JP2004059506A - セレクチン及びケモカインに作用する過硫酸化オリゴ糖 - Google Patents

セレクチン及びケモカインに作用する過硫酸化オリゴ糖 Download PDF

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Abstract

【課題】L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインとリガンドとの結合の調節等を達成する糖化合物、炎症性疾患等の疾患症状を改善し、生体で高親和性を示す治療又は予防剤を提供すること。
【解決手段】式(I):
【化1】
Figure 2004059506

(R1 、R2 、R3 、R4 は、水素原子又はスルホン酸基を示す)、式(II):
【化2】
Figure 2004059506

(R5 、R6 、R7 、R8 は、水素原子又はスルホン酸基を示す)、式(III) :
【化3】
Figure 2004059506

(R9 、R10は、水素原子又はスルホン酸基、mは、3又は4である)、又は式(IV):
【化4】
Figure 2004059506

(式中、R11、R12は、水素原子又はスルホン酸基、nは、3又は4である)の糖化合物、該糖化合物を含有した治療又は予防剤。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、向炎症分子であるL−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインに相互作用する糖化合物並びにL−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療又は予防剤に関する。より詳しくは、本発明は、L−セレクチン、P−セレクチン、ケモカイン等に介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療若しくは予防薬、該治療若しくは予防薬の創薬のためのリード化合物、又は該リード化合物のデザイン等に有用な糖化合物、並びに炎症性疾患、アレルギー性疾患、癌転移、心筋障害、多臓器不全等の疾患の治療又は予防に有用な治療又は予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
炎症は、白血球上の接着分子と血管内皮細胞との接着を促進する分子により誘発され、特定の接着分子が関与することが知られている。前記接着分子としては、例えば、L−セレクチン、P−セレクチンに代表されるセレクチンファミリー等が挙げられる。
【0003】
前記L−セレクチン又はP−セレクチンと、そのリガンドとの相互作用において、該リガンドの硫酸化は、重要な役割を果たすことが知られている。例えば、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1のチロシン硫酸化は、該P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1と、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの相互作用に必要とされることが知られている [サコ(Sako, D.)ら、Cell, 83, 323−331 (1995); ポウヤニ(Pouyani, T.) ら、Cell, 83, 333−343 (1995); 及びスペルチーニ(Spertini, O.)ら、J. Cell Biol., 135, 523−531 (1996)] 。
【0004】
また、高内皮性小静脈上のL−セレクチンのリガンドは、硫酸化依存性様式でL−セレクチンに結合することが知られている [イマイ(Imai, Y.)ら、Nature, 361, 555−557 (1993);(Hiraoka, N.) ら、Immunity, 11, 79−89 (1999); ビストラップ(Bistrup, A.) ら、J. Cell Biol., 145, 899−910 (1999)] 。さらに、HNK−1反応性スルホグルクロニル糖脂質 [ニードハム(Needham, L. K.)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90, 1359−1363 (1993)]、ヘパリンオリゴ糖 [ネルソン(Nelson, R. M.) ら、Blood, 11, 3253−3258 (1993)]及びヒアルロン酸グリコサミノグリカン [ケニック(Koenig, A.)ら、J. Clin. Invest., 101, 877−889 (1998)]は、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれに結合することが知られている。
【0005】
しかしながら、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれに結合する化合物は、いずれも高分子量であり、L−セレクチン、P−セレクチン等とリガンドとの結合を調節しうるリード化合物のデザインは、困難であり、いまだ、医薬品として開発に成功していないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれとそのリガンドとの結合を調節すること、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれに介される生物学的事象を調節すること、並びに該生物学的事象が発症に関連する疾患の症状を改善すること、該疾患の治療又は予防剤のためのリード化合物を提供すること等を達成しうる糖化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、炎症性疾患、アレルギー疾患、癌転移、心筋障害、多臓器不全等の疾患の症状を改善し、生体において高い親和性を呈しうる、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療又は予防剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
〔1〕 一般式(I):
【0008】
【化5】
Figure 2004059506
【0009】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
又は
一般式(II):
【0010】
【化6】
Figure 2004059506
【0011】
(式中、R5 、R6 、R7 及びR8 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
で表わされる糖化合物、
〔2〕 一般式(III) :
【0012】
【化7】
Figure 2004059506
【0013】
(式中、R9 及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示し、mは、3又は4である)
又は
一般式(IV):
【0014】
【化8】
Figure 2004059506
【0015】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示し、nは、3又は4である)
で表わされる糖化合物、並びに
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕記載の糖化合物を有効成分として含有してなる、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療又は予防剤、
に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、硫酸化グリコサミノグリカンのうち、一般式(III) :
【0017】
【化9】
Figure 2004059506
【0018】
(式中、R9 及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
の二糖部分、又は
一般式(IV):
【0019】
【化10】
Figure 2004059506
【0020】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
の二糖部分
を構成単位として含有する糖化合物、特に、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)を繰返し単位とする四糖化合物又はIdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)を繰返し単位とする四糖化合物が、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと相互作用するという驚くべき知見、及び前記四糖化合物が、ケモカインの生理活性等を阻害するという驚くべき知見に基づく。
【0021】
なお、本明細書において、「GlcA」は、D−グルクロン酸残基を示し、「GalNAc」は、N−アセチル−D−ガラクトサミン残基を示し、「IdoA」は、L−イズロン酸残基を示し、「HexA」は、ヘキスロン酸残基を示す。また、「β1−3」は、β1−3結合を意味し、「α1−3」は、α1−3結合を意味する。
【0022】
本発明の糖化合物としては、一般式(I):
【0023】
【化11】
Figure 2004059506
【0024】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
又は
一般式(II):
【0025】
【化12】
Figure 2004059506
【0026】
(式中、R5 、R6 、R7 及びR8 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
で表わされる糖化合物、及び一般式(III) :
【0027】
【化13】
Figure 2004059506
【0028】
(式中、R9 及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示し、mは、3又は4である)
又は
一般式(IV):
【0029】
【化14】
Figure 2004059506
【0030】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示し、nは、3又は4である)
で表わされる糖化合物である。本発明の糖化合物は、四糖〜八糖からなる化合物であるにもかかわらず、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと相互作用し、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれが関連する生理的機能等を調節することができるという優れた効果を発揮する。さらに、本発明の糖化合物は、四糖〜八糖からなる化合物であるため、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインからなる群より選ばれた少なくとも1種と、そのリガンドとの結合を調節しうる低分子化合物として、あるいはそのリード化合物のデザインのための基礎として用いることができるという優れた効果を発揮する。
【0031】
本発明においては、分子量の観点から、特に、前記一般式(I)又は一般式(II)で表わされる糖化合物が好ましい。
【0032】
前記一般式(I)において、R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す。また、前記スルホン酸基は、本発明の目的を阻害しないものであれば、置換基を有していてもよい。前記一般式(I)の任意のR1 、R2 、R3 及びR4 がスルホン酸基である糖化合物は、例えば、三酸化イオウ−トリアルキルアミン複合体、三酸化イオウ−ピリジン複合体、硫酸−トリアルキルアミン複合体又は硫酸−ピリジン複合体により得られうる。
【0033】
また、前記一般式(II)において、R5 、R6 、R7 及びR8 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す。また、前記スルホン酸基は、本発明の目的を阻害しないものであれば、置換基を有していてもよい。前記一般式(II)の任意のR5 、R6 、R7 及びR8 がスルホン酸基である化合物は、例えば、三酸化イオウ−トリアルキルアミン複合体、三酸化イオウ−ピリジン複合体、硫酸−トリアルキルアミン複合体又は硫酸−ピリジン複合体により得られうる。
【0034】
さらに、前記一般式(III) において、R9 及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す。また、前記スルホン酸基は、本発明の目的を阻害しないものであれば、置換基を有していてもよい。前記一般式(III) において、R9 及び/又はR10がスルホン酸基である化合物は、例えば、三酸化イオウ−トリアルキルアミン複合体、三酸化イオウ−ピリジン複合体、硫酸−トリアルキルアミン複合体又は硫酸−ピリジン複合体により得られうる。
【0035】
また、前記一般式(IV)において、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す。また、前記スルホン酸基は、本発明の目的を阻害しないものであれば、置換基を有していてもよい。前記一般式(IV)において、R11及び/又はR12がスルホン酸基である化合物は、例えば、三酸化イオウ−トリアルキルアミン複合体、三酸化イオウ−ピリジン複合体、硫酸−トリアルキルアミン複合体又は硫酸−ピリジン複合体により得られうる。
【0036】
本発明の糖化合物としては、具体的には、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−スルフェート)、IdoAα1−3GlNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−スルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−スルフェート)、IdoAα1−3GlNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−スルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−スルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−スルフェート)、IdoAα1−3GlNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)等が挙げられる。また、前記糖化合物のなかでも、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインとの相互作用を十分に発揮させる観点から、硫酸化の度合いが高い化合物であることが望ましい。
【0037】
本発明の糖化合物は、例えば、
(a) イカ軟骨 [スズキ(Suzuki, S.)ら、J. Biol. Chem., 243, 1543−1550 (1968)]、肥満細胞 [カッツ(Katz, H. R.) ら、J. Biol. Chem., 261, 13393−13396 (1986);及びスティーブンス(Stevens, R. L.)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85, 2284−2287 (1988)]、好中球 [オオハシ(Ohhashi, Y.) ら、Biochem.J., 217, 199−207 (1984); 及びピーターソン(Petersen. F.)ら、J. Biol. Chem., 274, 12376−12382 (1999)]、単球 [ウーリン−ハンセン(Uhlin−Hansen, L.)ら、J. Biol. Chem., 264, 14916−14922 (1989);マックジー(McGee, M. P.)ら、J. Biol. Chem., 270, 26109−26115 (1995)]、糸球体 [コバヤシ(Kobayashi, S.) ら、Biochim. Biophy. Acta, 841, 71−80 (1985)] 、糸球体間質細胞 [(Yaoita, E.)ら、J. Biol. Chem., 265, 522−531 (1990)]等に見出される過硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸鎖を、例えば、ヒアルロニダーゼで消化する工程、及び
(b)前記工程(a)で得られた消化産物を高速液体クロマトグラフィーに供して、オリゴ糖画分を得る工程、
を行なうことにより得られうる。
【0038】
前記工程(a)において、過硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸鎖は、慣用の手法により得られうる。また、前記過硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸鎖の供給源は、前述の例示に特に限定されるものではなく、過硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸鎖を保持する他の生物、組織、細胞等であってもよい。
【0039】
ついで、工程(b)において、前記(a)で得られた消化産物を、クロマトグラフィー、例えば、高速液体クロマトグラフィーに供する。工程(b)においては、単一種類のオリゴ糖を、単一ピークとして得られるように、慣用の各種クロマトグラフィーを行なえばよい。例えば、イカ軟骨由来コンドロイチンA、イカ軟骨由来コンドロイチンC及びイカ軟骨由来コンドロイチンEの場合、前記クロマトグラフィーとして、16mM〜1M NaH2 PO4 のリニアグラジェントによるアミン結合シリカゲルカラムクロマトグラフィーと、つづくゲル濾過カラムクロマトグラフィーとの組合せ等が行なわれうる。ここで、クロマトグラフィーに用いられる溶液は、前記オリゴ糖等を分離するのに適した水溶液又は水溶性有機溶媒と水との混合溶液であればよい。
【0040】
前記工程(b)により得られた糖化合物を三酸化イオウ−トリアルキルアミン複合体、三酸化イオウ−ピリジン複合体、硫酸−トリアルキルアミン複合体又は硫酸−ピリジン複合体により硫酸化することもできる。特に、コンドロイチン硫酸の6−O−硫酸化、デルマタン硫酸の6−O−硫酸化は、好ましくは、ナガサワらの方法 [ナガサワ(Nagasawa, K.)ら, Carbohydr. Res., 158, 183−190 (1986)] により行なうことが望ましい。
【0041】
本発明の糖化合物は、
▲1▼L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと相互作用、例えば、結合する;
▲2▼バーシカンと、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれとの結合を調節、具体的には、阻害する;
▲3▼ケモカインの生理活性を阻害する
という性質を発現する。したがって、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療又は予防への応用が期待される。
【0042】
したがって、本発明により、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療又は予防剤が提供される。
【0043】
本発明の治療又は予防剤は、本発明の糖化合物を有効成分として含有することに1つの特徴がある。
【0044】
前記「L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれが介する生物学的事象」としては、例えば、炎症における組織浸潤、サイトカイン産生調節、リンパ球ホーミング、血小板凝集、腫瘍巣の血管新生、癌転移、心筋虚血再灌流障害等が挙げられる。また、前記疾患としては、炎症性疾患、感染症、喘息、アレルギー性炎症、間質性肺炎、全身性炎症反応症候群、炎症性疾患等が挙げられる。
【0045】
本発明の治療又は予防剤によれば、本発明の糖化合物を有効成分として含有するため、例えば、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと相互作用して、炎症性疾患における炎症の誘因、例えば、前記L−セレクチン及び/又はP−セレクチンを介した白血球と血管内皮細胞との接着を調節、具体的には阻害すること、及びケモカインの生理活性(サイトカイン産生調節、Ca2+動員等)を調節、具体的には、阻害することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の治療又は予防剤によれば、本発明の糖化合物を有効成分として含有するため、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインからなる群より選ばれた少なくとも1種とそのリガンドとの結合を調節することができる。したがって、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれを介した生物学的事象が関連する炎症性疾患、アレルギー疾患、癌転移を治療、症状を抑制又は予防することができるという優れた効果を発揮する。すなわち、本発明の治療又は予防剤は、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗癌剤等として使用されうる。
【0046】
本発明の治療又は予防剤の作用、例えば、結合阻害能は、例えば、以下のように、表面プラズモン共鳴解析等により評価されうる。すなわち、本発明の治療又は予防剤の作用は、
(i)L−セレクチン、P−セレクチン又はケモカインをセンサーチップ上に固定し、L−セレクチン固定化センサーチップ、P−セレクチン固定化センサーチップ及びケモカイン固定化センサーチップのそれぞれを得るステップ、
(ii)本発明の治療又は予防剤の存在下、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれのリガンドを、一定の流速で、前記リガンドに対応して、L−セレクチン固定化センサーチップ、P−セレクチン固定化センサーチップ及びケモカイン固定化センサーチップのいずれかに負荷するステップ、及び
(iii) 適切な検出手段〔例えば、光学的検出(蛍光度、蛍光偏向度等)、質量分析計との組み合わせ(マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計:MALDI−TOF MS 、エレクトロスプレー・イオン化質量分析計:ESI−MS 等)〕により、光学的変動又は質量の変動として相互作用を検出し、それにより、センサーグラムを得るステップ
を含む評価方法を行なうことにより評価されうる。
【0047】
なお、前記ステップ(i)において、リガンドをセンサーチップに固定化してもよく、この場合、ステップ(ii)において、治療又は予防剤の存在下、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのいずれかを、一定の流速で、対応するリガンド固定化センサーチップ上に負荷すればよい。
【0048】
前記評価方法においては、本発明の治療又は予防剤の非存在下、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと、そのリガンドとの複合体の形成を示すセンサーグラムが提示された場合、例えば、光学的センサーグラム又は質量センサーグラムが、送液によるリガンドの導入により変動した場合を陰性対照とする。したがって、本発明の治療又は予防剤による結合の阻害は、本発明の治療又は予防剤の非存在下の場合と同様の反応系で、本発明の治療又は予防剤の存在下、複合体の形成を示すセンサーグラムが提示されない場合又は複合体の形成までの時間が遅延した場合を指標とする。
【0049】
本発明の治療又は予防剤の作用、例えば、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれに介される生物学的事象の調節は、本発明の治療又は予防剤の存在下における培養細胞中の生物学的事象の有無、程度を測定することにより評価されうる。例えば、二次リンパ様組織ケモカインが介するCa2+動員に関し、
i)L1.2/CCR7細胞(1×106 細胞/ml)を、Fura−2で負荷し、本発明の治療又は予防剤(100μg/ml)の存在下又は非存在下に、二次リンパ様組織ケモカインで刺激するステップ、及び
ii)ヒロセ(Hirose, J.)ら、J. Biol. Chem., 276, 5228−5234 (2001) の記載に従い、蛍光率を測定することにより、細胞内カルシウム濃度をモニターするステップ、
を含む評価方法を行なうことにより評価されうる。
【0050】
さらに、本発明の治療又は予防剤の作用、例えば、生体における炎症性疾患の治療又は予防効果は、炎症疾患モデル動物に、本発明の治療又は予防剤を投与し、炎症部位における症状の変化を観察すること、好中球浸潤を組織ミエロパーオキシダーゼの活性を指標として検出すること等により評価されうる。
【0051】
本発明の治療又は予防剤の剤形としては、投与形態に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤等の経口投与剤;スプレー剤、軟膏等の外用薬;皮下、皮内、筋肉内、静脈内等への注射剤等が挙げられる。
【0052】
したがって、本発明の治療又は予防剤中における有効成分の含有量は、前記疾患の治療又は予防を必要とする個体の年齢、体重、病態等に応じて、適宜設定することができ、例えば、投与形態が、静脈注射の場合、10〜500mg、皮下注射の場合、10〜500mgであることが望ましい。
【0053】
また、個体への本発明の治療又は予防剤の投与量は、前記疾患の治療又は予防を必要とする個体の年齢、体重、病態等に応じて、適宜設定することができ、例えば、有効成分の量として、1μg/kg〜10mg/kg、好ましくは、100μg/kg〜10mg/kg、より好ましくは、1mg/kg〜8mg/kgであることが望ましい。
【0054】
本発明の治療又は予防剤は、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれに介される生物学的事象が発症に関連する疾患の状態、投与対象となる個体、器官、局所部位、組織等に応じて、薬学的に許容されうる助剤、賦形剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等をさらに含有してもよい。
【0055】
また、本発明の治療又は予防剤は、前記有効成分を安定に維持しうる担体に該有効成分を担持させて得られた剤であってもよい。具体的には、例えば、投与対象となる個体、器官、局所部位、組織等の生体への導入を容易にしうる薬学的に許容されうる担体に、有効成分を保持させてもよい。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例等により詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例等により限定されるものではない。なお、本実施例に用いられた試薬は、特に記載しないかぎり、カワシマ(Kawashima, H.) ら[J. Biol. Chem., 275, 35448−35456 (2000)] 及びヒロセ(Hirose, J.)ら[J. Biol. Chem., 276, 5228−5234 (2001)] に記載の試薬と同様である。また、細胞の培地組成等については、フレシュニー(Frshney, R. Ian) 、カルチャー・オブ・アニマルセルズ・ア・マニュアル・オブ・ベーシック・テクニック、第2版(Culture of animal cell A manual of basic technique, 2nd ed.) 、Alan R. Liss. Inc., 66−84 (1987)等が参照されうる。
【0057】
実施例1
硫酸化の代謝インヒビターである塩素酸ナトリウムでACHN細胞を処理することにより、バーシカン中のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸鎖(以下、CS/DS鎖とも表記する)と、L−セレクチン、P−セレクチン及びCD44のそれぞれとの相互作用における硫酸化の必要性を検討した。
【0058】
(1)ヒトCD44−Igの作製
ヒト由来CD44 cDNAを、センスプライマー(配列番号:1):
【0059】
【化15】
Figure 2004059506
【0060】
(太字部分は、HindIII制限酵素認識部位であり、下線部は、ヒトCD44の最初の7アミノ酸のコドンである)と、アンチセンスプライマー(配列番号:2):
【0061】
【化16】
Figure 2004059506
【0062】
(太字部分は、XbaI制限酵素認識部位であり、下線部は、ヒトCD44の172〜178位のアミノ酸のコドンである)とを用いたPCRにより調製した。得られた増幅産物を、発現ベクターpcDNA3.1/Myc−His(+)B〔インビトロジェン(Invitrogen)社製〕のクローニングサイトに挿入し、ヒトCD44発現ベクターを得た。また、前記増幅産物について、配列決定した。
【0063】
製造者の説明書に従って、LipofectAMINETM試薬〔インビトロジェン(Invitrogen)社製〕を用い、前記ヒトCD44発現ベクターを293T細胞にトランスフェクトした。得られたトランスフェクト細胞を、20重量%ウシ胎仔血清を含むダルベッコ改変イーグル培地中、CO2 インキュベーター内で、37℃で4日間細胞を培養し、馴化培地を得た。
【0064】
その後、前記馴化培地を、抗CD44モノクローナル抗体BRIC 235結合CNBr活性化セファロース4Bでのイムノアフィニティークロマトグラフィーに供して、単量体CD44を得た。得られた可溶性CD44を、SDS−PAGE及び銀染色に供した。その結果、得られた可溶性CD44の純度は、95%を超える純度であった。
【0065】
ついで、得られたCD44を用い、トヤマ−ソリマチ(Toyama−Sorimachi, N.)ら [J. Biol. Chem., 270, 7437−7444, (1995)] に記載の方法に従って、ヒトCD44−イムノグロブリン(Ig)を作製した。
【0066】
(2) [35S] 硫酸ナトリウム又は [35S] メチオニンを用いたACHN細胞の代謝標識
10重量% ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640中、30mM 塩素酸ナトリウムの存在下又は非存在下に、ACHN細胞を、37℃で6時間プレインキュベートした。得られたACHN細胞のコンフルエントな単層を、
(i)0.2mCi/mlの [35S] Na2 SO4 〔商品名:Sulfer−35;アイシーエヌ ラジオケミカルズ(ICN Radiochemicals)社製〕の存在下、2重量% 透析ウシ胎仔血清を含むイーグル最少基本培地SMEM〔硫酸不含;バイオウィッテーカー(BioWhittaker)社製〕、又は
(ii)0.2mCi/mlの [35S] −メチオニン〔アイシーエヌ ラジオケミカルズ(ICN Radiochemicals)社製〕の存在下、2重量%透析ウシ胎仔血清を含むメチオニン不含RPMI 1640培地〔インビトロジェン(Invitrogen)社製〕
のいずれかの培地中、30mM 塩素酸ナトリウムの存在下又は非存在下、18時間インキュベートして標識した。
【0067】
(3)免疫沈降
緩衝液A(0.05% Tween 20,20mM HEPES−NaOH,0.15M NaCl,1mM CaCl2 ,1mM MgCl2 ,pH6.8)を用いて、ビーズを洗浄したことを除き、カワシマ(Kawashima, H)らの文献[Int. Immunol., 11, 393−405 (1999)]に記載の方法に従い、以下のように免疫沈降を行なった。
【0068】
図1に示された抗体及びIgキメラのそれぞれ(10μg 相当量)と、プロテインA−セファロースカラム(10μl 相当量)とを、慣用の方法により結合させ、抗体結合プロテインA−セファロース又はIgキメラ結合プロテインA−セファロースを得た。ついで、前記緩衝液A 1ml中、各抗体結合プロテインA−セファロース又は各Igキメラ結合プロテインA−セファロース(10μl ゲル相当量)と、馴化培地とを、4℃で一晩インキュベートした。なお、抗バーシカンポリクローナル抗体である抗D [ツィマーマン(Zimmermann, D. R.) ら,  J. Cell. Biol., 124, 817−825 (1994)] は、ディーテル R.ツィマーマン博士(Institute of Clinical Pathology,University of Zuerich)により提供されたものであり、ヒトL−セレクチン−Igは、アールアンドディー システムズ インコーポレーティド(R&D Systems Inc)製である。
【0069】
その後、前記ビーズを、前記緩衝液Aで洗浄し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、SDS−アガロース−PAGEに供し、ついで、ゲル上の35S標識に由来するシグナルをオートラジオグラフィーで検出した。その結果を図1に示す。
【0070】
図1のレーン5〜8に示すように、バーシカンのコアタンパク質は、合成されたものの、レーン1〜4に示されるように、塩素酸ナトリウムによる処理により、未処理の場合に対して、90%を超える硫酸化の阻害をもたらした。
【0071】
また、図1のレーン11、12、15及び16に示されるように、前記塩素酸ナトリウム処理により、バーシカンと、L−セレクチン−Ig及びP−セレクチン−Igのそれぞれとの相互作用が阻害された。したがって、バーシカンのCS/DS鎖の硫酸化が、バーシカンと、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの相互作用に必要とされることが示唆された。一方、図1のレーン13及び14に示すように、非硫酸化バーシカンは、カワシマ(Kawashima, H.) ら、[J. Biol. Chem., 275, 35448−35456, (2000)]のように、E−セレクチン−Igとは相互作用しなかった。
【0072】
対照的に、図1のレーン17及び18に示されるように、バーシカンとCD44−Igとの間の相互作用は、塩素酸ナトリウム処理により阻害されなかった。しかしながら、バーシカンとCD44−Igとの間の相互作用が、塩素酸ナトリウム処理により阻害されなかったことは、バーシカンとヒアルロン酸とCD44−Igとからなる3分子複合体の形成によるものであることも考えられた。
【0073】
そこで、ACHN細胞の [35S] メチオニン標識馴化培地を、文献 [カワシマ(Kawashima, H.) ら、J. Biol. Chem., 275, 35448−35456, (2000)] の記載と同様に、ヒアルロニダーゼSD(図1中、「HA’ase」;50mU/ml)で3時間処理し、ついで、得られた馴化培地と、CD44−Igとをインキュベートした。
【0074】
その結果、前記ヒアルロン酸は、前記ヒアルロニダーゼSDによる処理により、ほぼ完全に分解・除去されたが、図1のレーン19及び20に示されるように、バーシカンとCD44−Igとの相互作用は、全く影響されなかった。したがって、バーシカンの硫酸化が、バーシカンとCD44との相互作用に必要とされないこと、すなわち、バーシカンのCS/DS鎖が、硫酸化非依存性様式でCD44と相互作用することが確認された。
【0075】
実施例2
種々のCS/DS鎖を用いて阻害アッセイを行ない、それにより、セレクチン及びCD44のそれぞれと相互作用する構造を検討した。
【0076】
(1)CS/DS鎖の二糖組成解析
阻害アッセイに用いたCS/DS鎖は、コンドロイチン(表1中、「CH」)、コンドロイチン硫酸A(表1中、「CS A」)、コンドロイチンポリ硫酸(表1中、「CPS」)、デルマタン、雄鶏の鶏冠から精製されたデルマタン硫酸〔表1中、「DS」;生化学工業株式会社製;ナガサワ(Nagasawa, K.)ら, Carbohydr. Res., 131, 301−314, (1984) 〕、デルマタンポリ硫酸(表1中、「DPS」)、コンドロイチン硫酸E(表1中、「CS E」)である。前記コンドロイチンは、クジラ軟骨由来コンドロイチン硫酸Aの化学的脱硫ナガサワ(Nagasawa, K.), J. Biochem., 86, 1323−1329  (1979)] により生産されたものである。前記コンドロイチンポリ硫酸(生化学工業株式会社製)は、コンドロイチン硫酸Aの選択的6−O−硫酸化 [ナガサワ(Nagasawa, K.)ら, Carbohydr. Res., 158, 183−190 (1986)] により生産されたものである。前記デルマタンポリ硫酸(生化学工業株式会社製)は、デルマタン硫酸の選択的6−O−硫酸化 [ナガサワ(Nagasawa, K.)ら, Carbohydr. Res., 158, 183−190 (1986)] により生産されたものである。デルマタン(生化学工業株式会社製)は、前記デルマタン硫酸の化学的脱硫 [ナガサワ(Nagasawa, K.), J. Biochem., 86, 1323−1329  (1979)] により生産されたものである。
【0077】
フジモト(Fujimoto, T.)ら [Int. Immunol., 13, 359−366 (2001)]のように、前記CS/DS鎖を、コンドロイチナーゼABC(1単位/ml)により37℃で7時間処理した。得られた産物を、アミン結合シリカPA−03カラムでのHPLCに供し、それにより、二糖組成を決定した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
Figure 2004059506
【0079】
コンドロイチンポリ硫酸、コンドロイチン硫酸A及びコンドロイチンのそれぞれの鎖長及び原子価は、同一であるが、これらのグリコサミノグリカンの硫酸化の程度は異なる。同様に、デルマタンポリ硫酸、デルマタン硫酸及びデルマタンは、硫酸化のみが異なる。
【0080】
(2)結合阻害アッセイ
バーシカンと、L−セレクチン、P−セレクチン及びCD44のそれぞれとの結合の阻害アッセイを、以下のように行なった。まず、L−セレクチン−Ig(3μg/ml)、P−セレクチン−Ig(4μg/ml)又はCD44−Ig(0.25μg/ml)を用いて、慣用の手法で、96ウェル平底マイクロタイタープレート(コスターEIA/RIAプレート ナンバー3690)上の各ウェルをコートした。ついで、得られたプレート上のウェルに、種々の濃度のケラタン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタン、デルマタン硫酸、デルマタンポリ硫酸及びコンドロイチン硫酸Eのそれぞれと、ビオチン化バーシカンとをウェルに添加し、プレートを、室温で2時間インキュベートした。その後、前記緩衝液Aでプレートを洗浄し、カワシマ(Kawashima, H.) ら[J. Biol. Chem. 275, 35448−35456 (2000)]に記載のように、酵素結合免疫吸着定量法を行なった。アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンとBlue PhosTM基質とを用い、620nmにおける吸収を測定することにより、結合を測定した。
【0081】
結果を図2に示す。図2中、十字は、ケラタン硫酸、白三角は、コンドロイチン、白四角は、コンドロイチン硫酸A、白丸は、コンドロイチンポリ硫酸、黒三角は、デルマタン、黒四角は、デルマタン硫酸、黒丸−実線は、デルマタンポリ硫酸、黒丸−点線は、コンドロイチン硫酸Eを示す。また、図2中、パネルAは、バーシカンとL−セレクチンとの結合に関する結果である、パネルBは、バーシカンとP−セレクチンとの結合に関する結果である、パネルCは、バーシカンとCD44との結合に関する結果である。
【0082】
図2に示されるように、ビオチン化バーシカンと、L−セレクチン−Ig及びP−セレクチン−Igのそれぞれとの結合は、主要な二糖成分として、GlcAβ1/IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)を含むグリコサミノグリカン(コンドロイチンポリ硫酸、デルマタンポリ硫酸及びコンドロイチン硫酸E)により、用量依存的に阻害されるが、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、デルマタン、デルマタン硫酸等の低硫酸化若しくは非硫酸化CS/DS鎖又はケラタン硫酸により阻害されなかった。対照的に、ビオチン化バーシカンとCD44−Igとの結合は、低硫酸化CS/DS鎖、非硫酸化CS/DS鎖等の調べられた全CS/DS鎖により阻害されたが、ケラタン硫酸により阻害されなかった。
【0083】
これらの結果は、硫酸化が、バーシカンのCS/DS鎖と、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの相互作用に重要な役割を果たすが、バーシカンのCS/DS鎖とCD44との相互作用には役割を果たさないという前記実施例1の結果と一致した。
【0084】
実施例3
バーシカンのグリコサミノグリカン構造をキャラクタライズした。
【0085】
(1)バーシカン由来グリコサミノグリカンの調製
プロナーゼ〔90U以上 カルビオケム(Calbiochem)社製〕を含む溶液(組成:5mM Tris−HCl,5mM CH3 COONa,1mMCaCl2 ,1mM MgCl2 ,pH8.0) 2ml中、精製バーシカン(80μg)を37℃で48時間インキュベートした。インキュベーション後、得られた産物に、0.5mlの溶液(組成:1M NaBH4 、5M NaOH)を添加し、37℃でインキュベートした。24時間インキュベーション後、得られた産物に0.5mlのCH3 COOHを添加することにより、反応を終了させ、バーシカン由来グリコサミノグリカンを含む反応混合物を得た。得られた反応混合物について、Spectra/Por透析膜〔分子量排除限界3,500;ザ スペクトラムコーポレーション(The Spectrum Co.)社製〕を用いて、蒸留水に対して透析し、バーシカン由来グリコサミノグリカンを得た。
【0086】
(2)バーシカン由来グリコサミノグリカンの高感度二糖組成解析
コンドロ−6−スルファターゼ〔0.31U/ml 緩衝液B(トリエチルアミンでpH7.0に調整された3% 酢酸)〕の存在下又は非存在下、前記(1)で得られたバーシカン由来グリコサミノグリカンと、コンドロイチナーゼABC(0.38U/ml)とを、37℃で1時間インキュベートし、得られた産物を乾燥させ、二糖産物を得た。ついで、キノシタらの方法 [キノシタ(Kinoshita, A.) ら、Anal. Biochem., 269, 367−378 (1999)]に従って、前記二糖産物(0.1〜50nmol)と、誘導体化試薬混合物〔組成:ジメチルスルホキシド中、0.35M 2−アミノベンゾアミド(2−AB)、1.0M NaCNBH4 、30重量% 酢酸〕 5μlとを混合し、得られた混合物を、65℃で2時間インキュベートした。ついで、得られた産物を、クロロホルム:蒸留水(1:1)で分画し、誘導体化二糖を含む水層を回収した。
【0087】
得られた誘導体化二糖を含む水層について、既報 [フジモト(Fujimoto, T.)ら、Int. Immunol. 13, 359−366 (2001)] のように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により解析した。抽出物について、蛍光検出器を用いて330nmの励起波長及び420nmの発光波長のそれぞれをモニターした。結果を図3に示す。なお、図3中、0Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−0Sの溶出位置、4Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−4Sの溶出位置、6Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−6Sの溶出位置、diSD は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(2,6)Sの溶出位置、diSE は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(4,6)Sの溶出位置、UA2Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−UA2Sの溶出位置を示す。また、二糖標品の略称の対応表を表2に示す。
【0088】
【表2】
Figure 2004059506
【0089】
図3のパネルAに示されるように、コンドロイチナーゼABCにより処理されたバーシカン由来グリコサミノグリカンについては、二糖標品の溶出位置に対応する5つのピークが検出された。また、図3のパネルBに示されるように、コンドロ−6−スルファターゼとコンドロイチナーゼABCとにより処理されたバーシカン由来グリコサミノグリカンについては、ΔDi−0S、ΔDi−UA−2S及びΔDi−4Sに対応する3つのピークが検出され、図3のパネルAにおいて検出された5つのピークが、ΔDi−0S、ΔDi−6S、ΔDi−4S、ΔDi−di(2,6)S及びΔDi−di(4,6)Sであることが確認された。
【0090】
図3のパネルAにおけるΔDi−0S、ΔDi−6S、ΔDi−4S、ΔDi−di(2,6)S及びΔDi−di(4,6)Sのそれぞれのピーク面積は、0.8%、15.7%、77.6%、1.4%及び4.5%であった。二糖標品に対応しない小さい付加的なピーク(6.3%)が検出されたが、コンドロイチナーゼABCの代わりにコンドロイチナーゼACIIを用いて、同様の結果が、得られた。これらの結果により、バーシカンのグリコサミノグリカンが、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)を含み、主要なCS鎖と、コンドロイチナーゼACIIに耐性であるマイナーなDS鎖との混合物から構成されたヘテロポリマーであることが示唆された。
【0091】
実施例4
バーシカンは、接着分子だけでなく、特定のケモカインとも相互作用しうることが示されている [ヒロセ(Hirose, J.)ら、J. Biol. Chem., 276, 5228−5234 (2001)]。そこで、バーシカンとケモカインとの相互作用に対する硫酸化の必要性を検討した。
【0092】
(1)低硫酸化バーシカンの調製
10重量% ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640中100mM 塩素酸ナトリウムの存在下又は非存在下にACHN細胞を2日間培養した。馴化培地を取り出した後、無血清培地であるEX−CELL 610 HSF〔ジェイアールエイチ バイオサイエンス(JRH Bioscience)社製〕中、100mM 塩素酸ナトリウムの存在下又は非存在下に、細胞をさらに4日間培養した。馴化培地を回収し、10,000×gで15分間4℃でスピンして、塩素酸ナトリウム処理馴化培地及び塩素酸ナトリウム非処理馴化培地のそれぞれを得た。
【0093】
塩素酸ナトリウム処理馴化培地又は塩素酸ナトリウム非処理馴化培地と、20濁度減少単位/ml ヒアルロニダーゼ(Streptomyces hyalurolyticus)とを、37℃で4.5時間インキュベートした。その後、得られた産物のそれぞれと、抗D抗体(10μg)結合プロテインA−セファロースビーズ(10μlビーズ)とをインキュベートして、各馴化培地からバーシカンを沈澱させた。得られたビーズを洗浄し、該ビーズを、1単位/ml コンドロイチナーゼABCと1単位/ml コンドロイチナーゼACIIとの存在下、37℃で2時間をインキュベートした。その後、二糖産物を回収し、前記キノシタらの方法に従って、2−ABで、二糖産物を誘導体化した。得られた誘導体化二糖産物をHPLCで解析した。その結果を図4のパネルAに示す。なお、図4のパネルA中、0Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−0Sの溶出位置、4Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−4Sの溶出位置、6Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−6Sの溶出位置、diSD は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(2,6)Sの溶出位置、diSE は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(4,6)Sの溶出位置を示す。
【0094】
図4のパネルAに示されるように、塩素酸ナトリウム処理した馴化培地から得られたバーシカン由来グリコサミノグリカンの場合、ΔDi−0Sのみがバーシカン由来グリコサミノグリカンにおける主要ピーク(82.8%)として検出され、ΔDi−6S(7.2%)及びΔDi−4S(10.0%)は、マイナーピークとして検出され、ΔDi−di(2,6)S又はΔDi−di(4,6)は検出されなかった。したがって、塩素酸ナトリウム処理により、主に非硫酸化CS/DS鎖を生じる低硫酸化バーシカンを生じることがわかる。
【0095】
(2)サンドウィッチ型酵素結合免疫吸着定量法
得られた低硫酸化バーシカン及びインタクトなバーシカンのそれぞれと、ケモカインとの結合を、サンドウィッチ型酵素結合免疫吸着定量法で調べた。
【0096】
BSA(6μg/ml)、抗バーシカンモノクローナル抗体2B1(図4中、「2B1」;5μg/ml)、L−セレクチン−Ig(図4中、「L−Ig」;3μg/ml)、E−セレクチン−Ig(図4中、「E−Ig」;3μg/ml)、P−セレクチン−Ig(図4中、「P−Ig」;3μg/ml)、CD44−Ig(3μg/ml)、二次リンパ様組織ケモカイン(図4中、「SLC」;3μg/ml)、C末端切形型二次リンパ様組織ケモカイン(図4中、「SLC−T」;3μg/ml)、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10(図4中、「IP−10」;3μg/ml)、血小板因子4(図4中、「PF4」;6μg/ml)、間質細胞由来因子−1β(図4中、「SDF−1β」;6μg/ml)又は間質細胞由来因子−1α(図4中、「SDF−1α」;6μg/ml)で、96ウェル平底マイクロタイタープレートのウェルをコートし、ついで、3重量% BSAを含むリン酸緩衝化生理的食塩水で、該ウェルをブロックした。なお、前記C末端切形型二次リンパ様組織ケモカインとして、メリッサ スウォープ−ウィリス博士〔ベルテックス ファーマシューティカル コーポレーション(Vertex Pharmaceutical Co.)により提供されたものを用いた。
【0097】
得られたプレート上のウェルに、塩素酸ナトリウム処理ACHN細胞の馴化培地又は塩素酸ナトリウム非処理ACHN細胞の馴化培地を添加し、1時間インキュベートした。前記緩衝液Aでウェルを洗浄した後、1μg/ml ビオチン化抗D抗体を添加し、1時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンとBlue PhosTM基質とを用い、620nmにおける吸収を測定することにより、結合を測定した。結果を図4のパネルBに示す。なお、図4のパネルB中、黒バーは、非処理馴化培地由来バーシカンを用いた場合の結果を示し、斜線バーは、塩素酸ナトリウム処理馴化培地由来バーシカンを用いた場合の結果を示す。各バーは、4連の測定の平均±標準偏差を示す。
【0098】
図4のパネルBに示されるように、インタクトなバーシカンと低硫酸化バーシカンとの両方が、抗バーシカンモノクローナル抗体2B1及びCD44−Igに結合し、インタクトなバーシカンのみが、L−セレクチン−Ig及びP−セレクチン−Igと結合し、図1に示される結果と一致した。
【0099】
また、図4のパネルBに示されるように、インタクトであるが低硫酸化でないバーシカン(黒バー)は、顕著に、二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導タンパク質−10、血小板因子4、間質細胞由来因子−1β等のケモカインと結合した。したがって、バーシカンのCS/DS鎖のにおける硫酸化が、ケモカインと相互作用するのに必要であることが示唆された。
【0100】
さらに、図4のパネルBに示されるように、インタクト及び低硫酸化のいずれの型のバーシカンも、塩基性アミノ酸クラスターを含むC末端32アミノ酸を欠損した組換切形型二次リンパ様組織ケモカインとほとんど結合せず、あったとしてもごくわずかしか結合しなかった。また、インタクト及び低硫酸化のいずれの型のバーシカンも、間質細胞由来因子−1βのC末端4アミノ酸を天然に欠損した間質細胞由来因子−1αに結合しなかった。これらの結果により、バーシカンのCS/DS鎖が、二次リンパ様組織ケモカインのC末端領域及び間質細胞由来因子−1βのC末端領域のそれぞれと相互作用することが示唆された。
【0101】
実施例5
バーシカンとケモカインとの結合における過硫酸化CS/DS鎖の影響を調べた。
【0102】
BSA(5μg/ml)、抗バーシカンモノクローナル抗体2B1(5μg/ml)、CD44−Ig(7μg/ml)、L−セレクチン−Ig(3μg/ml)、P−セレクチン−Ig(3μg/ml)又はケモカイン(1μg/ml)で96ウェル平底マイクロタイタープレートのウェルをコートし、ついで、3重量% BSAを含むリン酸緩衝化生理的食塩水でブロックした。なお、前記ケモカインとして、二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10、血小板因子4、間質細胞由来因子−1β〔ペプロ テック(Pepro Tech)社製〕及び間質細胞由来因子−1α〔ペプロ テック(Pepro Tech)社製〕を用いた。
【0103】
得られたプレート上のウェル中、ビオチン化バーシカン(0.25μg/ml)を、100μg/mlの各グリコサミノグリカン(コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタンポリ硫酸及びコンドロイチン硫酸E)の存在下又は非存在下に、室温で2時間インキュベートした。その後、前記緩衝液Aでプレートを洗浄し、既報 [カワシマ(Kawashima, H.) ら、J. Biol. Chem., 275, 35448−35456 (2000)]のように、酵素結合免疫吸着定量法を行なった。アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンとBlue PhosTM基質とを用い、620nmにおける吸収を測定することにより、結合を測定した。結果を図5に示す。なお、図5中、横軸の表記は、図4と同様である。また、各レーン中、バー1は、グリコサミノグリカン非存在下における結果、バー2は、コンドロイチン、バー3は、コンドロイチン硫酸A、バー4は、コンドロイチンポリ硫酸、バー5は、デルマタンポリ硫酸、バー6は、コンドロイチン硫酸Eを示す。
【0104】
図5に示されるように、ビオチン化バーシカンと、二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10、血小板因子4、間質細胞由来因子−1β、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの結合のそれぞれは、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタンポリ硫酸、コンドロイチン硫酸E等の過硫酸化CS/DS鎖により同程度まで阻害された。また、前記に示したように、ビオチン化バーシカンとCD44−Igとの結合は、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸A、デルマタンポリ硫酸及びコンドロイチン硫酸Eのそれぞれにより阻害されたが、コンドロイチンポリ硫酸の影響は、本実験の系で用いられた用量範囲において顕著でなかった。バーシカンと抗バーシカンモノクローナル抗体2B1との結合は、調べられたグリコサミノグリカンのいずれかの添加によっても、影響をうけなかった。すなわち、これらの結果により、CS/DS鎖の硫酸化が、ケモカインとの相互作用に必要とされ、GlcAβ1/IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)を含む過硫酸化CS/DS鎖が、ケモカインと相互作用することが示唆された。
【0105】
実施例6
BIAcoreTMバイオセンサー〔ビアコア エービー(BIAcore AB)社製〕を用いた表面プラズモン共鳴により、種々のCS/DS鎖と、L−セレクチン、P−セレクチン、CD44及びケモカインのそれぞれとの相互作用の親和性速度論を調べた。
【0106】
全実験を25℃で行なった。洗浄及び解離段階において、ランニングバッファーとして、緩衝液C(20mM HEPES−NaOH,0.15M NaCl,1mM CaCl2 ,1mM MgCl2 ,pH6.8)を用いた。
【0107】
まず、アミンカップリングキット〔アマシャム−バイオサイエンス(Amersham−Bioscience)社製〕を用い、製造者により提供された説明書に従って、一級アミン基を介して、約1.8−2.0キロレゾナンス単位(1キロレゾナンス単位=1ng/mm2 )のストレプトアビジンをB1センサーチップに共有結合的に固定化した。残りの活性化基を、150μlの1M エタノールアミン−HCl(pH8.5)でブロックした。ついで、サディール(Sadir) らの方法 [J. Biol. Chem., 276, 8288−8296 (2001)]に従って、EZ−linkTM ビオチン−LC−ヒドラジド〔ピアス(Pierce)社製〕を用い、還元末端でビオチン化した各グリコサミノグリカンを、約150レゾナンス単位の固定化レベルを得るように、センサーチップ表面にインジェクトした。
【0108】
種々の濃度の二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10、間質細胞由来因子−1β、単量体L−セレクチン〔ジェンザイム−テック(Genzyme−Techne)社製〕、単量体P−セレクチン〔ジェンザイム−テック(Genzyme−Techne)社製〕及び単量体CD44を、グリコサミノグリカン結合センサーチップに流速30μl/分で0〜90秒間、連続的にインジェクトし、ついで、ランニングバッファーをインジェクトすることにより、結合アッセイを行なった。レゾナンス単位での応答を時間の関数として記録した。
【0109】
なお、センサーチップ表面について、ケモカイン又はCD44を用いた場合、300μlの1M NaClで再生し、セレクチンを用いた場合、300μlの1M NaClと、つづく100μlの50mM EDTA(pH8.0)とで再生した。センサーチップ表面を再生した結果、ベースラインにおける顕著な変化は、観察されなかった。
【0110】
単一部位結合モデルを用いたBIAevaluation 3.0 software〔ファルマシアバイオセンサー(Pharmacia Biosensor)社製〕により、親和性速度論的パラメーターを決定した。図6に、固定化グリコサミノグリカンと、ケモカイン、L−セレクチン及びCD44それぞれとの相互作用を記録したBIAcoreのセンサーグラムを示し、該相互作用の速度論的パラメータ〔会合速度定数(kon)、解離速度定数(koff )及び平衡解離定数(kd )〕を、表3に示す。なお、図6及び表3中、SLCは、二次リンパ様組織ケモカインを、IP−10は、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10を、SDF−1βは、間質細胞由来因子−1βを示し、CS Eは、コンドロイチン硫酸Eを、CS Aは、コンドロイチン硫酸Aを示す。また、表3中、単量体CD44とコンドロイチン硫酸Eとの間の相互作用のKd 値は、平衡時の結合量から算出された値であり、CD44とヒアルロン酸との間の相互作用のKd 値は、CD44−Igを用いて算出された値である。
【0111】
【表3】
Figure 2004059506
【0112】
図6に示されるように、二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10、間質細胞由来因子−1β、単量体L−セレクチン及び単量体P−セレクチンは、センサーチップ表面に固定化されたコンドロイチン硫酸Eに、用量依存的に結合した。同様の親和性速度論が、コンドロイチン硫酸Eの代わりに、コンドロイチンポリ硫酸又はデルマタンポリ硫酸を用いた場合に観察された。対照的に、セレクチン及びケモカインは、コンドロイチン硫酸A又はコンドロイチンと相互作用しなかった。これらの結果は、図2及び図5に示される前記阻害アッセイの結果と一致した。
【0113】
さらに、表3に示された親和性速度論的パラメータの評価により、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインが、GlcAβ1/IdoAα1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)を含む過硫酸化CS/DS鎖と高い親和性(Kd 21.1〜293nM)で相互作用することが示された。対照的に、CD44とグリコサミノグリカンとの相互作用は、セレクチンとグリコサミノグリカンとの相互作用及びケモカインとグリコサミノグリカンとの相互作用とはかなり異なることが示された。また、表3の結果より、単量体CD44が、低い親和性(Kd 85.2〜129μM)でコンドロイチン硫酸A又はコンドロイチンと結合することが示された。単量体CD44は、コンドロイチン硫酸Eに弱く(Kd 211μM)結合し、コンドロイチンポリ硫酸又はデルマタンポリ硫酸には結合しなかった。調べられたCS/DS鎖は、いずれも、単量体E−セレクチン、C末端切形型二次リンパ様組織ケモカイン及び間質細胞由来因子−1αと、ほとんど相互作用せず、あったとしてもごくわずかしか相互作用しなかった。一方、表3に示されるように、過硫酸化CS/DS鎖は、L−セレクチン又はP−セレクチンの場合と同様に、高い親和性で特定のケモカインと相互作用した。過硫酸化CS/DS鎖とケモカイン(二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導タンパク質−10、間質細胞由来因子−1β)との高親和性結合により、これらのケモカインが、イン・ビボで過硫酸化CS/DS鎖により、直ちにトラップされるであろうことが示唆される。この仮定は、過硫酸化CS/DS−ケモカイン複合体形成が、速い会合速度(0.864〜4.15×104 −1−1)により特徴付けられることを示した表面プラズモン共鳴解析による速度論解析により支持される。
【0114】
従来、単量体L−セレクチンは、低い親和性(Kd =108μM)で、非常に速い会合速度(≧105 −1−1)及び解離速度(≧105 −1)で、固定化されたグリコシル化依存性細胞接着分子−1(GlyCAM−1)と結合することが報告されている [ニコルソン(Nicholson, M. W.)ら、J. Biol. Chem., 273, 763−770 (1998)]。また、単量体P−セレクチンは、相対的に高い親和性(Kd 〜300nM)で、速い会合速度(4.4×106 −1−1)及び解離速度(1.4s−1)で、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1と結合することが報告されている [メータ(Mehta, P.) ら、J. Biol. Chem., 273, 32506−32513 (1998)]。これらの性質は、速い接着と脱接着とにより媒介されるセレクチン媒介ローリング接着動態に重要であると推定されている。
【0115】
しかしながら、驚くべきことに、図6及び表3に示されるように、表面プラズモン共鳴解析により、過硫酸化CS/DS鎖と、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの結合親和性は、既知リガンドと、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの結合親和性よりも高いことが示された。したがって、適切なCS/DS鎖が局所的に発現される場合、表3に示されるような遅い解離速度での、過硫酸化CS/DS鎖と、L−セレクチン及びP−セレクチンのそれぞれとの高親和性結合が、異なるローリング速度での白血球のローリング相互作用及び/又は静的接着相互作用を可能にすると考えられる。
【0116】
実施例7
ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼによる消化により、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C及びコンドロイチン硫酸Eのそれぞれから各種オリゴ糖断片を調製し、L−セレクチン、P−セレクチン、CD44及びケモカインのそれぞれと直接的に相互作用する構造単位を調べた。
【0117】
(1) コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C及びコンドロイチン硫酸Eのいずれか由来のストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼ結合ビオチン化オリゴ糖断片の調製
イカ軟骨由来コンドロイチン硫酸E(1mg)を、0.6mg  ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ〔1,800単位;シグマ(Sigma)社製〕を含む溶液(組成:50mM 酢酸ナトリウム、133mM NaCl及び0.04% ゼラチン,pH5.0)に懸濁した。得られた反応液を、37℃で全68.5時間インキュベートして、コンドロイチン硫酸E由来オリゴ糖断片を含む消化産物を得た。なお、インキュベーション開始から、24時間経過時及び45.5時間経過時に、追加の2mg(6,000単位)の酵素を反応液に添加した。
【0118】
また、クジラ軟骨由来コンドロイチン硫酸A及びサメ軟骨由来コンドロイチン硫酸Cのそれぞれを、0.6mg ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ〔1,800単位;シグマ(Sigma)社製〕を含む溶液(組成:50mM 酢酸ナトリウム,pH5.0)に懸濁した。得られた各反応液を、37℃で24時間インキュベートし、コンドロイチン硫酸A由来オリゴ糖断片を含む消化産物及びコンドロイチン硫酸C由来オリゴ糖断片を含む消化産物のそれぞれを得た。
【0119】
得られた消化産物のそれぞれを、16mM〜1M NaH2 PO4 のリニアグラジェントによるアミン結合シリカPA−03カラムを用いたHPLCにより分画した。得られた各画分を、蒸留水で平衡化したセファデックスG−25カラム〔1×30cm;アマシャム−バイオサイエンス(Amersham−Bioscience)社製〕に供した。210nmにおける吸収により、溶出をモニターした。その結果、図7のパネルAに示される画分aと画分cと画分e−1と画分e−2とが得られた。
【0120】
(2)オリゴ糖断片の炭化水素構造の解析
画分a、画分c、画分e−1及び画分e−2のそれぞれを、コンドロイチナーゼACII(0.3単位/ml)で37℃1時間消化し、得られた消化産物を2−ABで誘導体化した。ついで、得られた各産物について、16〜606mM NaH2 PO4  45分間のリニアグラジェント溶出によるアミン結合シリカPA−03カラムを用いたHPLCで解析した。
【0121】
図7のパネルBに示すように、コンドロイチナーゼACIIで処理した画分e−1について、Di−di(4,6)SとΔDi−4Sとが、約1:1のモル比で検出された。これらのピークは、コンドロイチナーゼACIIとコンドロ−6−スルファターゼとの混合物による処理後、それぞれ、Di−4S及びΔDi−4S位置にシフトし、コンドロイチナーゼACIIとコンドロ−6−スルファターゼとコンドロ−4−スルファターゼとの混合物による処理後、さらに、それぞれ、Di−0S及びΔDi−0S位置にシフトした。したがって、これらの結果により、画分e−1が、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4−O−スルフェート)の構造に相当することが示唆され、かかる構造は、マススペクトルからも支持された。
【0122】
同様に、画分aの構造は、GlcAβ1−3GalNAc(4−O−スルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4−O−スルフェート)に相当し、画分cの構造は、GlcAβ1−3GalNAc(6−O−スルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(6−O−スルフェート)に相当し、画分e−2の構造は、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)β1−4GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)に相当することが決定された。
【0123】
以上の結果を、図7のパネルCに、オリゴ糖の構造の模式図として示す。図7のパネルC中、黒三角は、GlcA、斜線丸は、GalNAc、4Sは、4−O−硫酸化、6Sは、6−O−硫酸化、β3は、β1−3結合、β4は、β1−4結合を表わす。
【0124】
(3)オリゴ糖断片と、L−セレクチン、P−セレクチン、CD44及びケモカインのそれぞれとの相互作用の解析
画分a、画分c、画分e−1及び画分e−2のそれぞれに含まれるオリゴ糖と、L−セレクチン、P−セレクチン、CD44及びケモカインのそれぞれとの相互作用を調べた。
【0125】
まず、ビオチン−LC−ヒドラジドにより、各オリゴ糖を還元末端においてビオチン化した。前記(2)で得られた画分a、画分c、画分e−1及び画分e−2のそれぞれに、125mM EZ−linkTMビオチン−LC−ヒドラジドとジメチルスルホキシド/酢酸(7:3)中1M NaCNBH3 とを添加した。得られた反応混合物を、3時間65℃でインキュベートし、ついで、37℃で12.5〜18.5時間インキュベートすることにより、オリゴ糖をビオチン化した。得られた各反応産物を、前記のようにセファデックスG−25カラムに供して、未反応のビオチン−LC−ヒドラジドを除去し、ビオチン化オリゴ糖を含む画分を回収した。ついで、得られた画分を、蒸発乾固した。
【0126】
得られたビオチン化オリゴ糖画分の一部を、コンドロイチナーゼACIIで消化し、ついで、得られた消化産物を2−AB誘導体化した。得られた産物を、HPLCにより解析した結果、還元末端由来不飽和二糖でなく、非還元末端由来二糖が検出された。したがって、約100%のオリゴ糖がビオチン化されたことが明らかとなった。
【0127】
ついで、16pmolの各ビオチン化オリゴ糖を含む画分の一部を、前記緩衝液A 0.5mlに溶解し、得られた各溶液と1μl(2pmol)のストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼ〔プロメガ(Promega)社製〕とを、4℃で一晩インキュベートした。
【0128】
得られた各産物を緩衝液Aで3倍に希釈し、得られた各溶液を、BSA(10μg/ml)、L−セレクチン−Ig(5μg/ml)、E−セレクチン−Ig(5μg/ml)、P−セレクチン−Ig(5μg/ml)、CD44−Ig(5μg/ml)、二次リンパ様組織ケモカイン(5μg/ml)、C末端切形型二次リンパ様組織ケモカイン(5μg/ml)、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10(10μg/ml)、血小板因子4(2.5μg/ml)、間質細胞由来因子−1β(5μg/ml)又は間質細胞由来因子−1α(5μg/ml)でコートされた96ウェル平底マイクロタイタープレート(コスターEIA/RIAプレートナンバー3690)のウェルに供した。Blue PhosTM基質を用い、620nmにおける吸収を測定することにより、結合を測定した。結果を図7のパネルDに示す。なお、図7のパネルD中、横軸の表記は、前記図4と同様である。また、各レーン中、バー1は、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー2は、ビオチン化画分a結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー3は、ビオチン化画分c結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー4は、ビオチン化画分e−1結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー5は、ビオチン化画分e−2結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果を示す。
【0129】
図7のパネルDに示すように、興味深いことに、e−2画分のみがL−セレクチン−Ig、P−セレクチン−Ig、二次リンパ様組織ケモカイン、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10及び間質細胞由来因子−1βと結合したが、他は結合しなかった。e−1画分は、血小板因子4と穏やかに結合したが、他のケモカイン又はL−及びP−セレクチンとは結合しなかった。これらの結果により、繰り返しGlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)単位は、L−セレクチン、P−セレクチン及び調べられた多数のケモカインにより特異的に認識され、単独のGlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)は、恐らく血小板因子4との相互作用に十分であろうことが示された。
【0130】
図7に示されるように、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれが、繰り返しGlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)単位から構成された四糖と優先的に結合し、また、前記表3に示されるように、CD44が、非硫酸化コンドロイチン硫酸鎖又は低硫酸化コンドロイチン硫酸鎖と優先的に相互作用するため、GlcAβ1−3GalNAc(4,6−O−ジスルフェート)単位がグリコサミノグリカン中にクラスターとして存在する場合、恐らく、これらの単位が、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと相互作用すると思われる。また、GlcAβ1−3GalNAc(4−O−スルフェート)又はGlcAβ1−3GalNAc(6−O−スルフェート)を含む異なる構造が、CD44と相互作用すると思われる。
【0131】
実施例8
過硫酸化CS/DS鎖がケモカイン活性をも阻害するかどうかを調べた。L1.2/CCR7細胞(1×106 細胞/ml)を、Fura−2で負荷し、グリコサミノグリカン(100μg/ml)の存在下又は非存在下に、二次リンパ様組織ケモカイン(図8中、「SLC」)又はC末端切形型二次リンパ様組織ケモカイン(図8中、「SLC−T」)で刺激した。既報 [ヒロセ(Hirose, J.)ら、J. Biol. Chem., 276, 5228−5234 (2001)]のように、蛍光率を測定することにより、細胞内カルシウム濃度をモニターした。前記グリコサミノグリカンとして、コンドロイチン硫酸E(図8中、「CS E」)及びコンドロイチン硫酸A(図8中、「CS A」)を用いた。結果を図8に示す。なお、図8中、矢頭は、刺激を与えた時点を示す。
【0132】
図8に示されるように、二次リンパ様組織ケモカイン単独、又はコンドロイチン硫酸Aと共にプレインキュベートされた二次リンパ様組織ケモカインは、該二次リンパ様組織ケモカインのレセプターであるCCR7をトランスフェクトされたL1.2細胞における顕著なCa2+動員を誘導したが、コンドロイチン硫酸Eと共にプレインキュベートされた二次リンパ様組織ケモカインは、Ca2+動員を誘導しなかった。同様に、コンドロイチンポリ硫酸又はデルマタンポリ硫酸と共にプレインキュベートされた二次リンパ様組織ケモカインは、Ca2+動員を誘導しなかった。一方、C末端切形型二次リンパ様組織ケモカインにより誘導されたCa2+動員は、これらの過硫酸化CS/DS鎖のいずれによっても影響されなかった。これらの結果により、過硫酸化CS/DS鎖が、二次リンパ様組織ケモカインのC末端領域と相互作用することにより、二次リンパ様組織ケモカインの生理活性を阻害することが示唆された。
【0133】
また、図8に示されるように、これらのグリコサミノグリカンがケモカイン活性を阻害するため、過硫酸化CS/DS結合型のケモカインが、ケモカインレセプターのアゴニストとして機能せず、むしろ、過硫酸化CS/DS−ケモカイン複合体が、イン・ビボでのケモカインのリザーバーとして機能するであろうと考えられる。ケモカインと過硫酸化CS/DS鎖との相互作用において観察される遅い解離速度(2.78×10−4〜5.30×10−3−1)は、この考えを支持する。
【0134】
配列表フリーテキスト
配列番号:1は、CD44遺伝子増幅用プライマーの配列を示す。
【0135】
配列番号:2は、CD44遺伝子増幅用プライマーの配列を示す。
【0136】
【発明の効果】
本発明の糖化合物は、その製造の際、簡便に製造することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の糖化合物によれば、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれとそのリガンドとの結合を調節することができ、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれに介される生物学的事象を調節することができ、該生物学的事象が発症に関連する疾患の症状を改善することができ、該疾患の治療又は予防剤のためのリード化合物を提供することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の治療又は予防剤によれば、炎症性疾患、アレルギー性疾患、癌転移、心筋障害、多臓器不全等の疾患の症状を改善し、生体において高い親和性を呈するという優れた性質を発現するため、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の症状を改善することができるという優れた効果を奏する。
【0137】
【配列表】
Figure 2004059506
Figure 2004059506

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、バーシカン中のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸鎖と、L−セレクチン、P−セレクチン及びCD44のそれぞれとの相互作用における硫酸化の影響について、免疫沈降で調べた結果を示す図である。
【図2】図2は、バーシカンと、L−セレクチン、P−セレクチン及びCD44のそれぞれとの結合における過硫酸化CS/DS鎖の影響について、酵素結合免疫吸着定量法で調べた結果を示す図である。図2中、十字は、ケラタン硫酸、白三角は、コンドロイチン、白四角は、コンドロイチン硫酸A、白丸は、コンドロイチンポリ硫酸、黒三角は、デルマタン、黒四角は、デルマタン硫酸、黒丸−実線は、デルマタンポリ硫酸、黒丸−点線は、コンドロイチン硫酸Eを示す。また、図2中、パネルAは、バーシカンとL−セレクチンとの結合に関する結果である、パネルBは、バーシカンとP−セレクチンとの結合に関する結果である、パネルCは、バーシカンとCD44との結合に関する結果である。
【図3】図3は、バーシカン由来グリコサミノグリカンの二糖組成を示す図である。パネルAは、コンドロイチナーゼABCにより処理し、2−アミノベンズアミド(2−AB)で誘導体化されたバーシカン由来グリコサミノグリカンの二糖組成解析の結果を示し、パネルBは、コンドロ−6−スルファターゼとコンドロイチナーゼABCとにより処理し、2−ABで誘導体化されたバーシカン由来グリコサミノグリカンの二糖組成解析の結果を示す。また、図3中、0Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−0S、4Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−4S、6Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−6S、diSD は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(2,6)S、diSE は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(4,6)S、UA2Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−UA2Sの溶出位置を示す。
【図4】図4は、バーシカンとケモカインとの相互作用における硫酸化の影響を調べた結果を示す図である。パネルAは、2−アミノベンズアミドで誘導体化した産物の二糖組成を示し、0Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−0S、4Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−4S、6Sは、2−AB−誘導体化ΔDi−6S、diSD は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(2,6)S、diSE は、2−AB−誘導体化ΔDi−di(4,6)Sの溶出位置を示す。パネルBは、バーシカンとケモカインとの相互作用における硫酸化の影響について、酵素結合免疫吸着定量法で調べた結果を示し、BSAは、ウシ血清アルブミン、2B1は、抗バーシカンモノクローナル抗体2B1、L−Igは、L−セレクチン−Ig、E−Igは、E−セレクチン−Ig、P−Igは、P−セレクチン−Ig、SLCは、二次リンパ様組織ケモカイン、SLC−Tは、C末端切形型二次リンパ様組織ケモカイン、IP−10は、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10、PF4は、血小板因子4、SDF−1βは、間質細胞由来因子−1β、SDF−1αは、間質細胞由来因子−1αを示す。パネルBにおける各バーは、4連の測定の平均±標準偏差を示し、黒バーは、非処理馴化培地由来バーシカン、斜線バーは、塩素酸ナトリウム処理馴化培地についての結果である。各バーは、4連の測定の平均±標準偏差を示す。
【図5】図5は、バーシカンとケモカインとの結合における過硫酸化CS/DS鎖の影響について、酵素結合免疫吸着定量法で調べた結果を示す図である。横軸の表記は、図4と同様である。また、各レーン中、バー1は、グリコサミノグリカン非存在下における結果、バー2は、コンドロイチン、バー3は、コンドロイチン硫酸A、バー4は、コンドロイチンポリ硫酸、バー5は、デルマタンポリ硫酸、バー6は、コンドロイチン硫酸Eを示す。各バーは、3連の測定の平均±標準偏差を示す。
【図6】図6は、固定化グリコサミノグリカンと、ケモカイン、L−セレクチン及びCD44それぞれとの相互作用を記録したBIAcoreのセンサーグラムを示す。図6中、SLCは、二次リンパ様組織ケモカインを、IP−10は、γ−インターフェロン誘導性タンパク質−10を、SDF−1βは、間質細胞由来因子−1βを示し、CS Eは、コンドロイチン硫酸Eを、CS Aは、コンドロイチン硫酸Aを示す。図6中、共鳴単位での応答を時間の関数として記録した。
【図7】図7は、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれと相互作用する断片の構造を同定した結果を示す図である。パネルAは、コンドロイチン硫酸A(図中、CS A)、コンドロイチン硫酸C(図中、CS C)及びコンドロイチン硫酸E(図中、CS E)のそれぞれのヒアルロニダーゼ消化産物のHPLCによるクロマトグラムを示す。パネルBは、画分a、画分c、画分e−1及び画分e−2のそれぞれの二糖組成を示す。パネルCは、画分a、画分c、画分e−1及び画分e−2のそれぞれの構造の模式図であり、黒三角は、GlcA、斜線丸は、GalNAc、4Sは、4−O−硫酸化、6Sは、6−O−硫酸化、β3は、β1−3結合、β4は、β1−4結合を表わす。パネルDは、画分a、画分c、画分e−1及び画分e−2のそれぞれに含まれるオリゴ糖と、L−セレクチン、P−セレクチン、CD44及びケモカインのそれぞれとの相互作用を調べた結果を示し、横軸の表記は、前記図4と同様である。また、各レーン中、バー1は、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー2は、ビオチン化画分a結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー3は、ビオチン化画分c結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー4は、ビオチン化画分e−1結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果、バー5は、ビオチン化画分e−2結合ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼを用いた場合の結果を示す。各バーは、4連の測定の平均±標準偏差を示す。
【図8】図8は、ケモカイン活性に対する過硫酸化CS/DS鎖の影響を調べた結果を示す図である。図8中、SLCは、二次リンパ様組織ケモカイン、SLC−Tは、C末端切形型二次リンパ様組織ケモカイン、CS Eは、コンドロイチン硫酸E、CS Aは、コンドロイチン硫酸Aを示す。また、図8中、矢頭は、刺激を与えた時点を示す。

Claims (3)

  1. 一般式(I):
    Figure 2004059506
    (式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
    又は
    一般式(II):
    Figure 2004059506
    (式中、R5 、R6 、R7 及びR8 は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示す)
    で表わされる糖化合物。
  2. 一般式(III) :
    Figure 2004059506
    (式中、R9 及びR10は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示し、mは、3又は4である)
    又は
    一般式(IV):
    Figure 2004059506
    (式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又はスルホン酸基を示し、nは、3又は4である)
    で表わされる糖化合物。
  3. 請求項1又は2記載の糖化合物を有効成分として含有してなる、L−セレクチン、P−セレクチン及びケモカインのそれぞれにより介される生物学的事象が発症に関連する疾患の治療又は予防剤。
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