次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、感光体に対して接触又は近接して設けられた直流成分に交流成分を重畳した電圧を印加することによって生じる放電を利用して感光体を帯電させる帯電装置を採用した画像形成装置において、感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層と、表面層とを順に有し、表面層は、一般式(1)
(式中、X
1は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。また、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基又は一般式
(式中、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基又はアラルキル基)
で示される官能基を表す。また、R
3は、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は一般式
(式中、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基又はアラルキル基)
で示される官能基を表す。また、aは、1〜4の整数であり、bは、1〜10の整数である。)
で示される重合性不飽和ポリシロキサン化合物を1種類以上含有する組成物を架橋することにより形成されていることにより、感光体の表面の化学的劣化による膜厚減少を抑制することが可能であることを見出した。上記方法によれば、帯電プロセス等で負荷される電気的ハザードによる化学的劣化に伴う膜厚減少を極めて少なくすることができると共に、クリーニングプロセス等で負荷される機械的ハザードに対する摩耗耐久性も高く、長期間に亘って出力画質に関わる欠陥が生じにくい感光体を提供することができる。
以下に、近接放電による感光体の表面の劣化メカニズムについて説明する。
図1に、近接放電による感光体の表面の膜厚の変化を測定した結果を示す。ここでは、感光体の表面の劣化状態を調べるために、感光体の表面に帯電部材のみを非接触状態で近接配置し、連続約150時間の帯電実験を行った。
実験に使用した感光体は、電荷輸送層にポリカーボネートを用いた有機感光体であり、感光体に対して当接する部材を全て取り除き、直流電圧に交流電圧を重畳した交番電圧が印加された非接触帯電ローラを用いて帯電を行った。この結果、感光体の表面の膜が削れる量(膜削れ量)が次第に多くなり、感光体の膜厚が次第に減少することがわかった。さらに、膜厚が減少した感光体を分析したところ、感光体を構成するポリカーボネートの分解生成物と考えられるカルボン酸等が検出されていることから、感光体の膜厚が減少するメカニズムとしては、以下のようなものが考えられる。
図2は、近接放電によって感光体の表面が劣化する状態を示す。ここでは、帯電ローラ21を感光体1の表面から微小なギャップを隔てて対向させた状態(図2(a)参照)を例にとって説明する。
近接放電を行うと、感光体1の表面の放電領域では、放電により発生した粒子(オゾン、電子、励起分子、イオン、プラズマ等)のエネルギーが感光体1の表面の電荷輸送層1aに照射される。このエネルギーが感光体1の表面を構成する分子に吸収され、電荷輸送層1aは、樹脂分子鎖の切断による分子量低下、高分子鎖の絡み合い度の低下、樹脂の蒸発等の化学的劣化を生じる。このような近接放電による感光体1の化学的劣化によって、感光体1の表面の電荷輸送層1aは、次第に膜厚を減少させる(図2(b)参照)と考えられる。
このように、従来から指摘され、改善が講じられてきた機械的摺擦による摩耗だけでなく、近接放電に起因する感光体の表面の化学的劣化によって膜が削れ、これにより感光体の静電容量低下、表面平滑性の低下等が起こる。さらに、放電による化学的劣化は、表面エネルギーの増加も引き起こすために、トナーと感光体との間の付着力の増加による転写・クリーニング不良が発生したり、ブレードによるトナークリーニング方式を適用した場合には、ブレードと感光体間の摩擦力が増加するために、感光体の摩耗量を増加させたりする等の悪影響が生じる。この結果、短期間の使用によるクリーニング不良、転写不良等の画像劣化が発生する等の問題が生じる。
なお、近接放電による感光体の表面の膜厚減少は、放電で生じる粒子のエネルギーによって発生すると考えられるため、ポリカーボネートに限らず、他の材質の感光体を用いた場合においても発生すると考えられる。
本発明においては、前述のように、近接放電による帯電方式を採用した画像形成装置に用いる感光体が、導電性支持体上に、少なくとも感光層と、表面層とを順に有し、表面層として少なくとも前述の一般式(1)で示される1種類以上の重合性不飽和ポリシロキサン化合物を架橋させることにより形成したものを用いる場合に、近接放電に起因する被帯電体の表面の化学的劣化を抑制し、化学的な表面層の摩耗を抑えると共に、機械的摺擦による摩耗も抑制することが可能となることを見出した。これにより、感光体の表面劣化・摩耗が少なく、高画質画像を長期に亘って安定に出力可能な画像形成装置を得ることができる。
以下、本発明の画像形成装置の実施形態を説明する。ただし、これらは、その一例であって、これに限定されるものではない。図3に、後述する各実施例にも共通する構成を有する本発明の画像形成装置の一例を示す。この画像形成装置は、本発明の感光体を備えている。
感光体1は、図示しない駆動装置により回転駆動され、その表面が近接帯電方式の帯電装置2の帯電ローラ21により所定の極性に帯電される。帯電された感光体1の表面は、露光装置3によって露光され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置4から感光体1の表面に供給される現像剤としてのトナーにより現像されて、トナー像として可視像化される。
一方、図示しない給紙部からは、記録媒体としての転写紙が感光体1に向けて給送される。この転写紙には、感光体1に対向配置されている転写装置5によって感光体1上のトナー像が転写紙上に転写される。トナー像が転写された転写紙は、感光体1から分離された後、転写材搬送経路9に沿って定着装置6に搬送されて、トナー像が定着される。転写紙にトナー像を転写した後の感光体1上に残留している残留トナーとしての転写残トナーは、クリーニング装置7によって感光体1上から除去される。また、転写残トナーが除去された後の感光体1の表面の残留電荷は、除電装置8により除去される。このようにして、感光体1は、繰り返し使用される。
また、本実施形態の画像形成装置では、感光体1、帯電装置2、現像装置4及びクリーニング装置7が一体に構成され、画像形成装置本体から着脱可能なプロセスカートリッジとして構成されている。
次に、画像形成装置に用いる帯電装置2について説明する。この帯電装置2は、近接放電を用いて感光体1を帯電する。近接放電を用いて感光体1を帯電する方法としては、回動可能なローラ状の帯電部材(以下、帯電ローラという)21を感光体1に接触させて配置する接触帯電方式と、帯電ローラ21を感光体1に非接触に配置する非接触帯電方式とがある。本実施形態においては、非接触帯電方式を用いている。
本発明は、接触帯電方式にも適用できるが、接触帯電方式においては、感光体1の表面との接触性を向上させ、かつ感光体1に機械的ストレスを与えない弾性部材を用いることが好ましい。しかし、感光体1の表面に直接接触することから、機械的耐久性に乏しい弾性部材を用いた場合は、帯電ローラ21に摩耗や傷が生じ、長期に亘って均一に帯電することができない等の問題が発生することがある。このため、非接触帯電方式を採用する方が高耐久化には有利である。
図4に、非接触帯電方式の帯電装置の一例を示す。本実施形態の画像形成装置に用いられる帯電装置2の説明図である。
帯電ローラ21は、軸部21aとローラ部21bとからなる。ローラ部21bは、軸部21aの回転によって回動可能であり、感光体1の表面のうち、画像が形成される画像形成領域11に対向する部分は、感光体1と非接触である。帯電ローラ21は、その長手方向(軸方向)の寸法が画像形成領域よりも少し長く設定されており、その長手方向の両端部にスペーサ22を設けている。これら2つのスペーサ22を感光体1の表面の両端部の非画像形成領域12に当接させることによって、感光体1とローラ部21bとの間に微小なギャップ14を形成している。ギャップ14は、ローラ部21bと感光体1との最近接距離であり、1〜100μmに維持できるように構成されている。ギャップ14は、10〜80μmであることが好ましく、30〜65μmがさらに好ましく、本実施形態の帯電装置2では、50μmに設定した。また、軸部21aをスプリングからなる加圧バネ15によって感光体1側に加圧している。これにより、ギャップ14を精度よく維持することができる。また、帯電ローラ21は、スペーサ22を介して感光体1の表面に連れ回って回転する。
帯電ローラ21には、帯電用の電源16を接続している。これにより、感光体1の表面とローラ部21bの表面との間のギャップ14での近接放電により、感光体1の表面を均一に帯電する。印加電圧としては、直流電圧に交流電圧を重畳し、使用する。印加電圧として、直流電圧に交流電圧を重畳させた交番電圧を使用すると、ギャップ14の変動による帯電電位のばらつき等の影響が抑制されて均一な帯電が可能となる。本実施形態においては、直流成分である直流電圧に交流成分である交流電圧を重畳した交番電圧を用いている。
帯電ローラ21は、円柱状を呈する導電性支持体としての芯金と、芯金の外周面上に形成された抵抗調整層を有する。帯電ローラ21の表面は、硬質であることが望ましい。ローラ部材としては、ゴム部材も使用できるが、ゴム部材のように変形しやすい部材であると、感光体1とのギャップ14を均一に維持することが困難となり、作像条件によっては帯電ローラ21の中央部のみが感光体1の表面に突発的に接触する可能性がある。帯電ローラ21は、非接触帯電方式を使用する場合には、たわみが少ない硬質の部材が望ましい。
表面が硬質な帯電ローラ21の具体例としては、例えば、抵抗調整層を高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びその共重合体等)により形成し、抵抗調整層の表面を硬化剤により硬化皮膜処理されたものが挙げられる。また、硬化皮膜処理は、例えば、イソシアネート含有化合物を含む処理溶液に抵抗調整層を浸漬させることにより行われるが、抵抗調整層の表面に改めて硬化処理皮膜層を形成することにより行われてもよい。本実施形態では、帯電ローラ21の直径を10mmとした。
次に、本発明に用いられる感光体について説明する。
本実施形態の感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層、表面層が順に積層されてなることを特徴とする。また、必要に応じて、導電性支持体上に下引き層、電荷ブロッキング層等の機能性層を設けてもよい。
本発明の感光体の表面層は、一般式(1)
(式中、X
1は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。また、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基又は一般式
(式中、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基又はアラルキル基)
で示される官能基を表す。また、R
3は、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は一般式
(式中、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜4のアルキル基、アリール基又はアラルキル基)
で示される官能基を表す。また、aは、1〜4の整数であり、bは、1〜10の整数である。)
で示される1種類以上の重合性不飽和ポリシロキサン化合物を含有する組成物を架橋することにより形成されている。これにより、3次元の網目構造が形成され、架橋度が高い高硬度表面層が得られ、高い耐摩耗性が得られる。また、このような表面層は、近接放電による電気的ハザード耐久性が高く、摩耗減少量が少ない。この結果、長期間の使用によっても感光体の膜厚減少量が少なく、電気特性の変動が少ない感光体を提供することができる。なお、重合性不飽和ポリシロキサン化合物は、ラジカル重合性を有することが好ましい。
上記の重合性不飽和ポリシロキサン化合物中のアルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれの形態であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。また、アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。トナーのクリーニング性や転写性を考慮した場合、感光体の表面エネルギーが低いことが好ましいことから、シロキサン骨格に結合する炭化水素基は、炭素数が少ないことが好ましい。アルキル基であれば、例えば、メチル基、エチル基が好ましい。
上記の重合性不飽和ポリシロキサン化合物の具体例としては、化学構造式
本発明において、表面層を形成する際に、重合性不飽和ポリシロキサン化合物を含有する組成物は、シロキサン骨格を有さない重合性化合物を含有することが好ましい。このような組成物を架橋することにより、表面層の機械的耐久性を向上させることができる。
本発明において、シロキサン骨格を有さない重合性化合物とは、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有さず、且つ、重合性官能基を有する化合物を意味する。重合性官能基は、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合が可能な官能基であることが好ましい。
また、優れた機械的耐久性を有する表面層を形成するためには、上記重合性化合物は、重合性官能基を3個以上有することが好ましい。重合性官能基が2個以下の重合性化合物を重合性不飽和ポリシロキサン化合物と併用した場合には、架橋密度が小さくなり、所望の機械的耐久性が得られないことがある。
重合性官能基としては、1−置換エチレン型官能基、1,1−二置換エチレン型官能基が挙げられる。
一置換エチレン型官能基としては、一般式
CH2=CH−X1−
(式中、X1は、単結合、置換若しくは無置換のフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換若しくは無置換のアルケニレン基、カルボニル基、オキシカルボニル基、一般式
−CONR−
(式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)
で示される官能基又はチオ基を表す。)
で示される官能基が挙げられる。
一置換エチレン型官能基の具体例としては、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
1,1−二置換エチレン型官能基としては、一般式
CH2=CY−X2−
(式中、Yは、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、一般式
−COOR1
(式中、R1は、水素原子、置換若しくは無置換のメチル基、エチル基等のアルキル基、置換若しくは無置換のベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)
で示される官能基又は一般式
−CONR2R3
(式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のメチル基、エチル基等のアルキル基、置換若しくは無置換のベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)
で示される官能基を表す。また、X2は、前述の一置換エチレン型官能基におけるX1で挙げられている官能基又はアルキレン基を表す。ただし、Y及びX2の少なくとも一方は、オキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基及び芳香族環由来の官能基である。)
で示される官能基が挙げられる。
1,1−二置換エチレン型官能基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、重合性官能基におけるX1、X2及びYが置換される官能基としては、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの重合性官能基の中では、特に、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基を3個以上有する化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハロゲン化物、アクリル酸エステル等を用いて、エステル化反応又はエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、重合性官能基を3個以上有する化合物の重合性官能基は、同一でも異なっていてもよい。
シロキサン骨格を有さない3官能以上の重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
また、シロキサン骨格を有さない3官能以上の重合性化合物は、表面層中に緻密な架橋を形成するために、官能基数に対する分子量の比は、250以下であることが望ましい。この比が250より大きい場合、表面層は、柔らかく耐摩耗性が低下することがある。このため、上記例示したEO、PO、カプロラクトン等の変性基を有する化合物のうち、長い変性基を有する化合物を単独で用いることは好ましくない。
本発明において、表面層を形成する際に、重合性不飽和ポリシロキサン化合物を含有する組成物は、電荷輸送性材料を含有することが好ましい。このとき、電荷輸送性材料としては、重合性官能基の有無に関わらず、用いることができるが、表面層の架橋密度を大きくし、優れた機械的耐久性を得るためには、重合性官能基を有する電荷輸送性材料を用いることが好ましい。
ここで、重合性官能基を有さない電荷輸送性材料とは、電荷輸送性能を有する物質であり、以下に示すような正孔輸送物質と電子輸送物質が挙げられる。
電子輸送物質としては、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、ジフェノキノン誘導体等が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いることができる。
正孔輸送物質としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等の公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いることができる。
また、重合性官能基を有する電荷輸送性材料とは、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造及び/又は縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送性構造を有しており、且つ重合性官能基を有する化合物を意味する。重合性官能基は、ラジカル重合性を有することが好ましく、具体的には、前述の重合性化合物で示したものが挙げられ、特に、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
また、重合性官能基を有する電荷輸送性材料は、2官能以上であってもよいが、膜質及び静電特性の面から、1官能であることが好ましい。これは、2官能以上の電荷輸送性材料を用いた場合、複数の結合で架橋構造中に固定されるが、電荷輸送性構造が嵩高いため、架橋構造に歪みが発生し、表面層の内部応力が高くなり、キャリア付着等でクラックや傷が発生することがあるためである。表面層の膜厚が5μm以下である場合、特に問題とはならないが、5μmを超える表面層を形成した場合、架橋直後にクラックが発生することがある。
また、静電的特性においても、2官能以上の電荷輸送性材料を用いた場合、複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップにより感度が低下したり、残留電位が上昇したりすることがある。このように、電気的特性が劣化すると、画像濃度が低下したり、文字の細りが起こったりする。このため、1官能の電荷輸送性材料を用いて、架橋構造中にペンダント状に固定することが好ましく、クラックや傷の発生を抑制し、静電的特性を安定化することができる。
重合性官能基を有する電荷輸送性材料は、電荷輸送性構造として、トリアリールアミン構造を有することが好ましい。また、重合性官能基を有する電荷輸送性材料は、電荷輸送性構造を1個有することが好ましく、一般式(2)
(式中、R
10及びR
11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、一般式
−COOR
12
(式中、R
12は、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。)
で示される官能基、ハロゲン化カルボニル基又は一般式
−CONR
13R
14
(式中、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアラルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。)
で示される化合物を表す。また、Ar
1、Ar
2及びAr
5は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリーレン基を表し、Ar
3、Ar
4、Ar
6及びAr
7は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアリール基を表す。また、Xは、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基、オキシ基、チオ基又はビニレン基を表す。Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。また、m及びnは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。)
で示される化合物であることが好ましい。このような化合物を用いると、感度、残留電位等の電気的特性を良好に持続することができる。
以下に、一般式(2)又は(3)で示される化合物について、具体的に説明する。
R10及びR11の置換基の中で、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、これらは、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。中でも、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Ar3、Ar4、Ar6及びAr7としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基は、環を形成する炭素数が18個以下であることが好ましく、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基又は9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等由来の1価基が挙げられる。
また、Ar3、Ar4、Ar6及びAr7は、例えば、以下に示すような置換基を有するアリール基であってもよい。
(1)ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基等。
(2)炭素数1〜12、好ましくは、炭素数1〜8、さらに好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン基又は炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。)。具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)(2)で定義されるアルキル基を有するアルコキシ基。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)フェニル基、ナフチル基等のアリール基を有するアリールオキシ基(炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン基で置換されていてもよい。)具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)一般式
−NR1R2
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、(2)で定義したアルキル基又はアリール基を表す。アリール基は、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基を表し、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン基で置換されていてもよい。また、R1及びR2は、共同で環を形成していてもよい)
で示される官能基。具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジトリールアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)アルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基。具体的には、メチレンジオキシ基、メチレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
Ar1、Ar2及びAr5としては、Ar3、Ar4、Ar6及びAr7で挙げられているアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
Xは、前述のように、単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のシクロアルキレン基、置換若しくは無置換のオキシアルキレン基、オキシ基、チオ基又はビニレン基を表す。
置換若しくは無置換のアルキレン基は、通常、炭素数1〜12直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、炭素数1〜8が好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。さらに、水酸基、シアノ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン基又は炭素数1〜4のアルキル基若しくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基で置換されていてもよい。具体的には、メチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、イソプロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のシクロアルキレン基は、通常、炭素数5〜7の環状アルキレン基であり、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のオキシアルキレン基のアルキレン基は、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基等で置換されていてもよい。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等が挙げられる。なお、Xは、オキシアルキレン基が複数結合されている官能基であってもよい。
ビニレン基としては、一般式
(R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、(2)で定義されるアルキル基又はAr
3、Ar
4、Ar
6及びAr
7で挙げられているアリール基を表し、aは、1又は2、bは、1〜3を表す。)
で示される官能基が挙げられる。
Z1及びZ2は、前述のように、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアルキレンエーテル基又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。
置換若しくは無置換のアルキレン基としては、Xで挙げられているアルキレン基が挙げられる。また、置換若しくは無置換のオキシアルキレンエーテル基としては、Xで挙げられているオキシアルキレン基が挙げられる。また、アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
また、重合性官能基を有する電荷輸送性材料は、一般式
(式中、c、d及びeは、それぞれ独立に、0又は1、f及びgは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。また、R
15は、水素原子又はメチル基を表し、R
16及びR
17は、それぞれ独立に、水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、f又はgが2以上の場合は、それぞれ複数のR
16又はR
17は、異なってもよい。また、Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又は一般式
で示される官能基を表す。)
で示される化合物であることが好ましい。R
16及びR
17は、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
本発明において、重合性官能基を有する電荷輸送性材料、シロキサン骨格を有さない重合性化合物及び重合性不飽和ポリシロキサン化合物を含有する組成物を架橋することにより表面層を形成してもよい。
また、表面層の電気的ハザードに対する耐久性を保持するためには、表面層を構成する原料の全量に対する重合性不飽和ポリシロキサン化合物の含有量を、20重量%以上80重量%以下にすることが好ましく、30重量%以上60重量%以下がさらに好ましい。したがって、表面層用塗工液の固形分中の重合性不飽和ポリシロキサン化合物の含有量が上記の範囲になるように、調整することが好ましい。重合性不飽和ポリシロキサン化合物の含有量が20重量%未満の場合には、所望の電気的耐久性が得られないことがある。
本発明において、表面層の架橋を促進させるために、熱エネルギー又は光エネルギーによってラジカルを発生させる重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、熱エネルギーによりラジカル重合を行う場合、シロキサン骨格において加水分解に続いて架橋が起こり、架橋密度が向上することが見込めるが、所望の電気的耐久性を得られないことがある。このため、光重合開始剤を用いて、光エネルギー照射による架橋を行うことが好ましい。
熱重合開始剤としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシプロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。また、光重合促進効果を有する化合物を単独又は光重合開始剤と併用して用いることもできる。光重合促進効果を有する化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
重合開始剤は、単独又は2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の添加量は、重合性官能基を有する化合物の総重量に対して、通常、0.5〜40%であり、1〜20重量%が好ましい。重合開始剤の添加量が0.5重量%未満の場合には、所望の架橋状態を得ることができなかったり、得るために多くの時間を要したりすることがあり、機械的耐久性、生産効率の問題が発生することがある。また、40重量%を超える場合には、所望の機械耐久性が得られない等の問題が発生することがある。
さらに、表面層塗工液は、必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有さない低分子電荷輸送物質等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤としては、公知のものを用いることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものを用いることができ、添加量は、表面層塗工液の総固形分に対して、通常、20重量%以下であり、10重量%以下が好ましい。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーを用いることができ、添加量は、表面層塗工液の総固形分に対して、通常、3重量%以下である。
本発明において、表面層は、少なくとも重合性不飽和ポリシロキサン化合物を含有する塗工液を、後述する感光層上に塗布し、架橋することにより形成される、塗布に用いられる表面層塗工液は、重合性不飽和ポリシロキサン化合物が液状である場合、そのままでも塗布することができるが、重合性官能基を有する電荷輸送性材料、シロキサン骨格を有さない重合性化合物及びその他の重合開始剤や添加剤を併用する場合には、溶剤等を用いて均一な分散液とすることが好ましい。溶剤は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系等が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
表面層を形成する際に用いる塗工方法は、特に限定されない。塗工液の粘性、所望とする表面層の膜厚等によって適宜塗工方法を選択することができる。例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等が例示される。
本発明においては、このようにして、表面層塗工液を塗布した後、外部からエネルギーを与えることにより、表面層を架橋する。このとき用いられるエネルギーとしては、光エネルギーが主に用いられるが、熱エネルギーを併用してもよい。
熱エネルギーとしては、空気、窒素等の気体、蒸気、各種熱媒体、赤外線、電磁波を用いることができ、塗工面側又は支持体側から加熱することができる。加熱温度は、100℃以上170℃以下であることが好ましい。100℃未満の場合、架橋反応の速度が遅いために生産性が低下すると共に、未反応の材料が表面層に残留することがある。一方、170℃より高い温度で架橋した場合、架橋による表面層の収縮が大きくなり、表面にゆず肌状の欠陥や亀裂が生じたり、隣接層との界面で剥離が生じたりすることがある。また、感光層中の揮発性成分が外部に霧散して、所望の電気特性を得られなくなることがある。架橋による収縮が大きい樹脂を使用する際には、100℃未満の低温で予備架橋した後に100℃以上の高温で架橋を完結させる方法も有効である。
光エネルギーとしては、主に超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアークメタルハライドランプ等の光源を用いてもよいが、重合開始剤の吸収を考慮して光源を選定することが好ましい。光源の発光波長としては、通常の紫外線領域を用いても、重合開始剤は吸収を有するため、使用するができるが、電荷輸送性材料の吸収を考慮することが好ましい。具体的には、最大発光波長が400nm以上の光源を用いることにより、電荷輸送性材料の吸収が少ないために、照射光が効率よく重合開始剤に吸収され、表面層の全層において均一に架橋することができる。
光源の発光照度としては、一般に、365nmの波長を基準として、50〜2000mW/cm2の照度で照射することが好ましい。また、最大発光波長近傍における照度測定が可能である場合は、上記照度域で照射することがさらに好ましい。照度が50mW/cm2より小さい場合には、架橋に要する時間が多くなるため、生産性の観点から好ましくない。一方、照度が2000mW/cm2より大きい場合には、収縮が起こりやすく、表面にゆず肌状の欠陥や亀裂が生じたり、隣接層との界面で剥離が生じたりすることがある。
UV照射時には、光源から生じる熱線等の影響により、感光体の表面層の温度が上昇する。感光体の表面温度が上昇しすぎると、表面層の収縮が起こりやすくなる。また、隣接層中に含まれる低分子成分が表面層に移行するために、硬化阻害等が生じたり、感光体としての電気特性が低下したりすることがある。このため、UV照射時の感光体の表面温度は、100℃以下であることが好ましく、80℃以下がさらに好ましい。冷却方法としては、感光体の内部へ助冷剤を封入する方法、感光体の内部を気体や液体を用いて冷却する方法等が挙げられる。
本発明において、架橋後の表面層を加熱してもよい。例えば、膜中に溶剤が残留している場合は、電気的特性の低下や経時劣化の原因となりうるため、加熱により残留溶剤を揮発させることが好ましい。
表面層の膜厚は、感光層の保護の観点から、1〜15μmであることが好ましく、3〜10μmがさらに好ましい。表面層の膜厚が1μmより薄い場合には、感光体への当接部材による機械的摩耗や帯電器等による近接放電等から感光層を保護できなくなるだけでなく、表面層を形成する際に、レベリングされにくくなるために、表面層がゆず肌状になることがある。一方、表面層の膜厚が15μmより厚い場合には、感光体の膜厚が厚くなり、電荷の拡散による画像の再現性が低下することがある。
本発明においては、表面層と感光層との間での接着性不良による層間剥離を抑制するために、両層間に接着層を設けてもよい。
接着層としては、前述のシロキサン骨格を有さない重合性化合物を用いてもよいし、非架橋系の高分子化合物を用いてもよい。非架橋系の高分子化合物としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、シロキサン骨格を有さない重合性化合物と非架橋系高分子化合物は、いずれを用いる場合においても単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。さらに、シロキサン骨格を有さない重合性化合物と非架橋系高分子化合物を併用してもよい。また、電荷輸送性材料を併用してもよい。さらに、接着性を向上させるために、適宜添加剤を添加してもよい。
接着層は、所定の配合に処方された化合物をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒に溶解又は分散させた塗工液を浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等を用いて塗工することにより、形成することができる。接着層の膜厚は、通常、0.1〜5μm程度であり、0.1〜3μmが好ましい。
次に、感光層について説明する。感光層は、機能分離型積層構造であってもよいし、単層構造であってもよい。積層構造の場合には、感光層は、一般に、電荷発生層と電荷輸送層から構成される。また、単層構造の場合には、感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて説明する。
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じて、バインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル化合物、セレン−テルル−ハロゲン化合物、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものを用いることができる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリアリールアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料等が挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層に必要に応じて添加されるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。バインダー樹脂の添加量は、電荷発生物質100重量部に対して、通常、0〜500重量部であり、10〜300重量部が好ましい。バインダー樹脂の添加は、電荷発生物質を分散させる前又は分散させた後のどちらでも構わない。
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法が挙げられる。真空薄膜作製法としては、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が挙げられ、無機系材料及び有機系材料のいずれにも用いることができる。また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるためには、無機系材料又は有機系材料を、必要に応じて、バインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒中でボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等を用いて分散し、分散液を適度に希釈して塗布することが好ましい。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等を用いて行うことができる。
電荷発生層の膜厚は、通常、0.01〜5μm程度であり、0.05〜2μmが好ましい。
電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層で、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする層である。
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体等が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いることができる。
正孔輸送物質としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等の公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独、又は2種以上混合して用いることができる。
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。また、バインダー樹脂として、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格、ベンジジン骨格、ヒドラゾン骨格、カルバゾール骨格、スチルベン骨格、ピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、ポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
電荷輸送物質の添加量は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独で使用してもよいし、バインダー樹脂と併用してもよい。
電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する塗工液を作製する際に用いる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用することができる。
また、電荷輸送層には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の公知の可塑剤を使用することができ、添加量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜30重量部程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられ、添加量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、解像度・応答性の点から、30μm以下であることが好ましく、25μm以下がさらに好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上であることが好ましい。
感光層が単層構造である場合について、以下説明する。この場合、感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解又は分散させることにより得られる塗工液を塗布、乾燥することによって形成することができる。また、感光層には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することができる。
バインダー樹脂としては、電荷輸送層で挙げられているバインダー樹脂の他に、電荷発生層で挙げられているバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、高分子電荷輸送物質を用いてもよい。バインダー樹脂100重量部に対する電荷発生物質の添加量は、5〜40重量部であることが好ましく、電荷輸送物質の添加量は、0〜190重量部であることが好ましく、50〜150重量部がさらに好ましい。感光層は、電荷発生物質、バインダー樹脂を電荷輸送物質と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散することにより得られる塗工液を、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法等を用いて塗工することにより形成することができる。感光層の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
本発明においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は、一般には、樹脂を主成分とするが、その上に、溶剤を用いて感光層を塗布するため、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂を用いることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する架橋型樹脂等が挙げられる。また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を添加してもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層のように、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、下引き層には、Al2O3を陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法により設けたものも使用することができる。この他にも、公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は、0〜5μmが適当である。
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を抑制するために、表面層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層、光遮蔽層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、トコフェロール類等のフェノール系化合物;N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類;2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート等の有機硫黄化合物類;トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等の有機燐化合物類が挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して、通常、0.01〜10重量部である。
導電性支持体としては、体積抵抗率が1010Ω・cm以下の導電性を示すものを用いることができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを押し出し、引き抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理を施した管等を使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散させた導電性層を有するものも、導電性支持体として用いることができる。導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉、導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体等が挙げられる。また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。導電性層は、導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等に分散させて塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂等の素材に導電性粉体を含有させた熱収縮チューブを用いて導電性層を設けたものも、導電性支持体として用いることができる。
本発明においては、感光体の低表面エネルギー化によるクリーニング性の向上や、電気的・機械的ハザードからの保護を目的として、感光体の表面に保護物質を塗布してもよい。
保護物質としては、感光体の表面に均一に塗布できるものであれば、種々の材料を用いることができるが、ワックス、シリコーンオイル、脂肪酸塩等の材料が好ましい。脂肪酸塩は、感光体の電気特性の低下を抑制し、感光体の表面に薄膜を均一に塗布することが可能であることから、特に好ましい。脂肪酸としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンダデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、アラキドン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸等が挙げられ、その金属塩としては、亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の金属との塩が挙げられる。
さらに、保護物質としては、ステアリン酸亜鉛のようなラメラ結晶紛体を用いることが好ましい。ラメラ結晶は、両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間に沿って、結晶が割れて滑りやすい。この作用が低摩擦係数化に効果があるが、放電からの感光体の表面を保護する観点からも、せん断力を受けて均一に感光体の表面を覆うラメラ結晶の特性は、少量の保護物質によって効果的に感光体の表面を覆うことができるので、保護物質として望ましい。
保護物質の塗布方法については、特に限定されないが、例えば、クリーニング装置等の感光体に当接する部材にあらかじめ保護物質を塗布させておく方法や、専用の塗布装置をプロセスカートリッジと一体とする方法が挙げられる。専用の塗布装置を設ける場合は、長期に亘って安定した量を塗布することができる。
専用の塗布装置としては、図3に示すような装置を用いることができる。塗布装置30は、感光体1の表面に保護物質32を供給し、塗布するファーブラシ31及びファーブラシ31に保護物質32を任意の圧力で押し当てる加圧手段33からなる。これにより、ファーブラシ31を介して、一定量の保護物質32を感光体1に供給することができる。