JP4528453B2 - 試薬付与パッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料を付着させた試料プレートを重ね合わせ、該試料プレートとの間に形成した隙間に試薬を導入することにより試料に試薬を付与する試薬付与パッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばISH(In Situ Hybridization)法による遺伝子の機能解析を行う際などには、スライドガラス等の試料プレートに付着させた生物組織切片等の試料を様々な試薬を付与して処理する場合がある。そのような場合において、微量の試薬(薬液)で試料を処理することができる試薬処理装置が特開平9−281017号公報において本願出願人により提案されている。
【0003】
同公報に開示された試薬処理装置は、試薬供給プレート(試薬付与パッド)なる部材を有し、これを試料を付着させたスライドガラスに重ね合わせ、それらの間に形成された隙間に試薬を導入することにより試料に試薬を付与するものである。
【0004】
図4は、同公報に開示された試薬処理装置における試薬付与パッドによってスライドガラスに付着させた試料に試薬を付与した状態を示す縦断面図である。
【0005】
図4に示す試薬付与パッド9は、ほぼ長方形の板状をなしており、その内部には、試薬を貯留可能な貯留部(貯留空間)91が形成されている。また、試薬付与パッド9のスライドガラス7に対面する方の面である試薬供給面92には、試薬供給口93が開口しており、この試薬供給口93は、貯留部91の図4中下端部に連通している。また、貯留部91は、試薬付与パッド9の図4中上端部で外部に開放しており、開口部94が形成されている。
【0006】
前記試薬処理装置においては、このような試薬付与パッド9を用いて次のように試薬を付与する。まず、図示しない分注ノズル等により開口部94から試薬R1を貯留部91内に注入する。このとき、表面張力の作用により、試薬供給口93から貯留部91内の試薬R1が漏れ出すことはない。
【0007】
次いで、試薬R1を貯留した試薬付与パッド9をスライドガラス7に重ね合わせる。これにより、試薬付与パッド9とスライドガラス7との間には隙間が形成され、貯留部91内に貯留された試薬R1は、試薬供給口93から流出して、この隙間に毛管現象(表面張力)により自然に広がっていく。
【0008】
このようにして、図4に示すように、試薬付与パッド9とスライドガラス7との隙間のほぼ全域に試薬R1が導入され、スライドガラス7に付着された試料S1に試薬R1が付与される。これにより、必要最小限の量の試薬で確実に試料を処理することができ、試薬の無駄がなく、高価で貴重な試薬を用いる場合には特に有効である。
【0009】
このような試薬付与パッド9を有する試薬処理装置の中には、多くのスライドガラス7を効率良く配置して装置の小型化を図るために、図4に示すように2枚のスライドガラス7を背中合わせにして保持するものがある。
【0010】
すなわち、このタイプの試薬処理装置においては、図4に示すように、試料S1、S2をそれぞれ付着させた2枚のスライドガラス7が背中合わせの状態とされ、それらの上端部においてホルダー8で支持されている。そして、この背中合わせとされた2枚のスライドガラス7を両側から2枚の試薬付与パッド9で挟むようにして、それぞれのスライドガラス7に対して試薬付与パッド9を重ねる。
これにより、試料S1、S2に対し試薬R1、R2をそれぞれ付与する。
【0011】
この際、付与した試薬の量が多い場合などには、図4中の矢印Aおよび矢印Bで示す箇所(図4中の下端部)に余剰の試薬が溜まることがあり、場合によってはA部に溜まった試薬R1とB部に溜まった試薬R2とが互いに反対側のスライドガラス7に回り込むことがある。このとき、試薬R1、R2が同じものである場合には問題ないが、異なる試薬である場合には、相互にコンタミネーション(汚染)を生じる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、コンタミネーションを防止し、常に正確な処理を行うことができる試薬付与パッドを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
【0014】
(1) 背中合わせにした2枚の試料を付着させた試料プレートに対し、それらを両側から挟むようにして2枚組で使用され、各前記試料プレートとの間に形成された隙間に試薬を導入することにより前記試料に前記試薬を付与する試薬付与パッドであって、
各前記試薬付与パッドは、前記試料プレートに対面する試薬供給面に開口する試薬供給口と、
前記試薬供給口と連通し、試薬を貯留する貯留部と、
前記試薬付与パッドの一端部に設けられた試薬を保持し得、前記試薬供給面に開放する溝で構成された試薬保持手段とを有し、
各前記試薬保持手段で各前記試薬を保持することにより、一方の前記試料プレート側に導入された一方の前記試薬が、他方の前記試料プレート側に回り込むのを防止したことを特徴とする試薬付与パッド。
【0015】
(2) 前記試薬保持手段が他端部にも設けられている上記(1)に記載の試薬付与パッド。
【0017】
(3) 前記溝の幅は、0.05〜2mmである上記(1)または(2)に記載の試薬付与パッド。
【0018】
(4) 前記溝の深さは、0.05〜5mmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の試薬付与パッド。
【0019】
(5) 前記溝は、格子状に形成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の試薬付与パッド。
【0020】
(6) 前記溝は、幅方向の全体に渡って形成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の試薬付与パッド。
【0021】
(7) 前記溝は、厚さ方向の全体に渡って形成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の試薬付与パッド。
【0022】
(8) 各前記試薬は、互いに異なる上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の試薬付与パッド。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の試薬付与パッドを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の試薬付与パッドの実施形態を示す斜視図(斜め下から見た図)である。なお、以下の説明では、図1中の下側を「一端」、上側を「他端」、上下方向を「長手方向」、左右方向を「幅方向」と言う。
【0025】
図1に示す試薬付与パッド1は、生物組織切片等の試料S1が付着されたスライドガラス(試料プレート)7を重ねることにより、該スライドガラス7との間に形成された隙間に試薬(薬液)R1を導入し、これにより試料S1に試薬R1を付与するものであり、例えば、生物組織に対してISH(In Situ Hybridization)法の処理を行う処理装置などに使用することができるものである。
【0026】
この試薬付与パッド1は、全体形状として、図1中の上下方向に長い長方形の板状をなしている。
【0027】
試薬付与パッド1の内部の他端部側には、試薬R1を貯留可能な貯留部(貯留空間)11が形成されている。貯留部11の容積は、特に限定されないが、通常の大きさのスライドガラス7に対して使用するものの場合には、例えば40〜250μl程度とすることができる。
【0028】
試薬付与パッド1のスライドガラス7に対面する方の面である試薬供給面12には、試薬供給口(孔)13が開口している。この試薬供給口13は、試薬付与パッド1の長手方向中央よりもやや他端部寄りに配置されており、貯留部11の一端部に連通している。また、試薬供給口13の開口面積は、スライドガラス7に重ねない状態のときに、貯留部11内の試薬R1が表面張力によって外部に流出しない程度に設定されている。貯留部11に貯留された試薬R1は、試薬供給口13からスライドガラス7との隙間に導入される。
【0029】
貯留部11は、試薬付与パッド1の他端部で外部に開放しており、開口部14が形成されている。貯留部11内には、この開口部14から試薬を注入することができる。
【0030】
試薬供給面12における図1中の左端部および右端部には、それぞれ、試薬付与パッド1とスライドガラス7との間の隙間(間隔)を規定するスペーサーとしての機能を有する凸条17が長手方向にそって形成されている。これにより、試薬供給面12とスライドガラス7との間隔が好適な寸法に規定され、試薬R1が毛管現象(表面張力)により確実に導入されるとともに、スライドガラス7に付着された試料S1を損傷することがない。
【0031】
試薬付与パッド1の構成材料は、特に限定されず、例えば各種樹脂材料や各種金属材料等を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
試薬付与パッド1の大きさは、特に限定されないが、通常のスライドガラス7に対して使用するものとしては、例えば、長さ30〜80mm程度、幅10〜30mm程度、厚さ2〜5mm程度とされる。
【0033】
このような試薬付与パッド1の一端部には、余剰の試薬R1を保持し得る試薬保持手段としての溝15が形成されている。これにより、試料S1を付着させたスライドガラス7と重ねて試薬を付与したときに、試薬付与パッド1とスライドガラス7との隙間から溢れ出した余剰の試薬R1が溝15内に吸収・保持され、コンタミネーションを防止することができる。
【0034】
本実施形態においては、厚さ方向の溝15が好ましくは等間隔で11列程度、幅方向の溝15が好ましくは等間隔で3列程度形成されており、これらの溝15は、幅方向および厚さ方向の全体に渡って形成されている。すなわち、溝15は、格子状に形成されており、各々の溝15は互いに連通(連続)している。
【0035】
このような構成により、余剰の試薬R1が多量の場合でもこれを吸収・保持することができる。また、試薬R1の垂れが局所的に生じ、溝15の一部から余剰の試薬R1が入り込んだ場合でも、その試薬R1は毛管現象により溝15の全域に自然に広がり、溝15全体の試薬保持能力が活用される。これにより、より確実にコンタミネーションを防止することができる。
【0036】
溝15の幅(図2中のLで示す長さ)は、特に限定されないが、0.05〜2mm程度であるのが好ましく、0.5〜1mm程度であるのがより好ましい。
【0037】
また、溝15の深さは、特に限定されないが、0.05〜5mm程度であるのが好ましく、1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0038】
溝15の幅や深さが前記範囲にあることにより、余剰の試薬R1がより速やかに溝15内に吸収されるとともに、吸収された試薬R1をより確実に保持することができる。
【0039】
本実施形態の試薬付与パッド1には、溝15と同様の溝16が他端部にも形成されている。これにより、溝16においても余剰の試薬R1が吸収・保持され、より確実にコンタミネーションを防止することができる。なお、溝16は、貯留部11の開口部14を避けて形成されている。
【0040】
次に、試薬付与パッド1の作用について説明する。
図2および図3は、それぞれ、図1に示す試薬付与パッド1の使用状態を示す縦断面図であり、図2は、スライドガラス7に重ねる前の状態を示しており、図3は、スライドガラス7に重ねた後の状態を示している。
【0041】
図2に示すように、試薬R1を貯留部11に貯留した試薬付与パッド1と、試薬R2を貯留部11に貯留した試薬付与パッド1とは、試薬供給面12同士を向かい合わせた状態で図示しない支持部材により支持されている。このとき、試薬供給口13においては、試薬R1、R2の表面張力により、試薬R1、R2が漏れ出すことはない。
【0042】
試料S1、S2をそれぞれ付着させた2枚のスライドガラス7は、背中合わせの状態で、その上端部においてホルダー8に支持されている。2枚のスライドガラス7は、このような状態で、向かい合った2枚の試薬付与パッド1の間に挿入される。
【0043】
図2に示す状態から、2枚の試薬付与パッド1は、それぞれ、図示しない移動機構によりスライドガラス7に近づくように移動し、スライドガラス7に重ね合わせられ、図3に示す状態となる。
【0044】
これにより、試薬付与パッド1とスライドガラス7との間には隙間が形成され、貯留部11内に貯留された試薬R1、R2は、それぞれ、試薬供給口13から流出して、この隙間に毛管現象(表面張力)により自然に広がっていく。
【0045】
このようにして、図3に示すように、試薬付与パッド1とスライドガラス7との隙間のほぼ全域に試薬R1、R2がそれぞれ導入され、各々のスライドガラス7に付着された試料S1、S2に試薬R1、R2がそれぞれ付与される。これにより、必要最小限の量の試薬で確実に試料を処理することができ、試薬の無駄がなく、高価で貴重な試薬を用いる場合には特に有効である。
【0046】
また、試薬付与パッド1とスライドガラス7との隙間から図3中下端部に溢れ出した場合、余剰の試薬R1、R2は、それぞれ、試薬付与パッド1の溝15内に吸収され、保持される。よって、図3中の矢印C部および矢印D部に試薬R1、R2が溜まることが防止(抑制)される。これにより、矢印C部と矢印D部との間で試薬が互いに回り込むことがなく、試薬R1と試薬R2とが互いに異なる場合であっても、コンタミネーションを防止して、正確な処理を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態においては、試薬付与パッド1の図3中上端部においても、溝16によって余剰の試薬R1、R2が、それぞれ、吸収・保持され、矢印C部および矢印D部に流出する量が減少される。これにより、余剰量が多い場合であっても矢印C部および矢印D部に試薬R1、R2が溜まることがより確実に防止(抑制)され、より確実にコンタミネーションを防止することができる。
【0048】
以上、本発明の試薬付与パッドを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、試薬付与パッドを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0049】
例えば、余剰の試薬を保持し得る試薬保持手段としては、溝に限らず、例えば凹部や孔部を形成したり、試薬を吸収し得る吸水部材を設置したり、これらを組み合わせたりするような構成であってもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、必要最小限の量の試薬で試料を処理することができ、試薬の無駄がない。
【0051】
また、試薬付与パッドと試料プレートとの隙間から外部に溢れ出た余剰の試薬が試薬付与パッドの端部等に溜まることが防止(抑制)され、他の試薬付与パッドにより付与された他の試薬と相互にコンタミネーションを生じることがない。
これにより、相互に異なる試薬を付与する試薬付与パッドを組み合わせて使用する場合や、試薬の量が多い場合であっても確実にコンタミネーションを防止することができ、常に正確な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試薬付与パッドの実施形態を示す斜視図(斜め下から見た状態)である。
【図2】図1に示す試薬付与パッドの使用状態を示す縦断面図(スライドガラスに重ねる前の状態)である。
【図3】図1に示す試薬付与パッドの使用状態を示す縦断面図(スライドガラスに重ねた後の状態)である。
【図4】従来の試薬付与パッドによってスライドガラスに付着させた試料に試薬を付与した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 試薬付与パッド
11 貯留部
12 試薬供給面
13 試薬供給口
14 開口部
15、16 溝
17 凸条
7 スライドガラス
8 ホルダー
9 試薬付与パッド
91 貯留部
92 試薬供給面
93 試薬供給口
94 開口部
R1、R2 試薬
S1、S2 試料
Claims (8)
- 背中合わせにした2枚の試料を付着させた試料プレートに対し、それらを両側から挟むようにして2枚組で使用され、各前記試料プレートとの間に形成された隙間に試薬を導入することにより前記試料に前記試薬を付与する試薬付与パッドであって、
各前記試薬付与パッドは、前記試料プレートに対面する試薬供給面に開口する試薬供給口と、
前記試薬供給口と連通し、試薬を貯留する貯留部と、
前記試薬付与パッドの一端部に設けられた試薬を保持し得、前記試薬供給面に開放する溝で構成された試薬保持手段とを有し、
各前記試薬保持手段で各前記試薬を保持することにより、一方の前記試料プレート側に導入された一方の前記試薬が、他方の前記試料プレート側に回り込むのを防止したことを特徴とする試薬付与パッド。 - 前記試薬保持手段が他端部にも設けられている請求項1に記載の試薬付与パッド。
- 前記溝の幅は、0.05〜2mmである請求項1または2に記載の試薬付与パッド。
- 前記溝の深さは、0.05〜5mmである請求項1ないし3のいずれかに記載の試薬付与パッド。
- 前記溝は、格子状に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の試薬付与パッド。
- 前記溝は、幅方向の全体に渡って形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の試薬付与パッド。
- 前記溝は、厚さ方向の全体に渡って形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の試薬付与パッド。
- 各前記試薬は、互いに異なる請求項1ないし7のいずれかに記載の試薬付与パッド。
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2001
- 2001-02-14 JP JP2001037499A patent/JP4528453B2/ja not_active Expired - Fee Related
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