以下、図面を参照して、本発明に係る物体検出装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る物体検出装置を、車両に搭載される衝突軽減装置に適用する。本実施の形態に係る衝突軽減装置は、検出対象として前方車両を検出し、前方車両との衝突を防止/軽減するために各種制御を行う。特に、本実施の形態に係る衝突軽減装置では、前方車両を検出するためにミリ波レーダとステレオカメラの2つのセンサを備え、ミリ波レーダによる検出物体とステレオカメラによる検出物体とを照合することによって前方車両を検出する。本実施の形態には、照合処理の違いにより2つの形態があり、第1の実施の形態が各センサについて検出物体に対する追跡処理を行わない形態であり、第2の実施の形態が各センサについて検出物体に対する追跡処理を行う形態である。
図1〜図16を参照して、第1の実施の形態に係る衝突軽減装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る衝突軽減装置の構成図である。図2は、本実施の形態に係るレーダ物標、ステレオ画像物標及びフュージョン物標の説明図である。図3は、第1の実施の形態に係る前回フュージョン物標とレーダ物標との照合方法の説明図である。図4は、第1の実施の形態に係る前回フュージョン物標とステレオ画像物標との照合方法の説明図である。図5は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標との照合方法の説明図である。図6は、本実施の形態に係るステレオカメラによる物体検出によって前方車両を分割して検出した場合の一例であり、(a)が左右両側をステレオ画像物標として検出した場合であり、(b)が右側のみをステレオ画像物標として検出した場合である。図7は、本実施の形態に係る1個のレーダ物標と複数個のステレオ画像物標との照合方法の説明図である。図8は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標とが1対1で対応しており、ステレオ画像物標の範囲内にレーダ物標が存在する場合の横位置及び横幅の設定方法の説明図である。図9は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標とが1対1で対応しており、ステレオ画像物標とレーダ物標とが離間閾値T以内で離れている場合の横位置及び横幅の設定方法の説明図である。図10は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標とが1対1で対応しており、ステレオ画像物標とレーダ物標とが離間閾値Tより離れている場合の横位置及び横幅の設定方法の説明図である。図11は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標とが1対複数で対応している場合の横位置及び横幅の設定方法の説明図である。図12は、本実施の形態に係るレーダ物標とステレオ画像物標とが1対複数で対応している場合の横位置及び横幅の設定方法の説明図である。図13は、本実施の形態に係るフュージョン物標の情報のバッファリングのタイミングの説明図である。図14は、本実施の形態に係るバッファリングデータの更新の説明図である。図15は、本実施の形態に係るステレオカメラで追跡できなかった場合のフュージョン物標の情報の補間の説明図である。図16は、本実施の形態に係るステレオカメラで連続して追跡できなかった場合のフュージョン物標の情報の補間及び補間中止の説明図である。
衝突軽減装置1は、前方車両を検出し、前方物体を検出した場合には衝突の可能性に応じてブレーキ制御、サスペンション制御、シートベルト制御及び警報制御を行う。衝突軽減装置1は、前方車両を検出するために、ミリ波レーダによる情報に基づいてレーダ物標を設定するとともにステレオカメラによるステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を設定し、レーダ物標とステレオ画像物標との照合によってフュージョン物標(前方車両)を設定する。この際、衝突軽減装置1では、レーダ物標、ステレオ画像物標それぞれについて追跡を行わずに、レーダ物標またはステレオ画像物標と前回フュージョン物標との照合を行う。特に、衝突軽減装置1では、ステレオカメラによる物体検出が不安定な場合でもフュージョン物標に高精度な横位置及び横幅を設定するために、レーダ物標とステレオ画像物標との位置関係によって横位置及び横幅の設定方法を変更、フュージョン物標を設定する際のレーダ物標とステレオ画像物標との1対複数の対応を許容、過去のフュージョン物標の情報の平滑化及びステレオカメラでフュージョン物標を追跡できないときには平滑化データに補間を行う。衝突軽減装置1は、ミリ波レーダ2、ステレオカメラ3、ブレーキECU[Electronic Control Unit]4、サスペンション制御アクチュエータ5、シートベルトアクチュエータ6、ブザー7及び衝突軽減ECU8などを備え、これらがCAN[Controller Area Network](車内LANの標準インターフェース規格)通信で各種信号を送受信する。
なお、本実施の形態では、ミリ波レーダ2が特許請求の範囲に記載するレーダ検出手段に相当し、ステレオカメラ3が特許請求の範囲に記載する画像検出手段に相当し、衝突軽減ECU8が特許請求の範囲に記載する判断手段に相当する。
まず、図2を参照して各物標について説明しておく。レーダ物標は、ミリ波レーダ2による情報に基づいて検出された物体である。レーダ物標には、レーダ情報から取得できる物体までの距離、物体の横位置、物体との相対速度が設定される。ステレオ画像物標は、ステレオカメラ3によるステレオ画像に基づいて検出された物体である。ステレオ画像物標には、ステレオ画像から取得できる物体の前端面までの距離、物体の前端面中央の横位置、物体との相対速度、物体の横幅(自車両に対して左右方向の長さ)、物体の奥行き(自車両から遠ざかる方向の長さ)、物体の高さ、物体の高さ位置が設定される。フュージョン物標は、レーダ物標とステレオ画像物標との照合において類似度が高く、そのレーダ物標とステレオ画像物標とが同一物体であると判断できる物体である。フュージョン物標には、レーダ物標からの距離及び相対速度とステレオ画像物標からの横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置が設定される。このフュージョン物標の情報が、前方車両についての情報となる。
ミリ波レーダ2は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ2は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ2では、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ2では、そのミリ波の送受信データをレーダ信号として衝突軽減ECU8に送信する。
ステレオカメラ3は、2台のCCDカメラからなり、2台のCCDカメラが水平方向に所定間隔離間されて配置されている。ステレオカメラ3も、自車両の前側の中央に取り付けられる。ステレオカメラ3では、2つのCCDカメラで撮像した左右のステレオ画像のデータを各画像信号として衝突軽減ECU8に送信する。
ブレーキECU4は、4輪の各ホイールシリンダの油圧を調節し、4輪のブレーキ力を制御するECUである。ブレーキECU4では、各輪の目標ブレーキ力に基づいて油圧制御信号をそれぞれ設定し、その各油圧制御信号を各ホイールシリンダの油圧を変化させるブレーキ制御アクチュエータに対してそれぞれ送信する。特に、ブレーキECU4では、衝突軽減ECU8から各輪に対する目標ブレーキ力信号を受信すると、その目標ブレーキ力信号に示される目標ブレーキ力に基づいて油圧制御信号をそれぞれ設定する。ちなみに、ブレーキ制御アクチュエータでは、油圧制御信号を受信すると、油圧制御信号に示される目標油圧に基づいてホイールシリンダの油圧を変化させる。
サスペンション制御アクチュエータ5は、4輪の各油圧式アクティブサスペンションの油圧を変化させるアクチュエータである。サスペンション制御アクチュエータ5では、衝突軽減ECU8から各輪に対する目標減衰力信号を受信すると、各目標減衰力信号に示される目標減衰力に基づいて目標油圧を設定し、目標油圧に基づいて油圧式アクティブサスペンションの油圧を変化させる。なお、図1には、サスペンション制御アクチュエータ5は1個しか描いていないが、4輪のサスペンション毎にそれぞれ設けられる。
シートベルトアクチュエータ6は、各シートベルトを引き込み、シートベルトによる拘束力を変化させるアクチュエータである。シートベルトアクチュエータ6では、衝突軽減ECU8から各シートベルトに対する目標引込量信号を受信すると、各目標引込量信号に示される目標引込量に応じてシートベルトの引き込む。なお、図1には、シートベルトアクチュエータ6は1個しか描いていないが、シートベルト毎にそれぞれ設けられる。
ブザー7は、衝突軽減ECU8から警報信号を受信すると、ブザー音を出力する。
衝突軽減ECU8は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、衝突軽減装置1を統括制御する。衝突軽減ECU8は、CPUのマスタクロックに基づく一定時間毎に、ミリ波レーダ2からのレーダ信号及びステレオカメラ3からの各画像信号を取り入れる。そして、衝突軽減ECU8では、一定時間毎に、レーダ情報に基づくレーダ物標設定処理及びステレオ画像に基づくステレオ画像物標設定処理を行い、前回フュージョン物標と今回のレーダ物標及びステレオ画像物標に基づく照合処理を行い、今回フュージョン物標を設定する。さらに、衝突軽減ECU8では、今回フュージョン物標(前方車両)と自車両との関係に基づいて衝突軽減処理を行う。
レーダ物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU8では、ミリ波が出射から受信までの時間に基づいて前方の物体までの距離を演算する。また、衝突軽減ECU8では、前方の物体との相対速度を演算する。また、衝突軽減ECU8では、反射してきたミリ波の中で最も強く反射してきたミリ波の方向を検出し、その方向から自車両の進行方向と物体の方向とのなす角度を求め、その角度から横位置を演算する。ミリ波レーダ2による物体検出では、反射したミリ波を受信できた場合に物体を検出したことになるので、反射したミリ波を受信する毎に1個のレーダ物標が得られる。また、ミリ波レーダ2による物体検出では、物体までの距離を正確に検出できるので、距離及び相対速度の精度が特に高い。
ステレオ画像物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU8では、左右のステレオ画像における物体の見え方のずれを利用して三角測量的に前方の物体を立体的に特定し、ステレオカメラ3から物体までの位置(物体の前端面までの距離、物体の前端面中央の横位置、物体の高さ位置)を演算するとともに、物体の立体的な大きさ(横幅、奥行き、高さ)を演算する。また、衝突軽減ECU8では、前方の物体との相対速度を演算する。ステレオカメラ3による物体検出では、左右のステレオ画像から物体を特定できた場合に物体を検出したことになるので、物体を特定する毎に1個のステレオ画像物標が得られる。また、ステレオカメラ3による物体検出では、物体を立体的に検出できるので、物体の大きさの情報を取得できる。
照合処理について説明する。まず、衝突軽減ECU8では、一定時間毎に、前回フュージョン物標と今回レーダ物標との照合を行う。具体的には、衝突軽減ECU8では、図3に示すように、前回フュージョン物標LFの位置(距離、横位置)を中心として距離の閾値と横位置の閾値を設定し(図3の破線で示す平面領域参照)、前回フュージョン物標LFの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLの位置(距離、横位置)が前回フュージョン物標LFの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内に入っているか否かを判定するとともに、今回レーダ物標TLの相対速度が相対速度の閾値内に入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標TLが前回フュージョン物標LFと類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。この照合では、精度の高い情報がそれぞれ設定されている前回フュージョン物標を中心とし、レーダ物標が持っている位置情報を考慮して照合を行う。
また、衝突軽減ECU8では、一定時間毎に、前回フュージョン物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。具体的には、衝突軽減ECU8では、図4に示すように、前回フュージョン物標LFの位置(距離、横位置、高さ位置)を中心として距離の閾値、横位置の閾値、高さ位置の閾値を設定するとともに物体の奥行きの閾値、物体の横幅の閾値、物体の高さの閾値を設定し(図4の破線で示す立体領域参照)、前回フュージョン物標LFの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、今回ステレオ画像物標TIの位置(距離、横位置、高さ)が前回フュージョン物標LFの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内かつ高さ位置の閾値内に入っているか否か及び今回ステレオ画像物標TIの大きさ(奥行き、横幅、高さ)が奥行きの閾値内かつ横幅の閾値内かつ高さの閾値内に入っているか否かを判定するとともに、今回ステレオ画像物標TIの相対速度が相対速度の閾値内に入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回ステレオ画像物標TIが前回フュージョン物標LFと類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。この照合では、精度の高い情報がそれぞれ設定されている前回フュージョン物標を中心とし、ステレオ画像物標が持っている位置情報に立体物の大きさ情報を考慮して照合を行う。
前回フュージョン物標に対して類似性のある今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標がそれぞれ存在する場合、衝突軽減ECU8では、その今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。具体的には、衝突軽減ECU8では、図5に示すように、今回レーダ物標TLの位置(距離、横位置)を中心として距離の閾値、横位置の閾値を設定するとともに物体の奥行きの閾値、物体の横幅の閾値を設定し(図5の破線で示す平面領域参照)、今回レーダ物標TLの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、今回ステレオ画像物標TIの位置(距離、横位置)が今回レーダ物標TLの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内に入っているか否か及び今回ステレオ画像物標TIの大きさ(奥行き、横幅)が奥行きの閾値内かつ横幅の閾値内に入っているか否かを判定するとともに、今回ステレオ画像物標TIの相対速度が相対速度の閾値内に入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU8では、前回フュージョン物標を今回フュージョン物標として更新し、今回フュージョン物標の情報として今回レーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともに今回ステレオ画像物標の横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を設定する。この際、横位置及び横幅については、後述するが、今回レーダ物標の情報も用いて設定する場合もある。一方、類似性がないと判定した場合、衝突軽減ECU8では、前回フュージョン物標を削除する。この照合では、距離の精度が高く、物体のほぼ中央を横位置とする今回レーダ物標を中心とし、レーダ物標とステレオ画像物標が持っている位置情報にステレオ画像物標の持っている大きさ情報を考慮して照合を行う。
ステレオカメラ3による物体検出では、前方車両の一部が影になっているなどを要因として、物体を分割して検出する場合がある。そのため、例えば、図6(a)に示すように、前方車両FVの中央部が影になり、左右両側をそれぞれステレオ画像物標TI1,TI2として検出する場合、また、図6(b)に示すように、前方車両FVの中央から右側にかけて影になり、左側のみをステレオ画像物標TI3として検出する場合がある。このような場合を考慮し、衝突軽減ECU8では、レーダ物標とステレオ画像物標との照合において1対1の対応の他に1対複数の対応を許容する。
具体的には、衝突軽減ECU8では、図7に示すように、上記と同様に今回レーダ物標TLの位置を中心として距離の閾値、横位置の閾値、物体の奥行きの閾値、物体の横幅の閾値を設定し(図7の破線で示す平面領域参照)、今回レーダ物標TLの相対速度を中央値として相対速度の閾値を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、今回ステレオ画像物標TI1の位置(距離、横位置)が今回レーダ物標TLの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内に入りかつ今回ステレオ画像物標TIの大きさ(奥行き、横幅)が奥行きの閾値内かつ横幅の閾値内に入りかつ今回ステレオ画像物標TI1の相対速度が相対速度の閾値内に入っていると判定した場合でも、さらに、他の今回ステレオ画像物標TI2の位置(距離、横位置)が今回レーダ物標TLの位置を中心とした距離の閾値内かつ横位置の閾値内に入っているか否か及び今回ステレオ画像物標TIの大きさ(奥行き、横幅)が奥行きの閾値内かつ横幅の閾値内に入っているか否かを判定し、今回ステレオ画像物標TI2の相対速度が相対速度の閾値内に入っている否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、この判定において全ての閾値内に入っている場合に今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TI2とが類似性があると判定し、1つでも閾値内に入っていない場合に類似性がないと判定する。類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TI1及び今回ステレオ画像物標TI2とが対応している判定する。衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLに対して検出されている全ての今回ステレオ画像物標TI1,・・・についてこのような判定を繰り返し実行し、全ての今回ステレオ画像物標TI1,・・・について類似性があるか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLと類似性のあった全ての今回ステレオ画像物標TI1,TI2との対応によって前回フュージョン物標を今回フュージョン物標として更新する。なお、今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とが1対複数で対応している場合、衝突軽減ECU8では、今回フュージョン物標の情報として今回レーダ物標の距離及び相対速度を設定し、今回レーダ物標と複数の今回ステレオ画像物標との情報から横位置及び横幅を設定し、複数の今回ステレオ画像物標との情報から奥行き、高さ、高さ位置を設定する。
特に、衝突軽減ECU8では、フュージョン物標の横位置と横幅の設定方法については今回フュージョン物標と1個又は複数個の今回ステレオ画像物標の横方向の位置関係によって設定方法を変える。設定方法には基本的な4つの方法があり、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対1で対応している場合については3つの方法があり、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対複数で対応している場合について1つの方法がある。
図8に示すように、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対1で対応し、今回ステレオ画像物標TIのその横位置を中心とした横幅の範囲内に今回レーダ物標TLの横位置が入っている場合の設定方法について説明する。この場合、今回ステレオ画像物標TIの横幅が今回レーダ物標TLを含む広い範囲を有しているので、ステレオカメラ3による物体検出によって前方車両の全部又は大部分を検出していると推測できる。そこで、今回ステレオ画像物標TIの情報をそのまま利用する。衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対1で対応している場合、今回ステレオ画像物標TIのその横位置を中心とした横幅の範囲内に今回レーダ物標TLの横位置が入っているか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLの横位置が入っていると判定した場合には、今回ステレオ画像物標TIの横位置PIと横幅WIをそのままフュージョン物標の横位置と横幅として設定する。
図9に示すように、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対1で対応し、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが離間しており、離間距離が所定値以内(車両の車幅の半分程度以内)の場合の設定方法について説明する。この場合、今回ステレオ画像物標TIが物体の中央位置から外れており、横幅も狭い範囲しか有していないので、ステレオカメラ3による物体検出によって前方車両の一部のみを検出していると推測できる。また、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが離間距離から、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが車幅の半分程度しか離れていないと推測できる。そこで、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとの横方向における最も離れた位置関係を利用する。衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対1で対応している場合、今回ステレオ画像物標TIのその横位置を中心とした横幅の範囲内に今回レーダ物標TLの横位置が入っていないと判定すると、今回レーダ物標TLの横位置PLと今回ステレオ画像物標TIのその横位置を中心とした横幅の範囲で今回レーダ物標TLの横位置PLから最も離れている位置POとの距離Lが離間閾値T以下か否かを判定する。衝突軽減ECU8では、距離Lが離間閾値T以下と判定した場合には、今回レーダ物標TLの横位置PLとその最も離れている位置POとの中点PCをフュージョン物標の横位置として設定し、距離Lをフュージョン物標の横幅として設定する。なお、離間閾値Tは、一般的な車両の車幅の半分より少し長い程度の長さである。
図10に示すように、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが1対1で対応し、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが離間しており、離間距離が所定値を超える(車両の車幅の半分程度以上)の場合の設定方法について説明する。この場合、今回ステレオ画像物標TIが物体の中央位置から外れており、横幅も狭い範囲しか有していないので、ステレオカメラ3による物体検出によって前方車両の一部のみを検出していると推測できる。また、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが離間距離から、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとが車幅の半分程度より離れていないと推測できる。そこで、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとの横方向における最も離れた位置関係より狭い位置関係を利用する。衝突軽減ECU8では、上記の離間閾値Tに基づく判定において距離Lが離間閾値Tを超えていると判定した場合には、距離Lに係数k(0より大きくかつ1未満の値)を乗算し、この乗算値L×k(=L’)をフュージョン物標の横幅として設定する。さらに、衝突軽減ECU8では、乗算値L’を2で除算し、今回レーダ物標TLの横位置PLから今回ステレオ画像物標TIの方向に除算値L’/2分移動した位置PCをフュージョン物標の横位置として設定する。なお、係数kは、乗算値L’が一般的な車両の車幅の半分より少し長い程度の値になるような係数である。
図11や図12に示すように、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TI1,・・・とが1対複数で対応し、今回レーダ物標TLの左右両側にそれぞれ今回ステレオ画像物標T1,・・・が存在する場合の設定方法について説明する。この場合、今回ステレオ画像物標TI,・・・の横幅が狭い範囲しか有しておらずかつ今回レーダ物標TLの左右の分割して検出されているので、ステレオカメラ3による物体検出によって前方車両の左右両側を分割して検出していると推測できる。そこで、今回レーダ物標TLの横位置PLをそのまま利用するとともに、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TIとの横方向における最も離れた位置関係を利用する。図11に示すように2個の今回ステレオ画像物標TI1,TI2が対応している場合、衝突軽減ECU8では、その今回ステレオ画像物標TI1,TI2を用いる。また、図12に示すように3個以上の今回ステレオ画像物標TI1,TI2,TI3が対応している場合、衝突軽減ECU8では、その3個以上の今回ステレオ画像物標TI1,・・・の中から左右で1個づつ選択する。選択方法としては、今回レーダ物標TLから離れている今回ステレオ画像物標あるいは最も類似度の高い今回ステレオ画像物標などの1個の今回ステレオ画像物標を選択する。衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLと今回ステレオ画像物標TI1,・・・とが1対複数で対応している場合、今回レーダ物標TLの横位置PLと一方側の今回ステレオ画像物標TI1のその横位置を中心とした横幅の範囲で今回レーダ物標TLの横位置PLから最も離れている位置PO1との距離L1が離間閾値T以下か否かを判定するとともに、今回レーダ物標TLの横位置PLと他方側の今回ステレオ画像物標TI2のその横位置を中心とした横幅の範囲で今回レーダ物標TLの横位置PLから最も離れている位置PO2との距離L2が離間閾値T以下か否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、左右両側で、距離L1,L2が離間閾値T以下と判定した場合にはその距離Lをそのまま利用し、距離L1,L2が離間閾値Tを超えていると判定した場合には距離Lに係数kを乗算し、この乗算値L×k(=L’)を利用する。そして、衝突軽減ECU8では、左右両側で利用すると決定した各距離を加算し、この加算した距離をフュージョン物標の横幅として設定する。また、衝突軽減ECU8では、今回レーダ物標TLの横位置PLをフュージョン物標の横位置として設定する。
なお、今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標とが1対複数で対応し、今回レーダ物標の一方側にのみ複数の今回ステレオ画像物標が存在する場合、上記した1対1で対応している場合の設定方法を応用して横位置及び横幅を設定する。複数の今回ステレオ画像物標の中から、今回レーダ物標から離れている今回ステレオ画像物標あるいは最も類似度の高い今回ステレオ画像物標などの1個の今回ステレオ画像物標を選択する。そして、その選択した今回ステレオ画像物標とレーダ物標との関係から上記の3つの設定方法を選択する。
更新された今回フュージョン物標と類似性がなかった今回レーダ物標と今回ステレオ画像とがそれぞれ残っている場合、衝突軽減ECU8では、その残っている今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。この照合方法は、上記した今回レーダ物標と今回ステレオ画像と同様の照合方法である。衝突軽減ECU8では、類似性があると判定した今回レーダ物標と今回ステレオ画像とがある場合には今回フュージョン物標として新たに設定し、上記と同様に今回フュージョン物標の各情報を設定する。
また、ステレオカメラ3による物体検出では、トンネルの出入口などで明るさの変化や物体の一部が影になるなどの撮像条件が変化によって、データがばらつく場合がある。このようにばらついたステレオ画像物標の情報を用いてフュージョン物標の情報を設定した場合、検出した前方車両の位置や大きさの精度が低下してしまう。また、このようなデータのばらつくような状態は長時間続くものでなく、走行中において撮像条件が低下した一時的なものである。
そこで、衝突軽減ECU8では、ステレオ画像物標の情報から設定したフュージョン物標の情報について、過去のフュージョン物標の情報を所定期間バッファリングし、そのバッファリングしたデータによりフュージョン物標の情報を平滑化する。具体的には、衝突軽減ECU8では、図13に示すように、レーダ物標TLとステレオ画像物標TIの各情報からフュージョン物標の各情報を設定する毎に、横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置を所定のバッファリング領域に格納する。図13に示すように、ステレオカメラ3による物体検出で一時的に追跡中のフュージョン物標を検出できなかった場合、衝突軽減ECU8では、バッファリングを行わない。バッファリング領域としては、例えば、図14に示すように、過去の5サイクル分のフュージョン物標の各情報を格納するための領域が確保される。衝突軽減ECU8では、バッファリング領域の1サイクル分の領域にフュージョン物標の各情報が更新される毎に順次格納していく。この際、衝突軽減ECU8では、格納領域に全てデータが格納されている場合には最も古いデータを削除し、その削除した格納領域にフュージョン物標の各情報を格納する。そして、衝突軽減ECU8では、バッファリング領域に格納されている過去数サイクル分のフュージョン物標の各情報(位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置)の平均値をそれぞれ演算し、各情報の平均値を今回のフュージョン物標の情報として設定する。バッファリングするサイクル数については、ステレオカメラ3の性能などを考慮して設定する。なお、各物標を追跡中にフュージョン物標の各情報が急激に変化した場合(同一物体を追跡しているときにはありえないような変化があった場合)、バッファリングしているデータを全て削除する。
また、ステレオカメラ3による物体検出では、トンネルの出入口などで明るさが変化した場合など、追跡していたステレオ画像物標やフュージョン物標を一時的に検出できない場合である。このような場合、フュージョン物標を設定できなくなる。そこで、衝突軽減ECU8では、ステレオカメラ3による物体検出で前回の物標を追跡できなかった場合、フュージョン物標に設定されている平滑化したデータを利用して、フュージョン物標の各情報を補間する。具体的には、衝突軽減ECU8では、図15に示すように、前回フュージョン物標と今回ステレオ画像物標との照合において前回フュージョン物標LFと類似性を持つ今回ステレオ画像物標がない場合、前回のフュージョン物標LFに設定されている平滑化された各情報(横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置)を今回のフュージョン物標(すなわち、今回ステレオ画像物標)の各情報として設定する。なお、平滑化データを用いた場合には検出物体への追従が遅れると考えられるので、補間中、数サイクルに1回は平滑化データの横位置をレーダ物標の横位置で補正する。
しかし、ステレオカメラ3による物体検出では、撮像条件の変化などによって一時的に物標を追跡できなることはあるが、このような条件の変化で継続して前回の物標を追跡できなることはない。このように継続して物標を追跡できなる場合はステレオカメラ3による検出自体ができないと推測でき、ステレオカメラ3の故障などと考えられる。そこで、衝突軽減ECU8では、平滑化したデータによる補間についてはステレオカメラ3自体の異常と推測できる場合には補間を中止し、その追跡中のフュージョン物標の設定を終了する。具体的には、衝突軽減ECU8では、補間回数Nが補間中止回数N0より多いか否かを判定する。そして、衝突軽減ECU8では、補間回数Nが補間中止回数N0以下の場合、前回のフュージョン物標LFに設定されている平滑化された各情報による補間を行い、フュージョン物標を更新し、補間回数Nを1づつカウントアップする。衝突軽減ECU8では、補間回数Nが補間中止回数N0を超える場合、補間を中止し、フュージョン物標の更新を行わない。なお、補間中止回数N0は、ステレオカメラ3の異常と確実に判断できるサイクル数を設定する。
なお、各照合において照合対象の物標が複数ある場合(例えば、今回レーダ物標が複数ある場合)、全ての組み合せについてそれぞれ照合を行う。また、各閾値は、ミリ波レーダ2やステレオカメラ3による検出精度などを考慮して予め設定され、衝突軽減ECU8に格納されている。距離の閾値や相対速度の閾値については、自車両の車速を考慮して可変としてもよい。奥行き、横幅、高さは物体の大きさを表し、検出対象が車両なので、奥行き、横幅、高さの各閾値については一般的な車両の大きさに基づいて設定される。
衝突軽減処理について説明する。今回フュージョン物標がある場合(つまり、前方車両が存在する場合)、衝突軽減ECU8では、車速を考慮して、今回フュージョン物標に設定されている距離情報に基づいて衝突する可能性の段階(例えば、可能性が高い、低い、無しの3段階)を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、衝突する可能性の段階に応じて、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5,・・・、シートベルトアクチュエータ6,・・・、ブザー7を制御する。
この制御を衝突する可能性の段階が3段階の場合を例に挙げて説明する。衝突の可能性が無い段階では、衝突軽減ECU8では、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5,・・・、シートベルトアクチュエータ6,・・・、ブザー7に対する制御を行わない。
衝突の可能性が低い段階では、衝突軽減ECU8では、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5,・・・に対する制御を行わず、シートベルトアクチュエータ6,・・・、ブザー7に対する制御を行う。具体的には、衝突軽減ECU8では、前方に車両が接近していることを知らせるためにシートベルトを少し引き込むための目標引込量信号を設定し、その目標引込量信号をシートベルトアクチュエータ6,・・・にそれぞれ送信する(運転席のシートベルトアクチュエータ6にのみ送信するようにしてもよい)。また、衝突軽減ECU8では、前方に車両が接近していることを知らせるために警報信号を設定し、その警報信号をブザー7に送信する。
衝突の可能性が高い段階では、衝突軽減ECU8では、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5,・・・、シートベルトアクチュエータ6,・・・、ブザー7全てに対する制御を行う。具体的には、衝突軽減ECU8では、車両を減速させるための目標ブレーキ力信号を設定し、その目標ブレーキ力信号をブレーキECU4に送信する。また、衝突軽減ECU8では、車両が傾かないように(前部が沈みこまないように)するための目標減衰力信号を設定し、その目標減衰力信号をサスペンション制御アクチュエータ5,・・・にそれぞれ送信する。また、衝突軽減ECU8では、乗員を強く拘束するための目標引込量信号を設定し、その目標引込量信号をシートベルトアクチュエータ6,・・・にそれぞれ送信する。また、衝突軽減ECU8では、前方に車両が接近していることを知らせるために警報信号を設定し、その警報信号をブザー7に送信する。
なお、衝突する可能性だけでなく、前方車両とのオーバラップ量なども求め、これら他の情報も考慮してブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5,・・・、シートベルトアクチュエータ6,・・・、ブザー7を制御するようにしてもよい。
図1〜図16を参照して、衝突軽減装置1における動作について説明する。特に、衝突軽減ECU8における照合処理の流れについては図17のフローチャートに沿って説明する。図17は、第1の実施の形態に係る照合処理の流れを示すフローチャートである。
ミリ波レーダ2では、前方にミリ波を送信するとともに反射してきたミリ波を受信し、その送受信データをレーダ信号として衝突軽減ECU8に送信する。ステレオカメラ3では、前方をそれぞれ撮像し、その撮像した左右のステレオ画像を各画像信号として衝突軽減ECU8にそれぞれ送信する。
衝突軽減ECU8では、ミリ波レーダ2からのレーダ信号を受信するとともに、ステレオカメラ3からの各画像信号をそれぞれ受信する。そして、衝突軽減ECU8では、一定時間毎に、レーダ信号によるレーダ情報に基づいてレーダ物標を設定する。また。衝突軽減ECU8では、一定時間毎に、各画像信号による左右のステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を設定する。
そして、衝突軽減ECU8では、一定時間毎に、以下の照合処理を行う。衝突軽減ECU8では、距離、横位置の位置情報及び相対速度により、前回フュージョン物標とレーダ物標との照合を行う(S10)。また、衝突軽減ECU8では、距離、横位置、高さ位置の位置情報、奥行き、横幅、高さの大きさ情報及び相対速度により、前回フュージョン物標とステレオ画像物標との照合を行う(S11)。
そして、衝突軽減ECU8では、前回フュージョン物標と類似性を持つステレオ画像物標が存在するか否かを判定する(S12)。S12にてステレオ画像物標が存在しないと判定した場合(つまり、ステレオカメラ3による物体検出で前回フュージョン物標を追跡できなかった場合)、衝突軽減ECU8では、補間回数Nが補間中止回数N0以下か否かを判定する(S13)。S13にて補間回数Nが補間中止回数N0以下と判定した場合、衝突軽減ECU8では、前回フュージョン物標を今回フュージョン物標に更新し、今回レーダ物標の情報により今回フュージョン物標の距離及び相対速度を設定し、前回のフュージョン物標に設定されている平滑化データを用いて今回フュージョン物標の各情報(横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置)を補間して設定する(S14)。一方、S13にて補間回数Nが補間中止回数N0を超えると判定した場合、衝突軽減ECU8では、前回フュージョン物標を削除し、その追跡を終了する(S15)。
そして、前回フュージョン物標と類似性のあるレーダ物標とステレオ画像物標がそれぞれ存在する場合、衝突軽減ECU8では、距離、横位置の位置情報、奥行き、横幅の大きさ情報及び相対速度により、そのレーダ物標とステレオ画像物標との照合を行う(S16)。衝突軽減ECU8では、S16での照合において類似性があるか否かを判定する(S17)。この際、レーダ物標とステレオ画像物標との1対複数の対応も許容する。
S17にて類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU8では、レーダ物標とステレオ画像物標の対応数及びレーダ物標とステレオ画像物標の横方向の位置関係に応じて、今回のフュージョン物標の情報として横位置及び横幅を設定する(S18)。また、衝突軽減ECU8では、今回フュージョン物標の情報としてレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の奥行き、高さ、高さ位置を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、その設定した横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置をバッファリングし、バッファリングしている過去数サイクル分のデータを平滑化し、その平滑化した各情報を今回フュージョン物標として設定する(S19)。衝突軽減ECU8では、照合を行った前回フュージョン物標を今回フュージョン物標に更新する(S20)。この際、類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標を削除する。一方、S17にて類似性がないと判定した場合、衝突軽減ECU8では、照合を行った前回フュージョン物標を削除する(S15)。このS10〜S20までの処理を、全ての前回フュージョン物標と全てのレーダ物標及び全てのステレオ画像物標との全ての組み合せについて行う。ここまでの処理によって、前回フュージョン物標に対する追跡が終了する。
レーダ物標とステレオ画像物標が残っている場合、衝突軽減ECU8では、距離、横位置の位置情報、奥行き、横幅の大きさ情報及び相対速度により、レーダ物標とステレオ画像物標との照合を行う(S21)。衝突軽減ECU8では、S21での照合において類似性があるか否かを判定する(S22)。この際、レーダ物標とステレオ画像物標との1対複数の対応も許容する。
S22にて類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU8では、レーダ物標とステレオ画像物標の対応数及びレーダ物標とステレオ画像物標の横方向の位置関係に応じて、今回のフュージョン物標の情報として横位置及び横幅を設定する(S23)。また、衝突軽減ECU8では、今回フュージョン物標の情報としてレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の奥行き、高さ、高さ位置を設定する。そして、衝突軽減ECU8では、その設定した横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置をバッファリングし、バッファリングしている過去数サイクル分のデータを平滑化し、その平滑化した各情報を今回フュージョン物標として設定する(S24)。衝突軽減ECU8では、類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標とにより今回のフュージョン物標を設定する(S25)。このS21〜S25までの処理を、残っていた全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との全ての組み合せについて行う。ここまでの処理によって、全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との照合処理が終了する。
なお、前回フュージョン物標が設定されていない場合、衝突軽減ECU8では、S10〜S20の処理を行わずに、S21の処理から照合処理を行う。また、今回フュージョン物標を更新後にレーダ物標、ステレオ画像物標が残らなかった場合、衝突軽減ECU8では、S21〜S25の処理を行わずに、今回の照合処理を終了する。また、レーダ物標、ステレオ画像物標の少なくとも一方の物標が設定されていない場合、今回の照合処理を行わない。
照合処理によって今回のフュージョン物標が設定された場合、衝突軽減ECU8では、そのフュージョン物標に設定されている情報に基づいて衝突する可能性の段階を設定し、衝突する可能性の段階に応じて、ブレーキECU4、サスペンション制御アクチュエータ5,・・・、シートベルトアクチュエータ6,・・・、ブザー7を制御する。この制御によって、前方車両との衝突の可能性が低い段階では、シートベルトアクチュエータ6,・・・によるシートベルトの引き込みとブザー7によるブザー音の出力によって前方車両の接近を運転者に認識させる。さらに、前方車両との衝突の可能性が高くなると、ブレーキECU4による自動ブレーキ力による減速とサスペンション制御アクチュエータ5,・・・によるサスペンションの硬さ調節を行い、シートベルトアクチュエータ6,・・・によるシートベルトの更なる引き込みによって乗員を強く拘束し、ブザー7によるブザー音の出力によって前方車両の更なる接近を運転者に認識させる。一方、照合処理によって今回のフュージョン物標が設定されなかった場合、衝突軽減ECU8では、今回の衝突軽減処理を行わない。
この衝突軽減装置1によれば、レーダ物標とステレオ画像物標との対応数や横方向の位置関係に応じて横位置及び横幅の設定方法を変更するので、ステレオカメラ3による物体検出によって物体を正確に検出できない場合でも横位置及び横幅を高精度に設定することができる。特に、衝突軽減装置1では、レーダ物標とステレオ画像物標との1対複数の対応を許容してフュージョン物標を設定するので、ステレオカメラ3による物体検出によって物体を分割して検出した場合にも対応することができる。
また、この衝突軽減装置1によれば、フュージョン物標の各情報をバッファリングし、バッファリングしたデータにより平滑化するので、ステレオカメラ3による物体検出が不安定な場合でもフュージョン物標に安定した情報を設定することができる。
また、この衝突軽減装置1によれば、ステレオカメラ3による物体検出によってフュージョン物標を追跡できない場合でも、平滑化したデータで補間するので、フュージョン物標を設定することができる。
さらに、この衝突軽減装置1によれば、位置情報に加えて大きさの情報を用いて照合を行うので、検出対象の車両の大きさを考慮して照合を行うことができ、車両を高精度に検出することができる。さらに、衝突軽減装置1によれば、相対速度も用いて照合を行うので、移動体である車両をより高精度に検出することができる。
図1、図2及び図5〜図16を参照して、第2の実施の形態に係る衝突軽減装置11について説明する。なお、衝突軽減装置11では、第1の実施の形態に係る衝突軽減装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
衝突軽減装置11は、衝突軽減装置1と比較すると、レーダ物標設定処理、ステレオ画像物標設定処理、照合処理が異なる。つまり、衝突軽減装置11では、レーダ物標、ステレオ画像物標それぞれについて追跡を行い、レーダ物標またはステレオ画像物標と前回フュージョン物標との照合を行わない。したがって、衝突軽減装置11は、衝突軽減装置1とは衝突軽減ECUにおける処理のみが異なり、第1の実施の形態に係る衝突軽減ECU8の代わりに衝突軽減ECU18を備えている。なお、第2の実施の形態では、衝突軽減ECU18が特許請求の範囲に記載する判断手段に相当する。
衝突軽減ECU18も、第1の実施の形態に係る衝突軽減ECU8と同様に、衝突軽減装置11を統括制御する電子制御ユニットである。衝突軽減ECU18は、衝突軽減ECU8とレーダ物標設定処理、ステレオ画像物標設定処理、照合処理が異なる。そこで、その各処理についてのみ説明する。
レーダ物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU18では、第1の実施の形態と同様に、一定時間毎に、レーダ情報からレーダ物標を得る。さらに、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、前回レーダ物標とその得たレーダ物標との照合を行う。この照合は、第1の実施の形態における前回フュージョン物標と今回レーダ物標との照合方法と同様の照合方法であり、距離、横位置、相対速度により照合を行う。この際、前回フュージョン物標の代わりに前回レーダ物標を中心にして各閾値を設定し、その各閾値内にレーダ物標が入っているか否かを判定する。衝突軽減ECU18では、照合において類似性があると判定した場合には前回レーダ物標を今回レーダ物標として更新し、今回の情報を設定する。一方、衝突軽減ECU18では、照合において類似性がないと判定した場合には前回レーダ物標を削除する。また、衝突軽減ECU18では、前回レーダ物標と類似性のなかったレーダ物標を今回レーダ物標として新たに設定する。
ステレオ画像物標設定処理について説明する。衝突軽減ECU18では、第1の実施の形態と同様に、一定時間毎に、ステレオ画像からステレオ画像物標を得る。さらに、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、前回ステレオ画像とその得たステレオ画像物標との照合を行う。この照合は、第1の実施の形態における前回フュージョン物標と今回ステレオ画像物標との照合方法と同様の照合方法であり、距離、横位置、高さ位置、奥行き、横幅、高さ、相対速度により照合を行う。この際、前回フュージョン物標の代わりに前回ステレオ画像物標を中心にして各閾値を設定し、その各閾値内にステレオ画像物標が入っているか否かを判定する。衝突軽減ECU18では、照合において類似性があると判定した場合には前回ステレオ画像物標を今回ステレオ画像物標として更新し、今回の情報を設定する。一方、衝突軽減ECU18では、照合において類似性がないと判定した場合には前回ステレオ画像物標を削除する。また、衝突軽減ECU18では、前回ステレオ画像物標と類似性のなかったステレオ画像物標を今回ステレオ画像物標として新たに設定する。
なお、衝突軽減ECU18では、各センサによる検出によって物標として認識したものについてそれぞれ認識番号を付与し、その認識番号を用いて追跡が行われているか否かを判定する。
照合処理について説明する。衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合を行う。この照合は、第1の実施の形態における残った今回レーダ物標と今回ステレオ画像物標との照合方法と同様の照合方法であり、距離、横位置、奥行き、横幅、相対速度により照合を行う。また、衝突軽減ECU18でも、第1の実施の形態と同様に、フュージョン物標に対して設定する各情報(横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置)をバッファリングし、バッファリングしたデータにより平滑化データを演算し、平滑化データをフュージョン物標の各情報として設定する。なお、照合において照合対象の物標が複数ある場合(例えば、今回レーダ物標が複数ある場合)、全ての組み合せについてそれぞれ照合を行う。
また、衝突軽減ECU18では、ミリ波レーダ2による物体検出によって前回のフュージョン物標と同一と判断できるレーダ物標を検出しかつステレオカメラ3による物体検出によって前回のフュージョン物標と同一と判断できるステレオ画像物標を検出していない場合、第1の実施の形態と同様に、前回のフュージョン物標に設定されている平滑化データにより今回フュージョン物標の各情報を補間する。補間は、第1の実施の形態と同様に、補間回数Nが補間中止回数N0以下のときに行われる。
図1、図2及び図5〜図16を参照して、衝突軽減装置11における動作について説明する。特に、衝突軽減ECU18における照合処理の流れについては図18のフローチャートに沿って説明する。図18は、第2の実施の形態に係る照合処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、衝突軽減装置1における動作と異なる衝突軽減ECU18におけるレーダ物標設定処理、ステレオ画像物標設定処理、照合処理についてのみ説明する。
衝突軽減ECU18では、ミリ波レーダ2からのレーダ信号を受信するとともに、ステレオカメラ3からの各画像信号をそれぞれ受信する。
そして、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、レーダ信号によるレーダ情報に基づいてレーダ物標を取得する。そして、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、前回レーダ物標を追跡するために、その取得したレーダ物標と前回レーダ物標との照合を行う。照合の結果、衝突軽減ECU18では、類似性のあった前回レーダ物標を今回のレーダ物標として更新して今回の情報を設定し、類似性のなかった前回レーダ物標を削除する。さらに、衝突軽減ECU18では、取得したレーダ物標のうち類似性のなかったレーダ物標を今回レーダ物標として新たに設定する。なお、前回レーダ物標が設定されていなかった場合、衝突軽減ECU18では、取得したレーダ物標を全て今回のレーダ物標として設定する。
また、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、各画像信号による左右のステレオ画像に基づいてステレオ画像物標を取得する。そして、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、前回ステレオ画像物標を追跡するために、その取得したステレオ画像物標と前回ステレオ画像物標との照合を行う。照合の結果、衝突軽減ECU18では、類似性のあった前回ステレオ画像物標を今回のステレオ画像物標として更新して今回の情報を設定し、類似性のなかった前回ステレオ画像物標を削除する。さらに、衝突軽減ECU18では、取得したステレオ画像物標のうち類似性のなかったステレオ画像物標を今回のステレオ画像物標として新たに設定する。なお、前回ステレオ画像物標が設定されていなかった場合、衝突軽減ECU18では、取得したステレオ画像物標を全て今回のステレオ画像物標として設定する。
そして、衝突軽減ECU18では、一定時間毎に、以下の照合処理を行う。衝突軽減ECU18では、距離、横位置の位置情報、奥行き、横幅の大きさ情報及び相対速度により、レーダ物標とステレオ画像物標との照合を行う(S30)。衝突軽減ECU18では、S30での照合において類似性があるか否かを判定する(S31)。この際、レーダ物標とステレオ画像物標との1対複数の対応も許容する。
S31にて類似性があると判定した場合、衝突軽減ECU18では、レーダ物標とステレオ画像物標の対応数及びレーダ物標とステレオ画像物標の横方向の位置関係に応じて、今回のフュージョン物標の情報として横位置及び横幅を設定する(S32)。また、衝突軽減ECU18では、今回フュージョン物標の情報としてレーダ物標の距離及び相対速度を設定するとともにステレオ画像物標の奥行き、高さ、高さ位置を設定する。そして、衝突軽減ECU18では、その設定した横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置をバッファリングし、バッファリングしている過去数サイクル分のデータを平滑化し、その平滑化した各情報を今回フュージョン物標として設定する(S33)。衝突軽減ECU18では、類似性のあったレーダ物標とステレオ画像物標とにより今回のフュージョン物標を設定する(S34)。
一方、S31にて類似性がないと判定した場合、衝突軽減ECU18では、ミリ波レーダ2による物体検出によって過去のフュージョン物標と同じ物標を追跡できかつステレオカメラ3による物体検出によって過去のフュージョン物標と同じ物標を追跡できなかったか否かを判定する(S35)。
S35にてミリ波レーダ2による物体検出によって追跡できかつステレオカメラ3による物体検出によって追跡できなかったと判定した場合、衝突軽減ECU18では、補間回数Nが補間中止回数N0以下か否かを判定する(S36)。S36にて補間回数Nが補間中止回数N0以下と判定した場合、衝突軽減ECU18では、前回フュージョン物標を今回フュージョン物標に更新し、今回レーダ物標の情報により今回フュージョン物標の距離及び相対速度を設定し、前回のフュージョン物標に設定されている平滑化データを用いて今回フュージョン物標の各情報(横位置、横幅、奥行き、高さ、高さ位置)を補間して設定する(S37)。一方、S35にてミリ波レーダ2による物体検出によって追跡できなかったと判定した場合又はS36にて補間回数Nが補間中止回数N0を超えると判定した場合、衝突軽減ECU18では、今回フュージョン物標を設定しない。
このS30〜S37の処理を、全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との全ての組み合せについて行う。ここまでの処理によって、全てのレーダ物標と全てのステレオ画像物標との照合処理が終了する。なお、レーダ物標、ステレオ画像物標の少なくとも一方の物標が設定されていない場合、今回の照合処理を行わない。
この衝突軽減装置11でも、第1の実施の形態に係る衝突軽減装置1と同様の効果を奏する。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では本実施の形態では車両に搭載される衝突軽減装置に適用したが、車間距離制御装置、追従走行装置などの他の運転支援装置や周辺監視装置などの他の装置にも適用可能であり、物体検出装置単体としても活用可能である。また、検出対象としては、前方の車両以外にも、歩行者や自転車などの他の物体を検出することも可能である。また、搭載対象としては、車両以外にも、ロボットなどに搭載することも可能である。
また、本実施の形態ではレーダ検出手段としてミリ波レーダを用いる構成としたが、レーザレーダなどの他のレーダを用いてもよい。
また、本実施の形態では画像検出手段としてステレオカメラを用いる構成としたが、ステレオカメラ以外のカメラを用いてもよい。
また、本実施の形態ではミリ波レーダによる情報に基づくレーダ物標の設定及びステレオカメラによるステレオ画像に基づくステレオ画像物標の設定を衝突軽減ECUで行う構成としたが、ミリ波レーダに処理部を備え、ミリ波レーダでレーダ物標を設定する構成としてもよいし、また、ステレオカメラに画像処理部を備え、ステレオカメラでステレオ画像物標を設定する構成としてもよい。
また、本実施の形態では横幅や奥行きなどの大きさ情報及び相対速度も用いて照合を行う構成としたが、相対速度を用いないで照合を行う構成としてもよいし、あるいは、大きさ情報の全てまたは一部を用いないで照合を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では各照合において複数の閾値による判定で全ての閾値条件を満たしている場合に類似性があると判定する構成としたが、全ての閾値条件のうちの幾つかの閾値条件を満たしている場合に類似性があると判定する構成としてもよい。
また、本実施の形態ではフュージョン物標の各情報をバッファリングし、バッファリングしたデータを平滑化する構成としたが、バッファリング及び平滑化を行わない構成としてもよい。
また、本実施の形態ではステレオカメラによる物体検出によってフュージョン物標を追跡できない場合には平滑化したデータによって補間する構成としたが、補間しないでフュージョン物標を設定しない構成としてもよいし、平滑化を行っていない場合にはフュージョン物標に設定されている各サイクル毎の情報によって補間する構成としてもよい。
また、本実施の形態では横位置及び横幅の両方についてステレオ画像物標とレーダ物標との対応数及び位置関係に応じて設定方法を変更する構成としたが、横位置と横幅のどちらか一方の設定方法を固定としてもよい。例えば、横位置についてレーダ物標の横位置を常に用いる。
また、第2の実施の形態では衝突軽減ECUにおいてミリ波レーダによる情報に基づくレーダ物標の追跡判定処理とステレオカメラによるステレオ画像に基づくステレオ画像物標の追跡判定処理及びレーダ物標とステレオ画像物標との照合処理を行う構成としたが、これら全ての処理を衝突軽減ECUで行う必要はなく、ミリ波レーダによる情報に基づくレーダ物標の追跡判定処理を行うためのミリ波レーダECUとステレオカメラによるステレオ画像に基づくステレオ画像物標の追跡判定処理を行うための画像ECUを衝突軽減ECUとは別に設ける構成としてもよい。この場合、物標の追跡判定処理についてはミリ波レーダECUと画像ECUでそれぞれ行い、照合処理については衝突軽減ECUで行うことになる。このような構成とする場合、ミリ波レーダECUをミリ波レーダと衝突軽減ECUとの間に配置し、画像ECUをステレオカメラと衝突軽減ECUとの間に配置することが適している。
1,11…衝突軽減装置、2…ミリ波レーダ、3…ステレオカメラ、4…ブレーキECU、5…サスペンション制御アクチュエータ、6…シートベルトアクチュエータ、7…ブザー、8,18…衝突軽減ECU