JP4530444B2 - 粘着テープ用フィルム基材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、応力緩和性の良好な粘着テープ用のフィルム基材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、粘着テープの基材には、多くの基材がその目的に応じて使用されてきた。そのうち、特に曲面部等への接着時やプレス加工時等で浮くことなく良好な接着性を有するためには、基材の特性として優れた応力緩和性を有することが重要である。現在、このような応力緩和性に優れ、加工性の良好なフィルム基材として塩化ビニル系フィルムが使用されている。また、最近では、ポリオレフィン系材料が、応力緩和性の点では塩化ビニル系フィルムに及ばないものの、環境保護の観点で優れているため、一部使用されるようになっている。これらの粘着テープは、表面保護用、マスキング用など幅広い分野で用いられている。
【0003】
しかしながら、上記塩化ビニル系フィルムやポリオレフィン系フィルムは耐候性に問題があり、長期間屋外などで使用した場合、フィルム劣化などにより貼付していた粘着テープが崩壊してしまうなどの問題があった。また深絞りなどの強加工を行う際には、塩化ビニル系フィルムにおいても加工性の点で不十分な場合が認められる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、曲面追従性、およびプレス加工時等における加工性が塩化ビニル系フィルムと同等か又はそれ以上の特性を有し、しかも耐候性に優れた粘着テープ用のフィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、耐候性のよい材料として(メタ)アクリル系ポリマーに着目し、(メタ)アクリル系ポリマーからなるフィルムで且つ加工性の良好なフィルムにつき鋭意検討した結果、初期弾性率、破断強度および応力緩和率が適切な物性値になるようにポリマーを設計することにより、塩化ビニル系フィルムに相当する、又はそれ以上の良好な加工性を有する(メタ)アクリル系のフィルムが得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、アルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を主モノマー成分とし、さらに構成モノマーとして含窒素モノマーとカルボキシル基又は酸無水物基を含むモノマーとを、それぞれモノマー成分全量に対して2〜30重量%含む(メタ)アクリル系ポリマーからなり、初期弾性率が0.5kg/mm2以上、破断強度が1kg/mm2以上、且つ応力緩和率が40%以上であり、フィルム基材を構成する(メタ)アクリル系ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)が−20℃以上である粘着テープ用フィルム基材を提供する。
なお、本明細書では、上記の発明のほか、(メタ)アクリル系ポリマーからなり、初期弾性率が0.5kg/mm 2 以上、破断強度が1kg/mm 2 以上、且つ応力緩和率が40%以上である粘着テープ用フィルム基材についても説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の粘着テープ用フィルム基材は、初期弾性率が0.5kg/mm2以上、破断強度が1kg/mm2以上、かつ応力緩和率が40%以上の物性値を持つ(メタ)アクリルシートからなる。
【0008】
ここで、初期弾性率および破断強度は、フィルム幅:10mm、チャック間隔:10mm、引張速度:50mm/分、測定温度:23℃で引張試験機を用いて測定したときの値である。また、応力緩和率は、フィルム幅:10mm、チャック間隔:20mm、測定温度:23℃、引張速度:1000mm/分の条件で100%延伸したときの延伸直後の応力(初期応力)と、その後延伸量を保持した状態で5分放置した後の応力(5分後の応力)とを測定し、下記の式から算出した値である。
応力緩和率(%)={((初期応力)−(5分後の応力))/(初期応力)}×100
【0009】
初期弾性率は、粘着テープの剥離性および応力緩和性に影響しており、特に応力緩和性については密接に関係してくる。初期弾性率としては、0.5kg/mm2以上、好ましくは0.5〜50kg/mm2、さらに好ましくは1.0〜40kg/mm2である。初期弾性率が0.5kg/mm2未満では、貼付作業性や剥離作業性が低下すると共に、曲面に追従しなかったりプレス加工時に浮いてしまうといった加工性も低下する。初期弾性率が高すぎても加工性が悪くなる場合がある。
【0010】
破断強度は、1kg/mm2以上、好ましくは1〜10kg/mm2、さらに好ましくは1.5〜5kg/mm2である。破断強度が低すぎると粘着テープ使用時に千切れてしまう場合がある。破断強度が高すぎると、加工性が悪くなる場合がある。
【0011】
応力緩和率は、40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。応力緩和率が40%未満では、加工性が低下する。
初期弾性率、破断強度および応力緩和率の値は、例えば、シートを構成する(メタ)アクリル系ポリマーの構成モノマーの種類やその割合を選択、調整することによりコントロールできる。
【0012】
フィルム基材を構成する(メタ)アクリル系ポリマー組成物[(メタ)アクリル系ポリマー単独、または(メタ)アクリル系ポリマーに各種添加物を添加した混合物]のガラス転移温度(Tg)は、例えば−20℃以上、好ましくは−20℃〜100℃、さらに好ましくは−15℃〜70℃程度である。ここで、Tgとは、せん断方向での動的粘弾性スペクトルにおける周波数:1HzでのG′′(損失弾性率)のピーク値での温度である。このTgが−20℃未満であると、フィルム基材としての十分な強度(初期弾性率、破断強度)が得られにくくなる。また、Tgが高すぎると良好な加工性が得られない場合がある。
【0013】
前記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上を主モノマー成分とし、含窒素モノマー、酸性基を有するモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル、エチレンやプロピレン等のオレフィン、スチレンやα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等を適宜コモノマーとして用いて共重合させた(メタ)アクリル系共重合体;これらのモノマーの重合体を混合したポリマーアロイなどが用いられる。
【0014】
前記(メタ)アクリル酸エステルには、一般式(1)
CH2=C(R1)COOR2 (1)
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2はアルキル基を示す)
で表される化合物が含まれる。R2におけるアルキル基の炭素数としては、1以上、好ましくは1〜14、さらに好ましくは1〜10(特に1〜4)程度である。前記アルキル基は、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、エポキシ基等を含んでもよい。
【0015】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルの代表的な例として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステルは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記含窒素モノマーには、例えば、一般式(2)
CH2=C(R3)CONR45 (2)
(式中、R3は水素原子またはメチル基を示し、R4およびR5は、同一または異なって、水素原子若しくはアルキル基を示すか、または互いに結合して隣接する窒素原子と共に複素環を形成してもよい)
で表される(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、含窒素複素環を有するビニル化合物、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが含まれる。
【0017】
前記式(2)で表される(メタ)アクリルアミド類の具体例として、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。含窒素複素環を有するビニル化合物として、例えば、4−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類等が挙げられる。また、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0018】
前記酸性基を有するモノマーとして、分子内に、例えば、カルボキシル基(酸無水物基を含む)、リン酸基、亜リン酸基、硫酸基、亜硫酸基、フェノール性水酸基等を含むモノマーが挙げられる。このような酸性基を有するモノマーの代表的な例として、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
好ましい(メタ)アクリル系ポリマーは、コモノマー成分として含窒素モノマーと酸性基を有するモノマーとを含んでいる。このような(メタ)アクリル系ポリマーからは、酸/塩基の分子間相互作用によりさらにバランスのとれた物性をもつ(メタ)アクリルシートが得られる。含窒素モノマーおよび酸性基を有するモノマーの配合量としては、全モノマー量に対して、各々2〜30重量%、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%程度である。
【0020】
また、光重合により(メタ)アクリル系ポリマーを得る場合、ポリマーの凝集性を向上させるため、モノマー成分として、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートモノマーを配合してもよい。多官能(メタ)アクリレートモノマーの配合量としては、全モノマー量に対して、例えば0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜2重量%程度である。
【0021】
本発明のフィルム基材には、必要に応じて、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤等の公知乃至慣用の各種添加剤を加えることができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0022】
本発明のフィルム基材の製造は、例えば、溶液重合により得られたポリマー溶液を流延し、溶剤を揮発させてフィルム化する方法、モノマー溶液、またはモノマーをある程度重合させ必要に応じて多官能(メタ)アクリレートモノマーを添加したモノマー−ポリマー混合液を平らな面に塗布または流延し、光重合(硬化)によりシート化する方法など公知乃至慣用の方法に準じて行うことができる。特に光重合を用いる方法は、無溶剤であり有用である。光重合には、慣用の光重合開始剤を用いることができる。
本発明のフィルム基材の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜設定できるが、一般には、5〜500μm、好ましくは10〜200μm程度である。
【0023】
【発明の効果】
本発明の粘着テープ用フィルム基材は、応力緩和性が極めて良好であり、特に曲面部等への接着時やプレス加工時等で浮くことなく良好な接着性を示すとともに、優れた耐候性をも有する。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を意味する。
【0025】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計、紫外線照射装置および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリルモノマーとして、メチルアクリレート40部、エチルアクリレート40部、アクリル酸10部、N,N−ジメチルアクリルアミド10部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.07部を入れて、光重合し、重合率15重量%のポリマー−モノマー混合物を得た。この混合物に、該混合物の固形分100部に対して0.4部のトリメチロールプロパントリアクリレートを加えてシロップとした。このシロップを、剥離処理した厚さ25μmのポリエステルフィルム上に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布した後、紫外線を照射して硬化させることにより、初期弾性率:11.7kg/mm2、破断強度:2.2kg/mm2、応力緩和率:94%、Tg:27℃のアクリルシートを得た。
【0026】
実施例2
アクリルモノマーとして、メチルアクリレート30部、エチルアクリレート30部、アクリル酸20部、N,N−ジメチルアクリルアミド20部を用いた他は実施例1に準じて、初期弾性率:34.3kg/mm2、破断強度:3.3kg/mm2、応力緩和率:85%、Tg:56℃のアクリルシートを得た。
【0027】
実施例3
アクリルモノマーとして、エチルアクリレート60部、アクリル酸20部、N,N−ジメチルアクリルアミド20部を用いた他は実施例1に準じて、初期弾性率:8.6kg/mm2、破断強度:1.0kg/mm2、応力緩和率:89%、Tg:5℃のアクリルシートを得た。
【0028】
比較例1
アクリルモノマーとして、メチルアクリレート50部、エチルアクリレート50部用いた他は実施例1に準じて、初期弾性率:0.03kg/mm2、破断強度:0.12kg/mm2、応力緩和率:34%、Tg:−35℃のアクリルシートを得た。
【0029】
比較例2
厚み:100μm、初期弾性率:39.5kg/mm2、破断強度:4.0kg/mm2、応力緩和率65%、Tg:0℃の塩化ビニルシートを比較例2とした。
【0030】
比較例3
厚み:60μm、初期弾性率:25.2kg/mm2、破断強度:2.1kg/mm2、応力緩和率38%、Tg:−125℃の低密度ポリエチレンシートを比較例3とした。
【0031】
比較例4
厚み:40μm、初期弾性率:55.0kg/mm2、破断強度:6.1kg/mm2、応力緩和率33%、Tg:−10℃のポリプロピレンシートを比較例4とした。
【0032】
評価試験
実施例、比較例で得たシートについて下記の試験を行った。
(加工性試験)
各シートにアクリル系粘着剤(エチルアクリレート60部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、ヒドロキシエチルアクリレート5部、トリレンジイソシアネート5部からなる粘着剤)を厚みが5μmとなるように塗布して粘着テープを作製した。この粘着テープをSUS304BA(0.4mm厚)に貼付し、60tプレスで15mm絞り加工(20mm角筒絞り)を行い、3時間後の粘着テープの浮きの状態を目視観察した。浮きが全く見られなかった場合を「○」、僅かに浮きが見られた場合を「△」、浮きが明瞭に見られた場合を「×」と評価した。
(耐候性試験)
各シートをS.W.M.(サンシャインウェザーメーター、ブラックパネル温度:63℃)で500時間曝露を行い、各シートの劣化の度合いを目視観察した。劣化が全く見られなかった場合を「○」、表層部に劣化が見られた場合を「△」、全体が劣化していた場合を「×」と評価した。
【0033】
これらの結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004530444
表1より、実施例の(メタ)アクリルシートは、応力緩和性に優れ、良好な加工性を示すと共に、耐候性にも優れる。そのため、粘着テープ用フィルム基材として極めて有用であることがわかる。

Claims (1)

  1. アルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を主モノマー成分とし、さらに構成モノマーとして含窒素モノマーとカルボキシル基又は酸無水物基を含むモノマーとを、それぞれモノマー成分全量に対して2〜30重量%含む(メタ)アクリル系ポリマーからなり、初期弾性率が0.5kg/mm2以上、破断強度が1kg/mm2以上、且つ応力緩和率が40%以上であり、フィルム基材を構成する(メタ)アクリル系ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)が−20℃以上である粘着テープ用フィルム基材。
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