JP4535356B2 - プラズマ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波電磁界によりプラズマを生成して所定の処理を行うプラズマ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置やフラットパネルディスプレイの製造において、酸化膜の形成や半導体層の結晶成長、エッチング、またアッシングなどの処理を行うために、プラズマ装置が多用されている。これらのプラズマ装置の中に、アンテナから処理容器内へ高周波電磁界を供給して高密度プラズマを発生させる高周波プラズマ装置がある。この高周波プラズマ装置は、プラズマガスの圧力が比較的低くても安定してプラズマを生成することができるので、用途が広いという特色がある。
図12は、従来の高周波プラズマ装置を用いたエッチング装置の一構成例を示す断面図である。また、図13は、このエッチング装置で使用されるパッチアンテナの構成を示す図である。ここで、図13(a)は、図12においてXIIIa−XIIIa′線方向からみたときの平面図、図13(b)は、座標系を示す図である。
【0003】
図12に示すエッチング装置では、上部が開口した円筒形状の処理容器511と、この処理容器511の上部開口を塞ぐ誘電体板512とにより、密閉容器が形成されている。処理容器511の底部には真空排気用の排気口515が設けられており、また処理容器511の側壁にはエッチングガス導入用のノズル517が設けられている。処理容器511内には、エッチング対象の基板521を置くための載置台522が収容されている。この載置台522にはバイアス用の高周波電源526が接続されている。
誘電体板512の上部には、この誘電体板512を介して処理容器511内に高周波電磁界を供給するパッチアンテナ530が配置されている。また、誘電体板512及びアンテナ530の周囲はシールド材518によって覆われている。
アンテナ530は給電用の高周波電源545に接続されている。
【0004】
パッチアンテナ530は、接地された導体板からなる地板531と、この地板531に対向配置され共振器を構成する導体板(以下、パッチという)532とを有している。図13(a)に示すように、パッチ532は直径L1≒λg の円形(平面視)をしている。λg はパッチ532と地板531との間における電磁界の波長である。ここで、パッチ532がxy平面上にあり、その中心Oが座標系の原点にあるとする。
【0005】
図12に示すように、このパッチアンテナ530では、パッチ532の中心Oに給電点が設けられている。アンテナ530への給電には同軸線路541が用いられ、その外部導体542が地板531に接続され、内部導体543がパッチ532の中心Oに接続される。
また、パッチ532は、その中心Oからみておよそλg/4離れた等方的な位置にある3点P1,P2,P3において、ショートピン533を介して地板531に接続されている。なお、点P1はx軸上にあるものとする。
【0006】
図14は、パッチアンテナ530の動作原理の説明図である。パッチ532の直径L1はおよそλg であるので、高周波電源545からパッチ532の中心Oに供給された電流は共振して定在波となる。このときのx軸上における電圧波形は、図14(b)に示すように、給電点である中心Oで腹となり、接地された点P1で節となる。パッチ532の周縁部では同位相で電圧が変化するので、パッチ532の外周部に沿ってできる磁流は、図14(a)に示すように、中心Oから見て全周にわたって同じ向きとなる。したがって、パッチアンテナ530には、TM01モードが励起され、TM11モードは励起されない。
【0007】
パッチアンテナ530は、上述した磁流を波源として高周波を放射する。この高周波の電磁界を誘電体板512を介して処理容器511内に供給すると、この電磁界は処理容器511内のガスを電離させ、処理対象の基板521の上部空間550にプラズマを生成する。このプラズマは処理容器511内に拡散して行き、載置台522に印加されたバイアス電圧によってプラズマのエネルギーや異方性がコントロールされて、エッチング処理に利用される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、パッチアンテナ530のモードがTM01モードである場合、高周波電磁界の指向性は図12に示すように、パッチ532の主面(すなわちxy面)と平行な水平方向となる。したがって、プラズマ生成に寄与する前にシールド材518又は処理容器511で熱エネルギーに変換されてしまう電力が大きくなるので、効率よくプラズマを生成できないという問題があった。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、プラズマ生成の際の電力効率を向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のプラズマ装置は、処理容器内に高周波を供給するアンテナが、処理容器内に配置された載置台に対向配置された導体板と、この導体板からみて載置台と反対側に対向配置された地板と、導体板に接続された複数の第1の給電線とを備え、第1の給電線のそれぞれが、導体板の外周と直交する導体板上の少なくとも1本の第1の直線上に2本ずつ互いに離間して接続され、導体板と地板との間における電磁界の波長がλg であるとき、第1の直線のそれぞれの長さが、略(N+1/2)×λg (Nは0以上の整数)であることを特徴とする。ここで、導体板の外周と直交する第1の直線とは、例えば導体板の平面形状が矩形の場合には、矩形の一辺に平行な直線であり、円形の場合には、円の中心を通る直線である。
【0010】
導体板の1本の第1の直線上に2本の第1の給電線が接続され、その第1の直線の長さは略(N+1/2)×λg であるので、これら2本の給電線から供給された電流は第1の直線上で共振して定在波となる。このとき、2本の給電線による給電により、定在波のモードが規定される。第1の直線上における電圧波形は、両端が腹、波数がN+1/2となるから、両端における電圧変化は互いに逆位相となる。したがって、第1の直線の両端に沿って、導体板の中心から見て互いに逆向きの磁流ができる。したがって、このアンテナでは、TM11モードが選択的に励起されることがわかる。TM11モードでは、高周波の指向性は導体板の主面に対して垂直方向となるので、被処理体が配置される載置台の方向に高周波が直接向かうことになる。したがって、処理容器などに吸収される電力を低減して、プラズマ生成に寄与する電力を増加させることができる。
【0011】
ここで、アンテナを構成する導体板上の第1の直線が、導体板の中心を通るようにしてもよい。これにより、導体板上において第1の直線と直交する方向に電流が流れないので、この方向への高周波の放射を抑制することができる。
【0012】
また、上述したプラズマ装置において、アンテナが、対応する第1の直線と直交する導体板上の少なくとも1本の第2の直線上に少なくとも2本ずつ互いに離間して導体板に接続された複数の第2の給電線を更に備え、第2の直線のそれぞれの長さが、略(M+1/2)×λg (Mは0以上の整数)であり、第2の給電線のそれぞれが、高周波が円偏波となるように、対応する第1の給電線よりも同じ程度遅れた位相で給電するように構成してもよい。この場合、上述したのと同じ原理で、第2の直線の方向にもTM11モードが励起される。また、アンテナから処理容器内に供給される高周波を円偏波とし、被処理体を置く載置台の載置面に垂直な軸の周りに電磁界を回転させることにより、この電磁界によって生成されるプラズマの分布も回転するので、時間平均をとったときのプラズマ分布の均一性を改善できる。
ここで、アンテナから供給される高周波は完全な円偏波でなくてもよく、偏波率が少なくとも50%以上、好ましくは70%以上の円偏波であればよい。
【0013】
ここで、アンテナを構成する導体板上の第1及び第2の直線が、導体板の中心を通るようにしてもよい。これにより、第1の給電線から供給された電流は導体板の第2の直線上には流れず、この逆に第2の給電線から供給された電流は第1の直線上には流れないので、所望の円偏波とは逆旋の円偏波(交差偏波)の発生を抑制することができる。
また、同じ第1の直線上に接続された2本の第1の給電線の間隔、又は、同じ第2の直線上に接続された2本の第2の給電線の間隔を、λg/2としてもよい。
これにより、アンテナの設計が容易になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここでは、本発明によるプラズマ装置をエッチング装置に適用した場合を例に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態であるエッチング装置の構成を示す図である。この図1には、一部構成について断面構造が示されている。
【0015】
図1に示したエッチング装置は、上部が開口した円筒形状の処理容器11を有している。この処理容器11は、アルミニウムなどの導電部材で形成されている。
処理容器11の上部開口には、厚さ20〜30mm程度の石英ガラス又はセラミック(Al2 O3 やAlNなど)などからなる誘電体板12が配置されている。処理容器11と誘電体板12との接合部はOリングなどのシール部材13を介在させており、これにより処理容器11内部の気密性を確保している。
【0016】
処理容器11の底部には、セラミックなどからなる絶縁板14が設けられている。また、この絶縁板14及び処理容器11底部を貫通する排気口15が設けられており、この排気口15に連通する真空ポンプ(図示せず)により、処理容器11内を所望の真空度にすることができる。
また、処理容器11の側壁には、処理容器11内にArなどのプラズマガスを導入するためのプラズマガス供給ノズル16と、エッチングガスを導入するための処理ガス供給ノズル17とが上下に設けられている。これらのノズル16,17は石英パイプなどで形成されている。
【0017】
処理容器11内には、エッチング対象の基板(被処理体)21を載置面に置く載置台22が収容されている。この載置台22は、処理容器11の底部を遊貫する昇降軸23によって支持されており、上下動自在となっている。また、載置台22には、マッチングボックス25を介してバイアス用の高周波電源26が接続されている。この高周波電源26の出力周波数は数百kHz〜十数MHzの範囲内の所定周波数とする。なお、処理容器11内の気密性を確保するため、載置台22と絶縁板14との間に、昇降軸23を囲むようにベローズ24が設けられている。
【0018】
また、誘電体板12の上部には、この誘電体板12を介して処理容器11内に高周波電磁界を供給するパッチアンテナ30が配置されている。このパッチアンテナ30は、誘電体板12により処理容器11から隔離されており、処理容器11内で生成されるプラズマから保護されている。また、誘電体板12及びパッチアンテナ30の周囲はシールド材18によって覆われているので、パッチアンテナ30からの高周波電磁界がエッチング装置の外部に漏れることはない。
【0019】
パッチアンテナ30は、接地された導体板からなる地板31と、共振器を構成する導体板(以下、パッチという)32とを有している。このパッチ32は地板31に対して所定の間隔をもって対向配置され、その間隔はそれぞれの中心を接続するショートピン33により保持されている。以上の地板31、パッチ32及びショートピン33は、銅又はアルミニウムなどにより形成されている。そして、パッチアンテナ30は、パッチ32側が下となり、載置台22の載置面及び誘電体板12と対向するように配置されている。
【0020】
パッチアンテナ30では2点給電が行われる。この給電には2本の同軸線路(第1の給電線)41A,41Bが用いられる。ただし、同軸線路41Bは同軸線路41Aよりも電気長が180゜長くなっている。ここでいう電気長とは、同軸線路41A,41Bの長さを、給電電力がそれぞれを通過したときの位相差で表したものであり、この場合パッチアンテナ30への給電位相が180゜異なることを意味している。
同軸線路41A,41Bは、それぞれマッチングボックス44A,44Bを介して、給電用の高周波電源45に接続されている。この高周波電源45の出力周波数はおよそ100MHz〜8GHzの範囲内の所定周波数とする。また、同軸線路41A,41Bのそれぞれにマッチングボックス44A,44Bを挿入して、インピーダンスのマッチングを図ることにより、電力の使用効率を向上させることができる。
【0021】
図2は、図1においてIIa−IIa′線方向から見たときのパッチ32の平面図である。パッチ32の平面形状は、図2(a)に示すように、一辺の長さLがおよそ3×λg/2の正方形をしている。λg はパッチ32と地板31との間における電磁界の波長であり、その値はパッチ32と地板31との間の誘電率により決まる。ここで、パッチ32の中心Oが座標系の原点にあり、パッチ32の各辺はそれぞれx軸,y軸に平行であるとする。
この場合、パッチ32の2つの給電点P,Qは、x軸(第1の直線)上において中心Oから反対方向におよそλg/4離れた2点に設けられている。図1に示すように、各給電点P,Qには、それぞれ同軸線路41A,41Bの内部導体43A,43Bが接続されているが、給電点Qに接続された同軸線路41Bは給電点Pに接続された同軸線路41Aよりも電気長が180゜だけ長くなっていることは、上述した通りである。なお、同軸線路41A,41Bの外部導体42A,42Bは、地板31に接続されている。
【0022】
ここで、図2を参照して、パッチアンテナ30の動作原理を説明する。
2つの同軸線路41A,41Bはパッチ32のx軸上に接続され、パッチ32のx軸方向の長さはおよそ3×λg/2であるので、2つの同軸線路41A,41Bから供給された電流はx軸方向で共振して定在波となる。このとき、2つの給電点P,Qで給電することにより、定在波のモードが規定される。x方向の電圧波形は図2(b)に示すようになり、両端が腹、波数が3/2となるので、両端における電圧変化は互いに逆位相となる。したがって、図2(a)に示すように、パッチ32のx軸方向の両端、すなわちy軸に平行な2辺に沿って、パッチ32の中心から見て逆向きの磁流ができる。すなわち、一方の磁流の向きがy軸の正方向(又は負方向)のときは、他方の磁流の向きもy軸の正方向(又は負方向)となる。したがって、このパッチアンテナ30では、TM11モードのみが励起され、TM01モードは励起されない。なお、2つの磁流を波源として高周波が放射される。
【0023】
次に、図1に示したエッチング装置の動作を説明する。
基板21を載置台22の載置面に置いた状態で、処理容器11内を例えば0.01〜10Pa程度の真空度にする。次に、この真空度を維持しつつ、プラズマガス供給ノズル16からプラズマガスとしてArを供給し、処理ガス供給ノズル17からCF4 などのエッチングガスを流量制御して供給する。
処理容器11内にプラズマガス及びエッチングガスが供給された状態で、パッチアンテナ30の2つの給電点P,Qに、互いに等振幅かつ180゜異なる位相で給電する。これによりパッチアンテナ30はTM11モードに選択的に励起される。TM11モードでは、高周波電磁界の指向性はパッチ32の主面(xy面)に対して垂直なz軸方向となるので、電磁界はエッチング対象である基板21がある方向に直接向かうことになる。
【0024】
この電磁界は処理容器11内のArを電離させて、基板21の上部空間50にプラズマを生成する。このプラズマは処理容器11内に拡散して行き、載置台22に印加されたバイアス電圧によってプラズマのエネルギーや異方性がコントロールされて、エッチング処理に利用される。
このエッチング装置では、上述したように電磁界が基板21のある方向に直接向かうので、図12に示した従来のエッチング装置と比較して、プラズマ生成に寄与する前にシールド材18又は処理容器11で熱エネルギーに変換されてしまう電力を低減し、プラズマ生成に寄与する電力を増加させることができる。よって、従来よりもプラズマ生成の際の電力効率を向上させることができる。
【0025】
なお、図2(a)において、2つの給電点P,Qはパッチ32のx軸上にあるとしたが、これによりパッチ32上においてy軸方向に電流が流れなくなるので、パッチ32のx軸に平行な2辺からの高周波の放射を抑制することができる。
しかし、この放射による影響が許容される範囲内で、x軸上から外れた位置に給電点P,Qを設けてもよい。
また、2つの給電点P,Qは、パッチ32の中心Oから等距離の位置に設けられるとしたが、中心Oからの距離がそれぞれ異なる位置に給電点P,Qを設けてもよい。ただし、定在波の節に当たる位置では電位が0(ゼロ)になるので、この位置又はその近傍に給電点P,Qを設けるのは得策でなく、定在波の節に当たる位置からλg/16以上離れた位置に給電点P,Qを設けることが望ましい。
【0026】
さらに、パッチ32にできる定在波のモードを2点給電によって規定できればよいので、必ずしも、2つの給電点P,Q間の距離dをλg/2、給電位相差を180゜とする必要はない。また、両者に相関関係をもたせる必要もない。ただし、上述した定在波の節と給電点P,Qとの関係から、給電点P,Q間の距離dの望ましい最小値はλg/8程度となる。
また、パッチアンテナ30のパッチ32の一辺の長さLは、略(N+1/2)×λg (Nは0以上の整数)であればよい。
【0027】
また、パッチ32の平面形状は、正方形ではない矩形であってもよい。この場合、x軸方向の長さがL1 ≒(N+1/2)×λg であるとき、y軸方向の長さは{(N′−1)+1/2}×λg <L2 <(N′+1/2)×λg とするとよい(N′は、0≦N′≦Nの整数)。
また、パッチの平面形状は、図3に示すパッチ132のように円形であってもよい。この場合、円の直径Lはおよそ1.17×(N+1/2)×λg であればよい。この寸法は上述の略(N+1/2)×λg に含まれる概念である。図3に示したL≒1.8×λg はN=1の場合の例である。
【0028】
また、図4に示すように、パッチアンテナ30を構成する地板31とパッチ32との間に、セラミックなどからなる誘電体板34を挿入してもよい。これにより、パッチアンテナを小型化することができる。この場合、パッチ32と地板31とを接続するショートピン33は、必ずしも設けなくてもよい。
また、図2(a)ではパッチ32のx軸上に2つの給電点P,Qを設けるとしたが、図5に示すようにパッチ32の外周と直交する2以上の直線(第1の直線)x1,x2上に2つずつ給電点(P1,Q1),(P2,Q2)を設けるようにしても差し支えない。なお、図5ではマッチングボックスの記載を省略している。
【0029】
(第2の実施の形態)
図6は、図1に示したパッチアンテナ30を用いて円偏波を生成するときの構成を示す図である。この図において、図1,図2と同一部分を同一符号をもって示し、適宜その説明を省略する。
円偏波を生成する場合には、共振器を構成するパッチ32に更に2つの給電点R,Sを設ける。これらの給電点R,Sは、y軸(第2の直線)上において中心Oから反対方向におよそλg/4離れた2点に設けられる。
【0030】
各給電点R,Sには、それぞれ同軸線路(第2の給電線)41C,41Dの内部導体43C,43Dが接続されているが、給電点Sに接続された同軸線路41Dは給電点Rに接続された同軸線路41Cよりも電気長が180゜だけ長くなっている。さらに、同軸線路41C,41Dは、同軸線路41A,41Bよりも電気長がそれぞれ90゜だけ長くなっている。したがって、給電点R,Sへの給電位相差は180゜となり、また給電点R,Sへは給電点P,Qよりもそれぞれ90゜遅れた位相で給電されることになる。なお、同軸線路41C,41Dには、それぞれマッチングボックス44C,44Dが挿入されている。
【0031】
図7は、図6に示したような4点給電によるパッチアンテナ30の動作原理の説明図であり、図7(a)にはパッチ32の周囲にできる磁流、図6(b)にはx軸上の電圧波形、図6(c)にはy軸上の電圧波形が示されている。
パッチ32のx軸上にある2つの給電点P,Qに等振幅で給電すると、図2を用いて説明したのと同じ原理で、y軸に平行な2つの磁流を波源として高周波が放射される。この高周波はx軸に平行な直線偏波となる。同じく、パッチ32のy軸上にある2つの給電点R,Sに等振幅で給電すると、x軸に平行な2つの磁流を波源として高周波が放射される。この高周波はy軸に平行な直線偏波となる。このとき、給電点Q,Rにはそれぞれ給電点P,Qよりも90゜遅れた位相で給電されるので、y軸に平行な直線偏波はx軸に平行な直線偏波よりも位相が90°遅れることになる。これら2つの直線偏波は、振幅が等しく、空間的に直交しており、しかも位相が90゜異なっているので、円偏波となる。この場合、図1の鉛直方向(z軸の正方向)へは右旋円偏波となる。
【0032】
図1,図2に示したように2点給電とした場合、パッチアンテナ30が放射する高周波はx軸に平行な直線偏波となるので、その電界分布は図8に示すようになる。すなわち、xz面では図8(a)に示すように比較的均一であるが、yz面では図8(b)に示すように偏りが存在する。
図6に示したように4点給電とした場合でも、x軸又はy軸に平行な直線偏波自体には電界分布に偏りが存在するが、円偏波を生成して載置台22の載置面に垂直な軸の周りに電磁界を回転させることで、この電磁界によって生成されるプラズマの分布も回転するので、時間平均で均一なエッチング処理が可能となる。
【0033】
なお、4点給電をして円偏波を生成する場合、パッチ32の平面形状は、正方形及び円形などの90°回転対称形状(パッチ32の中心軸の周りに90゜回転させたときに重なる形状)であってもよいし、長方形など、その中心Oから見た直交する2方向の長さが異なる形状であってもよい。後者の場合、給電点P,R及び給電点Q,Sの給電位相差を90°とはせず、上記2方向の長さによって調整する。また、前者及び後者の何れの場合でも、直行する2方向の長さを略(N+1/2)×λg ,略(M+1/2)×λg (N,Mは0以上の整数)とすることが条件となる。
また、図6に示した4点給電方式では、図1の鉛直(z軸の正方向)に右旋円偏波となるように構成したが、左旋円偏波とするには、同軸線路41C,41Dの電気長をそれぞれ同軸線路41A,41Bよりも90゜だけ短くすればよい。
【0034】
また、パッチアンテナ30が放射する高周波は完全な円偏波でなくてもよい。
図9に示すような長軸の長さが2a、短軸の長さが2bである円偏波の偏波率をb/a(×100)%と定義すると、偏波率が50%以上、好ましくは70%以上の円偏波を生成することにより、プラズマの分布を改善することができる。ここで、円偏波の偏波率の調整方法について簡単に説明する。
まず、互いに直交する2つの直線偏波の位相差が90゜であるが、振幅値が互いに異なる場合、2つの直線偏波をasin(ωt+π/2),bsin(ωt)と表せば、偏波率は単に振幅値比b/a(×100)%で求められる。したがって、70%以上の偏波率を得るには、振幅値比を70%以上にしておけばよい。
【0035】
また、互いに直交する2つの直線偏波の振幅値が等しいが、位相差が90゜でない場合、2つの直線偏波をsin(ωt−θ),sin(ωt)と表せば、位相差θが90゜付近の値をとるときの偏波率の位相差依存性は図10に示すようになる。したがって、70%以上の偏波率を得るには、位相差θをおよそ70゜〜110゜程度に調整すればよい。
【0036】
また、図5と同様に2つの直線x1,x2上に2つずつ給電点(P1,Q1),(P2,Q2)を設けた場合には、図11に示すように、直線x1,x2にそれぞれ直交する2つの直線(第2の直線)y1,y2上に2つずつ給電点(R1,S1),(R2,S2)を設ける。そして、給電点P1,R1間、給電点Q1,S1間、給電点P2,R2間、給電点Q2,S2間の給電位相差が同程度となるように給電すればよい。
以上では本発明のプラズマ装置をエッチング装置に適用した場合を例に説明したが、例えばプラズマCVD装置などの他のプラズマ装置に適用してもよいことは言うまでもない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のプラズマ装置では、アンテナに2点給電してTM11モードを選択的に励起させる。これにより、被処理体が配置されている方向に高周波が直接向かうことになるので、処理容器などに吸収される電力を低減して、プラズマ生成に寄与する電力を増加させることができる。これにより、プラズマ生成の際の電力効率を向上させることができる。
また、アンテナから処理容器内に供給される高周波を円偏波とし、被処理体を置く載置台の載置面に垂直な軸の周りに電磁界を回転させることにより、この電磁界によって生成されるプラズマの分布も回転するので、時間平均をとったときのプラズマ分布の均一性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態であるエッチング装置の構成を示す図である。
【図2】 図1においてIIa−IIa′線方向から見たときのパッチの平面図である。
【図3】 パッチの変形例を示す平面図である。
【図4】 パッチアンテナの変形例を示す断面図である。
【図5】 パッチアンテナの変形例を示す図である。
【図6】 図1に示したパッチアンテナを用いて円偏波を生成するときの構成を示す図である。
【図7】 4点給電によるパッチアンテナの動作原理の説明図である。
【図8】 図1に示したパッチアンテナが構成する電界分布の概念図である。
【図9】 円偏波の偏波率を説明するための図である。
【図10】 円偏波の偏波率の位相差依存性を示す図である。
【図11】 パッチアンテナの変形例を示す図である。
【図12】 従来の高周波プラズマ装置を用いたエッチング装置の一構成例を示す断面図である。
【図13】 図12に示したパッチアンテナの構成を示す図である。
【図14】 図12に示したパッチアンテナの動作原理の説明図である。
【符号の説明】
11…処理容器、12…誘電体板、13…シール部材、21…基板、22…載置台、30…パッチアンテナ、31…地板、32…導体板、41A〜41D…同軸線路、42A,42B…外部導体、43A〜43D…内部導体、45…高周波電源、O…導体板の中心、P〜S…給電点。
Claims (10)
- 気密な処理容器内に配置され被処理体を置く載置台と、この載置台に対向配置され前記処理容器内に高周波を供給するアンテナとを備えたプラズマ装置において、
前記アンテナは、
前記載置台に対向配置された矩形導体板と、
この矩形導体板からみて前記載置台と反対側に対向配置された地板と、
前記矩形導体板に接続された2本の第1の給電線とを備え、
前記第1の給電線は、前記矩形導体板の外周と直交する前記矩形導体板上の第1の直線上に互いに離間して接続され、
前記矩形導体板の辺のうち前記第1の直線と平行なものの長さは、前記矩形導体板と前記地板との間における電磁界の波長がλg であるとき、(N+1/2)×λg (Nは0以上の整数)である
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項1記載のプラズマ装置において、
前記第1の直線は、前記矩形導体板の中心を通る
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項1記載のプラズマ装置において、
前記アンテナは、前記第1の直線と直交する前記矩形導体板上の第2の直線上に互いに離間して前記矩形導体板に接続された2本の第2の給電線を更に備え、
前記矩形導体板の辺のうち前記第2の直線と平行なものの長さは、(M+1/2)×λg (Mは0以上の整数)であり、
前記第2の給電線のそれぞれは、前記高周波が円偏波となるように、対応する前記第1の給電線よりも90°遅れた位相で給電する
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3記載のプラズマ装置において、
前記第1の直線は、前記矩形導体板の中心を通り、かつ、
前記第2の直線は、前記矩形導体板の中心を通る
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項1又は2記載のプラズマ装置において、
2本の第1の給電線の間隔は、λg/2である
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3又は4記載のプラズマ装置において、
2本の第1の給電線の間隔及び2本の第2の給電線の間隔は、λg/2である
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項5記載のプラズマ装置において、
前記第1の給電線は、矩形導体板の中心からλg/4離れた2点に接続されている
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項6記載のプラズマ装置において、
前記第2の給電線は、矩形導体板の中心からλg/4離れた2点に接続されている
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項1,2,5,7のいずれか1項に記載のプラズマ装置において、
前記矩形導体板の辺のうち前記第1の直線と平行なものの長さは、(3/2)×λg である
ことを特徴とするプラズマ装置。 - 請求項3,4,6,8のいずれか1項に記載のプラズマ装置において、
前記矩形導体板の辺のうち前記第2の直線と平行なものの長さは、(3/2)×λg である
ことを特徴とするプラズマ装置。
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