JP4544660B2 - アルミノキサンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン用触媒成分の一つとして有用なアルミノキサンの製造方法およびこれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【従来の技術】
簡略化された構造式[I]は、
Figure 0004544660
(ただし、C1〜C8の直鎖あるいは分岐したアルキル基を表し、nは2以上の整数を示す。)で示される化合物で、高活性のポリオレフィン重合触媒の製造の際に触媒成分として使用され、特にRがメチル基であるポリメチルアルミノキサン(PMAO)は特に優れた触媒活性を発現させる助触媒として一般に知られている。
【0002】
これらアルミノキサンの製造は、不活性炭化水素溶媒中でトリアルキルアルミニウムと水の反応で生成できることが知られている。しかし、トリメチルアルミニウムの不活性炭化水素溶液中へ水をゆっくりと添加する方法で得られるPMAOの収率は低いものである。すなわち、アルキルアルミニウムと水との反応は爆発的に進行するため、この様な方法では反応速度および反応熱の制御を十分に行い得ないことを示している。この様な観点から、結晶水を有する無機塩を用いて、水とトリアルキルアルミニウムの反応を制御しようとする提案がなされている。例えば、シンらは硫酸銅の水和物とトリメチルアルミニウムの反応によりPMAOを製造する方法(米国特許第4404344号)を、またカミンスキーらは硫酸アルミニウムの水和物を用いる同様な方法を提案している(米国特許第4544762号)。さらに、同様なものとして米国特許第4665208号、特許願63−87717号などを挙げることができる。しかしながら、これらに記載されているPMAO製造方法では、結晶水を効率よく利用するために、これら水和化合物を十分に粉砕しなければならず、また長い反応時間を必要とする。さらに、生成したPMAOが先に挙げた無機塩に多量に吸着されてしまい、大きな収率の低下を引き起こしてしまう。この様な問題点のため、無機物の結晶水を用いる方法は工業的なアルミノキサン製造方法としては有用な方法とは言えない。
【0003】
一方、水を不活性溶媒中へ微分散させ、不活性溶媒に溶解希釈したトリアルキルアルミニウムに添加するPMAO製造方法が提案されている。例えば、米国特許第4730071号には超音波を用いてトルエン中に水を分散させ、この分散液にトリメチルアルミニウムのトルエン溶液を添加することによりPMAOの製造を行う方法が、また米国特許4730072号には高速、高剪断力誘発インペラーを用いる方法等が提案されている。さらに、特開平2−219805号には、静止ミキサーを用いる方法が提案されている。しかし、超音波や高速、高剪断力誘発インペラーを用いる方法でも、PMAO収率は依然として低い。静止ミキサーを用いる方法では、水またはトリアルキルアルミニウムの希釈剤として用いる不活性溶媒の使用量が極めて大きくなり、得られるアルミノキサン溶液濃度が低くなってしまう点や、トリアルキルアルミニウムに対する水のモル比を大きくすることが出来ないなどの問題点を有する。また、米国特許第5103031号には、湿った不活性ガスを調製し、不活性溶媒に溶解させたトリメチルアルミニウムとを接触させて、アルミノキサンを得る方法が提案されている。
【0004】
このような問題点を解決する方法として、例えば特開平4−235990号に記載されているスプレー噴霧ノズルを利用して水の微粒子を形成させ、不活性溶媒で希釈されたトリアルキルアルミニウム溶液中へ吹き込む方法が提案されている。
【0005】
上述した方法は、いずれも高収率でPMAOを製造しようとする方法に関するものであるが、水とトリメチルアルミニウムの反応においては過加水分解を受けたトリメチルアルミニウムの固形物やゲル状物が生成してしまう。また、極めて低濃度でトリアルキルアルミニウムの加水分解度を低く押さえることにより、局部的な過加水分解反応を抑制しようとする提案も見受けられるが、アルミノキサンの生成効率を低下させてしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、オレフィン重合用触媒成分として有用なアルミノキサンを良好な収率で合成する方法を提供すると共に、この触媒成分を用いて品質の良好なオレフィン系重合体を工業的に有利に効率よく、しかも安価に製造する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を続けた結果、トリアルキルアルミニウムと水との反応において、ある一定の条件下に水の添加反応を二段階に分けることにより、温和な条件下に安全かつ連続的にアルミノキサンを高収率にて得られることを見出した。さらに、この方法を用いると、オレフィン類の重合において重合活性に影響することが知られている加水分解されずに残ったトリアルキルアルミニウムの量を、収率を大きく損なうことなく制御できることも明らかとなった。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、不活性炭化水素溶媒中の1〜50重量%のトリアルキルアルミニウム化合物の溶液と水とを接触反応を、一定条件下に二段階反応させることにより、高い収率でアルミノキサンを製造する方法である。好ましくは、あらかじめ形成されたアルミノキサンをトリアルキルアルミニウム化合物の溶液中へ混在させておき、トリアルキルアルミニウムと水とを反応させる際に、それらを連続的に導入することにより、高い収率でアルミノキサンを製造する方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。水と反応してアルミノキサンを生成するトリアルキルアルミニウムとしては、一般式[II]
Figure 0004544660
(ただし、式中R,R,Rは同一あるいは互いに相異なってC1〜C8の直鎖あるいは分岐したアルキル基を示す。)
で示されるトリアルキルアルミニウムを用いることができる。
【0010】
より具体的には、R,R,Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基などのアルキル基を挙げることができる。
【0011】
このようなトリアルキルアルミニウムの具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウムを挙げることができる。また、これらのトリアルキルアルミニウムを単独あるいは組み合わせて用いることにより好ましいアルミノキサンの調製に利用することができる。この中で最も好ましいトリアルキルアルミニウムおよびその組み合わせは、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムおよびそれらの組み合わせである。
【0012】
本発明には、任意の不活性溶媒を利用することができ、好ましい溶媒は脂肪族および芳香族炭化水素である。脂肪族炭化水素溶媒としては、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンおよび精製ケロシン等の飽和炭化水素化合物、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンのような環状飽和炭化水素化合物が挙げられ、芳香族炭化水素溶媒としては例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレンのような芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。これらの溶媒の中で、最も好ましい溶媒はトルエンである。
【0013】
不活性溶媒中のアルミノキサンの濃度は、1〜30重量%の範囲で良く、好ましくは5〜20重量%である。
【0014】
水/トリアルキルアルミニウムのモル比は、トリアルキルアルミニウムのアルキル基の鎖長に応じて0.3〜1.5:1の範囲に調整することができる。トリメチルアルミニウムを用いた場合には、0.5〜0.9:1の範囲にモル比を調整することが重要である。
【0015】
水とトリアルキルアルミニウムを接触させる反応は、二段階反応で実施する。
この二段階反応は、不活性炭化水素溶媒中に、水/トリアルキルアルミニウムのモル比で0.1〜0.4に相当する水とトリアルキルアルミニウムを同時に添加する第一段階反応と追加の水のみを水/トリアルキルアルミニウムのモル比で0.3〜1.5の範囲にまで添加する第二段階反応からなる。好ましくは、第一段階反応において、水を投入する前に、不活性炭化水素溶媒中へあらかじめ形成されたアルミノキサンを0.05〜4重量%の範囲で混入させておくことが望ましく、また同時にトリアルキルアルミニウムを0.1〜10重量%の範囲で混合しておくことも可能である。
【0016】
反応温度としては、−50〜50℃の間の任意の温度で実施することが可能である。好ましくは−10〜10℃である。
反応終了後のアルミノキサン溶液は、反応温度を保持したまま、しばらく撹拌熟成を行うことが好ましいが、反応溶媒の沸点よりも低い温度で加熱熟成を行うことも可能である。
【0017】
本発明の重合方法においては、重合形式として、溶媒を用いる溶液重合、溶媒を用いないバルク重合や気相重合等のいずれの方法にも適した性能を発揮する。また、連続重合、回分式重合のいずれの方法においても好ましい性能を発揮する。用いられるモノマーについては、オレフィン系、スチレン系、ジエン系モノマーおよびそれらの組み合わされた共重合においても好ましい性能を発揮する。
【0018】
図1は、本文に記載された方法を実施するために使用し得る装置を描写する。
タンクA中の水は窒素加圧あるいは適当なポンプを用い、ラインbを通って二重管部に導かれる。この二重管部では、ラインaより導入される加圧された窒素と水がここで接触し、ラインcを通ってトリアルキルアルミニウム溶液中へ一気に導入される。このような装置においてはラインcを通った水は、ラインcより出ると細かい霧状の水滴となり、タンクB中に拡散する。吹き込まれた水はトリアルキルアルミニウム溶液と接触し、アルミノキサンを生成せしめる。このとき副生するガスおよび吹き込まれた窒素ガスは、タンクBに接続しているベントラインより放出される。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。以下の反応においては、窒素ガス雰囲気下に行い、溶媒はすべて脱水したものを、また水にはイオン交換水を用いた。
【0020】
実施例1
(1)アルミノキサンの合成
撹拌装置を有する内容積5Lのセパラブルフラスコに、トリメチルアルミニウム(TMAL)66.6g(0.925mol)、トルエン710gおよびポリメチルアルミノキサン(PMAO)のアルミニウム原子換算で10.5wt%のトルエン溶液38.0g(アルミニウム原子換算;0.148原子mol)を入れた。これとは別に、耐圧ガラス社製50mlガラスオートクレーブに水37g(2.05mol)を入れた。内容積2Lのガラス製広口瓶にTMAL426.8g(5.93mol)とトルエン811.9gを混合し、これとセパラブルフラスコをテフロンチューブでつないだ。さらに、耐圧ガラス社製50mlオートクレーブをスプレーノズルへ接続し、セパラブルフラスコヘテフロンチューブを介してつないだ。
【0021】
5Lのセパラブルフラスコを撹拌しながら−7℃に冷却し、TMALのトルエン溶液とトルエンを分散させた水を同時に投入を行った。この時、水の投入には図1に示すような構造の窒素圧力を利用したスプレーノズルを用いて行った。滴下の際に、TMALの全量投入が終了した段階で、水とTMALのモル比(同時添加比)が0.3になるように滴下量を制御した。その後、水37g(2.05mol)を先と同じ速度で添加した。水とTMALの最終的なモル比(添加比)は0.6であった。滴下終了後、一晩撹拌放置し、さらに70℃で2時間加熱熟成を行った。この溶液を放冷後、ガラスフィルターで析出した固形分を濾過除去し、均一透明なPMAOのトルエン溶液を得た。この溶液のアルミニウム原子基準で示す収率は、82.2%であり、アルミニウムの濃度は8.76wt%であった。また、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は29.4mol%であった。
【0022】
(2)エチレン重合評価
磁気撹拌装置を持つ500mlの四つ口フラスコにトルエン250mlを導入し、34℃に保温した。これにアルミニウム原子換算で0.16gのPMAOのトルエン溶液を加えた。さらにアルミニウム/ジルコニウムのモル比が10000となるようにジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライドを加え、40℃に昇温しながらエチレンガスを吹き込んだ。10分後に、エチレンガスの供給を止め、メタノールを投入して触媒を失活させた。生成したポリエチレンを濾過乾燥し、重合活性を測定すると55×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0023】
実施例2
(1)アルミノキサンの合成
実施例1において、水とTMALの添加比が0.7となるように二段目の水のみの添加量を変えたことを除いては、実施例1と同様にPMAOの合成を行った。その結果、得られた溶液のアルミニウム原子基準で表す収率は、72.4%であり、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は22.3mol%であった。
【0024】
(2)エチレン重合評価
重合評価は実施例1記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は61×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0025】
実施例3
(1)アルミノキサンの合成
実施例1において、水とTMALの同時添加比が0.4となるようにしたことを除いては、実施例1と同様にPMAOの合成を行った。その結果、得られた溶液のアルミニウム原子基準で表す収率は、87.2%であり、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は26.3mol%であった。
【0026】
(2)エチレン重合評価
重合評価は実施例1記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は58×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0027】
実施例4
(1)アルミノキサンの合成
実施例1において、水のみの添加を24.7g(1.37mol)とし、全体の水の添加量を61.7g(3.43mol,水/TMAL(モル比)=0.5)としたことを除いては、実施例1と同様にPMAOの合成を行った。その結果、得られた溶液のアルミニウム原子基準で表す収率は、90.2%であり、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は37.3mol%であった。
【0028】
(2)エチレン重合評価
重合評価は実施例1記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は42×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0029】
比較例1
(1)アルミノキサンの合成
撹拌装置を有する内容積5Lのセパラブルフラスコに、トリメチルアルミニウム(TMAL)66.6g(0.925mol)、トルエン710gおよびPMAOの10.5wt%(アルミニウム原子換算)トルエン溶液38.0g(アルミニウム原子換算;0.148原子mol)を入れた。耐圧ガラス社製50mlオートクレーブに水61.7g(3.43mol)とトルエン2.6gを入れた。また、内容積2Lのガラス製広口瓶にTMAL426.8(5.93mol)とトルエン811.9gを混合し、これとセパラブルフラスコをテフロンチューブでつないだ。耐圧ガラス社製50mlオートクレーブをスプレーノズルへ接続し、さらにセパラブルフラスコヘテフロンチューブを介してつないだ。
【0030】
5Lのセパラブルフラスコを撹拌しながら−7℃に冷却し、TMALのトルエン溶液と水を同時に投入した。この時、水の投入には図1に示すような構造の窒素圧力を利用したスプレーノズルを用いて行った。滴下の際に、TMALの全量投入が終了した段階で、水とTMALのモル比(同時添加比)が0.5になるように滴下量を制御した。その後、さらに水12.34g(0.69mol)を耐圧ガラス社製オートクレーブに入れ、先と同じ速度で、水とTMALの最終的なモル比(添加比)が0.6になるように添加した。滴下終了後、一晩撹拌放置し、さらに70℃で2時間加熱熟成を行った。この溶液を放冷後、ガラスフィルターで析出した固形分を濾過除去し、均一なPMAOのトルエン溶液を得た。その結果、得られた溶液のアルミニウム原子基準で示す収率は、76.3%であった。また、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は38.1mol%であった。
【0031】
(2)エチレン重合評価
重合評価は実施例1記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は40×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0032】
比較例2
(1)アルミノキサンの合成
比較例1において、水とTMALの添加比が0.7となるように水の添加量を変えたことを除いては、比較例1と同様にPMAOの合成を行った。その結果、得られた溶液のアルミニウム原子基準で表す収率は、64.6%であり、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は27.4mol%であった。
【0033】
(2)エチレン重合評価
重合評価は実施例1記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は52×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0034】
比較例3
(1)アルミノキサンの合成
比較例1において、水の添加をTMALとの同時添加のみで終了したこととそのときの水の量を61.7g(3.43mol,水/TMAL(モル比)=0.5)としたことを除いては、比較例1と同様にPMAOの合成を行った。その結果、得られた溶液のアルミニウム原子基準で表す収率は、80.5%であり、H−NMRより求めた未反応のTMAL量は45.6mol%であった。
【0035】
(2)エチレン重合評価
重合評価は実施例1記載の方法と同様に実施したところ、重合活性は38×10g−PE/mol−Zr・atm・hrであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、オレフィンの重合に有用な助触媒成分であるアルミノキサンの効率よい製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に従い、使用し得る装置の一態様を描写するものである。

Claims (3)

  1. 不活性炭化水素溶媒中の1〜50重量%のトリアルキルアルミニウム化合物の溶液と水とを接触させる反応が二段階反応であり
    (i)トリアルキルアルミニウム化合物の溶液と水とを不活性炭化水素溶媒中へ同時に添加し、それが水とトリアルキルアルミニウム化合物のモル比が0.1〜0.4の間で実施することを特徴とする第一段階の反応
    (ii) 第一段階反応で形成された反応液中へ水のみを添加する反応が第二段階の反応であるアルミノキサンの製造方法。
  2. トリアルキルアルミニウム化合物と水とを第一段階反応で反応させる際に、それらを連続的に導入することを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 請求項1〜までのいずれか1項記載の方法により製造されたアルミノキサンを助触媒として用い、遷移金属触媒と組み合わせることによりオレフィン重合体を製造する製造方法。
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