JP4535656B2 - 除電部材及び処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、枚葉状で処理を行うフレキシブルプリント基板、ガラス基板、液晶用のフィルム基板や連続して処理を行う高分子シート体などの製造工程において、被製造物(ワーク)に対して洗浄、吸液、乾燥、給液等を行うために使用される除電部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
枚葉状フレキシブルプリント基板を例に挙げると、その製造工程は、基板表面に微細な配線パターンを形成させるためのフォトレジストの塗布工程及びフォトマスクを介した露光工程、不要な樹脂や夾雑物を取り除くための各種化学薬品による洗浄工程、それにつづく乾燥工程および夫々の工程の組み合わせによるパターンの積層により成り立っている。
【0003】
上述の各工程における基板(ワーク)への処理は、ローラー部材による接触によるものが多く、例えばフォトレジストを塗布する工程では、枚葉状の基板をベースとなる支持シート等に乗せた状態で搬送しながら、ドクターロールを介してコーティングロールに転写された塗布液を基板表面に接触輪転させることにより、均一な製膜がおこなわれる。
【0004】
また、次工程となる洗浄工程においても、各種洗浄液が接触する状態での回転ブラシロールやスポンジロールによる接触洗浄が行われるとともに、洗浄完了後に設けられた乾燥工程では、基板上に付着した薬液やリンス液を取り除くための乾燥が行われる。
【0005】
乾燥工程は、乾燥加熱エアーにより蒸発させる形態が多く用いられる。ここで、乾燥工程に持ち込まれる水分量がわずかであればその類ではないが、基板上に付着した水分を蒸発によってのみ乾燥させるにはエネルギー的にも工程の効率化といった観点からも芳しくなく、また残留水分の濃縮による不純物の付着などワークの品質や歩留まりにも影響を与えやすいことから、通常はその前段に水分を大まかに除去するための脱水工程が設けられている。
【0006】
脱水手段としては、ワークの形状や状態によって適宜選択使用されており、例えばエアーナイフによる非接触タイプのものもあれば吸水性を有する多孔質ローラーによる接触方式が利用される場合もある。一般的には後者の方式が品質の安定性、ワークに対する影響も少なく、省エネルギー的な観点からも好適に利用されている。
【0007】
また、各々の工程ではワークへの各種部材の接触によって静電気が発生し、基板の帯電を生じやすく、特に乾燥工程ではその現象は著しく、ワークの品質に影響を与えるだけでなく搬送時のトラブルをも併発させる要因の一つとなっている。具体的な現象として、フォトレジストの塗布工程において、基板自体が静電気を帯びた状態で塗布が行われた場合、接触部材との静電引力的なものによって基板が塗布ロールに巻き込まれてしまったり、塗布ロールより転写付着された塗布液が基板上の一部表面ではじけて付着できない個所を生じ、基板表面全体にしかも均質なレジスト膜を形成することができなくなるといった問題点が起こることがあった。
【0008】
さらに、各工程間には、各工程同士を連結してワークの移動を行うための各種の搬送用ローラー部材が設置されており、ローラー部材とワークとの接触によって常に静電気が発生する状態におかれている。とくに、洗浄工程以降の脱水、乾燥工程においては、ワークを取り扱う環境が低湿度であるために静電気の発生量が多く、ワーク自体の帯電が著しい。このため、乾燥終了後のワークの取り扱いにおいて、ワークに蓄積された静電気の放電が作業者に不快感を与えることもあり、また静電気の放電の際に基板上に形成された微細な配線パターンが損傷を受けることもあった。また、ワークが帯電した状態で搬送を行うと、ワークが搬送ローラーに巻き付いてしまったりして各工程での安定したワーク搬送ができず、工程での正確な位置制御も困難となる。
【0009】
このような不都合を解決する方法として、種々の静電気対策が検討され実施されている。静電気は、物質間の接触摩擦によって生じ、素材の種類や条件によって正もしくは負に帯電するものであり、対策としては防止策と除去策の両面からの検討がなされてきている。前者としては、静電気を発生させないための工夫であり、工程で使用する各種部材の素材の選定によって帯電しにくい組み合わせとしたり、搬送時の摩擦をできるだけ生じないような移送手段(特開平7−330149号公報参照)を講じたり、ワークを取り扱う環境として加湿エアーを制御(特開平7−130488号公報参照)した対策などがなされている。また、後者においてはワークとの摩擦によって発生した静電気もしくはワークに帯電した静電気を速やかに除去するための工夫であり、電気的に中和させる方式と気中もしくはグラウンドに漏洩させる自己放電方式とに大別される。
【0010】
中和させる方式としては高電圧を使ってイオン的に中和させる方法が挙げられ、電圧印加式除電気と称せられる方式が一般的であり、針状の電極に高電圧を加えて接地電極間でコロナ放電を起してプラスとマイナスのイオンを生成させてワークの帯電を中和させることができる(特開平5−32342号公報、特開平5−174376号公報、特開平9−102444号公報、特開平6−243988号公報、及び特開2000―162760号公報参照)。また、自己放電型の除電方式では、導電性の素材を接地用電極としてワークの帯電個所に接触させて帯電物の力を利用してコロナ放電させることにより解消することができる(特開平7−251970号公報及び特開平10−223393号公報参照)。
【0011】
いずれの方式ともにその特性を生かした利用がなされており、イオン中和による方式ではワークに対して非接触で処理することができ、ワークの帯電状態をモニターしながら必要なイオン種や量を調節できる方式が採用されてきている。また、接触方式では、特別な制御装置や電源を使用しなくても帯電物自体の力を利用して処理できることから、簡便に比較的安価に設置が可能であることから複数の個所に必要な場合などに利用されることが多い。
【0012】
特に、フレキシブルプリント基板などの製造工程では乾燥工程の後に搬送用ローラー自体に導電性を持たせたものを使用することによって静電気除去が行われることが多い。この導電性ローラーの素材としては、合成ゴム系のものやスポンジ素材が用いられており、ワークへの密着性を高めて完全除電を行うためにも柔軟な弾性が求められる場合もある。
【0013】
近年では、製造工程の効率化、生産性の向上の観点より、生産システムの簡略化、占有設備面積の縮小による設備面積単位の生産性向上が求められており、プリント基板の生産ラインもその例外ではなくあらゆる技術が求められている。静電制御技術についても年々改良が進められており、装置及び部材の両面からの新たな手法が採用されてきている。
【0014】
プリント基板を例にしたその生産ラインでは、最終工程である乾燥工程付近の静電制御技術がその対象となるが、あらゆる素材のローラー部材が多数配置された装置が一般的に採用されている。夫々の工程は、大別すると3つの工程からなっており、まずは乾燥前段のプレ乾燥の役割をなす吸水工程、続いて乾燥工程、最後に除電工程となる。
【0015】
吸水工程では、例えば吸水性を有する多孔質部材からなるローラーが使用される。吸水工程において、ローラー部材には、ワークと接触すると同時に瞬時に表面に付着した水分を吸収するとともに、次工程に持ち込む残留水分量を極力低減しうる機能が求められる。乾燥工程では、ワークを確実に搬送すると共に熱風にも耐えられる耐熱性が求められる。さらに、最終工程での接触部材となるため、ローラー部材からの夾雑物、特に高分子弾性体の場合にはその硬度を下げるために低分子量の可塑剤や生産時に混練される各種添加剤が混練されており、加熱条件におけるそれらブリードアウトによるワークへの汚染が無いものが要求される。さらに、乾燥後の静電気の除去では、高い導電性が求められるとともに、ワークの表面に完全に密着させることによってその効果が発揮されるものであるために、ワークへのダメージを与えないためにもより低圧でワーク表面に容易に密着する柔軟な性能が求められる。
【0016】
夫々の工程に使用されるローラー部材としては、これまでにも種々提案されており、適宜選定使用されている。例えば、吸水性ローラーとしてはポリビニルホルマール樹脂からなる多孔質ローラー(特許第2999745号公報参照)やウレタン系の多孔質ローラー(特開平8−27240号公報参照)が好適に使用されている。ポリビニルホルマール系多孔質ローラーは湿潤時には柔軟な弾性を発現し得るものの乾燥特には硬化してしまうために、ローラーの水分状態を調整する必要がありわずらわしい面を有するが、ワークへのダメージも低く設置環境に合わせて選定使用される。ウレタン系のものは、含水状態に関係なく柔軟な弾性を維持しており、さらに好適である。
【0017】
また、基板を水平に維持しながら搬送させるための搬送ローラーには、合成ゴム系のものや弾性を有さないオレフィン系硬質系樹脂ローラーが使用されており、ワークへのダメージを与えずに確実に安定した搬送が行える特性が求められ、なおかつ該ローラーから発生した夾雑物などによって汚染が起きない素材特性が必要とされており、近年ではワークとの接触を可能な限り抑制した搬送手段も幾つか提案されつつある。
【0018】
さらに、乾燥後のワークに帯電した静電気を除去するための導電性ローラーとしては、上述弾性ローラーに導電性を付与したもの(特開平10−159834号公報、特開平6−173939号公報、特開平9−114186号公報、及び特開平10−268633号公報参照)が使用されており、ワークに対する確実な除電性能を発現するための導電値と弾性が必要とされる。また、通常の搬送ローラーに求められるようなワークに対する汚染がないことも性状として併せ持つ必要がある。
【0019】
上述のように夫々の工程において求められる特性を有するローラー部材が使用されており、いずれも消耗部材とした管理が行われ、ワークの品質維持のためにも一定時間もしくは一定基準の性能を発揮できなくなったものは新しいものへと交換される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、各々の工程毎に装着されるローラーは、上述のように同一ではなく、それぞれの要求特性に合わせて設定されている。このためそれぞれの種類毎に消耗部材としての在庫を持たなければならず、ローラーの装着数も多いためにその管理も煩雑となっていた。
【0021】
また、各工程はその機能より独立して構成しなければならず、おのおのの機能を確保しながら工程を短縮することは、それぞれの工程で必要とされる機能を同時に発現することが必要となる。例えば、吸水性能と導電性能を併せ持ち、なおかつある程度の耐熱性と柔軟な弾力弾性もあり、ワークへの夾雑物の汚染を起さないようなものがあれば、工程の短縮とローラー素材の統一化が図れると推測されるが、それらを満足し得るような素材はこれまで提案されておらず、これによる工程短縮も発案されていない。
【0022】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、洗浄工程や吸液工程や給液工程の短縮化や、各工程で使用される部材の共通化が可能な除電部材の提供を目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る除電部材は、連続気孔を有する導電性多孔質弾性体を備えている。導電性多孔質弾性体は、対象物と接触することにより、前記対象物の洗浄、前記対象物からの液体の吸収、又は前記対象物への液体の供給を行うと共に、前記対象物に帯電した電荷を除去する。
【0024】
すなわち、上記除電部材は、洗浄、吸液、及び給液機能のうち少なくとも一つの機能と、除電機能とを併せ持つ。このため、洗浄工程、吸液工程、及び給液工程のうち少なくとも一つの工程に上記除電部材を設けることにより、対象物の洗浄、対象物からの吸液、又は対象物への給液と、対象物の除電とを、一つの除電部材によって同時に行うことができ、工程の短縮化を図ることができる。
【0025】
また、上記除電部材を、洗浄、吸液、及び給液機能のうち二以上の機能を併せ持つように構成することにより、洗浄工程、吸液工程、及び給液工程において使用される除電部材を共通化させることができる。
【0026】
本発明の第2の態様に係る除電部材は、上記第1の態様に加えて、導電性多孔質弾性体を支持する支持部材をさらに備えている。この支持部材の比電気抵抗値は、10Ωcm以下である。
【0027】
上記構成によれば、対象物に帯電した電荷は、導電性多孔質弾性体を介し、支持部材を通って良好に除去される。
【0028】
上記第2の態様において、導電性多孔質弾性体を略円筒状のローラーとし、支持部材をローラーの内径部に挿入された芯材としても良い。
【0029】
上記構成によれば、ローラーに、洗浄機能や吸液機能や給液機能や除電機能に加えて、対象物を搬送する搬送機能をも併せ持たせることができ、工程の更なる短縮化や部品の共通化を図ることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0031】
図1は本実施形態に係る除電部材を備えた処理装置を示す要部斜視図である。
【0032】
図1に示すように、処理装置に設けられた除電部材1,3は、連続気孔を有する導電性多孔質弾性体である略円筒状のローラー5と、ローラー5の内径部に挿入されてローラー5を支持する支持部材としての導電性の芯材7とによって構成されている。芯材7は電気的にアースされ、その比電気抵抗値は10Ωcm以下である。また、ローラー5は、ズレ変形を生じることなく芯材7と一体的に回転自在な状態で芯材7に保持されている。
【0033】
2つの除電部材1,3は、ローラー5の外周面同士が密着又は近接するように、ほぼ並行に配置され、対象物としてのシート状のワーク9は、ローラー5の間を通る。除電部材1,3の芯材7のうち少なくとも一方は、図示外の駆動源によって回転駆動される。これにより、ワーク9は、ローラー5間に挟まれた状態、すなわち、ワーク9の表裏両面がローラー5の外周面と密着した状態で、ローラー5の回転によって移動する。
【0034】
除電部材1,3は、洗浄工程、吸液工程、乾燥工程、及び給液工程などの様々な工程で使用される。例えば、洗浄工程では、ローラー5間をワーク9が通る前又は最中にワーク9に洗浄液が供給され、ローラー5の外周面によってワーク9の表面や裏面が洗浄される。吸液工程及び乾燥工程では、ローラー5間を通る前にワーク9の表面や裏面に付着した液体がローラー5の外周面によって拭き取られる。給液工程では、ローラー5に予め含浸された液体がローラー5と接触するワーク9の表面や裏面に塗り付けられる。
【0035】
ローラー(導電性多孔質弾性体)5の素材は、特に限定されるものではないが、ポリウレタン、ポリビニルホルマール、ポリオレフィン、合成ゴム、シリコーンゴム、天然物誘導体素材などから選定することができる。吸水性と適度な弾性を有するものとしては、ポリウレタンやポリビニルホルマールが好適に用いられる。特に、親水性のセグメントを導入した化学構造を有する変性ポリウレタンは、水に対する親和性も高く、乾燥状態及び湿潤状態の双方において適度の弾性が得られ、且つ吸水性能も高いため、より好適である。また、導電性多孔質素材を構成する気孔は、各気孔が独立した構造ではなく、表面より吸収した液体が速やかに内部に浸透移行しやすいような連続構造を有する。気孔率は、50%以上90%以下であることが好ましい。平均気孔径は、5μm以上200μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であると吸水後にワークに残留する水分量を低く抑えることができるためより好ましい。この点に関し、ポリオールとイソシアネートとの二液反応によってワンショットで形成するような化学発泡による形成では、物理的にも100μm以下の気孔を形成することは難しく、また触媒となるアミン、有機金属類や気泡調整とするシリコーンオイルなどが介在することが多く、清浄度の観点より好ましくない。このため、気孔形成剤を抽出除去して気孔を形成させる方法(特開昭58−189242号公報参照)により生成されるものがより好ましい。
【0036】
導電性多孔質弾性体に使用される導電性付与剤は、一般的に知られている材料から適宜選定すれば良い。具体的には、例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、金属酸化物、グラファイト、有機系導電剤であるポリアニリン、ポリアセチレンなどを挙げることができ、これら導電性付与剤は1種又は必要に応じて2種以上を複合して用いることができる。
【0037】
また、導電性の付与方法としては、導電性付与剤を多孔質弾性体の原料にあらかじめ混合分散する方法と、多孔質弾性体を形成した後に含浸固定化する方式を挙げることができる。後者の含浸方式は、導電性付与剤をあらかじめ水又は有機溶剤等に分散しておいたものを弾性多孔質弾性体に含浸させて、任意の含浸状態となるように脱液したあとに、加熱乾燥などで含浸液中の分散溶媒を蒸発させることによって、多孔質弾性体内部の気孔骨格表面に導電性付与剤を付着固定化する方法であるが、導電性付与剤を均質に含浸付着させることが難しく、導電度のバラツキを生じ易い。これに対して、前者の導電性付与剤を多孔質弾性体の原料にあらかじめ混合分散する方式は、導電度のバラツキを抑制できるためより好ましい。
【0038】
ローラー5は、芯材7の外周に同心円状に配置された略円筒状の導電性多孔質弾性体であれば良く、芯材7と導電性多孔質弾性体間の通電が確保されればその構成は限定されない。例えば、ローラー5全体が一体的に形成された筒状体であっても良く、またシート状の導電性多孔質素材を芯材に層状に巻き付けその結果として略円筒形状を呈するものであっても良い。
【0039】
ワーク9に帯電した電荷は、ワーク9の表裏面と密着状態で接触するローラー5の外周面に移行し、ローラー5の内部を通過し、芯材7を経由してグラウンドなどへ漏洩する。ところで、芯材7とローラー5との界面の接触状態(芯材7の外周面とローラー5の内径面との接触状態)が悪いと、両者の間に隙間が生じ、ローラー5にズレ変形が発生する可能性がある。ローラー5のズレ変形の可能性が高く、使用用途においてズレ変形が問題となる場合(例えば、ローラー5の回転速度が速い場合やローラー5とワーク9との接触圧が高い場合等)には、芯材7の外周面とローラー5の内径面との間を接着固定すれば良い。この場合、両者間に介在する接着剤が絶縁層とならないようにするため、導電性付与剤などが混合された導電性接着剤を使用することが必要となる。これに対し、使用用途において、芯材7とローラー5との固着強度が問題にならず、且つその界面での導電が妨げられない場合には、両者間を接着しなくても良い。
【0040】
ローラー5の電気特性としては、比電気抵抗値が108Ωcm以下であることが好ましく、さらに105Ωcm以下であるとワーク9との接触による除電効率も著しく高くなるためより好ましい。一方、比電気抵抗値が108Ωcmを超えると、除電効率が著しく低下し、実用に適さないおそれがあるため好ましくない。
【0041】
次に、ローラー5の導電性(導電度)と吸水性能と除電性能とに関する試験結果について説明する。
【0042】
試験用のローラー5として、ウレタン系多孔質弾性体からなる5つのサンプルを用意した。各サンプルは、ポリウレタンエラストマーを主成分とする原料に導電性付与剤としての導電性カーボンブラックと気孔形成剤をあらかじめ混合分散し、これを粘土状に混練して略円筒状で熱処理を施し、得られた成形物から気孔形成剤を抽出除去して気孔を形成させる方法により生成した(多孔質弾性体を生成する基本技術として、例えば特開昭58−189242号公報を参照)。
【0043】
5つのサンプルは、平均気孔径及び気孔率が同じ(25μm及び80%)であり、導電性カーボンブラックの添加率(重量%)のみが異なるように生成した。また、寸法形状も同じ(外径40mm、内径22mm、長さ30mm)になるように生成した。そして、カーボンブラックの添加率と導電度(比電気抵抗値)との関係を求めるため、5つのサンプルの各比電気抵抗値を測定した。その測定結果を、以下の表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004535656
平均気孔径、気孔率、カーボンブラックの添加率、及び導電度(比電気抵抗値)は、それぞれ以下の方法に従って求めた。
【0045】
平均気孔径(μm)は、多孔質弾性体破断面の1視野中に10個の気孔を含む電子顕微鏡写真の3視野について各気孔の長径を測定し、その平均値として求めた。
【0046】
気孔率は、多孔質弾性体の真体積を乾式自動密時計(商品名 アキュピック1330 島津製作所製)により測定し、次式により算出した。
【0047】
気孔率(%)=(V1−V2)/V1×100
ここで、V1は多孔質弾性体の外形寸法によって算出される見掛けの体積であり、V2は真体積である。
【0048】
カーボンブラックの添加率は、次式により算出した。
【0049】
添加率(重量%)=W1/W2×100
ここで、W1は多孔質弾性体の乾燥重量であり、W2は添加したカーボンブラックの乾燥重量である。
【0050】
導電性の指標となる導電度は、比電気抵抗値の逆数によって評価されるため、各サンプルに対して比電気抵抗値を求めた。比電気抵抗値を求める方法としては、図3に示すように、ローラー5がステンレス製の芯材7に装着された状態で、その外周表面上に1cm2のステンレス板21を接触するように配置し、ステンレス板21に約100gの荷重を加えた状態で、芯材7とステンレス板21との間に250Vの電圧を印加した時の電流値を測定して、比電気抵抗値(Ω・cm)を算出した。なお、電流値の測定器には、日置電機社製の3453ディジタルメグオームハイテスタを使用した。
【0051】
表1の結果から、カーボンブラックの添加率(重量%)が増大するに従って、比電気抵抗値(MΩ・cm)が減少する、すなわち導電度が増大することが判る。
【0052】
次に、上記5つのサンプルを用いて行った吸水性能測定試験の結果について説明する。
【0053】
吸水性能測定は、図4に示すように、ワーク9に一定量の水分20を付着させてローラー5間を通過させ、この通過前後の残存水分量(重量)を測定し、ローラー5による水分除去率を算出した。その測定結果を、以下の表2に示す。
【0054】
【表2】
Figure 0004535656
なお、ワーク9にはポリエステルシート(サイズ:幅250mm×長さ500mm×厚さ0.2mm)を使用し、芯材7にはステンレス製の軸体を使用した。ワーク9の搬送速度は100cm/secとし、ローラー5は自身の含水率が15%の状態で試験を行った。また、試験環境は、気温が20°Cで湿度が33%であった。
【0055】
表2の結果から、カーボンブラックの添加率(重量%)が15%以下の範囲において、カーボンブラックの添加率(重量%)の相違、すなわち導電度の相違はローラー5の吸水性能に悪影響を与えることがなく、サンプル1〜5の全てにおいて、良好な吸水性能が得られることが認められた。
【0056】
次に、上記5つのサンプルを用いて行った除電性能測定試験の結果について説明する。
【0057】
除電性能測定は、乾燥状態のワーク9を所定状態に帯電させてローラー5間を通過させ、この通過前後の帯電量を測定した。試験は、各サンプルに対してワーク9に負電荷を帯電させた場合と正電荷を帯電させた場合の2つの場合について行った。その測定結果を、以下の表3に示す。
【0058】
【表3】
Figure 0004535656
なお、ワーク9及び芯材7の諸条件、ワーク9の搬送速度、試験環境は、上記吸水性能測定の場合と同様である。
【0059】
また、帯電量の測定は、静電気測定器の検出部をワーク9の表面から5cm離れた位置に置き、指示計の指針を読み取ることによって行った。静電気測定器は、シシド静電気(株)製の静電表面電位計スタチロン−M2を使用した。
【0060】
表3の結果から、サンプル2〜5(カーボンブラックの添加率(重量%)が6%以上、すなわち比電気抵抗値が25MΩ・cm以下となる範囲)では、良好な除電性能が得られることが認められた。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、ローラー5は、ワーク9と接触することにより、ワーク9の洗浄、ワーク9からの液体の吸収、又はワーク9への液体の供給を行うと共に、ワーク9に帯電した電荷を除去する。より詳細には、ワーク9に帯電した電荷は、ワーク9と密着状態で接触するローラー5を介し、芯材7を通って良好に除去される。
【0062】
すなわち、除電部材1,3は、洗浄、吸液、及び給液機能のうち少なくとも一つの機能と、除電機能とを併せ持つ。このため、洗浄工程、吸液工程、及び給液工程のうち少なくとも一つの工程に除電部材1,3を設けることにより、ワーク9の洗浄、ワーク9からの吸液、又はワーク9への給液と、ワーク9の除電とを、一対の除電部材1,3によって同時に行うことができる。従って、ワーク9を除電するための工程や機構を別途設ける必要がなく、工程の短縮化及び装置の簡素化を図ることができる。
【0063】
また、除電部材1,3を、洗浄、吸液、及び給液機能のうち二以上の機能を併せ持つように構成することもできる。これにより、洗浄工程、吸液工程、及び給液工程において使用される除電部材1,3を共通化させることができ、その管理を容易に行うことができる。
【0064】
加えて、ローラー5にワーク9を搬送する搬送機能をも併せ持たせることができ、工程の更なる短縮化や部品の共通化を図ることができる。
【0065】
なお、上記実施形態では、導電性多孔質弾性体として円筒状のローラー5を使用したが、本発明はこれに限定されない。
【0066】
例えば、図2に示すように、図1の除電部材1に替えて板状の導電性多孔質弾性体15を備えた除電部材13を設けても良い。この場合、導電性多孔質弾性体15は、板状の支持部材17によって支持すれば良い。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、除電部材は、洗浄、吸液、及び給液機能のうち少なくとも一つの機能と、除電機能とを併せ持つため、洗浄工程、吸液工程、及び給液工程のうち少なくとも一つの工程に除電部材を設けることにより、対象物の洗浄、対象物からの吸液、又は対象物への給液と、対象物の除電とを、一つの除電部材によって同時に行うことができ、工程の短縮化を図ることができる。
【0068】
また、除電部材を、洗浄、吸液、及び給液機能のうち二以上の機能を併せ持つように構成することにより、洗浄工程、吸液工程、及び給液工程において使用される除電部材を共通化させることができ、除電部材の種類を統一や省略が可能となる。
【0069】
従って、静電気制御のための特別な電源を必要とする装置の設置が必要でなく、複数の性能を併せ持つ除電部材を活用することによって、工程短縮に寄与した非常にコンパクトで安価な処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る除電部材を備えた処理装置を示す要部斜視図である。
【図2】図1の変形例を示す斜視図である。
【図3】電気抵抗測定の方法を説明するための模式図である。
【図4】吸水性能測定及び除電性能測定の方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
1 除電部材
3 除電部材
5 ローラー(導電性多孔質弾性体)
7 芯材(支持部材)
9 ワーク(対象物)
13 除電部材
15 導電性多孔質弾性体
17 支持部材
20 水分
21 ステンレス板

Claims (6)

  1. 連続気孔を有し、導電性付与剤を含み、湿潤状態で使用される導電性多孔質弾性体を備え、
    前記導電性多孔質体は、親水性のセグメントを導入した化学構造を有する変性ポリウレタン樹脂からなり、原料に導電性付与剤と気孔形成剤とをあらかじめ混合分散し、これを粘土状に混練し所定形状に成形して熱処理を施し、得られた成形物から気孔形成剤を抽出除去することにより生成され、
    前記導電性付与剤の添加率(重量%)は、6%以上15%以下であり、且つ
    前記多孔質弾性体は、対象物と接触することにより、前記対象物の洗浄、前記対象物からの液体の吸収、又は前記対象物への液体の供給を行うと共に、前記対象物に帯電した電荷を除去する
    ことを特徴とする除電部材。
  2. 請求項1に記載の除電部材であって、
    前記導電性多孔質弾性体を支持する支持部材をさらに備え、
    前記導電性多孔質弾性体は、導電性付与剤が混合された導電性接着剤によって前記支持部材に固着されている
    ことを特徴とする除電部材。
  3. 請求項1に記載の除電部材であって、
    前記導電性多孔質弾性体を支持する支持部材をさらに備え、
    前記支持部材の比電気抵抗値は、10Ωcm以下であり、
    前記導電性多孔質弾性体は、略円筒状のローラーであり、
    前記支持部材は、前記ローラーの内径部に挿入された芯材である
    ことを特徴とする除電部材。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の除電部材であって、
    前記導電性多孔質弾性体の比電気抵抗値は、108Ωcm以下である
    ことを特徴とする除電部材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の除電部材であって、
    前記導電性多孔質弾性体の気孔率は、50%以上90%以下であり、平均気孔径は、5μm以上200μm以下である
    ことを特徴とする除電部材。
  6. 洗浄工程、吸液工程、及び給液工程のうち少なくとも一つの処理工程を有する処理装置において、
    前記処理工程に、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の除電部材を設ける
    ことを特徴とする処理装置。
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