JP4544748B2 - 植物細胞内に導入された遺伝子の発現を増加するための人工マトリックス付着領域 - Google Patents
植物細胞内に導入された遺伝子の発現を増加するための人工マトリックス付着領域 Download PDFInfo
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Description
本発明は、植物分子生物学、そして具体的には形質転換された植物細胞中に導入された遺伝子の発現を増強するための技術に関する。
【0002】
組換えDNA技術および遺伝子工学の使用を通じて、希望のDNA配列を植物細胞内に導入して、関係するタンパク質の発現をさせることが可能となっている。遺伝子的に操作された形質、例えば有用な植物産物の生産を増加または変性する昆虫耐性、疫病耐性、渇水耐性、除草薬耐性、または代謝変性を有する植物は、農業の改善に大きい将来性を提供する。
【0003】
植物細胞内に導入されたDNAの発現の希望するレベルを得ることには、まだ問題が残っている。「位置効果」変動と呼ばれる一つの問題は、独立した形質転換体内の同じ遺伝子の発現における変動である。この問題を解明するためのマトリックス付着領域または骨格付着領域と呼ばれる天然に存在するDNA配列の使用は、米国特許(US)第5,773,689号およびWO94/24293号中に提出されている。
【0004】
本発明は、形質転換された植物内に導入された遺伝子の発現を増加するマトリックス付着領域として有用である配列番号1の11〜309を含んでなる、新規の合成DNA分子を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、5’から3’への方向で、植物細胞内で機能性の転写開始領域、転写開始領域と操作的に関連する構造遺伝子、3’非翻訳領域、および該転写開始領域に対して5’または該構造遺伝子に対して3’のいずれかに位置する配列番号1のbp11から309までを含んでなるマトリックス付着領域を含んでなるDNA構築物を提供する。好ましい態様では、配列番号1のbp11から309までを含んでなる第一マトリックス付着領域が該転写開始領域に対して5’に位置し、そして配列番号1のbp11から309までを含んでなる第二マトリックス付着領域が該3’非翻訳領域に対して3’に位置する。
【0006】
特に好ましくは態様では、本発明のマトリックス付着領域は配列番号1のbp11から309までの2個またはそれ以上の縦列コピーを含んでなる。
【0007】
配列の説明
配列番号1には、本発明の人工MARを記載する。
【0008】
配列番号2〜4には、ARBP部位を記載する。
【0009】
配列番号5には、ATE部位を記載する。
【0010】
配列番号6には、BEAF−32部位を記載する。
【0011】
配列番号7〜9には、トポイソメラーゼII部位を記載する。
【0012】
配列番号10には、巻き戻し配列を記載する
配列番号11〜17には、STAB I部位を記載する。
【0013】
配列番号18には、例示的な曲りDNAを記載する。
【0014】
配列番号19には、例示的なA/Tトラクトを記載する。
【0015】
配列番号20には、合成MAR−Aを記載する。
【0016】
配列番号21には、合成MAR−Bを記載する。
【0017】
配列番号22には、合成MAR−Cを記載する。
【0018】
配列番号23には、合成MAR−Dを記載する。
【0019】
配列番号24には、合成MAR−Eを記載する。
【0020】
配列番号25には、合成MAR−Fを記載する。
【0021】
配列番号26には、pArGOS2Af−hptおよびArAct2Af−bin内の3’MARダイマーを記載する。
【0022】
配列番号27には、コメ形質転換ベクターpGOS2−hptを記載する。
【0023】
配列番号28には、コメ形質転換ベクターpArGOS2Af−hptを記載する。
【0024】
配列番号29には、pArGOS2Af−hptおよびArAct2Af−bin内の5’MARダイマーを記載する。
【0025】
配列番号30には、双子葉植物形質転換ベクターpAct2−binを記載する。
【0026】
配列番号31には、双子葉植物形質転換ベクターpArAct2Af−binを記載する。
【0027】
配列番号32には、双子葉植物形質転換ベクターpAfAct2Af−binを記載する。
【0028】
配列番号33には、pAfAct2Af−bin内の3’MARダイマーを記載する。
【0029】
【発明の詳細な記述】
真核生物の核は、高度に組織化された構造であり、その中ですべての遺伝子情報は、複写、転写およびその他の細胞イベントに関して秩序だった様式で接近できなければならない(レヴィン(Lewin, 1994) 、ディロンおよびグロスフェルト(Dillon and Grosveld, 1994) 、ジャクソン(Jackson, 1995) 、ヴォルフ(Wolffe, 1994))。遺伝子は、標準的には、マトリックス付着領域(MAR)として知られる場所でタンパク様核マトリックスに対して付着する種々の大きさのクロマチンループ内で組織化される。MARは、しばしば遺伝子の非翻訳領域内に位置し、そして個別のDNAループの物理的境界を形成すると考えられている。多くの場合に、MARは形質転換有機体内で位置効果を低下させることが示されている。ニワトリリゾチームMARは、発現を増加し、変動を減少しそして安定して移入された細胞内(スティーフら(Stief et al., 1989))、形質転換マウス内(ボニファーら(Bonifer et al., 1990)、マックナイトら(McKnight et al., 1992) )および形質転換タバコ植物内(ムリナロバら(Mlynarova et al., 1994)、ムリナロバら(Mlynarova et al., 1995 ))で、コピー数依存性の隣接遺伝子を発現させることが示された。
【0030】
しかし、すべてのMARが遺伝子発現に対してこのような作用を有するわけではない。2個の最少ドロソフィラ(Drosophila)MAR(1個はヒストンH1とH3遺伝子との間に、他は熱ショックHSP70遺伝子の近くに位置する)は、安定に形質転換した細胞内で10倍以上で発現を刺激するが、しかしこれらのMARの存在は、位置効果を低下させなかった(ポルジャックら(Poljak et al., 1994) )。アポリポタンパク質ドメインからのMARは、低コピー形質転換体内で発現を増加し、位置効果を低下したが、しかし複数コピー形質転換体内の発現は強力に抑制された(カロスおよびフールニエ(Kalos and Fournier, 1995))。ドロソフィラftzMARを種々の染色体位置内に配置すると、これはクロマチン構造を再構成せず、そしてMARを含むクロマチン断片は核から容易に溶出し、導入されたMARは必ずしもクロマチンドメインを形成しないことを示している(エッガートおよびジャック(Eggert and Jack, 1991) )。反対に、重鎖座エンハンサー内の免疫グロブリンに隣接するMARは、高レベルの発現および形質転換Bリンパ球内の拡張DNaseI感受性ドメインの形成のために要求されるが、しかし安定に移入された組織培養細胞内ではそうではない(フォレスターら(Forrester et al., 1994))。
【0031】
形質転換された植物内でMARを用いた結果は、同様に複雑であった(スパイカーおよびトムソン(Spiker and Thompson, 1996) )。酵母MARは、安定に形質転換された煙草カルス株中で発現レベルを増加したが、しかしコピー数と発現レベルとの間に相関は発見できなかった(アレンら(Allen et al., 1993))。反対に、ダイズ熱ショック遺伝子Gmhsp17.6−LからのMAR要素は、発現レベル上昇の能力を示したが、しかし変動性にはほとんど影響しなかった(シェッフルら(Schoeffl et al., 1993) )。レポーター遺伝子構築物に隣接するダイズMARは、MARを欠失する構築物と比較すると、発現の変動を低下させたが、形質転換タバコカルス内のレポーター遺伝子構築物の5’および3’に存在すると、発現レベルも低下させた(ブレインら(Breyne et al., 1992) )。それぞれのMARは、これらのマトリックス結合能力に加えて異なる機能的および構造的性質を有することが可能である(ブレインら(Breyne et al., 1994) )。
【0032】
MARは、通常長さは300〜2000塩基対であり、アデノシンおよびチミン残基が多く、そしてしばしばある種の保存された配列要素および構造的特徴を含む。文献に記載された大部分のMARは、植物から得られたものではないが、しかし他の生物体からのMARは、植物骨格に良く結合しそしてその反対も多く文献に報告されている(ディーツら(Dietz et al., 1994))、ブレインら(Breyne et al., 1992) )。
【0033】
表1は、文献に記載されたMAR中に存在する配列要素を記載している。これには、下記の植物MARが含まれている。ダイズ熱ショックタンパク質遺伝子MAR(シェッフルら(Schoeffl et al., 1993) )、ペチュニアMAR(ディーツら(Dietz et al., 1994))、エンドウプラストシアニン遺伝子MAR(ストラッターら(Slatter et al., 1991))、メイズAdh1遺伝子5’および3’MAR(アブラモヴァおよびベネッツエン(Avramova and Bennetzen, 1993)、アブラモヴァら(Avramova et al., 1995) )、β−ファセオリン(phaseolin) 遺伝子5’および3’MAR(ファンデルゲーストら(van der Geest et al., 1994))。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
本発明は、新規の人工MAR内で表1に記載の特徴の部分集合を用いる。327bp人工MARの配列は、配列番号1に記載されている。人工MARは、BglIIおよびBamHI制限部位により隣接される配列番号列として設計され、これらは配列番号1内に含まれているが、しかしこれらはMARの機能にとって重要ではない。MARの機能性部分は、配列番号1の11〜390を含んでなる。
【0037】
下記の特徴が、配列番号1内で見いだされた。
【0038】
【表3】
【0039】
本発明の構築物中に使用された3’UTR、すなわち3’非翻訳領域は、mRNAの効率的な処理を与え、メッセージの安定性を維持しそして転写mRNA配列の3’末端にアデノシン・リボヌクレオチドの付加を指令するものである。3’UTRは、プロモーター領域に本来的、構造遺伝子に本来的であっても、または他の起源から誘導されてもよい。適当な3’UTRは下記を含むがこれに限定はされない。per5 3’UTR、およびノパリン合成酵素(nos)遺伝子の3’UTR。
【0040】
実施例1
人工MARの合成
人工MARを構築するために、6種の個別のオリゴヌクレオチドを合成し、そしてPCRにより構築した。以後MRA−A、MRA−B、MRA−C、MRA−D、MRA−EおよびMRA−Fと呼ぶ6種のオリゴヌクレオチドの配列は、それぞれ配列番号20〜25として配列表示表に記載する。隣接オリゴヌクレオチド間の15bpオーバーラップは、図1に記載の戦略を用いてPCRによるMARの構築を可能とした。
【0041】
AmpliTaq DNAポリメラーゼを用いるジーンアンプ(GeneAmp) TMPCR試薬キット(パーキンエルマー(Perkin Elmer, Norwalk, CT) )をDNA増幅に使用した。プライマーMRA−CおよびMRA−Dを用いるPCRの20サイクル(変性:94℃で30秒間、アニーリング:52℃で60秒間および延伸:70℃で60秒間)に、プライマーMRA−BおよびMRA−Eを用いるPCRの20サイクルを続け、第一反応からの生成物を第二反応の鋳型として使用した。この反応の231bp生成物を低融点アガロースゲルから精製し、そしてプライマーMRA−AおよびMRA−Fを用いるPCRの20サイクルのための鋳型として使用した。この反応からの327bp生成物を、TAクローニング(Cloning) TMキット(インヴィトロジェン(Invitrogen, San Diego, CA) )を用いてpCR2.1内にサブクローンし、そして配列を配列決定により確認した。
【0042】
BglII/BamHI断片の2個の縦列コピーから成るダイマーを、pBluescriptTMSK−(ストラタジーン(Stratagene, La Jolla, CA))のBamHI部位内に構築した。ダイマーの配列は、配列番号26のbp5〜630である。
【0043】
実施例2
人工MARの核骨格への結合
A.対照
人工MARとしての類似した大きさおよびヌクレオチド組成の2個のDNA断片を植物DNAから増幅して結合アッセイにおける対照として使用した。これらの断片は、メイズ遺伝子Gpa1の3’末端からの657bp断片(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素サブユニットA、ジーンバンクアクセッション番号(GeneBank accession number) X15408、塩基4516〜5173、キグレイら(Quigley et al., 1989))、および19kDアルファ・ゼイン遺伝子の5’隣接領域から488bp断片(ジーンバンクアクセッション番号X05911、塩基339〜827、クリッツら(Kriz et al., 1987) )であった。表2で、人工MARおよび対照断片内に存在する特徴点を比較する。
【0044】
【表4】
【0045】
B.メイズ葉から核の調製
核骨格の単離に使用する核は、公開されたプロトコール(ホールら(Hall et al., 1991) )を適用して若いメイズ葉から調製した。核を計数し、そしてDAPI染色アリコート試料の顕微鏡検査により完全さを検査した。高品質核のみを二ヨードサリチル酸リチウム抽出による核骨格調製に使用した。
【0046】
核精製のために、V4段階植物(第四または第五葉)からの若いメイズの葉をカミソリ刃を用いて採取し、洗浄および乾燥した。中央脈を除いた後、葉を液体窒素内で冷凍し、そして乳鉢と乳棒を用いて微粉に粉砕した。粉末状の葉をガラスビーカーに移し、5ml NIB1+PI(0.5Mヘキシレングリコール、20mMピペラジン−N,N’−ビス〔2−エタンスルホン酸〕(PIPES)、pH6.5、20mM KCl、7mM 2−メルカプトエタノール、0.5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.4%トリトン(Triton)X−100TM〔ローム・アンド・ハース社(Rohm & Haas Company, Philadelphia, PA) 〕、0.05mMスペルミン、0.125mMスペルミジン、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン)を葉組織グラムあたりに加えた。葉抽出物を順番に1900、520、125、85および40mmフィルターに4℃で通して濾過し、フィルターを葉グラムあたりに1mlのNIB1+PIでリンスして、デブリ内に保持されたすべての核を収集した。粗核抽出液の15mlを7ml 40%パーコル(Percoll) TM(ファルマシア・バイオテク(Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ) )のNIB1(0.5Mヘキシレングリコール、20mM PIPES、pH6.5、20mM KCl、7mM 2−メルカプトエタノール、0.5mM
EDTA、0.4%トリトンTMX−100、0.05mMスペルミン、0.125mMスペルミジン)およびNIB1内の5ml 70%パーコルから成るパーコルのグラジエントに加えた。15分間、500xgで4℃における遠心分離の後、40%/70%界面を滅菌したパスツールピペットで集め、そして2倍体積のNIB2(0.5Mヘキシレングリコール、20mM PIPES、pH6.5、20mM KCl、7mM 2−メルカプトエタノール、0.5mM EDTA、0.05mMスペルミン、0.125mMスペルミジン)に加え、これはペレットおよびその他のデブリを避けるように努めて行った。10分間、4℃で600xgの遠心分離により核を濃縮した。
【0047】
核ペレットを20ml NIB2中に再懸濁し、そして前と同様に遠心分離した。この段階をさらに1回反復して、パーコルの痕跡を洗浄除去した。血球計算器を用いて核を計数し、そしてNIB2+PI/50%グリセロール(0.5Mヘキシレングリコール、20mM PIPES、pH6.5、20mM KCl、7mM 2−メルカプトエタノール、0.5mM EDTA、0.05mMスペルミン、0.125mMスペルミジン、50%グリセロール、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン)中に、核2千万個/mlで再懸濁した。骨格調製に使用するまで核を−80℃で貯蔵した。
C.核骨格の調製
冷凍した核を解凍し、そして核2百万個あたりにNIB3+PI(0.5Mヘキシレングリコール、20mM PIPES、pH6.5、20mM KCl、7mM 2−メルカプトエタノール、0.05mMスペルミン、0.125mMスペルミジン、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン)の10mlを用いて洗浄した。核を10分間、600xgで遠心分離して集め、1mM CuSO4 の存在下、200ml NIB3+PI中に再懸濁し、そして10分間、42℃でインキュベーションして核を安定化した。
【0048】
10ml HIB+PI(20mM HEPES、pH7.4、100mM酢酸リチウム、10mM LIS(二ヨードサリチル酸リチウム)、0.1%ジギトニン、2mM EDTA、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン)中で15分間、室温でインキュベーションしてヒストンを抽出した。得られた核ハローを遠心分離管に移し、そして4000xg、10分間でペレット化した。ハローを、10ml HWB(20mMトリス、pH8、70mM NaCl、20mM KCl、7mM 2−メルカプトエタノール、0.1%ジギトニン、0.05mMスペルミン、0.125mMスペルミジン)を用いて2回、そしてD/BB+PI(HWB+10mM MgCl2 、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン)を用いて1回洗浄してLISを除いた。ハローが良くペレット化されない場合には、引き続いての遠心分離段階をスローブレーキ設定を用いて6000xgで行った。ハローの品質をSDS−PAGEゲルにより検査して、ヒストンの95%以上が抽出操作により除去されたことを確認した。
【0049】
洗浄した核ハローを400μl D/BB+PI中に再懸濁し、そして制限酵素の200単位(EcoRIおよびHindIIIのそれぞれ100u)を加え、そして37℃で2〜3時間、ハローを沈降しないように揺動台上でインキュベーションした。制限酵素は、核DNAの70%以上を除去して、核骨格を生成した。骨格を300xgでペレット化し、そしてHWB+PI(HWB+1mM
PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlアプロチニン)を用いて洗浄した。核骨格を400μl HWB+PI中に再懸濁し、そして100μlアリコート試料(核相当物5百万個を含む)に分離した。
D.核骨格への人工MARの結合
HWB+PI中の骨格の100μlアリコート試料をプローブおよび大腸菌(E. coli) 競合DNAと一緒に、37℃で2〜3時間、揺動台シェーカー上のシリコン加工ミクロフュージ(microfuge) 管内でインキュベーションした。インキュベーションの後、上清画分(非結合DNA断片を含む)とペレット画分(骨格および結合DNA断片を含む)とを、水平ミクロフュージ管内、3000xgで5分間の遠心分離で分離した。ペレットを1回、200μl HWBを用いて洗浄してプロテイナーゼ阻害剤を除去し、100μl溶解緩衝液(10mMトリス、pH8、10mM EDTA、0.5%SDS、0.5mg/mlプロテイナーゼK)内に再懸濁し、そして一晩、室温でインキュベーションした。
【0050】
同じ画分のペレットおよび上清を0.9%アガロースゲル上で分離し、これを引き続いて7%TCA中に20分間浸漬して固定し、乾燥して室温でX−線フィルムおよび/またはホスホイメージャーTMSI(PhosphoImagerTM SI, Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA) )のための貯蔵リン・スクリーンに暴露した。
【0051】
人工MARモノマーもしくはダイマーまたは対照Gpalもしくはゼイン配列を含むプラスミドを、5’オーバーハング末端を生成する制限酵素を用いて消化した。DNAポリメラーゼIのクレノウサブユニットを、〔α−32P〕dCTP(アマーシャム・ライフ・サイエンス(Amersham Life Science, Arlington Heights, IL))を用いるオーバーハングの充填のために使用した。末端標識したDNA断片を結合アッセイのプローブとして用い、すなわち、断片を精製したメイズ核骨格と一緒に、非標識大腸菌競合DNAの存在下でインキュベーションし、そして挿入物の相対結合を決定した。結合アッセイに使用した核、プローブおよび非標識大腸菌競合DNAの相対量は、強くおよび弱く結合したMARの間で最大の区別が得られるように最適化した。最適相対量は、アッセイ毎に、非標識大腸菌競合DNAの2、5または10μg、核骨格の核相当物5百万個、および消化して標識したプラスミドの1fmolであった。
【0052】
人工MARダイマーは、競合DNAの高レベルの存在下でも核骨格調製物に非常に強く結合した。モノマーMARも、低い親和性ではあったけれども、核骨格調製物に結合した。いずれの対照配列も、これらは人工MARと大きさおよび相対AT含有量が類似していたにもかかわらず、ペレット画分中には保持されなかった。これは、人工MAR中に含まれる要素が結合を容易にすることを示唆する。
【0053】
実施例3
コメ内の人工MARの評価
A.コメ形質転換ベクター
pGOS2−hpt(配列番号27)は、35Sプロモーターにより駆動されるハイグロマイシン選択性マーカーおよびGOS2/GUS/nosカセット(GOS2転写開始領域/GUS構造遺伝子/nos3’非翻訳領域)を含むコメ形質転換ベクターである。この構築物中のGOS2転写開始領域は、1100bpイントロンにより中断されたプロモーターの1010bpおよび非翻訳5’リーダーの170bpを含んでなる(デ・パーターら(de Pater et al., 1992) )。
【0054】
pArGOS2Af−hpt(配列番号28)は、pGOS2−hptと同じコメ形質転換ベクターであるが、しかしこれはGOS2転写開始領域に対して5’に位置する配列番号29のMARダイマーおよびnos3’UTRに対して3’に位置する配列番号26のMARダイマーを有する点が異なる。
【0055】
ArGOS2Af構築物の図形表示を図2に示す。
B.コメの形質転換
胚起源カルスの開始のために、ジャポニカ栽培変種、タイペイ(Taipei)309の成熟種子を脱穀し、そして70%エタノール中で5〜7分間滅菌し、次いで0.02%ツイーン(Tween) TM20(ICIアメリカス社(ICI Americas, Inc) )を含む25%市販漂白液(2.6%次亜塩素酸ナトリウム)中に、減圧下で30〜45分間浸漬した。次いで種子を5回、滅菌した蒸留水中でリンスし、そして誘導媒体(NB)に移すまで濾紙上に置いた。NB培地は、N6マクロ要素(チュー(Chu, 1978) )、B5ミクロ要素およびビタミン類(ガンボルグら(Gamborg et al., 1968))、300mg/l加水分解カゼイン、500mg/l L−プロリン、500mg/l L−グルタミン、30g/lスクロース、2mg/l 2,4−ジクロロ−フェノキシ酢酸(2,4−D)、および2.5g/lゲルライトTM(Gelrite TM、メルク社(Merck & Co., Rahway, NJ) )を含み、pHを5.8に調整してある。誘導培地で培養した成熟種子を暗所、28℃で3週間インキュベーションした。成熟胚の胚盤領域から誘導された一次カルスを引き続いての維持(maintenance) のために新しいNB培地に移し、その後2週間の二次培養期間維持した。
【0056】
ブラスティング(Blasting)のためのDNAを調製するために、プラスミドDNA(pGOS2−hptまたはpArGOSAf−hpt)の約140μgを金粒子60mg上に沈降させた。プラスミドDNAを、1.5〜3.0ミクロン(アルドリッチケミカル社(ALdrich Chemical Co., Milwaukee, WI) )または1.0ミクロン(バイオ−ラド・ラボラトリーズ (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA) )金粒子の60mg上に沈降させた。沈降混合物は、洗浄済金粒子の60mg、水/DNA(140μg)の300μl、2.5M CaCl2 の74μlおよび0.1Mスペルミジンの30μlを含んでいた。成分を上記の順序で加えた後、混合物を直ちに回転攪拌し、そして2〜3分間沈降させた。上清をピペットで吸引除去し、廃棄した。DNA被覆金粒子を100%エタノール1ml中に再懸濁し、そしてブラスティング実験に使用するためにエタノールmlあたりに17.5mgDNA/7.5mg金まで希釈した。
【0057】
ヘリウムブラスティングのために、活発に生育している大きさが2〜4mmの胚起源カルス培養物を、ヘリウムブラスティングの前4時間の間、0.2Mマンニトールおよび0.2Mソルビトールを含むNB培地上にカルスを置いて高オスモティクム(osmoticum) 処理した(ヴェインら(Vein et al., 1993) )。オスモティクム処理に続いて、カルス培養物をブラスティング培地(NB+2%アガー)に移し、そしてステンレス鋼網(230ミクロン)で覆った。ヘリウムブラスティングは、調製した組織標的に向かってその中に懸濁したNDA被覆金粒子を加速吹きつけすることを含む。使用した装置は、引用することにより本明細書中に編入される米国特許(US)第5,141,131号に記載の初期の原型で、両方共に同様に機能した。カルス培養物を種々のヘリウム圧力(1750〜2,250psi)で、標的あたりに1〜3回ブラスティングした。ブラスティングの後、高オスモティクム培地にカルスを戻し、その一晩後に、30mg/lハイグロマイシンを含むNB培地から成る選択培地上に配置した。2週間後に、さらに高い選択剤濃度、すなわちNB+50mg/lハイグロマイシンを含む新しい選択培地に培養物を移した(リーら(Li et al., 1993) )。
【0058】
NB+50mg/lハイグロマイシン上に回収したコンパクトで黄白色の胚起源カルス培養物を予備再生(PR)培地+50mg/lハイグロマイシンに移して再生した。PR培地は、2mg/lベンジルアミノプリン(BAP)、1mg/lナフタレン酢酸(NAA)、および5mg/lアブシジン酸(ABA)を含むNB培地から成っていた。暗所における2週間の培養の後、これらを再生(RN)培地に移した。RN培地の組成は、3mg/lBAP、および0.5mg/l NAAを含むNB培地である。RN培地上の培養物を2週間、28℃で高蛍光(325−ft−キャンドル)下でインキュベーションした。生育長2cmを有する小植物を、GA7容器(マゼンタ社(Magenta Corp. Chicago, IL) )中でpH5.8に調整した、1/2B5ビタミン、10g/l スクロース、0.05mg/l NAA、50mg/l ハイグロマイシンおよび2.5g/lゲルライトTMを有する1/2MS培地(ムラシゲおよびスクーグ(Murashige and Skoog, 1962) )に移した。小植物が十分成長した根系を有するまで生育すると、これらを土壌〔メトロミックス(Metro-Mix) 360(スコッツ−シエラ・ホーティカルチュラル・プロダクツ社(Scotts-Sierra Horticultural Products Co., Marysville, OH))1部、および表土1部〕に移し、そして高さ60cmに達するまで栽培室(29/24℃の昼夜サイクル、湿度50〜60%、照明期間12時間)に置き、その時点で定量GUS分析のために葉2枚を採取し、そして植物を成熟するまで生育させるために温室に移した。
C.サザン分析
サザン分析は、特定の遺伝子構築物の不変のコピーを含む一次再生(R0 )コメ株を特定するために使用した。
【0059】
β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子構築物のコーディング領域に特異性のDNAプローブを、キアエキス(Qiaex) II DNA精製キット(キアジェン社(Qiagen Inc., Chatsworth, CA) )を用いてゲル精製した。放射能標識したプローブは、レディーツーゴー(Ready-To-Go) TMDNA標識ビーズ(ファルマシアLKB(Pharmacia LKB, Piscataway, NJ) )を用いて、〔α32P〕dCTP(アマーシャム・ライフサイエンス、Arlington Heights, IL)の50μCを用いて調製した。
【0060】
R0 コメ植物からの葉材料を各株からの2つの代表から採取した。R0 植物からのゲノムDNAをサガイ−マルーフらの記載(Saghai-Maroof et al., 1984)に従って凍結乾燥した組織から調製した。
【0061】
コメDNAの4μgを制限酵素を用いて消化して、製造者(ベセスダ・リサーチ・ラボラトリー(Bethesda Research Laboratory, Gaithersburg, MD))により示唆された条件下で不変の遺伝子構築物を解放し、アガロースゲル電気泳動により分離した。DNAをサザン(1975,1989) の記載に従ってナイロン膜上にブロットした。放射能標識したプローブDNAを、60℃に加熱した最少ハイブリダイゼーション緩衝液(10%ポリエチレングリコール、7%ドデシル硫酸ナトリウム、0.6x SSC、10mMリン酸ナトリウム、5mM EDTAおよび100mg/ml変性サケ精子DNA)の50mlを用いてブロット上のゲノムDNAにハイブリダイゼーションし、そして変性した放射能標識したプローブと混合し、次いで一晩60℃でハイブリダイゼーションするためにブロットに添加した。ブロットを60℃、0.25X SSCおよび0.2%SDS中で45分間洗浄し、乾燥ブロットし、そして2枚の強化スクリーンを有するXAR−5フィルムに一晩暴露した。
【0062】
サザン分析は、70のArGOS2Af R0 コメ株について行った。R0 植物からのDNAを制限酵素XbaIを用いて消化し、これは、不変の遺伝子構築物が存在する場合には、GUSコーディング領域に特異性のプローブを用いて放射能標識すると5.7kbハイブリダイゼーション生成物をもたらすはずである。5.7kb断片は、逆方向の人工MAR、GOS2プロモーター、GUSコーディング領域、nos3’UTRおよび正方向の人工MARを含むはずである。期待された5.7kbハイブリダイゼーション生成物が、70のコメ株の25株で検出された。25株の全ては、複数ハイブリダイゼーション生成物を有し、2株は一致する複合ハイブリダイゼーションパターンを有し、これらが多分同じ形質転換イベントに由来することを示唆する。
【0063】
非MAR対照株、COS2もサザン分析により分析した。48のGOS2 R0 株からのDNAを、制限酵素EcoRIおよびXbaIを用いて消化し、これは、不変の遺伝子が存在する場合には、GUSコーディング領域に特異性のプローブを用いて放射能標識すると4.4kbハイブリダイゼーション生成物をもたらすはずである。4.4kb断片は、GOS2プロモーターの1.6kb、GUSコーディング領域、nos3’UTRおよび35Tプロモーター(選択可能なマーカー遺伝子を駆動するために使用したプロモーター)を含むであろう。期待された4.4kbハイブリダイゼーション生成物が、48のGOS2株の28株で検出された。2株は一致する複合ハイブリダイゼーションパターンを有し、これらが多分同じ形質転換イベントに由来したことを示唆する。2株は遺伝子キメラを含んでいた。
D.GUS分析
コメの分析は、一次形質転換体の若い葉について、植物を環境制御した栽培室内で6〜8週間生育させ、そして約60cmの高さに達した後に行った。2株の独立して再生したコメ植物を形質転換イベントに関して分析した。個別の形質転換体をサザンブロットで分析して、導入遺伝子の不変のコピーの存在を検査し、そして独立した形質転換イベントを示すユニークなハイブリダイゼーションパターンをそれぞれのイベントが示すかどうかを決定した。導入遺伝子の完全なコピー、キメライベント、または二重の組込みイベントを欠く植物は、分析に含めなかった。
【0064】
分析の結果を図4および5に報告する。図4において、エラーバーは、各形質転換イベントに対する植物の間の標準偏差を示す。試料2件を独立してそれぞれの植物について処理した。一般に、各形質転換イベントからの独立したコメ植物内のGUSの発現のレベルは、同様であった(図4に示す結果の標準偏差により示される通り)。
【0065】
図5は、記載の範囲内のGUSを発現する形質転換イベントの割合を報告する。
アラビドプシス(Arabidopsis) における人工MARの評価
Aアラビドプシス形質転換ベクター
Act2/GUS/nos(Act2転写開始領域/GUS構造遺伝子/nos3’UTR)構築物を双子葉植物系(アラビドプシス)における試験のために作製した。ベクター3個を作製した。
【0066】
pAct2−bin(配列番号30)は、Act2/GUS/nosカセット、19S/NPTII/orf25polyAを選択可能マーカーとして、そして35S/GFP/nosを独立レポーター遺伝子として含むバイナリーベクターである。
【0067】
pArAct2Af−bin(配列番号31)は、Act2転写開始領域に対して5’に位置する配列番号29のMARダイマー、およびnos3’UTRに対して3’に位置する配列番号26のMARダイマーを有することを除いて、pAct2−binと一致する。
【0068】
pAfAct2Af−bin(配列番号32)は、Act2転写開始領域に対して5’に位置する配列番号26のMARダイマー、およびnos3’UTRに対して3’に位置する配列番号33のMARダイマーを有することを除いて、pAct2−binと一致する。
【0069】
これらのベクターは、アラビドプシス中の人工MARダイマーの二方向での試験を可能とした。pArAct2Af−binおよびpAfAct2Af−bin構築物の図式表示を図3に示す。
B.アラビドプシス形質転換
アラビドプシス形質転換は、パム・グリーン(Pam Green) により提供されたプロトコール(ファンホフおよびグリーン(van Hoof and Green, 1996))に従って行い、これはニコル・ベヒトルド(ベヒトルドら(Bechtold et al., 1993) )、アンドルー・ベント(ベントら(Bent et al., 1994) )およびタカシ・アラキ(Takashi Araki 私信)を適応させたものである。
【0070】
生態型コロンビア(Columbia)の種子を4インチの角形鉢に植え、窓用の網で覆い、明所16時間/暗所8時間、22℃の条件下、週に1回のサブイリゲーション(subirrigation) により施肥して栽培した。肥料は、5mM KNO3、2.5mM KPO4(pH5.5)、2mM MgSO4、2mM Ca(NO3)2、0.05mM Fe・EDTA、0.07mMホウ酸、0.014mMMnCl2、0.005mM CuSO4、0.001mM ZnSO4、0.0002mM NaMoO4、および0.01mM NaClから成っていた。植物を鉢あたりに4本に間引き、数本の束が現れるまで栽培した。植物が形質転換に適するようになると、土上の部分を、アグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞を含む浸潤媒体(2.2g/l MS塩、1X B5ビタミン、50g/lスクロース、2.5mM MES、pH5.7、0.044 M ベンジルアミノプリン、200ml/lシルヴェット(Silwet)L−77TM〔オシ・スペシャルティーズ社(Osi Specialties, Inc)〕)中に浸漬し、400mmHg(約1インチ)の減圧下の真空乾燥器内に5分間置いた。迅速に減圧から解放した後、鉢を水切りし、そしてプラスチックラップで覆ったトレー内に横に置いて24時間湿度を保持した。次の日に鉢の覆いを取り、直立させた。植物を個別に支持し、そして2週間後に灌水を徐々に減らして植物を完全乾燥させた。種子を各植物から個別に採取した。
【0071】
形質転換イベントの選択のために、植物あたりに種子1〜10mgを、10%漂白液中に7分間、激しく攪拌しながら浸漬して表面滅菌し、次いで滅菌水中で3回リンスし、そしてアラビドプシス発芽媒体(MS塩、MSビタミン、10%スクロース、2.5mM 2−〔N−モルホリノ〕エタンスルホン酸〔MES〕、30mg/lカナマイシン、50mg/lバンコマイシンおよび0.1%バクト(Bacto) TMアガー〔ディフコ・ラボラトリーズ(Difco Laboratories, Detroit, MI)〕)を含むフラスコ内に置いた。連続光内、90rpmで3日間振とうした後、種子が発芽し、そして発芽後7および12日の間に、形質転換体を緑色の幼植物として単離した。非形質転換種子は、小さい淡色の幼植物を発生した。形質転換体をプレート内の固体媒体(MS塩、B5ビタミン、10%スクロース、2.5mM MES、15g/lファイタガー(Phytagar)TM〔ジブコBRL、Gaitersberg, MD〕、30ml/lカナマイシン、50mg/lバンコマイシン)に移してさらに選択した。1〜2週間後に、真の形質転換体をGA7容器(MS塩、B5ビタミン、0.3%スクロース、2.5mM MES)に1〜2週間移し、次いでT1種子を産生するために土壌内に植えた。
C.サザン分析
サザン分析は、特定の遺伝子構築物の不変のコピーを含む一次再生T2アラビドプシス株を特定するために使用した。
【0072】
アラビドプシス葉組織のプールした試料を、液体窒素内で粉末化した。次いで破砕した組織を3分間、500μl 2X抽出緩衝液(2%CTAB、100mMトリス−HCl、pH8.0、20mM EDTA、1.4M NaClおよび2% 2−メルカプトエタノール)中、65℃でインキュベーションした。クロロホルム/オクタノール(24:1)の500μlを加え、試料を2分間振とうし、次いでマイクロ遠心分離機内で14,000xgで回転し、そして上清を除去した。クロロホルム/オクタノール抽出を繰り返した。沈降緩衝液(1%
CTAB、50mMトリス−HCl、pH8.0、10mM EDTA、および1% 2−メルカプトエタノール)の1mlを上清に加え、次いで室温で60分間インキュベーションした。DNAをマイクロ遠心分離機で5分間、3500xgの遠心分離によりペレット化した。ペレットを水切りし、そして200μlの1.0M NH4 OAc中に再懸濁した。100μlの7.5M NH4 OAcおよびイソプロパノール1mlを加え、試料を氷上で5分間インキュベーションし、次いで14,000xgで5分間遠心分離した。ペレットを水切りし、そして200μl TE中に再懸濁した。100μlの7.5M NH4 OAcおよびイソプロパノール1mlを加え、氷上で5分間インキュベーションし、次いで14,000xgで5分間遠心分離した。ペレットを水切りし、そして70%エタノールを用いてリンスし、そしてスピード・ヴァック(Speed Vac 、サヴァント・インスツルメント社(Savant Instrument Inc., Farmingdale, NY) )内で乾燥した。乾燥したペレットを20μl TE(10mM Tris、1mM EDTA、pH8.0)中に再懸濁した。
【0073】
サザン分析は、29 ArAct2Af T2株および24 AfAct2Af T2株について行った。ArAct2Af植物からのDNAの1μgを制限酵素XbaIを用いて、製造者(ベセスダ・リサーチ・ラボラトリーズ、Gaithersberg, MD)により示唆された条件下で消化し、そしてアガロースゲル電気泳動により分離し、これは、遺伝子構築物が不変の場合には、GUSコーティング領域に対して特異性のプローブで放射能標識すると、4.6kbハイブリダイゼーション生成物をもたらすはずである。ArGOS2Afコメ植物と同様に、4.6kb断片は、逆方向の人工MAR、Act2プロモーター、GUSコーディング領域、nos3’UTRおよび正方向の人工MARから成るはずである。DNAをサザンの記載(1975,1989) に従ってナイロン膜上にブロットした。放射能標識したプローブDNAを、60℃に加熱した最少ハイブリダイゼーション緩衝液(10%ポリエチレングリコール、7%ドデシル硫酸ナトリウム、0.6x SSC、10mMリン酸ナトリウム、5mM EDTAおよび100mg/ml変性サケ精子DNA)の50mlを用いてブロット上のゲノムDNAにハイブリダイゼーションし、そして変性した放射能標識プローブと混合し、次いで60℃で一晩ハイブリダイゼーションするためのブロットに添加した。このブロットを60℃、0.25X SSCおよび0.2%SDS中で45分間洗浄し、乾燥ブロットし、そして2枚の強化スクリーンを有するXAR−5フィルムに一晩暴露した。
【0074】
期待された4.6kbハイブリダイゼーション生成物が、29 ArAct2Af株の26株で検出された。第二のサザンブロットは、ArAct2Af構築物のコピー数を決定するために作製した。ArAct2Af DNAを、構築物をT DNAの右および左境界付近で切断する制限酵素SstIおよびXhoIを用いて消化した。人工MARおよび左境界からXhoI部位に向かって800bp下流のDNAに対して特異性のプローブを用いてブロットを放射能標識した。ArAct2Af構築物の単一コピーは、3種のハイブリダイゼーション生成物を有するであろう。すなわち左および右境界DNAから成る未知の大きさの2断片、および境界から内部のDNAである8.9kb断片である。29株中の22株は、3種またはこれ以下のハイブリダイゼーション生成物を有し、ArAct2Af構築物の単一コピーが存在することを示した。
【0075】
AfAct2Af植物からのDNAを制限酵素XbaIを用いて消化し、これは、遺伝子構築物が不変のままであれば、GUSコーティング領域に対して特異性のプローブで放射能標識すると、5.7kbハイブリダイゼーション生成物をもたらすはずである。5.7kb断片は、正方向の人工MAR、Act2プロモーター、GUSコーディング領域、nos3’UTRおよび正方向の人工MARから成るはずである。これは緑色の蛍光タンパク質コーディング領域およびnos3’UTRも含む。期待された5.7kbハイブリダイゼーション生成物が、24 AfAct2Af株の24株すべてで検出された。
【0076】
第二のサザンブロットは、AfAct2Af構築物のコピー数を決定するために作製した。AfAct2Af DNAを、構築物をT DNAの右および左境界付近で切断する制限酵素SstIおよびXhoIを用いて消化した。人工MARおよび左境界からXhoI部位に向かって800bp下流のDNAに対して特異性のプローブを用いてブロットを放射能標識した。AfAct2Af構築物の単一コピーは、3種のハイブリダイゼーション生成物を有するであろう。すなわち左および右境界DNAから成る未知の大きさの2断片、および境界から内部のDNAである8.9kb断片である。24株中の15株は、3種またはこれ以下のハイブリダイゼーション生成物を有し、AfAct2Af構築物の単一コピーが存在することを示した。
【0077】
非MAR対照株のActbinもサザン分析で分析した。34 Actbin T2株からのDNAを、制限酵素PstIを用いて消化し、これは、構築物が不変のままであれば、GUSコーティング領域に対して特異性のプローブで放射能標識すると、3.4kbハイブリダイゼーション生成物をもたらすはずである。3.4kb断片は、Act2プロモーター、GUSコーディング領域、およびnos3’UTRから成るはずである。期待された3.4kbハイブリダイゼーション生成物が、34 Actbin株の30株で検出された。第二のサザン分析をActbin構築物のコピー数を決定するために行った。Actbin株からのDNAを、構築物をT DNAの右および左境界付近で切断する制限酵素SstIおよびXhoIを用いて消化した。3’UTRおよび左境界からXhoI部位に向かって800bp下流のDNAに対して特異性のプローブを用いてブロットを放射能標識した。Actbin構築物の単一コピーは、3種のハイブリダイゼーション生成物を有するであろう。すなわち左および右境界DNAから成る未知の大きさの2断片、および境界から内部のDNAである8.2kb断片である。34株中の9株は、3種またはこれ以下のハイブリダイゼーション生成物を有し、Actbin構築物の単一コピーが存在することを示した。
D.GUS分析
アラビドプシスの栽培のために、T2種子を生体外で、90mg/lカナマイシンを含むMS媒体上で発芽させ、そして3週齢のカナマイシン耐性幼植物を採取した。形質転換イベントあたりに幼植物30個のバッチをGUS分析に使用し、そして別の幼植物をDNA抽出に使用した。
【0078】
GUS活性の分析のために、葉試料を液体窒素中で粉末化し、そして組織約400mlの試料をミクロフュージ管内に入れた。各葉試料からの2個の独立試料を処理した。組織は、−70℃で貯蔵するかまたは直ちに抽出した。粉末化した組織を、1%ポリビニルポリピロリドン(緩衝液中で少なくとも1時間水和した)および20%グリセロールを加えて変性したGUS溶解緩衝液(ジェファーソンら(Jefferson et al., 1987))と混合してGUSを抽出した。氷上で少なくとも10分間インキュベーションした後、試料を16,000xgで10分間遠心分離した。上清を回収しそして上記のようにして第二回目の遠心分離を行った。上清を回収しそしてドライアイス上で冷凍しそして−70℃で貯蔵した。実験は、上記の緩衝液内で貯蔵した場合に、GUS活性が少なくとも4回の冷凍−解凍サイクルで安定であることを示した(W.M.エインレー(Ainley)未公開)。GUS活性は、GUS−ライト(Light) TMキット(トロピックス社(Tropix, Inc., Bedford, MA))を用いて測定した。未希釈抽出物または蛍光計で測定した蛍光が範囲内にあるように希釈した抽出物の5ml試料を、GUS−ライトTM反応緩衝液の195mlに加えた。蛍光は、5秒の経過の後5秒間積算した。タンパク質は、標準としてヒト血清アルブミンを用いるブラッドフォードにより開発されたアッセイ(Bradford, 1976)を用いて測定した。GUS活性は、SIGMAから入手したGUS標準を用いて、実験間で正規化した。標準および植物試料内の植物タンパク質の量は、同じであった。必要な場合には、非形質転換植物の抽出物を用いてタンパク質を調整した。
【0079】
図6および7は、GUS分析の結果を報告している。図6は、基礎、非−MAR構築物(Actbin)または指示した方向(ArAct2AfまたはAf−Act−Af)にある人工MARにより隣接されている基礎構築物を発現する独立した形質転換イベントに対して観察された発現を報告している。標準偏差は、種々の植物から採取した植物間の変動を示す。矢印は、MARの相対方向を示す。
【0080】
図7中では、指示された範囲内でGUSを発現する形質転換イベントの割合を示す。
E.レポーター遺伝子構築物を発現する形質転換植物の特性試験。
【0081】
T2アラビドプシス植物を分析した。挿入コピー数を決定するために、カナマイシン耐性の分離に関して植物を評価した。カイ二乗解析で検定して、いくつかのイベントは、1個または2個の挿入物カテゴリー内に入らなかった。残りの植物の中で、72%は単一挿入であった。挿入の大部分は導入遺伝子の複数コピーを有していた。アラビドプシス形質転換イベントは、制御された環境下で生育させたけれども、重複したプレートの間で植物の相対成長にいくらかの偶然的な相違があった。これらの場合に、イベントは使用しないかまたは再度栽培した。重複プレートから決定した発現の変動係数は、1〜46%の間に広がり、その89%は20%以下であった(図6)。
【0082】
一般に、構築物に関して試験したすべてのアラビドプシス形質転換イベントを一緒に栽培および分析した。植物の生育は制御された環境下であったけれども、構築物を発現する形質転換イベントの間に観察された相違が、異なる実験の間に起きた環境の相違によるものである可能性も残る。この可能性を除くために、アラビドプシス形質転換イベントの3組からの最高発現イベント3例を一緒に生育させて再分析した。この分析は、形質転換イベントの組の間の初期の相違を確認した。
導入遺伝子発現に対する人工MARの効果の要約
コメとアラビドプシスの両者において、MAR含有構築物を発現する形質転換イベントの平均発現レベルは、MAR要素を欠くものよりも高いレベルで発現した(表3)。アラビドプシスにおいては、試験したMARの方向は、発現のレベルに影響した。GUS遺伝子構築物の両方の側で同じ方向にMARがある構築物を含む植物は、MARが反対方向に向いている構築物を含む植物よりも高いレベルでGUSを発現した。
【0083】
形質転換イベントのそれぞれの組内で、より高い発現株内の方が、より低い株内よりも比例的により高い発現レベルのように見える。これを文書化するために、発現例の上位1/4の発現を比較した(表3)。このデータに基づくと、AfAct2Af構築物を発現する形質転換イベントの上位1/4は、Actbin構築物を発現するイベントの上位1/4よりも5.6倍高いレベルでGUSタンパク質を産生する。コメおよびアラビドプシスの両者において逆方向にある人工MARは、それぞれの構築物を欠くMARよりも約2倍、発現を増強する。
【0084】
【表5】
【0085】
これまで公開された研究(ホームズ−デーヴィスおよびコマイにより概説(Holms-Davis and Comai, 1998) )は、1例のMARを除いて、今日まで試験されたすべてのMARがレポーター遺伝子の発現を増強することを示している。本研究は、優先的にMAR内に見いだされる要素を用いて構築したMARが、単子葉および双子葉植物の双方を代表する植物種内で発現を増強できるという最初の報告である。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【0093】
【表13】
【図面の簡単な説明】
【図1】 配列番号1の人工MARを構築するための戦略を示す図である。
【図2】 MARダイマーを含むコメ形質転換構築物ArGOS2Afの図式表示である。
【図3】 MARを含まない構築物GOS2および人工MARダイマーを含む構築物ArGOS2Afを用いた複数のコメ形質転換イベントに対する相対GUS活性を比較したグラフである。
【図4】形質転換コメ植物におけるGUSレポーター遺伝子の発現の範囲に対する人工MARの効果を示すグラフである。
【図5】 アラビドプシス形質転換構築物ArAct2AfおよびaaaaAfActAfの図式表示である。ArAct2Afは、レポーター遺伝子に隣接して反対方向にあるMARダイマーのコピーを含む。AfAct2Afは、レポーター遺伝子に隣接して同じ方向にあるMARダイマーのコピーを含む。
【図6】 MARを含まない構築物Act2および人工MARダイマーを含む構築物ArAct2AfおよびAfAct2Afを用いた複数アラビドプシス形質転換イベントに対する相対GUS活性を比較したグラフである。
【図7】 形質転換アラビドプシス植物におけるGUSレポーター遺伝子の発現の範囲に対する人工MARの効果を示すグラフである。
【配列表】
Claims (7)
- 配列番号1のbp11から309までを含んでなる単離されたDNA分子。
- 5’から3’への方向で、植物細胞内で機能性の転写開始領域、転写開始領域と協同して機能する構造遺伝子、3’非翻訳領域、および該転写開始領域に対して5’または該構造遺伝子に対して3’のいずれかに位置する配列番号1のbp11から309までを含んでなるマトリックス付着領域を含んでなるDNA構築物であって、該配列番号1のbp11から309までを含んでなる第一マトリックス付着領域が該転写開始領域に対して5’に位置し、そして配列番号1のbp11から309までを含んでなる第二マトリックス付着領域が該構造遺伝子に対して3’に位置する、上記のDNA構築物。
- マトリックス付着領域のそれぞれが、配列番号1のbp11から309までの2個またはそれ以上の縦列コピーを含んでなる、請求項2記載のDNA構築物。
- 細胞中に導入された構造遺伝子の増加した発現を有する組換え植物細胞を製造する方法において、再生可能な植物細胞を、5’から3’への方向で、植物細胞内で機能性の転写開始領域、転写開始領域と協同して機能する構造遺伝子、3’非翻訳領域、および該転写開始領域に対して5’または該構造遺伝子に対して3’のいずれかに位置する配列番号1のbp11から309までを含むトリックス付着領域を含んでなるDNA構築物を用いて形質転換することを特徴とする、上記の方法。
- DNA構築物が、該転写開始領域に対して5’に位置する配列番号1のbp11から309までを含んでなる第一マトリックス付着領域、および該構造遺伝子に対して3’に位置する配列番号1のbp11から309までを含んでなる第二マトリックス付着領域を含む、請求項4記載の方法。
- 該第一および第二マトリックス付着領域がそれぞれ配列番号1のbp11から309までの2個またはそれ以上の縦列コピーを含んでなる、請求項5記載の方法。
- 配列番号1のbp11から309までのDNAを含む形質転換された植物細胞。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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