JP4537219B2 - 時計ムーブメント用テンプ - Google Patents

Description

本発明は、テン真と、リムと、そのリムをテン真に連結させるアームとを備えた時計ムーブメント用テンプであって、テンプばねと関連付けられて、従来の形で時計、特に腕時計のムーブメントの基本周波数を決定する機械振動器を形成するように意図されたテンプに関する。このようなタイプのテンプの知られている構造物が、例えばスイス特許第４９４９９２号で説明されている。

現在、腕時計ムーブメント用のテンプでは、リム（または外リム）やアームを含む輪形状の部品は、銅主体の合金、特にベリリウム銅、洋白、またはニッケルから作られる。そのような合金は、特にその非磁性的性質、高い化学的安定性、十分な機械的特性を含む有利な特質の組合せを提供する。これらの合金の密度は、８ｋｇ／ｄｍ³よりも高い。それらの熱膨張係数は、ＣｕＢｅでおよそ１７・１０⁻⁶／℃、ニッケルでおよそ１５・１０⁻⁶／℃、洋銀でおよそ２１・１０⁻⁶／℃であるが、特に有利なわけではない。

ばねテンプ振動器の振動周波数ｆは、以下によって与えられ：
１／ｆ＝２π・（Ｉ／Ｍ）^0．5
ここでＩはＮｍ／ｒａｄで表した、テンプの回転軸周りの慣性モーメントであり、Ｍはばねの弾性トルクである。腕時計の振動器の通常の周波数は、０．５Ｈｚの段階ごとに、２．５Ｈｚから５Ｈｚに拡大され、それによって、一秒の長さが振動器の振動の整数に対応するようになっている。このようにして、ムーブメントが所与の周波数用に設計され、ばねテンプ・アセンブリは、その周波数を有さねばならない。上記の公式では、適切なテンプ変数は、慣性モーメントであることがわかる。慣性モーメントにおいてテンプ・アームの占める割合は、極めて小さいので、慣性モーメントは、何よりもリムの大きさ（直径および断面積）と密度に依存する。

場合によって、腕時計ムーブメントの設計者は、例えば審美的な理由から、比較的大きな直径のテンプを使用することを望むことがある。慣性モーメントを変更せずに直径を拡大するのは、リムの断面積を小さくするか、あるいはより小さな密度の材料を使用することによって達成することができる。いずれの場合でも、テンプの質量はより小さくなり、それがベアリングの摩擦を、したがって、ムーブメントの（垂直および水平）位置の関数としてのテンプの等時値性の障害を軽減する。しかし、断面積が小さくされたリムは、特にそれに調節ネジを設けなければならない場合、脆弱になり過ぎる。その場合、より軽い材料を使用することを想起することができる。

フランス特許第１２７５３５７号は、アルミニウムなどの軽金属から作られたリムを、そのリムに固定するための外部ラグを有する輪とスポークによって形成された輪形状の弾性支持要素に組み合わせて形成させることによって、軽量化腕時計ムーブメントを提供している。それによって例えばばね鋼の機械的特性の高い輪を作ることが可能になる。固定用ラグのない類似の解決法も、フランス特許第１３０１９３８号に提示されている。

しかし、このようなテンプ構造物は、異なった材料から作られる２つの部品を備え、特に、スチール、アルミニウム主体の合金、銅主体の合金は、熱膨張に大きな差異があるため、耐久性や形状の安定性に対して、単一部品の構造と同じ保障を与えない。それらが生ずる可能性のあるこれらの膨張と変形は、特にアルミニウムから作られたリムに対して、慣性モーメント、したがって振動周波数を大幅に変えることになる。さらにこの２部品構造では、リムの中心を適切に回転軸と合わせることが困難である。
スイス特許第４９４９９２号 フランス特許第１２７５３５７号 フランス特許第１３０１９３８号 ドイツ実用新案第１９８７０７０号

本発明の目的は、同じ周波数で通常よりも大きな直径を有し、あるいは通常の振動器と同じ寸法でより大きな周波数を有するばねテンプ振動器を、上記の欠点を回避して作ることである。本発明の特別の目的は、温度変化に対して十分な機械的抵抗性と、高い寸法安定性とを維持しながら、テンプをより軽量にすることである。

したがって、本発明によるテンプは、リムとアームがチタニウムまたはチタニウムを主体とする合金で作られることを特徴とする。リムとアームは一体に作られることが好ましい。そのことは、上記の２つのフランス特許に対して大きく有利であるが、それらの部片を別個に製造し、溶接または他の方法で組み合わせることも可能である。

腕時計のテン輪を製作するのに、チタニウムを他の軽金属の中から選択することがこれまで想起されず、数十年間アルミニウムが選択されてきたが、それはおそらく加工の困難さが予測されたためである。１９６８年に公開されたドイツ実用新案第１９８７０７０号は、ややゆっくりと回転する平坦な輪である腕時計のガンギ車を製作するのに、ベリリウム銅ではなく、アルミニウムまたはチタニウムなどの軽金属を使用する可能性に言及している。しかし、これまでの経験では、この種の輪に対してチタニウムを工業的に使用することはなかった。さらに、テン輪の材料に必要な物理的特性は、腕時計または時計ムーブメントの他の輪用のそれとはまったく異なり、またはそれよりも大きい。驚くべきことに、この特定の用途にチタニウムを選択することには、多数の技術的利点、例えば、非磁磁性的性質、低密度、高い機械的抵抗性、低い熱膨張率、抗腐食性などがあり、それによって軽量かつ高品質のテン輪を製作することが可能になる。。ベリリウム銅と比較して、チタニウムはおよそ２倍軽く、半分しか熱膨張しないが、同等の高い機械的特性を持つ。アルミニウムと比較して、チタニウムは僅かに重いが、ずっと大きな機械的特性を有し、アルミニウムの熱膨張率の３分の１の膨張率である。このように、本発明は、テン輪であって、その比較的大きな寸法にも関わらず、比較的軽いリムを備え、そのアームが細く弾性で、しかも十分に堅固であるテン輪を、一体で完成することを可能にする。

さらに、比較的細いリムを有する従来の材料から作られたテンプと比較して、チタニウムから作られた同一直径のテンプは、（回転軸に平行な方向に）より高いリムとすることができ、それによって、リムに、テンプネジ用のネジ穴を配置することが可能になった。そのようなことは従来の材料で作られたリムでは不可能であった。

本発明の他の特色が、チタニウムのテン輪を有する腕時計のムーブメント用テンプの実施形態についての、以下の記述から明らかになろうが、これは、本発明の限定しない例として、添付図面を参照してここに提示するものである。

図１および２に示すテンプ１は、従来型のスチール製のテン真を含み、これが支持するテン輪は、リム３と、そのリムと一体に作られた例えば３本のアーム４とを含む。この部片は、以上に説明した軽さという理由から、チタニウムまたはチタニウムを主体とした合金で作られる。アーム４は、穴をあけた中央部分５から放射状に延びている。中央部分５は、肩部７に当接するテン真２の段６にはめ込まれている。従来の形で、テン真２は、ここに示さないばねを取り付けるコレット８と、脱進機レバーと協働するダブル・ローラ９とも支持する。

例えば以下の合金を使用することができる：
グレード２チタニウム：ＡＦＮＯＲ Ｔ４０（Ｆｅ０．２５％、Ｏ０．０４８％、Ｃ０．０６％、Ｎ０．０５％、Ｈ０．０１３％、残り−チタニウム）
グレード５チタニウム：ＡＦＮＯＲ ＴＡ６Ｖ６Ｅ２（Ａｌ５．５％、Ｖ５．５％、Ｆｅ０．６％、Ｎ０．０４％、Ｓｎ２％、Ｃｕ０．６％、残り−チタニウム）

チタニウムの低密度によって、この事例では不等辺四角形状の断面を有するリム３は、必要に応じて調整ネジを受けるネジ穴を備える十分な高さがあり、厚く、抵抗性がある。本事例では、このテンプは、調整ネジによってではなく、リムの外側面の加工凹所１１によって釣り合わされる。

同じ慣性モーメントを有し、かつリムの断面積を同一として、従来型のベリリウム銅テンプ（密度８．２５ｋｇ／ｄｍ³）よも大きな直径を持たせるために、チタニウム（密度４．５ｋｇ／ｄｍ³）でテンプ１を作るというアイデアから計算すると、チタニウム・テンプの平均直径は、２２％大きくすることができると算出された。したがって、審美的観点から得られるこの効果は大きく、しかもリムの機械的特性の損失を招くことはない。

テンプの斜視図である。 図１の線ＩＩ〜ＩＩに沿った断面である。

符号の説明

１ テンプ、２ テン真、３ リム、４ アーム、５ 中央部分、６ 段、７ 肩部、８ コレット、９ ダブル・ローラ、１１ 凹所

Claims (3)

1. テン真（２）と、リム（３）と、そのリムをテン真に連結させるアーム（４）とを備える、腕時計または時計用のテンプ（１）であって、リムとアームが、チタニウムまたはチタニウム主体の合金から作られることを特徴とするテンプ（１）。
2. リム（３）とアーム（４）が一体に作られることを特徴とする請求項１に記載のテンプ。
3. テン真（２）がスチールから作られることを特徴とする請求項１に記載のテンプ。

Images