JP4533870B2 - ツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法 - Google Patents

ツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法 Download PDF

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Description

本発明は、2本の入力軸と1本の出力軸とを備え、各々の入力軸に摩擦クラッチがそれぞれ付設され、各入力軸と出力軸との間に変速ギアが介装されて、摩擦クラッチを選択的に係合してギア段を設定するツインクラッチ式変速機の制御装置及び制御方法に関するものである。
自動変速機の変速時(変速段の切替時)には、一般にクラッチ等の摩擦係合要素を開放から係合へ又は係合から開放へ切り替えるが、この際に、変速時のショックが発生しないように滑らかに且つ速やかに、摩擦係合要素(以下、単にクラッチとも言う)の操作を行なうようにしたい。そこで、種々の技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、自動変速機であるツインクラッチ式変速機による変速制御が記載されている。図28は特許文献1のツインクラッチ式変速機100を示す概略構成図である。このツインクラッチ式変速機100は、内燃機関(クランク軸102のみ示す)によって駆動され、2個のクラッチ110a,110bは共通の外側のクラッチケージ114を備え、同心的に並べて配置されている。クラッチ110aの摩擦板116aには、第1変速機入力軸117aが連結され、クラッチ110bの摩擦板116bには、変速機入力軸117aを囲むように同心に配置された中空の第2変速機入力軸117bが連結される。
第1速を達成するギア組101及び第3速を達成するギア組103の各入力歯車は、ニードルベアリングで軸受された遊び歯車として第2変速機入力軸117bに支持され、第5速を達成するギア組105の入力歯車は、第2変速機入力軸117bに固定されている。第2速を達成するギア組102の入力歯車は、第1変速機入力軸117aに固定され、第4速を達成するギア組104及び第6速を達成するギア組106の各の入力歯車は、ニードルベアリングで軸受された遊び歯車として第1変速機入力軸117aに支持される。ギア組101,103の各遊び歯車はスライドスリーブ118aによって、ギア組104,106の各遊び歯車はスライドスリーブ118bによって各入力軸に固定可能である。
変速機入力軸117a,117bと平行に備えられる変速機出力軸126は、各変速段に応じた被駆動歯車を支持しており、ギア組102,105の被駆動歯車は遊び歯車として形成され、スライドスリーブ118cを介して切替可能である。ギア組101,103,104,106の被駆動歯車は変速機出力軸226に固定されている。
これにより、第1速では、クラッチ110bを閉じ、スライドスリーブ118bをギア組101の入力歯車に係合し、スライドスリーブ118cをフリーにすれば、ギア組101を介して変速機出力軸226に回転力が伝わり、第3速では、クラッチ110bを閉じスライドスリーブ118bをギア組103の入力歯車に係合し、スライドスリーブ118cをフリーにすれば、ギア組103を介して変速機出力軸226に回転力が伝わり、第5速では、クラッチ110bを閉じ、スライドスリーブ118bをフリーにし、スライドスリーブ118cをギア組105の出力歯車に係合すれば、ギア組105を介して変速機出力軸226に回転力が伝わる。
同様に、第2速では、クラッチ110aを閉じ、スライドスリーブ118aをフリーにし、スライドスリーブ118cをギア組102の出力歯車に係合すれば、ギア組102を介して変速機出力軸226に回転力が伝わり、第4速では、クラッチ110aを閉じ、スライドスリーブ118aをギア組104の入力歯車に係合し、スライドスリーブ118cをフリーにすれば、ギア組104を介して変速機出力軸226に回転力が伝わり、第6速では、クラッチ110aを閉じ、スライドスリーブ118aをギア組106の入力歯車に係合し、スライドスリーブ118cをフリーにすれば、ギア組106を介して、変速機出力軸226に回転力が伝わる。
かかる変速機を備えた車両において、エンジンが正のトルクを供給する牽引走行中のダウンシフト(パワーオンダウンシフト)の場合、図29のタイムチャートの時点t1に示すように、まず、高速ギアのクラッチが閉じ、低速段ギアが入っておらずそのクラッチが開放し、高速段ギアのクラッチが滑り摩擦状態にあり、エンジンが正のトルクを供給する牽引走行中である。なお、エンジンが牽引走行中にあることは、惰性走行中のエンジン回転数が変速機軸回転数よりも高いことから推測できる。
時点t1でダウンシフトが開始されると、最初に高速段ギアのクラッチのために、スリップコントローラが作動する。高速段ギアのクラッチはそのとき滑り摩擦状態となって、エンジントルク全部を伝達する。クラッチが滑り摩擦状態になると、エンジン回転数が上昇するが、このとき、スリップコントローラは、エンジン回転数が低いギアの直ぐ上の回転数となるように高速段ギアのクラッチのスリップを制御する。高速段ギアのクラッチはランプ状に開放するかまたは制御されて開放するので、エンジン回転数が上昇し、低速段ギアのクラッチに接続された変速機入力軸をエンジン回転数に調節することができる。
エンジン回転数が同期回転数(目標回転数)に達すると、低速段ギアが入る。スリップコントローラは、高速段ギアのクラッチの回転数を高速段ギアの同期回転数のすぐ上に保持する。低速段ギアのクラッチはそのときランプ状に閉じて、持続スリップコントローラは高速段ギアのクラッチを益々開放する。高速段ギアのクラッチが完全に開放すると、このギアは外れる。低速段ギアのクラッチは静止摩擦状態までランプ状に更に閉じる。
特開平10−89456号公報
ところで、上述のようなパワーオンダウンシフトは、一般にドライバが加速したいときに行われるため、応答性やフィーリングが要求される。
しかしながら、前記従来例のような自動変速機におけるパワーオンダウンシフトでは、例えば、車速やスロットル開度などから判断された目的の変速段を達成する変速機入力軸が現在の変速段に用いている変速機入力軸と同軸であった場合、変速段を確立するために、一旦別の変速機入力軸を経由しなければならない。
つまり、前記従来例のツインクラッチ式変速機100において、例えば、第5速から第3速へのシフトダウンのようないわゆる飛び越しシフトをする場合、第5速に用いている第1変速機入力軸117aのクラッチ110aを一旦開放しなくては、第5速のギア組105の開放と第3速のギア組103の係合(即ち、スライドスリーブ118cの開放とスライドスリーブ118bのギア組103の入力歯車への係合)を行なうことができない。このとき、クラッチ110aの開放に伴い、他のクラッチ(即ち、クラッチ110a)を経由して達成される何らかの変速段(この場合、第4速)を用いて変速機を動力伝達状態にしておかなくては、エンジン負荷が急変して円滑な変速を実施できない。
このような場合、第6速から第5速への変速制御と、第5速から第4速への変速制御との2回の変速制御を繰り返して行なわなくてはならず、変速応答性が低下し、変速フィーリングも損なわれてしまう可能性がある。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、いわゆるツインクラッチ式変速機におけるパワーオンダウンシフトに当たって、目的の変速段を達成する変速機入力軸が現在の変速段に用いている変速機入力軸と同軸であるため、変速途中で一旦別の変速機入力軸を経由しなければならない同軸パワーオンダウンシフトの場合にも、速やかに且つフィーリングの良い変速制御を行なえるようにした、車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置は、2本の変速機入力軸と、1本の変速機出力軸と、前記の各変速機入力軸とエンジン側の入力部材との間にそれぞれ介装された摩擦係合要素と、前記の各変速機入力軸と前記変速機出力軸との間に、それぞれ動力断接装置(動力を断接可能な同期装置)を介して接続された複数の変速段のギア組と、変速(変速段の変更)を行なうべきか否かを判定すると共に、該変速を行なうべき場合には目標変速段を設定する変速判定手段と、前記変速判定手段により前記目標変速段に基づいて、前記変速が、パワーオンダウンシフトであって、且つ、前記目標変速段(変速後変速段)のギア組と現変速段(変速前変速段)のギア組とがいずれも前記2本の変速機入力軸のうちの一方である第1の変速機入力軸に接続されたものである、同軸パワーオンダウンシフトであるか否かを判定する特定変速判定手段と、前記特定変速判定手段により前記同軸パワーオンダウンシフトであると判断されたら、前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更が完了するまでの中間状態で、前記2本の変速機入力軸のうちの他方である第2の変速機入力軸に接続された経由変速段のギア組を一時的に使用して走行するように、前記両摩擦係合要素と前記各動力断接装置のうちの所要の装置とを制御する制御手段とをそなえた、車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置において、前記制御手段は、前記中間状態で、前記目標変速段が設定された際の前記エンジンの回転数を予測し、前記エンジンの回転数が該予測した回転数に漸近するように、前記現変速段のギア組が接続された前記第1の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第1の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、前記漸近するように調整したら、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第1の摩擦係合要素を開放しつつ、前記経由変速段のギア組が接続された前記第2の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第2の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、前記第1の摩擦係合要素の開放が完了した後に、前記現変速段のギア組の係合を解除し、前記目標変速段のギア組を係合し、前記目標変速段のギア組の係合が完了した後に、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第2の摩擦係合要素を開放しつつ前記第1の摩擦係合要素を締結することによって、前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更を完了することを特徴としている(請求項1)。
前記制御手段は、前記エンジンの回転数が該予測した回転数に近づくように行なう制御を、前記エンジン側の入力部材にそれぞれ接続された第1の摩擦係合要素第2の摩擦係合要素の何れかを制御対象として制御することにより実施することが好ましい(請求項2)。
前記変速判定手段は、前記車両の車速又は該車速に対応する量(車速対応部分の回転数例えば、変速機の出力軸回転数)と、前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)と、前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量)の時間変化率とに基づいて、前記変速の判定及び目標変速段の設定を行なうことが好ましい。
前記経由変速段は、前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれか、によって決定されることが好ましい(請求項3)。
この場合、変速時における、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数の回転上昇が大きいと判断された場合には、経由変速段を変速後変速段よりも低いギアに設定することで、回転上昇により消費されるイナーシャトルク分を補うことが好ましい。
前記制御手段は、前記同軸パワーオンダウンシフト時には、前記第1又は第2の摩擦係合要素の入出力回転数の差の目標値である目標差回転数を設定する目標値設定手段と、前記目標値設定手段により設定された前記目標差回転数を得るために前記の第1及び第2の摩擦係合要素に要求される総トルク容量を算出する総トルク容量算出手段と、前記の第1及び第2の摩擦係合要素への前記総トルク容量の配分比を設定する配分比設定手段と、前記総トルク容量算出手段により算出された前記総トルク容量と、前記配分比設定手段により設定された前記配分比とに基づいて、前記の第1及び第2の摩擦係合要素にそれぞれ要求される個別トルク容量を算出する個別トルク容量算出手段と、前記個別トルク容量算出手段により算出された個別トルク容量に応じて前記の第1及び第2の摩擦係合要素の締結状態を制御する締結制御手段と、をそなえていることが好ましい(請求項4)。
これにより、伝達トルクの配分状態に着目しながら、摩擦係合要素の回転速度を制御することになり、掛け替え制御を、トルクに着目した制御と回転速度に着目した制御とに切り分けながら、最終的には単一の制御量にして出力でき、シンプルな制御ロジックで、円滑な掛け替え動作を実現できるようになる。また、摩擦係合要素の開放,係合のタイミングを、完全に同期させることが可能になる。このような制御手法は、種々の自動変速機に容易に適用でき、しかも、より円滑でショックも少なく安定した変速制御を実現することができるようになる。また、このような制御ロジックでは、2つの摩擦係合要素を共通の制御ロジックで制御するため、各々のロジックで制御する制御ロジックに比べて安定性が高い。
前記目標値設定手段は、前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量と、前記エンジンの回転又は該回転に対応する量もしくは変速比とに基づいて前記目標値を設定することが好ましい(請求項5)。これにより、走行状態に適した目標差回転数を算出できる。
なお、パワーオン走行時では、制御対象となる摩擦係合要素の差回転数とは、入力軸回転数、もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数或いはそれ相当の回転数から、出力軸回転数或いはそれ相当の回転数を差し引いた値とし、パワーオン走行時に設定する目標差回転数は、エンジンの回転数、もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数或いはそれ相当の回転数から出力軸回転数或いはそれ相当の回転数を差し引いた値を目標値とすることが好ましい。これにより、走行状態(パワーオンorオフ)の切り替わりを、差回転数の算法方法を切り替えることで、同じ制御ロジックで対応できる。
また、前記総トルク容量算出手段は、前記パワーオンダウンシフトに限らず、前記目標差回転数を得るために要求する総トルク容量を求める際に、2つの摩擦係合要素を1つの摩擦係合要素とみなし、第1の摩擦係合要素の差回転数を制御対象とし、これを前目標差回転数に制御するための総クラッチ容量を算出するものとすることが好ましい。これにより、クラッチの掛け変え制御において、制御の切替のないロジックが構築できる。
この場合、制御対象となる摩擦係合要素の入力差回転数の演算にあたって、変速制御の進行状況に応じて、2つの摩擦係合要素の差回転数のいずれかに切り替えて演算を行なうことになる。これにより、同じ制御ロジックで、制御対象の摩擦係合要素を切り替えることにより、変速が可能になる。
前記総トルク容量算出手段は、前記総トルク容量を、変速機への入力トルクと、前記目標差回転数と前記第1の摩擦係合要素の入出力回転数の差である実差回転数との偏差に基づいて算出される補正量との和とすることが好ましい(請求項6)。
なお、前記配分比設定手段では、算出された総クラッチ容量を、2つの摩擦係合要素に、走行状況、もしくは変速状況に応じた配分比で配分し、前記締結制御手段では、配分された各摩擦係合要素が分担すべき個別トルク容量から、トルク容量−油圧変換特性に基づいて、制御指令圧を決定して、各摩擦係合要素の係合を調整する油圧をこの制御指令圧に応じて制御することが好ましい。これにより、同じ制御ロジックで、トルク配分比を制御することで、クラッチの掛け変えが可能になる。
トルク容量を油圧に変換する際には、それぞれの摩擦係合要素の入出力軸間の差回転数に対する摩擦抵抗特性を用いることが好ましい。これにより、クラッチ要領−油圧特性に応じた指令圧を算出できる。
また、前記の補正量を、制御対象の摩擦係合要素のトルク容量−油圧変換特性に反映させることが好ましい。このような摩擦係合要素(クラッチ)の学習制御によって、より適切に摩擦係合要素を制御できる。
また、前記制御手段は、定常走行時(非変速時)には、その時点で入力トルクを伝達している摩擦係合要素を制御対象とし、目標差回転数を設定し、計測された実差回転数が目標差回転数を追従するように制御することが好ましい。この時の配分比は、制御対象の摩擦係合要素に全容量が配分される状態とする。
また、この場合、現在非駆動側の摩擦係合要素に所定容量だけ持たせ、この摩擦係合要素の出力軸を連れ回す制御(これを、「連れ回し制御」という)を行なうことが好ましい。次回の変速制御が間もなく行われない場合は、このように変速前変速段の動力伝達要素の開放した後、開放側の摩擦係合要素の出力軸を連れ回す制御(開放側連れ回し制御)を実施することにより、この開放側の摩擦係合要素の出力軸が回転状態となり、出力軸を静止状態から変速後に要求される回転数まで変化させる場合に比べて、変速に要する時間を短縮することができる。また、出力軸を静止状態から回転させる場合に比べて第2の摩擦係合要素における差回転数の変化が小さい分、第2の摩擦係合要素の耐久性を向上させることができる。なお、この連れ回し制御は、開放側の摩擦係合要素の動力伝達系に属する動力伝達要素が完全な動力伝達状態になっていないことが条件なので、かかる動力伝達要素への負担もない。
この場合の所定容量は、変速機の入力軸回転数もしくは現在非駆動側の摩擦係合要素の入力軸回転数と、現在非駆動側の摩擦係合要素の出力軸イナーシャとから算出される値とすることが好ましい。
また、現在非駆動側の摩擦係合要素の変速段が確立されている場合は、前記の連れ回す制御を禁止することが好ましい。インターロック傾向の発生を回避することができる。
また、このように現在非駆動側の摩擦係合要素の変速段が確立されている場合は、現在非駆動側の摩擦係合要素の容量を、入力トルクを伝達するに必要最低限未満のトルク容量とすることが好ましい。これにより、インターロックを防止することができる。
前記制御手段による前記パワーオンダウンシフトの制御は、前記経由変速段のギア組を動力伝達状態とする第1の準備フェーズと、前記第1の変速機入力軸の回転数を調整するイナーシャフェーズと、前記第1の摩擦係合要素を締結から開放へ前記第2の摩擦係合要素を開放から締結へと切り替える摩擦係合要素の掛け替えを実施する第1の掛け替えフェーズと、前記第1の掛け替えフェーズの後に実施し、前記目標変速段を設定する第2の準備フェーズと、前記第2の準備フェーズの後に実施し、前記第1の摩擦係合要素を開放から締結へ前記第2の摩擦係合要素を締結から開放へと切り替える前記掛け替えを実施する第2の掛け替えフェーズと、前記イナーシャフェーズの後に実施し、前記経由変速段のギア組を開放する終了フェーズと、をそなえていることが好ましい(請求項7)。
前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、この順に順番に実施されることが好ましい(請求項8)。
前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズとが同時に実施され、前記掛け替えフェーズが、その次に実施されることが好ましい(請求項9)。これにより、変速時間の短縮を促進することができる。
前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、同時に実施されることが好ましい(請求項10)。これにより、変速時間の短縮をさらに促進することができる。
前記第1の準備フェーズでは、前記第1の摩擦係合要素を制御対象として、前記目標差回転数を設定し、前記第1の摩擦係合要素の実差回転数が前記目標差回転数を追従するように制御するとともに、このときの前記配分比を、前記第1の摩擦係合要素に全容量が配分される1:0の状態に設定することが好ましい(請求項11)。このように所定の差回転数を保持することで、摩擦係合要素の容量を入力トルクに略一致させることができる。
前記第1の準備フェーズで用いる前記目標差回転数は、その時点のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量と、前記エンジンの回転又は該回転に対応する量もしくは変速比とに基づいて設定することが好ましい(請求項12)。これにより、その時の走行状態に適した目標差回転数を設定することが可能となる。
前記第1の準備フェーズにおける前記の経由変速段の確立は、該経由変速段を接続する前記第2の摩擦係合要素が入力トルクを伝達するのに必要最低限未満のトルク容量の時に実施することが好ましい(請求項13)。経由変速段を確立するには、シンクロ制御を伴うが、シンクロ制御開始条件として、第2の摩擦係合要素が入力トルクを伝達しない状態となっていることが必要である。
前記の経由変速段を確立する際に、前記第2の摩擦係合要素の容量を所定容量だけ持たせ、該第2の摩擦係合要素の出力軸回転数を、前記経由変速段から推定される経由変速段確立後における前記第2の摩擦係合要素の出力軸回転数或いはそれ相当の回転数まで連れ回す連れ回し制御を行なうことが好ましい。この連れ回し制御により、前記のシンクロ負担を低減することができる。
この場合の推定される経由変速段確立後における第2の摩擦係合要素の出力軸回転数或いはそれ相当回転数とは、現在の出力軸回転数と、変速前変速段の変速比と、経由変速段の変速比とから推定される値とすることが好ましい。これにより、第2の摩擦係合要素の経由変速段確立後の回転数を推定して、適切な差回転制御を行なうことができる。
また、この場合の所定容量とは、変速機の入力軸回転数もしくは第2の摩擦係合要素の入力軸回転数と、第2の摩擦係合要素の出力軸イナーシャとから算出される値とすることが好ましい。
また、第2の摩擦係合要素に接続された該経由変速由以外の変速段が確立している場合は、その変速段を解除した後に、連れ回し制御を開始することが好ましい。
さらに、第2の摩擦係合要素の出力軸回転数が、経由変速段の変速比から推定される経由変速段確立後の第2の摩擦係合要素の出力軸回転数にほぼ等しくなったところで、第2の摩擦係合要素の容量を抜き、第2の摩擦係合要素が入力トルクを伝達するに必要最低限未満のトルク容量の時に、経由変速段を確立させることが好ましい。これにより、連れ回し制御の終了を判断すると共に、シンクロ制御開始を判断することができる。
また、制御対象となる第2の摩擦係合要素の差回転数が、所定の範囲内に、所定時間だけ保持されたことが確認され、且つ経由変速段の確立が判定されたら第1の準備フェーズを終了とすることが好ましい。
この場合の所定の範囲内とは、設定された目標差回転数に対して、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される所定値αだけ上下限を持たせたもの(目標差回転数±α)とすることが好ましい。
また、この場合の所定時間とは、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される時間とすることが好ましい。これにより、連れ回し制御(スリップ制御)の成立を適切に判断することができる。
前記イナーシャフェーズでは、前記第1の摩擦係合要素の入力軸回転数を、変速前の変速比で作られる入力軸回転数相当から、変速後の変速比で作られる入力軸回転数相当になるように、前記第1の摩擦係合要素の差回転数を制御する前記総トルク容量を求め、該総トルク容量を前記第1の摩擦係合要素にすべて配分することが好ましい(請求項14)。これにより、制御ロジック自体は切替なしで、目標値を変化させることにより回転変化(イナーシャフェーズ)を生じさせることができる。
このイナーシャフェーズの制御において、変速後の変速比で作られる入力軸回転数相当の回転数を、前記第1の摩擦係合要素の出力軸回転数或いはそれ相当の回転数と、変速前の変速比と、変速後の変速比とから推定するか、もしくは、前記第1の摩擦係合要素の出力軸回転数或いはそれ相当の回転数と、前記経由変速段の変速比と、変速後の変速比とから推定することが好ましい。
前記イナーシャフェーズの制御では、その時点の前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって、制御対象の前記第1の摩擦係合要素の入出力間の変速前後における目標差回転数の軌跡を作成し、計測した実差回転数が該目標差回転数に追従するように前記第1の摩擦係合要素のトルク容量を制御することが好ましい(請求項15)。このように、目標回転数の軌跡を用いることで、任意の変速時間、変速速度を設定できる。
また、このイナーシャフェーズの制御において、目標差回転数の動特性は、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定するものとすることが好ましい。これにより、走行状態に応じた変速を実行できる。
この場合、目標変速時間とは、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、変速機への入力軸回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される所定値とすることが好ましい。これにより、走行状況に適した目標変速時間を設定できる。
また、このイナーシャフェーズの制御において、作成された目標差回転数の微分値を算出し、その値に入力軸イナーシャを乗算することでトルク補正量を求め、エンジンに対してこのトルク補正量に応じたトルク補正要求を行なうことも好ましい。これにより、回転上昇分に消費されるイナーシャトルクを適切に補助できる。
前記イナーシャフェーズは、制御対象の摩擦係合要素の入力回転数が制御終了閾値になった時に終了することが好ましい。
この場合の、制御終了閾値とは、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定する所定値を、変速後に設定される目標差回転数から差し引いた値(推定変速後回転数以上)とすることが好ましい。
なお、前記回転数と変速後の目標差回転数の和未満で制御終了とすることが好ましい。
また、イナーシャフェーズの制御開始と同時にタイマを設定し、所定時間経過したのにもかかわらず、前記の入力回転数が制御終了閾値になったという終了条件が満たされない場合は、イナーシャフェーズの制御を強制的に終了されるものとすることも好ましい。
また、イナーシャフェーズと共に第1の掛け替え制御を行なう場合、摩擦係合要素のトルク容量の配分状態が、第2の摩擦係合要素が全容量を配分する状態になったことが確認されたら、タイマを設定し、所定時間経過したのにもかかわらず、前記の制御終了条件が満たされない場合は、制御を強制終了させるものとすることも好ましい。
この場合の所定時間とは、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定する所定値とすることが好ましい。これにより、変速状況に適したタイマの設定を実現できる。
前記第1の掛け替えフェーズでは、前記の第1の摩擦係合要素の差回転数制御を継続しつつ、前記総トルク容量を前記第1の摩擦係合要素へ全て配分する前記配分比が1:0の状態から前記第2の摩擦係合要素へ全て配分する前記配分比が0:1の状態へと移行するように、前記第1の摩擦係合要素への前記配分比を1から0へ漸減しつつ前記第2の摩擦係合要素への前記配分比を0から1へ漸増させる制御を行なうことが好ましい(請求項16)。これにより、差回転数を保持したまま、摩擦係合要素の掛け変えを行なうことができる。
ただし、前記の両摩擦係合要素の各配分比の和を常に1とする。例えば、開放側配分比=1−α,締結側配分比=α、ただし、0<α≦1とする。これにより、変速機内でのインターロックを防止し、エンジンの空ブケを防止することができる。
前記第1の掛け替えフェーズでは、前記配分比の変化率を、その時点の前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって算出される所定値とすることが好ましい(請求項17)。これにより、走行状態に適したクラッチ掛け変えが可能となる。
前記第1の掛け替えフェーズは、前記総トルク容量が前記第2の摩擦係合要素へ全て配分する状態になったところで終了とすることが好ましい。
前記第2の準備フェーズでは、制御対象の摩擦係合要素を前記第1の摩擦係合要素から前記第2の摩擦係合要素に切り替えて、前記目標差回転数を設定し、計測された前記実差回転数が前記目標差回転数を追従するように前記第2の摩擦係合要素を制御するとともに、前記配分比は、前記第2の摩擦係合要素に前記総トルク容量全てが配分される0:1の状態とすることが好ましい(請求項18)。これにより、第2の摩擦係合要素の差回転制御(スリップ制御)を実施できるようになる。
前記第2の準備フェーズにおいて設定される前記目標差回転数とは、その時点の前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって算出される値とすることが好ましい(請求項19)。これにより、その時の走行状態に適した、目標差回転数を設定することが可能になる。
この場合、推定する変速後回転数を、第2の摩擦係合要素の出力軸回転数(或いはそれ相当)と、経由変速段の変速比と、変速後の変速比とから算出することが好ましい。
また、第2の準備フェーズでは、変速後変速段を確立させる制御を行なうが、第1の摩擦係合要素が入力トルクを伝達するに必要最低限未満のトルク容量の時に、変速後変速段を確立する制御を行なうことが好ましい。シンクロ制御開始条件として、第1の摩擦係合要素が入力トルクを伝達しない状態となっていることが必要である。
また、第2の準備フェーズで、変速後変速段を確立させる際に、第1の摩擦係合要素のトルク容量を所定値だけ持たせ、第1の摩擦係合要素の出力軸回転数を、変速後変速段から推定される変速後変速段確立後における第1の摩擦係合要素の出力軸回転数相当まで連れ回す連れ回し制御を行なうことで、機械的操作の負担を低減させる制御を行なうことが好ましい。これにより、シンクロ負担を低減できる。
この場合の所定値とは、変速機の入力軸回転数、もしくは第1の摩擦係合要素の入力軸回転数と、第1の摩擦係合要素の出力軸イナーシャとから算出された値とすることが好ましい。
また、この連れ回し制御は、第1の摩擦係合要素の変速前変速段が解除された後に、開始することが好ましい。
この連れ回し制御時には、連れ回されている第1の摩擦係合要素の出力軸回転数が、推定変速後回転数にほぼ等しくなったところで、この第1の摩擦係合要素の容量を抜き、第1の摩擦係合要素が入力トルクを伝達するに必要最低限未満のトルク容量の時に、変速後変速段を確立する制御を行なうことが好ましい。
また、第2の準備フェーズにおける前記変速後変速段の確立は、変速前変速段が開放された後に実施することとする。これにより、いわゆる二重掴みを回避することができる。
第2の準備フェーズは、制御対象となる第1の摩擦係合要素の差回転数が、所定の範囲内に、所定時間だけ保持されたことが確認され、且つ変速後変速段の確立が判定されたら終了とすることが好ましい。
この場合の所定の範囲内とは、設定された目標差回転数に対して、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、変速機への入力軸回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される所定値αだけ上下限を持たせたもの(目標差回転数±α)とすることが好ましい。
また、この場合の所定時間とは、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される時間とすることが好ましい。
前記第2の掛け替えフェーズでは、前記の第2の摩擦係合要素の差回転数制御を継続しつつ、前記総トルク容量を前記第2の摩擦係合要素へ全て配分する0:1状態から前記第1の摩擦係合要素へ全て配分する1:0状態へと移行するように、前記第2の摩擦係合要素への前記配分比を1から0へ漸減しつつ前記第1の摩擦係合要素への前記配分比を0から1へ漸増させる制御を行なうことが好ましい(請求項20)。なお、このとき、差回転数を保持したまま、クラッチの掛け変えを行なう。
また、この場合も、前記の両摩擦係合要素の各配分比の和を常に1とする。例えば、開放側配分比=1−α,締結側配分比=α、ただし、0<α≦1とする。これにより、変速機内でのインターロックを防止し、エンジンの空ブケを防止することができる。
この第2の掛け替えフェーズにおいては、前記配分比の変化率を、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって算出される所定値とすることが好ましい。これにより、走行状態に適したクラッチ掛け変えが可能となる。
前記第2の掛け替えフェーズは、前記総トルク容量が前記第1の摩擦係合要素へ全て配分する状態になったところで終了とすることが好ましい。
前記終了フェーズでは、制御対象を前記第2の摩擦係合要素から前記第1の摩擦係合要素に切り替えて、前記目標差回転数を設定し、計測された実差回転数が前記目標差回転数を追従するように前記第1の摩擦係合要素を制御することが好ましい(請求項21)。
また、前記終了フェーズでの配分比は、クラッチ1に全容量が配分される状態とする。
前記終了フェーズでは、前記目標差回転数を、その時点のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定することが好ましい(請求項22)。
前記終了フェーズにおいて、次回の変速制御が間もなく行われるかを判断し、行われると判断した場合は、予測変速段を確立する制御(これを、プリシフト制御と呼ぶ)を行なうことが好ましい。このように変速制御が連続する場合は、最終的な変速段への指令に前もって応答する制御(プリシフト)を実施することで、変速動作時間を短縮することができる。
この次回の変速制御の判断は、現在の車速,スロットル開度,及び現在の変速段に基づいて行なうことが好ましい。
また、前記予測変速段の確立は、経由変速段が開放された後に行なうことが好ましい。これにより、いわゆる二重掴みを回避することができる。
また、次回の変速制御が間もなく行われないと判断した場合は、経由変速段を開放し、第2の摩擦係合要素のトルク容量を所定値だけ持たせ、第2の摩擦係合要素の出力軸を連れ回す制御(連れ回し制御)を行なうことが好ましい。
この連れ回し制御は、経由変速段が開放された後に行なうことが好ましい。これにより、いわゆる二重掴みを回避することができる。
前記連れ回し制御において、所定値とは、エンジンの回転数、もしくは第2の摩擦係合要素の入力軸回転数と、第2の摩擦係合要素の出力軸イナーシャとから算出される値とすることが好ましい。
前記終了フェーズは、制御対象となる摩擦係合要素の差回転数が、所定の範囲内に、所定時間だけ保持されたことが確認され、且つ前記プリシフト制御における予測変速段の確立判定、もしくは前記第2の摩擦係合要素の連れ回し制御の確立判定がされたら、終了することが好ましい。
この場合の所定の範囲内とは、設定された目標差回転数に対して、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される所定値αだけ上下限を持たせたもの(目標差回転数±α)とすることが好ましい。
また、この場合の所定時間とは、その時のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度やアクセル操作量や変速機への入力トルクなど)、及び、エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定される時間とすることが好ましい。
前記目標値設定手段は、前記目標差回転数に対応する前記変速機への入力回転の目標値である入力目標回転数を制御対象の摩擦係合要素の出力回転数以上になるように設定し、前記総トルク容量算出手段は、前記エンジンの実回転数が前記目標差回転数設定手段により設定された前記目標回転数となるために前記の第1及び第2の摩擦係合要素に要求される総トルク容量を算出することが好ましい(請求項23)。
本発明の車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法は、2本の変速機入力軸と、1本の変速機出力軸と、前記の各変速機入力軸とエンジン側の入力部材との間にそれぞれ介装された摩擦係合要素と、前記の各変速機入力軸と前記変速機出力軸との間に、それぞれ動力断接装置(動力を断接可能な同期装置)を介して接続された複数の変速段のギア組と、をそなえた、車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法であって、変速(変速段の変更)を行なうべきか否かを判定すると共に、該変速を行なうべき場合には目標変速段を設定する変速判定ステップと、前記変速判定ステップにより前記目標変速段に基づいて、前記変速が、パワーオンダウンシフトであって、且つ、前記目標変速段(変速後変速段)のギア組と現変速段(変速前変速段)のギア組とがいずれも前記2本の変速機入力軸のうちの一方である第1の変速機入力軸に接続されたものである、同軸パワーオンダウンシフトであるか否かを判定する特定変速判定ステップと、前記特定変速判定ステップにより前記同軸パワーオンダウンシフトであると判断されたら、前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更が完了するまでの中間状態で、前記2本の変速機入力軸のうちの他方である第2の変速機入力軸に接続された経由変速段のギア組を一時的に使用して走行するように、前記両摩擦係合要素と前記各動力断接装置のうちの所要の装置とを制御する制御ステップとをそなえた車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法において、前記制御ステップでは、前記中間状態で、前記目標変速段が設定された際の前記エンジンの回転数を予測し、前記エンジンの回転数が該予測した回転数に漸近するように、前記現変速段のギア組が接続された前記第1の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第1の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、前記漸近するように調整したら、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第1の摩擦係合要素を開放しつつ、前記経由変速段のギア組が接続された前記第2の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第2の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、前記第1の摩擦係合要素の開放が完了した後に、前記現変速段のギア組の係合を解除し、前記目標変速段のギア組を係合し、前記目標変速段のギア組の係合が完了した後に、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第2の摩擦係合要素を開放しつつ前記第1の摩擦係合要素を締結することによって、前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更を完了することを特徴としている(請求項24)。
前記制御ステップは、前記経由変速段のギア組を動力伝達状態とする第1の準備フェーズと、前記第1の変速機入力軸の回転数を調整するイナーシャフェーズと、前記第1の摩擦係合要素を締結から開放へ前記第2の摩擦係合要素を開放から締結へと切り替える摩擦係合要素の掛け替えを実施する第1の掛け替えフェーズと、前記第1の掛け替えフェーズの後に実施し、前記目標変速段を設定する第2の準備フェーズと、前記第2の準備フェーズの後に実施し、前記第1の摩擦係合要素を開放から締結へ前記第2の摩擦係合要素を締結から開放へと切り替える前記掛け替えを実施する第2の掛け替えフェーズと、前記イナーシャフェーズの後に実施し、前記経由変速段のギア組を開放する終了フェーズと、をそなえていることが好ましい(請求項25)。
前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、この順に順番に実施されることが好ましい(請求項26)。
前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズとが同時に実施され、前記掛け替えフェーズが、その次に実施されることが好ましい(請求項27)。
前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、同時に実施されることが好ましい(請求項28)。
本発明の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置又は制御方法によれば、パワーオンダウンシフトであって目標変速段(変速後変速段)のギア組と現変速段(変速前変速段)のギア組とが同一入力軸(第1の変速機入力軸)に接続された、同軸パワーオンダウンシフトの場合には、現変速段のギア組を使用する走行から目標変速段のギア組を使用する走行への変更が完了するまでの中間状態で、第2の変速機入力軸に接続された経由変速段のギア組を一時的に使用して走行し、この経由変速段のギア組を一時的に使用して走行する時に、現変速段のギア組を使用する走行から目標変速段のギア組を使用する走行へ変更することにより、第2の変速機入力軸により動力伝達状態を確保して、エンジン負荷の急変を回避しながら、円滑な同軸パワーオンダウンシフトを実施することができる。
特に、中間状態で、目標変速段が設定された際のエンジンの回転数を予測し、このエンジンの回転数が予測した回転数に漸近してさらに予測した回転数を維持するように、前記両摩擦係合要素の係合を制御するので、エンジンの回転同期は、経由する別軸の変速段に同期させるのではなく、推定される変速後回転の軸に同期させることになり、変速時間を短縮することができる。
したがって、同軸パワーオンダウンシフトに関する応答性やフィーリングを向上させることができる。
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[各実施形態に共通する自動変速機の変速制御の構成]
各実施形態を説明する前に、まず、図1〜図6を参照して、各実施形態に共通する自動変速機の変速制御の原理及び基本構成について説明する。
図2は、一般的な4速自動変速機の構成を示す模式図である。図2に示すように、この自動変速機は、入力軸11と出力軸12との間に介装され、2組のプラネタリギア21,22を直列に備えている。
第1のプラネタリギア21のサンギア(S1)21Sは、ケーシング13との間に摩擦係合要素(以下、クラッチという)としてのブレーキ(クラッチC)23を介装され、このブレーキ23の係合(以下、締結とも言う)により回転停止し、入力軸11との間に摩擦係合要素としてのクラッチ(クラッチD)24を介装され、このクラッチ24の係合により入力軸11と一体回転するようになっている。以下、クラッチ,ブレーキ等の摩擦係合要素を、単にクラッチという。
また、第1のプラネタリギア21のプラネタリピニオンを枢支するキャリア(C1)21Cは、入力軸11との間にクラッチ(クラッチE)25を介装され、このクラッチ25の係合により入力軸11と一体回転し、ケーシング13との間にクラッチとしてのブレーキ(クラッチA)26を介装され、ブレーキ26の係合により回転停止し、第2のプラネタリギア22のリングギア(R2)22Rとの間にクラッチ(クラッチB)27を介装され、このクラッチ27の係合により第2のプラネタリギア22のリングギア22Rと一体回転するようになっている。
また、第1のプラネタリギア21のリングギア(R1)21Rは、第2のプラネタリギア22のプラネタリピニオンを枢支するキャリア(C2)22Cに直結されている。
一方、第2のプラネタリギア22のサンギア(S2)22Sは入力軸11に直結されている。また、第2のプラネタリギア22のプラネタリピニオンを枢支するキャリア22Cは、第1のプラネタリギア21のリングギア21Rに直結されるとともに出力軸12に直結されている。また、第2のプラネタリギア22のリングギア22Rは、上記のように第1のプラネタリギア21のキャリア21Cにクラッチ27を介して接続されている。
図3の締結表に示すように、このような自動変速機において、1速から2速ヘアップシフトする場合は、クラッチAを締結状態から開放状態に切り替えると共に、クラッチCを締結状態から開放状態へ切り替え、その他のクラッチは変速前の状態を保持する。つまり、締結しているクラッチAを開放しつつ、開放しているクラッチCを締結することで、1速から2速へのアップシフトが行われる。
この切替をより単純化するために、変速機の構成を極限まで単純化すると、図4に示すように、2つのある変速比のギアを備え、それぞれがクラッチ接続されている平行軸型の自動変速機と考えられる。つまり、ある変速比(例えば1速)のギア列31に直列に接続されたクラッチ33と、他の変速比(例えば2速)のギア列32に直列に接続されたクラッチ34とが互いに並列に接続され、クラッチ33,34の係合要素の一方が入力軸35に接続され他方がギア列31,32及びファイナルギア37等を介して出力軸36に接続されたものと考えることができる。
そして、上記の1速から2速へのアップシフトは、図4に示す2速変速機において、今締結しているクラッチ33を開放しつつ、今開放されているクラッチ34を締結するような変速制御を行なうことに相当するものと考える。
このクラッチ33,34の掛け替えにあたって、クラッチ33,34の差回転制御と言う視点で、この構成を見ると、入力トルクTinと入力回転ωinとに対して、2つのクラッチの締結容量Tc1,Tc2を制御して、いずれかのクラッチの差回転を制御するのであるから、この2速変速機から、クラッチ部分だけを抜き出して考えると、図5に示すように、2つのクラッチをそれぞれ個々に制御するのではなく、1つの統合クラッチの容量制御による差回転制御に置き換えて両クラッチの容量制御をするものと考えることができる。
そして、上記の1速から2速への変速は、図4に示す2速変速機において、今締結しているクラッチ33を開放しつつ、今開放されているクラッチ34を締結するような変速制御を行なうことに相当するものと考える。
このクラッチ33,34の掛け替えにあたって、クラッチ33,34の差回転制御と言う視点で、この構成を見ると、入力トルクTinと入力回転ωinとに対して、2つのクラッチの締結容量Tc1,Tc2を制御して、いずれかのクラッチの差回転を制御するのであるから、この2速変速機から、クラッチ部分だけを抜き出して考えると、図5に示すように、1つの統合クラッチの容量制御による差回転制御に置き換えて考えることができる。
そこで、各実施形態にかかるツインクラッチ式変速機の制御装置の概略構成としては、図1に示すように、前段にクラッチの回転制御(入力側の回転速度又は差回転の制御)の機能要素(回転速度又は差回転のフィードバック制御部)B7を置き、後段にクラッチの配分比制御の機能要素(クラッチ容量配分部)B9を置く構成にて、クラッチ1を締結から開放に切替クラッチ2を開放から締結に切り替える制御を行なう場合を考える。
この構成で、変速機への入力軸回転速度(入力軸11又は35の回転速度、即ち、エンジンの回転速度)、もしくは、開放に切り替えられる開放側クラッチであるクラッチ1の入出力間の差回転が所定範囲内になるよう、開放側クラッチ1と締結側クラッチ(以下、クラッチ2という)との、2つのクラッチの総トルク容量を制御しながら、その総トルク容量を2つのクラッチヘ配分する際の配分比を変更することで、クラッチの差回転制御を行ないつつ、伝達トルク分担の入れ替え制御を実現するようにしている。なお、最終的には、開放側クラッチ1の伝達トルク容量を変換部B11において制御圧に変換し、締結側クラッチ(係合側クラッチ)2の伝達トルク容量を変換部B12において制御圧に変換して、制御指令を実施することになる。
このように制御系を構成することにより、クラッチの差回転の制御とトルクの配分比の制御とを分離しながら考えて、最終的にはこれらを統合した制御量を生成して制御することができるので、種々の自動変速機の変速制御への適合が容易になるのである。
このような制御系を用いて、変速機の入力軸(入力部材)11の回転に関し、変速前に締結していて変速に伴って開放する開放側クラッチ1の開放に伴い、自発的に生じる回転変化と、変速制御の結果生じる回転変化とが、同方向になるような変速を行なう場合を考える。
開放側クラッチ1の開放に伴い自発的に生じる回転変化とは、アクセル開度を増加させてエンジン出力を増加させている場合には、開放側クラッチ1の開放に伴いエンジン回転数(即ち、入力軸11の回転数)は増加するため、この場合の開放側クラッチ1の開放に伴い自発的に生じる回転変化は回転数の上昇である。また、アクセル開度を低下させてエンジン出力を低下させている場合には、開放側クラッチ1の開放に伴いエンジン回転数(入力軸11の回転数)は減少するため、この場合の開放側クラッチ1の開放に伴い自発的に生じる回転変化は回転数の低下である。
また、変速制御の結果生じる回転変化とは、アップシフト時には、変速の結果、エンジン回転数(即ち、入力軸11の回転数)は減少するため、この場合の開放側クラッチ1の開放に伴い自発的に生じる回転変化は回転数の低下である。また、ダウンプシフト時には、変速の結果、エンジン回転数(即ち、入力軸11の回転数)は増加するため、この場合の開放側クラッチ1の開放に伴い自発的に生じる回転変化は回転数の上昇である。
したがって、開放側クラッチ1の開放に伴い自発的に生じる入力軸11の回転変化と、変速制御の結果生じる入力軸11の回転変化とが、同方向になるような変速とは、アクセル踏み込みによるダウンシフト(キックダウン)、或いは、アクセル戻しによるアップシフト(コーストアップ)が相当する。
このような状況下では、まず、入力軸回転の速度を、変速前の変速比で作られる回転数相当から、変速後の変速比で作られる回転数相当に変化させ、その後に、クラッチの掛け替えを行なうことになる。
ところで、図4に示す2速変速機を発展させたものとして、図6に示す2軸型6速自動変速機がある。下記の各実施形態では、このような2軸型6速自動変速機について変速する場合を説明する。
図6に示すように、この自動変速機は、入力軸(入力部材)51と、いずれもこの入力軸51に入力側部材を結合された第1クラッチ(クラッチ1)52及び第2クラッチ(クラッチ2)53と、出力軸54と、第1クラッチ52と出力軸54との間に介装された変速ギア機構60Aと、第2クラッチ53と出力軸54との間に介装された変速ギア機構60Bと、を備えて構成される。
変速ギア機構60Aは、入力側軸(入力軸1)55Aと、出力側軸(出力軸1)56Aと、入力側軸55Aと出力側軸56Aとの間に介装された、ギア61a,61b,シンクロ機構付き係合機構(以下、単にシンクロとも言う)61cからなる1速ギア組(ギア列1)61,ギア63a,63b,シンクロ機構付き係合機構63cからなる3速ギア組(ギア列3)63,ギア65a,65b,シンクロ機構付き係合機構65cからなる5速ギア組(ギア列5)65とをそなえている。
変速ギア機構60Bは、入力側軸(入力軸)55Bと、出力側軸(出力軸)56Bと、入力側軸55Bと出力側軸56Bとの間に介装された、ギア62a,62b,シンクロ機構付き係合機構62cからなる2速ギア組(ギア列2)62と、ギア64a,64b,シンクロ機構付き係合機構64cからなる3速ギア組(ギア列4)64と、ギア66a,66b,シンクロ機構付き係合機構66cからなる5速ギア組(ギア列6)66とをそなえている。
なお、各ギア組61〜66はそれぞれ異なるギア比r1〜r6を有している。
また、出力側軸56Aの出力端部にはギア57aが固設され、出力軸54のギア54aと噛み合って出力側軸56Aから出力軸54に動力伝達できるようになっており、出力側軸56Bの出力端部にはギア57bが固設され、出力軸54のギア54aと噛み合って出力側軸56Bから出力軸54に動力伝達できるようになっている。
1速,3速,5速の変速段を達成するには、達成すべき変速ギア組の係合機構61c又は63c又は65cのみを係合させ、第1クラッチ52を係合させ、第2クラッチ53を開放する。2速,4速,6速の変速段を達成するには、達成すべき変速ギア組の係合機構62c又は64c又は66cのみを係合させ、第2クラッチ53を係合させ、第1クラッチ52を開放する。
したがって、例えば、6速から5速にダウンシフトする場合を想定すると、6速達成状態、即ち、第2クラッチ53を係合すると共に第1クラッチ52を開放し、2速ギア組62,4速ギア組64,6速ギア組66のうち6速ギア組66のクラッチ26のみを係合させ、他のギア段のクラッチ22,24を開放させた状態から、5速達成状態、即ち、第1クラッチ52を係合すると共に第2クラッチ53を開放し、1速ギア組61,3速ギア組63,5速ギア組65のうち5速ギア組65のクラッチ25のみを係合し、他のギア段のクラッチ21,23を開放させた状態へと変更する。
したがって、この場合は、第2クラッチ53を係合から開放へ第1クラッチ52を開放から係合へと切り替える掛け替え制御とともに、2速ギア組62,4速ギア組64,6速ギア組66のうち6速ギア組66のクラッチ26のみを係合した状態から、1速ギア組61,3速ギア組63,5速ギア組65のうち5速ギア組65のクラッチ25のみを係合した状態へ切り替える(これを、クラッチ開閉以外の機械的操作とも呼ぶ)制御を行なうことになる。
つまり、変速段を1段のみ変更する場合には、第1クラッチ52と第2クラッチ53との間で掛け替え制御を行なえばよい。
しかしながら、アクセル踏み込みによるダウンシフト(パワーオンダウンシフト)の場合、例えば6速から4速や5速から3速や4速から2速等に飛び越しダウンシフトすることがある。
このような飛び越しダウンシフトの場合、第1クラッチ52と第2クラッチ53との内何れか一方のみのクラッチにつながれた複数のギア組間でギア組を出力側軸56A,56Bに係合するクラッチの切替を要することになる。例えば6速から4速へのダウンシフトの場合、2速ギア組62,4速ギア組64,6速ギア組66のうち6速ギア組66のクラッチ26のみを係合した状態から4速ギア組64のクラッチ24のみを係合した状態へと切り替えなくてはならない。つまり、変速前と減速後とで同一のクラッチを用い、同一の入力側軸及び出力側軸を用いるダウンシフトとなる。なお、パワーオンダウンシフトにおいて変速前後で同軸の入出力側軸を用いる変速の場合を、「同軸パワーオンダウンシフト」と呼ぶこととする。
このような切替は、これらのギア組を動力伝達状態にしたままでは行なえないので、この切替中だけは一時的に第2クラッチ53を開放しなくてはならない。しかし、第2クラッチ53を開放してしまうと、変速制御の間、動力源であるエンジンと駆動輪との間の接続が一時的ではあるが遮断され、トルク伝達が断絶されてしまうため、運転性が悪化することが懸念される。つまり、アクセル踏み込み時に、エンジンの負荷が無くなるかまたは大幅に減少することからエンジン回転数(速度)の急増を招くと共に空送感を招くおそれがあり、このようなエンジン回転数の変化は、変速ショックを招くため回避しなくてはならない。
そこで、この飛び越しシフトのような変速時には、変速前変速段から変速後変速段への変速の間に、中間状態として経由変速段を一旦実現しするように制御することが有効である。この場合、経由変速段とは変速前変速段と変速後変速段との間の変速段が好ましい。例えば、5速から3速へのダウンシフトの場合を例に説明すれば、変速前変速段とは5速であり、変速後変速段とは3速であり、経由変速段とは4速である。
したがって、同軸パワーオンダウンシフトを行なう際には、一旦、変速前変速段による動力伝達に係るクラッチと経由変速段による動力伝達に係るクラッチとの間で掛け替え(第1の掛け替え)を行ない、この第1の掛け替え後に、変速前変速段から変速後変速段への切換(5速から3速へのダウンシフトの場合なら、5速ギア組65のクラッチ25のみを係合した状態から3速ギア組63のクラッチ23のみを係合した状態への切替)を行ない、その後、経由変速段による動力伝達に係るクラッチと変速後変速段による動力伝達に係るクラッチとの間で掛け替え(第2の掛け替え)を行なう。なお、第1の掛け替えの前に予め、経由変速段を使用可能な状態(5速から3速へのダウンシフトの場合なら、4速ギア組64のクラッチ24のみを係合した状態)としておく。
いずれにしても、同軸パワーオンダウンシフトの場合には、クラッチの掛け替えを実質2回繰り返すため、応答性の悪化が懸念される。特に、アクセル操作による変速、つまり、アクセル踏み込みによるダウンシフト(パワーオンダウンシフト)においては、応答性に対するドライバの要求は、アクセル操作の無い変速の場合よりも厳しいため、如何に応答性よくこのような同軸パワーオンダウンシフトを行なうかが重要である。
なお、このような同軸パワーオンダウンシフトの場合、変速前変速段と変速後変速段とで締結するクラッチは、第1の掛け替えの際に締結から開放に切り替えられ、第2の掛け替えの際に開放から締結に切り替えられる一方で、経由変速段で締結するクラッチは、第1の掛け替えの際に開放から締結に切り替えられ、第2の掛け替えの際に締結から開放に切り替えられるので、同一のクラッチが、開放側クラッチになったり締結側クラッチになったりする。以下の各実施形態の説明では、混乱を避けるため、変速後変速段の使用時に締結されるクラッチを締結側クラッチとも呼び、変速後変速段の使用時に開放されるクラッチを開放側クラッチと呼ぶ。
[第1実施形態]
図7〜図11は本発明の第1実施形態に係るツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を示すものである。
(変速制御に係る機能構成)
本実施形態では、本発明のアップシフトに係る変速制御を、上述のような変速機の変速段切替時に要求される第1クラッチ52と第2クラッチ53との一方を係合から開放に動作させ、他方を開放から係合に動作させる際に適用する。なお、ここでは、第1クラッチ52を係合から開放に切り替えるクラッチ1とし、第2クラッチ53を開放から係合に切り替えるクラッチ2として説明するが、第1クラッチ52を開放から係合に切り替え、第2クラッチ53を係合から開放に切り替える場合も、同様に本制御を適用できるのは勿論である。
本実施形態にかかる制御装置も、上述の図1に示す基本構成を含むものであるが、本制御装置は、その変速制御フェーズに着目すると、上述の基本構成として説明した掛け替えフェーズと、この掛け替えフェーズの前段階で掛け替えの準備をする準備フェーズと、掛け替えフェーズの次に、イナーシャ分を調整するイナーシャフェーズと、これに次いで、制御の終了に至る終了フェーズとを備えている。
このような観点から、本制御装置にかかる制御機能(摩擦係合要素制御手段)10は、図7に示すように、目標値設定手段10Aと、総トルク容量算出手段10Bと、配分比設定手段10Cと、個別トルク容量算出手段10Dと、締結制御手段10Eとを有している。また、本制御で着目している同軸パワーオンダウンシフトを判定するため、変速判定手段(変速判定部)3Aと、特定変速判定手段(同軸パワーオンダウンシフト判定部)3Bとを有している。
これらの各手段10A〜10E,3A,3Bは、変速機用ECU(電子制御ユニット)3内の機能要素として備えられている。
まず、変速判定の手段について説明する。
変速判定手段3Aは、変速(変速段の変更)を行なうべきか否かを判定すると共に、変速を行なうべき場合には目標変速段を設定する。この変速判定は、車速及びエンジン負荷(例えば、スロットル開度或いはアクセル操作量)をパラメータとする、いわゆる変速マップに基づいて行なわれ、車速及びエンジン負荷で決まる運転点がダウンシフト線を超えた位置に移動したら、変速マップ上の運転点の位置に応じた変速段を目標変速段に設定する。
特定変速判定手段3Bでは、上記のダウンシフトが、エンジンから変速機側に正のトルクが入力されているパワーオン状態のダウンシフトであって、目標変速段(変速後変速段)で使用するギア組と現変速段(変速前変速段)で使用するギア組とが、同一のクラッチを使うものであるか否か、換言すれば、同一の変速ギア機構(同一の入力側軸及び出力側軸)を使うもの(同軸パワーオンダウンシフト)であるか否かを判定する。
パワーオン状態であるかは、アクセル操作量やスロットル開度が基準値以上であるか、又は、アクセル操作量変化量やスロットル開度変化量が基準変化量以上であるか、又は、これらの組み合わせにより判定することができる。或いは、動力伝達中のクラッチに微小な滑りを発生させておけば、このクラッチにおいて、入力回転数>出力回転数によっても判定することができる。
また、目標変速段と現変速段とで同軸を用いるか否かは、目標変速段と現変速段とから判定することができる。
次に、変速制御の手段について説明する。ここでは、5速段から3速段への同軸パワーオンダウンシフトを想定して説明するが、他の同軸パワーオンダウンシフトの場合も、相応の変速段及びクラッチに置き換えて適用できるものである。
目標値設定手段10Aは、制御対象のクラッチの回転目標値として、制御対象クラッチの入出力側回転速度の差である目標差回転数を設定する。制御対象のクラッチは、変速制御の進行状態で変わり、制御開始時には、現変速段(ここでは、5速段)で使用していて一旦開放された後で締結される締結側クラッチ(現変速段で使用しているクラッチ1)の入出力側回転速度の差である第1目標差回転数(目標差回転1ともいう)Δn1を設定する。また、制御の後半では、目標変速段(ここでは、3速段)で使用する締結側クラッチ(これもクラッチ1)の入出力側回転速度の差である第2目標差回転数(目標差回転2ともいう)Δn2を設定する。そして、現変速段と目標変速段との切替時の中間状態で経由変速段(ここでは、4速段)を確立する際のクラッチ1とクラッチ2との掛け替えに当たり、経由変速段使用時に締結しその後に開放される開放側クラッチ(クラッチ2)の入出力側回転速度の差である第3目標差回転数(目標差回転3ともいう)Δn3を設定する。
なお、パワーオンダウンシフト時には、第1,2目標差回転数Δn1,Δn2は、制御対象のクラッチの入力回転数が出力回転数よりも所定の微小量だけ大きい値とする。つまり、第1目標差回転数Δn1は、クラッチ1の入力側回転数(入力軸51の回転数)がクラッチ1の出力側回転数[入力側軸(入力軸1)55Aの回転数]よりもこの第1目標差回転数Δn1だけ大きくなるように設定される。また、第2目標差回転数Δn2は、クラッチ1の入力側回転数(入力軸51の回転数)がクラッチ1の出力側回転数[入力側軸(入力軸1)55Aの回転数]よりもこの第2目標差回転数Δn2だけ大きくなるように設定される。
パワーオン走行時には、クラッチを滑らせればエンジン回転速度(入力側回転速度)が上昇するので、クラッチの滑り状態を制御すれば、クラッチの入力回転数が出力回転数よりも目標差回転数Δnだけ大きい状態(エンジン回転速度がクラッチの出力回転速度よりも高い状態)を実現できる。
また、第3目標差回転数Δn3は、制御対象のクラッチの入力回転数が出力回転数よりも一定以上の量だけ大きい値とするが、この第3目標差回転数Δn3は、目標変速段(3速段)で使用する締結側クラッチ(クラッチ1)の入出力差回転数が、上記の第2目標差回転数Δn2となるように、換言すれば、第3目標差回転数Δn3は、クラッチ1の入力側回転数(入力軸51の回転数)が目標変速段(3速段)でのクラッチ1の出力側回転数よりも第2目標差回転数Δn2だけ高くするように設定される。
つまり、経由変速段(4速段)による変速比をr4、目標変速段(3速段)による変速比をr3とすると、経由変速段(4速段)使用時のクラッチ2の出力側回転数[入力側軸(入力軸2)55Bの回転数]Ntin2と目標変速段(3速段)使用時のクラッチ1の出力側回転数[入力側軸(入力軸1)55Aの回転数]Ntin1との関係は、次式(A)のようになり、目標変速段使用時の回転数Ntin1と経由変速段使用時の回転数Ntin2との差は、次式(B)のようになり、第3目標差回転数Δn3は、次式(C)のように、目標変速段使用時のクラッチ1の出力側回転数Ntin1により表すことができる。
r3・Ntin2=r4・Ntin1 (A)
Ntin1−Ntin2=(1−r4/r3)・Ntin1 (B)
Δn3=Δn2+(Ntin1−Ntin2)=Δn2+(1−r4/r3)・Ntin1(C)
なお、目標値設定手段10Aは、変速を実行することが決定される(変速決心)前の定常走行時にも、車両のパワーオン走行であることを条件に、締結して使用中のクラッチ(次回の変速前のクラッチ)について目標差回転数を設定する。この時の目標差回転数は、第1目標差回転数Δn1を用いる。つまり、パワーオン走行時には、変速が決断されなくても、締結中のクラッチに目標差回転数に応じた滑りを与えることで、その後の変速開始後の処理を速やかに行なえるようにしている。
総トルク容量算出手段10Bでは、例えば、スロットル開度やアクセル開度などのエンジン負荷に応じたパラメータ値から総伝達トルク容量を算出する。したがって、例えば、掛け替えフェーズ(トルクフェーズとも言う)では、各クラッチにより伝達される総伝達トルク容量そのものをエンジン負荷に対応するように設定して、この設定した総伝達トルク容量が変速機により実際に伝達されるように制御することで入力軸回転速度を一定状態に維持することができる。
なお、本実施形態では、現変速段(変速前変速段)から経由変速段に移行する際には、クラッチ1を開放しクラッチ2を係合する第1の掛け替えフェーズ(掛け替えフェーズI)を行ない、経由変速段から目標変速段(変速後変速段)に移行する際には、クラッチ2を開放しクラッチ1を係合する第2の掛け替えフェーズ(掛け替えフェーズII)を行なうので、2つの掛け替えフェーズを行なうことになる。
また、エンジン出力に対して総伝達トルク容量が小さければ、エンジン回転速度(即ち、入力軸回転速度)は上昇し、エンジン出力に対して総伝達トルク容量が大きければ、エンジン回転速度(即ち、入力軸回転速度)は下降する。したがって、パワーオン時には、クラッチを結合状態から係合を強めて滑らせていけば、エンジン出力に対して総伝達トルク容量が小さくなり、エンジン回転速度(入力軸回転速度)は上昇し、クラッチを滑り状態から結合状態への係合を強めていけば、エンジン出力に対して総伝達トルク容量が大きくなり、エンジン回転速度(入力軸回転速度)は下降する。
配分比設定手段10Cでは、総伝達トルク容量に対する開放側クラッチ及び締結側クラッチの分担割合(配分率)を設定する。ここでは、掛け替えフェーズに締結(係合)から開放される開放側クラッチの配分比に着目して説明する。
また、変速時において、準備フェーズでは、総伝達トルク容量の全てをその後の掛け替えフェーズで開放されるクラッチで負担するように、配分比設定手段10Cでは、開放されるクラッチの配分比を1とする。本実施形態では、掛け替えフェーズIの準備として行なう第1の準備フェーズ(準備フェーズI)と、掛け替えフェーズIIの準備として行なう第2の準備フェーズ(準備フェーズII)とをそなえ、準備フェーズIでは、このとき開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)に総伝達トルク容量の全てを負担させ、準備フェーズIIでは、このとき開放されるクラッチ2(開放側クラッチ)に総伝達トルク容量の全て負担させるように、配分比を設定する。
また、掛け替えフェーズでは、開放されるクラッチの配分比は1から0に漸減し締結されるクラッチの配分比は0から1に漸増するように、各配分比を設定する。そして、イナーシャフェーズ,終了フェーズでは、総伝達トルク容量の全てを締結されるクラッチで負担するように、配分比設定手段10Cでは、開放されるクラッチの配分比を0(締結されるクラッチの配分比は1)とする。したがって、掛け替えフェーズIでは、開放されるクラッチであるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比は1から0に漸減し、締結されるクラッチであるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比は0から1に漸増するように、各配分比を設定し、掛け替えフェーズIIでは、開放されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比は1から0に漸減し、締結されるクラッチであるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比は0から1に漸増するように、各配分比を設定する。
個別トルク容量算出手段10Dでは、総トルク容量算出手段10Bにより算出された総トルク容量と配分比設定手段10Cにより設定された開放されるクラッチ及び締結されるクラッチの各配分比とから、開放されるクラッチ及び締結されるクラッチの各トルク容量(個別トルク容量)を設定する。つまり、総トルク容量に開放されるクラッチの配分比を乗算することで、開放されるクラッチの個別トルク容量が得られ、総トルク容量に締結されるクラッチの配分比を乗算することで、締結されるクラッチの個別トルク容量が得られる。
締結制御手段10Eでは、個別トルク容量算出手段10Dにより算出された伝達トルク容量(個別トルク容量)に基づいて開放されるクラッチと締結されるクラッチとの各係合制御量を調整する。係合制御量としては、各クラッチに加える油圧が適用されるが、この個別トルク容量とそのクラッチの油圧とは予め認識できる対応関係(クラッチ容量−油圧関係)が有るので、個別トルク容量からそのクラッチの油圧を設定し制御することができる。
本変速機制御では、変速開始時に、車両のパワーオン走行であることを条件に、締結中のクラッチ(次の変速時に開放されるクラッチ)について目標差回転制御を実施すると同時に、開放中(あるいは待機中)のクラッチを連れ回りさせて,変速開始後にこのクラッチに生じる回転数変化を予め小さくしている。これにより、変速に要する時間を短縮すると共に、開放中のクラッチの耐久性を向上させることができる。
そして、変速の開始が決められると、変速制御(準備フェーズI,イナーシャフェーズ,掛け替えフェーズI,準備フェーズII,掛け替えフェーズII,終了フェーズ)が開始される。
準備フェーズIでは、変速開始時から、開放されるクラッチ(ここでは、クラッチ1)を滑り状態にしてその入出力差回転数(開放されるクラッチの入出力側の回転速度差)が第1目標差回転数Δn1となるように開放されるクラッチの係合制御量を調整する。このときは、当然ながら、中間状態で締結される締結されるクラッチ(ここでは、クラッチ2)は開放状態とし、変速機における総伝達トルク容量の全てを開放されるクラッチが負担すること(即ち、開放されるクラッチの配分比は1)になる。また、この準備フェーズでは、中間状態で用いる経由変速段を確立するためにクラッチの締結開放以外の機械的操作を実施する。開放されるクラッチの差回転数が第1目差標回転数Δn1に到達しても、経由変速段の確立が完了しなければ、開放されるクラッチの差回転数を第1目標差回転数Δn1に保持する。
また、イナーシャフェーズでは、開放されるクラッチ[変速前変速段及び変速後変速段にかかるクラッチ(ここでは、クラッチ1)]の滑り状態を維持して、この変速後変速段にかかるクラッチ(クラッチ1)の入出力差回転数が第2目標差回転数Δn2に漸近するようにこのクラッチ(クラッチ1)の係合制御量を調整する。このときも、締結されるクラッチ[経由変速段で用いるクラッチ(クラッチ2)]は開放したままであり、変速機における総伝達トルク容量の全てを開放されるクラッチ(変速前後で使用するクラッチ1)が負担する状態(即ち、開放されるクラッチの配分比は1)を維持する。
また、掛け替えフェーズIでは、トルク容量算出手段10Bにより、変速後変速段にかかるクラッチ(クラッチ1)の差回転数が第2目標差回転数Δn2の状態に維持されるように、経由変速段に使用するクラッチ(クラッチ2)の差回転数を第3目標差回転数Δn3の状態に維持するために必要な総伝達トルク容量を算出する。そして、配分比設定手段10Cにより、開放されるクラッチ(ここでは、クラッチ1)と締結されるクラッチ(ここでは、クラッチ2)とにおける各伝達トルク容量の和が上記総伝達トルク容量に等しくなり且つ開放されるクラッチの配分比は漸減し締結されるクラッチの配分比は漸増するように、開放されるクラッチと締結されるクラッチとにおける伝達トルク容量の配分比を設定する。そして、算出された総伝達トルク容量と設定された配分比とに基づいて開放されるクラッチと締結されるクラッチとの各伝達トルク容量を設定して、この設定した伝達トルク容量に基づいて開放されるクラッチと締結されるクラッチとの各係合制御量を調整する。
次の、準備フェーズIIでは、掛け替えフェーズI後から、中間状態で締結されていてその後の掛け替えフェーズIIで開放されるクラッチ(ここでは、クラッチ2)を滑り状態にして、その入出力差回転数(開放されるクラッチの入出力側の回転速度差)が第3目標差回転数Δn3を保持するように開放されるクラッチの係合制御量を調整する。このときは、当然ながら、その後の掛け替えフェーズIIで締結される締結側クラッチ(クラッチ1)は開放状態とし、変速機における総伝達トルク容量の全てを開放側クラッチ(クラッチ2)が負担すること(即ち、開放側クラッチの配分比は1)になる。また、この準備フェーズIIでは、目標変速段を確立するためにクラッチの締結開放以外の機械的操作を実施する。目標変速段の確立が完了するまで、準備フェーズIIを続行する。
また、掛け替えフェーズIIでは、トルク容量算出手段10Bにより、変速後変速段にかかるクラッチ(クラッチ1)の差回転数を第2目標差回転数Δn2の状態に維持するために必要な総伝達トルク容量を算出する。そして、配分比設定手段10Cにより、開放側クラッチ(クラッチ2)と締結側クラッチ(クラッチ1)とにおける各伝達トルク容量の和が上記総伝達トルク容量に等しくなり且つ開放側クラッチの配分比は漸減し締結側クラッチの配分比は漸増するように、開放側クラッチと締結側クラッチとにおける伝達トルク容量の配分比を設定する。そして、算出された総伝達トルク容量と設定された配分比とに基づいて開放側クラッチと締結側クラッチとの各伝達トルク容量を設定して、この設定した伝達トルク容量に基づいて開放側クラッチと締結側クラッチとの各係合制御量を調整する。
終了フェーズでは、締結側クラッチの差回転数が第2目差標回転数Δn2を維持するようにしながら、次回の変速制御が間もなく行われるか否かを判断し(プリシフト判断)、次回の変速制御が間もなく行われる場合には、予測変速段の確立(プリシフト)が必要と判断して、予測変速段の確立を指令する。なお、予測変速段の確立とは、次回の変速制御において目的とする変速段を達成するのに必要な動力伝達要素(例えば目的のギア段の歯車組み)の係合(即ち、機械的操作)の完了を言い、プリシフトとも呼ぶ。次回の変速制御が間もなく行われない場合には、開放側クラッチを連れ回し制御する。なお、終了フェーズでは、締結側クラッチについては、差回転数が第2目標差回転数Δn2を維持するように制御し、総伝達トルク容量の全てを開放側クラッチが負担する状態(即ち、開放側クラッチの配分比は1)を維持する。
なお、準備フェーズIからイナーシャフェーズへの移行は、開放されるクラッチ(締結側クラッチであるクラッチ1)の差回転数が第1目標差回転数Δn1に達して、且つ、経由変速段の確立が完了したことを条件とする。
イナーシャフェーズから掛け替えフェーズIへの移行は、経由変速段に使用するクラッチ(開放側クラッチであるクラッチ2)の差回転数が第3目標差回転数Δn3に到達したこと[換言すれば、変速後変速段にかかるクラッチ(クラッチ1)の差回転数が第2目標差回転数Δn2に到達したこと]を条件とする。
掛け替えフェーズIから準備フェーズIIへの移行は、掛け替えフェーズIにより開放されるクラッチ(クラッチ1)の伝達トルク容量が0になったことを条件とする。
準備フェーズIIから掛け替えフェーズIIへの移行は、目標変速段の確立が完了したことを条件とする。
掛け替えフェーズIIから終了フェーズへの移行は、掛け替えフェーズIIにより開放側クラッチ(クラッチ2)の伝達トルク容量が0になったことを条件とする。
また、終了フェーズの終了は、次回の変速制御が間もなく行われる場合には、予測変速段が確立されたことを条件とし、次回の変速制御が間もなく行われない場合には、開放側クラッチを連れ回し制御が実施されていることと締結側クラッチの差回転数が第2目標差回転数Δn2の所定範囲内になったこととを条件とする。
なお、上述のようにフェーズの切替閾値にも関連する目標差回転数Δn1,Δn2は、一定値としても良いが、制御開始時点或いはフェーズ開始時点におけるエンジン負荷状態、即ち、エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(スロットル開度,及びエンジントルクを含む)に基づいて設定したり、或いは、エンジン負荷状態及び準備フェーズ開始時点の入力回転速度に応じて可変(例えば、エンジン負荷が大きいほど大きく、また、入力回転速度が高いほど大きく)に設定したりしても良い。
(ブロック図)
次に、本実施形態の装置にかかる具体的な制御構成について、図8のブロック図を用いて説明する。
図8に示すように、本装置は、当然ながら、制御機能要素として図1に示す構成要素を含んでおり、入力信号演算部B1と、変速決心演算部B2と、変速スケジュール制御部B3と、制御対象回転選択部B4と、目標差回転演算部B5と、配分比演算部B6と、実差回転数演算部B7と、回転F/B制御部(回転速度フィードバック制御部)B8と、加算部B9と、クラッチ容量配分部(トルク容量配分部)B10と、連れ回し制御クラッチ容量演算部B11と、クラッチ1容量/圧変換部B12と、クラッチ2容量/圧変換部B13と、変速段確立演算部B14と、トルク補正量演算部15とを備えている。
なお、変速決心演算部B2には、図6の変速判定手段(変速判定部)3A及び特定変速判定手段(同軸パワーオンダウンシフト判定部)3Bの機能が含まれる。
また、目標差回転演算部B5は、図6の目標値設定手段10Aに相当し、図6の配分比設定手段10Cに相当し、加算部B9は、図6の総トルク容量算出手段10Bに相当し、配分比演算部B6は、トルク容量配分部B10及び加算部B16,b17は、図6の個別トルク容量算出手段10Dに相当し、クラッチ1容量/圧変換部B12及びクラッチ2容量/圧変換部B13は、図6の締結制御手段10Eに相当する。
まず入力信号演算部B1にて、入力信号の処理を行なう。この入力信号には、車速信号を生成するための車輪速信号,アクセル操作量信号を生成するためのアクセル開度信号,クラッチ1及び2の入力側回転速度である入力軸信号,クラッチ1の出力側回転速度である第1出力軸信号,クラッチ2の出力側回転速度である第2出力軸信号等が含まれる。
変速決心演算部B2は、入力信号演算部B1より、車速信号とアクセル操作量信号とを受け、予め作成された変速マップとの比較により、変速パターンを生成する。この変速パターンには、非変速状態も含まれる。
変速スケジュール制御部B3は、この変速パターンと、制御対象クラッチの出力側回転速度ωcと両クラッチのトルク容量配分比Rを監視し、これにより、制御の進行状況を判断して、準備フェーズ,掛け替えフェーズ,イナーシャフェーズ,終了フェーズの中の何れかのフェーズを選択して変速制御フェーズを生成する。
制御対象回転選択部B4は、変速決心演算部B2出生成された変速パターンと、変速スケジュール制御部B3で生成された変速制御フェーズとから、それぞれの変速制御に合わせ、制御対象となるクラッチを選択し、その選択したクラッチの出力回転速度信号から、制御対象クラッチの出力側回転速度ωcを生成する。
目標差回転演算部B5は、変速スケジュール制御部B3で生成された変速フェーズと制御対象クラッチの出力側回転速度ωcとから、それぞれの変速制御に合わせ、目標差回転数Δn(Δn1又はΔn2)を生成する。このとき、入力軸トルクTinが、符号が正の場合には、目標差回転数Δnを、制御対象クラッチの入力側回転速度(入力軸回転数)ωinが出力側回転速度ωcよりも大きくなるように設定し、符号が負の場合には、制御対象クラッチの入力側回転速度ωinが出力側回転速度ωcよりも小さくなるように設定する。したがって、パワーオン状態では、目標差回転数Δnを、制御対象クラッチの入力側回転速度が出力側回転速度よりも大きくなるように設定する。
配分比演算部B6は、変速制御フェーズから、それぞれの変速制御に合わせてクラッチのトルク容量配分比Rを生成する。
実差回転数演算部B7は、制御対象のクラッチの出力軸回転数と入力軸回転数の実差回転数を演算する。ここで、実差回転数Δnrを算出する際には入力軸トルクの正負を考慮する。
回転F/B制御部B8は、制御対象クラッチの実差回転数Δnrと、目標差回転数Δnとを用いて、目標差回転に対するフィードハック制御量(F/B補正分)Tfbを生成する。
加算部B9では、回転F/B制御部B7により生成されたF/B補正分Tfbと、オープン制御分に相当する入力軸トルクTinとの和を取り、クラッチの総トルク容量Tcを生成する。
トルク容量配分部B10は、加算部B9で算出された総トルク容量Tcを、配分比演算部B6で生成されたトルク容量配分比Rに応じて、各々のクラッチに配分し、クラッチ1容量Tc1´,クラッチ2容量Tc2´とする。
連れ回し制御クラッチ容量演算部B11は、非駆動側クラッチ(非駆動側軸)の連れ回し制御に必要なトルク容量Ttrを算出する。ただし、プリシフトが判断されている場合には、このトルク容量Ttrを0とする。
加算部B16では、トルク容量配分部B10により生成されたクラッチ1容量Tc1´と、連れ回し制御クラッチ容量演算部B11により生成されたトルク容量Ttrとの和を取り、クラッチ1のトルク容量Tc1を生成する。
加算部B17では、トルク容量配分部B10により生成されたクラッチ2容量Tc2´と、連れ回し制御クラッチ容量演算部B11により生成されたトルク容量Ttrとの和を取り、クラッチ2のトルク容量Tc2を生成する。
クラッチ1容量/圧変換部B12は、クラッチ1容量Tc1をクラッチ1制御指令圧に変換し、クラッチ2容量/圧変換部B13は、クラッチ2容量Tc2をクラッチ2制御指令圧に変換して、各クラッチへの制御を実施するようになっている。
変速段確立制御部B14は、シンクロによるギア列の切リ換えなどの、クラッチの締結・開放以外の機械的操作によって変速段が確立する自動変速機の場合に、変速段の確立を指令する。ただし、この機械的操作が不要な自動変速機1おいては、これを省略する。
トルク補正量演算部B15は、イナーシャフェーズ時に目標差回転数の変化速度(微分値)から発生イナーシャトルクを計算する。
(フローチャート)
本実施形態にかかる自動変速機の制御装置は、上述のように構成されており、例えば、図9のフローチャートに示すように、同軸パワーオンダウンシフト時の変速制御が行なわれる。なお、ここでも、同軸パワーオンダウンシフトが5速段から3速段への変速である場合を想定して説明するが、他の同軸パワーオンダウンシフトの場合も、相応の変速段及びクラッチに置き換えて適用できるものである。
図9に示すように、まず、ステップS10にて、変速制御中かを判断する。変速中であると判断されたら、続いてステップS20にて、準備フェーズIか否かの判断をする。変速開始時点であれば、まず、準備フェーズIが選定される。
この準備フェーズIでは、ステップS30にて、差回転制御の目標値を変速前制御目標値(変速前目標差回転速度)である目標差回転数Δn1に設定する。変速前制御目標値は、ダウンシフトの場合には、変速制御開始時の回転速度よりも高く設定する。これと同時に、ステップS30にて、開放されるクラッチ(締結側クラッチのクラッチ1)の配分比を1に固定する。逆に、締結されるクラッチ(開放側クラッチのクラッチ2)の配分比は0に固定する。また、シンクロによる経由変速段の確立(ギア係合)を行なう。
そして、ステップS40にて、開放されるクラッチ1の実差回転数が変速前目標差回転数Δn1に近傍の所定の範囲内に達したか否かを判断する。また、本実施形態では、経由変速段確立のための機械的な切替操作が必要なので、ステップS40には、その機械的操作により、経由変速段が確立されたことがand条件として実差回転数が変速前目標差回転数Δn1の所定範囲内に達した条件に加えられる。
ここで、開放されるクラッチ1の実差回転数が変速前目標回転速度Δn1に達しなければ、或いは、経由変速段が確立されていなければ、ステップS350,S360のクラッチ容量演算及びクラッチ指令油圧演算の各処理を行なう。
つまり、ステップS350にて、この時点で算出された総クラッチ容量と配分比とから、開放側トルク容量、および締結側トルク容量を算出し、ステップS360にて、各々のトルク容量−油圧変換特性に基づいて、各々のクラッチの指令圧として、アクチュエータに対して、指令する。
このようにして、ステップS10,S20,S30,S40,S50,S350,S360の各処理を、制御周期毎に繰り返して、準備フェーズIを実施することにより、実差回転数が目標差回転数Δn1の所定範囲内に入っていくことになり、経由変速段も確立されることになる。
これにより、ステップS40にて、開放側クラッチの実差回転数が変速前目標差回転数Δn1の所定の範囲内に達し、且つ、経由変速段が確立されたと判断される状態になる。
この場合には、準備フェーズIを終了し、ステップS50にて、準備フェーズI終了フラグを成立して、イナーシャフェーズヘの移行設定をする。これにより、次回の制御周期では、ステップS20にて、準備フェーズIでないと判断し、ステップS60にて、イナーシャフェーズか否かの判断をし、ここで、イナーシャフェーズであると判断し、イナーシャフェーズに移行することになる。
イナーシャフェーズでは、ステップS70にて、差回転制御の目標値を次に締結されるクラッチ2(開放側クラッチ)に切り替えて、中間状態(経由変速段確立時)の制御目標値である目標差回転数Δn3に設定し、これと同時に、次に開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比を0に設定し、次に締結されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比を1に設定する。さらに、イナーシャフェーズ時間カウントのタイマを起動する。その後、ステップS80にて、目標差回転数Δn3と締結されるクラッチ2の現在の実差回転数とを比較し、実差回転数が目標差回転数数Δn3の所定範囲内に達しているか否かを閾値と比較して判断する。
実差回転数が目標差回転数数Δn3の所定範囲内に達していなければ、ステップS100にて、イナーシャフェーズの開始時期にカウントを開始したタイマが終了値(所定時間)に達したかを判断する。
なお、タイマの終了値(所定時間)は、実差回転数が目標差回転数Δn3の所定範囲内に達するに必要とされる時間に基づいて設定し、その時点における、エンジンの負荷又は該負荷に対応する量(例えば、スロットル開度)、変速機への入力トルク又は入力トルクに対応する量などと、入力軸回転数(エンジンの回転数)、もしくは制御対象の入力軸回転数、もしくは変速比のいずれかによって決定される所定値とする。このように変速状況に適した時間設定により、イナーシャフェーズの時間の制限(イナーシャフェーズに過剰な時間をかけないようにする)と、クラッチの締結ショックの改善とをバランスさせることができる。
ここで、タイマが終了値に達してなければ、最終的な開放側締結容量、締結側締結容量(ステップS350)をそれぞれ算出し、開放側クラッチ指令油圧、締結側クラッチ指令油圧に変換し(ステップS360)、アクチュエータに対して、指令する。
イナーシャフェーズの制御周期を繰り返すことにより、実差回転数が目標差回転数Δn3に達するようになるか、又は、タイマが終了値(所定時間)に達して、ステップS80からステップS90又はステップS100からステップS90に進む。ステップS90では、イナーシャフェーズを終了し、イナーシャフェーズ終了フラグを成立して、掛け換えフェーズIヘの移行を設定する。
これにより、次回の制御周期では、ステップS10,S20を経てステップS60にて、イナーシャフェーズでないと判断し、ステップS110に進んで、掛け換えフェーズIか否かの判断をし、ここで、掛け換えフェーズIであると判断し、掛け換えフェーズIに移行することになる。
掛け換えフェーズIでは、ステップS120にて、差回転制御の目標値を中間状態(経由変速段確立時)の制御目標値である目標差回転数Δn3に保持し、同時に、開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比は所定の変化速度で漸減し、締結されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比は所定の変化速度で漸増するように変化速度に応じた配分比変化量(1制御周期当たりの量)を設定する。その後、ステップS130にて、前回の配分比に対して配分比変化量を減算し開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比を設定し、締結されるクラッチ2(開放側クラッチ)は逆に前回の配分比に対して配分比変化量を加算して設定する。そして、ステップS140にて、開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比が0かを判断する。
掛け換えフェーズIの開始後しばらくは開放されるクラッチ1の配分比は0にはならず、この掛け換えフェーズIにおいても、設定した配分比に基づいて、前述のステップS350,S360の各処理により、最終的な開放側締結容量、締結側締結容量(ステップS350)をそれぞれ算出し、開放側クラッチ指令油圧、締結側クラッチ指令油圧に変換し(ステップS360)、アクチュエータに対して、指令する。
このような掛け換えフェーズIの処理を繰り返すことにより、ステップS130で開放されるクラッチ1の配分比が減少していくため、ステップS140にて、開放されるクラッチ1の配分比が0と判断するようになる。このときには、ステップS150にて、掛け換えフェーズIを終了し、掛け替えフェーズI終了フラグを成立して、準備フェーズIIヘの移行を設定する。
これにより、次回の制御周期では、ステップS10,S20,S60,S110を経てステップS160に進んで、準備フェーズIIか否かの判断をし、ここで、準備フェーズIIであると判断し、準備フェーズIIへ移行することになる。
この準備フェーズIIでは、ステップS170にて、差回転制御の目標値を中間状態(経由変速段確立時)の制御目標値である目標差回転数Δn3に保持し、これと同時に、この時点で締結していてその後開放されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比を1に固定する。逆に、この時点で開放していてその後締結されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比は0に固定する。そして、変速前変速段を開放(ギア係合の開放)し変速後変速段(目標変速段)を確立(ギア係合)する。
そして、ステップS180にて、開放側クラッチ(クラッチ2)の実差回転数が中間状態(経由変速段確立時)の制御目標値である目標差回転数Δn3の近傍の所定の範囲内にあり、且つ、目標変速段が確立されたか否かが判断される。
ここで、開放側クラッチ(クラッチ2)の実差回転数が目標差回転数Δn3の所定の範囲内にないか、或いは、目標変速段が確立されていなければ、ステップS350,S360のクラッチ容量演算及びクラッチ指令油圧演算の各処理を行なう。
このようにして、ステップS170,S180,S350,S360の各処理を、制御周期毎に繰り返して、準備フェーズIIを実施することにより、開放側クラッチ(クラッチ2)の実差回転数が目標差回転数Δn3の所定範囲内に入り、目標変速段も確立されることになる。
これにより、ステップS180にて、開放側クラッチ(クラッチ2)の実差回転数が目標差回転数Δn3の所定の範囲内に達し、且つ、目標変速段が確立されたと判断される状態になる。この場合には、準備フェーズIIを終了し、ステップS190にて、準備フェーズII終了フラグを成立して、掛け替えフェーズIIヘの移行設定をする。
これにより、次回の制御周期では、ステップS20,S20,S60,S110,S160を経てS200に進んで、掛け替えフェーズIIか否かの判断をして、ここで、掛け替えフェーズIIであると判断し、掛け替えフェーズIIへ移行することになる。
掛け換えフェーズIIでは、ステップS210にて、差回転制御の対象を目標変速段で使用するクラッチ1の締結側クラッチに切り替えて、クラッチ1の実差回転数がその制御目標値である目標差回転数Δn2となるように制御し、開放されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比は所定の変化速度で漸減し、締結されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比は所定の変化速度で漸増するように変化速度に応じた配分比変化量(1制御周期当たりの量)を設定する。
その後、ステップS220にて、前回の配分比に対して配分比変化量を減算し開放されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比を設定し、締結されるクラッチ1(締結側クラッチ)は逆に前回の配分比に対して配分比変化量を加算して設定する。そして、ステップS230にて、開放されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比が0かを判断する。
掛け換えフェーズIIの開始後しばらくは開放されるクラッチ2の配分比は0にはならず、この掛け換えフェーズIIにおいても、設定した配分比に基づいて、前述のステップS350,S360の各処理により、最終的な開放側締結容量、締結側締結容量(ステップS350)をそれぞれ算出し、開放側クラッチ指令油圧、締結側クラッチ指令油圧に変換し(ステップS360)、アクチュエータに対して、指令する。
このような掛け換えフェーズIIの処理を繰り返すことにより、ステップS220で開放されるクラッチ2の配分比が減少していくため、ステップS230にて、開放されるクラッチ2の配分比が0と判断するようになる。このときには、ステップS240にて、掛け換えフェーズIIを終了し、掛け替えフェーズII終了フラグを成立して、終了フェーズヘの移行を設定する。
これにより、次回の制御周期では、ステップS10,S20,S60,S110,S160を経てステップS250に進んで、終了フェーズか否かの判断をし、ここで、終了フェーズであると判断し、終了フェーズへ移行することになる。
終了フェーズでは、ステップS260にて、締結側クラッチの目標差回転数を第2目標差回転数に保持し、同時に、開放側クラッチの配分比を0に固定し、締結側クラッチの配分比を1に設定する。また、経由変速段の開放(ギア係合の開放)も指令する。その後、ステップS270にて、プリシフトの要否、即ち、次回の変速制御が間もなく行われるか否かを判断する。つまり、次回の変速制御が間もなく行われる場合にはプリシフト要、行われない場合にはプリシフト不要と判断する。
ここで、プリシフトが必要と判断された場合は、ステップS280にて予測変速段の確立を指令する。続いて、ステップS290にて締結側クラッチの差回転数が所定範囲内に収まっており且つ予測変速段が確立されているかを判断し、条件を満たしていなければ、終了フェーズが続行され、条件を満たしていれば、ステップS300にて終了フェーズ終了フラグが成立し、変速が終了する。
一方、ステップS270にて、プリシフトが必要でないと判断されたら、ステップS310にて開放側連れ回し制御を指令する。続いて、ステップS320にて締結側クラッチの差回転数が所定範囲内に収まっており且つ開放側軸連れ回し制御が終了しているかを判断し、条件を満たしていなければ、終了フェーズが続行され、条件を満たしていれば、ステップS330にて終了フェーズ終了フラグが成立し、変速が終了する。
この終了フェーズにおいても、最終的な開放側締結容量、締結側締結容量(ステップS350)をそれぞれ算出し、開放側クラッチ指令油圧、締結側クラッチ指令油圧に変換し(ステップS360)、アクチュエータに対して、指令する。
そして、ステップS300又はS330にて、終了フェーズ終了フラグが成立すると、変速が終了し、次の制御周期では、ステップS10にて、変速中でない(定常走行時)と判断され、ステップS340にて、目標差回転数を算出し、非変速時の配分比を設定し、非駆動働軸の連れ回し制御を行なう。
以上の処理を、所定の制御周期で繰り返すことで、本制御が実施される。
(パワーオンダウンシフト時のタイムチャート)
本実施形態にかかる変速制御を、図10,図11のパワーオンアップシフト時(アクセルペダル踏込時の車速増加に伴うアップシフト時)の時系列動作模式図(タイムチャート)を参照して説明する。本制御の具体例を説明する。
(プリシフトをしない場合)
図10は終了フェーズ時にプリシフトが必要でないと判断された時の時系列動作模式図である。
まず、準備フェーズIでは、目標差回転数1(第1目標差回転数Δn1)を設定し、制御対象のクラッチ1(変速前と変速後とで使う締結側クラッチ)の実差回転数が目標差回転数1に追従するように制御する。この時、同時に経由変速段を確立する。
次に、イナーシャフェーズでは、差回転制御の制御対象のクラッチをクラッチ2に切リ換えて、ここでは、現在のクラッチ2の差回転数から、変速後の目標差回転数2までの目標差回転数の軌跡を算出し、これに実差回転数を追従させる。
そして、掛け替えフェーズIでは、イナーシャフェーズの差回転数制御を維持しつつ、トルク配分比制御を行なうことで、締結状態のクラッチ1を開放しつつ、開放状態のクラッチ2を締結する。
準備フェーズIIでは、掛け替えフェーズIの差回転数制御を維持しつつ、変速前変速段を開放し、変速後変速段を確立する。
次の、掛け変えフェーズIIでは、差回転制御の制御対象のクラッチをクラッチ1(図中では、符号I´で表記)に戻し、目標差回転数2を設定し、差回転数制御を推持しつつ、トルク配分比制御を行なうことで、締結状態のクラッチ(開放側クラッチ)を開放し、開放状態のクラッチ(締結側クラッチ)を締結する。
終了フェーズでは、目標差回転数2を設定し、クラッチ2の実差回転数がこれに追従するように制御する。この時、例えば、シンクロによるギア列の構成変更が必要になるような自動変速機の場合、変速前変速段を開放し、開放側トルクを所定量だけ持たせ、開放側軸を連れ回す制御を行なう。
(プリシフトをする場合)
図11は、終了フェーズ時にプリシフトが必要であると判断された時の時系列動作模式図である。よって、この図11に示す例は、図10に示すものに対し終了フェーズのみが異なっている。この場合の終了フェーズは、クラッチ1の(図中では、符号I´で表記)目標差回転数2を設定し、クラッチ2の実差回転数がこれに追従するように制御する。この時、例えば、シンクロによるギア列の構成変更が必要になるような自動変速機の場合、変速前変速段を開放して、予測変速段に設定する。
このように、本実施形態にかかる変速機の制御によれば、車両のパワーオン走行時におけるダウンシフトであって、変速前と変速後とで同一の入力軸及びクラッチを用いる、同軸パワーオンダウンシフトを行なう際に、現変速段のギア組から目標変速段のギア組への変更する間の中間状態で、残る入力軸に接続された経由変速段を使用して経由変速段を一時的に確立させ、この経由変速段の確立時に、現変速段のギア組から目標変速段のギア組への変更することにより、動力伝達状態を確保して、エンジン負荷の急変を回避しながら、円滑な同軸パワーオンダウンシフトを実施することができる。
特に、中間状態で、目標変速段が設定された際の変速機入力軸51の回転数(エンジンの回転数)を予測し、この変速機入力軸51の回転数が予測した回転数に近づくように、各クラッチの係合を制御するので、入力軸回転の同期は、経由する別軸の変速段に同期させるのではなく、推定される変速後回転に同期させることになり、変速時間を短縮することができる。
したがって、同軸パワーオンダウンシフトに関する応答性やフィーリングを向上することができる。
また、各フェーズでは、伝達トルクの配分状態に着目しながら、クラッチの回転速度を制御することになり、掛け替え制御を、トルクに着目した制御と回転速度に着目した制御とに切り分けつつ、最終的には単一の制御量にして出力でき、シンプルな制御ロジックで、円滑な掛け替え動作を実現できるようになる。
また、掛け替えフェーズIにおける変速前変速段の動力伝達に用いていたクラッチ1の締結から開放と、経由変速段の動力伝達に用いるクラッチ2の開放から締結とのタイミングや、掛け替えフェーズIIにおける経由変速段の動力伝達に用いていたクラッチ2の締結から開放と、変速後変速段の動力伝達に用いるクラッチ1の開放から締結とのタイミングを、それぞれ、完全に同期することが可能になり、より円滑でショックも少なく安定した変速制御を実現することができるようになる。
また、パワーオン走行時には、変速開始前の状態で動力伝達に用いているクラッチ1を差回転数制御する(変速後はクラッチ2を差回転数制御)ので、掛け替え制御開始への移行がスムーズになる。なお、変速開始前の状態でクラッチ1を差回転数制御する際に、動力伝達に用いない開放状態のクラッチの出力軸を連れ回すことにより、変速開始後に与えるべき回転数変化を予め小さくすることができ、変速に要する時間を短縮すると共に開放状態のクラッチの耐久性を向上させることができる。
[第2実施形態]
図12〜図14は本発明の第2実施形態に係るツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を示すものである。本実施形態では、第1実施形態における準備フェーズとイナーシャフェーズとを同時に実施する準備&イナーシャフェーズとして構成したものである。制御にかかる機能要素は図8のブロック図に示す第1実施形態のものと同様であるので説明は省略する。
図12は本件実施形態にかかるフローチャートを示している。図12において、図9と同符号のステップは同様な処理なので説明を省略し、本実施形態の特徴点を説明する。
図12に示すように、まず、ステップS10にて変速中かを判断し、変速中と判断されたら、続いてステップS22にて準備&イナーシャフェーズか判断する。準備&イナーシャフェーズと判断されたら、ステップS30にてクラッチ1(締結側クラッチ)の目標差回転数を算出し、クラッチ1(締結側クラッチ)の配分比を1に設定し、経由変速段の確立指令を行なう。ステップS40にてクラッチ1(締結側クラッチ)差回転数が閾値未満になっていて、且つ、経由変速段が確立しているかを判断し、この条件を満たしている場合は、ステップS52にて準備&イナーシャフェーズ終了フラグが成立し、その後は掛け変えフェーズIへ移行する。
また、ステップS40にて条件を満たしていないと判断した場合は、ステップS62にて経由変速段が確立しているか判断する。ステップS40にて条件を満たしていなくても、経由変速段の確立のみが達成されている場合があり、この場合は、ステップS72にてタイマを設定する。さらに、ステップS82にて差回転数が閾値未満であるか判断し、この条件が成立していると判断した場合はステップS52にて準備&イナーシャフェーズ終了フラグが成立し、その後は掛け変えフェーズIへ移行する。
一方、ステップS62にて差回転数が閾値に未満でないと判断した場合は、ステップS100にてタイマ終了か判断する。タイマ終了と判断した場合はステップS52にて準備&イナーシャフェーズ終了フラグが成立し、その後は掛け変えフェーズIへ移行する。
これ以外のステップは、第1実施形態のものと同様である。
(パワーオンダウンシフト時のタイムチャート)
本実施形態にかかる変速制御を、図13,図14のパワーオンアップシフト時(アクセルペダル踏込時の車速増加に伴うアップシフト時)の時系列動作模式図(タイムチャート)を参照して説明する。本制御の具体例を説明する。
(プリシフトをしない場合)
図13は、終了フェーズ時にプリシフトが必要でないと判断された時の時系列動作模式図である。
図13に示すように、準備&イナーシャフェーズでは、差回転制御の制御対象のクラッチをクラッチ2にして、入力軸51の変速後回転数(エンジンの変速後回転数)を推定し、現在の入力軸51の回転数(エンジンの回転数)から、推定した変速後回転数までの目標差回転数の軌跡を算出し、これにクラッチ2の実差回転数を追従させる。同時に経由変速段を確立させる。このとき、開放側クラッチを制御することで、開放側軸を連れ回し、開放側軸回転数が推定径由変速段確立後の開放側軸回転数付近に達したところで、経由変速段を確立することで、シンクロ等の機械的操作の負担を低減させる。
次に、掛け変えフェーズIでは、差回転数制御を維持しつつ、トルク配分比制御を行うことで、締結状態のクラッチ1(締結側クラッチ)を開放しつつ、開放状態のクラッチ2(開放側クラッチ)を締結する。
以後は、図10に示す第1実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
(プリシフトをする場合)
図14は、終了フェーズ時にプリシフトが必要である判断された時の時系列動作模式図である。この図14に示す例は、図13に示すものに対し終了フェーズのみが異なっている。この場合の終了フェーズは、クラッチ1の(図中では、符号I´で表記)目標差回転数2を設定し、クラッチ2の実差回転数がこれに追従するように制御する。この時、例えば、シンクロによるギア列の構成変更が必要になるような自動変速機の場合、変速前変速段を開放して、予測変速段に設定する。
このように、本実施形態にかかる変速機の制御によっても、第1実施形態と同様の効果が得られ、さらに、準備フェーズとイナーシャフェーズとを同時に実施するため、変速に要する時間をより短縮させることが可能になる。
[第3実施形態]
図15〜図17は本発明の第3実施形態に係るツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を示すものである。本実施形態では、第1実施形態における準備フェーズとイナーシャフェーズと掛け変えフェーズIとを同時に実施する準備&イナーシャ&掛け変えフェーズとして構成したものである。制御にかかる機能要素は図8のブロック図に示す第1実施形態のものと同様であるので説明は省略する。
図15は本件実施形態にかかるフローチャートを示している。図15において、図9と同符号のステップは同様な処理なので説明を省略し、本実施形態の特徴点を説明する。
図15に示すように、まず、ステップS10にて変速中かを判断し、変速中と判断されたら、続いてステップS24にて準備&イナーシャ&掛け変えフェーズか判断する。ここで、準備&イナーシャ&掛け変えフェーズと判断されたら、ステップS30にてクラッチ1(締結側クラッチ)の目標差回転数を算出し、クラッチ1(締結側クラッチ)の配分比を1に設定し、経由変速段の確立指令を行なう。
ステップS42にて経由変速段が確立していて、且つ、入力軸回転数(エンジンの回転数)が開放側回転数(開放側クラッチの出力軸回転数)を上回っている、という条件を満たしているかを判断する。ここで、条件を満たしていると判断した場合は、ステップS122にて、開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比は所定の変化速度で漸減し、締結されるクラッチ2(開放側クラッチ)の配分比は所定の変化速度で漸増するように変化速度に応じた配分比変化量(1制御周期当たりの量)を設定する。さらに、ステップS132にて、前回の配分比に対して配分比変化量を減算し開放されるクラッチ1(締結側クラッチ)の配分比を設定し、締結されるクラッチ2(開放側クラッチ)は逆に前回の配分比に対して配分比変化量を加算して設定する。
そして、ステップS142にて、差回転数が閾値未満になっていて、且つ締結側の配分比が0、つまり配分比移行が終了しているか判断し、この条件を満たしている場合は、S54にて準備&イナーシャ&掛け変えフェーズ終了フラグが成立し、その後は準備フェーズIIへ移行する。
また、ステップS142にて条件を満たしていないと判断した場合は、ステップS62にて経由変速段が確立しているか判断する。ステップS142にて条件を満たしていなくても、経由変速段の確立については達成されている場合があり、この場合は、ステップS72にてタイマを設定する。さらに、ステップS82にて差回転数が閾値に達しているか判断し、達していると判断した場合はステップS54にて準備&イナーシャフェーズ終了フラグが成立し、その後は掛け変えフェーズIへ移行する。
一方、ステップS62にて差回転数が閾値に達していないと判断した場合は、ステップS100にてタイマ終了か判断する。タイマ終了と判断した場合はステップS52にて準備&イナーシャフ&掛け変えェーズ終了フラグが成立し、その後は準備フェーズIIへ移行する。
これ以外のステップは、第1実施形態のものと同様である。
(パワーオンダウンシフト時のタイムチャート)
本実施形態にかかる変速制御を、図16,図17のパワーオンアップシフト時(アクセルペダル踏込時の車速増加に伴うアップシフト時)の時系列動作模式図(タイムチャート)を参照して説明する。本制御の具体例を説明する。
(プリシフトをしない場合)
図16は、終了フェーズ時にプリシフトが必要でないと判断された時の時系列動作模式図である。
図16に示すように、準備&イナーシャ&掛け変えフェーズでは、差回転制御の制御対象のクラッチをクラッチ2にして、入力軸の変速後回転数(エンジンの変速後回転数)を推定し、現在の入力軸回転数から、推定した変速後回転数までの目標差回転数の軌跡を算出し、これにクラッチ2の実差回転数を追従させる。このとき、クラッチ2(開放側クラッチ)を制動することで、クラッチ2の接続される入力軸2(開放側軸)を連れ回し、クラッチ1の接続される入力軸1(締結側軸)の回転数が経由変速段確立後のこの入力軸2(開放側軸)の推定回転数付近に達したところで、経由変速段を確立することで、シンクロ等の機械的操作の負担を低減させる。
そして、経由変速段の確立と、入力軸回転数(エンジンの回転数)がクラッチ2(開放側クラッチ)の出力軸回転数(経由変速段回転数)を上回っていると判断したら、トルク配分比制御を行うことで、締結状態のクラッチ(締結側クラッチであるクラッチ1)を開放しつつ、開放状態のクラッチ(開放側クラッチであるクラッチ2)を締結する。
以後は、図10に示す第1実施形態のものと同様であるので説明を省略する。
(プリシフトをする場合)
図17は、終了フェーズ時にプリシフトが必要である判断された時の時系列動作模式図である。この図17に示す例は、図16に示すものに対し終了フェーズのみが異なっている。この場合の終了フェーズは、クラッチ1の(図中では、符号I´で表記)目標差回転数2を設定し、クラッチ2の実差回転数がこれに追従するように制御する。この時、例えば、シンクロによるギア列の構成変更が必要になるような自動変速機の場合、変速前変速段を開放して、予測変速段に設定する。
このように、本実施形態にかかる変速機の制御によっても、第1実施形態と同様の効果が得られ、さらに、準備フェーズとイナーシャフェーズとを同時に実施するため、変速に要する時間をより短縮させることが可能になる。
[第4実施形態]
本実施形態および後述の第5,6実施形態は、クラッチの差回転制御を入力軸の回転速度制御(回転数制御)に置き換えたものである。つまり、クラッチの差回転制御は、クラッチの入力回転速度と出力回転速度との差の制御であるが、クラッチの入力回転速度は入力軸の回転速度に対応し、クラッチの出力回転速度そのクラッチの変速比に応じた比で車速と対応する。変速時には、車速は略変化しないものとすることができるため、クラッチの差回転制御を入力軸の回転速度制御に置き換えることができる。
本第4実施形態は、第1実施形態のものについて、クラッチの差回転制御を入力軸の回転速度制御(回転数制御)に置き換えたものである。
図18〜図21は本発明の第4実施形態に係るツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を示すものである。
以下、本実施形態にかかるブロック図,フローチャート,時系列動作模式図を第1実施形態との相違点に絞って説明する。
(ブロック図)
図18は、本実施形態の制御構成を示したブロック図である。第1実施形態との違いは、第1実施形態では、制御対象のクラッチの目標差回転数を設定し、実差回転数を制御す
るのに対して、本実施形態では、制御対象のクラッチの目標入力軸回転数を設定し、実入力軸回転数を制御する点である。したがって、図18に示すブロック図では、図8のブロック図に対して、ブロックB7が削除され、B5,B8が目標差回転数から目標入力軸回転数に変更される。ただし、差回転数を制御するロジックを、実回転数を制御するロジックに置き換えるだけであって、得られる制御の効果は同等である。
(フローチャート)
図19は、本実施形態による制御のフローチャートを示している。図19のフローチャートのステップS30´,S40´,S70´,S80´,S120´,S170´,S180´,S210´,S260´,S290´,S320´,S340´は、図9における、ステップS30,S40,S70,S80,S120,S170,S180,S210,S260,S290,S320,S340の各ステップを、目標差回転数から目標入力軸回転数に変更したものである。ただし、差回転数を制御するロジックを、実回転数を制御するロジックに置き替えるだけであって、得られる制御の効果は同等である。
(タイムチャート)
図20は、本実施形態によるパワーオンアップシフト時であって、終了フェーズ時にプリシフトが必要でないと判断された時の時系列動作模式図である。
本件実施形態では、第1実施形態の差回転数制御ロジックを入力軸回転数制御ロジックに置き換えたものであり、制御の効果は図10と同等である。
図21は、本実施形態によるパワーオンアップシフト時であって、終了フェーズ時にプリシフトが必要であると判断された時の時系列動作模式図である。
この場合も、本件実施形態では、第1実施形態の差回転数制御ロジックを入力軸回転数制御ロジックに置き換えたものであり、制御の効果は図11と同等である。
このようにして、入力軸の目標数に着目しても第1実施形態と同様の制御を行なうことができ、これにより、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
[第5実施形態]
本実施形態も、クラッチの差回転制御を入力軸の回転速度制御(回転数制御)に置き換えたものである。制御にかかる機能要素は図18のブロック図に示す第4実施形態のものと同様であるので説明は省略する。
図22〜図24は本発明の第5実施形態に係るツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を示すものである。
以下、本実施形態にかかるフローチャート,時系列動作模式図を第2実施形態との相違点に絞って説明する。
(フローチャート)
図22は、本実施形態による制御のフローチャートを示している。図22のフローチャートのステップS30´,S40´,S82´,S120´,S170´,S180´,S210´,S260´,S290´,S320´,S340´は、図12における、ステップS30,S40,S82,S120,S170,S180,S210,S260,S290,S320,S340の各ステップを、目標差回転数から目標入力軸回転数に変更したものである。ただし、差回転数を制御するロジックを、実回転数を制御するロジックに置き替えるだけであって、得られる制御の効果は同等である。
(タイムチャート)
図23は、本実施形態によるパワーオンアップシフト時であって、終了フェーズ時にプリシフトが必要でないと判断された時の時系列動作模式図である。
本件実施形態では、第2実施形態の差回転数制御ロジックを入力軸回転数制御ロジックに置き換えたものであり、制御の効果は図13と同等である。
図24は、本実施形態によるパワーオンアップシフト時であって、終了フェーズ時にプリシフトが必要であると判断された時の時系列動作模式図である。
この場合も、本件実施形態では、第2実施形態の差回転数制御ロジックを入力軸回転数制御ロジックに置き換えたものであり、制御の効果は図14と同等である。
このようにして、入力軸の目標数に着目しても第2実施形態と同様の制御を行なうことができ、これにより、第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
[第6実施形態]
本実施形態も、クラッチの差回転制御を入力軸の回転速度制御(回転数制御)に置き換えたものである。制御にかかる機能要素は図18のブロック図に示す第4実施形態のものと同様であるので説明は省略する。
図25〜図27は本発明の第6実施形態に係るツインクラッチ式変速機の制御装置及び方法を示すものである。
以下、本実施形態にかかるフローチャート,時系列動作模式図を第3実施形態との相違点に絞って説明する。
(フローチャート)
図25は、本実施形態による制御のフローチャートを示している。図25のフローチャートのステップS30´,S142´,S82´,S170´,S180´,S210´,S260´,S290´,S320´,S340´は、図15における、ステップS30,S142,S82,S170,S180,S210,S260,S290,S320,S340の各ステップを、目標差回転数から目標入力軸回転数に変更したものである。ただし、差回転数を制御するロジックを、実回転数を制御するロジックに置き替えるだけであって、得られる制御の効果は同等である。
(タイムチャート)
図26は、本実施形態によるパワーオンアップシフト時であって、終了フェーズ時にプリシフトが必要でないと判断された時の時系列動作模式図である。
本件実施形態では、第3実施形態の差回転数制御ロジックを入力軸回転数制御ロジックに置き換えたものであり、制御の効果は図16と同等である。
図27は、本実施形態によるパワーオンアップシフト時であって、終了フェーズ時にプリシフトが必要であると判断された時の時系列動作模式図である。
この場合も、本件実施形態では、第3実施形態の差回転数制御ロジックを入力軸回転数制御ロジックに置き換えたものであり、制御の効果は図17と同等である。
このようにして、入力軸の目標数に着目しても第2実施形態と同様の制御を行なうことができ、これにより、第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(その他)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上記の実施形態では、摩擦係合要素制御手段10は、入力軸回転速度を制御パラメータとしてクラッチ1,2の制御を行なっているが、入力軸回転速度自体ではなくこれに対応した他の入力部材の回転速度を制御パラメータとしてもよい。また、変速比を制御パラメータとしてクラッチ1,2の制御を行なってもよい。つまり、クラッチの入出力間に差回転を与えることは、見かけ上の変速比を微小に変更することにもなるので、目標変速比を変速前の値或いは変速後の値に対して微小に変更して、変速比が目標変速比となるようにクラッチ1,2の制御を行なうのである。
変速比を制御パラメータとする場合、変速時のクラッチ回転の目標値(制御終了閾値にも相当する)も、入力回転速度から変速比(即ち、目標変速比)となる。
なお、準備フェーズにおける目標変速比(フェーズ終了閾値)r1については、目標回転速度を変速前入力回転或いは変速後入力回転よりも所定速度Δn1,Δn2だけ高い回転速度に設定する場合には、目標変速比を変速前変速比或いは変速後変速比よりも所定量Δr1,Δr2だけ高い変速比に設定し、目標回転速度を変速前入力回転或いは変速後入力回転よりも所定速度Δn1´,Δn2´だけ低い回転速度に設定する場合には、目標変速比を変速前変速比或いは変速後変速比よりも所定量Δr1´,Δr2´だけ低い変速比に設定に設定すればよい。
また、特に、クラッチ2の差回転又はこの差回転に対応する入力回転速度(例えば、入力軸回転速度)を目標値に制御する場合、一定値の目標値ではなく、図10を参照して説明したように、目標値が時間経過に応じて変更する目標値軌跡を設定して、上記の制御パラメータをこの目標値軌跡に追従させる軌跡追従制御により制御を行なうように構成してもよい。これにより、好みの変速速度や変速時間で制御を実施することが可能になる。
また、第1,2実施形態では、図7に示す自動変速機を例に説明したが、本発明は、図1〜図5を用いて原理的に説明したように、種々の自動変速機の摩擦係合要素の掛け替えに広く適用しうるものである。
本発明の各実施形態にかかるツインクラッチ式変速機の制御装置の基本構成を示すブロック図である。 本発明の各実施形態にかかる自動変速機の変速制御にかかる自動変速機の要部構成例を説明する模式図である。 図2の自動変速機において、1速から2速ヘアップシフトする場合の締結表を示す図である。 本発明の各実施形態にかかる自動変速機の変速制御にかかる自動変速機の基本構成を簡略化して示す模式図である。 本発明の各実施形態にかかる自動変速機の変速制御にかかる自動変速機の基本構成をさらに簡略化して示す模式図である。 本発明の各実施形態にかかる自動変速機の変速制御に適用し得る自動変速機の構成を説明する模式図である。 本発明の各実施形態にかかるツインクラッチ式変速機の制御装置の要部構成を示す制御ブロック図である。 本発明の第1〜3実施形態にかかるツインクラッチ式変速機の制御装置のより詳細な制御構成を示す制御ブロック図である。 本発明の第1実施形態にかかる自動変速機の変速制御を説明するフローチャートである。 本発明の第1実施形態にかかる自動変速機の変速制御の一例を説明するタイムチャートである。 本発明の第1実施形態にかかる自動変速機の変速制御の他の例を説明するタイムチャートである。 本発明の第2実施形態にかかる自動変速機の変速制御を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態にかかる自動変速機の変速制御の一例を説明するタイムチャートである。 本発明の第2実施形態にかかる自動変速機の変速制御の他の例を説明するタイムチャートである。 本発明の第3実施形態にかかる自動変速機の変速制御を説明するフローチャートである。 本発明の第3実施形態にかかる自動変速機の変速制御の一例を説明するタイムチャートである。 本発明の第3実施形態にかかる自動変速機の変速制御の他の例を説明するタイムチャートである。 本発明の第4〜6実施形態にかかるツインクラッチ式変速機の制御装置のより詳細な制御構成を示す制御ブロック図である。 本発明の第4実施形態にかかる自動変速機の変速制御を説明するフローチャートである。 本発明の第4実施形態にかかる自動変速機の変速制御の一例を説明するタイムチャートである。 本発明の第4実施形態にかかる自動変速機の変速制御の他の例を説明するタイムチャートである。 本発明の第5実施形態にかかる自動変速機の変速制御を説明するフローチャートである。 本発明の第5実施形態にかかる自動変速機の変速制御の一例を説明するタイムチャートである。 本発明の第5実施形態にかかる自動変速機の変速制御の他の例を説明するタイムチャートである。 本発明の第6実施形態にかかる自動変速機の変速制御を説明するフローチャートである。 本発明の第6実施形態にかかる自動変速機の変速制御の一例を説明するタイムチャートである。 本発明の第6実施形態にかかる自動変速機の変速制御の他の例を説明するタイムチャートである。 従来技術を説明する変速機のスケルトン図である。 従来技術を説明するタイムチャートであり、(a)は変速機の入力回転を示し、(b)は変速機の入力トルクを示し、(c)は変速機の出力トルクを示す。
符号の説明
3 変速機用ECU(電子制御ユニット)
3A 変速判定手段(変速判定部)
3B 特定変速判定手段(同軸パワーオンダウンシフト判定部)
10 摩擦係合要素制御手段
10A 目標値設定手段
10B 総トルク容量算出手段
10C 配分比設定手段
10D 個別トルク容量算出手段
10E 締結制御手段
51 入力軸
52 第1クラッチ(クラッチ1)
53 第2クラッチ(クラッチ2)
54 出力軸
60A 変速ギア機構
60B 変速ギア機構
B1 入力信号演算部
B2 変速決心演算部
B3 変速スケジュール制御部
B4 制御対象回転選択部
B5 目標差回転演算部(目標値設定手段)
B5´ 目標回転演算部
B6 配分比演算部(配分比設定手段)
B7 実差回転演算部
B8 差回転数F/B制御部(差回転数フィードバック制御部)
B8´ 回転F/B制御部(回転速度フィードバック制御部)
B9 加算部(総トルク容量算出手段)
B10 クラッチ容量配分部(個別トルク容量算出手段)
B12 クラッチ1容量/圧変換部(締結制御手段)
B13 クラッチ2容量/圧変換部(締結制御手段)
B14 変速段確立変換部
B15 トルク補正量演算部
B16,b17 加算部(個別トルク容量算出手段)

Claims (28)

  1. 2本の変速機入力軸と、
    1本の変速機出力軸と、
    前記の各変速機入力軸とエンジン側の入力部材との間にそれぞれ介装された摩擦係合要素と、
    前記の各変速機入力軸と前記変速機出力軸との間に、それぞれ動力断接装置を介して接続された複数の変速段のギア組と、
    変速を行なうべきか否かを判定すると共に、該変速を行なうべき場合には目標変速段を設定する変速判定手段と、
    前記変速判定手段により前記目標変速段に基づいて、前記変速が、パワーオンダウンシフトであって、且つ、前記目標変速段のギア組と現変速段のギア組とがいずれも前記2本の変速機入力軸のうちの一方である第1の変速機入力軸に接続されたものである、同軸パワーオンダウンシフトであるか否かを判定する特定変速判定手段と、
    前記特定変速判定手段により前記同軸パワーオンダウンシフトであると判断されたら、前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更が完了するまでの中間状態で、前記2本の変速機入力軸のうちの他方である第2の変速機入力軸に接続された経由変速段のギア組を一時的に使用して走行するように、前記両摩擦係合要素と前記各動力断接装置のうちの所要の装置とを制御する制御手段とをそなえた、車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置において、
    前記制御手段は、前記中間状態で、前記目標変速段が設定された際の前記エンジンの回転数を予測し、
    前記エンジンの回転数が該予測した回転数に漸近するように、前記現変速段のギア組が接続された前記第1の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第1の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、
    前記漸近するように調整したら、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第1の摩擦係合要素を開放しつつ、前記経由変速段のギア組が接続された前記第2の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第2の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、
    前記第1の摩擦係合要素の開放が完了した後に、前記現変速段のギア組の係合を解除し、前記目標変速段のギア組を係合し、
    前記目標変速段のギア組の係合が完了した後に、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第2の摩擦係合要素を開放しつつ前記第1の摩擦係合要素を締結することによって、
    前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更を完了する
    ことを特徴とする、車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記エンジンの回転数が該予測した回転数に近づくように行なう制御を、前記エンジン側の入力部材にそれぞれ接続された第1の摩擦係合要素及び第2の摩擦係合要素の何れかを制御対象として制御することにより実施する
    ことを特徴とする、請求項1記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  3. 前記経由変速段は、前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれか、によって決定される
    ことを特徴とする、請求項2記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  4. 前記制御手段は、
    前記同軸パワーオンダウンシフト時には、前記第1又は第2の摩擦係合要素の入出力回転数の差の目標値である目標差回転数を設定する目標値設定手段と、
    前記目標値設定手段により設定された前記目標差回転数を得るために前記の第1及び第2の摩擦係合要素に要求される総トルク容量を算出する総トルク容量算出手段と、
    前記の第1及び第2の摩擦係合要素への前記総トルク容量の配分比を設定する配分比設定手段と、
    前記総トルク容量算出手段により算出された前記総トルク容量と、前記配分比設定手段により設定された前記配分比とに基づいて、前記の第1及び第2の摩擦係合要素にそれぞれ要求される個別トルク容量を算出する個別トルク容量算出手段と、
    前記個別トルク容量算出手段により算出された個別トルク容量に応じて前記の第1及び第2の摩擦係合要素の締結状態を制御する締結制御手段と、をそなえている
    ことを特徴とする、請求項2又は3記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  5. 前記目標値設定手段は、前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量と、前記エンジンの回転又は該回転に対応する量もしくは変速比とに基づいて前記目標値を設定する
    ことを特徴とする、請求項4記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  6. 前記総トルク容量算出手段は、前記総トルク容量を、変速機への入力トルクと、前記目標差回転数と前記第1の摩擦係合要素の入出力回転数の差である実差回転数との偏差に基づいて算出される補正量との和とする
    ことを特徴とする、請求項4又は5記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  7. 前記制御手段による前記パワーオンダウンシフトの制御は、
    前記経由変速段のギア組を動力伝達状態とする第1の準備フェーズと、
    前記第1の変速機入力軸の回転数を調整するイナーシャフェーズと、
    前記第1の摩擦係合要素を締結から開放へ前記第2の摩擦係合要素を開放から締結へと切り替える摩擦係合要素の掛け替えを実施する第1の掛け替えフェーズと、
    前記第1の掛け替えフェーズの後に実施し、前記目標変速段を設定する第2の準備フェーズと、
    前記第2の準備フェーズの後に実施し、前記第1の摩擦係合要素を開放から締結へ前記第2の摩擦係合要素を締結から開放へと切り替える前記掛け替えを実施する第2の掛け替えフェーズと、
    前記イナーシャフェーズの後に実施し、前記経由変速段のギア組を開放する終了フェーズと、をそなえている
    ことを特徴とする、請求項5又は6記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  8. 前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、この順に順番に実施される
    ことを特徴とする、請求項7記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  9. 前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズとが同時に実施され、前記掛け替えフェーズが、その次に実施される
    ことを特徴とする、請求項7記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  10. 前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、同時に実施される
    ことを特徴とする、請求項7記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  11. 前記第1の準備フェーズでは、前記第1の摩擦係合要素を制御対象として、前記目標差回転数を設定し、前記第1の摩擦係合要素の実差回転数が前記目標差回転数を追従するように制御するとともに、このときの前記配分比を、前記第1の摩擦係合要素に全容量が配分される1:0の状態に設定する
    ことを特徴とする、請求項7〜10の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  12. 前記第1の準備フェーズで用いる前記目標差回転数は、その時点のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量と、前記エンジンの回転又は該回転に対応する量もしくは変速比とに基づいて設定する
    ことを特徴とする、請求項11記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  13. 前記第1の準備フェーズにおける前記の経由変速段の確立は、該経由変速段を接続する前記第2の摩擦係合要素が入力トルクを伝達するのに必要最低限未満のトルク容量の時に実施する
    ことを特徴とする、請求項11又は12記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  14. 前記イナーシャフェーズでは、前記第1の摩擦係合要素の入力軸回転数を、変速前の変速比で作られる入力軸回転数相当から、変速後の変速比で作られる入力軸回転数相当になるように、前記第1の摩擦係合要素の差回転数を制御する前記総トルク容量を求め、該総トルク容量を前記第1の摩擦係合要素にすべて配分する
    ことを特徴とする、請求項7〜13の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  15. 前記イナーシャフェーズの制御では、その時点の前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって、制御対象の前記第1の摩擦係合要素の入出力間の変速前後における目標差回転数の軌跡を作成し、計測した実差回転数が該目標差回転数に追従するように前記第1の摩擦係合要素のトルク容量を制御する
    ことを特徴とする、請求項14記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  16. 前記第1の掛け替えフェーズでは、前記の第1の摩擦係合要素の差回転数制御を継続しつつ、前記総トルク容量を前記第1の摩擦係合要素へ全て配分する前記配分比が1:0の状態から前記第2の摩擦係合要素へ全て配分する前記配分比が0:1の状態へと移行するように、前記第1の摩擦係合要素への前記配分比を1から0へ漸減しつつ前記第2の摩擦係合要素への前記配分比を0から1へ漸増させる制御を行なう
    ことを特徴とする、請求項7〜15の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  17. 前記第1の掛け替えフェーズでは、前記配分比の変化率を、その時点の前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって算出される所定値とする
    ことを特徴とする、請求項16記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  18. 前記第2の準備フェーズでは、制御対象の摩擦係合要素を前記第1の摩擦係合要素から前記第2の摩擦係合要素に切り替えて、前記目標差回転数を設定し、計測された前記実差回転数が前記目標差回転数を追従するように前記第2の摩擦係合要素を制御するとともに、前記配分比は、前記第2の摩擦係合要素に前記総トルク容量全てが配分される0:1の状態とする
    ことを特徴とする、請求項7〜17の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  19. 前記第2の準備フェーズにおいて設定される前記目標差回転数とは、その時点の前記エンジンの負荷又は該負荷に対応する量、及び、前記変速機への入力軸回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって算出される値とする
    ことを特徴とする、請求項18記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  20. 前記第2の掛け替えフェーズでは、前記の第2の摩擦係合要素の差回転数制御を継続しつつ、前記総トルク容量を前記第2の摩擦係合要素へ全て配分する0:1状態から前記第1の摩擦係合要素へ全て配分する1:0状態へと移行するように、前記第2の摩擦係合要素への前記配分比を1から0へ漸減しつつ前記第1の摩擦係合要素への前記配分比を0から1へ漸増させる制御を行なう
    ことを特徴とする、請求項7〜19の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  21. 前記終了フェーズでは、制御対象を前記第2の摩擦係合要素から前記第1の摩擦係合要素に切り替えて、前記目標差回転数を設定し、計測された実差回転数が前記目標差回転数を追従するように前記第1の摩擦係合要素を制御する
    ことを特徴とする、請求項7〜20の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  22. 前記終了フェーズでは、前記目標差回転数を、その時点のエンジンの負荷又は該負荷に対応する量、及び、前記エンジンの回転数もしくは制御対象の摩擦係合要素の入力軸回転数もしくは変速比のいずれかによって決定する
    ことを特徴とする、請求項21記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  23. 前記目標値設定手段は、前記目標差回転数に対応する前記変速機への入力回転の目標値である入力目標回転数を制御対象の摩擦係合要素の出力回転数以上になるように設定し、
    前記総トルク容量算出手段は、前記エンジンの実回転数が前記目標差回転数設定手段により設定された前記目標回転数となるために前記の第1及び第2の摩擦係合要素に要求される総トルク容量を算出する
    ことを特徴とする、請求項4〜22の何れか1項に記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御装置。
  24. 2本の変速機入力軸と、
    1本の変速機出力軸と、
    前記の各変速機入力軸とエンジン側の入力部材との間にそれぞれ介装された摩擦係合要素と、
    前記の各変速機入力軸と前記変速機出力軸との間に、それぞれ動力断接装置を介して接続された複数の変速段のギア組と、
    をそなえた、車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法であって、
    変速を行なうべきか否かを判定すると共に、該変速を行なうべき場合には目標変速段を設定する変速判定ステップと、
    前記変速判定ステップにより前記目標変速段に基づいて、前記変速が、パワーオンダウンシフトであって、且つ、前記目標変速段のギア組と現変速段のギア組とがいずれも前記2本の変速機入力軸のうちの一方である第1の変速機入力軸に接続されたものである、同軸パワーオンダウンシフトであるか否かを判定する特定変速判定ステップと、
    前記特定変速判定ステップにより前記同軸パワーオンダウンシフトであると判断されたら、前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更が完了するまでの中間状態で、前記2本の変速機入力軸のうちの他方である第2の変速機入力軸に接続された経由変速段のギア組を一時的に使用して走行するように、前記両摩擦係合要素と前記各動力断接装置のうちの所要の装置とを制御する制御ステップとをそなえた、車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法において、
    前記制御ステップでは、
    前記中間状態で、前記目標変速段が設定された際の前記エンジンの回転数を予測し、
    前記エンジンの回転数が該予測した回転数に漸近するように、前記現変速段のギア組が接続された前記第1の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第1の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、
    前記漸近するように調整したら、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第1の摩擦係合要素を開放しつつ、前記経由変速段のギア組が接続された前記第2の変速機入力軸と前記エンジン側の入力部材との間の前記摩擦係合要素である第2の摩擦係合要素の滑り状態での係合を制御する係合制御量を調整し、
    前記第1の摩擦係合要素の開放が完了した後に、前記現変速段のギア組の係合を解除し、前記目標変速段のギア組を係合し、
    前記目標変速段のギア組の係合が完了した後に、前記エンジンの回転数が該予測した回転数を維持するようにしながら、前記第2の摩擦係合要素を開放しつつ前記第1の摩擦係合要素を締結することによって、
    前記現変速段のギア組を使用する走行から前記目標変速段のギア組を使用する走行への変更を完了する
    ことを特徴とする、車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法。
  25. 前記制御ステップは、
    前記経由変速段のギア組を動力伝達状態とする第1の準備フェーズと、
    前記第1の変速機入力軸の回転数を調整するイナーシャフェーズと、
    前記第1の摩擦係合要素を締結から開放へ前記第2の摩擦係合要素を開放から締結へと切り替える摩擦係合要素の掛け替えを実施する第1の掛け替えフェーズと、
    前記第1の掛け替えフェーズの後に実施し、前記目標変速段を設定する第2の準備フェーズと、
    前記第2の準備フェーズの後に実施し、前記第1の摩擦係合要素を開放から締結へ前記第2の摩擦係合要素を締結から開放へと切り替える前記掛け替えを実施する第2の掛け替えフェーズと、
    前記イナーシャフェーズの後に実施し、前記経由変速段のギア組を開放する終了フェーズと、をそなえている
    ことを特徴とする、請求項24記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法。
  26. 前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、この順に順番に実施される
    ことを特徴とする、請求項25記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法。
  27. 前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズとが同時に実施され、前記掛け替えフェーズが、その次に実施される
    ことを特徴とする、請求項25記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法。
  28. 前記第1の準備フェーズと前記イナーシャフェーズと前記第1の掛け替えフェーズとが、同時に実施される
    ことを特徴とする、請求項25記載の車両用ツインクラッチ式変速機の制御方法。
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