JP4534276B2 - 酸化物超電導線材の接続方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸化物超電導線材の接続方法と超電導機器に関し、特に、酸化物超電導線材から構成される超電導マグネットを用いた超電導変圧器、超電導限流器および半導体単結晶引上げ用磁場発生装置や酸化物超電導線材を用いた超電導ケーブルおよび超電導ブスバー等の超電導機器と、これらの超電導機器を製作するために適用可能な酸化物超電導線材の接続方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、実用的な超電導機器に用いられる酸化物超電導線材には、十分な長さが要求される。たとえば、実用的な超電導ケーブルとして100MW以上の容量を有するケーブル用導体を製作する場合には、超電導ケーブルの最終長さとして5km程度の長さを1単位とする酸化物超電導線材が数百本必要とされる。この場合、酸化物超電導線材としては、たとえば、ビスマス系酸化物超電導体フィラメントが銀で被覆された形態の線材(直径0.9mm、臨界電流値20A(温度77K))やハステロイ基板の上にイットリウム系酸化物超電導体薄膜が形成された形態の線材(幅10mm、臨界電流値20A(温度77K))が用いられる。
【0003】
また、磁気分離装置や半導体単結晶引上げ用磁場発生装置に用いられる超電導マグネットとしては、マグネットの内径が1mを超えるものが製作される。このような超電導マグネットを製作するためには、たとえば1コイル当たりの長さとして800m程度を1単位とする酸化物超電導線材が1000本程度必要とされる。この場合、酸化物超電導線材としてはビスマス系酸化物超電導体フィラメントが銀で被覆された形態のテープ状線材(厚み0.25mm、幅4mm、臨界電流値50A(温度77K))が用いられる。
【0004】
しかしながら、酸化物超電導線材の現在の製造技術レベルでは、ビスマス系酸化物超電導体フィラメントが銀で被覆された形態の線材で数百メートル程度の単位長さ、イットリウム系酸化物超電導体薄膜が基板の上に形成された形態の線材では数メートルからせいぜい数10メートルの単位長さのものが製造されるにすぎない。したがって、酸化物超電導線材の長尺化の製造技術開発を待たなければ、上述のような実用的な超電導機器に応用することは現在のところ不可能である。このことが、革新的な技術である超電導機器の産業への適用や実用化が遅れている主な要因の1つとなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の100MW以上の容量の超電導ケーブルや直径が8インチ(203.2mm)以上のシリコン単結晶引上げ用磁場発生装置に用いられる超電導マグネットを実現するために、比較的短い酸化物超電導線材を接続し、長い単位長さの線材を製作することができれば、超電導機器の産業への適用のためのプロトタイプ機器の試作が可能となる。そして、試作したプロトタイプの機器によって超電導機器のメリットを把握して実用化を進めることが可能となる。
【0006】
ところが、酸化物超電導線材は曲げや引張り等の変形で与えられる歪みの影響を受けて臨界電流値が低下するという問題がある。単位長さの短い酸化物超電導線材を、たとえば、はんだで接続すると、超電導ケーブルや超電導マグネットの製作の過程で酸化物超電導線材に与えられる歪みによって臨界電流値が低下する。このため、接続によって単位長さの長い酸化物超電導線材を得ることができたとしても、線材に与えられる歪みの影響によって臨界電流値が低下するために実用的な超電導機器として所定の機能を達成することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、比較的短い線材を接続してできるだけ長い線材を製造することができ、かつ歪みの影響による臨界電流値の低下を抑制することが可能な酸化物超電導線材の接続方法を提供することである。
【0008】
また、この発明の目的は、接続された酸化物超電導線材を備え、かつ接続前の線材の初期の臨界電流値をほぼ維持することが可能な超電導機器を提供することである。
【0009】
この発明の1つの局面に従った酸化物超電導線材の接続方法は、酸化物超電導線材同士、または酸化物超電導線材と被接続部材とを接続するステップと、接続された酸化物超電導線材に歪みを与えるステップとを備え、接続後の酸化物超電導線材が有する歪み量の、接続前の酸化物超電導線材が有する歪み量に対して変化する割合は+11%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0010】
このように接続後の歪み量を接続前の歪み量に対して変化する割合を上記の所定の範囲内に制御することにより、接続後の酸化物超電導線材の臨界電流値を接続前の初期値に対して75%以上の高い割合で維持した状態で長い線材を実現することができる。
【0011】
上記のこの発明の1つの局面に従った酸化物超電導線材の接続方法では、接続するステップの前後において酸化物超電導線材が有する歪み量は、酸化物超電導線材が有する歪み量の増加に対する酸化物超電導線材の臨界電流値の変化において酸化物超電導線材の臨界電流値が低下し始めるときの歪み量よりも小さくてもよい。
【0013】
上記のこの発明の1つの局面に従った接続方法は、接続するステップの前に酸化物超電導線材に予め歪みを与えるステップをさらに備えていてもよい。
【0014】
上記のこの発明の1つの局面に従った酸化物超電導線材の接続方法において、歪を与えるステップには、接続後の酸化物超電導線材が接続前の酸化物超電導線材よりも小さい歪み量を有するように酸化物超電導線材の歪み量を調整するステップを含んでいてもよい。
【0015】
このように接続前に予め歪みを酸化物超電導線材に与えるとともに、接続後の歪み量が接続前の歪み量よりも小さくなるように歪み量を調整することにより、接続後の酸化物超電導線材の臨界電流値を予め歪みを与える前の初期値に対し、90%以上の高い割合で維持した状態で長い線材を実現することができる。
【0017】
上記のこの発明の1つの局面に従った酸化物超電導線材の接続方法において、酸化物超電導線材の歪み量を調整するステップは、接続後の酸化物超電導線材に超電導機器で使用される形態を付与することを含むのが好ましい。
【0018】
このようにすることにより、超電導機器で使用されるケーブルやマグネットの最終の形態への加工によって酸化物超電導線材の歪み量を調整することができる。
【0019】
上記の超電導機器で使用される形態は巻線の形態を含むのが好ましい。このような形態を採用することにより、超電導機器に使用される最終の形態として、超電導ケーブルにおける螺旋状巻きや超電導マグネットにおけるコイル巻線に適用することができる。
【0020】
上記のこの発明の1つの局面に従った酸化物超電導線材の接続方法において、酸化物超電導線材に予め歪みを与えるステップは、曲げ、引張りおよびねじりからなる群より選ばれた少なくとも一種の変形を酸化物超電導線材に与えることを含むのが好ましい。これにより、種々の変形形態を酸化物超電導線材に与えることによって予め歪みを与えることができる。
【0021】
この発明の酸化物超電導線材の接続方法において、酸化物超電導線材同士、または酸化物超電導線材と被接続部材を接続するステップは、インジウム系はんだを介在させて酸化物超電導線材同士、または酸化物超電導線材と被接続部材を重ね合せることによって接続することを含むのが好ましい。このようにインジウム系はんだを用いて接続することにより、150℃以下の低い温度で接続を容易に行なうことができる。また、ビスマス系酸化物超電導体やイットリウム系酸化物超電導体を用いた線材では、鉛を含むはんだを用いて接続すると、ビスマス系酸化物超電導体フィラメントを被覆する銀や酸化物超電導体と鉛とが反応することにより線材の超電導特性を劣化させる可能性がある。しかしながら、この発明においてはインジウム系はんだを用いて接続が行なわれるので、鉛系はんだを用いた接続における上記の問題を解消することができ、はんだの材料によって線材の超電導特性が劣化するという問題が生じない。
【0022】
この発明の接続方法が適用される酸化物超電導線材は、ビスマス系酸化物超電導体またはイットリウム系酸化物超電導体を含むのが好ましい。ビスマス系酸化物超電導体を用いる場合には、線材はビスマス系酸化物超電導体フィラメントが銀で被覆された形態で構成されるのが好ましい。また、イットリウム系酸化物超電導体を用いる場合には、線材はイットリウム系酸化物超電導体が基板の上に形成された薄膜の形態で構成されるのが好ましい。
【0029】
なお、この発明の酸化物超電導線材の接続方法においては、はんだを用いることにより簡単に接続を行なうことができ、接続部で生じる接続抵抗も実用に耐えることができる程度に低くすることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
ビスマス系酸化物超電導体(Bi−Sr−Ca−Cu−O系酸化物)フィラメントを銀で被覆した形態のテープ状線材を用いて本発明の接続方法の有効性を確認した。テープ状線材の厚みは0.24mm、幅は3.8mm、温度77Kでの臨界電流値は40Aであった。テープ状線材の接続前の曲げ半径(R1)とそのときの歪み、接続後の曲げ半径(R2)とそのときの歪み、接続前後の歪みの変化率(={(R2−R1)/R1}×100)、接続後において温度77Kでの臨界電流値の維持率、接続抵抗を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1の試料A1〜A4では、直線状の線材を準備し、長さ50mmの端部で2本の線材を重ね合せ、インジウムはんだを用いて150℃のはんだ溶融温度で接続した。接続後、表1で示すように所定の曲げ半径(内半径)を有するように線材に曲げ変形を加えた。その後、臨界電流値と接続抵抗を測定した。
【0033】
表1の試料B1〜B3では、接続前の曲げ半径が接続後の曲げ半径よりも大きくなるように接続前に曲げ変形を線材に加えて、試料A1〜A4と同様にインジウムはんだで2本の線材を接続した。接続後、接続前の曲げ半径よりも小さい曲げ半径で曲げ変形を線材に加えた。その後、臨界電流値と接続抵抗を測定した。具体的な接続方法としては、接続する2本の線材を重ね合せて、ホットプレート上に配置した曲げ治具の上で曲げた後、温度150℃以下に保持されたはんだごてを用いて接続した。
【0034】
試料C1〜C6では、接続前の曲げ半径が接続後の曲げ半径よりも小さくなるように曲げ変形を線材に加え、試料B1〜B3と同様に曲げ治具を用いてはんだで2本の線材を接続した。接続後、接続前の曲げ半径よりも大きな曲げ半径で曲げ変形を線材に加えた。その後、臨界電流値と接続抵抗を測定した。
【0035】
表1において接続前後の歪みの変化率が正の値の場合、接続後の曲げ歪みが接続前の曲げ歪みよりも大きいことを示し、負の値の場合、接続前の曲げ歪みが接続後の曲げ歪みよりも小さいことを示す。
【0036】
表1の試料A1、A2、B2、B3の結果から、接続後の曲げ歪み量が接続前の歪み量に対して変化する割合が±11%の範囲内であれば、75%以上の高い維持率で接続後の臨界電流値を維持することができることがわかる。また、接続抵抗も0.1μΩよりも小さいことがわかる。
【0037】
また、表1の試料C1〜C6の結果から、接続後の曲げ歪み量が接続前の曲げ歪み量よりも小さくなるようにすれば、接続前の初期値に対して90%以上の高い維持率で臨界電流値を維持することができることがわかる。また、接続抵抗も0.1μΩよりも小さいことがわかる。
【0038】
上記の実施例で使用した、銀で被覆されたビスマス系酸化物超電導体から構成されるテープ状線材について、曲げ歪み量の増加に対する臨界電流密度の変化を調べた。図1はその結果を示す。図1において横軸は曲げ歪み量ε(%)を示し、縦軸は曲げ歪みが0のときの臨界電流密度JC0に対して曲げ歪みが与えられた後の臨界電流密度Jcの割合を示す。また、図1において▲はビスマス系酸化物超電導体フィラメントを被覆するマトリクスが純銀から構成される場合のデータを示し、●はビスマス系酸化物超電導体フィラメントを被覆するマトリクスが銀合金(0.5重量%アンチモン−1.0重量%マンガンを含む)である場合のデータを示す。
【0039】
図1から、マトリクスが純銀の場合、曲げ歪み量が約0.2%になると臨界電流密度が低下することがわかる。また、マトリクスが銀合金の場合、曲げ歪み量が約0.5%になると臨界電流密度が低下することがわかる。
【0040】
上記の接続方法の実施例で用いられたテープ状線材はマトリクスが純銀である。したがって、臨界電流密度が低下し始めるときの歪み量(臨界歪み量)は約0.2%である。このことを考慮して表1の結果を見ると、接続前に予め歪みが与えられた試料B1〜B3、C1〜C6の中で、接続前後において曲げ歪み量が0.2%未満の場合、すなわち試料B3と試料C1〜C6では臨界電流値の維持率が90%以上であることがわかる。このことから、接続前後において酸化物超電導線材に歪みを与える場合、その歪み量が臨界歪みとして約0.2%よりも小さければ高い割合で初期の臨界電流値を維持することができることが理解される。逆に臨界歪みとして約0.2%を大きく超える条件で接続前後に線材に歪みを与えると、たとえば0.3%以上の歪みを与えると、接続前後の歪み自体が線材そのものの超電導特性を劣化させるため、接続によって上記のような好ましい結果を得ることができないことも確認された。
【0041】
また、従来の鉛を含むはんだを用いると150℃を超える温度まで加熱することが必要である。この従来の鉛を含むはんだを用いた接続方法で試料A2〜A4と同様の条件で接続を行なったが、いずれの試料においても臨界電流値の維持率は50%以下であり、鉛が酸化物超電導体に悪影響を及ぼしていることが明らかになった。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様のテープ状線材を用いてダブルパンケーキコイル(内径50mm×外径280mm×高さ10mm)を10個製作した。これらのコイルを積層して中心磁界として6Tを発生させることが可能な冷凍器冷却型超電導マグネットを製作した。10個のダブルパンケーキコイルのうち6個は、1単位の長さとして160mのテープ状線材を用いた。テープ状線材を3枚重ね合せ、外側にポリイミド系樹脂からなる絶縁テープを重ね、内側にステンレステープを重ね合せることにより導体を構成した。この導体を絶縁テープの面が外側になるように巻線することによりダブルパンケーキコイルを製作した。10個のダブルパンケーキコイルのうち4個は、1単位の長さとして40〜60mのテープ状線材を用いて、1個のダブルパンケーキコイル内に接続部が最低10個所含まれるように構成された。テープ状線材の接続は、実施例1の結果をもとに臨界電流値の維持率が90%以上となる接続条件によって行なった。4個のダブルパンケーキコイルにおける導体の構成は、接続部のない6個のダブルパンケーキコイルと同様にした。
【0043】
上記のように構成された超電導マグネットにおいて臨界電流値を測定した。その結果、接続部を有する4個のダブルパンケーキコイルにおいては、温度77Kでの臨界電流値は、それぞれ54A、50A、52A、56Aであり、他の接続部を持たない6個のダブルパンケーキコイルにおける臨界電流値の平均値55Aに比べて著しい超電導特性の劣化は観測されなかった。また、上記の10個のダブルパンケーキコイルを用いた超電導コイルはクライオスタット中に冷凍器冷却型マグネットとして構築され、温度20Kで磁界6Tを安定に発生させることができた。したがって、このマグネットを磁気分離装置や各種の実験用超電導機器に適用しても正常に稼働することが確認された。
【0044】
(実施例3)
ハステロイ基板の片面上にイットリウム系酸化物超電導体(Y−Ba−Cu−O系酸化物)薄膜を1μmの膜厚で蒸着させた形態の線材を準備した。この線材は幅が5mm、厚みが0.15mm、温度77Kでの臨界電流値が10Aであった。この線材を用いて実施例1と同様にして本発明の接続方法の有効性を確認した。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の試料D1とD2、試料E2の結果から、接続後の歪み量が接続前の歪み量に対して変化する割合が±11%の範囲内であれば、接続後の臨界電流値の維持率が78%以上の高い値を示すことがわかる。
【0047】
また、表2の試料F1〜F4の結果から、接続後の歪み量が接続前の歪み量よりも小さくなるようにすれば、90%以上の高い値で臨界電流値を維持することができることがわかる。
【0048】
上記の実施例で用いられた、イットリウム系酸化物超電導体薄膜をハステロイ基板の上に形成した形態の線材について、曲げ歪みに対する臨界電流密度の変化を調べた。図2はその結果を示す。図2において横軸は曲げ歪みε(%)を示し、縦軸は曲げ歪みが0のときの臨界電流密度JC0に対して曲げ歪みが与えられた後の臨界電流密度JCの割合を示す。また、図2において、▲はイットリウム系酸化物超電導体薄膜の外側に引張り歪みが加わる場合のデータを示し、●はイットリウム系酸化物超電導体薄膜の内側に圧縮歪みが加わる場合のデータを示す。引張り歪みが加わる場合とは、酸化物超電導体薄膜を外側にして線材を曲げる場合に相当し、圧縮歪みが加わる場合とは、酸化物超電導体薄膜を内側にして線材を曲げる場合に相当する。
【0049】
図2から、引張り歪みが加わる場合には、約0.1%の曲げ歪みが与えられると臨界電流密度が低下し始め、圧縮歪みが加わる場合には約0.5%の曲げ歪みが与えられると臨界電流密度が低下することがわかる。
【0050】
上記の実施例ではイットリウム系酸化物超電導体薄膜を外側にして曲げた場合の歪みを測定している。したがって、臨界電流密度が低下し始めるときの曲げ歪み(臨界歪み)は約0.1%である。このことを考慮して表2の結果を見ると、接続前に線材に予め曲げ歪みを与えた試料E1とE2、試料F1〜F4の中で、接続前後の曲げ歪み量が臨界歪みとして約0.1%よりも小さければ、すなわち試料F1〜F4では、90%以上の高い値で臨界電流値を維持することができることがわかる。
【0051】
なお、表2の試料D1、D2、E2およびF1〜F4においては、0.1μΩ以下の接続抵抗を得ることができ、試料D3とE1では0.2〜0.3μΩの接続抵抗を示した。
【0052】
(実施例4)
ハステロイ基板の片面上にイットリウム系酸化物超電導体薄膜を1μmの膜厚で蒸着した形態の線材(幅10mm、厚み0.15mm、長さ100cm)を10本準備した。この線材を用いてスパイラル集合したケーブル用導体を作製した。スパイラル集合は次のようにして行なわれた。直径20mmのフォーマ上に絶縁を施した後、スパイラルピッチ200mmの間に5本の線材がフォーマの長さ方向に隣合って並んでフォーマの外周面を被覆するようにして、線材を螺旋状に巻くことによってスパイラル集合を構成した。10本の線材は、スパイラル巻きのときに線材に与えられる曲げ歪みとねじり歪みを模擬的に線材に与えることが可能な治具を用いて、予め所定の歪み量を有するように準備した。その与える歪みの条件は実施例3の試料F2(表2参照)の接続前の歪み量0.083%に設定した。上述のように予め歪みが与えられた5本の線材をそれぞれ、他の5本に対して長さ50mmの端部で重ね合せられるようにしてインジウムはんだで接続した。このようにして接続された10本の線材を上記のようにしてフォーマ上に螺旋状に巻くことによって長さ2mのケーブル導体を製作した。したがって、接続部はケーブル導線の中央部に集中していた。
【0053】
このようにして製作されたケーブル導体においてフォーマ上での線材が有する歪み量を測定したところ、0.068%であった。ケーブル導体の臨界電流は温度77Kで48Aであり、歪みが与えられる前の5本の線材の臨界電流値の合計値50Aに比べて、ケーブル導体化による超電導特性の劣化がほとんど生じないという結果が得られた。
【0054】
以上に開示された実施例はすべての点で例示的に示すものであり、制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正例や変形例を含むものと解釈されるべきである。
【0055】
【発明の効果】
以上のようにこの発明によれば、接続前後の歪み量を所定の範囲に制御することにより、短い線材を接続してできるだけ長い線材を製造することができるとともに、歪みの影響による臨界電流値の低下を効果的に抑制することが可能となる。したがって、現在実用化を目指して開発が進められている、ビスマス系酸化物超電導体フィラメントを銀で被覆した形態の線材や、イットリウム系酸化物超電導体薄膜を基板の上に形成した形態の線材に本発明の接続方法を適用することにより、超電導ケーブル、超電導マグネット、またはこれらを組込んだ超電導機器のプロトタイプの試作と評価を行なうことができる。その結果、酸化物超電導線材を各種の超電導機器に適用し、実用化を進めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ビスマス系酸化物超電導線材の曲げ歪みと臨界電流密度との関係を示すグラフである。
【図2】 イットリウム系酸化物超電導線材の曲げ歪みと臨界電流密度との関係を示すグラフである。
Claims (12)
- 酸化物超電導線材同士、または酸化物超電導線材と被接続部材とを接続するステップと、
接続された前記酸化物超電導線材に歪みを与えるステップとを備え、
接続後の前記酸化物超電導線材が有する歪み量の、接続前の前記酸化物超電導線材が有する歪み量に対して変化する割合は+11%以下の範囲内である、酸化物超電導線材の接続方法。 - 前記接続するステップの前後において前記酸化物超電導線材が有する歪み量は、前記酸化物超電導線材が有する歪み量の増加に対する前記酸化物超電導線材の臨界電流値の変化において前記酸化物超電導線材の臨界電流値が低下し始めるときの歪み量よりも小さい、請求項1に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記接続するステップの前に前記酸化物超電導線材に予め歪みを与えるステップをさらに備える、請求項1または2に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記歪みを与えるステップには、接続後の前記酸化物超電導線材が接続前の前記酸化物超電導線材よりも小さい歪み量を有するように前記酸化物超電導線材の歪み量を調整するステップを含む、請求項3に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記酸化物超電導線材の歪み量を調整するステップは、接続後の前記酸化物超電導線材に超電導機器で使用される形態を付与することを含む、請求項4に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記超電導機器で使用される形態は、巻線の形態を含む、請求項5に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 酸化物超電導線材に予め歪みを与えるステップは、曲げ、引張りおよびねじりからなる群より選ばれた少なくとも一種の変形を酸化物超電導線材に与えることを含む、請求項3から請求項6までのいずれかに記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記酸化物超電導線材同士、または酸化物超電導線材と被接続部材とを接続するステップは、インジウム系はんだを介在させて酸化物超電導線材同士、または酸化物超電導線材と被接続部材を重ね合せることによって接続することを含む、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記酸化物超電導線材は、ビスマス系酸化物超電導体を含む、請求項1から請求項8までのいずれかに記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記ビスマス系酸化物超電導体は、銀で被覆されたフィラメントである、請求項9に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記酸化物超電導線材は、イットリウム系酸化物超電導体を含む、請求項1から請求項8までのいずれかに記載の酸化物超電導線材の接続方法。
- 前記イットリウム系酸化物超電導体は、基板の上に形成された薄膜である、請求項11に記載の酸化物超電導線材の接続方法。
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