JP4540934B2 - 光変調素子及びその製造方法並びにそれを有する表示素子 - Google Patents

光変調素子及びその製造方法並びにそれを有する表示素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光変調素子及びその製造方法並びにそれを有する表示素子に関し、さらに詳しくは、外部刺激に対して安定性の高い光変調素子及びその製造方法並びにそれを有する表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶分子のダイレクターを制御して屈折率及び誘電率に代表される物性を変調できることは、斯界で知られており、かかる物性の変調を利用した様々な特性をもつ光変調素子は、斯界でよく知られている。液晶を用いた光変調素子は、薄型及び軽量であって、省電力性に優れているので、数々の分野での利用が実現されている。そして、液晶を用いた光変調素子は、現在では、特に、表示素子としての用途が目立っており、CRTに取って代わる勢いでその普及が進んできている。かかる液晶を用いた光変調素子は、一般的には、2枚のガラス基板の間に液晶組成物を挟みこんだ構成となっているが、次のような問題があった。
【0003】
(1)何らかの外部刺激がきっかけとなって、液晶素子内に気泡が発生することがある。気泡が発生した部分には、液晶組成物が充填されていない状態になってしまうので、その部分は、光変調素子として機能しなくなってしまう。
(2)液晶の光変調素子としての応用には、液晶分子のダイレクターを制御することが重要であるので、液晶の配向を規則正しく制御してやることが必要不可欠となっている。しかしながら、この液晶の配向性についても、何らかの外部刺激がきっかけとなって配向欠陥を生じてしまうことがある。配向欠陥が生じた部分は、他の部分とは異なる光変調特性を示すこととなるので、正確でかつ安定な光変調制御ができなくなる。
【0004】
前記(1)及び(2)の問題は、ガラス基板を用いた液晶素子でも見られるが、可とう性の基板を用いた光変調素子において顕著である。本発明者らは、基本的構成の液晶表示素子において、気泡の発生実験をおこなったところ、気泡発生要因の一つとして、押圧すること(例えば、表示側基板面を何らかの形で押して変形させること)による発生があることが判った。本発明者らは、さらに検討を重ねたところ、物体が基板面を押し、その物体が離れる際に気泡が発生していることが判った。かかる気泡の発生は、基板がもとの形に修復する際に、押圧部内部が他の部分に比較し負圧になることによるものと考えられる。
【0005】
前記(1)及び(2)の問題を回避するために、本発明者らは、液晶組成物において、液晶性化合物を物理ゲル化できる化合物を含有させること(特願2001−203063号を参照。)を提案した。この発明によれば、低粘性状態の調光層に会合性化合物を加えて増粘化又はゲル化(固体様)すると、基板の変形に対する回復に調光層が追随するので、負圧になることが抑制され、そのために、気泡の発生は、ある程度抑制されたが、十分には抑制されなかった。また、この発明によれば、液晶の配向安定性は、十分ではなかった。さらに、前記(2)の配向の問題は、特に、強誘電性液晶を用いたときに顕著であった。その理由は、強誘電性液晶の配向は一度乱れたら、再配向処理なくしては、元にもどることがないためである。
【0006】
強誘電性液晶を用いた光変調素子は、高速応答性を有しているので、表示(直視型表示、ライトバルブによる投射表示)、光コンピューティング、光インターコネクション等において有用である。特に、クラークとラガヴォールとが、表面安定化強誘電性液晶により、強誘電性液晶の表示素子としての可能性を提示してから、その高速応答性、高視野角性、高解像性、メモリー性等のユニークな特性が明らかになったので、表示分野での開発が盛んにおこなわれた。
【0007】
表面安定化強誘電性液晶光変調素子は、配向処理を施した2枚の狭いギャップを有する基板間に自発分極を持ち、かつ、カイラルスメクティックC相を有する強誘電性液晶化合物を導入したものである。この表面安定化強誘電性液晶光変調素子は、双安定性を有し、しかも、界面の効果で明確な(急峻な)しきい値特性を示すので、ネマティック液晶の単純マトリクス駆動の走査線の限界を超える方式として期待された。さらに、この表面安定化強誘電性液晶光変調素子は、ネマティック液晶等と比較して極めて大きな誘電性(自発分極に起因)を有しているので、高速応答が可能となっており、そのために、直視型、投射型の光変調素子として実用化がなされた。しかしながら、この表面安定化強誘電性液晶光変調素子は、前記(2)の問題に加えて、以下の問題があった。
【0008】
(3)双安定性を有するがゆえに中間調表示が困難である。
(4)今日の薄膜スイッティング素子で駆動するには不向きである電圧透過率曲線にヒステリシスが存在する。
【0009】
前記(3)及び(4)の問題を回避するために、近年、強誘電性液晶自身が階調特性を有することがわかってきたので、ヒステリシスのない(少ない)ハーフV字モード、V字モードの検討や高分子を強誘電性液晶と共存させることによるハーフV字モード、V字モードの検討が盛んにおこなわれている。V字モードは、液晶素子に対して振幅が同じで極性が異なる電圧を印加したときに、同じ透過率が得られる液晶表示モードであるが、アルファベットのVの字に電圧透過率曲線が似ているので、V字モードとよばれている。ハーフV字モードは、等方相−カイラルネマチック相−カイラルスメクチック相を有する液晶を用いたものであって、振幅が同じで極性が異なる電圧を印加したときに、ある電圧を境に片方向のみ透過率が変化し、他方は透過率がほとんど変化しない、即ち、半分だけV字の電圧透過率曲線を示すものである。このような表示モードの中で強誘電性液晶材料そのもので階調機能を持たせているものは、強誘電性液晶の双安定性を無くし階調機能を持たせているので、階調表示としては適しているが、表面安定化強誘電性液晶表示素子と同様な配向の不安定性を有している。
【0010】
前記(2),(3)及び(4)の問題を解決する技術として、高分子分散液晶の製造に用いられてきたような重合可能なモノマーを強誘電性液晶中に存在させ、これを重合することにより得た複合液晶において、階調機能をもたせているものがある。この技術は、配向安定性については強誘電性液晶のみの場合よりも優れているが、1)モノマーを重合させる過程で温度や光が必要なこと、2)精度も要求されること、及び、3)一度重合させてしまえば欠陥があっても修復が不可能であること、といった問題があり、また、液晶中に含まれる高分子の含量が比較的多いので、4)駆動電圧が高くなること、及び、5)高分子部が散乱しコントラストを下げること、といった問題があった。
【0011】
また、近年、前記(2)及び(3)の問題を解決したものとして、(A)液晶性化合物、及び、(B)水素結合性化合物よりなるゲル化剤、を含有する強誘電性液晶ゲルを調光層とする表示素子が提案された(特許文献1を参照。)。この表示素子は、耐ショック性が優れると共に、階調表示が容易となる。
【0012】
しかしながら、この表示素子は、階調表示を達成するための技術手段を具体化したものではなく、液晶物質の流動性を消失させることによる強誘電液晶の配向安定化のみを達成するものであるので、その配向安定化が充分ではなく、また、得られる光変調素子の電圧透過率曲線はヒステリシスも大きく、さらに、コントラストも低いという問題があった。
【0013】
【特許文献1】
特願2001−203063号
【特許文献2】
特開平2000−239663号公報
【特許文献3】
特開平5−216015号公報
【特許文献4】
特開平8−254688号公報
【特許文献5】
特開平11−21556号公報
【特許文献6】
特開平11−52341号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
即ち、本発明は、耐衝撃性に優れると共に、外部刺激による気泡の発生を抑制することができ、しかも、配向欠陥が生じにくい光変調素子を提供することを第1の目的とし、そして、強誘電性液晶を用いた光変調素子において、ヒステリシスが少なく、欠陥修復が可能であり、高解像度が可能であり、しかも、コントラストが高いものを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、一対の基板間に、液晶性化合物、化学ゲル、及び、会合性化合物、を含有する液晶組成物が存在している光変調素子において、
前記液晶性化合物が、強誘電性液晶化合物で構成され、そして、
前記会合性化合物が、次の一般式(1)
【化4】
Figure 0004540934
[但し、式中、
(イ)R 6 〜R 12 は、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であって、同一であっても、また、異なっていてもよい。
(ロ)Xは、
1)次の一般式(2)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y 1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
2)次の一般式(3)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5 (3)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し 、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y 1 ,Y 2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
3)次の一般式(4)
【化5】
Figure 0004540934
(式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
4)次の一般式(5)
【化6】
Figure 0004540934
(式中、n 1 は、1〜18の正数であり、そして、n 2 及びn 3 は、0〜9の正 数である。)
から選ばれる有機基である。
(ハ)mは、0又は自然数であり、nは、Xの会合性部位が1箇所の場合2以上の整数であり、会合性部位が2箇所以上の場合は自然数であり、lは、自然数であり、そして、m及びnは、m+n≧5の関係を満たす。また、前記式(1)中のmとnの関係は存在比率を現すものである。変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番は、不規則であっても規則的であっても良い。またlは、変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の総構造単位数を規定するものであり、変数lを規定することによって決定する総構造単位数に含まれる「変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番」は、不規則であっても規則的であっても良い。]
で示されるオルガノシロキサンからなる高分子化合物で構成されているものとしたところ、外部刺激に対する気泡の発生を抑制すると共に、配向欠陥が生じにくい光変調素子を提供できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、請求項1に記載された発明は、一対の基板間に、液晶性化合物、化学ゲル、及び、会合性化合物、を含有する液晶組成物が存在している光変調素子において、
前記液晶性化合物が、強誘電性液晶化合物で構成され、そして、
前記会合性化合物が、次の一般式(1)
【化7】
Figure 0004540934
[但し、式中、
(イ)R 6 〜R 12 は、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であって、同一であっても、また、異なっていてもよい。
(ロ)Xは、
1)次の一般式(2)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y 1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
2)次の一般式(3)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5 (3)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し 、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y 1 ,Y 2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
3)次の一般式(4)
【化8】
Figure 0004540934
(式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
4)次の一般式(5)
【化9】
Figure 0004540934
(式中、n 1 は、1〜18の正数であり、そして、n 2 及びn 3 は、0〜9の正 数である。)
から選ばれる有機基である。
(ハ)mは、0又は自然数であり、nは、Xの会合性部位が1箇所の場合2以上の整数であり、会合性部位が2箇所以上の場合は自然数であり、lは、自然数であり、そして、m及びnは、m+n≧5の関係を満たす。また、前記式(1)中のmとnの関係は存在比率を現すものである。変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番は、不規則であっても規則的であっても良い。またlは、変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の総構造単位数を規定するものであり、変数lを規定することによって決定する総構造単位数に含まれる「変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番」は、不規則であっても規則的であっても良い。]
で示されるオルガノシロキサンからなる高分子化合物で構成されている
ことを特徴とする光変調素子である。
【0017】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記光変調素子が光変調を行う部分と行わない部分を有し、そして、前記化学ゲルの存在密度が光変調を行う部分よりも光変調を行わない部分に高いことを特徴とするものである。
【0018】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記光変調素子が光変調を行う部分と行わない部分を有し、そして、前記化学ゲルが光変調を行わない部分にのみ存在することを特徴とするものである。
【0019】
請求項に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載された発明において、前記化学ゲルが、少なくとも、CH2 =CH−COOR又はCH2 =C(CH3 )−COOR(式中、Rは、炭素及び水素よりなる一価の有機基である。)を重合してなる合成高分子ゲルであることを特徴とするものである。
【0020】
請求項に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載された発明において、前記式(1)で示されるオルガノシロキサンのシロキサン鎖に対するXの導入比:n/(m+n)が、0.3以上であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項に記載された発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載された発明において、前記高分子化合物の分子量が2000以上であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項に記載された発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された発明において、前記液晶化合物に対する前記高分子化合物の割合が5重量%未満であることを特徴とするものである。
【0023】
請求項に記載された発明は、少なくとも液晶性化合物を主成分とする媒体よりなる物理ゲル中で化学ゲルを作製することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光変調素子の製造方法である。
【0024】
請求項に記載された発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された発明において、少なくとも会合性化合物と液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を基板上又は基板間に存在させて物理ゾル状態とした後、非表示部の一部或いは全部に前記モノマーの重合エネルギーを与えることを特徴とするものである。
【0025】
請求項10に記載された発明は、(イ)少なくとも会合性化合物と液晶性化合物と重合性モノマーの混合物を基板上あるいは基板間に存在させる工程、
(ロ)非表示部の一部又は全部に前記モノマーの重合エネルギーを与えることにより化学ゲルとする工程、
(ハ)前記化学ゲル以外の部分を、物理ゾル状態なりうる条件下において、除去する工程、
(ニ)前記除去した化学ゲル以外の部分に液晶性化合物と会合性化合物を充填する工程
を順次有することを特徴とする光変調素子の製造方法である。
【0026】
請求項11に記載された発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された光変調素子を有することを特徴とする表示素子である。
【0027】
請求項12に記載された発明は、請求項11に記載された発明において、前記光変調素子における基板が、電極及び偏光板を有することを特徴とするものである。
【0028】
請求項13に記載された発明は、請求項11又は12に記載された発明において、前記光変調素子に電圧を印加して得られる光強度(σ)の最大値を1とし、光強度の最小値を与える電圧をV1 とし、光強度1を与える電圧値をV2 とした時に、V1 からV2 の電圧領域において、電圧変化に対する光強度変化の割合の絶対値(|Δσ/ΔV|)の最大値が、0.5以下であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項14に記載された発明は、請求項11〜13のいずれか1項に記載された発明において、前記一対の基板の少なくとも一方が、250μm厚以下のプラスチック基板であることを特徴とするものである。
【0030】
請求項15に記載された発明は、請求項14に記載された発明において、前記プラスチック基板が、ポリカーボネイト又はポリエーテルスルフォンで構成されていることを特徴とするものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す液晶表示素子のセルの平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、本発明の他の一実施の形態を示す液晶表示素子のセルの平面図である。図4は、図3のB−B断面図である。図5は、実施例4で得られた液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャを示す。図6は、実施例4で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。図7は、比較例1で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。図8は、比較例1で得られた液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャを示す。図9は、比較例2で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。
【0032】
本発明の光変調素子には、一対の基板間に、液晶性化合物、化学ゲル、及び、会合性化合物、を含有する液晶組成物が存在している。
【0033】
前記液晶性化合物は、強誘電性液晶化合物で構成され、そして、
前記会合性化合物は、次の一般式(1)
【化10】
Figure 0004540934
[但し、式中、
(イ)R 6 〜R 12 は、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であって、同一であっても、また、異なっていてもよい。
(ロ)Xは、
1)次の一般式(2)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y 1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
2)次の一般式(3)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5 (3)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し 、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y 1 ,Y 2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
3)次の一般式(4)
【化11】
Figure 0004540934
(式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
4)次の一般式(5)
【化12】
Figure 0004540934
(式中、n 1 は、1〜18の正数であり、そして、n 2 及びn 3 は、0〜9の正 数である。)
から選ばれる有機基である。
(ハ)mは、0又は自然数であり、nは、Xの会合性部位が1箇所の場合2以上の整数であり、会合性部位が2箇所以上の場合は自然数であり、lは、自然数であり、そして、m及びnは、m+n≧5の関係を満たす。また、前記式(1)中のmとnの関係は存在比率を現すものである。変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番は、不規則であっても規則的であっても良い。またlは、変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の総構造単位数を規定するものであり、変数lを規定することによって決定する総構造単位数に含まれる「変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番」は、不規則であっても規則的であっても良い。]
で示されるオルガノシロキサンからなる高分子化合物で構成されている。
【0034】
本発明における化学ゲルとは、外部からのエネルギー供給により高分子によって形成されるものであり、具体的には合成高分子ゲルである。合成高分子ゲルは、重合性の官能基を有するモノマーに熱、光、電子線、放射線等のエネルギーを与えることにより形成される。
【0035】
本発明で用いるモノマーは、その分子内に酸素原子、窒素原子、イオウ原子等の炭素以外のヘテロ原子を含むものである。高分子ゲルは、ヘテロ原子を含有する重合性化合物を液晶に溶解させ、これを重合反応させて得る。本発明で用いる重合性化合物の種類は、特に制約されるものではない。本発明における重合性化合物は、熱重合及び活性光線重合などの重合反応を生起して重合体を得るものを包含しているが、好ましくは、架橋高分子マトリクスを形成することができる単官能性モノマーと多官能性モノマーとの組み合わせたものであり、さらに好ましくは、前記多官能性モノマーとして三官能性モノマーを使用したものである。
【0036】
本発明で用いる重合性化合物としては、例えば、単官能および多官能の(メタ)アクリレートのモノマー又はプレポリマーがあげられる。なお、本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。単官能アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等]脂環式(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等)、ヒドロキシポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数は好ましくは1〜4)、(メタ)アクリレート[ヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等]、或いは、アルコキシポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数は好ましくは1〜4)、(メタ)アクリレート(エトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシトリエチレングリコールアクリレート等)及びアルコキシアルキル(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜4)、(メタ)アクリレート(メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等)があげられる。
【0037】
前記(メタ)アクリレートは、複素環基を含有していても良く、該複素環基としては、酸素、窒素、イオウ等のヘテロ原子を含む複素環の残基である。この(メタ)アクリレート中に含まれる複素環基の種類は特に限定されるものではないが、例えば、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基を有するフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。その他複素環基を有する(メタ)アクリレートとしては、フルフリルエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトレヒドロフルフリルエチレングリコール(メタ)アクリレート、フルフリルプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のフルフリル基或いはテトタヒドロフルフリル基を有するアルキレングリコールアクリレートがあげられる。
【0038】
単官能アクリレートは、好ましくは、(メタ)アクリレート基への導入基が炭素及び水素のみよりなるCH2 =CH−COOR又はCH2 =C(CH3 )−COOR(式中、Rは、炭素及び水素よりなる一価の有機基である。)である。これらの単官能アクリレートは、液晶との相溶性が良いので好ましい。また、Rがメソゲンであるとさらに好ましく、液晶の配向性を制御できる。
【0039】
多官能性モノマーとしては、多官能不飽和カルボン酸エステルが好ましい。多官能不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリロイル基を二個以上有するモノマー又はプレポリマーがあげられるが、特に、3個の(メタ)アクリロイル基を有する3官能の不飽和カルボン酸エステルが強度に優れたゲルを与える点で最も好ましい。前記多官能不飽和カルボン酸エステルとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等があげられる。三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0040】
単官能性モノマーに多官能性モノマーを併用する場合、及び、該多官能性モノマーが多官能不飽和カルボン酸エステルである場合には、該多官能不飽和カルボン酸エステルの添加量は液晶に対して4重量%以下、好ましくは0.05〜2重量%である。特に、3官能不飽和カルボン酸エステルを併用する場合には、2重量%以下、好ましくは0.05〜0.5重量%が好ましい。
【0041】
本発明における会合性化合物は、液晶性化合物を物理ゲル化できる化合物である。この物理ゲルとは、ゲル状態から溶液状態(ゾル状態)への変化が可能なものをさす。その構造は一般的に共有結合以外の二次的な会合力によるものの場合が多い。ここで言う二次的会合力とは、水素結合、分子配向、ヘリックス形成、ラメラ形成等の分子間力結合、並びに、イオン結合によるものである。分子間力結合によるゲルの溶液への変化(ゾル化)は、一般的に温度を上げることによって引き起こすことができる。イオン結合によるゲルの溶液への変化(ゾル化)は、一般的にpHやイオン強度を変化させることによって引き起こすことができる。どちらのタイプにも使用できる材料としては、液晶と混和するものであれば使用可能である。このような性質をしめすことでできる物質が、本発明の会合性化合物である。しかしながら、本発明の実施形態においては必ずしもゲル化している必要はなく、能力としてゲル化能を有している物質という意味である。
【0042】
具体的には、アミド結合や水酸基を2個以上有する水素結合性の化合物{アミド結合を有する化合物(アミノ酸系化合物、尿素系化合物)、ソルビトール系化合物、ステロイド系化合物等}、高分子電解質(高分子電解質に多価イオンを含むもの、ポリイオンコンプレックス等)、非対称長鎖アルキルアンモニウム塩などのイオン成分をもつもの、或いは、イオン部、水素結合部をもたない、材料の構造の起因するもの、例えば、ファンデルワールス力、π−πスタッキング等によるもの(コレステロール誘導体、ポリフルオロアルキル化合物、長鎖アルコキシアントラセン)が使用できるが、より好ましくは、水素結合によるものが使用できる。ファンデルワールス力、π−πスタッキング等による会合組織は、その会合力が弱く温度安定性に欠ける。イオン結合によるものは、会合力は強いが、イオン成分を有するので、分極による液晶ダイレクターの乱れをひきおこしやすい。本発明における会合組織は、具体的には、高分子論文集,Vol.52,No12,P773(1995) の「オイルゲル化剤の開発とゲル化機構の解明」の項や、高分子加工, 45巻1号, P21(1996)「オイルゲル化剤」の項に記載された光学活性を有するゲル化剤によって形成されたものが好ましい。また、前記特許文献2〜5に開示されているものが使用できる。
【0043】
このように、一対の基板間に、液晶性化合物、化学ゲル、及び、会合性化合物、を含有する液晶組成物が存在している光変調素子において、
前記液晶性化合物が、強誘電性液晶化合物で構成され、そして、
前記会合性化合物が、次の一般式(1)
【化13】
Figure 0004540934
[但し、式中、
(イ)R 6 〜R 12 は、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であって、同一であっても、また、異なっていてもよい。
(ロ)Xは、
1)次の一般式(2)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y 1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
2)次の一般式(3)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5 (3)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し 、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y 1 ,Y 2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
3)次の一般式(4)
【化14】
Figure 0004540934
(式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
4)次の一般式(5)
【化15】
Figure 0004540934
(式中、n 1 は、1〜18の正数であり、そして、n 2 及びn 3 は、0〜9の正 数である。)
から選ばれる有機基である。
(ハ)mは、0又は自然数であり、nは、Xの会合性部位が1箇所の場合2以上の整数であり、会合性部位が2箇所以上の場合は自然数であり、lは、自然数であり、そして、m及びnは、m+n≧5の関係を満たす。また、前記式(1)中のmとnの関係は存在比率を現すものである。変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番は、不規則であっても規則的であっても良い。またlは、変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の総構造単位数を規定するものであり、変数lを規定することによって決定する総構造単位数に含まれる「変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番」は、不規則であっても規則的であっても良い。]
で示されるオルガノシロキサンからなる高分子化合物で構成されていると、耐衝撃性に優れると共に、外部刺激による気泡の発生を抑制することができ、しかも、配向欠陥が生じにくい光変調素子を提供することができるが、さらに、液晶化合物が強誘電性液晶の場合には、気泡発生の抑制に加えて、階調機能を持たせると共に、配向安定性を有し、しかも、コントラストが高く、ヒステリシスが少なく、欠陥修復が可能であって、高解像度が可能であるという特徴を持つ光変調素子を作製できる。また、前記「高分子化合物」がオルガノシロキサン構造を有していると、該「高分子化合物」を含有する液晶組成物に微細な会合体組織が構築され、そのために、階調特性、配向安定性、コントラスト及び会合体の安定性に優れ、ヒステリシスが少なく、高解像が可能であり、しかも、強誘電性液晶と混和しやすいことにより作製も容易である光変調素子を提供することができる。
【0044】
本発明の光変調素子においては、光変調を行う部分と行わない部分が存在する場合、化学ゲルの存在密度は光変調を行う部分よりも行わない部分の方が高いことが好ましい。これは、実質的に機能している光変調部位に重合により形成した高分子物質が少ないことを意味している。その理由は、外部刺激による気泡の発生を防止するための外部刺激に対する耐性に対しては、高分子物質による化学ゲルの存在が効果的であるが、光変調機能に対しては、高分子物質の存在は駆動電圧が高くなりがちで好ましくないためである。したがって、高分子物質による化学ゲルは、光変調を行わない部分にのみ存在することが好ましい。
【0045】
前記化学ゲルの存在密度が変調部と非変調部とで異なる態様では、特に、光変調素子部分が複数存在し、その解像度が高い場合に効果的である。これは、表示素子を例にとれば、表示画素が複数存在し、解像度が高い(表示画素が小さい)場合に効果的である、ということを意味している。その理由は、高分子物質が表示素子全体に細かく存在することにより外部刺激に対する耐性が向上し、より効果的に気泡の防止や配向の安定性を向上できるためと考えられる。解像度としては、特に、50変調部位(画素)/インチ以上、さらには、100変調部位(画素)/インチ以上の解像度である時に、顕著な効果が発揮される。
【0046】
本発明においては、前記液晶性化合物は、強誘電性液晶である。本発明における「強誘電性液晶」は、強誘電性状態を持ちうる液晶を意味し、反強誘電性液晶をも含むものである。本発明における「強誘電性液晶」は、特別、材料的な限定はなく、例えば、日本学術振興会第142委員会編、「液晶ハンドブック」、1989年 9月29日発行、第128−134頁に記載の材料が使用可能である。このように、前記液晶性化合物が強誘電性液晶であると、階調機能を持たせると共に、配向安定性を有し、そして、ヒステリシスが少なく、欠陥修復が可能であって、高解像度が可能であり、しかも、コントラストが高い会合体の安定性に優れた光変調素子を提供することできる。
【0047】
前記会合性化合物は、光学活性部位と会合性部位とを含む有機基を少なくとも1個以上有する高分子化合物である。このような高分子化合物は、その高分子鎖が前記強誘電性液晶化合物に相溶性のよいものであれば基本的には使用可能であるが、特に、好ましくは、定性的にはミクロ運動が活発なものであって、結晶性の低いものであり、また、物性的にはガラス転移点が室温(25度)以下であるものである。高分子鎖の構造として、ガラス転移点が室温以上であると、強誘電性液晶に溶解しにくくなるので、前記会合性部位によって形成される会合体組織が粗いものになりやすく、また、複合体の安定性も悪くなりやすい。
【0048】
その高分子鎖の具体的な構造としては、分子中にヘテロ結合を含むものであり、次の式
―R11
(式中、R 1 は、アルキレン基あり、X 1 は、O,S,NR 2 である。R 2 は、アルキル基である。)
で示される繰り返し単位、及び、次の式(6)
【化16】
Figure 0004540934
(式中、R 3 ,R 4 は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基であって、同一でも異なっていてもよい。)
で示される繰り返し単位のような繰り返し単位を含むものが好ましい。このような構造は2種以上であってもよく、高分子の主鎖に存在してもよいし、また、側鎖に存在してもよいが、高分子鎖の構造として、ガラス転移点が室温以下になるように、導入してあることが必要である。
【0049】
具体的には、次の式
−CH2CH2O−,−CH2CH(CH3)O−,−Si(R3)(R4)O−,−CH2CH2N(R2)−,−CH2CH2S−及び−CH2CH2COO−
(式中、R2 は、アルキル基である。また、R3 ,R4 は、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基であって、同一でも異なっていてもよい。)
から選ばれる繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0050】
前記「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」は、前記高分子化合物の高分子鎖に導入された、化学反応以外の力により集合体を形成できる、有機基である。かかる有機基が導入された高分子化合物は、会合性物質として作用して会合組織(図5に示される前記有機基の作用によって形成される縦に通るスジの部分)を形成するが、この会合組織は、共有結合以外の二次的結合力、即ち、水素結合、分子配向、ヘリックス形成、ラメラ形成等の分子間力結合又はイオン結合による二次的結合力により形成される。分子間力結合による非会合状態への変化は、一般的には、温度を上げることによって引き起こすことができる。イオン結合による非会合状態への変化は、一般的には、pHやイオン強度を変化させることによって引き起こすことができるが、会合状態は室温(25度)以上で安定でなければならない。このような有機基は、具体的には、アミド結合や水酸基を有する水素結合性の化合物{アミド結合を有する化合物(アミノ酸系化合物、尿素系化合物)、ソルビトール系化合物、ステロイド系化合物等}、非対称長鎖アルキルアンモニウム塩などのイオン成分をもつもの、或いは、コレステロール誘導体、ポリフルオロアルキル化合物、長鎖アルコキシアントラセン等のイオン部及び水素結合部をもたない材料の構造に起因するファンデルワールス力、π−πスタッキング等による化合物から生成するものである。
【0051】
前記「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」は、前記高分子鎖の主鎖及び側鎖のどちらに含まれていてもよいが、高分子鎖に1つしか存在しない場合には、その有機基中の会合性部位は、2箇所以上存在することが必須である。その理由は、本発明では、会合性高分子(「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」を有する高分子化合物)が二次元的又は三次元的な組織を構築することを前提にしているためである。前記「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」が高分子鎖に1個しか存在してなく、また、その有機基中の会合性部位が1箇所である場合には、2量体にしかならず、本発明の目的は達成できない。
【0052】
前記「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」が高分子鎖に1個しか存在しない場合(但し、その有機基中の会合性部位は2箇所以上)には、本発明を改善する効果はあるものの、より微細な会合組織が得にくくなる。その理由は、会合部位が限られているので、構造の単純な会合組織が形成されやすいためと考えられる。
【0053】
「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」による会合組織は、水素結合によるものが好ましい。ファンデルワールス力、π−πスタッキング等による会合組織は、その会合力が弱く温度安定性に欠ける。イオン結合によるものは、会合力は強いが、イオン成分を有するので、分極による液晶ダイレクターの乱れをひきおこしやすい。会合組織は、具体的には、高分子論文集、Vol.52,No12,P773(1995)に記載された「オイルゲル化剤の開発とゲル化機構の解明」や高分子加工,45巻1号,P21(1996) 「オイルゲル化剤」に記載される光学活性を有するゲル化剤によって形成されたものが好ましい。
【0054】
高分子鎖に存在させる「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」としては、次の式
―NH−C*H(R)−CO−
(式中、Rは一価の有機基である。)
を有するものが好ましい。
具体的には、以下の一般式(2)から(5)に示される有機基である((4)はその鏡像体も含む。)。
1)次の一般式(2)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH2Ph、−CH2CH2COOCH3、−CH2CH2COOCH2CH3 、−CH2CH2COOCH2Phである。)、
2)次の一般式(3)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5
(3)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y1 ,Y2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH2Ph、−CH2CH2COOCH3 、−CH2CH2COOCH2CH3 、−CH2CH2COOCH2Phである。)、
3)次の一般式(4)
【化17】
Figure 0004540934
(式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
4)次の一般式(5)
【化18】
Figure 0004540934
(式中、n1は、1〜18の正数であり、そして、n2及びn3 は、0〜9の正 数である。)
から選ばれる有機基である。
光学活性基に結合している有機基(Y)は、炭素数10以下のアルキル基、−CH2Ph、−CH2CH2COOCH3、−CH2CH2COOCH2CH3、−CH2CH2COOCH2Ph であが、好ましくは、炭素数が3〜6のアルキル基、さらに好ましくは、i−C37、s−C49である。
【0055】
前記「光学活性部位と会合性部位とを含む有機基」は、高分子鎖に対してメチレン鎖−(CH2n −で結合されることが好ましく、その繰り返し単位数は、高分子鎖の運動を妨げないこと、及び、会合組織の形成を妨げないこと、からn≧4であることが好ましい。前記有機基は、共有結合で側鎖として導入されていることが好ましく、また、その導入割合は、好ましくは、高分子鎖の繰り返し単位構造に対して30%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
【0056】
前記高分子鎖の繰り返し単位数は、5以上、好ましくは、10以上である。高分子鎖の繰り返し単位数が5以下であると、高分子鎖部の非晶質性を損ないやすく、また、作製される会合体組織も粗いものになりやすく、そのために、複合体の安定性も悪くなりやすい。
【0057】
前記式(1)で示されるオルガノシロキサンのシロキサン鎖に対するXの導入比:n/(m+n)は、好ましくは、0.3以上、さらに好ましくは、0.5以上である。オルガノシロキサン中の会合性部位であるXの割合が低い場合は、液晶に対する会合性オルガノシロキサンの濃度を高くして会合させ、使用することができる。従来、後記比較例1(従来技術)に示すように、低分子化合物よりなる会合性物質の高濃度の添加は、液晶の配向が難しく、乱れがちとなりコントラストをさげる要因となり、また、会合組織が太く構築され、この部分及びその近傍の光変調特性が強誘電性液晶と異なることとなるので、コントラストを落とす要因となり、しかも、駆動電圧も高くなってしまう。しかしながら、本発明によれば、前記式(1)で示されるオルガノシロキサンのシロキサン鎖に対するXの導入比:n/(m+n)を0.3以上としたので、オルガノシロキサン、即ち、高分子化合物よりなる会合性物質の少量の添加により液晶物質を取り込むのに充分な会合構造を形成することができる。
【0058】
本発明における会合性化合物である高分子化合物の分子量は、好ましくは、2000以上、さらに好ましくは、4000以上である。2000以下で高分子鎖部の非晶質性を保とうとすると、即ち、高分子鎖部の分子量を非晶質性を保持できる程度に維持すると、導入できる有機基の数は必然的に少なくなり、微細な会合構造を得られにくくなったり、会合体の安定性不足を生じやすくなる。その理由は、会合部位が限られてくるので、構造の単純な会合組織が形成されやすいためと考えられる。分子量と会合性部位との関係を説明すると、分子量が2000程度、3000程度、4000程度、5000程度、6000程度、8000程度及び10000程度である場合には、それぞれ、有機基が2又は3個、3〜5個、5〜7個、5〜9個、7〜10個、9〜14個及び9〜18個であることが好ましい。このように、高分子化合物の分子量が2000以上であると、より階調特性、コントラスト、配向安定性に優れ、ヒステリシスがすくなく、高解像が可能な光変調素子を提供できると共に、会合体の安定性にすぐれる光変調素子を提供することができる。
【0059】
液晶に対する会合性化合物の添加量が多くなると、液晶の配向が難しく乱れがちとなるので、会合性化合物の添加量を多くすることは、コントラストをさげる要因となる。また、会合性化合物の添加量を多くすると、会合組織が太く構築されので、この部分及びその近傍の光変調特性が液晶と異なることになり、やはり、コントラストを落とす要因となる。本発明における液晶化合物に対する高分子化合物の割合は、好ましくは、5重量%未満、さらに好ましくは、0.25重量%未満である。光変調を行うために印加する電圧の面からは、液晶化合物に対する高分子化合物の割合が5重量%以上であると、後述する光強度(σ)が0.1になる静的な印加電圧V10と0.9になる静的な印加電圧V90との差|V90−V10|が10以上になりやすい。それ故、本発明における液晶化合物に対する高分子化合物の割合は、好ましくは、5重量%未満、さらに好ましくは、0.25重量%未満である。
【0060】
強誘電性液晶を使用する場合においては、会合性部位の会合非会合の転移温度は、スメクチックA相又はカイラルスメクチックC相に存在する。強誘電性液晶と会合性化合物との等方性液体状態を一対の基板間で冷却してゆく過程では、会合性化合物の会合温度は、液晶がスメクチックA相又はカイラルスメクチックC相の時に会合が起こるようにすることが好ましい。スメクチックA相又はカイラルスメクチックC相での会合性化合物の会合は、概ねスメクチック相間でおこるので、形成される組織もこの層間に集中する。このため、カイラルスメクチックC相での強誘電性液晶の配向を著しく阻害することがない。これに対して、等方相又はカイラルネマチック相において会合性化合物の会合がおこると、会合の結果できる集合体が基板内に不規則にできやすく、カイラルスメクチックC相での液晶の配向を阻害することとなり、コントラストを落とすこととなる。
【0061】
強誘電性液晶及び会合性化合物の等方性液体状態からの冷却過程では、徐冷することが好ましい。徐冷することにより会合性化合物の会合がスメクチック層間で起こりやすくなり、強誘電性液晶の配向性を向上させ、コントラストを向上させることが可能である。徐冷のスピードは、0.5℃/分以下、好ましくは、0.3℃/分以下であり、徐冷の開始点は、会合点温度がスメクチックA相に存在するときは、スメクチックA相出現以前から行うことが好ましく。会合点温度がカイラルスメクチックC相に存在するときは、カイラルスメクチックC相出現以前から徐冷を開始することが好ましい。また、会合点温度がカイラルスメクチックC相に存在していても、使用している強誘電性液晶がスメクチックA相を有するものであれば、徐冷はスメクチックA相出現以前から行うことが好ましい。
【0062】
強誘電性液晶及び会合性化合物の等方性液体状態からの冷却過程で磁場又は電場を印加することにより、ヒステリシスを改善することが可能である。電場においては、直流電場が好ましい。この理由は、強誘電性を示すカイラルスメクテックC相の螺旋がほどけ、液晶ダイレクターが概ね一方向にそろい、この状態の一部分が会合性物質の組織により保持されているためと考えられる。
【0063】
一対の基板間に化学ゲルと液晶性化合物と会合性化合物とを存在させる方法としては、液晶化合物中に会合性化合物及び前記重合性の官能基を有するモノマーを溶解させ、これを基板上に塗布等の方法で存在させ、重合エネルギーを与え重合した後、他方の基板を設置する方法や、1対の基板間に、液晶化合物中に会合性化合物および前記重合性の官能基を有するモノマーを溶解した液体を、減圧注入等の方法で導入したのち重合エネルギーを基板上から与える方法等により実施できる。
【0064】
前記基板上への塗布等において液晶性化合物が充分物理ゲル化される会合性化合物を加えておけば、液晶性化合物が実質的に固体状態で化学ゲル形成のエネルギーを供給することができる。これは液晶性化合物中に会合性化合物および前記重合性の官能基を有するモノマーを溶解させ、これを基板上に塗布したのち、液体状態ではなく固体様状態で化学ゲルが形成できることを現しており、基板上に液が存在することによる、蒸発やハンドリング、気流による液面の変形がおこりやすい欠点を回避できる利点がある。また、特に液の厚みが大きくなってくると、液内でのモノマーのじょう乱により、化学ゲルの形状を正確に制御することが難しくなってくるため、効果的である。
【0065】
本発明の光変調素子の製造においては、少なくとも液晶性化合物を主成分とする媒体よりなる物理ゲル中で化学ゲルを作製する。また、本発明の光変調素子の製造においては、少なくとも会合性化合物と液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を基板上又は基板間に存在させて物理ゾル状態とした後、非表示部の一部或いは全部に前記モノマーの重合エネルギーを与える。
【0066】
本発明の請求項1に記載された光変調素子は、(イ)少なくとも、請求項1に記載された式(1)で示される会合性化合物と、強誘電性液晶化合物で構成される液晶性化合物と、重合性モノマーとの混合物を基板上あるいは基板間に存在させる工程、
(ロ)非表示部の一部又は全部に前記モノマーの重合エネルギーを与えることにより化学ゲルとする工程、
(ハ)前記化学ゲル以外の部分を、物理ゾル状態になりうる条件下において、除去する工程、
(ニ)前記除去した化学ゲル以外の部分に液晶性化合物と会合性化合物を充填する工程、
を順次経て製造される。
【0067】
本発明の前記光変調素子の製造方法をさらに詳しく説明する。
液晶性化合物と会合性化合物により物理ゲルを生成できる様な系を用意し、物理ゲルのゾル転移温度以上の温度(すなわち流動性のある状態)で、その系中に化学ゲルを生成できるモノマー及び必要により反応開始剤(光開始剤、熱開始剤)及び必要により溶媒、添加物等を加えて均一状態にする。これを基板上に塗布する。この状態で物理ゲルに転移をおこす温度以下に温度をさげる。これにより系はゲル化し、見かけ上は固体として扱うことが可能となる。この状態で光をあてれば(重合が光開始の場合)、光があたったところのみが重合反応をおこし、化学ゲルが生成することとなるので、光を当てる位置をフォトマスク等で制御すれば化学ゲルの形状制御が可能となる。
【0068】
本発明では、この領域は光変調を起こさない部分とすることが好ましい。また、光としてレーザー光等の微小スポットを持つような光源を使用すれば微細加工も可能である。また、レンズを用いて光を集光し極所的に温度をあげてやれば(重合が熱開始の場合)、温度が上がったところのみが化学ゲルが生成することとなるので、集光位置を制御すれば化学ゲルの形状制御が可能となる。このようにして物理ゲルマトリクスを利用して化学ゲルの形状を制御して作製することが可能である。さらに、このようにして作製された物理ゲルを物理ゲルがゾル転移を起こす温度以上に加熱すれば、物理ゲルは再びゾル化し、流動性をもつようになる。これに対して化学ゲルが生成された部分は、有機物どうしの結合が化学結合(共有結合)のため温度をあげてもゲル状態、即ち、固体状態のままである。この状態で物理ゲルを流しとってしまうことにより形状制御された化学ゲルのみを得ることができる。これに再び、液晶性化合物と会合性化合物の混合溶液を塗布すれば、化学ゲル部と「液晶性化合物+会合性化合物」部分を明確にわけた光変調素子を提供できる。
【0069】
本発明の請求項1〜11のいずれかに記載された光変調素子は、その基板が電極を有しかつ偏光板を備えることにより表示素子となる。ここで使用される偏光板(偏光子)は、反射型、散乱型、屈折型、複屈折型、単結晶二色性型、高分子二色性型等、特に、制限はないが、可とう性があるものが好ましく、高分子二色性型偏光子が最も好ましい。本発明の請求項1〜11のいずれかに記載された光変調素子を有する表示素子は、耐衝撃性に優れると共に、外部刺激による気泡の発生を抑制することができ、しかも、配向欠陥が生じにくい。また、本発明の請求項1〜11のいずれかに記載された光変調素子を有する表示素子は、強誘電性液晶を用いることにより、高速応答で、階調機能を持たせると共に、配向安定性を有し、そして、ヒステリシスが少なく、欠陥修復が可能であって、高解像度が可能であり、しかも、コントラストが高い会合体の安定性に優れた光変調素子を提供することできる。
【0070】
特に、強誘電性液晶を用いた表示素子においては、光変調素子に電圧を印加して得られる光強度(σ)の最大値を1とし、光強度の最小値を与える電圧をV1 とし、光強度1を与える電圧値をV2 とした時に、V1 からV2 の電圧領域において、電圧変化にたいする光強度変化の割合の絶対値(|Δσ/ΔV|)の最大値が、好ましくは、0.5以下、さらに好ましくは、0.35以下である。
【0071】
前記電圧変化にたいする光強度変化の割合の絶対値(|Δσ/ΔV|)は、光強度を電圧で微分したものである。即ち、微分値の絶対値が大きいということは、小さな電圧変化に対して大きな光強度変化がおこることをあらわし、階調数を増加させると、印加電圧をより細かいステップで制御することが必要だが、印加電圧に対する光強度変化が大きいと、アクティブ駆動で使用されるスイッチング素子での電圧制御が困難となり、階調数を落とすことになる。パッシブ駆動の場合でも電圧値で階調を制御することは変わりないので、印加電圧に対する光強度変化が大きいと階調数を多く表現できなくなる。それ故、光強度変化の割合の絶対値(|Δσ/ΔV|)の最大値が、好ましくは、0.5以下、さらに好ましくは、0.35以下である。よって、本発明によれば、階調表示が制御しやすい表示素子を提供できる。
【0072】
また、印加電圧の値の観点からは、光強度が0.1になる静的な印加電圧V10と0.9になる静的な印加電圧V90とが|V90−V10|≦10の関係であることがさらに好ましい。|V90−V10|>10であるとアクティブ駆動で使用させるスイッチング素子による駆動が困難となる。また、パッシブ駆動の場合、静的な印加電圧が10V以上である場合、パルス駆動における波高値が高くなり、やはり汎用のLCD駆動ICでの動作が困難となってくる。それ故、前記関係は、好ましくは、|V90−V10|≦6である。また、一対の電極間の距離は適宜設定されるものであるが、この電圧範囲となるように設定することが好ましい。会合性化合物の添加量は、求むべきコントラストと駆動電圧、配向安定性との兼ね合いにて決定されるものであるが、階調表示のためには、好ましくは、5重量%未満であり、1≦|V90−V10|≦6のためには、好ましくは、0.5重量%未満であり、さらに好ましくは0.25重量%未満である。
【0073】
本発明においては、一対の基板の少なくとも一方が250μm厚以下のプラスチック基板である。このように、一対の基板の少なくとも一方が250μm厚以下のプラスチック基板であると、気泡の発生を押さえ、配向欠陥が起こりにくい、軽量性、可とう性に優れるプラスチック表示素子を提供できる。
【0074】
本発明に使用されるプラスチック基板は、表示用素子の性格上、可視光に対して透明なものが好ましく、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアクリレート系、ポリエーテル系等汎用の高分子材料を用いる事ができるが、リターデーションが小さく、ガス透過性(水分、酸素、窒素)が少なく、可視光の透過性が高く、線膨張係数が小さく、耐熱性の高い材料が好ましい。特に、厚み250μm以下のものを使用することが軽量性、厚み、破砕しない点で好ましいが、基板の厚みが薄くなるに従い、外部圧力に対する変形もし易くなるため、気泡の発生の危険性も上昇することとなる。本発明の態様はこのような薄いプラスチックフィルムを用いたときに大きな効果を発揮する。基板にプラスチック基板を使用することは従来から公知であり、前述の特許にも、プラスチック基板を使用できることが開示されている。しかしながら、本発明のような目的解決の思想はなく、単に液晶を保持させる基板として使用可能であるということを開示しているにすぎなく、基板厚みに関する記述も、その変形に関する記述も一切見受けられない。また、本発明は強誘電性液晶も使用するわけであるが、会合性化合物を使用することにより強誘電性液晶光変調素子の欠点であった配向の不安定性(ショック性による配向不良)も改善できている。
【0075】
プラスチック基板には、ポリカーボネイトあるいは、ポリエーテルスルフォンを用いることが好ましい。このような材質の250μm程度の基板は、リターデーション、可視光の透過性、耐熱性(〜150℃)、基板の軽量性、厚みの点に優れ表示素子を形成した場合、表示品質が高く、軽量性、可とう性、生産性に優れる液晶表示素子を提供できる。
【0076】
本発明の液晶表示素子は、図1,2に示すように、ガラス基板で構成される光透過性の表示側基板1とこれに対向する非表示側基板2とを有すると共に、これらの基板1,2の間に強誘電性液晶化合物、及び、光学活性部位と会合性部位とを含む有機基を少なくとも1個以上有する高分子化合物、を含有する液晶組成物(図示せず)を有している。図1,2において、3,4,5,6は、ITO層であり、そして、7は、シール部である。
【0077】
本発明の液晶表示素子は、図3,4に示すように、プラスチック基板で構成される光透過性の表示側基板11とこれに対向する非表示側基板12とを有すると共に、これらの基板11,12の間に強誘電性液晶化合物、及び、光学活性部位と会合性部位とを含む有機基を少なくとも1個以上有する高分子化合物、を含有する液晶組成物(図示せず)を有している。図3,4において、13,14は、ITO層であり、15は、シール部であり、そして、16は、液晶組成物の注入口である。
【0078】
【実施例】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0079】
(実施例1)
(1)ITOを表面に有する150μm厚のポリエーテルサルフォンシート(PES、住友ベークライト社製)を縦7.0cm、横4.2cmに切り出し、中心部の縦7.0cm、横3.2cmの領域内にラインアンドスペースとしてITOライン200μm、スペース50μm(100ppi)のエッチングを施したITO電極基板を2枚用意した。これらのITO電極基板に絶縁材をスピンコートにより塗布した後、これらのスピンコートにより塗布したITO電極基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥し、120℃のオーブン中で90分間焼成した。これらのITO電極基板に配向剤をスピンコートにより塗布し、これらのスピンコートにより塗布したITO電極基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥し、120℃のオーブン中で90分間焼成した後、セル作製後のラビング方向が平行になるようにラビング処理した。
【0080】
(2)平均直径1.5μmのギャップ剤(触媒化成社製)をイソプロピルアルコールに分散(0.0238mg/cc)した液を用意し、これをラビング処理したITO電極基板1枚にスピンコートにより散布し、続いて、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した。そして、残りの1枚のITO電極基板上にディスペンサー(2軸ロボット)にてシール剤を塗布してシール部を形成し、プリベイクをした。次に、このITO電極基板と先のギャップ剤をまいたITO電極基板とが互いに直交するように、2枚の電極を張り合わせ、これらのITO電極基板を上下にクッション剤をはさんで圧力を加え、この状態のまま8時間放置した後、オーブン中で12時間加温し、ついで、これらのITO電極基板をオーブン中で120℃において12時間加熱して、シール剤を硬化させることにより、空のセルとした(図3参照)。
【0081】
(3)強誘電性液晶(FELIX-015/000 、クラリアント社製)に、以下の式(13)で示される構造を有する会合性高分子化合物[n/(m+n)が約0.5、分子量が約5000]1重量%、及び、液晶性モノマー(UCL−001、大日本インキ社製)30重量%を加えて、強誘電性液晶と会合性高分子と液晶性モノマーとからなる組成物とした。
【化19】
Figure 0004540934
【0082】
(4)前記セルを液晶注入用真空装置に移し、0.002Torrまで減圧した後、液晶ザラにセルの液晶注入口をつけセル外部を常圧にもどし、液晶をセル中に導入した。この間、系は90℃に保持した。セルを真空装置より取り出し、ドットサイズ200μm角、スペース部50μmのフォトマスクをして75℃で紫外線を照射し(スペース部が照射部である)、室温まで徐冷した後、紫外線硬化エンドシール剤(スリーボンド社製)にてセル開口部を封止した。この後、セルを110度より8時間で室温まで冷却して光変調素子とした。
(5)この光変調素子をさらに80℃の恒温層に保存したのち、r4mmの先端形状を有するステンレスにより、作製した素子の表面を押す試験(押圧試験)を実施した。押圧試験を実施した場所はシール剤内側で桝目状等間隔にて9個所(縦3×横3)行った。試験後、この光変調素子には、配向の乱れ、気泡の発生は起っていなかった。
【0083】
(実施例2)
前記(3)において、強誘電性液晶に、会合性高分子化合物2重量%、及び、液晶性モノマー10重量%を加えて、強誘電性液晶と会合性高分子と液晶性モノマーとからなる組成物とし、そして、前記(4)において、フォトマスクを使わないで紫外線を照射した(全面照射)以外は、実施例1と同様に光変調素子を作製した。この光変調素子を、実施例1における(5)と同様に、試験した結果、この光変調素子には、配向の乱れ、気泡の発生はなかった。
【0084】
(実施例3)
(1)ITOを表面に有する120μm厚のポリカーボネイト(帝人社製)を縦7.0cm、横4.2cmに切り出し、中心部の縦7.0cm、横3.2cmの領域内にラインアンドスペースとしてITOライン200μm、スペース50μm(100ppi)のエッチングを施したITO電極基板を2枚用意した。これらのITO電極基板に絶縁材をスピンコートにより塗布した後、これらのスピンコートにより塗布したITO電極基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥し、120℃のオーブン中で90分間焼成した。これらのITO電極基板に配向剤をスピンコートにより塗布し、これらのスピンコートにより塗布したITO電極基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥し、120℃のオーブン中で90分間焼成した後、セル作製後のラビング方向が240度になるようにラビング処理した。
【0085】
(2)アルコール中に中心粒径6.5μmのシリカスペーサを分散させたスペーサ散布液を用意し、これを配向膜形成基板にスピンコートにより散布し、続いて、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した。次に、スクリーン印刷により上基板と下基板を接着させるためのシール剤をスペーサを散布してない基板側に印刷形成し、上基板と下基板を互いのストライプ状のITOが直交するように張り合わせ、これらのITO電極基板を上下にクッション剤をはさんで圧力を加え、この状態のまま12時間放置した後、オーブン中12時間加温し、これらのITO電極基板をオーブン中で120℃において12時間加熱して、シール剤を硬化させることにより、空のセルとした(図3参照)。
(3)ネマチック液晶(087LA、チッソ社製)を用意し、これに実施例1の(3)における会合性高分子化合物[n/(m+n)が約0.5、分子量が約5000]1重量%、及び、液晶性モノマー(UCL−001、大日本インキ社製)30重量%を加えて、液晶と会合性高分子と液晶性モノマーとからなる組成物とした。
【0086】
(4)前記セルを液晶注入用真空装置に移し、0.002Torrまで減圧した後、液晶ザラにセルの液晶注入口をつけセル外部を常圧にもどし、液晶をセル中に導入した。この間、系は90度に保持した。セルを真空装置より取り出し、ドットサイズ200μm角、スペース部50μmのフォトマスクをして75℃で紫外線を照射し(スペース部が照射部である)、室温まで徐冷した後、紫外線硬化エンドシール剤(スリーボンド社製)にてセル開口部を封止した。この後、セルを110度より8時間で室温まで冷却しして光変調素子とした。
(5)この光変調素子をさらに80度の恒温層に保存したのち、r4mmの先端形状を有するステンレスにより、作製した素子の表面を押す試験(押圧試験)を実施した。押圧試験を実施した場所はシール剤内側で桝目状等間隔にて9個所(縦3×横3)行った。試験後、この光変調素子には、配向の乱れ、気泡の発生は起っていなかった。
【0087】
(実施例4)
(1)一方の表面に幅8mm、長さ40mmのITO部を2箇所に形成した、縦30mm、横40mm、厚み3mmのITO電極基板を2枚用意した。これらのITO電極基板に絶縁材をスピンコートにより塗布した後、これらのITO電極基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥し、120℃のオーブン中で90分間焼成した。これらのITO電極基板に配向剤をスピンコートにより塗布し、これらのスピンコートにより塗布したITO電極基板を80℃のホットプレート上で5分間乾燥し、250℃のオーブン中で1時間焼成した後、セル作製後のラビング方向が平行になるようにラビング処理した。
【0088】
(2)平均直径1.5μmのギャップ剤(触媒化成社製)をイソプロピルアルコールに分散した液を用意し、これをラビング処理したITO電極基板1枚にスピンコートにより散布し、続いて、80℃のホットプレート上で1分間乾燥した。そして、残りの1枚のITO電極基板上にディスペンサー(2軸ロボット)にてシール剤を塗布してシール部を形成し、プリベイクをした。次に、このITO電極基板と先のギャップ剤をまいたITO電極基板とが互いに直交するように、2枚の電極を張り合わせた後、これらのITO電極基板を上下にクッション剤をはさんで圧力を加え、この状態のまま60分間放置した後、オーブン中12時間加温し、ついで、これらのITO電極基板をオーブン中において120℃で12時間加熱して、シール剤を硬化させることにより、空のセルとした(図1参照)。
【0089】
(3)強誘電性液晶(FELIX-015/000、クラリアント社製)に、実施例1の(3)における会合性高分子化合物[n/(m+n)が約0.5、分子量が約5000]1重量%、及び、液晶性モノマー(UCL−001、大日本インキ社製)1重量%を加えて、液晶と会合性高分子と液晶性モノマーとからなる組成物とした。
(4)前記(2)の空のセルを110℃に加熱し、前記(3)の組成物を毛管現象を利用しセル中に導入した。ドットサイズ8mm角、スペース部4mmのフォトマスクを介して紫外線を照射し(スペース部が照射部である)室温まで徐冷した。紫外線硬化エンドシール剤(スリーボンド社製)にてセル開口部を封止した。その後、セルを110度より8時間で室温まで冷却し、このセルの上下に偏向板を直行ニコル状に設置して液晶表示素子とした。
【0090】
(5)この液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャは、図5に示される。図5より、この液晶表示素子においては、微細な会合性物質の組織が構築されているのが観察される(縦にとおるスジ部が会合性物質による組織)。次に、液晶パネル評価装置(大塚電子社製)にて、この液晶表示素子の電圧対光強度の変化を測定した結果は、図6に示される。そして、この液晶表示素子の|Δσ/ΔV|の最大値は、0.27であり、また、そのコントラスト比は、75であった。
【0091】
(比較例1)
ITO基板として、ITO部が中心部に縦10mm、横40mmに施してあるものを使用し、会合性物質として、次の式(14)
【化20】
Figure 0004540934
で示される低分子化合物を使用し、そして、UCL001は使用しない(紫外線も照射しない)以外は、実施例4と同様に液晶表示素子を作製した。
【0092】
図7は、比較例1で得られた液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャを示す。会合性物質の組織が図5と比較して粗く構築されているのが観察される(縦にとおるスジ部が会合性物質による組織)。図8は、比較例1で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。この液晶表示素子の|Δσ/ΔV|の最大値は、0.78であり、そして、そのコントラスト比は、52であった。そして、光変調率の立ちあがりが急峻であるとともに大きなヒステリシスを示している。
【0093】
(比較例2)
会合性物質を使用しない以外は、比較例1と同様に液晶表示素子を作製した(即ち、液晶性化合物のみで素子を作製した)。
図9は、比較例2で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。この液晶表示素子の|Δσ/ΔV|の最大値は、6.6であった。そして、光変調率の立ちあがりが急峻であるとともに大きなヒステリシスを示している。
【0094】
【発明の効果】
請求項1〜3に記載された発明によれば、一対の基板間に、液晶性化合物、化学ゲル、及び、会合性化合物、を含有する液晶組成物が存在している光変調素子において、
前記液晶性化合物が、強誘電性液晶化合物で構成され、そして、
前記会合性化合物が、次の一般式(1)
【化21】
Figure 0004540934
[但し、式中、
(イ)R 6 〜R 12 は、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であって、同一であっても、また、異なっていてもよい。
(ロ)Xは、
1)次の一般式(2)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y 1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
2)次の一般式(3)
−(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5 (3)
(式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し 、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y 1 ,Y 2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
3)次の一般式(4)
【化22】
Figure 0004540934
(式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
4)次の一般式(5)
【化23】
Figure 0004540934
(式中、n 1 は、1〜18の正数であり、そして、n 2 及びn 3 は、0〜9の正 数である。)
から選ばれる有機基である。
(ハ)mは、0又は自然数であり、nは、Xの会合性部位が1箇所の場合2以上の整数であり、会合性部位が2箇所以上の場合は自然数であり、lは、自然数であり、そして、m及びnは、m+n≧5の関係を満たす。また、前記式(1)中のmとnの関係は存在比率を現すものである。変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番は、不規則であっても規則的であっても良い。またlは、変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の総構造単位数を規定するものであり、変数lを規定することによって決定する総構造単位数に含まれる「変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番」は、不規則であっても規則的であっても良い。]
で示されるオルガノシロキサンからなる高分子化合物で構成されているので、耐衝撃性に優れると共に、外部刺激による気泡の発生を抑制することができ、しかも、配向欠陥が生じにくい光変調素子を提供することができるが、さらに、液晶化合物が強誘電性液晶の場合には、気泡発生の抑制に加えて、階調機能を持たせると共に、配向安定性を有し、しかも、コントラストが高く、ヒステリシスが少なく、欠陥修復が可能であって、高解像度が可能であるという特徴を持つ光変調素子を作製できる。また、前記「高分子化合物」がオルガノシロキサン構造を有していると、該「高分子化合物」を含有する液晶組成物に微細な会合体組織が構築され、そのために、階調特性、配向安定性、コントラスト及び会合体の安定性に優れ、ヒステリシスが少なく、高解像が可能であり、しかも、強誘電性液晶と混和しやすいことにより作製も容易である光変調素子を提供することができる。
【0095】
請求項に記載された発明によれば、化学ゲルが、少なくとも、CH2 =CH−COOR又はCH2 =C(CH3 )−COOR(式中、Rは、炭素及び水素よりなる一価の有機基である。)を重合してなる合成高分子ゲルであるので、液晶との相溶性が良い。
【0096】
請求項5に記載された発明によれば、前記式(1)で示されるオルガノシロキサンのシロキサン鎖に対するXの導入比:n/(m+n)が0.3以上であるので、オルガノシロキサン、即ち、高分子化合物よりなる会合性物質の少量の添加により液晶物質を取り込むのに充分な会合構造を形成することができる。
【0097】
請求項6に記載された発明によれば、前記高分子化合物の分子量が2000以上であるので、より階調特性、コントラスト、配向安定性に優れ、ヒステリシスがすくなく、高解像が可能な光変調素子を提供できると共に、会合体の安定性にすぐれる光変調素子を提供することができる。
【0098】
請求項7に記載された発明によれば、前記液晶化合物に対する前記高分子化合物の割合が5重量%未満であるので、よりコントラストの向上した光変調素子を提供できると共に、光変調電圧を低減した光変調素子を提供できる。
請求項8〜10に記載された発明によれば、液体状態ではなく固体様状態で化学ゲルが形成できるので、化学ゲルの形状を正確に制御した光変調素子を提供できる。
請求項11〜12に記載された発明によれば、耐衝撃性に優れると共に、外部刺激による気泡の発生を抑制することができ、しかも、配向欠陥が生じにくい表示素子を提供できる。また、請求項11〜12に記載された発明によれば、強誘電性液晶を用いることにより、高速応答で、階調機能を持たせると共に、配向安定性を有し、そして、ヒステリシスが少なく、欠陥修復が可能であって、高解像度が可能であり、しかも、コントラストが高い会合体の安定性に優れた光変調素子を提供することできる。
【0099】
請求項13に記載された発明によれば、階調表示が制御しやすい表示素子を提供できる。
請求項14〜15に記載された発明によれば、気泡の発生を押さえ、配向欠陥が起こりにくい、軽量性、可とう性に優れるプラスチック表示素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示す液晶表示素子のセルの平面図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 本発明の他の一実施の形態を示す液晶表示素子のセルの平面図である。
【図4】 図1のB−B断面図である。
【図5】 実施例4で得られた液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャを示す。
【図6】 実施例4で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。
【図7】 比較例1で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。
【図8】 比較例1で得られた液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャを示す。
【図9】 比較例2で得られた液晶表示素子の電圧対光強度の変化を液晶パネル評価装置(大塚電子社製)で測定した結果を示す。実施例1で得られた液晶表示素子を光学顕微鏡にて観察したテクスチャを示す。
【符号の説明】
1,11 表示側基板
2,12 非表示側基板
3,4,5,6,13,14 ITO層
7 ,15 シール部
16 液晶組成物の注入口

Claims (15)

  1. 一対の基板間に、液晶性化合物、化学ゲル、及び、会合性化合物、を含有する液晶組成物が存在している光変調素子において、
    前記液晶性化合物が、強誘電性液晶化合物で構成され、そして、
    前記会合性化合物が、次の一般式(1)
    Figure 0004540934
    [但し、式中、
    (イ)R 6 〜R 12 は、炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる基であって、同一であっても、また、異なっていてもよい。
    (ロ)Xは、
    1)次の一般式(2)
    −(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHR5 (2)
    (式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基であり、Y 1 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
    2)次の一般式(3)
    −(CH2n−CONHC*H(Y1 )CONHC*H(Y2 )CONHR5 (3)
    (式中、nは、1〜18の正数であり、* は、光学活性を有していることを示し 、そして、R 5 は、炭素数1〜24のアルキル基である。Y 1 ,Y 2 は、炭素数10以下のアルキル基、−CH 2 Ph、−CH 2 CH 2 COOCH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 CH 3 、−CH 2 CH 2 COOCH 2 Phである。)、
    3)次の一般式(4)
    Figure 0004540934
    (式中、nは、1〜18の正数である。)、及び、
    4)次の一般式(5)
    Figure 0004540934
    (式中、n 1 は、1〜18の正数であり、そして、n 2 及びn 3 は、0〜9の正 数である。)
    から選ばれる有機基である。
    (ハ)mは、0又は自然数であり、nは、Xの会合性部位が1箇所の場合2以上の整数であり、会合性部位が2箇所以上の場合は自然数であり、lは、自然数であり、そして、m及びnは、m+n≧5の関係を満たす。また、前記式(1)中のmとnの関係は存在比率を現すものである。変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番は、不規則であっても規則的であっても良い。またlは、変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の総構造単位数を規定するものであり、変数lを規定することによって決定する総構造単位数に含まれる「変数mで現される構造単位と変数nで現される構造単位の分子中での結合の順番」は、不規則であっても規則的であっても良い。]
    で示されるオルガノシロキサンからなる高分子化合物で構成されている
    ことを特徴とする光変調素子。
  2. 前記光変調素子が光変調を行う部分と行わない部分を有し、そして、前記化学ゲルの存在密度が光変調を行う部分よりも光変調を行わない部分に高いことを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
  3. 前記光変調素子が光変調を行う部分と行わない部分を有し、そして、前記化学ゲルが光変調を行わない部分にのみ存在することを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
  4. 前記化学ゲルが、少なくとも、CH2 =CH−COOR又はCH2 =C(CH3 )−COOR(式中、Rは、炭素及び水素よりなる一価の有機基である。)を重合してなる合成高分子ゲルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光変調素子。
  5. 前記式(1)で示されるオルガノシロキサンのシロキサン鎖に対するXの導入比:n/(m+n)が、0.3以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光変調素子。
  6. 前記高分子化合物の分子量が2000以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光変調素子。
  7. 前記液晶化合物に対する前記高分子化合物の割合が5重量%未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光変調素子。
  8. 少なくとも液晶性化合物を主成分とする媒体よりなる物理ゲル中で化学ゲルを作製することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光変調素子の製造方法。
  9. 少なくとも会合性化合物と液晶性化合物と重合性モノマーとの混合物を基板上又は基板間に存在させて物理ゾル状態とした後、非表示部の一部或いは全部に前記モノマーの重合エネルギーを与えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光変調素子の製造方法。
  10. (イ)少なくとも、請求項1に記載された式(1)で示される会合性化合物と、強誘電性液晶化合物で構成される液晶性化合物と、重合性モノマーとの混合物を基板上あるいは基板間に存在させる工程、
    (ロ)非表示部の一部又は全部に前記モノマーの重合エネルギーを与えることにより化学ゲルとする工程、
    (ハ)前記化学ゲル以外の部分を、物理ゾル状態なりうる条件下において、除去する工程、
    (ニ)前記除去した化学ゲル以外の部分に液晶性化合物と会合性化合物を充填する工程を順次有することを特徴とする請求項1に記載された光変調素子の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載された光変調素子を有することを特徴とする表示素子。
  12. 前記光変調素子における基板が、電極及び偏光板を有することを特徴とする請求項11に記載された表示素子。
  13. 前記光変調素子に電圧を印加して得られる光強度(σ)の最大値を1とし、光強度の最小値を与える電圧をV1 とし、光強度1を与える電圧値をV2 とした時に、V1 からV2 の電圧領域において、電圧変化に対する光強度変化の割合の絶対値(|Δσ/ΔV|)の最大値が、0.5以下であることを特徴とする請求項11又は12に記載の表示素子。
  14. 前記一対の基板の少なくとも一方が、250μm厚以下のプラスチック基板であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の表示素子。
  15. 前記プラスチック基板が、ポリカーボネイト又はポリエーテルスルフォンで構成されていることを特徴とする請求項14に記載の表示素子。
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