JP4531181B2 - タイルの乾式製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駒部材を有する下型とその下型と対をなす上型でタイル用坏土をプレスして成型品を作り、その成型品を焼成するようにしたタイルの乾式製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイルの乾式製造方法において、プレス装置の故障により脱型直後の成型品が上型で再プレスされる場合があり、これにより成型品の縁が崩れることが知られていた。ところで現在、表面と側端面を自然な風合いに荒らした割肌調のタイルがある。タイルの側端面を荒らすことだけを目的とするなら前記現象を利用すればよい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、図12に示したように、四角いタイルTの四辺をテーパ状になし、例えば四角錐台形の底面がタイル裏面に相当し、四角錐台形の上面がタイル表面に相当するようにしたものがある。このようなタイルTは同図に示したように躯体Aに貼着した状態で、目地Bが外に向かって広がる形態になるため、第一に目地材Cの充填が容易である、第二に目地材CとタイルTの間に隙間が出来にくい、第三に目地Bにゴミが付きにくい、第四に雨水が目地Bに残らない、などのメリットがある。しかして、このようなテーパ付きのタイルの端面を割肌調にする場合、前記従来の方法は崩れ方が不規則でテーパ状に制御できないため使えない。よって現状ではテーパ付きのタイルTの端面を割肌調にすることが困難であった。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的はタイルの縁をテーパ状に割ることが可能なタイルの乾式製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は、駒部材を有する下型とその下型と対をなす上型でタイル用坏土をプレスして成型品を作り、その成型品を焼成するようにしたタイルの乾式製造方法において、前記成型品の上型に接する面の形状が側端面から任意量内側に入った位置を起点として盛り上がる形態になるように上型の型面を形成し、駒部材と下型で形成される型凹部にタイル用坏土を充填して上型で押し固め、上型と駒部材を共上げして成型品を型凹部の外に移動させ、さらに上型のみを上昇させて型面を成型品から浮き上がらせ、脱型膨張した成型品に対して上型を下動させて衝突させることによりその成型品の縁を割るか又はそのための亀裂を入れるようにしたタイルの乾式製造方法を提供する。
【0006】
上型の型面と成型品の上面は、上型の型面が成型品から離れるまではぴったり一致しているが、成型品が型凹部の外に出て上型の型面がそこから離れると、成型品が加圧状態から解き放たれて膨張(脱型膨脹)するため、成型品の方が上型の型面より大きくなる。従って上型を成型品の上面から一旦浮かして下動させると、成型品の上面と上型の型面の形状に大小のずれができるから図9のように成型品の盛り上がり部分に上型の型面が衝突し、衝撃荷重がその衝突部分に集中する。この衝撃荷重によって衝突部分、つまり盛り上がり部分の起点付近に亀裂が入る。一般に亀裂は弱い方、つまり厚みの薄い端面に向かって進行するから成型品の下のコーナー部分に向かう。上型の衝突勢が強ければ成型品の縁が亀裂に沿ってテーパ状に割れる。また、上型の衝突勢が弱ければ成型品の縁に亀裂が入るに止まるから後工程で亀裂沿いに割る。
【0007】
また、請求項2のように、前記成型品の盛り上がり部分と側端面の間の領域に補助片を上向きに突設し、成型品の縁に亀裂を入れた後、前記補助片に外力を加えて縁を割るようにするとよい。こうすることにより成型品の縁が上型の衝撃で割れずに残ったとしても補助片に力を加えれば簡単に割れる。
【0008】
また、請求項3のように、下型上にある成型品を次工程に移送する搬送手段に成型品の縁を押圧する押圧手段を形成し、搬送手段により成型品を捕捉する工程でその成型品の縁を押圧手段で押圧するようにすれば、成型品を捕捉する動作で効率よく亀裂部分を割ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図1は成型品の斜視図、図2はタイルの斜視図、図3はタイルの底面図、図4〜図8は製造工程を説明するプレス装置の断面図、図9は上型が成型品に衝突した瞬間を示す要部拡大断面図、図10は搬送手段による捕捉前の状態を示す要部断面図である。
【0010】
本発明のタイルTの基本形は図2,図3に示したように薄型の四角錐台形であり、四角錐台形の底面がタイル裏面に相当し、四角錐台形の上面がタイル表面1に相当する。従って四側端面2はテーパ状になっている。
【0011】
既述のようにこのような形状のタイルTは公知であるが、本発明のタイルTは表面1のみならずテーパ状の四側端面2も割肌調である点に特徴がある。以下その乾式製造方法について説明する。なお、本発明のタイル原料と焼成方法は従来と同じであるため説明を省略する。
【0012】
図4は本発明において使用するプレス装置3の断面図である。プレス装置3は、駒部材4を有する下型5と、その下型5と対をなす上型6と、下型5上面を往復摺動する粉箱7とから概略構成される。通常上型6と下型5と駒部材4は一回のプレスで複数枚の成型品が作れるように複数セット(例えば4セット)分が一体に連なった形態になっている。
【0013】
前記下型5は固定的であり、その下型5に型孔8があってそこに駒部材4が昇降自在に嵌っている。駒部材4の頂部は後述する成型品9の裏面を形成する型面になっていて、図4の下がった状態で頂部の型面と前記型孔8で型凹部10が作られる。一方、上型6は昇降自在になっていて下型5の型凹部10に上方から出入りする。なお、上型6の底面は後述する成型品9の上面を形成する型面6aになっている。
【0014】
前記粉箱7は四角いリング形態であり、中に顆粒状のタイル用坏土11が満たされている。この粉箱7は底なしであり、下型5上面を往復摺動させると型凹部10にタイル用坏土11が落下する。
【0015】
次に前記プレス装置3によるタイルTの乾式製造方法について説明する。先ず、図4のように上型6を上昇位置におき、一方、駒部材4を下降させて下型5に型凹部10を作る。この状態で図4矢示Xのように粉箱7を摺動させて型凹部10上を通過させると、中のタイル用坏土11が型凹部10に落ち込む。そしてその状態で粉箱7を戻すと図5のように型凹部10に擦り切り一杯の状態でタイル用坏土11が充填される。
【0016】
次に図5二点鎖線のように上型6を降下させ、型凹部10にあるタイル用坏土11をプレスして押し固める。こうして押し固められた成型品9は図1に示したように側端面から少し入った位置を起点として弧状に盛り上がる盛り上がり部分12を有し、さらにその盛り上がり部分12と側端面の間の領域に山形の補助片13を上向きに突設してなる。
【0017】
次に上型6と駒部材4を共上げ(同時に上昇させる)して成型品9を加圧状態のまま型凹部10の外に移動させる。そして、図6(a),(b)のように成型品9が型凹部10の外に出たところで駒部材4を停止させ、上型6だけをそのまま数ミリ上昇させる。そうすると成型品9が加圧状態から解放されて脱型膨張し、全体が大きく広がる。この状態で上型6を下動(落下)させて成型品9に衝突させると、成型品9の上面と上型6の型面6aの形状には図9のように大小のずれYが出来ているから、成型品9の盛り上がり部分12の縁に上型6の型面6aが衝突し、衝撃荷重がその衝突部分に集中する。この衝撃荷重によって衝突部分、つまり盛り上がり部分12の起点付近に亀裂14が入る。一般に亀裂14は弱い方、つまり厚みの薄い側端面側に向かって進行するから成型品9の下のコーナー部分に向かう。本実施形態では上型の衝突勢が弱めに設定されていて亀裂14が入った状態で止まり、完全には割れない。
【0018】
次に上型6を上昇させ、続いて図10,図7のように下型5上にある成型品9を搬送手段15で捕捉する。搬送手段15はエアボックス16の下面に吸着パッド17を複数個(例えば成型品一枚に対して四個)設けた公知のものであり、吸着パッド17で吸い付けて成型品9を捕捉する。
【0019】
前記搬送手段15にはエアボックス16の下面に押圧手段18が設けられている。この押圧手段18はエアボックス16の下面に弾性体18aを四角くリング形態に固着したものであり、成型品9の前記補助片13に重なる形状である。また、押圧手段18は搬送手段15の吸着パッド17より下に突出しており、吸着パッド17が成型品9の上面に吸い付くより前に補助片13に当たる。
【0020】
しかして搬送手段15は以上のようになっているため、吸着パッド17で成型品9を捕捉するに際して先に押圧手段18の弾性体18aが補助片13に当たって押圧するから、その外力が補助片13を介して成型品9に伝わり、亀裂14の部分から簡単に割れる。亀裂14は盛り上がり部分12のほぼ起点から成型品9の下のコーナー部分に向かっているから、割れた後の側端面は殆どが狙い通りのテーパ状になっている。次に搬送手段15の吸着パッド17を成型品9に吸い付かせて吊り下げ、次工程に移送して公知の方法で焼成する。
【0021】
一方、下型5の上面には割れた屑19が残っているが、その屑19を残したまま駒部材4を下げて型凹部10を作る。そして図8のように粉箱7を摺動させ、その先端で下型5上に残っている屑19を型凹部10の中に落下させると共にそのままさらに粉箱7を摺動させて屑19の上に正規のタイル用坏土11を充填し、以後前記の工程を繰り返す。従って割れた屑19は成型品9、すなわちタイルTの裏側の一部に組み込まれる。
【0022】
通常下型5の上に残っている屑19は一度固めたものであるから常識的には回収して廃棄物として処理される。しかし本発明者は、第一に製造対象物が割肌調のタイルである場合には正規のタイル用坏土11に前記屑19を混ぜてたとえ不均一な部分が生じたとしても目立ち難く、第二に前記屑19が混ざってタイルTの外観に悪影響を与えたとしても裏面なら問題がない、と考え、下型5から屑19を除去することなく正規のタイル用坏土11を投入する前にそれを型凹部10に投入して成型品9の裏側の一部に屑19が組み込まれるようにしたのである。その結果、廃棄物の大幅削減、タイル用坏土11の節約、屑19を除去する工程省略に伴う効率アップ、という多くの成果を得た。
【0023】
以上本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態とは逆に駒部材4の型面で成型品9の表側を形成し、上型6の型面6aで成型品9の裏側を形成するようにすれば、側端面のテーパの向きを逆にすることができる。また、タイルTの表裏面の形態はどのようなものであってもよい。
【0024】
また、実施形態では成型品9の縁に補助片13を突設したが、図11(a),(b)に示したように補助片13を設けないようにしてもよい。この場合でも押圧手段18を長くすれば、同図(b)のように亀裂14を入れた後に成型品9の肩を押圧手段18で押圧することができる。なお、図11(b)の押圧手段18は吸着パッド17が成型品9に吸い付く位置まで下降しても成型品9の亀裂14の内側に接触しない形状になっている。従って実施形態のように押圧手段18を弾性体で形成する必要はない。
【0025】
また、実施形態では駒部材4を上下動させるように構成したが、駒部材4を固定して下型5を上下動させるようにすることもできる。また、実施形態の盛り上がり部分12は弧状に盛り上げるようになっているが、テーパ状に角度を付けて盛り上げるようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明のタイルの乾式製造方法によれば、成型品の縁が盛り上がり部のほぼ起点から下のコーナー部分に向かうテーパ状に割れるため、テーパ状でありながら割肌調の側端面を有するタイルが製造可能である。
【0027】
また、請求項2のように、前記成型品の盛り上がり部分と側端面の間の領域に補助片を上向きに突設し、成型品の縁に亀裂を入れた後、前記補助片に外力を加えて縁を割るとよい。こうすることにより成型品の縁が割れずに残ったとしても補助片を使って簡単に割ることができる。
【0028】
また、請求項3のように、下型上にある成型品を次工程に移送する搬送手段に成型品の前記補助片を押圧する押圧手段を形成し、搬送手段により成型品を捕捉する工程でその成型品の縁を押圧手段で押圧するようにすれば、成型品を捕捉する動作で効率よくしかも確実に亀裂部分を割ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 成型品の斜視図である。
【図2】 タイルの斜視図である。
【図3】 タイルの底面図である。
【図4】 製造工程を説明するプレス装置の断面図である。
【図5】 製造工程を説明するプレス装置の断面図である。
【図6】 (a)は製造工程を説明するプレス装置の断面図、(b)は(a)の要部を示す一部拡大図である。
【図7】 製造工程を説明するプレス装置の断面図である。
【図8】 製造工程を説明するプレス装置の断面図である。
【図9】 上型が成型品に衝突した瞬間を示す要部拡大断面図である。
【図10】 搬送手段による捕捉前の状態を示す要部断面図である。
【図11】 (a)は上型が成型品に衝突した瞬間を示す要部拡大断面図、(b)は押圧手段が成型品の肩を押圧した瞬間を示す要部拡大断面図である。
【図12】 従来例を示す使用状態の断面図である。
【符号の説明】
T …タイル
4 …駒部材
5 …下型
6 …上型
6a…型面
9 …成型品
10…型凹部
11…タイル用坏土
12…盛り上がり部分
13…補助片
14…亀裂
15…搬送手段
18…押圧手段

Claims (3)

  1. 駒部材を有する下型とその下型と対をなす上型でタイル用坏土をプレスして成型品を作り、その成型品を焼成するようにしたタイルの乾式製造方法において、
    前記成型品の上型に接する面の形状が側端面から任意量内側に入った位置を起点として盛り上がる形態になるように上型の型面を形成し、
    駒部材と下型で形成される型凹部にタイル用坏土を充填して上型で押し固め、上型と駒部材を共上げして成型品を型凹部の外に移動させ、さらに上型のみを上昇させて型面を成型品から浮き上がらせ、脱型膨張した成型品に対して上型を下動させて衝突させることによりその成型品の縁を割るか又はそのための亀裂を入れるようにしたことを特徴とするタイルの乾式製造方法。
  2. 前記成型品の盛り上がり部分と側端面の間の領域に補助片を上向きに突設し、成型品の縁に亀裂を入れた後、前記補助片に外力を加えて縁を割るようにした請求項1記載のタイルの乾式製造方法。
  3. 下型上にある成型品を次工程に移送する搬送手段に成型品の縁を押圧する押圧手段を形成し、搬送手段により成型品を捕捉する工程でその成型品の縁を押圧手段で押圧して亀裂から割るようにした請求項1又は2記載のタイルの乾式製造方法。
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