JP4542051B2 - 多孔質膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質状態の膜を形成する多孔質膜の形成方法に関する。
LSIを始めとする大規模・高性能デバイスでは、多層配線構造の技術が重要となる。微細化によるより高い集積度や高速化が要求される中で、多層配線構造では配線間の寄生容量が問題となり、これを改善するために、多層配線間の層間絶縁膜として低誘電率の膜が検討されている。このような低誘電率の膜としては、メチルポリシロキサン及び水素化ポリシロキサンよりなる多孔質状態の薄膜が利用され、多くは、よく知られたゾル・ゲル法により薄膜が形成されている。この技術では、アルコキシシランなどのアルコキシ金属に水と触媒を添加して加熱し、これにより生じた脱アルコール反応を利用して多孔質状態の薄膜(エアロゲル若しくはシリカエアロゲル)を形成可能としている。このような多孔質状態の薄膜は、低誘電率絶縁体だけでなく、透明断熱材、防音材、触媒担体として使われ、建築材、宇宙ロケット用材料等としても使われる材料であり、多くの産業で使われている。
上述した多孔質状態の薄膜(エアロゲル)は,体積の90%以上を空隙が占め、工学透過性を有する透明な発泡体状の外観を持つ物質である。エアロゲルは、樹枝状に凝集した数十nmの微細なシリカ粒子から構成されている。このように構成されたエアロゲルは、粒子径が光の波長より小さいため光透過性があり、かつ細孔径が小さく空気の対流が妨げられるため、静止空気に匹敵する断熱性能を示す。この点から、窓からの熱放散を防ぐ透明断熱材として注目を集め,各国で工業化へ向けての研究が進められている。
エアロゲルは、通常、塩基を触媒としたゾルゲル法でシリカのアルコール湿潤ゲルを作り、これを乾燥することで製造されている。例えば、図3(a)に示すように、ゾル301を加熱してこの中にエアロゲル302が形成された状態とし、この後、ゾル301を乾燥させることで、乾燥されたエアロゲル302が形成された状態とする。しかしながら、通常の乾燥法では、気液界面に界面張力が働き、これに伴う毛細管力で膜が収縮するため、図3(b)に示すように、多孔質膜であるエアロゲル302に複数の亀裂303が生じて割れるなどの問題が発生していた。
上述した問題を解決する方法として、エアロゲルをアルコール又は二酸化炭素(CO2)系の超臨界条件の下で,徐々に溶媒(超臨海流体)を抜いて乾燥する方法(超臨界乾燥)が提案されている。高圧とともに高温して得られる超臨界流体状態を経由して気体にすると、気液平衡状態を経ることがないため、気液界面の界面張力が生じない(非特許文献1参照)。このため、乾燥されたエアロゲルに亀裂などが入ることが抑制されるようになる。この特徴を利用した乾燥が、超臨界乾燥と呼ばれている。
他の薄膜形成でも超臨界流体は用いられている。例えば、有機金属を溶解して高温下で薄膜形成する化学的気相成長法や、超臨界急速膨張(RESS)法や、ガス飽和・懸濁溶液(PGSS:Particles from Gas-Saturated Solutions)法と呼ばれ、材料となる有機化合物を溶解した超臨界流体を急速に減圧することで微粒子の薄膜を形成する技術などにも用いられている。
ところで、エタノール等のアルコールは、臨界温度が240℃であり、超臨界状態にするにためには240℃以上の温度にすることになるが、引火性があるため、超臨界状態とすることが容易ではない。このため最近では、アルコールを二酸化炭素で置換し、この後で、二酸化炭素を超臨界状態にして乾燥する方法が一般的に用いられている。例えば、図4(a)に示すように、ゾル401を加熱してこの中にエアロゲル402が形成された状態とし、次に、ゾル401を液化二酸化炭素に置換し、次に、図4(b)に示すように、液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素403とし、この後、超臨界二酸化炭素を気化して乾燥させる。液化二酸化炭素を超臨界状態とするまでは、すべて液中の処理となるため、気液界面が発生することがない。また、二酸化炭素は引火性がないため、取り扱いが容易である。
H. Namatsu, et al. ,"Supercritical Drying for Nanostructure Fabrication without Pattern Collapse", Microelectronic Engineering, Vol.46, pp.129-132, 1999.
しかしながら、最近では孔径が1μm以下のエアロゲルが用いられる(製造される)ようになり、孔内のアルコール(ゾル:溶媒)が置換しにくい状況になってきている。二酸化炭素は、20℃・大気圧程度の定常状態では気体であり、アルコールとは混じらない。また、液体とするためには高圧で低温状態にすることになる。このような状態では、孔内に含浸しているアルコールを二酸化炭素に置換することは、非常に困難である。このため、図4(b)に示した工程で、エアロゲル402の孔内に含浸しているすべてのアルコールが液化二酸化炭素に置換しきれず、乾燥時に気液界面が発生し、結果として、図4(c)に示すように、複数の亀裂303が生じて割れるなどの問題が発生していた。このように、従来では、超臨界乾燥を利用しても、エアロゲルの膜割れを完全に防ぐことが困難であった。この置換のしにくさは、二酸化炭素がアルコール等の有機溶剤に混じりにくい(溶解性が低い)ことも影響している。
さらには、二酸化炭素に原材料を溶解して加熱した後で膜成長させる膜形成法(化学的気相成長法や微粒子膜形成法)においても、二酸化炭素に対する溶解性の低さから原材料の選択が制限される等の問題も生じていた。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、割れなどが抑制された状態で、様々な材料による多孔質膜が、より容易に形成できるようにすることを目的とする。
本発明に係る多孔質膜の形成方法は、シリコン及び金属の少なくとも1つが含まれる有機材料が分散された媒質を加熱することで有機材料を重合させて多孔質膜が形成された状態とする第1工程と、媒質で湿潤された状態の多孔質膜をフッ素化合物よりなる超臨界処理液が充填された高圧容器に収容し、多孔質膜が超臨界処理液に浸漬された状態とする第2工程と、多孔質膜に含まれている媒質を超臨界処理液に置換する第3工程と、超臨界処理液を超臨界状態とすることで多孔質膜が超臨界流体に浸漬された状態とする第4工程と、高圧容器の内部の圧力を低下させることで超臨界流体を気化させて多孔質膜が乾燥された状態とする第5工程とを少なくとも備えるようにしたものである。従って、多孔質膜は、気液界面が形成されることなく乾燥される。
また、本発明に係る他の多孔質膜の形成方法は、有機材料が溶解した媒質を基板の上に塗布することで、基板の上に有機材料よりなる塗布膜が形成された状態とする第1工程と、媒質が含まれている状態の塗布膜をフッ素化合物よりなる超臨界処理液が充填された高圧容器に収容し、塗布膜が超臨界処理液に浸漬された状態とする第2工程と、塗布膜に含まれている媒質を超臨界処理液に置換する第3工程と、加熱することで超臨界処理液を超臨界状態とするとともに、塗布膜を構成している有機材料が重合されて基板の上に多孔質膜が形成された状態とし、多孔質膜が超臨界流体に浸漬された状態とする第4工程と、高圧容器の内部の圧力を低下させることで超臨界流体を気化させて多孔質膜が乾燥された状態とする第5工程とを少なくとも備えるようにしたものである。したがって、多孔質膜は、気液界面が形成されることなく乾燥される。
上記多孔質膜の形成方法において、超臨界処理液は、フッ素化合物に加えて有機材料を溶解する有機溶剤を含むものであってもよい。この場合、超臨界処理液は、フッ素化合物と有機溶剤との共沸状態の組成に形成されているとよい。
また、本発明に係る他の多孔質膜の形成方法は、フッ素化合物を含む媒質に有機材料が溶解した樹脂溶液を高圧容器の内部に収容する第1工程と、高圧容器に収容された樹脂溶液を構成する媒質を超臨界状態とする第2工程と、有機材料が溶解して超臨界状態とされた媒質を、高圧容器に設けられたノズルより外部に噴出させて基板の上に吹き付け、有機材料からなる複数に微粒子から構成された多孔質膜が基板の上に形成された状態とする第3工程とを少なくとも備えるようにしたものである。噴出されると、超臨界状態とされた媒質は瞬時に気化し、溶解していた有機材料は微粒子として析出するので、多孔質膜は、乾燥された状態で形成される。
上記媒質は、フッ素化合物に加えて有機材料を溶解する有機溶剤を含むものであってもよく、この場合、媒質は、フッ素化合物と有機溶剤との共沸状態の組成に形成されているとよい。
上記多孔質膜の形成方法において、フッ素化合物は、大気圧下の常温状態で液体であるハイドロフルオロエーテル及びハイドロフルオロエステルの少なくとも1つである。また、ハイドロフルオロエーテルは、HCF2CF2OCH2CF3,CF3CHFCF2OCH2CF3,及びCF3CHFCF2OCH2CF2CF3の少なくとも1つであればよい。
以上説明したように、本発明では、多孔質膜に含まれている媒質を超臨界処理液に置換してから、超臨界処理液を超臨界状態とし、この後、超臨界流体を気化させて多孔質膜が乾燥された状態とした。この結果、本発明によれば、割れなどが抑制された状態で、様々な材料による多孔質膜が、より容易に形成できるようになるという優れた効果が得られる。
また、本発明では、有機材料よりなる塗布膜が超臨界処理液に浸漬して塗布膜に含まれている媒質を超臨界処理液に置換してから、超臨界処理液を超臨界状態とし、また、塗布膜を多孔質膜とし、この後、超臨界流体を気化させて多孔質膜が乾燥された状態とした。この結果、本発明によれば、割れなどが抑制された状態で、様々な材料による多孔質膜が、より容易に形成できるようになるという優れた効果が得られる。
また、本発明では、有機材料が溶解した樹脂溶液のフッ素化合物を含む媒質を超臨界状態とし、超臨界状態とされた媒質を、ノズルより外部に噴出させて基板の上に吹き付けて、有機材料からなる複数に微粒子から構成された多孔質膜が基板の上に形成された状態とするようにした。この結果、本発明によれば、割れなどが抑制された状態で、様々な材料による多孔質膜が、より容易に形成できるようになるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における多孔質膜の形成方法例を示す工程図である。図1に示す多孔質膜の形成方法について説明すると、まず、図1(a)に示すように、エトキシシラン{Si(OC254},水,及びエタノールを混合し、これに酢酸が添加された混合液し作製し、これら加熱することで、エタノールと水の混合液からなる媒質101の中にゲル状のゲル膜102が形成された状態とする。
上記混合液は、有機材料であるエトキシシランの加水分解による生成物(有機材料)のコロイド溶液である。これは、エタノールと水との混合液からなる媒質101に、上記生成物が含まれている状態である。このようなコロイド溶液が加熱されることで重合(重縮合)してゲル膜102が形成される。これらは、例えば、所定の容器内で行えばよい。次に、媒質101をさらに加熱して脱アルコール反応を起こさせることでゲル膜102を変性させ、図1(b)に示すように、媒質101の中に多孔質ゲル膜103が形成された状態とする。
次に、図1(c)に示すように、形成された多孔質ゲル膜103が、例えばHCF2CF2OCH2CF3などのフッ素化合物よりなる超臨界処理液104に浸漬された状態とする。例えば、超臨界処理液104が充填された高圧容器の内部に、媒質で湿潤した状態の多孔質ゲル膜103を搬入することで、多孔質ゲル膜103が、超臨界処理液104に浸漬された状態とする。この状態とすることで、多孔質ゲル膜103の孔内に含浸して湿潤させている混合溶液が、超臨界処理液104に置換される。超臨界処理液104は、アルコールなどと相溶性が高く、上記置換は迅速に行われる。なお、前述したように、容器の中でゲル膜102から多孔質ゲル膜103の形成を行った後、この容器を高圧容器の内部に収容し、媒質101を超臨界処理液104に置換してもよい。
次に、高圧容器を密閉して内部を220℃程度に加熱し、この加熱により密閉された高圧容器内の圧力が3MPa程度とされた状態とし、超臨界処理液104が超臨界状態とされ、図1(d)に示すように、多孔質ゲル膜103が、超臨界流体114に浸漬された状態とする。このとき、例えば、高圧容器の内部に新たなフッ素化合物液体を圧送し、また、高圧容器の内部の一部の超臨界流体114を排出するなどの圧力制御を行うようにしてもよい。また、循環ポンプを用い、高圧容器の内部の超臨界流体114が循環されるようにしてもよい。
ここで、前述したように、高圧容器の内部では、多孔質ゲル103は超臨界処理液104により湿潤され、多孔質ゲル103の孔内には超臨界処理液104が含浸した状態とされている。このため、超臨界処理液104の超臨界条件とされた高圧容器の内部では、多孔質ゲル103は、超臨界流体114に湿潤された状態であり、多孔質ゲル103の孔内には超臨界流体114が含浸された状態となる。
次に、高圧容器の内部圧力を徐々に低下させることで、超臨界流体114が気化する状態とし、図1(e)に示すように、乾燥されたエアロゲル(多孔質膜)113が形成された状態とする。例えば、高圧容器の内部より超臨界流体114を徐々に排出することで、内部圧力を大気圧程度とすればよい。なお、これらの処理を連続して行う場合、次の処理におけるフッ素化合物液体の導入でフッ素化合物液体が気化しないように、高圧容器の温度を低下させておいた方がよい。このように形成されたエアロゲル113は、乾燥される過程で気液界面が形成されることがなく、亀裂などが生じることがなく、割れるなどの問題が発生しない。
ここで、上述したフッ素化合物について説明する。上述したように、フッ素化合物は、多孔質ゲルの作製で用いられる溶液と相溶性がある液体であればよい。言い換えると、まず、フッ素化合物は、大気圧下の20℃程度の常温状態において、液体であればよい。また、フッ素化合物は、臨界温度が250℃以下であるとよい。臨界温度が250℃を超えて高温の場合、用いる高圧容器の密閉シールが困難となるためである。
上述したフッ素化合物としては、例えば、ハイドロフルオロエーテルやハイドロフルオロエステルがある。この中でも、ハイドロフルオロエーテルは取り扱いの容易性の点からより適している。ハイドロフルオロエーテルとしては、例えばCF3CF2CH2OCHF2, CF3CF2OCH2CF3, C37OCH3, CHF2CF2OCH2CF3, CF3CHFCF2OCH2CF3、CF3CHFOCHF2、CF3CHFCF2CH2OCHF2, CF3CHFCF2OCH2CF2CF3、CF3CHFCF2OCH2CF2CHF2 などがある。これらは、CxymO又はC(x-1)ymCO構造を有しているものである。この中でも、最末端基が-CH3ではない方が、引火性の点からは優れる。
上述したハイドロフルオロエーテルの中で、合成が容易で入手が容易な材料としては、次に示すものがある。まず、HCF2CF2OCH2CF3がある。これは、臨界温度が190℃であり、臨界圧力が2.6MPaである。また、CF3CHFCF2OCH2CF3でもよい。これは、臨界温度が200℃であり、臨界圧力が2.4MPaである。また、CF3CHFCF2OCH2CF2CF3でもよい。これは、臨界温度が210℃であり、臨界圧力が2.3MPaである。
また、ハイドロフルオロエステルとしては、CHF2COOCH2CH3や(CF32CHCOOCH3などがある。これらは、Cxym2又はC(x-1)yHCO2(x,y,mは自然数)の構造を有しているものである。
上述したフッ素化合物は酸素を含んでいるため、特に極性溶剤との界面張力が低く、有機溶剤と容易に混和させることが可能である。
また、上述したフッ素化合物は、有機溶媒と数〜10%程度の混合比で混合することで、共沸混合物とすることができる。例えば、HCF2CF2OCH2CF3は、エタノール5.5%の混合比で共沸混合物になる。このことは、多孔質内のアルコールが完全に液状態では完全に置換しきれていない状態でも、フッ素化合物が拡散性の高い超臨界状態になった段階でも、アルコールと混和し、一定の臨界条件(臨界点)で両者とも超臨界状態になることを示している。このように、上述したフッ素化合物を用いることで、溶液の段階で完全に置換されていなくても、超臨界状態の段階で置換が可能である。
ここで、上述したフッ素化合物と有機溶媒とが、共沸状態若しくはこれ以下の混合比で混和した条件では引火点は示さない。さらには、共沸混合物になれば、この比率を保った状態の一定の沸点で気化することになり、蒸留による回収・再使用が非常に容易となる。
また、以下に示すフッ素化合物を用いることで、ゾルゲル法によるエアロゲルの形成で用いられる溶媒との混和性を向上させ、図1(c)を用いて説明した置換をより迅速に行えるようにすることが可能となる。例えば、前述したフッ素化合物に水酸基が付いた構造でのフッ素化合物を用いることで、アルコールなどの溶媒との混和性が向上する。例えば、CF3CF2CH(OR)OCHF2, CF3CF2OCH(OR)CF3, CHF2CF2OCH(OR)CF3, CF3CHFCF2OCH(OR)CF3、CF3C(OR)FOCHF2、CF3CHFCF2OCH(OR)CF2CF3 、CHF2COOCH(OR)CF3や (CF32CHCOOCF(OR)2などがある。
これらは、C(x-1)ymCO(OR)やC(x-1)ymCOO(OR)又は、Cxym(n-1)(OR)の構造を有しているものである。なお、Rは水素である。あるいはRがCHF2若しくはCF3となっていても良い。これらは、フッ化ヒドロキシ酸もしくはそのエステル化合物若しくはそのエーテル化合物ということができる。
これらのフッ素化合物材料を用いた多孔質膜の形成方法は、図1を用いて説明した例に限らず、例えば、以降に示す微粒子の集合体よりなる多孔質膜などの他の多孔質膜の形成にも適用可能である。これは、上述したフッ素化合物材料が、高い溶解性を備えているためである。また、容易に有機溶剤と混ざることは、多孔質膜を形成するための原材料を溶解して膜形成する場合などには、より好都合である。例えば、予め溶剤と混合させて溶解性を高めるようにすれば、溶解しにくいような薄膜原材料を溶解することが可能となる。混合量は上述のように共沸混合物となる量であることが好ましく、混合比は5〜10%程度の範囲とすればよい。また、混合する有機溶剤としては、アルコール系、エーテル系、ケトン系、酢酸エステル系などが適用できる。適用範囲は、有機金属を溶解して高温下で薄膜形成する化学的気相成長法、ポリマーやモノマー若しくはオリゴマーなどの有機材料が溶解した溶液を用いるRESS法やPGSS法と呼ばれる急速減圧による微粒子膜形成法などである。
次に、本発明の実施の形態に係る他の多孔質膜の形成方法例について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る他の多孔質膜の形成方法例を説明するための工程図である。図2に示す多孔質膜の形成方法について説明すると、まず、図2(a)に示すように、例えばシリコン基板201の上に、低誘電率な有機材料であるメチルシルセスキオキサン(MSQ)からなる前駆体薄膜202が形成された状態とする。これは、MSQが有機溶媒(媒質)に溶解した溶液を塗布して塗布膜を形成し、形成した塗布膜より一部の有機溶媒を加熱により気化(除去)することで形成すればよい。
次に、図2(b)に示すように、シリコン基板201の上に形成された前駆体薄膜202が、HCF2CF2OCH2CF3とメタノールとの共沸混合液体からなる超臨界処理液203に浸漬された状態とする。例えば、超臨界処理液203が充填された高圧容器の内部に、前駆体薄膜202が形成されたシリコン基板201を搬入することで、前駆体薄膜202が、超臨界処理液203に浸漬された状態とする。この状態で、例えば、高圧容器の内部に新たな超臨界処理液203の導入と排出とを繰り返し、前駆体薄膜202に含まれている有機溶媒が、超臨界処理液203に置換された状態とする。
次に、超臨界処理液203で充填された高圧容器を密閉し、この内部の圧力が3MPaとなるように調整する。例えば、高圧容器の内部に超臨界処理液203を圧送した状態で、高圧容器に設けられている排出制御弁を制御することで、高圧容器の内部圧力が3MPaの状態とすればよい。このようにして、高圧容器の内部が、3MPaとされたら、高圧容器の内部温度を200〜250℃の範囲に加熱する。例えば、シリコン基板201が載置される基板台を誘導加熱により加熱することで、この周囲の超臨界処理液203が200〜250℃に加熱された状態とすればよい。例えば、常磁性金属より構成された基板台は、数MHz〜数十MHzの高周波交流電界が作用すると、誘導加熱により加熱される。このように加熱することで、シリコン基板201の周囲の超臨界処理液203を効率的に加熱することが可能となる。この場合、高圧容器の内部の周辺部分は、例えば、150〜200℃程度となる。
上述した加熱により、超臨界処理液203が超臨界状態となり、図2(c)に示すように、シリコン基板201が超臨界流体213に浸漬された状態となる。また、上述した加熱により、前駆体薄膜202を構成している前駆体が縮合重合され、図2(c)に示すように、シリコン基板201の上に多孔質膜204が形成された状態となる。また、この状態では、多孔質膜204が超臨界流体213に浸漬された状態とされている。この後、上述した加熱を維持した状態で、高圧容器の内部より超臨界流体213を徐々に排出する。このことにより、高圧容器の内部の超臨界流体213は気化し、図2(d)に示すように、シリコン基板201の上に乾燥された多孔質膜204が形成された状態が得られる。このように形成された多孔質膜204は、乾燥される過程で気液界面が形成されることがなく、亀裂などが生じることがなく、割れるなどの問題が発生しない。
次に、本発明の実施の形態に係る他の多孔質膜の形成方法例について説明する。まず、CF3CHFCF2OCH2CF3とフッ素化アルコールとを混合して共沸混合物からなる媒質を作製し、これに例えばアクリル樹脂などの有機材料を溶解させた樹脂溶液を作製する。なお、共沸混合物に限るものではなく、アクリル合成樹脂が溶解するフッ素化合物のみを媒質として用いるようにしてもよい。次に、作製した樹脂溶液を高圧容器内に収容(充填)し、樹脂溶液が充填されたて密閉された高圧容器の内部の圧力を上昇させ、充填された溶液(媒質)が超臨界状態にされた状態とする。次いで、アクリル樹脂が溶解して超臨界状態とされた媒質を、高圧容器に接続されているノズルより噴出させて基板の上に吹き付ける。
ノズルから噴出されたことにより、超臨界状態とされていた媒質は気体となり、溶解していたアクリル樹脂は急速に析出し、アクリル樹脂の微粒した生成される。生成された微粒子は、基板に高速で衝突して堆積し、基板の上には、複数のアクリル合成樹脂の微粒子の集合体から構成された多孔質膜が形成された状態となる。また、基板の上に形成された多孔質膜は、析出した微粒子が吹き付けられて形成されているため、既に乾燥された状態である。このため、亀裂などが生じることがなく、割れるなどの問題が発生しない状態で、基板の上に多孔質膜が形成される。なお、超臨界状態における温度や圧力の条件、アクリル樹脂の溶解濃度、ノズルの形状、基板の温度条件などにより、生成される微粒子の粒径などが制御可能であり、これらのことにより、形成される多孔質膜の孔径が制御可能である。
本発明の実施の形態における多孔質膜の形成方法例を示す工程図である。 本発明の実施の形態に係る他の多孔質膜の形成方法例を説明するための工程図である。 従来よりあるゾルゲル法による多孔質膜(エアロゲル)の作製方法を示す工程図である。 超臨界状態の二酸化炭素を利用したゾルゲル法によるエアロゲルの作製方法を示す工程図である。
符号の説明
101…媒質、102…ゲル膜、103…多孔質ゲル膜、104…超臨界処理液、113…エアロゲル(薄膜)、114…超臨界流体、201…シリコン基板、202…前駆体薄膜、203…超臨界処理液、204…多孔質膜、213…超臨界流体。

Claims (6)

  1. シリコン及び金属の少なくとも1つが含まれる有機材料が分散された媒質を加熱することで前記有機材料を重合させて多孔質膜が形成された状態とする第1工程と、
    前記媒質で湿潤された状態の前記多孔質膜をフッ素化合物よりなる超臨界処理液が充填された高圧容器に収容し、前記多孔質膜が前記超臨界処理液に浸漬された状態とする第2工程と、
    前記多孔質膜に含まれている前記媒質を前記超臨界処理液に置換する第3工程と、
    前記超臨界処理液を超臨界状態とすることで前記多孔質膜が超臨界流体に浸漬された状態とする第4工程と、
    前記高圧容器の内部の圧力を低下させることで前記超臨界流体を気化させて前記多孔質膜が乾燥された状態とする第5工程と
    を少なくとも備え、
    前記フッ素化合物は、大気圧下の常温状態で液体であるハイドロフルオロエーテルおよびハイドロフルオロエステルの少なくとも1つであることを特徴とする多孔質膜の形成方法。
  2. 有機材料が溶解した媒質を基板の上に塗布することで、前記基板の上に前記有機材料よりなる塗布膜が形成された状態とする第1工程と、
    前記媒質が含まれている状態の前記塗布膜をフッ素化合物よりなる超臨界処理液が充填された高圧容器に収容し、前記塗布膜が前記超臨界処理液に浸漬された状態とする第2工程と、
    前記塗布膜に含まれている前記媒質を前記超臨界処理液に置換する第3工程と、
    加熱することで前記超臨界処理液を超臨界状態とするとともに、前記塗布膜を構成している前記有機材料が重合されて前記基板の上に多孔質膜が形成された状態とし、前記多孔質膜が超臨界流体に浸漬された状態とする第4工程と、
    前記高圧容器の内部の圧力を低下させることで前記超臨界流体を気化させて前記多孔質膜が乾燥された状態とする第5工程と
    を少なくとも備え、
    前記フッ素化合物は、大気圧下の常温状態で液体であるハイドロフルオロエーテルおよびハイドロフルオロエステルの少なくとも1つであることを特徴とする多孔質膜の形成方法。
  3. 請求項1又は2記載の多孔質膜の形成方法において、
    前記超臨界処理液は、前記フッ素化合物に加えて前記有機材料を溶解する有機溶剤を含み、前記フッ素化合物と前記有機溶剤との共沸状態の組成に形成されている
    ことを特徴とする多孔質膜の形成方法。
  4. フッ素化合物を含む媒質に有機材料が溶解した樹脂溶液を高圧容器の内部に収容する第1工程と、
    前記高圧容器に収容された樹脂溶液を構成する前記媒質を超臨界状態とする第2工程と、
    前記有機材料が溶解して超臨界状態とされた前記媒質を、前記高圧容器に設けられたノズルより外部に噴出させて基板の上に吹き付け、前記有機材料からなる複数に微粒子から構成された多孔質膜が前記基板の上に形成された状態とする第3工程と
    を少なくとも備え、
    前記フッ素化合物は、大気圧下の常温状態で液体であるハイドロフルオロエーテルおよびハイドロフルオロエステルの少なくとも1つであることを特徴とする多孔質膜の形成方法。
  5. 請求項記載の多孔質膜の形成方法において、
    前記媒質は、前記フッ素化合物に加えて前記有機材料を溶解する有機溶剤を含み、前記フッ素化合物と前記有機溶剤との共沸状態の組成に形成されている
    ことを特徴とする多孔質膜の形成方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の多孔質膜の形成方法において、
    前記ハイドロフルオロエーテルは、HCF2CF2OCH2CF3,CF3CHFCF2OCH2CF3,及びCF3CHFCF2OCH2CF2CF3の少なくとも1つである
    ことを特徴とする多孔質膜の形成方法。
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