JP2004238294A - Cd44切断誘導剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、CD44切断誘導剤及び細胞の移動促進剤。ここでいう「低分子量HA」は、HA2糖以上で、かつ重量平均分子量30kD以下のHAであるものが好ましく、2糖以上で、かつ重量平均分子量10kD以下のHAであるものがより好ましく、HA4糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAであるものが特に好ましく、HA6糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAであるものが極めて好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低分子量ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするCD44切断誘導剤に関する。また本発明は、低分子量ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする細胞の移動促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
まず、本明細書において用いる略号を説明する。
【0003】
BSA:ウシ血清アルブミン
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
Fabフラグメント:抗原結合性フラグメント
FCS:ウシ胎仔血清
FITC:フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)
FL−HA:フルオレセインが結合したHA
GlcA:グルクロン酸
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
HA:ヒアルロン酸
HAfr:HAフラグメント
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
HRP:ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ
mAb:モノクローナル抗体
pAb:ポリクローナル抗体
PBS:リン酸緩衝生理食塩液
PMA:ホルボールミリステートアセテート(phorbol myristate acetate)
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
CD44は、HAをはじめとする種々の細胞外マトリクスに対する細胞表面受容体として広く存在している細胞接着タンパク質であり(非特許文献1)、リンパ球のローリング、腫瘍細胞の移動、細胞の浸潤などの種々の生物活性を有することが知られている(非特許文献2)。
【0004】
【非特許文献1】Cell, 61, p1303−1313, (1990)
【非特許文献2】Adv. Cancer Res., 71, p241−319, (1997)
そして細胞表面のCD44は、MT1−MMPのような膜結合メタロプロテイナーゼによって細胞外ドメイン部分で切断されることが知られており(非特許文献3)、このCD44の切断は、細胞の移動等の生物活性の発現に重要な役割を果たしていることが示唆されている(非特許文献4及び5)。
【0005】
【非特許文献3】J. Cell Biol., 153, p893−904, (2001)
【非特許文献4】Oncogene, 18, p1435−1446, (1999)
【非特許文献5】J. Biol. Chem., 275, p29628−29635, (2000)
一方、低分子量HAも、ケモカイン遺伝子の発現(非特許文献6、7及び8)、NF−κBのような転写因子の活性化(非特許文献9)、細胞増殖(非特許文献10及び11)、血管形成の誘導(非特許文献12、13、14及び15)等の種々の生物活性を有することが明らかにされてきている。
【0006】
【非特許文献6】J. Clin. Invest., 98, p2403−2413, (1996)
【非特許文献7】J. Biol. Chem., 273, p35088−35094, (1998)
【非特許文献8】J. Immunol., 160, p3023−3030, (1998)
【非特許文献9】J. Exp. Med., 183, p2373−2378, (1996)
【非特許文献10】Cancer Res., 57, p773−777, (1997)
【非特許文献11】J. Biol. Chem., 277, p41046−41059, (2002)
【非特許文献12】Science, 228, p1324−1326, (1985)
【非特許文献13】J. Cell Sci., 105, p213−218, (1993)
【非特許文献14】J. Invest. Dermatol., 103, p576−579, (1994)
【非特許文献15】Lab. Invest., 75, p249−262, (1996)
しかし、低分子量HAがCD44の切断を誘導すること、及び細胞の移動を促進することについては開示も示唆もない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするCD44切断誘導剤、及び細胞の移動促進剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、低分子量HAが、CD44の切断を誘導することを見出すとともに、細胞の移動を促進することを見出し、これにより上記課題を解決しうるCD44切断誘導剤及び細胞の移動促進剤を提供できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、CD44切断誘導剤(以下、本発明誘導剤という)を提供する。ここでいう「低分子量HA」は、HA2糖以上で、かつ重量平均分子量30kD以下のHAであるものが好ましく、2糖以上で、かつ重量平均分子量10kD以下のHAであるものがより好ましく、HA4糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAであるものが特に好ましく、HA6糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAであるものが極めて好ましい。
【0010】
また本発明は、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、細胞の移動促進剤(以下、本発明促進剤という)を提供する。ここでいう「低分子量HA」は、HA2糖以上で、かつ重量平均分子量30kD以下のHAであるものが好ましく、2糖以上で、かつ重量平均分子量10kD以下のHAであるものがより好ましく、HA4糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAであるものが特に好ましく、HA6糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAであるものが極めて好ましい。
【0011】
また、本発明誘導剤と本発明促進剤とを併せて、単に「本発明薬剤」という。
【0012】
【発明の実施の形態】
<1>本発明薬剤の有効成分
(1)低分子量HA又はその薬学的に許容される塩
本明細書において「低分子量HA」とは、HAの構成二糖組成と同様の組成からなる低分子量の糖鎖である。具体的は、GlcAとGlcNAcとが交互にグリコシド結合している低分子量の糖鎖を意味する。
【0013】
すなわち、このような糖鎖であって、糖鎖の非還元末端がGlcAであるものの他、非還元末端がGlcNAcであるものも、ここでいう「低分子量HA」に包含される。なかでも、非還元末端に位置する糖がGlcAであるものが好ましい。また、その還元末端に位置する糖はGlcNAcであるものが好ましい。
【0014】
非還元末端に位置する糖は、飽和糖(単糖中の炭素・炭素間の結合に二重結合を含まないもの)でも不飽和糖(単糖中の炭素・炭素間の結合に二重結合を含むもの)でもよい。なかでも非還元末端に位置する糖が飽和糖であるものが好ましい。
【0015】
GlcAとGlcNAcとの間におけるグリコシド結合はβ1→3結合であることが好ましく、GlcNAcとGlcAとの間におけるグリコシド結合はβ1→4結合であることが好ましい。
【0016】
また、ここで「低分子量」とは、当技術分野における当業者において、低分子量であると認識される程度の分子量を意味する。少なくとも、重量平均分子量30kD以下のものについては当技術分野において「低分子量」であると認識されることに疑いはない。一方で、重量平均分子量が100kDaを超えるものについては、当技術分野においては「低分子量」であると認識されるものではない。
【0017】
「低分子量HA」としては、HA2糖以上で、かつ重量平均分子量30kD以下のHAが好ましく、2糖以上で、かつ重量平均分子量10kD以下のHAがより好ましく、HA4糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAがさらに好ましく、HA6糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAが特に好ましい。
【0018】
なかでも本発明薬剤は、HA8糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAが好ましく、HA10糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAがより好ましく、HA12糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のHAがさらに好ましく、重量平均分子量5kDa以上で、かつ10kDa以下のHAが特に好ましく、重量平均分子量7kDa程度のHAが極めて好ましい。
【0019】
本発明薬剤において用いることができる「低分子量HA又はその薬学的に許容される塩」の由来は特に限定されない。例えば、鶏冠、臍帯、HAを産生する微生物等から分離、精製されたHAを分解する方法(例えば酵素分解法、化学分解法、加熱処理法、超音波処理法等)や、合成(例えば化学合成法や酵素合成法)によって製造できる。
【0020】
酵素分解法としては、ヒアルロニダーゼ(睾丸由来)、ヒアルロニダーゼ(Streptomyces由来)、ヒアルロニダーゼSD、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACIII、コンドロイチナーゼABCなどの、HAを分解する酵素をHAに作用させる方法が挙げられる(新生化学実験講座「糖質II―プロテオグリカンとグリコサミノグリカン―」p244−248、1991年発行、東京化学同人 参照)。低分子量HAを得るためには、HAを分解する酵素として加水分解酵素を用いることが好ましい。
【0021】
化学分解法としては、アルカリ分解法やDMSO法等が挙げられる。アルカリ分解法は、例えばHAの溶液に1N程度の水酸化ナトリウム等の塩基を加え、数時間加温して低分子化させた後、塩酸等の酸を加えて中和することにより行うことができる。DMSO法としてはNagasawaらの方法(Carbohyd. Res., 141, p99−110, 1985)が挙げられる。超音波処理法としては Biochem., 33, p6503−6507 (1994)等に記載された方法が挙げられる。
【0022】
合成による製造方法としては Glycoconjugate J., p453−439 (1993)、国際公開WO93/20827等に記載された方法が挙げられる。
【0023】
以上のような方法によって低分子量HAを含む画分が得られるが、この画分は通常の糖鎖の分離、精製の手法によってさらに精製することができる。例えば、吸着クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過法、ゲル浸透クロマトグラフィー、濾紙電気泳動法、濾紙クロマトグラフィー、有機溶媒による分画、あるいはこれらの組み合わせ等の操作によって行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
このような方法によって画分中の低分子量HAの含有率を高めることができ、また医薬として混入が許されない物質を排除することもできる。
【0025】
このようにして得られる低分子量HAは、高純度に精製され、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものが好ましい。
【0026】
低分子量HAの薬学的に許容される塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、またはジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩のうち、薬学的に許容される塩を用いることができる。なかでもナトリウム塩であることが好ましい。
【0027】
上記のような低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を用いることにより、極めて優れた薬理作用を有するCD44切断誘導剤、及び細胞の移動促進剤とすることができる。
【0028】
なお、本発明薬剤に使用される低分子量HA又はその薬学的に許容される塩中のエンドトキシン濃度は、本発明薬剤とした場合において0.3EU/mL以下であることが好ましい。本発明薬剤中のエンドトキシン濃度は、当業者に周知慣用のエンドトキシンの測定法を用いて測定することができるが、カブトガニ・アメボサイト・ライセート成分を用いるリムルス試験法が好ましい。なおEU(エンドトキシン単位)は、日本工業規格生化学試薬通則(JIS K8008)に従って測定・算出できる。また、鉄含量は20ppm以下であることが好ましい。
(2)本発明薬剤の剤型等
本発明薬剤の投与方法は、本発明誘導剤によるCD44の切断誘導作用、又は本発明促進剤による細胞の移動促進作用が発揮される限りにおいて特に限定されないが、例えば注射(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内等)、経鼻、経口、経皮、吸入等の投与経路が挙げられる。その投与方法は、注射による特定部位への直接投与や、点滴による投与など、適用される疾患や部位等によって適宜選択される。
【0029】
このような投与経路や投与方法に応じて、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を適宜製剤化して、本発明薬剤とすることができる。剤形としては、注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)、錠剤、カプセル剤、液剤、顆粒剤、散剤、リポ化剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、貼付剤、ゲル剤、坐剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤等が挙げられるが、注射剤等の液剤の形態とすることが好ましい。
【0030】
液剤は、例えば適当な水性溶媒あるいは医薬品に慣用される溶媒に、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を溶解させることにより製造することができる。このような溶媒としては、蒸留水、緩衝液、生理食塩水、水性有機溶媒を含む水等が例示される。
【0031】
本発明薬剤を注射剤として提供する場合、その形態は、溶液、凍結物、または凍結乾燥物のいずれであってもよい。これをアンプル、バイアル、注射用シリンジ等の適当な容器に充填・密封し、そのまま流通させあるいは保存して、注射剤として投与することができる。
【0032】
本発明薬剤の製剤化には公知の方法を用いることができる。また製剤化にあたり、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩に悪影響を与えず、かつ本発明の効果に影響を与えない限りにおいて、他の医薬活性成分(例えば抗炎症剤、鎮痛剤、ビタミン剤、抗菌剤、成長因子、接着因子など)や、慣用の安定化剤、乳化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤、着色剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤等、通常医薬に用いられる成分を使用できる。
【0033】
本発明薬剤は、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を有効成分とすることから、少なくとも低分子量HA又はその薬学的に許容される塩が含有されていればよく、他の分子サイズのHAを含んでいても差し支えない。
【0034】
また本発明薬剤は、細胞生物学分野における試験試薬等として利用することもできる。例えば、本発明誘導剤は、細胞生物学分野における実験において、CD44の切断を誘導するための試薬として利用することができる。また、例えば本発明促進剤は、細胞生物学分野における実験において、細胞の移動を促進するための試薬として利用することができる。この場合、試薬的に許容される賦形剤等を用いて、試薬として製剤化してもよい。
(3)本発明薬剤の投与対象等
本発明誘導剤は、CD44の切断の誘導に資せんとするものであるから、CD44の切断の誘導が望まれる細胞やこれを含む組織や臓器に対して適用することができる。CD44の切断の誘導が望まれる細胞としては、例えばCD44が切断されるべきであるにもかかわらず切断されないような状態にある細胞や、細胞生物学分野における実験において、CD44の切断を誘導する必要がある細胞等が例示される。
【0035】
また本発明促進剤は、細胞の移動の促進に資せんとするものであるから、細胞の移動の促進が望まれる細胞やこれを含む組織や臓器に対して適用することができる。細胞の移動の促進が望まれる細胞としては、例えば細胞の移動が引き起こされるべきであるにもかかわらず、引き起こされないような状態にある細胞や、細胞生物学分野における実験において、細胞の移動を促進する必要がある細胞等が例示される。
【0036】
本発明薬剤を動物に投与する場合、これが投与される動物は、脊椎動物、特に哺乳動物が好ましく、とりわけヒトが好ましい。本発明薬剤は、CD44の切断の誘導が望まれる疾患、CD44の切断の抑制もしくは阻害に起因する疾患、細胞の移動の促進が望まれる疾患、細胞の移動の抑制もしくは阻害に起因する疾患の予防、進行抑制(悪化防止)、症状の改善または治療等を目的として投与することができる。
【0037】
本発明薬剤における低分子量HA又はその薬学的に許容される塩の配合量、1回あたりの投与量、投与間隔等は、本発明薬剤の投与方法、投与形態、使用目的等、患者の具体的症状、年齢、性別、体重等に応じて個別に決定されるべき事項であり、特に限定されないが、低分子量HA又はその薬学的に許容される塩の臨床量として成人1人1回当り1〜100mgが例示される。
【0038】
また本発明薬剤の投与間隔は、1日1回程度でもよく、1日2〜3回に分けて投与することもできる。
【0039】
なお本発明は、上記の本発明誘導剤及び本発明促進剤だけでなく、in vitroまたはin vivoにおいて細胞または生体組織等の適用対象に低分子量HAを作用させ、該適用対象においてCD44の切断を誘導し、あるいは細胞の移動を促進する方法も包含する。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。しかしながら、これらにより本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
<材料等>
まず、本実施例において用いた物質等を説明する。
(1)試薬等
ヒトCD44の細胞質ドメインに対するウサギのpAb(抗CD44cyto pAb)は、Oncogene, 18, p1435−1446, (1999)に記載の方法で作製した。抗ヒトCD44 mAb(Hermes−3)は、Turku University and National Public Health Institute, Turkey, FinlandのSirpa Jalkanen博士より恵与された。抗ヒトCD44mAb(BRIC235)は、International Blood Group Reference Laboratory(Bristol, UK)から購入した。抗β−チューブリンmAbは、Calbiochem(Cambridge, MA)から購入した。HRP結合抗ウサギIgG、及びHRP結合抗マウスIgGはAmerican Qualex(San Clemente, CA)から購入した。HAの結合をブロックすることができる抗RHAMM pAbは、London Regional Cancer Center, University of Western Ontario, Ontario,
CanadaのE. Turley博士より恵与された。
【0041】
HAオリゴ糖及びFL−HAは、生化学工業株式会社から提供されたものを用いた。このHAオリゴ糖は、以下の構造を有し、以下の性質を有するものであった(カッコ内は、本実施例において用いる略号を示す。下記式中、「−」はグリコシド結合を表す。)
・HA飽和2糖(HA2)
GlcA−GlcNAc
・HA飽和4糖(HA4)
GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc
・HA飽和6糖(HA6)
GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc
・HA飽和8糖(HA8)
GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc
・HA飽和10糖(HA10)
GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc
・HA飽和12糖(HA12)
GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc−GlcA−GlcNAc
HA(重量平均分子量 6.9 kDa;HA6.9kDa)
HA飽和オリゴ糖は、Nagasawaらの方法(Carbohyd. Res., 141, p99−110, 1985)に準じて、HClを含有するDMSOでHAを処理して得られた分解産物を、陰イオン交換クロマトグラフィーでサイズごとに分画することによって得た。
【0042】
HA6.9kDaは、特開2000−136138号公報に記載された方法で調製し、同公報に記載された方法で重量平均分子量を算出した。
【0043】
被験物質は、以下の薬効薬理試験に応じて所定の濃度となるようにPBSに溶解して用いた。PBSに溶解した後のエンドトキシン濃度はいずれも0.3EU/mL以下であり、また鉄含量はいずれも20ppm以下であった。
【0044】
ヒト臍帯の由来の重量平均分子量 200kDaのHA(HA 200kDa)及び重量平均分子量 1000kDaのHA(HA 1000kDa)は、それぞれICN Biomedicals(Costa Mesa, CA)及びSigma−Aldrich Co.(St.Louis, MO)から購入した。ヒツジ睾丸のヒアルロニダーゼ、及びStreptococcus dysgalactiae由来のヒアルロニダーゼ(ヒアルロニダーゼSD)は、それぞれSigma−Aldrich Co.(St.Louis, MO)及び生化学工業株式会社から購入した。カルボベンゾキシル−ロイシニル−ロイシニル−ロイシナル(carbobenzoxyl−leucinyl−leucinyl−leucinal)(MG132)はペプチド研究所から、PMAはSigma−Aldrich Co.(St.Louis, MO)からそれぞれ入手した。
(2)細胞培養
ヒト膵癌細胞株であるMIA PaCa−2は、Cell Resource Center for Biomedical Research, Institute of Development, Aging and Cancer, Tohoku University から入手した。細胞を、10% FCS、1% (v/v) 100 x 非必須アミノ酸, 1 mM ピルビン酸ナトリウム、2 mM L−グルタミン 50 mM 2−メルカプトエタノール、100 U/ml ペニシリン、及び100 mg/ml ストレプトマイシンを含有する RPMI 1640培地(Sigma−Aldrich Co.)中で、37℃、5% CO2条件下で増殖させた。
(3)BRIC235抗体へのFITCの結合
BRIC235抗体の溶液を、まず炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.2)に対して透析した。1.4 mg/mlのBRIC235抗体を400 ml分取し、28 mgのFITC (DOJINDO, Kumamoto, Japan)と共に室温で4時間インキュベートした。この溶液を、0.05% アジ化ナトリウムを含有する PBS で平衡化した PD−10 column (Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden) にアプライした。溶出されてきた液を280nmの吸収でモニターした。
(4)BRIC235抗体のFabフラグメントの調製と精製
BRIC235抗体のFabフラグメントは、ImmunoPure Fab Preparation Kit (PIERCE, Rockford, IL) を用い、その説明書に従って調製し、精製した。すなわち、BRIC235抗体の溶液を 20 mM リン酸ナトリウム/10 mM EDTA 緩衝液(pH 7.0)に対して十分に透析した。その後、この抗体を約 20 mg/mlに濃縮して、固定化したパパインと共に37℃で5時間インキュベートすることによって消化した。FabフラグメントをProtein A カラムを用いて分離し、PBSに対して4℃で一晩透析した。
(5)HAフラグメントの調製
ヒト臍帯のHA (200 mg)を3,600単位(U)のヒツジ睾丸由来のヒアルロニダーゼを用いて37℃で19時間消化し、HAフラグメントの混合物を10% エタノールを含有する1M NaClで平衡化したBio−Gel P−10 カラム(1.5 cm x 100 cm, Bio−Rad, Hercules, CA) で分離した。そのカラム画分を蒸留水で平衡化したSephadex G−25column (1 cm x 50 cm, Bio−Rad)にアプライして脱塩し、その溶出液をHPLCで分析した。HPLC分析は、YMC−Pack PA−03 column (YMC, Wilmington, NC; 4.6 mmx 250 mm)を用いたNaH2PO4 の直線濃度勾配(16 mM 〜1 M ;70分間)で行った。流速は1.0 ml/分とした。
【0045】
溶出液は210 nmの吸収でモニターした。フラグメント化された HA (10 mg;HA6〜HA14)を0.1単位(U)のヒアルロニダーゼ SDを用いて37℃で3時間消化し、蒸留水で平衡化したSephadex G−25 カラムにアプライして脱塩した。溶出液を前記と同様にHPLCで分析した。実験によっては、ボイルして熱失活させたヒアルロニダーゼ SD を用いた。
(6)CD44切断アッセイ
MIA PaCa−2細胞を24ウエルのプレートに5 x 104 細胞/ウエルとなるように播種し、37℃で一晩培養した。その後、細胞を10 mM MG132中、37℃で30分間インキュベートすることによってCD44の細胞内ドメインの二次分解を防ぐことができる(J. Cell Biol., 155(5), p755−762, (2001))。細胞を、37℃、 10 mM MG132の存在下でHAと共に1時間、又は100 ng/mlのPMAとともに30分間インキュベートし、細胞上清を採取して酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に付した。細胞をSDSサンプルバッファー(2% SDS、10% グリセロール、0.1 M ジチオトレイトール、120 mM Tris−HCl(pH 6.8)、0.02% ブロモフェノールブルー)で溶解し、5分間ボイルした。同数の細胞から抽出した細胞溶解液を含有する等量のサンプルを、SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、PVDF膜に転写した。この膜を、3%BSAを含有するPBS中でブロッキングし、抗CD44cyto pAb又は抗b−チューブリンmAbと共にインキュベートした。抗CD44cyto pAbでインキュベートした膜についてはHRP結合抗ウサギIgGと共に、抗チューブリン mAbでインキュベートした膜についてはHRP結合抗マウスIgGと共にそれぞれインキュベートした。二次抗体は、ECL ウエスタンブロッティング検出試薬(Western blotting detection reagents;Amersham Biosciences)を用いて検出した。ELISAで分析する前に、刺激を与えた細胞の上清を0.22−mm Millipore filter (Millipore Co., Bedford, MA)で濾過した。培養上清中に存在する可溶性のヒトCD44H を、可溶性CD44H ELISA キット(Bender MedSystems, Vienna, Austria)を用いて、その説明書に従って定量した。
(7)フローサイトメトリー
FL−HAの細胞表面への結合は、EPICS XL flow cytometer (Coulter, Hialeah, FL)を用いて公知の方法で決定した(J. Immunol., 163, p1258−1264, (1999))。CD44への結合は、抗CD44 mAb BRIC235 の結合阻害によって確認した。HA 6.9 kDaの細胞表面への結合は、以下の通りHA 6.9 kDaを添加した場合のFL−HA結合の阻害によって解析した。100万個の細胞を、種々の濃度のHA 6.9 kDa又は10 mg/ml BRIC235と共に4℃で20分間インキュベートし、1.0 mg/mlのFL−HAを添加して、4℃で30分間インキュベートした。 細胞を、0.1% BSAを含有する冷PBSで2回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
(8)免疫蛍光顕微鏡観察
6ウエルのプレート中で、ヒト臍帯のHA(HA 1000 kDa)でコートされたカバーグラスにMIA PaCa−2細胞を2.8 x 105 細胞/ウエルの濃度で播種し、 37℃で一晩インキュベートした。前記と同様の成分を含有する無血清RPMI培地に交換した後、この細胞を1.0 ng/ml PMAの存在下又は非存在下で30分間、又はHA 6.9 kDaの存在下又は非存在下で1時間インキュベートした。
【0046】
次いで、この細胞を4% パラホルムアルデヒド/PBSで10分間固定し、次いで0.2% Triton X−100/PBSで5分間処理し、1% BSAを含有するPBS中、室温下で30分間ブロッキングした。PBSで洗浄した後、細胞を抗CD44cyto pAbと共に室温で1時間インキュベートし、次いでFITC結合ヤギ抗ウサギIgG (Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA) とローダミン結合ファロイジン(Molecular Probes, Eugene, OR) と共に室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、サンプルをProlong Antifade (Molecular Probes)でマウントし、共焦点顕微鏡 LSM 410 (Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)で観察した。
(9)細胞移動の解析
細胞移動は、24ウエルの Costar Transwell chambers (Corning Inc., Corning, NY)と孔径8mmのポリカーボネートフィルターを用いて解析した。フィルターの上側を100 mg/mlのHA 6.9 kDa、HA 1000 kDa又はPBSのみでコーティングした。チャンバーの下側のコンパートメントを0.1% BSAを含有する600 mlのRPMI培地で満たし、HAでコーティングしたフィルターのコートしていない側がチャンバーの下側のコンパートメントに面するように設置した。増殖が対数期にあるMIA PaCa−2細胞をトリプシン−EDTAで短時間処理することによって剥がし、0.1% BSAを含有するRPMIに4 x 105 細胞/mlで再懸濁させた。
【0047】
細胞懸濁液100 mlを上部のコンパートメントに添加した。抗体を用いた実験においては、細胞移動の解析の1時間前及び細胞移動の解析の間、細胞を10 mg/mlのBRIC235又はHermes−3(いずれも0.1% BSAを含有するRPMI培地で希釈)と共にインキュベートした。
【0048】
次いで、チャンバーを37℃、5% CO2 条件下で24時間インキュベートした。フィルターをはずし、フィルターの上側に存在する細胞を穏やかにふき取った。フィルターをメタノール中で固定し、ヘマトキシリンとエオシンで染色して、スライドガラスにマウントした。
【0049】
フィルターの下側に移動した細胞数を光学顕微鏡下でカウントした。細胞が多く存在する5箇所の異なる領域で細胞数をカウントし、平均値を算出した。それぞれの実験は5回行った。
<結果>
本発明者らはCD44の高レベルの切断が報告されているヒト膵癌細胞株MIA PaCa−2(J. Cell. Biol., 153, p893−904, (2001))を用いて、HAフラグメントによるCD44分解の誘導能を評価した。図1に示されるように、MIA PaCa−2細胞はCD44を豊富に発現しており(図1A)、FL−HAに結合し、この結合は抗CD44 mAb(BRIC235)によって完全にブロックされた。この結果は、MIA PaCa−2細胞が、HAの唯一のレセプターとして活性型のCD44を発現していることを示している。
【0050】
抗CD44cyto pAbを用いたウエスタンブロッティングによって、既報(Oncogene, 18, p1435−1446, (1999)、Am. J. Pathol., 160, p441−447, (2002)、J. Biol. Chem., 274, p25525−25534, (1999))の通り、MIA PaCa−2細胞はCD44H(90 kDaを示すCD44の通常のフォーム)を発現していることが示された(図1B)。また、MIA PaCa−2細胞をPMAで処理することによって膜に結合した25 kDaの切断産物が増加したことから(図1B)、CD44の細胞内ドメインの切断がPMAによって有意に増強されることが示された。PMA刺激によるCD44の切断の増強は、ELISAによっても確認された(図1C)。
MIA PaCa−2細胞を、主にHA6〜HA14で構成される小さいサイズのHAフラグメントで処理すると(図2A)、HAフラグメントの濃度依存的にCD44の切断が増強された(図2B)。これに対して、主に1,000糖又はそれ以上のポリマーで構成されるピーク分子量がHA 200 kDaで処理した場合には、CD44の切断の増強は観察されなかった(図2C)。同様の結果は、ヒトのグリオブラストーマ細胞(glioblastoma cell)株 U251MG 及びヒトの膵癌細胞株 Panc−1においても示された(データは示さない)。これらの結果から、小さいサイズのHAフラグメントには種々の癌細胞におけるCD44の切断を増強する作用があり、大きいサイズのHAはこのような作用を示さないことが明らかとなった。
【0051】
HAフラグメント依存性の現象として報告されている炎症性サイトカイン遺伝子の発現や(J. Clin. Invest., 98, p2403−2413, (1996))、iNOS遺伝子の誘導(J. Biol. Chem., 272, p8013−8018, (1997)、Cancer Res., 62, p2583−2591, (2002))等の現象は、HAを2糖に分解すると観察されなくなる。このことは、HAフラグメントによって誘導されるCD44の切断においても同様であった(図3)。Streptococcus dysgalactiae 由来のHA特異的ヒアルロニダーゼによって完全に2糖に分解すると、CD44の切断は誘導されなかった(図3A)。熱失活させたヒアルロニダーゼでHAを処理した場合(図3B)には、分解されないHAフラグメントが含有されていることから、未処理のHAフラグメント(図3C)と同レベルのCD44切断誘導活性を示した。
【0052】
これらの結果から、HAフラグメントによってCD44の切断が誘導されるが、HA2によっては誘導されないことが示された。またHA 200 kDa画分中に、CD44の切断を増強させるHA以外の物質が存在する可能性が排除された。
【0053】
HAのサイズがCD44の切断に対して与える影響を調べるために、2糖〜12糖の単一のサイズのHAフラグメント及びHA 6.9 kDa画分(主として36糖を含有する)を用いて実験した。図4Aに示す通り、2糖以上のHAフラグメントにCD44の切断誘導活性が認められた。6糖以上のHAフラグメントにおいては、2糖及び4糖のHAフラグメントにおけるCD44切断誘導活性よりもさらに強い活性がみられ、見かけ上、サイズ依存的にCD44の切断を誘導した。しかし、HA画分の分子量を更に高くすると(例えば、36 kDa、200 kDa及び1,000 kDa)CD44の切断活性を有しなくなった(図4B)。これらの結果から、特定の範囲にあるサイズのHAのみが、CD44の切断活性を示すことが明らかとなった。
【0054】
2糖や4糖以上のHAフラグメントにCD44の切断誘導活性がみられ、特に6糖以上のHAフラグメントだけがCD44の切断を強く誘導するという以上の結果から、CD44にHAが結合するために必要な最小のサイズは6糖であるという報告が想起される(J. Biol. Chem., 275, p26967−26975, (2000))。そこで、HAフラグメントがCD44に結合することによってCD44の切断が誘導される可能性について検討した。まず、FL−HAのMIA PaCa−2細胞に対する結合におけるHA 6.9 kDaによるブロッキング効果を検討した。小さいサイズのHAフラグメントのCD44への結合は、フローサイトメトリーでは一見、検出できないからである(J. Biol. Chem., 275, p26967−26975, (2000))。図5に示す通り、FL−HAのMIA PaCa−2細胞に対する結合(中和抗体である抗CD44 mAb BRIC235によって完全にブロックされる)は、HA 6.9
kDa によって濃度依存的に有意にブロックされた。
【0055】
図2においてCD44の切断の誘導に用いたHAフラグメントは、FL−HAの結合も阻害した(データは示さない)。これらの結果は、CD44の切断を誘導できるHAフラグメントは、CD44への結合能を有していることを示している。そこで、CD44のHAへの結合能をブロックすることによって、CD44の切断の誘導が阻害されるか否かを検討した。CD44自体が架橋することによってもCD44の切断が誘導されてしまうことから(J. Immunol., 167, p123−131, (2001))、これを防ぐために抗CD44 mAb BRIC235のFabフラグメントを使用した。図6に示すように、HAフラグメントによって誘導されたCD44の切断は、BRIC235抗体のFabフラグメントによってほぼ完全に阻害された。このことは、HAによって誘導される切断は、CD44とHAとの相互作用によって引き起こされることを示している。これに対し、HA結合分子に対するpAbであるRHAMM(HAの結合をブロックできる)は、HAフラグメントによって誘導されるCD44の切断をブロックできなかった(データは示さない)。このことは、ほとんど全てのHAが、MIA PaCa−2細胞のCD44に結合するとの観察と一致する(図1A)。
【0056】
これらの結果は、HAフラグメントが、CD44と相互作用することによってCD44の切断を誘導することを強く示唆するものである。
【0057】
CD44の切断は、CD44と細胞外マトリクスとの相互作用のダイナミックな制御を通して、CD44を介した癌細胞の転移に重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで、CD44の切断活性が非常に高いHA 6.9 kDa 画分が、 細胞の運動能に影響するか否かを検討した。
【0058】
MIA PaCa−2細胞をHA 6.9 kDaで刺激すると、細胞は多くのfilopodiaを形成し(図7D)、 アクチンフィラメントの再構成を示した(図7E, F)。この現象は、PMAで刺激した場合と同様であった (図7J, K, L)。これに対して、HA 1,000 kDa画分でMIA PaCa−2細胞を刺激した場合には、filopodiaの形成及びアクチンの再構成もわずかであり、ほとんど変化が見られなかった(Fig. 7G, H, I)。このことは、小さいサイズのHAフラグメントのみが癌細胞の形態に影響を与えることを示している。
【0059】
次に、異なる分子サイズのHA画分が、MIA PaCa−2細胞の運動性に対して異なる影響を与えるかどうかを、Boyden−type チャンバー(上下のウエルが、小さい分子サイズ又は大きい分子サイズのHA画分でコーティングされたフィルターで分離されているもの)を用いて評価した。図8に示す通り、HA 6.9 kDaでコーティングされたフィルターにMIA PaCa−2細胞をのせた場合、その運動性は高かったが、これは中和抗体である抗CD44 mAb BRIC235によって完全にブロックされた。しかし、ブロックしないmAbである Hermes−3によってはブロックされなかった。
【0060】
このことは、運動性の上昇がCD44とHAとの相互作用に基づくものであることを示している。これに対して、HA 1,000 kDaでコーティングされたフィルターにMIA PaCa−2細胞をのせた場合には、 コーティングされていないフィルターに比してもその運動性は非常に低かった。これらの結果は、低分子量サイズのHAはCD44の切断のみならず、CD44依存性の細胞の移動をも誘導することを示すものである。
【0061】
【発明の効果】
低分子量HA又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする本発明誘導剤及び促進剤は、前記実施例の結果からも明らかな通り、顕著なCD44切断誘導作用、及び細胞の移動促進効果を発揮することから極めて有用である。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】MIA PaCa−2細胞が活性型のCD44を発現し、ホルボールエステル処理によってCD44の切断が増加することを示す図である。
A:CD44の発現を調べるために、MIA PaCa−2細胞を10 mg/mlのFITC結合BRIC235の存在下(左側のパネル;黒色の部分)又は非存在下(左側のパネル;白色の部分;ドットの部分) でインキュベートし、フローサイトメーターで解析した。
次に、MIA PaCa−2細胞におけるCD44のリガンド結合活性を、FL−HA結合によって解析した。細胞をまず10 mg/mlのBRIC235 (右側のパネル;黒色の部分)又はアイソタイプコントロール(マウス IgG )(右側のパネル;白色の部分、細い実線)と共にインキュベートし、あるいは何ともインキュベートせず(右側のパネル;白色の部分(太い実線))、次いで10 mg/mlのFL−HAと共にインキュベートした。細胞をフローサイトメーターで解析した。染色されていない細胞の蛍光のプロファイルは、BRIC235で前処理した細胞と、また、アイソタイプコントロールで前処理した細胞の蛍光のプロファイルは、前処理をしなかった細胞と、それぞれ完全にオーバーラップしているので、図面上では現れていない。
B:CD44の切断をイムノブロッティングによって調べた。MIA PaCa−2細胞を、24ウェルのプレートに5 x 104 細胞/ウェルの密度で播種し、37℃で一晩培養した。次いで細胞を10 mM MG132と共に30分間培養し、100 ng/ml PMAの存在下又は非存在下で30分間培養した。この細胞をSDSサンプルバッファーで溶解し、等量の細胞溶解液を含有するサンプルを、抗CD44cyto pAb (上のパネル)又は抗β−チューブリン mAb (下のパネル)を用いたイムノブロッティングによって分析した。
C:前記の細胞培養液から採取した細胞を含有しない上清液中の可溶性CD44を、ELISA系を用いて分析した。カラム及びバーは、独立した3回の実験に基づく平均値及びS.D.を示す。統計学的解析は、スチューデントのt検定(Student’s t test)によって行った。図中の「*」は、p < 0.005で有意差があることを示す。
【図2】CD44の切断はHAフラグメントによって増強されるが、HA 200 kDaによっては増強されないことを示す図である。
A:HAフラグメントのHPLCプロファイル。HA 200 kDaをヒツジ睾丸ヒアルロニダーゼで消化した。分解されたHAフラグメントを、前記の<材料等>に記載の方法で、HPLC解析した。それぞれのオリゴ糖ピークにおける単糖単位の数は、それぞれのピークの上部に示した。
B:MIA PaCa−2細胞を図1で述べたのと同様に一晩培養し、MG132で処理した後、100 ng/ml PMAの存在下(レーン1)若しくは非存在下(レーン2)で30分間、又は表示した濃度のfrHAの存在下(レーン3〜7)で1時間培養した。細胞を溶解し、そのサンプルを図1で述べたのと同様にイムノブロッティングに付した。
C:frHAの代わりにHA 200 kDaを用いた点を除き、細胞を前記と同様に処理した。
【図3】HAフラグメントが、インタクトなヒアルロニダーゼによる消化によってCD44切断誘導活性を失うが、ボイルしたヒアルロニダーゼによっては失わないことを示す図である。
AとB:ヒアルロニダーゼ処理したHA画分の、HPLCプロファイル。FrHAをインタクトなヒアルロニダーゼSD(A)又はボイルしたヒアルロニダーゼSD(B)で処理した。その処理産物であるHAフラグメント(frHA−HAase及びfrHA−HAase/boiled)をHPLCで分析した。frHAはインタクトなヒアルロニダーゼによって二糖に分解されたが
、熱失活させたヒアルロニダーゼによっては分解されなかった。
C:MIA PaCa−2細胞を、図1で述べたのと同様に一晩培養し、MG132で処理して、100 ng/ml PMA の存在下(レーン2)又は非存在下(レーン1)で30分間、又は25 mg/ml frHA−HAase(レーン3)、frHA−HAase/boiled(レーン4)又はfrHA(レーン5)の存在下で1時間培養した。CD44の切断は、図2で述べたのと同様に解析した。
【図4】サイズ的に単一な小さいHAによってCD44の切断が誘導されるが、大きなポリマーによっては誘導されないことを示す図である。
MIA PaCa−2細胞を、図2及び図3で述べたのと同様に一晩培養し、10 mM MG132で30分間処理した。パネルAは、細胞を、培地のみで(レーン1)若しくは100 ng/ml PMAと共に(レーン2)30分間培養したもの、又は25 mg/mlの種々のHAフラグメントで1時間培養したもの(frHA;レーン3、HA2;レーン4、HA4;レーン5、HA6;レーン6、HA8;レーン7、HA10;レーン8、HA12;レーン9、HA6.9 kDa;レーン10)の結果を示す。
パネルBは、細胞を種々の濃度の大きなHA画分で処理した結果を示す。細胞を、薬剤の非存在下(レーン1)若しくは100 ng/mlのPMAの存在下(レーン2)で30分間インキュベートしたもの、又は25 mg/ml (レーン4、7及び10)、50 mg/ml (レーン5、8及び11)若しくは100 mg/ml (レーン6、9及び12)のHAで1時間インキュベートしたもの(frHA;レーン3、HA 36 kDa;レーン4、5及び6、HA200 kDa;レーン7、8及び9、HA 1000 kDa;レーン10、11及び12)の結果を示す。サンプルは前記と同様に解析した。
【図5】HA 6.9 kDa は細胞表面のCD44に結合することを示す図である。
標識されていないHA 6.9 kDaのMIA PaCa−2細胞に対する結合は、FL−HAの結合の阻害によって測定した。一番上のパネルは、細胞を10 mg/ml BRIC235の存在下(実線)又は非存在下(黒)で20分間培養し、1.0 mg/ml FL−HAと共にさらに4℃で30分間培養してフローサイトメトリーで解析した結果である。点線は培地のみで培養した細胞の蛍光を示し、実線と完全にオーバーラップしていた。他のパネルは、まず細胞を段階的に希釈したHA 6.9 kDaと共に20分間インキュベートし、次いで1.0 mg/ml FL−HAと共に4℃で30分間インキュベートした(黒の部分)。FL−HAの結合が、標識していないHA 6.9 kDaの用量依存的な添加に置換されていることに注意されたい。
【図6】HAフラグメントによって誘導されるCD44の切断が、抗CD44ブロッキングmAb BRIC235によってブロッキングされることを示す図である。
24ウェルのプレートに5 x 104 細胞/ウェルの密度で播種されたMIA PaCa−2細胞を一晩培養し、10 mM MG132と共に30分間インキュベートした。この細胞を、10 mg/mlのBRIC235 Fab フラグメントの存在下(レーン4)又は非存在下(レーン1〜3)で30分間プレインキュベートし、BRIC235 Fab の存在下で100 ng/ml PMA と共に30分間(レーン2) 又は25 mg/mlのfrHAとともに1時間(レーン3及び4)インキュベートした。
細胞をSDSサンプルバッファーで溶解させ、サンプルを抗CD44cyto pAb (上段と中段のパネル)又は抗β−チューブリン mAb (下段のパネル)を用いたイムノブロッティングによって解析した。
【図7】HA 6.9 kDa が、細胞の移動を促進する作用を有することを示す図である。
MIA PaCa−2細胞を、6ウェルプレートに設置された、HA 1000 kDaがコートされたカバーカラスに2.8 x 105 細胞/ウェルの濃度で播種し、37℃で一晩インキュベートした。細胞は、処理しないか(A、B、C)、又はHA 6.9 kDa(D,E,F)、HA 1000 kDa(G、H、I)若しくはPMA (J、K、L)で処理した。刺激した後、細胞を、抗CD44cyto pAb (A、D、G及びJ)、及びローダミン結合ファロイジン(B、E、H及びK)で二重染色した。.
サンプルは共焦顕微鏡で解析した。2つの蛍光を併せたイメージも示した(C、F、I及びL)。 実験結果は、少なくとも3回の独立した実験によって求めた値である。
【図8】HA 6.9 kDaによる細胞の移動の誘導は、ブロッキング 抗CD44抗体によって阻害されるが、非ブロッキング抗CD44抗体によっては阻害されないことを示す図である。
HA 6.9 kDaの、MIA PaCa−2細胞の移動に対する効果は、Boyden chamber type migration assayを用いて評価した。上下のチャンバーを画するフィルターをHA 6.9 kDa(カラム 4、5及び6)若しくはHA 1000 kDa (カラム7、8及び9)でコーティングし、又はHAでは何らコーティングしなかった(カラム1、2及び3)。細胞(4.0 x 104 細胞/ウェル)を、抗体不存在の条件下(カラム1、4及び7)、BRIC235の存在下 (カラム2、5及び8) 又はHermes−3 の存在下(カラム3、6及び9)で上部のチャンバーに入れ、1時間インキュベートした。
細胞を、これらの抗体の存在下でさらに24時間インキュベートした。カラム及びバーは、独立した5回の実験に基づく平均値及びS.D.を示す。統計学的解析は、スチューデントのt検定(Student’s t test)によって行った。図中の「*」は、p < 0.005で有意差があることを示す。
Claims (10)
- 低分子量ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、CD44切断誘導剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸2糖以上で、かつ重量平均分子量30kD以下のヒアルロン酸である、請求項1に記載の誘導剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸2糖以上で、かつ重量平均分子量10kD以下のヒアルロン酸である、請求項2に記載の誘導剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸4糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のヒアルロン酸である、請求項3に記載の誘導剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸6糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のヒアルロン酸である、請求項4に記載の誘導剤。
- 低分子量ヒアルロン酸又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、細胞の移動促進剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸2糖以上で、かつ重量平均分子量30kD以下のヒアルロン酸である、請求項6に記載の促進剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸2糖以上で、かつ重量平均分子量10kD以下のヒアルロン酸である、請求項7に記載の促進剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸4糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のヒアルロン酸である、請求項8に記載の促進剤。
- 「低分子量ヒアルロン酸」が、ヒアルロン酸6糖以上で、かつ重量平均分子量10kDa以下のヒアルロン酸である、請求項9に記載の促進剤。
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