいずれに含まれる画素であるかを判定する条件が実施の形態1乃至実施の形態3に係る画像形成装置と若干異なる構成である。実施の形態4に係る画像形成装置は、7×7領域の各画素の濃度値の標準偏差を算出すると共に、実施の形態1に係る画像形成装置と同様に、総和濃度繁雑度及び最大濃度差を算出し、これらの値を基に判定を行うようにしてある。
図17は、各画素の濃度値の変化の一例を示す模式図であり、(a)に下地領域の場合を示し、(b)に写真領域の場合を示し、(c)に網点領域又は万線領域の場合を示し、(d)に文字領域の場合を示してある。なお、図中の縦方向に各画素の画素値の大小を示し、横方向に隣接する複数の画素の並びを示してある。
文字領域の場合(図17(d)参照)、最大濃度差は大きく、平均濃度値に対する各画素の濃度値の差も大きいため、標準偏差は大きい。よって、標準偏差が所定の閾値Th1より大きい場合には、7×7領域が文字領域であると判定することができる。
網点領域の場合(図17(c)参照)、最大濃度差は網点の構成によって異なるため原稿毎に様々な値となるが、網点の数に応じて均等な濃度値の変化が存在するため標準偏差は、文字領域の場合より小さいがある程度の大きな値となる。また、万線領域の場合も同様である。よって、標準偏差が所定の閾値Th2(ただし、Th2<Th1とする)より大きい場合には、7×7領域が網点領域又は万線領域であると判定することができる。なお、網点領域及び万線領域は、実施の形態1にて示したように、総和濃度繁雑度が方向依存性を有しているか否かに応じて区別することができる。
下地領域の場合(図17(a)参照)、各画素の濃度値の差が少ないため、最大濃度差及び標準偏差は共に小さい。よって、標準偏差が上述の閾値Th2より小さく、最大濃度差が所定の閾値Th3より小さい場合には、7×7領域が下地領域であると判定することができる。
写真領域の場合(図17(b)参照)、各画素の濃度値は滑らかに変化するため最大濃度差及び標準偏差は共に小さいが、最大濃度差は下地領域の場合と比較して大きい。よって、標準偏差が上述の閾値Th2より小さく、最大濃度差が上述の閾値Th3より大きい場合には、7×7領域が写真領域であると判定することができる。
図18は、本発明の実施の形態4に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理の手順を示すフローチャートである。領域分離処理部14は、まず、入力階調補正部13から与えられた画像データから注目画素と、注目画素を含む7×7領域とのデータを抽出し(ステップS131)、抽出した7×7領域の各画素の濃度値の標準偏差を算出する(ステップS132)。なお、標準偏差σは以下の(1)式を用いて算出することができる。(1)式において、nは画素数(n=7×7=49)であり、Pi(i=1〜n)は各画素の濃度値であり、Paveは各画素の濃度値の平均値である。
次いで、各画素の濃度値から最大濃度値を算出し(ステップS133)、最小濃度値を算出して(ステップS134)、算出した最大濃度値及び最小濃度値の差分を算出することによって最大濃度差を算出する(ステップS135)。
また、一の方向について隣接する画素間での濃度差の絶対値の総和を求めることにより総和濃度繁雑度を算出する(ステップS136)。0°、90°、45°及び135°の全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了したか否かを調べ(ステップS137)、全ての方向について算出を終了していない場合には(S137:NO)、ステップS136へ戻り、未算出の方向について算出を行う。全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了した場合(S137:YES)、注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定する領域判定処理を行う(ステップS138)。
図19は、本発明の実施の形態4に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域判定処理の手順を示すフローチャートであり、図18のステップS138にて行われる処理を示してある。領域判定処理では、まず、ステップS132にて算出した標準偏差が予め定められた閾値Th1より大きいか否かを調べ(ステップS141)、標準偏差が閾値Th1より大きい場合(S141:YES)、注目画素が文字領域に含まれる画素であると判定する(ステップS145)。
標準偏差が閾値Th1以下の場合(S141:NO)、閾値Th1より小さい値の閾値Th2と標準偏差とを比較して、標準偏差が閾値Th2より大きいか否かを調べる(ステップS142)。標準偏差が閾値Th2より大きい場合(S142:YES)、ステップS136にて算出した4つの総和濃度繁雑度を比較して方向依存性の有無を判定する(ステップS143)。総和濃度繁雑度に方向依存性がある場合には(S143:YES)、注目画素が万線領域に含まれる画素であると判定し(ステップS146)、方向依存性がない場合には(S143:NO)、注目画素が網点領域に含まれる画素であると判定する(ステップS147)。
ステップS142にて標準偏差が閾値Th2以下の場合(S142:NO)、ステップS135にて算出した最大濃度差が所定の閾値Th3より小さいか否かを調べる(ステップS144)。最大濃度差が閾値Th3より小さい場合(S144:YES)、注目画素が下地領域に含まれる画素であると判定し(ステップS148)、最大濃度差が閾値Th3以上の場合(S144:NO)、注目画素が写真領域に含まれる画素であると判定する(ステップS149)。
注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定した後、図18に示す領域分離処理に戻って、判定結果を領域分離処理部14内の図示しない記憶部に記憶し(ステップS139)、画像データの全ての画素について処理を終了したか否かを調べる(ステップS140)。全ての画素について処理を終了していない場合(S140:NO)、ステップS131へ戻り、上述の処理を全ての画素について繰り返し行う。全ての画素について処理を終了した場合(S140:YES)、領域分離処理部14は領域分離処理を終了する。
図20は、本発明の実施の形態4に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理を説明するための模式図である。領域分離処理部14に与えられた7×7領域の入力データは、標準偏差算出部401、最大濃度差算出部402及び総和濃度繁雑度算出部403にそれぞれ与えられるようにしてある。標準偏差算出部401は、図18及び図19に示したフローチャートのステップS132に相当する処理を行うものであり、入力データ中の各画素の濃度値を基に標準偏差を上述の(1)式により算出し、算出した標準偏差を領域判定部406へ与えるようにしてある。
最大濃度差算出部402は、ステップS133〜S135に相当する処理を行うものであり、入力データ中の各画素から最大濃度値及び最小濃度値を算出し、最大濃度値及び最小濃度値の差分を最大濃度差として算出するようにしてある。最大濃度差算出部402は、算出した最大濃度差を下地/写真領域判定部408へ与えるようにしてある。また、総和濃度繁雑度算出部403は、ステップS136及びS137に相当する処理を行うものであり、各方向の総和濃度繁雑度を算出して網点/万線領域判定部409へ与えるようにしてある。
領域判定部406は、ステップS141及びS142に相当する処理を行うものであり、第1閾値設定部404に設定された閾値Th1、第2閾値設定部405に設定された閾値Th2及び標準偏差算出部401にて算出された標準偏差を基に、入力データが文字領域であるか、下地領域若しくは写真領域であるか、又は、網点領域若しくは万線領域であるかを判定するようにしてある。このとき、標準偏差が閾値Th1より大きい場合には、入力データが文字領域であると判定し、文字領域特定部410に判定結果を通知するようにしてある。標準偏差が閾値Th1以下、且つ、閾値Th2より大きい場合には、入力データが万線領域又は網点領域であると判定し、網点/万線領域判定部409に判定結果を通知するようにしてある。また、標準偏差が閾値Th2以下の場合には、入力データが下地領域又は写真領域であると判定し、下地/写真領域判定部408へ判定結果を通知するようにしてある。
下地/写真領域判定部408は、ステップS144に相当する処理を行うものであり、最大濃度差算出部402が算出した最大濃度差が第3閾値設定部407に設定された閾値Th3より小さいか否かを調べ、最大濃度差が閾値Th3より小さい場合には入力データが下地領域であると判定して、下地領域特定部411へ判定結果を通知し、最大濃度差が閾値Th3以上の場合には入力データが写真領域であると判定して、写真領域特定部412へ判定結果を通知するようにしてある。
網点/万線領域判定部409は、ステップS143に相当する処理を行うものであり、総和濃度繁雑度算出部403が算出した各方向の総和濃度繁雑度が方向依存性を有しているか否かを調べ、方向依存性を有している場合には入力データが万線領域であると判定して、万線領域特定部414へ判定結果を通知し、方向依存性を有していない場合には入力データが網点領域であると判定して、網点領域特定部413へ判定結果を通知するようにしてある。
文字領域特定部410、下地領域特定部411、写真領域特定部412、網点領域特定部413及び万線領域特定部414は、領域判定部406、下地/写真領域判定部408又は網点/万線領域判定部409から通知される判定結果に応じて入力データの特定を行い、特定結果を領域識別信号として出力するようにしてある。
以上の構成の実施の形態4に係る画像形成装置においては、総和濃度繁雑度及び最大濃度差と共に標準偏差を用いて各領域を特定する構成であるため、注目画素が万線領域、網点領域、文字領域、下地領域又は写真領域のいずれに含まれているかをより高精度に判定することができる。なお、詳細な説明は省略するが、実施の形態3に係る画像形成装置のように、原稿種別の判別を実施の形態4にて示した方法で行うことも可能である。
なお、実施の形態4に係る画像形成装置のその他の構成は、実施の形態1に係る画像形成装置の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
(実施の形態5)
実施の形態5に係る画像形成装置は、注目画素が文字領域、網点領域、万線領域、下地領域又は写真領域のいずれに含まれる画素であるかを判定する方法が実施の形態1乃至実施の形態4に係る画像形成装置と若干異なる構成である。実施の形態5に係る画像形成装置は、入力された画像データ中の注目画素を含む15×7の長方形の領域(以下、15×7領域という)を抽出し、15×7領域中に複数の判定領域を設けて、各判定領域の特性を比較することで注目画素がいずれの領域に含まれる画素であるかを判定するようにしてある。
図21は、15×7領域の一例を示す模式図であり、(a)に15×7領域が文字領域の場合を示し、(b)に15×7領域が網点領域の場合を示し、(c)に15×7領域が万線領域の場合を示してある。実施の形態5に係る画像形成装置の領域分離処理部14は、まず、入力された画像データから注目画素501と、注目画素501を中心とした15×7領域とを抽出するようにしてある。次いで、15×7領域から予め定められた複数の判定領域505を抽出すると共に、各判定領域505での平均濃度値を算出し、複数の平均濃度値の中から最大の平均濃度値と最小の平均濃度値との差分(以下、最大平均差という)を算出するようにしてある。また、領域分離処理部14は、上述の総和濃度繁雑度を各方向について算出するようにしてある。
15×7領域が文字領域の場合(図21(a)参照)、文字部分を含む判定領域505では平均濃度値が大きく、文字部分を含まない判定領域505では平均濃度値が小さいため、最大平均差は大きな値となる。また、総和濃度繁雑度も大きな値となる。よって、総和濃度繁雑度が所定の閾値Th1以上であり、最大平均差が所定の閾値Th2より大きい場合には、15×7領域が文字領域であると判定することができる。
15×7領域が網点領域の場合(図21(b)参照)、15×7領域内には均等な濃度値の変化が存在し、各判定領域505の平均濃度値は同程度の値となるため、最大平均差は小さな値となる。また、総和濃度繁雑度は方向性を有さず、大きな値となる。よって、総和濃度繁雑度が閾値Th1以上であり、総和濃度繁雑度が方向性を有さず、最大平均差が閾値Th2以下の場合には、15×7領域が網点領域であると判定することができる。
15×7領域が万線領域の場合(図21(c)参照)、網点領域の場合と同様に、15×7領域内には均等な濃度値の変化が存在し、各判定領域505の平均濃度値は同程度の値となるため、最大平均差は小さな値となる。また、総和濃度繁雑度は方向性を有しており、大きな値となる。よって、総和濃度繁雑度が閾値Th1以上であり、総和濃度繁雑度が方向性を有し、最大平均差が閾値Th2以下の場合には、15×7領域が万線領域であると判定することができる。
図示は省略するが、15×7領域が下地領域の場合、各画素の濃度値が小さいため、各判定領域505の平均濃度値は小さく、最大平均差は小さな値となる。また、総和濃度繁雑度も小さな値となる。よって、総和濃度繁雑度が閾値Th1より小さく、最大平均差が所定の閾値Th3以下の場合には、15×7領域が下地領域であると判定することができる。
また、図示は省略するが、15×7領域が写真領域の場合、各画素の濃度値は滑らかに変化するため、総和濃度繁雑度は小さな値となるが、各判定領域505の平均濃度値にはある程度の差が生じるため、最大平均差は下地領域と比較して大きな値となる。よって、総和濃度繁雑度が閾値Th1より小さく、最大平均差が所定の閾値Th3より大きい場合には、15×7領域が写真領域であると判定することができる。
以上により、入力された画像から15×7領域を抽出し、更に15×7領域から複数の判定領域505を抽出して、各判定領域の平均濃度値を比較し、最大平均差を算出することによって、15×7領域が文字領域であるか網点領域又は万線領域であるかを判定することができ、また、15×7領域が下地領域であるか又は写真領域であるかを判定することができる。15×7領域から抽出する複数の判定領域505は、大きさ、数、形状及び位置等が予め定められている。
図22は、判定領域505の一例を示す模式図である。実施の形態5に係る画像形成装置においては、1つの15×7領域から7つの判定領域505を抽出するようにしてある。第1の判定領域505は、図22(a)に示すように、注目画素501を中心とした5×5の正方形の領域である。第2及び第3の判定領域505は、図22(b)に示すように、15×7領域の左上角及び右上角に設けられた5×5の正方形の領域であり、第4及び第5の判定領域505は、図22(c)に示すように、15×7領域の左下角及び右下角に設けられた5×5の正方形の領域である。また、図22(d)に示すように、第6の判定領域505は、15×7領域の上側中央に設けられた13×2の左右に長い長方形の領域であり、第7の判定領域505は、15×7領域の下側中央に設けられた13×2の左右に長い長方形の領域である。
これらの判定領域505は、図22に示すように、15×7領域内で一部が重複するように設ける構成であってもよく、判定領域505の数が多いほどより正確に判定を行うことができる。また、判定領域505の形状は正方形又は長方形でなく、例えばL字型又はU字型等の他の形状であってもよい。
図23は、本発明の実施の形態5に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理の手順を示すフローチャートである。領域分離処理部14は、まず、入力階調補正部13から与えられた画像データから注目画素501と、注目画素501を含む15×7領域とのデータを抽出し(ステップS171)、抽出した15×7領域から複数の判定領域505を抽出する(ステップS172)。次いで、各判定領域505の平均濃度値を算出し(ステップS173)、算出した複数の平均濃度値から最大の平均濃度値と最小の平均濃度値とを取得して比較することにより、最大平均差を算出する(ステップS174)。
最大平均差を算出した後、一の方向について隣接する画素間での濃度差の絶対値の総和を求めることにより総和濃度繁雑度を算出する(ステップS175)。0°、90°、45°及び135°の全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了したか否かを調べ(ステップS176)、全ての方向について算出を終了していない場合には(S176:NO)、ステップS175へ戻り、未算出の方向について算出を行う。全ての方向について総和濃度繁雑度の算出を終了した場合(S176:YES)、注目画素501が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定する領域判定処理を行う(ステップS177)。
図24は、本発明の実施の形態5に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域判定処理の手順を示すフローチャートであり、図23のステップS177にて行われる処理を示してある。領域判定処理では、まず、ステップS175にて算出した全方向の総和濃度繁雑度が予め定められた閾値Th1より小さいか否かを調べ(ステップS191)、全方向の総和濃度繁雑度が閾値Th1より小さい場合(S191:YES)、更にステップS174にて算出した最大平均差が予め定められた閾値Th3より大きいか否かを調べる(ステップS192)。最大平均差が閾値Th3より大きい場合(S192:YES)、注目画素501が写真領域に含まれる画素であると判定する(ステップS195)。また、最大平均差が閾値Th3以下の場合(S192:NO)、注目画素501が下地領域に含まれる画素であると判定する(ステップS196)。
ステップS191にて、少なくとも一方向の総和濃度繁雑度が閾値Th1以上の場合(S191:NO)、ステップS174にて算出した最大平均差が予め定められた閾値Th2より大きいか否かを調べる(ステップS193)。最大平均差が閾値Th2より大きい場合(S193:YES)、注目画素501が文字領域に含まれる画素であると判定する(ステップS197)。
また、最大平均差が閾値Th2以下の場合(S193:NO)、ステップS175にて算出した4つの総和濃度繁雑度を比較して方向依存性の有無を判定する(ステップS194)。総和濃度繁雑度に方向依存性がある場合には(S194:YES)、注目画素501が万線領域に含まれる画素であると判定し(ステップS198)、方向依存性がない場合には(S194:NO)、注目画素501が網点領域に含まれる画素であると判定する(ステップS199)。
注目画素が万線領域、下地領域、写真領域、網点領域又は文字領域のいずれの領域に含まれる画素であるかを判定した後、図23に示す領域分離処理に戻って、判定結果を領域分離処理部14内の図示しない記憶部に記憶し(ステップS178)、画像データの全ての画素について処理を終了したか否かを調べる(ステップS179)。全ての画素について処理を終了していない場合(S179:NO)、ステップS171へ戻り、上述の処理を全ての画素について繰り返し行う。全ての画素について処理を終了した場合(S179:YES)、領域分離処理部14は領域分離処理を終了する。
図25は、本発明の実施の形態5に係る画像形成装置の領域分離処理部14が行う領域分離処理を説明するための模式図である。領域分離処理部14に与えられた15×7領域の入力データは、判定領域抽出部551及び総和濃度繁雑度算出部554にそれぞれ与えられるようにしてある。判定領域抽出部551は、図23及び図24に示したフローチャートのステップS172に相当する処理を行うものであり、15×7領域から予め定められた複数の判定領域505を抽出し、平均濃度算出部552へ与えるようにしてある。平均濃度算出部552は、ステップS173に相当する処理を行うものであり、各判定領域505の画素の濃度値の平均を算出し、最大平均差算出部553へ与えるようにしてある。最大平均差算出部553は、ステップS174に相当する処理を行うものであり、平均濃度算出部552が算出した各判定領域505の平均濃度値から最大及び最小のものを取得して差分を算出することによって、最大平均差を算出し、下地/写真領域判定部558及び文字/網点・万線領域判定部560へ与えるようにしてある。
一方、総和濃度繁雑度算出部554は、ステップS175及びS176に相当する処理を行うものであり、各方向の総和濃度繁雑度を算出して領域判定部556へ与えるようにしてある。領域判定部556は、ステップS191に相当する処理を行うものであり、第1閾値設定部555に設定された閾値Th1と総和濃度繁雑度算出部554が算出した総和濃度繁雑度とを比較し、入力データが下地領域若しくは写真領域であるか、又は、文字領域、網点領域若しくは万線領域であるかを判定するようにしてある。このとき、全方向の総和濃度繁雑度が閾値Th1より小さい場合には、入力データが下地領域又は写真領域であると判定し、下地/写真領域判定部558に判定結果を通知するようにしてある。また、少なくとも一方向の総和濃度繁雑度が閾値Th1以上の場合には、入力データが文字領域、網点領域又は万線領域であると判定し、文字/網点・万線領域判定部560に判定結果を通知するようにしてある。
下地/写真領域判定部558は、ステップS192に相当する処理を行うものであり、最大平均差算出部553が算出した最大平均差が第3閾値設定部557に設定された閾値Th3より大きいか否かを調べ、最大平均差が閾値Th3より大きい場合には入力データが写真領域であると判定して、写真領域特定部563へ判定結果を通知し、最大平均差が閾値Th3以下の場合には入力データが下地領域であると判定して、下地領域特定部562へ判定結果を通知するようにしてある。
文字/網点・万線領域判定部560は、ステップS193に相当する処理を行うものであり、最大平均差算出部553が算出した最大平均差が第2閾値設定部559に設定された閾値Th2より大きいか否かを調べ、最大平均差が閾値Th2より大きい場合には入力データが文字領域であると判定して、文字領域特定部564へ判定結果を通知し、最大平均差が閾値Th2以下の場合には入力データが網点領域又は万線領域であると判定して、方向依存性判定部561へ判定結果を通知するようにしてある。
方向依存性判定部561は、ステップS194に相当する処理を行うものであり、総和濃度繁雑度算出部554が算出した4つの方向の総和濃度繁雑度を比較し、方向依存性を有しているか否かを判定するようにしてある。総和濃度繁雑度が方向依存性を有している場合は、万線領域特定部566へ判定結果を通知し、方向依存性を有していない場合には、網点領域特定部565へ判定結果を通知するようにしてある。
下地領域特定部562、写真領域特定部563、文字領域特定部564、網点領域特定部565及び万線領域特定部566は、下地/写真領域判定部558、文字/網点・万線領域判定部560又は方向依存性判定部561から通知される判定結果に応じて入力データの特定を行い、特定結果を領域識別信号として出力するようにしてある。
以上の構成の実施の形態5に係る画像形成装置においては、15×7領域から複数の判定領域505を抽出し、各判定領域505の平均濃度値から最大平均差を算出し、総和濃度繁雑度と共に最大平均差を用いて各領域を特定する構成であるため、注目画素が万線領域、網点領域、文字領域、下地領域又は写真領域のいずれに含まれているかをより高精度に判定することができる。なお、詳細な説明は省略するが、実施の形態3に係る画像形成装置のように、原稿種別の判別を実施の形態5にて示した方法で行うことも可能である。
なお、実施の形態5に係る画像形成装置のその他の構成は、実施の形態1に係る画像形成装置の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。