JP2003171282A - Fas抗原発現増強剤 - Google Patents

Fas抗原発現増強剤

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JP2003171282A
JP2003171282A JP2001376168A JP2001376168A JP2003171282A JP 2003171282 A JP2003171282 A JP 2003171282A JP 2001376168 A JP2001376168 A JP 2001376168A JP 2001376168 A JP2001376168 A JP 2001376168A JP 2003171282 A JP2003171282 A JP 2003171282A
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cells
glcnac
glca
sugar
enhancer
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Kazuhisa Nakano
和久 中野
Yoshiya Tanaka
良哉 田中
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Seikagaku Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 より効果が高いFas抗原発現増強剤及びア
ポトーシス誘導増強剤を提供する。 【解決手段】 ヒアルロン酸4糖又はその薬学的に許容
される塩を有効成分として含有する、Fas抗原発現増
強剤及びアポトーシス誘導増強剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒアルロン酸(以
下、HAという)4糖又はその薬学的に許容される塩を
有効成分とするFas抗原発現増強剤に関する。また本
発明は、HA4糖又はその薬学的に許容される塩を有効
成分とするアポトーシス誘導増強剤に関する。
【0002】
【従来の技術】アポトーシス(apoptosis)とは、生理的
条件下で細胞自らが積極的に引き起こす細胞の死であ
る。アポトーシスは、組織の形成、細胞の成熟、体内で
の正常な細胞交代等に関与するほか、低レベルの放射線
や細菌・ウイルス感染等の影響を受けた異常な細胞の除
去の場面でも重要な役割を果たしている。
【0003】アポトーシスは生体内において正常時でも
起こっているが、正常にアポトーシスを引き起こさなく
なった結果異常な細胞が増加し、生体に異常を来してい
る疾患においては、アポトーシスの誘導を積極的に増強
することが治療上有効であると考えられる。
【0004】アポトーシスを誘導する方法としては、低
レベルの放射線の照射、薬物刺激、抗体刺激等による方
法が一般的である。例えば、抗Fas抗体やFasリガ
ンド等による刺激によって、Fas抗原(抗Fas抗体
と同時期に発見された抗APO-1抗体(Trauth, B. C., et
al., Science, 245 (1989), 301)に対する抗原(APO-
1抗原)と同一物質)を発現している細胞のアポトーシ
スを誘導できることが知られている(Yonehara, S., et
al., J. Exp. Med., 169 (1989), 1747-1756、Suda,
T., et al., Cell. 75 (1993), 1169-1178、Itoh, N.,
et al., Cell,66 (1991), 233-243等)。したがって、
細胞におけるFas抗原の発現を積極的に増強させるこ
とにより、アポトーシスの誘導を積極的に増強すること
ができる。
【0005】特開2000−136138号公報には、
HAまたはその薬理学的に許容されうる塩を有効成分と
するFas抗原発現増強剤及び非正常細胞自滅増強剤が
開示されている。同公報には、その有効成分であるHA
の重量平均分子量として1,000 Da〜60,000 Da程度が好
ましく、1,700 Da〜40,000 Da程度がより好ましい旨記
載されている(第4頁)。前者のサイズは約5糖〜約3
20糖に相当し、後者のサイズは約9糖〜約210糖に
相当する。さらに同公報には、重量平均分子量1,700 D
a、6,900 Da 及び 40,000 DaのHAのいずれもが、細胞
におけるFas抗原の発現を増強し、細胞自滅(アポト
ーシス)を促進することも示されている(実施例1及び
2)。
【0006】しかしHA4糖についての具体的開示はな
く、従って後述するHA4糖に特異的に見られる極めて
顕著なFas抗原の発現増強についてはなんら開示も示
唆もされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、より効果が
高いFas抗原発現増強剤及びアポトーシス誘導増強剤
を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意検討を行った結果、特定のサイズの
HAオリゴ糖が、極めて顕著なFas抗原の発現増強作
用を有することを見出し、これにより上記課題を解決し
うるFas抗原発現増強剤及びアポトーシス誘導増強剤
を提供できることを見出した。本発明はこれらの知見に
基づき完成されたものである。
【0009】すなわち本発明は、HA4糖又はその薬学
的に許容される塩を有効成分とする、Fas抗原発現増
強剤(以下、本発明発現増強剤という)を提供する。ま
た本発明は、HA4糖又はその薬学的に許容される塩を
有効成分とする、アポトーシス誘導増強剤(以下、本発
明誘導増強剤という)を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】<1>本発明発現増強剤 (1)HA4糖又はその薬学的に許容される塩 本明細書において「ヒアルロン酸4糖(HA4糖)」と
は、グルクロン酸(GlcA)とN−アセチルグルコサミン(G
lcNAc)との2糖繰り返し単位からなるHAの任意の4糖
部分であり、HAの構成単糖であるグルクロン酸とN−
アセチルグルコサミンとが交互にグリコシド結合してい
る4糖を意味する。すなわち、後述の式(1)で示される
構造で代表される非還元末端がグルクロン酸である4糖
の他、非還元末端がN−アセチルグルコサミンである4
糖もHA4糖に包含される。
【0011】非還元末端に位置する糖は、飽和糖(単糖
中の炭素・炭素間の結合に二重結合を含まないもの)で
も不飽和糖(単糖中の炭素・炭素間の結合に二重結合を
含むもの)でもよい。
【0012】なかでも非還元末端に位置する糖が飽和糖
であるものが好ましく、具体的には下記式(1)で示され
るHA4糖又はその薬学的に許容される塩が好ましい。
【0013】
【化3】GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc (1)
【0014】式中、GlcAはグルクロン酸残基を、GlcNAc
はN-アセチルグルコサミン残基を、-はグリコシド結合
を示す。GlcA-GlcNAcにおけるグルコシド結合はβ1→3
結合であることが好ましく、GlcNAc-GlcAにおけるグル
コシド結合はβ1→4結合であることが好ましい。
【0015】本発明発現増強剤において用いるHA4糖
またはその薬学的に許容される塩の由来は特に限定され
ない。例えば、鶏冠、臍帯、HAを産生する微生物等か
ら分離、精製されたHAを分解する方法(例えば酵素分
解法、化学分解法、加熱処理法、超音波処理法等)や、
合成(例えば化学合成法や酵素合成法)によって製造で
きる。
【0016】酵素分解法としては、ヒアルロニダーゼ
(睾丸由来)、ヒアルロニダーゼ(Streptomyces由来)、ヒ
アルロニダーゼSD、コンドロイチナーゼACI、コン
ドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACIII、
コンドロイチナーゼABCなどの、HAを分解する酵素
をHAに作用させる方法が挙げられる(新生化学実験講
座「糖質II―プロテオグリカンとグリコサミノグリカン
―」p244-248、1991年発行、東京化学同人 参照)。上記
式(1)のHA4糖を得るためには、HAを分解する酵素
として加水分解酵素を用いることが好ましい。
【0017】化学分解法としては、アルカリ分解法やジ
メチルスルホキシド(DMSO)法等が挙げられる。ア
ルカリ分解法は、例えばHAの溶液に1N程度の水酸化
ナトリウム等の塩基を加え、数時間加温して低分子化さ
せた後、塩酸等の酸を加えて中和することにより行うこ
とができる。DMSO法としてはNagasawaらの方法(Ca
rbohyd. Res., 141, p99-110, 1985)が挙げられる。超
音波処理法としては Biochem., 33, p6503-6507 (1994)
等に記載された方法が挙げられる。
【0018】合成による製造方法としては Glycoconjug
ate J., p453-439 (1993)、国際公開WO93/20827等に記
載された方法が挙げられる。
【0019】以上のような方法によってHA4糖を含む
画分が得られるが、この画分は通常の糖鎖の分離、精製
の手法によってさらに精製することができる。例えば、
吸着クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフ
ィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過法、ゲル浸
透クロマトグラフィー、濾紙電気泳動法、濾紙クロマト
グラフィー、有機溶媒による分画、あるいはこれらの組
み合わせ等の操作によって行うことができるが、これら
に限定されるものではない。
【0020】このような方法によって画分中のHA4糖
の含有率を高めることができ、また医薬として混入が許
されない物質を排除することもできる。このようにして
得られるHA4糖は、高純度に精製され、医薬として混
入が許されない物質を実質的に含まないものが好まし
い。
【0021】HA4糖の薬学的に許容される塩として
は、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム
塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウ
ム塩等の無機塩基との塩、またはジエタノールアミン
塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基
との塩のうち、薬学的に許容される塩を用いることがで
きる。なかでもナトリウム塩であることが好ましい。
【0022】上記のようなHA4糖またはその薬学的に
許容される塩を用いることにより、極めて優れた薬理作
用を有するFas抗原発現増強剤とすることができる。
【0023】なお、本発明発現増強剤に使用されるHA
4糖またはその薬学的に許容される塩中のエンドトキシ
ン濃度は、本発明発現増強剤とした場合において0.3
EU/mL以下であることが好ましい。本発明発現増強
剤中のエンドトキシン濃度は、当業者に周知慣用のエン
ドトキシンの測定法を用いて測定することができるが、
カブトガニ・アメボサイト・ライセート成分を用いるリ
ムルス試験法が好ましい。なおEU(エンドトキシン単
位)は、日本工業規格生化学試薬通則(JISK800
8)に従って測定・算出できる。また、鉄含量は20p
pm以下であることが好ましい。
【0024】(2)本発明発現増強剤の剤型等 本発明発現増強剤の投与方法は、本発明発現増強剤によ
るFas抗原発現増強効果が発揮される限りにおいて特
に限定されないが、例えば注射(静脈内、筋肉内、皮
下、皮内、腹腔内等)、経鼻、経口、経皮、吸入等の投
与経路または投与方法が挙げられる。その投与方法は適
用する疾患や部位等によって適宜選択され、例えば抗癌
剤として使用する場合は腫瘍等への注射による直接投与
や、点滴による投与が例示される。また慢性関節リウマ
チ滑膜炎(以下「RA」という)治療剤として使用する
場合には、関節腔内への注射による投与が例示される。
【0025】このような投与方法及び経路に応じてHA
4糖又はその薬学的に許容される塩を適宜製剤化して、
本発明発現増強剤とすることができる。剤形としては、
注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤
等)、錠剤、カプセル剤、液剤、顆粒剤、散剤、リポ化
剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、貼付
剤、ゲル剤、坐剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤等
が挙げられるが、注射剤等の液剤の形態とすることが好
ましい。
【0026】液剤は、例えば適当な水性溶媒あるいは医
薬品に慣用される溶媒にHA又はその薬学的に許容され
る塩を溶解させることにより製造することができる。こ
のような溶媒としては、蒸留水、緩衝液、生理食塩水、
水性有機溶媒を含む水等が例示される。
【0027】本発明発現増強剤を注射剤として提供する
場合、その形態は、溶液、凍結物、または凍結乾燥物の
いずれであってもよい。これをアンプル、バイアル、注
射用シリンジ等の適当な容器に充填・密封し、そのまま
流通させあるいは保存して、注射剤として投与すること
ができる。
【0028】本発明発現増強剤の製剤化には公知の方法
を用いることができる。また製剤化にあたり、HA4糖
又はその薬学的に許容される塩に悪影響を与えず、かつ
本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、他の医薬
活性成分(例えば抗Fas抗体、Fasリガンド、抗炎
症剤、鎮痛剤、ビタミン剤、抗菌剤、成長因子、接着因
子など)や、慣用の安定化剤、乳化剤、浸透圧調整剤、
pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤、着色
剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等、通常医薬に用
いられる成分を使用できる。抗Fas抗体は、モノクロ
ーナル抗体でもポリクローナル抗体でも良いが、モノク
ローナル抗体であることが好ましい。
【0029】本発明発現増強剤はHA4糖又はその薬学
的に許容される塩を有効成分とすることから、少なくと
もHA4糖又はその薬学的に許容される塩が含有されて
いればよく、他の分子サイズのHAオリゴ糖を含んでい
てもさしつかえない。しかし後述の実施例からも明らか
な通り、HA4糖が特異的に極めて顕著なFas抗原発
現増強作用を示すことから、本発明発現増強剤中のHA
4糖の含有率を上げればそれだけ高い効果を得ることが
でき、また他の分子サイズのHAオリゴ糖と同一の効果
を維持しつつ投与量を減少させることができる。従っ
て、本発明発現増強剤中のHAオリゴ糖は、実質的にH
A4糖のみからなるものが特に好ましい。
【0030】(3)本発明発現増強剤の投与対象等 本発明発現増強剤は、細胞におけるFas抗原の発現を
増強して、アポトーシス誘導の増強に資せんとするもの
であるから、アポトーシス誘導の増強が望まれる細胞や
これを含む組織や臓器に対して適用することができる。
【0031】アポトーシス誘導の増強が望まれる細胞と
しては、健常な状態の組織においては観察されない増殖
能を示す細胞が好ましく、アポトーシスの頻度が下がっ
たことで、細胞数が病的に増加し続ける状態にある細胞
がより好ましい。このような細胞の具体例としては、例
えば無限増殖能を獲得している「癌細胞」や、RAの動
物における「滑膜細胞」等が挙げられる。
【0032】また本発明発現増強剤が適用される細胞
は、細胞膜抗原CD44をより強く発現していることが好ま
しい。そのような細胞としては、例えばRAの動物の滑
膜細胞が挙げられる。このような細胞ではHA4糖によ
ってアポトーシスがさらに強く誘導される。
【0033】本発明発現増強剤は、上記のような異常な
細胞におけるFas抗原の発現を増強し、アポトーシス
誘導の増強に資するべく、例えば癌細胞に対しては「抗
癌剤」として、RAの滑膜細胞に対しては「RA治療
剤」としてそれぞれ使用することができる。
【0034】特にRAに罹患した動物に適用することに
より、Fas抗原の発現増強を介して、異常増殖する滑
膜細胞のアポトーシスを顕著に増強することが可能であ
り、その結果、関節における滑膜の肥厚を抑制すること
もできる。
【0035】本発明発現増強剤が投与される動物は、脊
椎動物、特に哺乳動物が好ましく、とりわけヒトが好ま
しい。本発明発現増強剤はこれら疾患の予防、進行抑制
(悪化防止)、症状の改善または治療等を目的として投
与することができる。
【0036】本発明発現増強剤におけるHA4糖又はそ
の薬学的に許容される塩の配合量、1回あたりの投与
量、投与間隔等は、本発明発現増強剤の投与方法、投与
形態、使用目的等、患者の具体的症状、年齢、性別、体
重等に応じて個別に決定されるべき事項であり、特に限
定されないが、HA4糖又はその薬学的に許容される塩
の臨床量として成人1人1回当り1〜100mgが例示さ
れる。
【0037】また本発明発現増強剤の投与間隔は、1日
1回程度でもよく、1日2〜3回に分けて投与すること
もできる。
【0038】また本発明発現増強剤は、Fas抗原の発
現増強作用に関する実験用の試験試薬としても使用する
ことができる。
【0039】<2>本発明誘導増強剤 本発明誘導増強剤は、HA4糖又はその薬学的に許容さ
れる塩がFas抗原の発現増強作用に止まらずアポトー
シス誘導の増強作用をも発揮することから、これをアポ
トーシス誘導の増強目的に応用したものである。
【0040】本発明誘導増強剤の有効成分である「HA
4糖又はその薬学的に許容される塩」、本発明誘導増強
剤の剤型等及び本発明誘導増強剤の投与対象等について
は、前記「<1>本発明発現増強剤」における説明と同
様である。
【0041】アポトーシスの誘導が増強されたか否か
は、アポトーシスの一般的な検出方法によって容易に検
出することができる。アポトーシスの一般的な検出方法
としては、例えば細胞のクロマチン凝縮やアポトーシス
小体の有無を観察する方法やフローサイトメトリーを用
いた方法等を挙げることができるが、細胞の状態を正確
に把握する観点からは、フローサイトメトリーを用いる
ことが好ましい。
【0042】フローサイトメトリーを用いたアポトーシ
スの検出は、例えばアポトーシスを起こした細胞の構成
物に特異的に結合する物質で細胞を処理し、フローサイ
トメトリーにより該物質を結合した細胞を測定すること
により行うことができる。必要によって、細胞壊死(ネ
クローシス)を起こした細胞の構成物に結合する物質に
よる細胞の処理も併用し、細胞の状態をより正確に把握
することができる。
【0043】アポトーシスを起こした状態の細胞の構成
物に特異的に結合する物質としては、例えば、アポトー
シスの初期段階を示す指標となる細胞膜の反転時におい
て、反転した細胞膜上に存在するホスファチジルセリン
に結合するアネキシン-V等が挙げられる。また、細胞壊
死を起こした細胞の構成物に結合する物質としては、細
胞膜の崩壊時に細胞内のDNAに結合するプロピジウム
イオダイド(以下「PI」という)等が挙げられる。細
胞壊死においては早い段階で細胞膜の崩壊が起こるが、
アポトーシスを起こす細胞においてはそのプロセスの最
終段階まで細胞膜の崩壊は起こらないため、PIを使用
することにより細胞壊死を起こしている細胞と起こして
いない細胞を容易に区別することができる。
【0044】これらの物質で細胞を処理することによっ
て、それらの物質を細胞の構成物に結合させ、その結合
量をフローサイトメトリーにより測定する。フローサイ
トメトリー自体は一般的な方法により行うことができ、
上記PI結合量はフィコエリトリン検出器により測定で
き、アネキシン-V結合量は、例えばフルオレセインイソ
チオシアネート(FITC)を予め結合したアネキシン-Vを使
用してFITCが発する蛍光により間接的に測定できる。
【0045】アポトーシスを起こした状態の細胞の構成
物と細胞壊死を起こした細胞の構成物のそれぞれに結合
する各物質の結合を測定する場合、これらの物質の結合
量の測定値について二次元解析を行うことにより細胞の
状態をより正確に把握することが可能となる。例えば、
これらの物質として上記のアネキシン-V及びPIを使用
する場合、増加したPI結合量を示す細胞は、アポトー
シスの後期の段階の細胞及び細胞壊死を起こした細胞の
双方を含むものとして除外し、PIの結合量が低い細胞
につきアネキシン-Vの結合量を解析して、アネキシン-V
の結合量が高い細胞の量を測定することによりアポトー
シスの初期の段階にある細胞の量が正確に把握される。
【0046】なお本発明誘導増強剤は、アポトーシスの
誘導増強作用に関する実験用の試験試薬としても使用す
ることができる。また本発明は、上記の本発明発現増強
剤及び本発明誘導増強剤だけでなく、invitroまたはin
vivoにおいて細胞または生体組織等の適用対象にHA4
糖を作用させ、該適用対象においてFas抗原の発現を
増強し、あるいはアポトーシスの誘導を増強する方法も
包含する。
【0047】
【実施例】以下に、本発明の実施例を具体的に説明す
る。しかしながら、これらにより本発明の技術的範囲が
限定されるものではない。 <材料等>まず、本実施例において用いた被験物質等を
説明する。 (1)被験物質(カッコ内は以下で用いる略号を示す。ま
た下記式中、GlcAはグルクロン酸残基を、GlcNAcはN-ア
セチルグルコサミン残基を、-はグリコシド結合を表
す。) ・HA飽和2糖(HA2糖) GlcA-GlcNAc ・HA飽和4糖(HA4糖) GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc ・HA飽和6糖(HA6糖) GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc ・HA飽和8糖(HA8糖) GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc ・HA飽和10糖(HA10糖) GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-Gl
cA-GlcNAc ・HA飽和12糖(HA12糖) GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc-Gl
cA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc ・HA(重量平均分子量 6.9 kDa;HA6.9kDa) HA飽和オリゴ糖は、Nagasawaらの方法(Carbohyd. Re
s., 141, p99-110, 1985)に準じて、HClを含有するDM
SOでHAを処理して得られた分解産物を、陰イオン交
換クロマトグラフィーでサイズごとに分画することによ
って得た。
【0048】HA6.9kDaは、特開2000−13613
8号公報に記載された方法で調製し、同公報に記載され
た方法で重量平均分子量を算出した。被験物質は、以下
の薬効薬理試験に応じて所定の濃度となるようにリン酸
緩衝生理食塩液(PBS)に溶解して用いた。PBSに
溶解した後のエンドトキシン濃度はいずれも0.3EU
/mL以下であり、また鉄含量はいずれも20ppm以
下であった。
【0049】(2)滑膜細胞の分離と培養 アメリカリウマチ学会基準に従って診断され、関節置換
術または滑膜切除術で処置されたRA患者から滑膜組織を
採取した。採取した滑膜を無菌条件下のPBS中で剥離
し、GIBCO社製のダルベッコの無血清MEM培地(DMEM)中
でコラゲナーゼ(シグマ アルドリッチ社製)で消化
後、ナイロンメッシュを通し、細胞を洗浄後、10%ウシ
血清(FCS:Bio-Pro社製)と10 unit/mlのペニシリン
(シグマ アルドリッチ社製)を加えたDMEMに細胞を懸
濁した。細胞を25 cm2の培養用フラスコに播種し、湿度
を上げた5% CO2を含む空気中で培養した。一晩培養した
後、フラスコに接着しなかった細胞を取り除き、新しい
培地に培地交換し、培養した。細胞がコンフルエントに
なった時点で、トリプシン処理により細胞をフラスコか
ら剥離させ、2代の継代培養を行った。培地は週2回毎
週交換し、3〜7代の細胞を実験に使用した。
【0050】<実施例1> Fas抗原の発現に対する
作用 HA2糖、HA4糖、HA6糖、HA8糖、HA10糖、HA
12糖又はHA6.9kDaを、前記で調製した滑膜細胞のサブ
コンフルエントの培養物にそれぞれ2μg/mlとなるよう
に添加して37℃で6時間培養を継続した。また、PBS
のみを添加したものを対照(control)とした。
【0051】滑膜細胞膜上のFas抗原の染色及びフロ
ーサイトメトリーによる解析を、FACScan(Becton Dick
inson社製)を使用して以下のように常法に従って行っ
た。すなわち、上記で調製した各種のHAとともに培養
した4種の滑膜細胞及び対照の滑膜細胞(各2×105
胞)を、ハンクス調節塩類溶液(HBSS、日水製薬社
製)、0.5%ヒト血清アルブミン及び0.2% NaN3を含むFAC
S培地中で、充分量のFITC-結合抗Fasモノクローナル
抗体(clone UB2:マウス由来:MBL社製)の存在下、4
℃で30分間インキュベートした。FACS培地で細胞を3回
洗浄した後、FACScanを用いて細胞が発する蛍光を分析
した(分析波長:525nm)。細胞膜上の抗原量の見積
は、ビーズを使用したQIFKIT(Dako社製)により、付属
の手順書に従って行った。Fas抗原の発現量を、1細
胞あたりのFas抗原の分子数として算出した結果を図
1に示す。
【0052】図1の結果から明らかな通り、HA4糖
は、他のサイズのHAオリゴ糖に比して顕著にFas抗
原の発現を増強した。以上の結果から、HA4糖は、よ
り強力にFas抗原の発現を誘導し、その結果、より強
力にアポトーシスを誘導することが示唆された。
【0053】なお本発明の各剤は、そもそもHA自体が
関節機能改善剤として関節内へ適用されるなど従来から
医薬として利用されており、また低分子HAについても
医薬として使用することが可能なことが知られているこ
とから(特表平8-508973号公報等参照)、その安全性が
推定される。
【0054】<実施例2> 製剤例 実施例1において製造したHA4糖を終濃度0.1%(w
/w)となるように、無菌濾過したPBSに溶解した後、そ
れぞれ2 mlずつアンプルに分注して注射剤を製造した。
【0055】
【発明の効果】HA4糖又はその薬学的に許容される塩
を有効成分とする本発明発現増強剤及び誘導増強剤は、
前記実施例の結果からも明らかな通り、他のサイズのH
Aオリゴ糖には見られない顕著な効果を発揮することか
ら極めて有用である。また本発明発現増強剤及び誘導増
強剤は、他のサイズのHAオリゴ糖と同一の効果を維持
しつつ投与量を減少させることもできることから、より
安価かつ安全性の高い剤としうる点においても、極めて
有利である。
【0056】
【図面の簡単な説明】
【図1】 HA4糖による、滑膜細胞の細胞表面におけ
るFas抗原の発現増強を示す図である。

Claims (4)

    【整理番号】 J200103800 【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸4糖又はその薬学的に許容
    される塩を有効成分として含有する、Fas抗原発現増
    強剤。
  2. 【請求項2】 ヒアルロン酸4糖が、下記式(1)で示さ
    れることを特徴とする、請求項1に記載のFas抗原発
    現増強剤。 【化1】GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc (1) (式中、GlcAはグルクロン酸残基を、GlcNAcはN-アセチ
    ルグルコサミン残基を、-はグリコシド結合を示す。)
  3. 【請求項3】 ヒアルロン酸4糖又はその薬学的に許容
    される塩を有効成分として含有する、アポトーシス誘導
    増強剤。
  4. 【請求項4】 ヒアルロン酸4糖が、下記式(1)で示さ
    れることを特徴とする、請求項3に記載のアポトーシス
    誘導増強剤。 【化2】GlcA-GlcNAc-GlcA-GlcNAc (1) (式中、GlcAはグルクロン酸残基を、GlcNAcはN-アセチ
    ルグルコサミン残基を、-はグリコシド結合を示す。)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000136138A (ja) * 1998-10-29 2000-05-16 Seikagaku Kogyo Co Ltd 非正常細胞自滅増強剤
US8153614B2 (en) 2006-12-05 2012-04-10 Glycoscience Laboratories, Inc. Treatment of osteoarthritis

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