JP4533220B2 - ハイドロフォーム用金型 - Google Patents

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本発明は,ハイドロフォーム加工・バルジ加工用の金型に関し,さらに詳しくは,上下に分割された金型内に素管を挿入し,素管の内部に液圧を負荷して金型に沿った形状に加工するハイドロフォーム加工・バルジ加工用の金型に関するものである。
液圧バルジ加工は,一般に素管の両端をシールし,内部に液体を充満し,さらにその液体の圧力を上げることにより拡管し所定の形状に成形を行うものである。ハイドロフォーム加工は,一般に液圧バルジ加工において素管両端をシールするだけでなく積極的に管軸方向に押し込み力を負荷し,拡管による素管の肉厚減少を素材の押し込みにより補うものである。
これらの液圧による加工法では,金型内面に液圧による応力が発生するが,金型コーナ部では液圧によりコーナを押し開こうとする引張応力が発生する。図1(a)に上側の金型1a及び下側の金型1bからなる従来の一般的な金型を示す。液圧バルジ加工やハイドロフォーム加工等の液圧による加工法では,金型内面に液圧による応力が発生し,製品のコーナ部2では液圧によりコーナ部2を押し開こうとする引張応力が発生する。この引張応力により金型1a,1bに亀裂が発生し破損することがある。このような亀裂発生を避けるため加工液圧を低減すると製品のコーナが所定の半径まで小さく加工できないという問題があった。
また,図1(b)に示すように上下の中子金型3a,3bを設けた場合でもコーナ部2にかかる引張応力は変わらず,破損時の対処が楽なだけであり,引張応力により中子金型3a,3bに亀裂が発生し破損する問題は解決しなかった。
このような問題に対し,本発明者らの一部は図2に示すような内側の中子金型を分割した中子金型3a,3b,3c,3dを用いて中子金型の引張応力を低減する発明を特許文献1で開示した。しかしながら,このような中央部で分割する中子金型は発生応力を緩和する点では効果があるが,製品形状に中子の分割線が転写され後工程での手直しが必要になる場合がある。また,中子の分割線の転写を避けるため加工液圧を減少すると所定の形状に加工できない懸念があった。
この欠点を補う為に,同じく本発明者らの一部は,コーナー部分に分割線を配置することを特徴とする図3にしめすような金型を特許文献2で開示している。このように分割線をコーナー部に配することで,分割線の製品への転写を防ぐことができる。以上のような分割金型を用いることでハイドロフォーム成形等における応力集中による金型破損の問題は解決できるが,上記のような複雑な分割金型は,部品形状が3次元的に複雑な形状を持っている場合,加工が困難であり金型費用も高価となる可能性があった。
特開2003−251418号公報 特開2004−291030号公報
本発明は,このような従来技術の問題点を解消し,金型の亀裂発生を回避するとともに,分割線の転写もなく安価で単純な構造を持つハイドロフォーム用金型を提供することを目的とする。なお,本発明のハイドロフォーム用金型は,ハイドロフォーム加工とバルジ加工の両方に用いられるものである。
上記目的を達成するために,本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
即ち,本発明によれば,上下に分割された金型において,型締め時に互いに対向する上下の中子金型と,前記中子金型を保持する上下の外側金型からなり,前記上下の中子金型は,その衝合部の外縁を含む平面のみで前記外側金型と密着して組み合わされ,かつ,管軸方向垂直断面,周方向垂直断面の一方又は双方において,前記平面の互いになす角度が0°より大きく120°未満であり,前記上下の外側金型の貸出し内側部分が,その衝合部の内縁を含む平面および曲率半径30mm以上の面によって構成されることを特徴とするハイドロフォーム用金型が提供される。
また,管軸方向垂直断面,周方向垂直断面の一方又は双方において,上下の中子金型の内法の幅をL(mm),前記中子金型と前記外側金型の接触部長さをS(mm),前記平面の互いになす角度をθ(°)としたとき,次式を満たすようにしても良い。
Figure 0004533220
本発明により,金型に亀裂が発生せず,中子の分割線の転写もなく,製品のコーナの半径も小さく加工でき,金型の亀裂発生を回避するとともに,製品に中子の分割線が転写されない分割部分のすくない単純で安価なハイドロフォーム用金型を得ることができる。
以下,本発明について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明の金型の例を図4に示す。上側の外側金型及び中子金型は同様形状のため省略し,図4では,下側の外側金型1b及び中子金型5bのみとした。以下,下側の外側金型1b及び中子金型5bについて説明するが,下側の外側金型1b及び中子金型5bについてされた説明は,上側の外側金型及び中子金型についても実質的に同様に適用可能である。
ハイドロフォーム成形・バルジ成形では,成形時に金型の製品形状面に負荷される高圧により金型に引張応力が生じる。特に製品のコーナー部分では,この引張応力による応力集中が大きく金型破損・寿命低下の原因となっていた。本発明の金型では,上下に分割された金型において,型締め時に上側の中後金型(図示しない)と対向する中子金型5bと,前記中子金型5bを保持する外側金型1bを備え,前記中子金型5bは,型締め方向の2つの断面,つまり軸方向垂直断面(図中A断面),周方向垂直断面(図中B断面)の一方又は双方において,図4(b),(c)に示すように中子金型5bの衝合部7の外縁8を含む平面11のみで外側金型1bと密着して組み合わされ,かつ,この平面11の互いになす角度θは0°より大きく120°未満の角度をなす。
なお,軸方向垂直断面(図中A断面)は,金型内に挿入される加工対象物である素管の管軸線を含む断面である。周方向垂直断面(図中B断面)は,管軸線に垂直な断面である。
ハイドロフォーム成形・バルジ成形時に,高圧が金型の製品形状面に負荷された際,本発明の金型構造においては中子金型5bと外側金型1bの接触面(平面11)が平行ではなく互いに角度を持っている為,中子金型5bを保持する外側金型1bとの接触面(平面11)から図5に示す様に,内圧Pによる引張応力を相殺する方向に面圧Pを受ける事になる。これにより内圧Pによる中子金型のコーナ部2への応力集中を従来の金型に比べて著しく減少することができる。
図4においては軸方向垂直断面,周方向垂直断面の何れにおいても中子金型5bの側面に平面11を有しているが,少なくとも何れかの断面において本発明で規定する平面11を有していれば,本発明の効果を奏することができる。
加えて,中子金型5bが装着される外側金型1bの内側部分が,外側金型1bの衝合部9の内縁8(中子金型5bの衝合部7の外縁8と同じ)を含む平面11および曲率半径30mm以上の面によって構成されることが好ましい。内縁8を含む平面11以外に,一部平面を含んでも構わない。このように外側金型1bの内側部分全体が,平面及び曲率半径30mm以上の面となるように設計しておけば,外側金型1bでの応力集中も緩和することが出来る為,高圧を負荷した成形を実施しても破損し難いハイドロフォーム用金型を提供することができる。
加えて,本発明の金型では,中子金型5bを複数に分割する必要がない為,金型構造を単純なものとすることができ,従来の中子金型を分割するタイプの金型に比して安価に製作することができる。
なお,図6(a)に示す様に,中子金型5bと外側金型1bが密着する平面(中子金型5bの衝合部7の外縁8を含む平面)11の傾きや接触部長さが左右で異なる物や,図6(b)に示す様に外側金型1bの内側部分に半径が2つ以上からなる曲面を有する場合も同様の効果が期待できる。更に,図6(c)に示すように左右の平面の高さ(衝合部7の高さ)が異なる場合も同じ効果を得ることができる。
ただし,図4に示すように,型締め方向の断面において,中子金型5bの内法の幅をL(mm)とし,中子金型5bと外側金型1bの接触部長さ(=中子金型5bの衝合部7の外縁8を含む平面11の切断長)をS(mm)とし,中子金型5bと外側金型1bが密着する面(=中子金型5bの衝合部7の外縁8を含む平面11)が互いになす角度をθ(°)としたとき,S及びθが小さすぎる場合,生じる反力Pが大きくなりすぎ圧縮の強い応力が生じ,金型を破損する恐れがある,またS及びθが大きすぎる場合,内圧Pによる引張応力を充分緩和するだけの反力Pを生じさせることができず十分な疲労強度向上効果を引き出すことができない。そこでより望ましくは,反力Pが内圧Pに近い値を持つように金型の設計を行う必要がある。今,簡単のため左右対称な金型を仮定した場合,Pは,型締め方向の釣り合いの式から以下の様に求めることができる。
Figure 0004533220
ここで図7の(a)に示すような軸方向垂直断面をもつ金型において角度θを変化させた際の金型に生じる最大主応力の値とP/Pとの関係を弾性変形解析により計算した結果を図7(b)に示す。図7の(b)から,反力Pを内圧Pの1.0倍以下0.4倍以上とすることで高い応力集中低減効果を得ることができる事が判明した。これと上記の式と併せて,以下の式を満たすようにS及びθを設計すれば更に高い効果を得ることができる。
Figure 0004533220
本発明例として,図8に示す形状の金型を用いて図9に示すような長方形断面の製品6を成形した。金型の寸法はH1=35mm,H2=40mm,H3=80mm,H4=80mm,H5=300mm,H6=300mm,L1=65mm,W1=500mm,W2=125mm,W3=250mm,S1=S2=85mm,θ1=θ2=20度,R1=80mm,R2=80mmとした。なお金型は左右対称とし製品断面のコーナーR(半径)は10mmとした。
中子金型の平面は周方向垂直断面のみ斜面となるようにし,軸方向垂直断面において,外側金型と中子金型のなす角度は90度とした。
一方,比較例1として図1(b)に示す形状の金型を用いた。金型の寸法はa=35mm,b=40mm,c=65mm,d=120mm,e=500mm,f=70mm,g=80mm,h=300mm,i=300mm,j=20mmとした。なお金型形状は左右対称とし外子金型のコーナRは,四箇所とも同じ値とした。
さらに比較例2として図2に示す形状の金型を用いた。金型の寸法はa2=35mm,b2=40mm,c2=65mm,d2=120mm,e2=500mm,f2=70mm,g2=80mm,h2=300mm,i2=300mm,j2=20mm,k2=30mm,l2=80mm,m2=70mmとした。なお金型形状は左右対称とし四つの中子金型外側のコーナRは同じ値とした。また外子金型のコーナR四箇所も同じ値とした。
最後に比較例3として図3に示す形状の金型を用いた。金型寸法はa3=35mm,b3=40mm,c3=65mm,d3=150mm,e3=500mm,f3=80mm,g3=80mm,h3=300mm,i3=300mm,j3=80mm,k3=80mmとした。なお金型形状は左右対称とした。
素材は機械構造用鋼管STKM11A(外径φ63.5mm×板厚2.5mm,長さ480mm)を用い,内圧を37MPaに保持して片側=45mmづつ軸押しを加えた後内圧を200Mpaまで上昇させて成形をおこなった。
本発明例では金型1a,1bに亀裂が発生せず,中子の分割線の転写もなく,製品のコーナの半径が12mmまで小さく加工できた。また,中子金型の分割もない為,比較例1,2,3にくらべ安価に金型を製作することができた。
一方,比較例1では製品のコーナの半径が12mmまで小さく加工できたものの,300回成形を行った時点で中子金型3a,3bのコーナに長さ13mm程度の亀裂が発生した。
また,比較例2も製品のコーナの半径が12mmまで小さく加工できたものの,製品に中子の分割線が転写された。
比較例3では,製品のコーナの半径が12mmまで小さく加工でき分割線の転写もなかったが,中子金型を分割式としたため金型製作費が非常に高価なものとなった。
本発明は,ハイドロフォーム加工・バルジ加工に利用できる。
(a)従来のハイドロフォーム用金型の断面図を示す。 (b)中子金型を有する従来のハイドロフォーム用金型の断面図を示す。 分割式の中子金型により亀裂発生を抑制する従来技術の金型の断面図を示す。 コーナー部で分割する中子金型により亀裂発生を抑制する従来技術の金型の断面図を示す。 (a)本発明の金型の外観図である。(b)本発明の金型のA断面図である。(c)本発明の金型のB断面図である。 ハイドロフォーム成形で高い内圧を負荷した際に本発明金型に負荷される力を示す模式図である。 本発明の金型の例であり,(a),(b),(c)-2は断面図,(c)−1は,外観図である。 (a)弾性変形解析を行った金型の断面図であり,上下金型は同形状の為下型のみを示す。(b)弾性変形解析により求められた金型内部に加わる圧力Pと中子金型外側に加わる反力Pの比 P/Pと中子金型に生じる最大主応力の関係を示すグラフである。 実施例における本発明の金型の断面図を示す。 実施例における成形品の形状を示す三面図である。
符号の説明
1a 上側の(外側)金型
1b 下側の(外側)金型
2 コーナ部
3a,3b,3c,3d 中子金型
4a,4b,4c,4d 中子金型
5a,5b 中子金型
6 ハイドロフォーム成形品
7 中子金型の衝合部
8 外側金型の衝合部の内縁(中子金型の衝合部の外縁)
9 外側金型の衝合部
11 外側金型の衝合部の内縁を含む平面(中子金型の衝合部の外縁を含む平面)

Claims (2)

  1. 上下に分割された金型において,型締め時に互いに対向する上下の中子金型と,前記中子金型を保持する上下の外側金型からなり,前記上下の中子金型は,その衝合部の外縁を含む平面のみで前記外側金型と密着して組み合わされ,かつ,管軸方向垂直断面,周方向垂直断面の一方又は双方において,前記平面の互いになす角度が0°より大きく120°未満であり,前記上下の外側金型の貸出し内側部分が,その衝合部の内縁を含む平面および曲率半径30mm以上の面によって構成されることを特徴とするハイドロフォーム用金型。
  2. 管軸方向垂直断面,周方向垂直断面の一方又は双方において,上下の中子金型の内法の幅をL(mm),前記中子金型と前記外側金型の接触部長さをS(mm),前記平面の互いになす角度をθ(°)としたとき,

    Figure 0004533220

    を満たすことを特徴とする請求項1記載のハイドロフォーム用金型。
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