JP4537508B2 - 低慣性を有する搬送ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼板、鋼管、棒鋼などの鋼材、非鉄金属板、紙、樹脂フィルムなどの各種の製品搬送に長期間にわたり継続使用することができる耐摩耗性に優れた低慣性を有する搬送ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、製鉄工場の精整ラインに組み込まれている鋼材の搬送ロールとしては、従来から耐摩耗性に優れたスチールロールが広く用いられていたが、スチールロールは重くて慣性が高いために鋼材にスリ傷を発生させる要因となることがあった。そこで、慣性の低い搬送ロールとしてスチールよりも軽いアルミニウムよりなるロール芯の外周にベークライト層を形成したものや、カーボンファイバーを補強材として成形されたロール芯の表面にクロムメッキを施したもの(特開平5ー171494号公報など)が提案され実用に供されている。
【0003】
しかしながら、アルミニウムよりなるロール芯の表面に耐摩耗性を有するベークライトの層を形成したものや、カーボンファイバーを補強材として成形されたロール芯の表面にクロムメッキを施したものは、軽量で慣性が低いものの、長期間使用していると、ベークライト層の摩耗変形や、クロムメッキの表面層の剥離により製品を傷付ける場合があった。また、最近ではより一層のコストの低廉化が求められているため、搬送ロールに対しても耐用年数が従来の数年程度のものではなく、十数年以上の長期間にわたって使用できる長寿命のものが要求されるようになってきており、このために単に慣性が低いばかりでなく耐摩耗性にも優れており、しかも、長寿命な搬送ロールの開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとするところは上記のような従来の問題点を解決して、軽量で慣性が低くて製品搬送中におけるスリ傷の発生を防止することができるばかりでなく、耐摩耗性に優れていて長期間にわたって継続使用することができる長寿命で低慣性を有する搬送ロールを提供することを目的として完成されたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る低慣性を有する搬送ロールは、カーボンファイバーを補強材としたCFRP(カーボンFRP)で成形されたロール芯の表面に、表面から浸透拡散したCrと前記カーボンファイバーのCとが結合したクロムカーバイドからなる耐摩耗性を有するクロマイジング金属層を、表面から内側に向け含浸した状態で形成したことを特徴とするものである。なお、ロール芯を中空とすることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図面は、製鉄所における精整ラインに組み込まれて使用される搬送ロールの要部の拡大断面図を示すものであって、図中1はロール芯、2はロール芯1の表面に形成された耐摩耗性を有するクロマイジング金属層である。
【0007】
前記したロール芯1は、カーボンファイバーを補強材としてカーボン系樹脂で成形されたいわゆるカーボンFRP(以下CFRPと記す)よりなるものであって、スチールロールに比べて遙かに軽量であるから低慣性なものである。そして、このロール芯1の表面には耐摩耗性を有するクロマイジング金属層2がその一部をロール芯1の表層に浸透させた状態として層形成されている。前記した表面のクロマイジング金属層2は、クロマイジング処理によって被処理物であるロール芯1の表層にクロムを浸透拡散させ、これによりカーボンファイバーを補強材として成形されたロール芯に耐熱性・耐摩耗性・耐食性等を付与するものである。なお、前記したようなクロマイジング処理は、従来より低炭素鋼やステンレス鋼よりなる被処理物の表面強度を増す必要があるときの耐摩耗性付与する金属浸透法としてはすでに確立されている技術であるが、本発明者はこの金属を対象とされていたクロマイジング処理がカーボンファイバーを補強材とするCFRP製品にも適用可能であることを見出し、これにより本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
ロール芯1の表面に耐摩耗性を有するクロマイジング金属層2を形成するクロマイジング処理を行なうには、被処理物であるカーボンファイバーを補強材として所要形状に成形されたロール芯1を用意し、これを例えばペレット状のCrを多量に含んだ浸透剤が充填してある処理鍋内に埋め込み、この処理鍋を約900℃で数時間加熱処理することによりロール芯1の表面にクロマイジング金属層2をその一部が表層に浸透した状態に形成すればよい。このようにして得られたクロマイジング金属層2は、従来のCrメッキ処理による単一の薄いメッキ層とは異なり、図示のようにCrとCとが結合したクロムカーバイド(Cr-C)がロール芯1の表面から内側に向け深く含浸した状態となっており、従って、従来のメッキ層と異なって非常に剥離し難いうえに、ビッカース硬さ(HV0.3) を800以上とすることができ、非常に硬くて優れた耐摩耗性を発揮するものである。
さらに、クロムカーバイドの含浸量を高めることによって、ビッカース硬さ(HV0.3) 1600以上でより優れた耐摩耗性を有し、しかも、耐剥離性にも優れたクロマイジング金属層2をCFRPよりなるロール芯1の表面に形成できる。
【0009】
このように構成されたものは、ロール芯1が比重の軽いカーボンファイバーを補強材としてカーボン系樹脂で成形されたいわゆるCFRPよりなるものであって、成形加工性がよいうえに軽くて取扱性がよく、しかも、このロール芯1の表面に形成されているクロマイジング金属層2も任意の厚みとすることができるから、従来のスチールローラ等と何等変わることのない外径寸法として、従来のスチールローラーその他この種の搬送ロールと同様にして精整ラインに組み込みんで鋼材の搬送に用いられるものであるが、耐摩耗性を有するクロマイジング金属層2が表面に形成されているロール芯1は全体重量がスチールローラと比較して極めて軽くて使用時における慣性が低く、このため、搬送中に鋼材に疵を付けることがない。また、鋼材と接触するロール芯表面にその一部を表層に浸透させて形成されているクロマイジング金属層2は、ビッカース硬さ(HV0.3) が800以上に達するもので、耐摩耗性に優れているばかりでなく、表層へ一部浸透されていることと相俟って耐剥離性に優れており、十数年以上の長期間にわたって使用しても全く部品交換する必要がなくて大幅なコストダウンを達成できることとなる。このように、従来のロール芯表面にクロムメッキを施したものでは、耐摩耗性を確保できても耐剥離性の問題があり、たとえクロムメッキ層とロール芯表面との間に剥離防止用の下地メッキ層を介在させておいても充分満足できる耐摩耗性が得られなかったのに対し、本発明では耐摩耗性と耐剥離性の問題を同時に解決できるため、耐久性も著しく向上されたものとなる。
また、CFRPよりなるロール芯を中空として更に軽量化すれば、搬送ロールの慣性を格段に低くすることができる。
【0010】
【発明の効果】
本発明は以上の説明からも明らかなように、従来のスチールローラに比べて遙かに軽量で取扱いが容易なうえに慣性が低いので製品搬送中におけるスリ傷の発生を防止することができ、しかも、耐摩耗性と耐剥離性のいずれにも極めて優れているため、十数年以上の長期間にわたって継続使用することができる利点がある。
よって本発明は従来の搬送ロールがもつ問題点を一掃した低慣性を有する搬送ロールとして、産業の発展に寄与するところは極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ロール芯
2 クロマイジング金属層
Claims (2)
- カーボンファイバーを補強材としたCFRP(カーボンFRP)で成形されたロール芯の表面に、表面から浸透拡散したCrと前記カーボンファイバーのCとが結合したクロムカーバイドからなる耐摩耗性を有するクロマイジング金属層を、表面から内側に向け含浸した状態で形成したことを特徴とする低慣性を有する搬送ロール。
- ロール芯が中空である請求項1に記載の低慣性を有する搬送ロール。
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