以下、本願発明の実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本願発明に係る真空処理装置の実施形態の構成の概略を示す全体図である。
本図に示す真空処理装置100は、図上側に配置される真空側ブロック101と、これに接続された図下側に配置される大気側ブロック102の概略2つの部分に分けることができる。
真空側ブロック101は、主に、内部が減圧されて真空に維持され処理対象の試料が搬送される複数の接続された真空容器から構成されており、図上略中心に平面形状が略多角形(六角形)の真空搬送容器103と、この周囲に略多角形状の各辺上に取り付けられた真空処理ユニット104a,104b,104c,104dおよびロードロックまたはアンロードロック室容器106,107が配置されている。なお、本実施の形態においてロードロックまたはアンロードロック室容器106,107は共に両方の動作が可能に構成されたものであり、以下、簡単のためロードロック室容器と記載する。
また、真空処理ユニット104a〜104dおよびロードロック室容器106,107は、それぞれその内側が真空搬送容器103内部と同等の真空度まで減圧され圧力が維持される真空容器を備えており、この真空容器内部にその上面に処理対象の試料が載置される載置面を備えた試料台が配置されている。特に、真空処理ユニット104a〜104d内に配置された試料台105a〜dでは、試料は試料台105a〜d上に載置された状態で処理される。
真空搬送容器103内には、各真空処理ユニット104a〜104d内の試料台105a〜105dおよびロードロック室容器106,107内の試料台との間で試料を搬送するための真空搬送ロボット108が配置されている。この真空搬送ロボット108は、2つのロボットアーム109,109’を備え、それぞれのロボットアーム109,109’はその上面に試料を載せて搬送し各試料台の間で試料をやりとりする。
さらに、これら真空処理ユニット104a〜104dと真空搬送容器103との間には、これらの間を仕切り試料が開口部内を搬送されるゲートと、このゲートの閉塞および開放を行うゲートバルブとを有するゲートユニット110a〜110dが配置されている。
大気ブロック102は、主に、内部の圧力が略大気圧であってその前面側(図中下側)に試料を内包する複数のカセット114が取り付け可能に構成された大気搬送容器112と、この大気搬送容器112内の大気搬送室内に配置され、この大気搬送室内においてカセット114とロードロック室容器106,107との間で試料を大気圧下でやりとりする大気搬送ロボット113とを備えている。
さらに、大気搬送容器113の側方(図中左方)に取り付けられ、大気搬送ロボット113のロボットアーム113’によりカセット114から取出された処理対象の試料の向きや位置を調節するためのアライナ115が備えられている。
また、ロードロック室106,107は、大気搬送容器112の後方(図中上方)側に配置され、大気搬送容器112の背面と接続されている。このロードロック室容器106,107内部は、装置外周の雰囲気圧(大気圧)と同等の圧力から真空搬送容器内と同等の圧力までの間で圧力を変更することが可能に構成されている。
ロードロック室容器106,107と大気搬送容器112との間には、それぞれゲートユニット111が配置されており、このゲートユニット111内のゲートを介して大気搬送室112とロードロック室106,107とが連通されているとともに、ゲートユニット111に備えられたゲートバルブを駆動することによりこのゲートが閉塞/開放可能となっている。
図2は、図1に示す処理ユニットのうち処理ユニットにおける処理チャンバ部の構成の概略を示す縦断面図である。
この図において、処理ユニット104aの上部を構成して内部に処理室を有する処理チャンバ200は、真空搬送容器103に接続されておりこれらの間に配置された開閉する大気ゲートバルブ214によりその間が連通あるいは遮断される。この大気ゲートバルブ214が開放された状態で真空搬送容器103内部の空間と処理チャンバ200の内側の空間とが連通し両者の圧力は略等しくなる。大気ゲートバルブ214の開放時に試料であるウエハが真空搬送容器103内部から内部の処理室内に配置された試料台204上に搬送されて載置される。
本実施の形態では、試料が試料台204上に試料が載置されたことを検知して確認後大気ゲートバルブ214を閉塞して処理チャンバ200内部と真空搬送容器103内部とを遮断し、処理チャンバ200内を密封して処理を開始する。処理チャンバ200を真空搬送容器103から取外し、或いは整備する作業を行う場合、大気ゲートバルブ214を閉塞状態とし、処理チャンバ200内を大気圧まで昇圧した後この処理チャンバ200の真空容器を形成する外側チャンバ211,212内を開放して大気に暴露する。
この図に示すように、処理チャンバ200の上部は放電室部が配置されており、この放電室部は、真空容器の蓋を構成する蓋部材242と、この蓋部材242の内側に配置されたアンテナ部材と、このアンテナ部材の側方と上方とに配置され放電室部を囲んで配置されたコイル227を有する磁場発生部と、このアンテナ部材の下方に配置された天井部材とを含んで構成されている。また、磁場発生部上方にはアンテナ部材が放出するUHF帯やVHF帯の電波を供給する電波源部225が配置されている。アンテナ部材はSUS等の導電性部材で構成された蓋部材242の内側に配置された平板形状のアンテナ226と、このアンテナ226と蓋部材242との間に配置されてこれらの間を絶縁するとともにアンテナ226から放出される電波を下方の天井部材側に伝導するために配置されたリング形状を備えた少なくとも1つの誘電体228を有している。
さらに、天井部材は、伝達されてきた電波を下方の処理室内側に伝導するため石英等の誘電体で構成された(石英)プレート203と、この石英プレートの下方に配置されて供給された処理用のプロセスガスを処理室の内側に分散して導入するための複数の孔が形成されたシャワープレート234を有している。
シャワープレート234の下方であって試料台204の上方に形成された空間は、供給されたプロセスガスに石英プレート203を通って導入された電波と磁場発生部から供給された磁場との相互作用によりプラズマが形成される放電室232となっている。さらに、石英プレート203とシャワープレート234との間は微小な隙間を空けて空間が形成されており、この空間に放電室232に供給されるべきプロセスガスが先ず供給され、シャワープレート234を貫通してこの空間と放電室232とを連通してプロセスガスが通流する上記孔を通って放電室232に流入する。上記空間はプロセスガスが複数の孔から分散して放電室232に流入するよう設けられたバッファ室229となっている。このプロセスガスは、プロセスガスライン201およびプロセスガス遮断バルブ202を介してガス等流体の処理ユニット104への供給を調節する制御器402から供給される。
このようにして、複数の孔からプロセスガスを分散して放電室232に導入するとともに、これらの孔は試料台204上に試料が載置される位置に対向した位置を主にして配置されており、ガスをより均一となるように分散できるバッファ室229の働きとともに、プラズマの密度を均一にすることを図っている。また、蓋部材242の下方で石英プレート203およびシャワープレート234の外周側には蓋下部リング237が配置されており、この蓋下部リング237の内部にはバッファ室229にプロセスガスが通流するプロセスガスライン201と連通したガス通路が設けられている。
さらに、シャワープレート234の下方には、蓋下部リング237とシャワープレート234とにこれらの下面で接して配置され真空容器の内側でプラズマに面して放電室232の空間を区画する放電室内側壁部材233が備えられている。この内側壁部材233の外周側にはこれを取り囲んで配置された放電室外側壁部材236が備えられており、この放電室の内側壁部材233の外側の壁面と外側壁部材236の内側の壁面とが対向して接触している。なお、本実施の形態では、内側壁部材233、外側壁部材236は各々略円筒形状を有しほぼ同心となるように構成されている。外側壁部材236の外周面には、ヒータが巻き付けられて配置され、外側壁部材236の温度を調節することでこれに接触した内側壁部材233の表面の温度を調節している。
この外側壁部材236の外周側には、その下面に接触する放電室ベースプレート235が配置されている。この放電室べースプレート235の下面でその下方に配置される真空室部分と接続する。なお、内側壁部材233は放電室232内部のプラズマ、電極の役目を果たす試料台204に対する接地電極の作用をする部材でもあり、プラズマの電位を安定させるために必要な面積を有している。この接地電極としての作用のために、接触されて接続される外側壁部材236或いは蓋部材242との間での熱伝導とともに導電性を十分確保する必要が有る。
内側壁部材233と外側壁部材236および蓋部材242とはともに、導電性を有する部材で構成され、処理チャンバ200外側の大気側へ露出されており、接地のための配線の接続が容易となるように構成されている。
本実施の形態では、上記のように放電室部の下方に真空室部が配置され、真空容器を構成する真空室部の外壁部材は大きく上下に分けられる。上部は真空搬送容器103またはこれに取り付けられ真空搬送容器103を構成する部材にボルト等で取り付けられその位置が固定された上部外側チャンバ211である。一方、下部は上記上部外側チャンバ211の部材に下方からボルト等で取り付けられ固定され、さらに、下方からベッドや架台等からその上に取り付けられた支持梁に支持されている。つまり、上部、下部外側チャンバ211,212は、真空搬送容器103またはベッド部や架台に対して、或いは装置100が設置される床面に対してその位置が固定されている。
ここで、処理チャンバ200の真空室部の外壁を構成して上下に配置された外側チャンバ211,212の内側に1つ以上のチャンバが配置されており、一方が他方の内側に配置された多重チャンバとなっている。本実施の形態では、内外2つのチャンバを有している。すなわち、上部外側チャンバ211の内側に内側チャンバ209が、下部外側チャンバ212の内側に内側チャンバ210が備えられている。つまり、上下2つの内側チャンバ209,210が備えられている。試料台204は内側チャンバ209,210の内側に配置されており、最も内側のチャンバの内部は、プラズマが形成され、ガス、反応性生物が流れて排気される真空室232’を構成する。
この真空室232’は上方の放電室232と連通するとともに、説明するように内側チャンバ209と外側チャンバ211の間の空間と連通可能に構成され排気手段により減圧されるとともに、試料の処理の際に放電室232内のプラズマ、ガス、反応性生物が移動できるように配置されている。
また、内側チャンバ209,210は導電性を備えて、外側チャンバ211,212に対して導通を有して、所定の電位とされる。内側チャンバ209,210は上記のようにその内側のプラズマと面しており、処理を安定させるため、あるいはプラズマ内の粒子との相互作用を安定にするために、特定の電位に設定される必要が有る。本実施の形態では、内側チャンバ209,210を接して接地地電位に設定している。これにより、上記放電室内側壁部材233と同様プラズマの電位が安定するとともに相互作用が安定する。
接地させるために、内側チャンバ209,210は導電性部材で構成されており、内側チャンバ209の上端部あるいは下端部で導電性部材で構成された外側チャンバと導通するように構成されている。内側チャンバ210は、その下面で、同様に導電性部材で構成された下部外側チャンバ212の上面と接触して接続されており、導通が確保される。外側チャンバ211,212を配線接続して接地することで、内側チャンバ209または内側チャンバ210が接地される。
また、真空室部上に搭載された放電室部は、放電室232および真空室232’が減圧されるとともに、真空室部を押圧するように下方に微小距離移動して真空室部に力を印加する。このようにして真空室部と放電室部との接触する部分で、放電室部および真空室部の内側と外側との間を封止するシールを有効に機能させる。
上記した放電室部は放電室ベースプレート235が真空室部と接触してこれを押圧する。放電室ベースプレート235の下面は、試料台(電極)ベースプレート224の上面と接触し、この試料台ベースプレート224の下面が処理チャンバ200の上部外側チャンバ211の上面と接触し、これらが接続されている。放電室ベースプレート235は、一方で、上部内側チャンバ209の上端またはこの近傍を含む上端部に設けられたフランジ部の上方に配置され、このフランジ部を介して試料台ベースプレート224を上方から押しつけて押圧力を伝える構成となっている。上部内側チャンバ209のフランジ部の外周側において放電室ベースプレート235が上部外側チャンバ211を押しつけて接触しこれに押圧力を印加する。
本実施の形態では、真空室を構成する壁の表面の温度を調節して、その表面とプラズマやこれに含まれる粒子、ガス、反応性生物との相互作用を調節している。このようにプラズマとこれに面する真空室の壁面との相互作用を適切に調節することで、プラズマの密度や組成等プラズマの特性を所望の状態にすることができる。一方、本実施の形態の構成では真空室部を構成する内側チャンバ209と外側チャンバ212の間には排気手段により減圧されて高い真空度に維持される空間が有り、このため真空室232’を構成する内側チャンバ209の温度を調節するには工夫が必要となる。
そこで、本実施の形態では、放電室ベースプレート235の内側に熱交換媒体が通流する媒体通路241を配置し、この媒体通路241内を水等の熱交換媒体が循環して通流することで放電室ベースプレート235の温度を調節し、この放電室ベースプレート235と内側チャンバ209の部材との間に配置されてこれらを接続する部材を介して内側チャンバ209の温度を調節している。つまり、放電室ベースプレート235と内側チャンバ209の側壁部材とが熱的に接続されており、両者間で熱が伝導されて熱交換される。熱伝導して熱交換が可能であれば、これらの間に別部材を配置してもよい。
なお、本実施の形態では、放電室ベースプレート235をその下方に配置された真空室のベースプレートでもある試料台ベースプレート224に対してボルト等を用いて締結して連結、接続している。この際に、上部内側チャンバ209を下方に押し付ける押圧力が掛かるとともに、そのフランジ部と接触して接続された部分で押し付けられる試料台ベースプレート224と上部内側チャンバ209の下部と接触して押し付けられる試料台204の支持ベース部材とに略垂直な方向に押圧力が掛かるよう、予め吊下げ梁205およびこれに支持された支持ベース部材223とがわずかな距離上方に浮いた状態となるように弾性を有する弾性リング238が、試料台ベースプレーと224と吊下げ梁205の上部との間に配置されている。
処理対象である試料が内側チャンバ209,210内の試料台204上に載置されるには、内側チャンバ209あるいは210にウエハが搬送されることのできるゲートが必要となる。さらに、このゲートを開閉して密封してこのチャンバの内側と外側の空間を遮断し連通するバルブが必要となる。
本実施の形態は、処理チャンバ200の内側と真空搬送容器103の内側との間に設けられたゲートを開放しあるいは閉塞して密封することで両者を連通、遮断する大気ゲートバルブ214と内側チャンバ209の内側と外側とを開放し或いは閉塞して密封することで両者を連通、遮断するプロセスゲートバルブ213とを備えている。大気ゲートバルブ214は、真空搬送容器103の内側の側壁上に配置されて駆動手段222によって上下および水平方向に移動可能に構成されており、内側側壁上でゲートを密封するよう閉塞し、あるいは開放する。また、真空容器を構成する外側チャンバ211に、真空搬送容器103と処理チャンバ200が接続されたときに前記真空搬送容器103側のゲートと連通する位置にゲートが設けられる。
この位置は、真空搬送容器103内のウエハ搬送用のロボットアームである試料搬送装置206がウエハを搬送する際にウエハおよびロボットアームに接触する等の処理の支障が生じない位置であることが必要である。また、内側チャンバ209が外側チャンバ211内に設置された状態で外側チャンバのゲート或いは真空搬送容器103のゲートに対向する位置にプロセスゲートが配置されており、このプロセスゲートを通ってウエハが搬送される。
さらに、このプロセスゲートを開放、閉塞して密封するためのプロセスゲートバルブ 213が、外側チャンバ211と内側チャンバ209との間の空間に配置され、プロセスゲートバルブ213は、その下方の駆動手段221によって上下および水平方向に移動可能に構成されており、閉塞時に内側チャンバ209の側壁上に配置されて内側側壁上でゲートを密封するよう閉塞し、あるいは開放する。プロセスゲートは、ウエハを搬送する真空搬送容器103内のロボットアームがウエハを搬送した状態でウエハおよびロボットアームと接触しない位置と形状で配置されている。
上記の構成において、各ゲートバルブはウエハの搬送の際に支障がし生じないよう開放される。また、ウエハを処理する際には、最も内側のチャンバ、本実施の形態では内側チャンバ209に設けられたゲートを閉じるゲートバルブ、プロセスゲートバルブ213と大気ゲートバルブ214とは閉塞されて密封され、これらの内外の空間の間を遮断する。また、処理室を取外し、或いは整備作業等で真空容器を開放する場合には、大気ゲートバルブ214は閉塞された状態で、プロセスゲートバルブ213は開放され外側チャンバ211の内側における内側チャンバ209の内外の空間を連通する。この際、プロセスガスを処理チャンバ200内には供給しないようプロセスガス遮断バルブ202を駆動してプロセスガスライン201を遮断して閉塞する。
上記のように、本実施の形態では、プロセスゲートバルブ213を開放して外側チャンバ211内の内側チャンバ209の内側、外側を連通し略同じ圧力に設定、あるいは調節可能に構成している。このようにすることで、この内側チャンバ209あるいは210は、内外の大きな圧力差による荷重が小さくなり部材の厚さや大きさを低減することができる。
処理チャンバ200の真空容器である外側チャンバ211の内側を整備作業をする場合には大気ゲートバルブ214を閉塞して外側チャンバ211内を密封してこれを確認後、プロセスゲートバルブ213を開放する。プロセスゲートが連通され内側チャンバ213内外の空間が連通された状態で、大気開放バルブ215を開放して処理チャンバ200外部と内部とを連通させ、処理チャンバ200内の外側チャンバ211,212内の圧力を昇圧して略大気圧まで上昇させる、すなわち、大気開放する。
この大気開放後、処理チャンバ200内を開放する。まず、処理チャンバ200の外側チャンバ211の上部に配置されてこの内側を密封している蓋203を上方に持ち上げて開放する。この際、クレーン等で上方に持ち上げても良いが、予めヒンジ部を設けておき、ヒンジを軸にして上方に跳ね上げて180度以上開くようにしても良い。次に、内側チャンバ209を整備する作業を行う。この整備作業、例えば清掃や交換、修理等を容易に行えるようにするため、内側チャンバ209を外側チャンバ211から取出して、処理チャンバ200から取外しても良い。
上記のように、内側チャンバ209の内外が略動圧となるまで調整、あるいは維持可能な構成を備えるので、チャンバ部材の厚さが抑制される。このため、内側チャンバ209の重量が軽減され取外し等取り扱い作業が容易となり、作業時間が低減され装置の稼働効率が向上する。
本実施の形態では、内側チャンバは上下2つ備えられており、試料台204のブロックの上下に内側チャンバ209,内側チャンバ210に分けられる。つまり、内側チャンバ209の下方に試料台204ブロックが配置されている。試料台204のブロックは、試料台本体204とこれを支持し試料台204を中心の軸にして軸周りに支持梁220を配置している。本実施の形態では、内側チャンバ209および外側チャンバ211と試料台本体204とは略円筒形をしており、内側チャンバ209内の試料台204上の空間のガスが、この支持梁同士の間の空間であって内側チャンバ209の間の空間を通路として下方へ流れる。
支持梁220は試料台本体204とこの本体の周囲に配置されたリング状の支持ベース部材223との間を連結して試料台204を内側チャンバ209内に保持している。上記支持べース部材223と支持梁220、および支持ベース部材223と連結されてこれをつり下げるつり下げ梁205内には、上記試料台204本体へ供給されるガスや冷媒の供給管や電力の送電線がその内側に配置されている。このようにして、試料台本体204と支持梁220、支持ベース部材223とを一体のブロックとして持ち上げて外側チャンバ211外へ持ち上げて取出すことができる。このような試料台204の整備や交換等は内側チャンバ209の整備よりも頻度が少なく、ブロックとして一体に移動可能な構成とすることで、装置の整備作業の効率が向上できる。
また、真空チャンバ200の下部には、真空室232’或いは放電室232の状態を検出するためのセンサ239が配置されている。すなわち、下部外側チャンバ212の側壁部には、センサを収納する穴が形成されこの内側に真空室232’内の圧力、ガス組成、プラズマの発光等を検知してこれらの状態を検出するセンサ239が配置されている。このセンサ239、またはこれを収納する穴に連通する通路が、下部外側チャンバ212、および下部内側チャンバ210に形成されている。この通路の開口は下部内側チャンバ210の側面に配置されており、この通路を介して真空室232’内のガス、プラズマ等がセンサ239へ伝達される。このセンサ239からの出力は図示しない制御装置に伝達され、この出力を受け制御装置が処理チャンバ200および真空処理装置100の動作を検出し、動作を必要とする部位に適切な動作の指令を発信する。
試料台204のブロックの下方に下側の内側チャンバ210が配置されており、この内側チャンバ210の中央側部分には開口が配置されている。この開口部は内側チャンバ210の下方であって試料台204の下方に配置された排気バルブ207や排気ポンプ208を備えた排気手段と連通しており、試料台204の周囲を流れる内側チャンバ209内のガスが通流する部分である。つまり、試料台204周囲の支持梁220同士の間の空間と試料台204下方の内側チャンバ210内の空間が処理チャンバ200内の処理ガス、プラズマ中の粒子や反応性生物の粒子が流れて排気される排気経路となっている。
処理チャンバ200の排気手段である排気バルブ207は、その下方に配置された排気ポンプ208と内側チャンバ210の内側の空間との間を連通あるいは遮断することのできる板状のシャッター複数を備え、このシャッターを回転させて開口している排気通路面積を可変に調節して排気流量や速度を調節するシャッター式排気バルブである。このように、本実施の形態では、排気手段が試料台204の下方、特に直下方に配置されている。そして、内側チャンバ209内の試料台204の上方の空間内のプラズマや処理ガス、反応性生物は試料台204の周囲とその下方の内側チャンバ210内の空間を介して排気バルブ207までの排気経路を流れる。
複数の支持梁220は試料台204を中心の軸に略軸対象の位置に配置されており、各支持梁同士の間の空間を流れて試料台204直下方の排気バルブ207までの流れる各々の排気経路の長さは略等しくなるように構成されている。このため、試料台204上方のプラズマ中のガスや荷電粒子、反応性生物の流れは試料台204あるいはこの上に載置される略円板形状の試料であるウエハの周方向についてより均一に近くなり、このウエハ上方の空間においてプラズマ中の上記物質の粒子の分布はより均一となる。このため、ウエハの処理がより均一化される。
本実施の形態では、真空排気手段は、回転するシャッターを複数備えた排気バルブ207とその下方の排気ポンプ208とを備え、排気バルブ207はそのバルブが試料台204の直下方に配置されている。この複数枚の板状のシャッターは図のように各々略水平(ウエハ面方向)に配置され各々に取り付けられた軸を中心に各シャッターが回転して、前記内側チャンバ210の開口と排気ポンプ208との間で連通する面積を調節する。これらの軸を回転させて行くと各シャッターの板同士が接触をして前記開口を封止して閉塞する。また、各シャッターの板が試料台204方向(上方向)に略平行となった際に連通する面積が最も大きくなる。図示していないが排気バルブ207はこれらシャッターの回転を調節するモータ等の駆動手段を備えており、排気手段はこれらシャッターの開口面積と排気ポンプ208の駆動を調節することで排気の量とその速度とを調節している。
また、試料台204下方で排気バルブ207上方には、外側下部チャンバ212に設けられた排気開口ゲート231上部を覆ってこれを開閉(開口/遮断)する排気ゲートプレート230が配置されている。この排気ゲートプレート230は、略円板形状を有し一部の外縁周端に外側に延在した腕部の対を少なくとも1つをその一部として有し、この腕部の下方に配置されたプッシャの上端が上下に動作することで、この上端に繋がれた腕部を持ち上げ/下げして排気開口を開閉する。この排気ゲートプレート230はその下方への投影面は上方の試料台204の投影面内に収まるように、また、腕部の投影面は上方の支持梁220の投影面内に収まるか、少なくとも一部が重なるように配置されている。
また、図2に示すように、排気ゲートプレート230は、プラズマを形成して試料の処理を行う際にはその両端部に配置された上下方向のプッシャによりその上方の試料台204部および支持梁220の下面に近接或いは接触するまで持ち上げられ移動される。これにより、試料の処理に伴って排気される処理室内のプラズマやプロセスガスの残り、反応生成物等の流れが排気ゲートプレート230により阻害されることを抑制でき、排気の効率を向上させ、さらには支持梁220および試料台204下方の真空室232’内の阻害され乱された排気の流れを安定させるために必要な空間が抑えられ処理チャンバがより小型化され排気時間の短縮、ひいては処理の効率が向上する。さらに、上記の構成では、粒子が排気ゲートプレート230に付着することを抑制している。このことによりこの排気ゲートプレート230の交換や付着物除去等のメンテナンスの間隔を長くできる。
本図に示す処理ユニット104aにおける試料の処理の概略を説明する。真空搬送容器103内をロボットアーム206上に載せられた試料が真空搬送容器103と真空室部との間のゲートおよび内側チャンバ209上のゲートとを通して搬送され、内部が真空にされた真空室232’内の試料台204上の試料載置面上に載置された後、制御器402を介しプロセスガスライン201および蓋下部リング237内の通路からバッファ室229に供給された処理用のガスがシャワープレート234上に形成された貫通孔を通して試料台204およびその上の試料上方の放電室232上部からプロセスガスが導入される。これとともに、排気ポンプ208の駆動により放電室232、真空室232’内は、排気ゲートプレート230と下部内側チャンバ210との間の空間から排気開口ゲート231を通り排気される。
略円形の排気開口ゲート231は、略円筒形の試料台204の直下方で上の試料台204の軸とその軸とが略一致するように配置されており、上記放電室232、真空室232’のガスや反応生成物の密度の偏りや不均一を抑制し、これらからの排気がより均一となる。また、複数配置された回転するシャッター207は、その回転動作によって開口内の排気の通流位置の偏りが小さくされるので、さらに排気の均一性ひいてはプラズマ、反応生成物の均一性が向上され処理の安定性、均一性が向上する。
排気ポンプ208の駆動およびシャッター207の回転動作と前記処理用ガスの供給とが図示しない制御装置によって調節され、処理チャンバ200内部の圧力が所定の値となるように調節される。さらに、電波源225からアンテナ226を介して供給される電界およびコイル227からの磁界とにより、放電室232内に供給された処理用ガスがプラズマ化される。また、図示しない高周波電源からの高周波電力が試料台204内の電極に供給されて、試料上にバイアス電圧が形成され、前記プラズマとの相互作用により試料がエッチング等の加工処理がなされる。
この処理の際に、プラズマに面する部材表面ではプラズマとの相互作用が生起し、その部材の温度が変化する。この上昇の温度が高い場合あるいは温度変化する表面の面積が大きい場合には、試料表面の処理への影響が大きくなる。このため、この部材表面の温度を適切に調節することが試料の処理の安定性や精度を向上するうえで必要となる。
本実施の形態では、放電室内側側壁を構成する石英内筒233と放電室外側壁部材236との間の隙間に熱伝導性の高いガス、例えはHeガスを導入して、放電室外側壁部材236外周に配置されたヒータあるいは放電室外周の雰囲気との間での熱伝導、熱交換を促進して、石英内筒233の表面の温度を所望の値となるように調節して、処理の安定性、精度を向上させている。この石英内筒233の表面の温度の調節は、制御器403によって行うことができる。
上記Heガスは、上記プロセスガスライン201と異なる熱伝導ガスを供給するための経路となる管路である熱伝導ガスライン2011とこの経路上に配置された遮断バルブ2012を介して、制御器403から蓋下部リング237内に配置された通路へ供給され、この通路から石英内筒233と放電室外側壁部材236との間の空間に供給される。
この空間内での熱伝達の効率や伝達する熱量は、この空間内のHeガスの圧力により調節される。この圧力はセンサを用いて検知され、本実施の形態では、制御器403あるいは遮断バルブ2012に配置された図示しないセンサを用いて、供給経路上での圧力に相当する結果として検出される。制御器403は、この検出結果を用いて、供給するHeガスの量を調節するための動作指令を遮断バルブ2012に発信する。本実施の形態では、遮断バルブはその開閉の動作によってガス供給と経路の遮断とを行うことで、前記空間での圧力を増減して調節している。
試料の処理が終了すると、ロボットアーム206により試料台204上の試料が搬出され、別の試料が試料台上に載置後に上記と同様にして、あるいは処理に必要な条件を変更して試料の処理が行われる。処理後の試料が搬出されて別の試料が載置されて処理が再開されるまで、プラズマは形成されていないので、放電室232、あるいは真空室232’内の内側部材は温度の上昇は抑制されるが、処理を開始する際にその温度を処理に適切な所定の温度にしておくため、本実施の形態では、処理の開始前にヒータおよび石英内筒233と放電室外側壁部材236との間のHeガスの圧力を処理に必要な状態に設定し維持している。また、その温度は単一または複数の処理の間で均一であることが望ましいことから、温度調節が行われない場合に達する温度の最高値よりも高い温度となるように、ヒータおよびHeガスの供給の動作が調節される。
放電室外周部分の詳細な構成を、図3を用いて説明する。図3は、図2に示す実施例の放電室部および真空室部の接続部分の構成を拡大して示す縦断面図である。
蓋部材242の下方であって石英プレート203の下方およびシャワープレート234の側方にこれらの外周側を囲んで蓋下部リング237配置されている。この蓋下部リング237は、その下向きの表面が下方の放電室外側壁部材236の上表面と対向して接している。放電室ベースプレート235の内側に熱交換媒体が通流する媒体通路241が配置されており。また、石英プレート203はその上部は大気側に露出しており、放電室232、真空室232’が減圧された場合には大気に基づく外圧力が印加され、この力は蓋下部リング237、放電室外側壁部材236に対して下向きに押圧する力として伝達される。また、蓋下部リング237および放電室外側壁部材236はその一部が外部の大気側に露出しており、このため石英プレート203と蓋下部リング237とが接触する面、および蓋下部リング237と放電室外側壁部材236とが接触する面には減圧される内側と外側との間を封止するシールが配置されている。
また、放電室外側壁部材236の略円筒形状部の内周側表面および蓋下部リング237と適宜空間を開けて配置された放電室内側壁部材である石英内筒233は、その内側の放電室232を囲む略円筒形状を有し、その上端部の外周側には、円筒の外周に沿って配置されたシール部材251が配置されている。このシール部材251を介して、石英内筒233は上方のシャワープレート234および蓋下部リング237の内周面と接続、連結している。放電室外側壁部材236の外周には、上記のように、その周囲に沿ってヒータ240が配置されており、このヒータ240は放電室外側壁部材236とこの内側で放電室232内のプラズマに面する石英内筒233の温度を調節する。
このように、放電室外側壁部材236は、その上表面において蓋下部リング237を介して印加される押し付け力を受け下方の部材に力を印加して伝達している。さらに、放電室外側壁部材236はその下部で外周に沿って外周側に延在したフランジ部を有し、このフランジ部の下面と試料台ベースプレート224の内周端部の上面とが対向して接触して接続されている。両者は、放電室ベースプレート235上方から挿入されたボルトにより締結されている。この構成により、より大きな接触面積を得られ、押し付け力、熱を下方により効率良く下方に伝達でき、導電性も向上する。なお、本実施例では、放電室外側壁部材236は熱伝達、導電性および処理中の汚染等を配慮してアルミで構成されるが、放電室ベースプレート235は内部を熱伝達媒体が通流することから熱伝達、導電性とともに腐食を考慮してSUSの部材で構成されている。
放電室ベースプレート235の下方には、上部内側チャンバ部材209が配置され、これらの間には、これら各々と接触して接続される中間部材209’が配置されている。なお、この中間部材209’は放電室232または真空室232’に面してこれらを区画する壁面を構成しており、プラズマ或いはガス、反応生成物に面する。本実施の形態では、この中間の部材をアース側と連結して、すなわち設置してプラズマの電位を安定させるためのアース部材209’として用いている。
このアース部材209’は、その上方に石英内筒233が載置されて、後述の通りシールを介してこれを下方から支持する部材である。また、アース部材209’は石英内筒233の下端部の外周側にこの外周に沿って配置されたリング状の形状を有し、所定の大きさの幅を有するフランジ部を内周側と外周側とに有し、これらを繋げる段差部を有している。内周側のフランジ部は放電室外側壁部材236下方で上部内側チャンバ209の上端と石英内筒233下端部との間に配置され、これらと連結する、中間の部材となっている。ここで内側フランジ部は、その内周端の端面で石英内筒233の下端部の内周面を覆って上方に延在するカバーフランジ209’’を有している。つまり、このカバーフランジ209’’の内周側表面は放電室232の内側側壁面を構成して、放電室232の中央側に配置された試料台204に対向して配置されている。
アース部材209’の内側フランジ部上面であってカバーフランジ209’’の外周側は、その上方に石英内筒233および放電室外側壁部材236の下部が配置されている。石英内筒233の下端部外周と放電室外側壁部材236の下端内周とに接して、石英内筒233と放電室外側壁部材236の間の隙間を封止するシール部材251が配置されている。さらに、内側フランジ部上面と放電室外側壁部材236との接触面の外周側には、シールが配置されており、処理室外部の大気側と内側との間を封止している。
この構成では、プラズマに面するカバーフランジ209’’の外周側とこれに内側表面が覆われる石英内筒233の下端部との間には、取付公差を考慮して隙間が存在しており、この隙間を通りプラズマが石英内筒233の下端部に進入するおそれがある。つまり、プラズマ内の高いエネルギーや腐食性を有する粒子が、石英内筒233周囲の隙間を進入してこれを構成する部材やその端部の部材を浸食したり飯能市たて生成物を形成したりする虞がある。
本実施の形態では、進入したプラズマは、その隙間の端部となる石英内筒233とアース部材209’の内側フランジ部上面とが対向して配置された箇所に達するが、隙間はさらに外周方向に形成されており、プラズマが進路を変えなければならないことから、進入を抑制することができる構成となっている。この外周側の隙間となる石英内筒233の下端下表面とアース部材209’の内側フランジ部上面との隙間の外周側にシール部材251が配置されており、このシール部材251がプラズマにより腐食したり、生成物が形成され付着したりすることが抑制される。
さらに、アース部材209’の外側フランジ部は放電室ベースプレート235の下面と上部内側チャンバ209の上端部の表面とに接触して接続され、放電室ベースプレート235と上部内側チャンバ209とを接続している。上部内側チャンバ209は、外側フランジ部が接続される箇所では、その上端または上端近傍に略水平方向に延在するフランジ部を有してその上端部は断面が略L字またはT字となっている。このフランジ部上面と上方の中間部材209’の外側フランジ部下面とが接触されて接続されている。中間部材209’の外側フランジ部の内周側(真空室、放電室の中央側)或いは内側チャンバ209の側壁部上端のフランジ部の内周側には内側と外側との間を封止するシールが配置されている。中間部材209’の外側フランジ部の外周端部および内側チャンバ209の側壁上端のフランジ部の外周端は、処理チャンバ200の外部の大気に露出されるか、あるいは大気圧の外部と連通されており、その表面での圧力はおよそ大気圧となっている。
このため、中間部材209’と内側チャンバ209の側壁部上端のフランジ部とが接触する面の間にあるいは中間部材209’の外側フランジ部と放電室ベースプレート235の下面とが接触する面の間に大気が存在している。さらには、この接触面には石英プレート203、蓋下部リング237等に印加される大気圧による押圧力が伝達され、接触面積を大きくしている。これにより、この接触部分を介した熱伝導や導電の性能が向上する。また、内側チャンバ209上端のフランジ部下面と試料台ベースプレート224の上面とが接触する接触面にもシールが配置されている。
なお、放電室ベースプレート235は、図示しないコネクタを介して接地電位にされており、この放電室ベースプレート235と同様に導電性の部材で構成されてこれと接触しているアース部材209’も同様に接地電位とされ、放電室232内のプラズマに対するアースとしての作用を奏している。
上記の通り、本実施の形態では、石英内筒233と放電室外側側壁237との間および蓋下部リング237との間にある隙間からなる空間301に、熱伝達用のガスであるHeガスを供給して、石英内筒233の内側表面の温度を適切に調節している。この空間301に供給されるHeガスは、約1Kpa程度の圧力に調節され、このHeガスが放電室232内に漏洩すると、プラズマの密度や生成物の密度の分布が変わってしまい、処理に影響を与えるので、これを隙間内に封止するために石英内筒233の下端部および上端部にシール部材251,251’が配置されて、石英内筒233の高さ方向の大部分の外周側面によって前記空間301が形成されるように構成されている。これにより、石英内筒233の内側表面の広い面積で温度調節が行われ、処理の均一性、安定性が向上される。
また、Heガスは、熱伝達ガスライン2011を構成するガス導入管302とこれに連通する蓋下部リング237内の貫通孔の内側を通流して蓋下部リング237の内側表面に形成された開口から、空間301に流入する。この開口は、シール部材251,251’の間で空間に面している。
図4は、図3に示すプラズマ処理装置に係る真空容器の側壁部の構成を拡大して示す縦断面図である。各々が断面円形状の弾性体製のリングであるシール部材251,251’は、石英内筒233の下端部および上端部の外周側の円形の周に沿って配置され、それぞれの外終端部と接してこれらの間の封止をしている。また、本実施の形態では、それぞれ空間301を構成する放電室外側壁部材236の内側壁面および蓋下部リング237の内周側面に当接するとともに、石英内筒233の上下に配置されてこれと対向しているアース部材209’およびシャワープレート234とに当接して空間301を封止している。空間301はこれらシール部材251,251’各々の複数の対象に対する複数箇所での当接により封止されることでHeガスの放電室232内への漏洩が抑止されている。
これらのシールのうち、シール部材251は、先ず、石英内筒233がアース部材209’上に配置されていない状態で、アース部材209’上面と放電室外側壁部材236とが当接する角部に装着される。この角部、すなわち、放電室外側壁部材236の内側下端部とこれに対向するアース部材209’上面の位置には、このシール部材251を嵌め込んで位置を決めるための凹み或いは切り欠き部が各々に設けられている。この凹みまたは切り欠き部は、放電室外側壁部材236の形状に沿ってリング状に配置されている。
次に、石英内筒233をアース部材209’のカバーフランジ209’’の外周側面と放電室外側壁部材236との間の隙間に上方から挿入するように配置する。この際に、石英内筒233の下端部外周側の角部に形成された切り欠きまたは切り落とし部(面取り部)の表面がシール部材251と当接するように配置する。この石英内筒233の装着の際に、蓋下部リング237が装着されていても良いし、石英内筒233装着後に放電室外側壁部材236上に配置しても良い。また、蓋下部リング237と放電室外側壁部材236との間には、空間301からのガス洩れを抑制するためのシール部材が配置されている。
次に、シール部材251’を石英内筒233の上端部外周側の角部の切り落とし部、切り欠き部(面取り部)の表面と蓋下部リング237の内周側上端部の切り欠き部表面とに当接するように配置する。
次に、蓋下部リング237および石英内筒233の上端面を覆ってにシャワープレート234を配置する。本実施の形態では、シャワープレート234の外終端部にはその厚さを小さくするように凹まされた段差部が配置されており、この段差部(凹み)に石英内筒233および蓋下部リング237の上面が入るように、シャワープレート234が装着される。シャワープレート234装着後に図示しない蓋部材である石英プレート203が蓋下部リング237上に載せられる。
このシャワープレート234の重量の印加により、弾性体製のリングであるシール部材251’およびシール部材251は変形して、その反力によって当接している各部材の表面に押圧力を与え、封止機能を高く発生させる。なお、必要に応じてシャワープレート234の段差部表面であってシール部材251’が当接する部分にはリング上に凹み部を設けてシール部材251’の位置決めが容易に行われるようにしても良い。
シール部材251は、上記のように、3つの部材である石英内筒233、放電室外側壁部材236およびアース部材209’に当接している一方で、石英内筒233をアース部材209’上であって放電室外側壁部材236の内側に空間301を形成して保持している部材となっている。本実施の形態では、石英内筒233は、シール部材251によってアース部材209’上面との間に隙間を開けて保持して接触を抑止することで、過度な荷重がが石英内筒に掛かり割れや欠けや損傷の発生を抑制している。
一方、上部シールであるシール部材251’は、石英内筒233上端部外周側の切り欠き(面取り)部、蓋下部リング237内周側切り欠き(面取り)部とシャワープレート234外周側部の凹み部表面とに当接している。ここでも、シール部材251’が間に存在することによりシャワープレート234と石英内筒233との間は隙間が形成され両者の接触による割れ、欠け、損傷等が抑制される。
このような構成では、シール部材251は、空間301を、石英内筒233と放電室外側壁部材236とアース部材209’との間で封止するとともに、その弾性の反力によりアース部材209’上に支持すると共に、石英内筒233の外周に沿って放電室の中央側にも押圧力を発生させている。
これにより、石英内筒233が放電室232の中央部方向に外周側から略均等に押し付けられることになって、空間301の放電室半径方向の隙間長さの不均一が抑制される。隙間の大きさが不均一であったり、石英233と放電室外側壁部材236との間の隙間長さが極端に小さい箇所がある場合には、この箇所での異常放電が発生したり、熱伝達率が変化して、放電室232の周囲の壁の温度の局所的な偏りが発生して、処理の均一性が損なわれてしまう。上記の構成は、このような処理の不均一や異常放電の発生を抑制することができる。
また、シール部材251は、石英内筒の下端部外周側に配置されており、石英内筒233とカバーフランジ209’’との間の隙間を通して進入したプラズマが到達しにくくされている。このため、プラズマによるシール部材の腐食や生成物付着によるシール性能の低下が抑制され、その寿命が延長される。
さらに、石英内筒233の上端部では、シャワープレート234の外周側段差部内に入るように配置されており、シャワープレート234と石英内筒233との隙間の内周側の開口部はシャワープレート234の段差で覆われるように構成されている。これにより、石英内筒233の下端部側のシールと同様に、プラズマにシール部が直接さらされることを抑制するとともに、プラズマが隙間に進入する場合には、進路を外周側に変えることが必要となり、プラズマのシール部材251’への到達を抑制して、プラズマとの相互作用による悪影響を抑制して、シール部材の寿命を延長して、メンテナンス間隔を増大し処理の効率を向上する。
図5は、図4に示すプラズマ処理装置に係る真空容器の側壁の構成の変形例を示す縦断面図である。本図において図5(a)〜図5(b)の順に、本例のシールの装着を説明する。図5(a)において、放電室外側壁部材236は図2に示す実施の形態と異なり上下方向に接続される複数部材236,236’で構成されており、その下方の放電室外側壁部材236をアース部材209’の内側フランジ部上面に配置した状態が図示されている。
放電室外側壁部材236、236’は、図2に示す実施の形態と同様に略円筒形状を有しており、その円筒の中心を放電室232と略同一に配置され、試料台204の中心軸とも略同一に配置される。この上端の内周側端部には切り欠き部(凹み部)501が設けられ、この凹み部501内に断面が略円形のリング状の弾性体製シール部材251が配置される。このシール部材251はその断面の直径が凹み部501の凹みの幅(図面上段差の左右方向の長さ)および深さ(図面上段差の上下方向の長さ)よりも少し大きいように構成されている。
つまり、シール部材251を凹み部501に配置した状態で、シール部材251の下端と放電室外周側端(図上右端)とが凹み部の表面と接した状態で、上端部と放電室内周側(図上左端)とが凹み部から突出して、放電室外側壁部材236の上面と内周側面とよりそれぞれ上方、図上左側に凸状に出ている。この状態で、石英内筒233をアース部材209’上に配置する。
すなわち、アース部材209’のカバーフランジ209’’の外周側面と放電室外側壁部材236’の内周面との間の隙間に石英内筒233を上方から挿入してアース部材209’上に配置する。この際シール部材251と石英部材233の外周側面とは、僅かに触れるか隙間を開けられて配置されている。
次に、放電室外側壁部材236’の上方に別の放電室外側壁部材236’’を載せて両者を連結して位置固定する。この際、上記凹み部501内に配置されたシール部材251は、上下の放電室外側壁部材236’,236’’と凹み部501の壁面とに挟まれてつぶされ、変形しその端部が放電室232中央側(図上左方の石英内筒233側)に伸ばされ、石英内筒233外周側面に当接する。
このことにより、石英内筒233はその外周に沿って外周側から中央側に略均等に押圧されることになる。これにより、シール部材251は、空間301を石英内筒233と放電室外側壁部材236’および放電室外側壁部材236’’の間で封止する。石英内筒233と放電室外側壁部材236’との間の空間301の放電室232半径方向の隙間長さが、周方向について略均一に配置できる。また、上記の通り、プラズマがシール部材251まで進入することが抑制され、シール部材251の寿命が延長される。
また、カバーフランジ部209’’により、石英内筒233とアース部材209’上面との間にプラズマが進入することが抑制され、この隙間での異常放電が抑制される。
なお、カバーフランジ部の長さは、石英内筒233とアース部材209’との間の隙間や空間を覆ってプラズマに直接さらされないようにすることと同時に、接地電極としてプラズマの電位を安定させるに十分な面積を有する形状にすることが必要となる。上記の作用を奏することができる形状であれば本図に示された形状に限定されるものではない。例えば、接地電極の面積が十分であれば、カバーフランジ部209’’の上方に延在する高さを小さくすることができ、図5に示すようにシール部材251が石英内筒233の外周側下端部よりさらに上方に位置している場合には、プラズマの進入が抑制されているのでカバーフランジ部209’’の高さは0であっても構わない。
図6は、図4に示すプラズマ処理装置に係る真空容器の側壁の構成の別の変形例を示す縦断面図である。図6(a)は、図4に示す石英内筒233と放電室外側壁部材236とアース部材209’およびシール部材251の構成の変形例を示す図である。この図において、図4の例との差異は、図5に示す例と同様に、石英内筒233の下端部の外周端部にシール部材251がその内側に配置される切り欠き(凹み部)601が配置される点である。
石英内筒233は、図4と同様の弾性体製のシール部材251がアース部材209’と放電室外側壁部材236とが当接する角部(放電室外側壁部材236の内周側下端部)に両者に当接するように配置された状態で、アース部材209’のカバーフランジ部209’’外周側壁と放電室外側壁部材236との間に両者と隙間を開けて挿入されて配置される。この際、シール部材251は前記石英内筒233下端部の切り欠き(凹み部)601内に配置するように、前記石英内筒233が挿入される。
石英内筒233の重量により下方に押圧され、弾性体であるシール部材251が潰れるように変形し、図上左右方向の大きさが上下方向の大きさより大きくなるように変形する。ここで、シール部材251の断面円形状の直径は、凹み部601の幅、深さより大きいものであり、石英内筒233が装着されシール部材251と凹み部601内の表面が当接した状態で、シール部材251の下端部が石英内筒233の下端面よりも下方に突出してアース部材209’上面と当接している。また、シール部材251の外周側端部(図上右端部)は石英内筒の外周側面より外周側に突出して、放電室外側壁面236の内周面と当接している。また、この状態で石英内筒233はアース部材209’上面と放電室外側壁面236内周面とは隙間を介して配置されている。
さらに、図4に示されるように、石英内筒233の上端部にシール部材251’が配置された場合には、シャワープレート234を取り付けた際の重量により、さらにシール部材251に荷重が印加されてその変形が生じる。さらに、この状態で、シール部材251は石英内筒233がアース部材209’上面と放電室外側壁面236内周面とは隙間を介して配置されるよう弾性と形状とを備えていることが望ましい。
このように、シール部材251は、上方から石英内筒233の重量、またはシャワープレート234からの荷重を受けて変形するとともに、その弾性による反力を当接する各部材に印加し、特に、石英内筒233に対して、図上上下方向および左右方向に押圧力を印加する。このことにより、石英内筒233の上または下端部の外周側に沿って配置されたシールにより放電室232中央側に力が印加されて、この押圧力が石英内筒233の位置を調節し石英内筒233の中心と放電室232または試料台204の中心とが略同一となるように働く。このことで、石英内筒233の位置が、空間301の半径方向隙間の大きさの周方向についての不均一さを低減するように決められる。
図6(b)は、図4に示す石英内筒233と放電室外側壁部材236とアース部材209’およびシール部材251の構成の変形例を示す図である。この図において、図4の例との差異は、図5に示す例と同様に、石英内筒233の下端部の外周端部にその角部を略平面状に切り取った形状の切り欠き部(面取り部)602による傾斜面が配置され、この傾斜面602とシール部材251と当接すると共に、石英内筒233の下端部内周側部には、その角部を曲面状に面取りした曲面部603とを備えている点である。
また、この変形例では、放電室外側壁部材236の内周面下端部のシール部材251が当接する箇所に配置されてシール部材251が内部でその表面と当接する切り欠き部(面取り部)604と、アース部材209’’の内側フランジ部状面であってシール部材251が当接する箇所に配置され内側でシール部材251が当接する凹み部605とが配置されている。この場合でも、石英内筒233が放電室232内部に装着された状態で、シール部材251が石英内筒233と放電室外側壁部材236とアース部材209’とに当接して、これらがシール部材251を介して連結される。石英内筒233の下端部内周側端部の曲面部603は、石英内筒233をフランジカバー部209’’と放電室外側壁部材236との間に設置して位置を決める際に、アース部材209’上面等と接触する場合でも石英内筒233の割れや欠け、損傷等が生じないように形成される。また、石英内筒233の上面または下面にシール部材251’,251を配置し、上方のシャワープレート234からの押圧力による変形で生じるシール部材251’,251からの弾性反力によってシャワープレート234と中間部財209’の間に石英内筒233を保持してもよい。
次に、図7を用いて本発明のプラズマ処理装置の別の実施の形態について説明する。図7は、本発明のプラズマ処理装置の別の実施形態に係る真空容器を中心とする構成の概略を示す縦断面図である。
この図において、図2と同様のプラズマ処理装置の真空容器を中心とする構成が示されており、同一の符号が付された部品については説明を省略する。図2の実施の形態との差異は、熱伝達ガスであるHeガスの導入手段に変えて別の処理用ガスの導入経路を備えた点である。図7において、図2と同様な部分については同じ符号を付しており、その具体的な説明は省略する。
本実施の形態では、制御器402、プロセスガスライン201および遮断バルブ202を備えた第一の処理用ガス供給経路と、制御器403’、プロセスガスライン2011’および遮断バルブ2012’とを備えた第二の処理用ガス供給経路とを備えている。
第一、第二の処理用ガス供給経路は、各々が各々の処理用ガスの流量あるいは速度を調節する制御器402,403’および遮断バルブ202,2012’とを備えている。これらにより、各々の経路から異なる処理用ガスが異なる流量や速度で放電室232内の異なる箇所に供給される。
また、これら2つの処理用ガス供給経路同士を連通する経路である管路701とこの管路702上に配置され管路内のガスの流れを調節する調節バルブ702とが配置されている。この連通経路は、プロセスガスライン201,2011’と遮断バルブ202,2012’の下流側で連結されて、一方の処理用ガスを他方のプロセスガスラインに流して、異なる箇所から同一の処理用ガスを供給することができるように構成されている。
その場合、例えば、制御器402からの処理用ガスをプロセスガスライン201および2011’から放電室内に導入する場合、遮断バルブ2012’を閉じ、さらに遮断バルブ702を開放する。制御器402からの処理用ガスは、プロセスガスライン201を通ってバッファ室229に、同時にプロセスガスライン201に連結された管路702を介してプロセスガスライン2011’の遮断バルブ2012’下流側の経路を通って、蓋下部リング237を通る貫通孔から放電室外側壁部材236と石英内筒233との間の空間301へ導入される。
本実施の形態では、遮断バルブ202,2012’の動作と制御器402,403’の動作を調節することで、放電室232内のプラズマの密度や強さ等の処理条件を可変に調節することができる。このように処理条件を変更することで、複数種類の膜が積層された試料やそれぞれで異なる種類の膜が配置された試料等それぞれの膜や試料毎に処理の条件を変更して処理することが必要な場合に迅速に対応でき、処理の効率が向上する。
また、複数の種類のガス源からの処理用ガスをそれぞれの種類のガスを供給する経路を介して放電室に導入する場合には、プロセスガスライン201,2011’同士を連結する管路702を遮断するため、遮断バルブ701を閉じ、それぞれのプロセスガスライン上に配置された遮断バルブを動作させ、各処理用ガスの供給を導入する。
例えば、制御器402からの処理用ガスは、遮断バルブ202の動作によりその流量が調節されてプロセスガスライン201および蓋下部リング237内に形成された貫通路を通りバッファ室229内に供給される。
一方、制御器403’からの処理用ガスは遮断バルブ2012’の動作によりその流量或いはその速度が調節され、プロセスガスライン2011’とこれに連通された蓋下部リング237内の貫通路を通り放電室外側壁部材236とその内側の石英内筒233との間の空間に導入される。
このようにして供給された処理用ガスは、バッファ室229内で一端拡散して後、シャワープレート234に配置された貫通孔を通り放電室232上部であって試料台204の試料載置面上方から放電室232内に導入される。
一方、石英内筒233外周を覆って形成される空間301に供給される処理用ガスは、この空間内に一端拡散した後、石英内筒233の上部に形成された図示を省略した貫通孔を通って放電室232の外周側上部から放電室232内に導入される。
次に、図8を用いて、図7に示す石英内筒233と放電室外側壁部材236とを含む構成について詳細に説明する。図8は、図7に示すプラズマ処理装置に係る真空容器の側壁の構成を拡大して示す縦断面図である。
上記の通り、プロセスガスライン2011’内を通って供給される処理用ガスは、このプロセスガスライン2011’を構成する管(図8に示されていません)路内を通り、この管路と連通する蓋下部リング237に形成された貫通路(ガス導入管)302内を通って、石英内筒233の外周側壁面と蓋下部リング237および放電室外側壁部材236の内周壁面との間に形成される空間301内に導入される。導入された処理用ガスはこの空間301内に拡散してほぼ充填される。
この空間301は、図4に示される空間301と同様、処理ガスにより満たされており、この空間からの処理ガスの漏洩が生じると、放電室232内のプラズマの密度や強度の分布等の処理の条件が変動するため、これを封止するためのシール部材251,251’が、図4に記載の実施例と同様の配置で備えられている。
これらシール部材251或いは251’の構成により、空間301の放電室232の半径方向の隙間長さを周方向について略均等にすることがでる。
また、石英内筒233の周方向には複数の貫通孔804が、円筒の中心について略同心のほぼ同角度の放射状に配置されており、貫通孔804を通り放電室232内に処理ガスが供給される。貫通孔804上記のように配置することにより処理ガスの供給が周方向に不均一となることを抑制し、これによる試料の面内方向の処理の不均一さ、精度の低下が抑制される。なお、本実施の形態では、これら複数の貫通孔804の形状は、0.1〜0.8mm前後となっている。
すなわち、貫通孔804の位置は、形成される処理の条件を実現するために変更され、例えば、放電室232から真空室232’を通るガスの流れの分布に応じて、周方向に貫通孔804の数を局所的に偏らせたり、ガスの種類に応じて高さ位置を変更しても良い。例えば、放電室232内の反応性生物の分布や活性種、イオンの分布を適切に設定するため、その位置が決定される。また、これら貫通孔804の位置は、図8においては、石英内筒233の上部端部近傍に配置されているが、この位置では放電室232内の反応性生物の密度や強度の分布を調節しやすい位置となっている。一方、貫通孔804をより下端側で試料台204上の試料の高さにより近づけて配置した場合には、プラズマ内の解離率の調節をより容易に行ってプラズマ内のイオンの密度や強度を調節しやすい配置となっている。
これら石英内筒233上の貫通孔804は、求められる仕様に応じて配置されるものであり、処理の仕様の変更の際に石英内筒233を適宜に交換して使用することができる。