JP4532612B2 - Fas抗原発現増強剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒアルロン酸を有効成分として含有するFas抗原発現増強剤に関し、より詳細には、非正常細胞の表面に存在するFas抗原の発現量を増加させ、Fas抗原を介した細胞自滅を増強する、ヒアルロン酸を有効成分として含有する薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞死は細胞壊死(ネクローシス)と細胞自滅(アポトーシス)に区別される。細胞自滅は組織の形成、細胞の成熟、体内での正常な細胞交代等の他、低レベルの放射線や細菌・ウイルスの感染等により傷害された細胞が、生存を続けることによって生体に異常を引き起こすこととなる際に、前記傷害された細胞が自らまたは白血球による抗原刺激等をきっかけとして起こす自発的な細胞死である。
【0003】
細胞自滅は生体内で正常時にも起こっているが、特に正常に細胞自滅を引き起こさなくなった結果、非正常細胞量が増加して生体に異常を来している疾患においては、細胞自滅を増強することがそのような疾患の治療上有効であると考えられる。
【0004】
細胞を積極的に細胞自滅へ導く方法としては、低レベルの放射線の照射や薬物、抗体刺激等多くの方法が一般的に使用されている。例えば抗体刺激の方法の一つとして、抗Fas抗体またはFasリガンドによる刺激により、Fas抗原(抗Fas抗体と同時期に発見された抗APO-1抗体(Trauth, B. C., et al., Science, 245 (1989), 301)に対する抗原(APO-1抗原)と同一物質)発現細胞を細胞自滅へ誘導できることが知られている(Yonehara, S., et al., J. Exp. Med., 169 (1989), 1747-1756、Suda, T., et al., Cell. 75 (1993), 1169-1178、Itoh, N., et al., Cell, 66 (1991), 233-243等)。
【0005】
Fas抗原を介した細胞自滅の機構は、白血球のT細胞の成熟段階における自己抗原反応性T細胞の除去への関与等、免疫系細胞の細胞自滅の機構であると考えられてきたが(Klaz, C., et al., Int. Immunol., 5 (1993), 625-630)、その他のFas抗原発現細胞、例えば遺伝子導入により強制的にヒトFas抗原を発現したCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来の培養細胞)が、抗ヒトFas抗体(以下、単に抗Fas抗体と記載する)で細胞自滅を起こすこと等も知られている。
【0006】
このような知見から、抗Fas抗体を使用して細胞自滅を増強する医薬が提案されており、異常を起こして細胞自滅を起こさなくなった細胞に対して抗Fas抗体を投与することによりFas抗原を介した細胞自滅を引き起こすことに基づいたリウマチ治療薬等の医薬が開示されている(特開平8-208515号等)。しかしながら、上記の抗Fas抗体等のような細胞自滅を誘導する物質の投与のみでは非正常細胞の細胞自滅の誘導が不十分で、上記の目的が十分に達成できず、実用化には至っていない。
【0007】
また、上記のような抗Fas抗体により増強されるFas抗原を介した細胞自滅は、アクチノマイシンDやシクロヘキシミドに代表される細胞増殖抑制剤を添加することによりさらに増強され、より多くの細胞が細胞自滅へ導かれることが見出されている。例えば上記の特開平8-208515号には、抗Fas抗体及び細胞増殖抑制剤を含む細胞自滅を増強する医薬が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、異常増殖能を獲得して細胞数が増加した非正常細胞を細胞自滅へ導く充分に高い能力を有し、かつ生体に対して安全な薬剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは生体に対して安全性を有し且つ有用な細胞自滅を増強する物質を鋭意探索し、各種化合物を検討した。その結果、従来から医薬等として使用され安全性が確認されている特定のヒアルロン酸で非正常細胞の細胞膜上に発現したCD44を刺激することにより、Fas抗原を大量に発現させることができることを見出した。Fas抗原が大量に発現することで、抗Fas抗体またはFasリガンドの存在下において非正常細胞内への細胞自滅シグナルの発生頻度が高まり、非正常細胞の細胞自滅増強効果が高まることが期待される。
【0012】
本発明によれば、重量平均分子量が95万であるヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含むFas抗原発現増強剤が提供される。
本発明の増強剤は、非正常細胞のFas抗原発現増強のために用いることができる。非正常細胞は、慢性関節リウマチ滑膜炎の動物の滑膜細胞であることが好ましい
【0013】
尚、ヒアルロン酸は、関節機能改善剤として関節内へ適用する等、従来から医薬として利用されており、また低分子のヒアルロン酸についても医薬として使用することが可能なことが知られており(特表平8-508973号)、生体に対する安全性は広く認められている。
【0014】
ヒアルロン酸は様々な白血球等の膜上に発現する抗原CD44のリガンドとして働くことが知られており、例えば白血球のT細胞についてはその細胞膜上のCD44をヒアルロン酸で刺激することで細胞の活性化が起こり、また単球についてはその細胞膜上のCD44を上記と同様に刺激することでサイトカインやケモカインの放出が促進されること等が知られているが(Webb, D.S., et al., Science, 249(1990), 1295-1297、McKee, C.M., et al., J. Clin Invest., 98(1996), 2403-2413)、ヒアルロン酸がFas抗原を大量に発現させ細胞自滅に関与し得ることは知られていなかった。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容されうる塩を有効成分とする非正常細胞自滅増強剤である。
【0017】
本発明における「非正常細胞」の用語は、健常な状態の組織においては観察されない増殖量を示す細胞を意味するものであり、好ましくは、細胞自滅の頻度が下がったことで、細胞数が病的に増加し続ける状態にある細胞を包括的に指称するために使用する。このような非正常細胞の例としては、例えば無限増殖能を獲得している「癌細胞」、及び慢性関節リウマチ滑膜炎(以下「RA」とも記載する)の動物における「滑膜細胞」等が挙げられる。
【0018】
非正常細胞は細胞膜抗原CD44をより強く発現していることが好ましい。そのような細胞としては、例えばRAの動物の滑膜細胞が挙げられる。このような細胞ではヒアルロン酸によってより強く細胞自滅が誘導される。
【0019】
本発明で使用する用語「細胞自滅」は、細胞死の一形態であって、生理的条件下、場合によっては抗原刺激等により細胞自らが積極的に引き起こす細胞死であり、その過程において細胞が収縮することを特徴とし、一般にアポトーシスと称される。
【0020】
従って、本発明の細胞自滅増強剤は、それを投与しない場合と比較して、上記のような細胞自滅を起こす細胞の数を増加させる薬剤と定義される。
【0021】
細胞自滅は、一般的に細胞自滅を判別するために使用される方法で細胞壊死と容易に判別される。例えば細胞のクロマチンの凝縮、アポトーシス小体の観察等の形態的観察、フローサイトメトリーを用いた方法等で上記判別は可能であるが、細胞の状態を正確に把握するためにはフローサイトメトリーを用いて判別することが好ましい。
【0022】
フローサイトメトリーを用いた細胞自滅の判別は、例えば細胞自滅を起こした状態の細胞の構成物に特異的に結合する物質により細胞を処理し、フローサイトメトリーにより該物質を結合した細胞を測定することにより行うことができる。さらに必要により、細胞壊死を起こした細胞の構成物に結合する物質による細胞の処理も併用し、細胞の状態をより正確に把握することができる。
【0023】
細胞自滅を起こした状態の細胞の構成物に特異的に結合する物質としては、例えば、細胞自滅の初期段階を示す指標となる細胞膜の反転時において、反転した細胞膜上に存在するホスファチジルセリンに結合するアネキシン-V等が挙げられる。また、細胞壊死を起こした細胞の構成物に結合する物質としては、細胞膜の崩壊時に細胞内のDNAに結合するプロピジウムイオダイド(以下「PI」と略記する)等が挙げられる。細胞壊死においては早い段階で細胞膜の崩壊が起こるが、細胞自滅を起こす細胞においてはその行程の最終段階まで細胞膜の崩壊は起こらないため、PIを使用することにより細胞壊死を起こしている細胞と起こしていない細胞を容易に区別することができる。
【0024】
これらの物質で細胞を処理することによりそれらの物質を細胞の構成物に結合させ、その結合量をフローサイトメトリーにより測定する。フローサイトメトリー自体は一般的な方法により行うことができ、上記PI結合量はフィコエリトリン検出器により測定でき、アネキシン-V結合量は、例えばフルオレシンイソチオシアネート(FITC)を予め結合したアネキシン-Vを使用してFITCが発する蛍光により間接的に測定できる。
【0025】
細胞自滅を起こした状態の細胞の構成物と細胞壊死を起こした細胞の構成物のそれぞれに結合する各物質の結合を測定する場合、これらの物質の結合量の測定値について二次元解析を行うことにより細胞の状態をより正確に把握することが可能となる。例えば、これらの物質として上記のアネキシン-V及びPIを使用する場合、増加したPI結合量を示す細胞は、細胞自滅の後期の段階の細胞及び細胞壊死を起こした細胞の双方を含むものとしてそれらを除き、PIの結合量が低い細胞につきアネキシン-Vの結合量を解析し、アネキシン-Vの結合量が高い細胞の量を測定することにより細胞自滅の初期の段階にある細胞の量が正確に把握される。
【0026】
本発明の非正常細胞自滅増強剤の有効成分であるヒアルロン酸はそれ自体公知の物質であり、β-D-N-アセチルグルコサミンとβ-D-グルクロン酸がβ1→3結合してできた直鎖高分子多糖である。自然界に存在するヒアルロン酸は通常数万〜数百万の幅広い分子量範囲の重量平均分子量を有する。本発明の非正常細胞自滅増強剤の有効成分として使用されるヒアルロン酸の分子量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量で1,000 Da〜60,000 Da程度、より好ましくは1,700 Da〜40,000 Da程度である。このような比較的低分子量のヒアルロン酸は、重量平均分子量約95万Da以上の通常のヒアルロン酸と比較して、非正常細胞に対してより高い細胞自滅増強活性を示す。
【0027】
上記ヒアルロン酸は、遊離の形態で使用してもよいが、通常塩の形態で使用することが好ましい。ヒアルロン酸の薬理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩等が挙げられるが、アルカリ金属との塩が好ましく、その中でもナトリウム塩が特に好ましい。
【0028】
本発明の非正常細胞自滅増強剤は作用機序によって限定されるものではないが、ヒアルロン酸が非正常細胞の細胞自滅を増強する作用機序については、非正常細胞において発現が増強される細胞膜抗原CD44にヒアルロン酸が結合し、この刺激により、細胞膜抗原であって細胞自滅を仲介することが知られているFas抗原の発現が促進されることによるものと考えられる。Fas抗原は抗Fas抗体またはFasリガンドによって架橋されることにより細胞自滅シグナルを細胞内に伝達するが、細胞表面のFas抗原の絶対量を増加させることで、細胞自滅シグナルの発生が容易になるものと考えられる。従って、ヒアルロン酸はFas抗原発現増強剤の有効成分としても使用することができる。
【0029】
本発明の非正常細胞自滅増強剤は、上述のように非正常細胞に対し細胞自滅を増強するため、例えば癌細胞の細胞自滅を増強すれば抗ガン剤として、RAの滑膜細胞の細胞自滅を増強すればRA治療剤としてRAの治療に使用することが可能である。
【0030】
特にRAに罹患した動物(ヒトを含む;以下「RA患者」と記載する)に適用することにより、異常増殖する滑膜細胞の細胞自滅を顕著に増強することが可能であり、結果的にRA患者の関節における滑膜の肥厚を抑制することができる。従って、本発明の非正常細胞自滅増強剤はRAの予防薬または進展防止薬として使用することも可能である(本発明にいう「RA治療剤」は、このような用途に使用されるものも包含する)。また、本発明の非正常細胞自滅増強剤を抗ヒトFas抗体と併用することも可能である。
【0031】
本発明の非正常細胞自滅増強剤を上述のような医薬として使用する場合、その剤形は適宜選択し得るが、注射剤等の液剤の形態とすることが好ましい。また、その投与方法も適用する疾患によって適宜選択され、例えば抗ガン剤として使用する場合は腫瘍等への注射による直接投与あるいは点滴による投与が挙げられ、またRA治療剤として使用する場合は関節腔内への注射による投与が挙げられる。
【0032】
上述の液剤は、例えば、適当な水性溶媒あるいは医薬品に慣用される溶媒にヒアルロン酸またはそのナトリウム塩等の薬理学的に許容される塩を溶解させて製造することができる。上記溶媒としては、蒸留水、緩衝液、生理食塩水、水性有機溶媒を含む水等が挙げられるが、本発明においては、前記溶媒としては蒸留水またはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を用いることが好ましく、PBSが特に好ましい。
【0033】
また、有効成分であるヒアルロン酸以外に、薬理学的に許容される補助剤、例えばpH調節剤、緩衝剤、張度調節剤、湿潤剤、安定化剤、無機塩類、界面活性剤、消泡剤、糖類、糖アルコール等;医薬として許容される生理活性物質、例えば抗炎症剤、鎮痛剤、ビタミン剤、抗菌剤、成長因子、接着因子等を添加することができる。これらの具体的な物質については医薬の分野においてよく知られている。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
試験例
【0035】
1.ヒアルロン酸濃度の測定
ヒアルロン酸濃度は、Bitter-Muir法(Bitter, T., Muir, H., Anal. Biochem., 4 (1962), 330-334)によりヒアルロン酸分子を構成するウロン酸残基量を定量し(対照としてはグルクロノラクトンを使用)、該定量値にヒアルロン酸量へ換算する係数:2.2786(グルクロノラクトン→グルクロン酸換算係数:1.1023とグルクロン酸→ヒアルロン酸換算係数:2.0671を乗じた数値)を乗じて算出した。
【0036】
2.ヒアルロン酸の極限粘度の測定
ヒアルロン酸の溶液(溶媒:0.05Mトリス-HCl緩衝液、pH 7.0)を0.01%〜0.1%(w/w)の濃度に調整して、ウベローデ(Ubbelohde)型粘度管(離合社製)により比粘度(ηsp)を測定した。測定した溶液のヒアルロン酸濃度は、上記1.「ヒアルロン酸濃度の測定」に記載の方法により求め、下記の式に従って極限粘度([η])を算出した。
【0037】
【数1】
[η]=lim(ηsp/c)
c:ヒアルロン酸濃度(%)
【0038】
3.ヒアルロン酸の分子量の算出
上記2.「ヒアルロン酸の極限粘度の測定」によって得られた極限粘度を使用して、下記に示すLaurentらの式(Laurent, T.C., et al., Biochem. Biophys. Acta, 42 (1960), 476-485)より、ヒアルロン酸の重量平均分子量を算出した。
【0039】
【数2】
[η]= 3.6×10-4×MW0.78
[η]:極限粘度、MW:重量平均分子量
【0040】
調製例
1.ヒアルロン酸フラグメントの調製
ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量95万)1 gを0.1%(w/w)となるように0.05 Mトリス−塩酸緩衝液(pH 7.0)1000 mlに溶解し、ウシ睾丸ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)100Uを添加して反応混合物とし、該反応混合物を50℃に加熱した。上記試験例の2.「ヒアルロン酸の極限粘度の測定」中の方法に従って経時的に比粘度を測定し、極限粘度を算出した。
【0041】
上記試験例の3.「ヒアルロン酸の分子量の算出」の方法に従って重量平均分子量を算出した際に、該分子量がそれぞれ1,700、6,900及び40,000 Daを示す極限粘度、すなわちそれぞれ0.12、0.365及び1.4を示した時点で反応混合物を沸騰水中で10分間加熱することにより反応を停止した。それぞれの反応混合物に珪藻土(ラジオライト)を濾過助材として添加し、ブフナーロートで濾過し、濾液に1.3%酢酸ナトリウムを含む95%エタノールを3倍量添加してヒアルロニダーゼによって低分子化されたヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させ、遠心分離によって沈殿を回収した。
【0042】
沈殿を乾燥させて3種類のヒアルロン酸のナトリウム塩(それぞれHA1、HA2及びHA3とする)の粉末を得た(表1参照)。また、エンドトキシンは、トキシカラー(生化学工業(株)製)を用いて測定した。その結果、エンドトキシン濃度は、各種ヒアルロン酸ナトリウム1 mg当り0.1 EU未満であった。
【0043】
【表1】
Figure 0004532612
【0044】
2.滑膜細胞の分離と培養
アメリカリウマチ学会基準に従って診断され、関節置換術または滑膜切除術で処置されたRA患者から滑膜組織を採取した。採取した滑膜を無菌条件下のPBS中で剥離し、GIBCO社製のダルベッコの無血清MEM培地(DMEM)中でコラゲナーゼ(シグマ アルドリッチ社製)で消化後、ナイロンメッシュを通し、細胞を洗浄後、10%牛血清(FCS:Bio-Pro社製)と10 unit/mlのペニシリン(シグマ アルドリッチ社製)を加えたDMEMに細胞を懸濁した。細胞を25 cm2の培養用フラスコに播種し、湿度を上げた5% CO2を含む空気中で培養した。一晩培養した後、フラスコに接着しなかった細胞を取り除き、新しい培地に培地交換し、培養した。細胞がコンフルエントになった時点で、トリプシン処理により細胞をフラスコから剥離させ、2代の継代培養を行った。培地は週2回毎週交換し、3〜7代の細胞を実験に使用した。
【0045】
実施例1
滑膜細胞表面のFas抗原量のヒアルロン酸による変化
上記調製例2.「滑膜細胞の分離と培養」で調製した滑膜細胞(RA患者由来)のサブコンフルエントの培養物に調製例1.「ヒアルロン酸フラグメントの調製」において調製したHA1、HA2、HA3、または出発物質として使用したヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量95万Da)を0.1μg/mlとなるように培地に添加して37℃で6時間培養を継続した。また、ヒアルロン酸を添加せずに同様に処理して対照の滑膜細胞を得た。
【0046】
滑膜細胞膜上のFas抗原の染色及びフローサイトメトリーによる解析を、FACScan(Becton Dickinson社製)を使用して以下のように常法に従って行った。すなわち、上記で調製した各種のヒアルロン酸とともに培養した4種の滑膜細胞及び対照の滑膜細胞(各2×105細胞)を、ハンクス調節塩類溶液(HBSS、日水製薬社製)、0.5%ヒト血清アルブミン(吉富製薬社製)及び0.2% NaN3を含むFACS培地中で、充分量のFITC-結合抗Fasモノクローナル抗体(clone UB2:マウス由来:MBL社製)の存在下、4℃で30分間インキュベートした。FACS培地で細胞を3回洗浄した後、FACScanを用いて細胞が発する蛍光を分析した(分析波長:525nm)。細胞膜上の抗原量の見積は、ビーズを使用したQIFKIT(Dako社製)により、付属の手順書に従って行った。
【0047】
その結果、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸フラグメント(HA1、HA2及びHA3)を添加したRA由来の細胞は、ヒアルロン酸を添加しなかった対照の細胞と比較して2倍以上の量のFas抗原を細胞膜上に発現していることが明らかになった(図1)。
【0048】
実施例2
細胞膜上に発現したFas抗原を介した細胞自滅の分析
上記調製例2.「滑膜細胞の分離と培養」で調製したRA患者由来の滑膜細胞(1×105/25 cm2培養用フラスコ)を1%FCSを含むDMEM培地に培地交換し、HA1、HA2、HA3、またはヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量95万Da)を0.1μg/ml添加して6時間培養を継続した。その後抗Fas抗体(CH-11)を500ng添加して12時間培養を継続した。ヒアルロン酸及び抗Fas抗体のいずれも添加しない対照細胞、抗Fas抗体のみを添加する対照細胞についても同様に培養を行った。
【0049】
培養終了後、各群の細胞を回収し、予め冷蔵しておいたPBSで細胞を洗浄し、細胞をR&Dシステムズ社製のアポトーシス検出キットを使用してラベルした。すなわち、25 mMのCaCl2を含む10×HEPES緩衝生理食塩水に、FITC結合アネキシン-V(細胞内カルシウム、リン脂質に結合性を有する)及びPIをそれぞれ50μg/ml及び50μg/mlとなるように添加して4℃で15分間インキュベート後、常法に従ってFACScanで解析を行った。検出波長は525 nmを使用し、FITC結合アネキシン-VはFITC検出器により検出し(FL1-H)、PIはフィコエリトリン検出器により検出した(FL2-H)。
【0050】
各群の各細胞の上記の検出の結果を、アネキシン-Vの結合量を横軸、PIの結合量を縦軸としてプロットした。結果をプロットの存在する領域及び集中する領域として図2に示す。図2中、ヒアルロン酸及び抗Fas抗体のいずれも添加しない対照1の結果をA、抗Fas抗体のみを添加する対照2の結果をB、HA1、HA2、HA3、またはヒアルロン酸ナトリウムと抗Fas抗体とを添加したものの結果をそれぞれC〜Fに示す。図2A〜Fにおいて、破線で囲んだ領域は各細胞についてのプロットの存在する範囲を示し、実線で囲んだ領域はプロット(細胞)の集中する領域を示す。a>b>c>dの順に細胞の集中度が高いことを示す。
【0051】
結果の評価法としては、アネキシン-Vの結合量及びPIの結合量についての細胞の分布領域の変化を効果的に捉えるために、それぞれの結合量の境界値を設定した。すなわち、アネキシン-V及びPIで処理しなかった細胞の測定値から、アネキシン-Vの結合量34及びPIの結合量22に境界値を設定し、細胞を便宜的に4群に分けた。そのうちPIの結合量が22以下であって、アネキシン結合量が34以上である細胞(図2A〜Fのそれぞれにおいて右下の領域に属する細胞)を細胞自滅の初期段階にある細胞とし、この領域に細胞が集中するほど細胞自滅を起こす細胞数が多いものと評価した。
【0052】
上記測定と評価の結果、HA1、HA2及びHA3を添加したRA由来の滑膜細胞において、対照2と比較して細胞の集中域が右下の領域に移行する傾向、すなわちアネキシン-Vの結合性が高くなる傾向が見られ、特にHA1及びHA2で顕著であった。この結果から、HA1、HA2及びHA3は細胞自滅を促進することが示された。
【0053】
実施例3
注射剤(液剤)製剤例
実施例1において製造したHA1、HA2またはHA3を終濃度1%(w/w)となるように、無菌濾過したPBSに溶解した後、それぞれ2 mlずつアンプルに分注して3種類の注射剤を製造した。
【0054】
【発明の効果】
本発明により、従来は得られなかった慢性関節リウマチ滑膜炎やガン等の治療に有用な、安全なFas抗原発現増強剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 種々の分子量を有するヒアルロン酸での処理によりRA患者由来滑膜細胞上に発現されるFas抗原量を示す図である。
【図2】 種々の分子量を有するヒアルロン酸での処理により引き起こされるRA患者由来滑膜細胞の細胞自滅の傾向を示す図である。

Claims (1)

  1. 重量平均分子量が95万であるヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含むFas抗原発現増強剤。
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