JP2000136138A - 非正常細胞自滅増強剤 - Google Patents

非正常細胞自滅増強剤

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JP2000136138A JP30914998A JP30914998A JP2000136138A JP 2000136138 A JP2000136138 A JP 2000136138A JP 30914998 A JP30914998 A JP 30914998A JP 30914998 A JP30914998 A JP 30914998A JP 2000136138 A JP2000136138 A JP 2000136138A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非正常細胞を細胞自滅へ導く充分に高い能力
を有し、かつ生体に対して安全な薬剤を提供する。 【解決手段】 ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容
される塩を有効成分として含む非正常細胞自滅増強剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒアルロン酸を有
効成分として含有する非正常細胞自滅増強剤に関し、よ
り詳細には、非正常細胞の表面に存在するFas抗原の発
現量を増加させ、Fas抗原を介した細胞自滅を増強す
る、ヒアルロン酸を有効成分として含有する薬剤に関す
る。
【0002】
【従来の技術】細胞死は細胞壊死(ネクローシス)と細
胞自滅(アポトーシス)に区別される。細胞自滅は組織
の形成、細胞の成熟、体内での正常な細胞交代等の他、
低レベルの放射線や細菌・ウイルスの感染等により傷害
された細胞が、生存を続けることによって生体に異常を
引き起こすこととなる際に、前記傷害された細胞が自ら
または白血球による抗原刺激等をきっかけとして起こす
自発的な細胞死である。
【0003】細胞自滅は生体内で正常時にも起こってい
るが、特に正常に細胞自滅を引き起こさなくなった結
果、非正常細胞量が増加して生体に異常を来している疾
患においては、細胞自滅を増強することがそのような疾
患の治療上有効であると考えられる。
【0004】細胞を積極的に細胞自滅へ導く方法として
は、低レベルの放射線の照射や薬物、抗体刺激等多くの
方法が一般的に使用されている。例えば抗体刺激の方法
の一つとして、抗Fas抗体またはFasリガンドによる刺激
により、Fas抗原(抗Fas抗体と同時期に発見された抗AP
O-1抗体(Trauth, B. C., et al., Science, 245 (198
9), 301)に対する抗原(APO-1抗原)と同一物質)発現
細胞を細胞自滅へ誘導できることが知られている(Yone
hara, S., et al., J. Exp. Med., 169 (1989), 1747-1
756、Suda, T., et al., Cell. 75 (1993), 1169-117
8、Itoh, N., etal., Cell, 66 (1991), 233-243等)。
【0005】Fas抗原を介した細胞自滅の機構は、白血
球のT細胞の成熟段階における自己抗原反応性T細胞の除
去への関与等、免疫系細胞の細胞自滅の機構であると考
えられてきたが(Klaz, C., et al., Int. Immunol., 5
(1993), 625-630)、その他のFas抗原発現細胞、例え
ば遺伝子導入により強制的にヒトFas抗原を発現したCHO
細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来の培養細胞)
が、抗ヒトFas抗体(以下、単に抗Fas抗体と記載する)
で細胞自滅を起こすこと等も知られている。
【0006】このような知見から、抗Fas抗体を使用し
て細胞自滅を増強する医薬が提案されており、異常を起
こして細胞自滅を起こさなくなった細胞に対して抗Fas
抗体を投与することによりFas抗原を介した細胞自滅を
引き起こすことに基づいたリウマチ治療薬等の医薬が開
示されている(特開平8-208515号等)。しかしながら、
上記の抗Fas抗体等のような細胞自滅を誘導する物質の
投与のみでは非正常細胞の細胞自滅の誘導が不十分で、
上記の目的が十分に達成できず、実用化には至っていな
い。
【0007】また、上記のような抗Fas抗体により増強
されるFas抗原を介した細胞自滅は、アクチノマイシンD
やシクロヘキシミドに代表される細胞増殖抑制剤を添加
することによりさらに増強され、より多くの細胞が細胞
自滅へ導かれることが見出されている。例えば上記の特
開平8-208515号には、抗Fas抗体及び細胞増殖抑制剤を
含む細胞自滅を増強する医薬が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、異常
増殖能を獲得して細胞数が増加した非正常細胞を細胞自
滅へ導く充分に高い能力を有し、かつ生体に対して安全
な薬剤を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者らは生体に対して安全性を有し且つ有用な
細胞自滅を増強する物質を鋭意探索し、各種化合物を検
討した。その結果、従来から医薬等として使用され安全
性が確認されているヒアルロン酸で非正常細胞の細胞膜
上に発現したCD44を刺激することにより、これらの非正
常細胞の細胞自滅を効率的に増強することが可能である
ことを見出した。
【0010】従って本発明は、ヒアルロン酸またはその
薬理学的に許容される塩を有効成分として含む非正常細
胞自滅増強剤を提供する。
【0011】また、本発明の好ましい態様によれば、ヒ
アルロン酸の重量平均分子量が1,000〜60,000ダルトン
であることを特徴とする上記非正常細胞自滅増強剤;非
正常細胞のFas抗原の発現量を増加させることを特徴と
する上記非正常細胞自滅増強剤;非正常細胞が慢性関節
リウマチ滑膜炎の動物の滑膜細胞であることを特徴とす
る上記非正常細胞自滅増強剤;及び慢性関節リウマチ滑
膜炎の治療に使用されることを特徴とする上記非正常細
胞自滅増強剤が提供される。
【0012】また本発明の別の形態として、ヒアルロン
酸またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として
含むFas抗原発現増強剤が提供される。
【0013】尚、ヒアルロン酸は、関節機能改善剤とし
て関節内へ適用する等、従来から医薬として利用されて
おり、また低分子のヒアルロン酸についても医薬として
使用することが可能なことが知られており(特表平8-50
8973号)、生体に対する安全性は広く認められている。
【0014】ヒアルロン酸は様々な白血球等の膜上に発
現する抗原CD44のリガンドとして働くことが知られてお
り、例えば白血球のT細胞についてはその細胞膜上のCD4
4をヒアルロン酸で刺激することで細胞の活性化が起こ
り、また単球についてはその細胞膜上のCD44を上記と同
様に刺激することでサイトカインやケモカインの放出が
促進されること等が知られているが(Webb, D.S., et a
l., Science, 249(1990), 1295-1297、McKee, C.M., et
al., J. Clin Invest., 98(1996), 2403-2413)、ヒア
ルロン酸が細胞自滅に関与し得ることは知られていなか
った。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】本発明は、ヒアルロン酸またはその薬理学
的に許容されうる塩を有効成分とする非正常細胞自滅増
強剤である。
【0017】本発明における「非正常細胞」の用語は、
健常な状態の組織においては観察されない増殖量を示す
細胞を意味するものであり、好ましくは、細胞自滅の頻
度が下がったことで、細胞数が病的に増加し続ける状態
にある細胞を包括的に指称するために使用する。このよ
うな非正常細胞の例としては、例えば無限増殖能を獲得
している「癌細胞」、及び慢性関節リウマチ滑膜炎(以
下「RA」とも記載する)の動物における「滑膜細胞」等
が挙げられる。
【0018】非正常細胞は細胞膜抗原CD44をより強く発
現していることが好ましい。そのような細胞としては、
例えばRAの動物の滑膜細胞が挙げられる。このような細
胞ではヒアルロン酸によってより強く細胞自滅が誘導さ
れる。
【0019】本発明で使用する用語「細胞自滅」は、細
胞死の一形態であって、生理的条件下、場合によっては
抗原刺激等により細胞自らが積極的に引き起こす細胞死
であり、その過程において細胞が収縮することを特徴と
し、一般にアポトーシスと称される。
【0020】従って、本発明の細胞自滅増強剤は、それ
を投与しない場合と比較して、上記のような細胞自滅を
起こす細胞の数を増加させる薬剤と定義される。
【0021】細胞自滅は、一般的に細胞自滅を判別する
ために使用される方法で細胞壊死と容易に判別される。
例えば細胞のクロマチンの凝縮、アポトーシス小体の観
察等の形態的観察、フローサイトメトリーを用いた方法
等で上記判別は可能であるが、細胞の状態を正確に把握
するためにはフローサイトメトリーを用いて判別するこ
とが好ましい。
【0022】フローサイトメトリーを用いた細胞自滅の
判別は、例えば細胞自滅を起こした状態の細胞の構成物
に特異的に結合する物質により細胞を処理し、フローサ
イトメトリーにより該物質を結合した細胞を測定するこ
とにより行うことができる。さらに必要により、細胞壊
死を起こした細胞の構成物に結合する物質による細胞の
処理も併用し、細胞の状態をより正確に把握することが
できる。
【0023】細胞自滅を起こした状態の細胞の構成物に
特異的に結合する物質としては、例えば、細胞自滅の初
期段階を示す指標となる細胞膜の反転時において、反転
した細胞膜上に存在するホスファチジルセリンに結合す
るアネキシン-V等が挙げられる。また、細胞壊死を起こ
した細胞の構成物に結合する物質としては、細胞膜の崩
壊時に細胞内のDNAに結合するプロピジウムイオダイ
ド(以下「PI」と略記する)等が挙げられる。細胞壊死
においては早い段階で細胞膜の崩壊が起こるが、細胞自
滅を起こす細胞においてはその行程の最終段階まで細胞
膜の崩壊は起こらないため、PIを使用することにより細
胞壊死を起こしている細胞と起こしていない細胞を容易
に区別することができる。
【0024】これらの物質で細胞を処理することにより
それらの物質を細胞の構成物に結合させ、その結合量を
フローサイトメトリーにより測定する。フローサイトメ
トリー自体は一般的な方法により行うことができ、上記
PI結合量はフィコエリトリン検出器により測定でき、ア
ネキシン-V結合量は、例えばフルオレシンイソチオシア
ネート(FITC)を予め結合したアネキシン-Vを使用してFI
TCが発する蛍光により間接的に測定できる。
【0025】細胞自滅を起こした状態の細胞の構成物と
細胞壊死を起こした細胞の構成物のそれぞれに結合する
各物質の結合を測定する場合、これらの物質の結合量の
測定値について二次元解析を行うことにより細胞の状態
をより正確に把握することが可能となる。例えば、これ
らの物質として上記のアネキシン-V及びPIを使用する場
合、増加したPI結合量を示す細胞は、細胞自滅の後期の
段階の細胞及び細胞壊死を起こした細胞の双方を含むも
のとしてそれらを除き、PIの結合量が低い細胞につきア
ネキシン-Vの結合量を解析し、アネキシン-Vの結合量が
高い細胞の量を測定することにより細胞自滅の初期の段
階にある細胞の量が正確に把握される。
【0026】本発明の非正常細胞自滅増強剤の有効成分
であるヒアルロン酸はそれ自体公知の物質であり、β-D
-N-アセチルグルコサミンとβ-D-グルクロン酸がβ1→
3結合してできた直鎖高分子多糖である。自然界に存在
するヒアルロン酸は通常数万〜数百万の幅広い分子量範
囲の重量平均分子量を有する。本発明の非正常細胞自滅
増強剤の有効成分として使用されるヒアルロン酸の分子
量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量で
1,000 Da〜60,000 Da程度、より好ましくは1,700 Da〜4
0,000 Da程度である。このような比較的低分子量のヒア
ルロン酸は、重量平均分子量約95万Da以上の通常のヒア
ルロン酸と比較して、非正常細胞に対してより高い細胞
自滅増強活性を示す。
【0027】上記ヒアルロン酸は、遊離の形態で使用し
てもよいが、通常塩の形態で使用することが好ましい。
ヒアルロン酸の薬理学的に許容される塩としては、例え
ば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、マ
グネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩等
が挙げられるが、アルカリ金属との塩が好ましく、その
中でもナトリウム塩が特に好ましい。
【0028】本発明の非正常細胞自滅増強剤は作用機序
によって限定されるものではないが、ヒアルロン酸が非
正常細胞の細胞自滅を増強する作用機序については、非
正常細胞において発現が増強される細胞膜抗原CD44にヒ
アルロン酸が結合し、この刺激により、細胞膜抗原であ
って細胞自滅を仲介することが知られているFas抗原の
発現が促進されることによるものと考えられる。Fas抗
原は抗Fas抗体またはFasリガンドによって架橋されるこ
とにより細胞自滅シグナルを細胞内に伝達するが、細胞
表面のFas抗原の絶対量を増加させることで、細胞自滅
シグナルの発生が容易になるものと考えられる。従っ
て、ヒアルロン酸はFas抗原発現増強剤の有効成分とし
ても使用することができる。
【0029】本発明の非正常細胞自滅増強剤は、上述の
ように非正常細胞に対し細胞自滅を増強するため、例え
ば癌細胞の細胞自滅を増強すれば抗ガン剤として、RAの
滑膜細胞の細胞自滅を増強すればRA治療剤としてRAの治
療に使用することが可能である。
【0030】特にRAに罹患した動物(ヒトを含む;以下
「RA患者」と記載する)に適用することにより、異常増
殖する滑膜細胞の細胞自滅を顕著に増強することが可能
であり、結果的にRA患者の関節における滑膜の肥厚を抑
制することができる。従って、本発明の非正常細胞自滅
増強剤はRAの予防薬または進展防止薬として使用するこ
とも可能である(本発明にいう「RA治療剤」は、このよ
うな用途に使用されるものも包含する)。また、本発明
の非正常細胞自滅増強剤を抗ヒトFas抗体と併用するこ
とも可能である。
【0031】本発明の非正常細胞自滅増強剤を上述のよ
うな医薬として使用する場合、その剤形は適宜選択し得
るが、注射剤等の液剤の形態とすることが好ましい。ま
た、その投与方法も適用する疾患によって適宜選択さ
れ、例えば抗ガン剤として使用する場合は腫瘍等への注
射による直接投与あるいは点滴による投与が挙げられ、
またRA治療剤として使用する場合は関節腔内への注射に
よる投与が挙げられる。
【0032】上述の液剤は、例えば、適当な水性溶媒あ
るいは医薬品に慣用される溶媒にヒアルロン酸またはそ
のナトリウム塩等の薬理学的に許容される塩を溶解させ
て製造することができる。上記溶媒としては、蒸留水、
緩衝液、生理食塩水、水性有機溶媒を含む水等が挙げら
れるが、本発明においては、前記溶媒としては蒸留水ま
たはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を用いることが好
ましく、PBSが特に好ましい。
【0033】また、有効成分であるヒアルロン酸以外
に、薬理学的に許容される補助剤、例えばpH調節剤、緩
衝剤、張度調節剤、湿潤剤、安定化剤、無機塩類、界面
活性剤、消泡剤、糖類、糖アルコール等;医薬として許
容される生理活性物質、例えば抗炎症剤、鎮痛剤、ビタ
ミン剤、抗菌剤、成長因子、接着因子等を添加すること
ができる。これらの具体的な物質については医薬の分野
においてよく知られている。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に詳
述するが、本発明はこれに限定されるものではない。 試験例
【0035】1.ヒアルロン酸濃度の測定 ヒアルロン酸濃度は、Bitter-Muir法(Bitter, T., Mui
r, H., Anal. Biochem., 4 (1962), 330-334)によりヒ
アルロン酸分子を構成するウロン酸残基量を定量し(対
照としてはグルクロノラクトンを使用)、該定量値にヒ
アルロン酸量へ換算する係数:2.2786(グルクロノラク
トン→グルクロン酸換算係数:1.1023とグルクロン酸→
ヒアルロン酸換算係数:2.0671を乗じた数値)を乗じて
算出した。
【0036】2.ヒアルロン酸の極限粘度の測定 ヒアルロン酸の溶液(溶媒:0.05Mトリス-HCl緩衝液、p
H 7.0)を0.01%〜0.1%(w/w)の濃度に調整して、ウベ
ローデ(Ubbelohde)型粘度管(離合社製)により比粘
度(ηsp)を測定した。測定した溶液のヒアルロン酸濃
度は、上記1.「ヒアルロン酸濃度の測定」に記載の方
法により求め、下記の式に従って極限粘度([η])を算
出した。
【0037】
【数1】 [η]=lim(ηsp/c) c:ヒアルロン酸濃度(%)
【0038】3.ヒアルロン酸の分子量の算出 上記2.「ヒアルロン酸の極限粘度の測定」によって得
られた極限粘度を使用して、下記に示すLaurentらの式
(Laurent, T.C., et al., Biochem. Biophys.Acta, 42
(1960), 476-485)より、ヒアルロン酸の重量平均分子
量を算出した。
【0039】
【数2】[η]= 3.6×10-4×MW0.78 [η]:極限粘度、MW:重量平均分子量
【0040】調製例 1.ヒアルロン酸フラグメントの調製 ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量95万)1 gを
0.1%(w/w)となるように0.05 Mトリス−塩酸緩衝液(p
H 7.0)1000 mlに溶解し、ウシ睾丸ヒアルロニダーゼ
(EC3.2.1.35)100Uを添加して反応混合物とし、該反応
混合物を50℃に加熱した。上記試験例の2.「ヒアルロ
ン酸の極限粘度の測定」中の方法に従って経時的に比粘
度を測定し、極限粘度を算出した。
【0041】上記試験例の3.「ヒアルロン酸の分子量
の算出」の方法に従って重量平均分子量を算出した際
に、該分子量がそれぞれ1,700、6,900及び40,000 Daを
示す極限粘度、すなわちそれぞれ0.12、0.365及び1.4を
示した時点で反応混合物を沸騰水中で10分間加熱するこ
とにより反応を停止した。それぞれの反応混合物に珪藻
土(ラジオライト)を濾過助材として添加し、ブフナー
ロートで濾過し、濾液に1.3%酢酸ナトリウムを含む95%
エタノールを3倍量添加してヒアルロニダーゼによって
低分子化されたヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させ、遠
心分離によって沈殿を回収した。
【0042】沈殿を乾燥させて3種類のヒアルロン酸の
ナトリウム塩(それぞれHA1、HA2及びHA3とする)の粉
末を得た(表1参照)。また、エンドトキシンは、トキ
シカラー(生化学工業(株)製)を用いて測定した。その
結果、エンドトキシン濃度は、各種ヒアルロン酸ナトリ
ウム1 mg当り0.1 EU未満であった。
【0043】
【表1】
【0044】2.滑膜細胞の分離と培養 アメリカリウマチ学会基準に従って診断され、関節置換
術または滑膜切除術で処置されたRA患者から滑膜組織を
採取した。採取した滑膜を無菌条件下のPBS中で剥離
し、GIBCO社製のダルベッコの無血清MEM培地(DMEM)中
でコラゲナーゼ(シグマ アルドリッチ社製)で消化
後、ナイロンメッシュを通し、細胞を洗浄後、10%牛血
清(FCS:Bio-Pro社製)と10 unit/mlのペニシリン(シ
グマ アルドリッチ社製)を加えたDMEMに細胞を懸濁し
た。細胞を25 cm2の培養用フラスコに播種し、湿度を上
げた5% CO2を含む空気中で培養した。一晩培養した後、
フラスコに接着しなかった細胞を取り除き、新しい培地
に培地交換し、培養した。細胞がコンフルエントになっ
た時点で、トリプシン処理により細胞をフラスコから剥
離させ、2代の継代培養を行った。培地は週2回毎週交
換し、3〜7代の細胞を実験に使用した。
【0045】実施例1 滑膜細胞表面のFas抗原量のヒアルロン酸による変化 上記調製例2.「滑膜細胞の分離と培養」で調製した滑
膜細胞(RA患者由来)のサブコンフルエントの培養物に
調製例1.「ヒアルロン酸フラグメントの調製」におい
て調製したHA1、HA2、HA3、または出発物質として使用
したヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量95万Da)
を0.1μg/mlとなるように培地に添加して37℃で6時間培
養を継続した。また、ヒアルロン酸を添加せずに同様に
処理して対照の滑膜細胞を得た。
【0046】滑膜細胞膜上のFas抗原の染色及びフロー
サイトメトリーによる解析を、FACScan(Becton Dickin
son社製)を使用して以下のように常法に従って行っ
た。すなわち、上記で調製した各種のヒアルロン酸とと
もに培養した4種の滑膜細胞及び対照の滑膜細胞(各2
×105細胞)を、ハンクス調節塩類溶液(HBSS、日水製
薬社製)、0.5%ヒト血清アルブミン(吉富製薬社製)及
び0.2% NaN3を含むFACS培地中で、充分量のFITC-結合抗
Fasモノクローナル抗体(clone UB2:マウス由来:MBL
社製)の存在下、4℃で30分間インキュベートした。FAC
S培地で細胞を3回洗浄した後、FACScanを用いて細胞が
発する蛍光を分析した(分析波長:525nm)。細胞膜上
の抗原量の見積は、ビーズを使用したQIFKIT(Dako社
製)により、付属の手順書に従って行った。
【0047】その結果、ヒアルロン酸またはヒアルロン
酸フラグメント(HA1、HA2及びHA3)を添加したRA由来
の細胞は、ヒアルロン酸を添加しなかった対照の細胞と
比較して2倍以上の量のFas抗原を細胞膜上に発現してい
ることが明らかになった(図1)。
【0048】実施例2 細胞膜上に発現したFas抗原を介した細胞自滅の分析 上記調製例2.「滑膜細胞の分離と培養」で調製したRA
患者由来の滑膜細胞(1×105/25 cm2培養用フラスコ)
を1%FCSを含むDMEM培地に培地交換し、HA1、HA2、HA3、
またはヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量95万D
a)を0.1μg/ml添加して6時間培養を継続した。その後
抗Fas抗体(CH-11)を500ng添加して12時間培養を継続
した。ヒアルロン酸及び抗Fas抗体のいずれも添加しな
い対照細胞、抗Fas抗体のみを添加する対照細胞につい
ても同様に培養を行った。
【0049】培養終了後、各群の細胞を回収し、予め冷
蔵しておいたPBSで細胞を洗浄し、細胞をR&Dシステムズ
社製のアポトーシス検出キットを使用してラベルした。
すなわち、25 mMのCaCl2を含む10×HEPES緩衝生理食塩
水に、FITC結合アネキシン-V(細胞内カルシウム、リン
脂質に結合性を有する)及びPIをそれぞれ50μg/ml及び
50μg/mlとなるように添加して4℃で15分間インキュベ
ート後、常法に従ってFACScanで解析を行った。検出波
長は525 nmを使用し、FITC結合アネキシン-VはFITC検出
器により検出し(FL1-H)、PIはフィコエリトリン検出
器により検出した(FL2-H)。
【0050】各群の各細胞の上記の検出の結果を、アネ
キシン-Vの結合量を横軸、PIの結合量を縦軸としてプロ
ットした。結果をプロットの存在する領域及び集中する
領域として図2に示す。図2中、ヒアルロン酸及び抗Fa
s抗体のいずれも添加しない対照1の結果をA、抗Fas抗
体のみを添加する対照2の結果をB、HA1、HA2、HA3、
またはヒアルロン酸ナトリウムと抗Fas抗体とを添加し
たものの結果をそれぞれC〜Fに示す。図2A〜Fにおい
て、破線で囲んだ領域は各細胞についてのプロットの存
在する範囲を示し、実線で囲んだ領域はプロット(細
胞)の集中する領域を示す。a>b>c>dの順に細胞
の集中度が高いことを示す。
【0051】結果の評価法としては、アネキシン-Vの結
合量及びPIの結合量についての細胞の分布領域の変化を
効果的に捉えるために、それぞれの結合量の境界値を設
定した。すなわち、アネキシン-V及びPIで処理しなかっ
た細胞の測定値から、アネキシン-Vの結合量34及びPI
の結合量22に境界値を設定し、細胞を便宜的に4群に
分けた。そのうちPIの結合量が22以下であって、アネ
キシン結合量が34以上である細胞(図2A〜Fのそれ
ぞれにおいて右下の領域に属する細胞)を細胞自滅の初
期段階にある細胞とし、この領域に細胞が集中するほど
細胞自滅を起こす細胞数が多いものと評価した。
【0052】上記測定と評価の結果、HA1、HA2及びHA3
を添加したRA由来の滑膜細胞において、対照2と比較し
て細胞の集中域が右下の領域に移行する傾向、すなわち
アネキシン-Vの結合性が高くなる傾向が見られ、特にHA
1及びHA2で顕著であった。この結果から、HA1、HA2及び
HA3は細胞自滅を促進することが示された。
【0053】実施例3 注射剤(液剤)製剤例 実施例1において製造したHA1、HA2またはHA3を終濃度1
%(w/w)となるように、無菌濾過したPBSに溶解した
後、それぞれ2 mlずつアンプルに分注して3種類の注射
剤を製造した。
【0054】
【発明の効果】本発明により、従来は得られなかった慢
性関節リウマチ滑膜炎やガン等の治療に有用な、安全な
非正常細胞自滅増強剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 種々の分子量を有するヒアルロン酸での処理
によりRA患者由来滑膜細胞上に発現されるFas抗原量を
示す図である。
【図2】 種々の分子量を有するヒアルロン酸での処理
により引き起こされるRA患者由来滑膜細胞の細胞自滅の
傾向を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江藤 澄哉 福岡県北九州市八幡西区医生ヶ丘1−1 産業医科大学第一内科内 Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 EA22 EA25 MA01 MA04 NA14 ZB15 ZB21 ZC41

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容
    される塩を有効成分として含む非正常細胞自滅増強剤。
  2. 【請求項2】 ヒアルロン酸の重量平均分子量が1,000
    〜60,000ダルトンであることを特徴とする請求項1に記
    載の非正常細胞自滅増強剤。
  3. 【請求項3】 非正常細胞のFas抗原の発現量を増加さ
    せることを特徴とする請求項1または2に記載の非正常
    細胞自滅増強剤。
  4. 【請求項4】 非正常細胞が慢性関節リウマチ滑膜炎の
    動物の滑膜細胞であることを特徴とする請求項1〜3の
    いずれかに記載の非正常細胞自滅増強剤。
  5. 【請求項5】 慢性関節リウマチ滑膜炎の治療に使用さ
    れることを特徴とする請求項4に記載の非正常細胞自滅
    増強剤。
  6. 【請求項6】 ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容
    される塩を有効成分として含むFas抗原発現増強剤。
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