従来から、指紋をパターン認識し、個人の認証などを行う技術が開発されている。パターン認識は、複数の素子を基板上でマトリクス状に配置し、各素子の状態変化を検出して行う。指紋の認証には、次のような光学方式、静電方式、圧電方式および熱伝導方式を用いることが可能である。
コスト面から、光学方式と熱伝導方式とが注目される。光学方式は、広く使用されている撮像素子を用いて画像のパターン認識を行う。ただし、実際の指紋と指紋の画像との判別システムが必要となる。熱伝導方式は、凹凸や体温などのパターンで指紋を認識するので、複写画像などの疑似指紋との判別も可能となるので、有効な方式と考えられる。
熱伝導方式の指紋検出装置では、指を載置する検出面の下部に複数の温度センサ兼発熱素子を配設し、各発熱素子に電圧パルスを印加することにより発生した熱が指紋の谷部と山部に伝熱する伝熱特性の差に基づいて指紋画像を検出する(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
特許文献2によれば、固体表面の凹凸パターン検出は、マトリクス状に配置される複数の発熱素子の温度分布に基づいて行う。各発熱素子の温度の検出は、各発熱素子の抵抗値を測定することにより行う。抵抗値の測定は、各発熱素子への通電時に、通電によって発熱素子の両端に発生する電圧を利用して行う。
図8は、指紋を熱伝導方式による固体表面の凹凸パターンとして検出するための凹凸パターン検出装置1の概略的な電気的構成を示す。この凹凸パターン検出装置1は、矩形状に形成されて、その上表面に固体表面(たとえば、ヒトの指)を押し当てるための凹凸検出部2と、凹凸検出部2の出力電圧として検出された信号を処理する信号処理部3とを、含む。凹凸検出部2には、列アドレス線4、行アドレス線5および発熱素子6とが設けられている。列アドレス線4は、凹凸検出部2の内部水平面内にて、X軸方向に等間隔(たとえば約50μm)、かつX軸と垂直なY軸に平行に配置される導体からなり、M本(図8では、M=4)が設けられる。行アドレス線5は、Y軸方向に等間隔(たとえば約50μm)かつX軸に平行に配置されて、列アドレス線4とは電気的に接続されることなく立体的に交差する導体からなるN本(図8では、N=4)が設けられる。発熱素子6は、列アドレス線4と行アドレス線5との各交点に設けられる。各発熱素子6は、一端が列アドレス線4に、他端が行アドレス線5に、それぞれ電気的に接続される。
すなわち、発熱素子R1〜R16が4列×4行のマトリクス状に配置される場合、第1列(X1)にはR1,R5,R9,R13、第2列(X2)にはR2,R6,R10,R14、第3列(X4)にはR3,R7,R11,R15、第4列(X4)にはR4,R8,R12,R16の一端がそれぞれ接続され、第1行(Y1)にはR1,R2,R3,R4、第2行(Y2)にはR5,R6,R7,R8、第3行(Y3)にはR9,R10,R11,R12、第4行(Y4)にはR13,R14,R15,R16の他端がそれぞれ接続される。なお、各発熱素子6は、温度が高くなるに従って電気抵抗値がほぼ線形的に小さくなる特性を有している。
この凹凸検出部2の列アドレス線4には、列駆動回路7がそれぞれ接続されている。この列駆動回路7はシフトレジスタ8とオープンソース型のスイッチングトランジスタ9とから成り、列アドレス線4がスイッチングトランジスタ9のソース電極に接続され、ドレイン電極には発熱素子6に印加するパルス電源からのパルス印加電圧+VHが接続されている。また、行アドレス線5には行駆動回路10がそれぞれ接続されている。この行駆動回路10は、シフトレジスタ11とオープンドレイン型のスイッチングトランジスタ12とから成り、行アドレス線5がスイッチングトランジスタ12のドレイン電極に接続され、ソース電極が共通に1つの負荷抵抗13を介して接地されている。負荷抵抗13に発生する電圧は、バッファアンプ14を介して凹凸検出部2の出力信号Voutとして出力される。
ここで、凹凸検出部2の駆動においては、まず、列駆動回路7および行駆動回路10のシフトレジスタ8,11に、信号処理部3の列順次パルス発生器15および行順次パルス発生器17からクロック信号CLK1,CLK2とスタート信号SI−1,I−2がそれぞれ入力され、図9に示すようなタイミングにて順次、発熱素子6が通電制御される。
ここで、列順次パルス発生器15および行順次パルス発生器16には、図示を省略しているクロック発生器からのクロック信号CLKをカウントするカウンタ17の出力が接続されている。列順次パルス発生器15は、カウンタ17の複数ビットの出力のうちの下位の複数ビットを入力して、下位複数ビットの2値信号をデコードすることにより、図9に示すような順次パルスX1−ON〜X4−ONを繰り返し出力する。行順次パルス発生器16は、カウンタ17の複数ビットの出力のうちの上位の複数ビットを入力して、上位複数ビットの2値信号をデコードすることにより、図9に示すような順次パルスY1−ON〜Y4−ONを繰り返し出力する。
こうして、凹凸検出部2で形成された出力信号Voutは、凹凸パターン検出装置1の後段の信号処理部3に入力される。まず、図8に示すように、入力された出力信号Voutは、比較器18の非反転側入力(+)に与えられる。比較器18の反転側入力(−)には、基準電圧Vrefが供給されている。比較器18は、非反転側入力(+)の電圧が反転側入力(−)の電圧以上であるときハイレベル信号を出力し、かつ非反転側入力(+)の電圧が反転側入力(−)の電圧未満であるときローレベル信号を出力する。指紋の山部と谷部との違いは、出力信号Voutに2つの異なる電圧値として反映される。基準電圧Vrefは、この信号処理部3へバッファアンプ14を経て入力される2つの電圧値の中間値に設定されており、基準温度に対応するものである。
比較器18の出力は、2入力のアンドゲート19の一方の入力に接続され、アンドゲート19の他方の入力にはゲーティングパルス発生器20からのゲーティングパルスGPが供給されるようになっている。ゲーティングパルス発生器20は、カウンタ17の下位の複数ビットとクロック発生器からのクロック信号CLKとを入力し、入力した複数ビットの信号をデコードしてゲーティングパルスGPを生成するものである。ゲーティングパルスGPは、図9に示すように、全ての順次パルスの立ち上がりから所定時間だけ遅れて、各順次パルスの立ち下がり寸前に発生される短い幅のパルス信号である。
アンドゲート19の出力は、メモリ装置21に接続されている。メモリ装置21は、クロック発生器およびカウンタ17にも接続されており、カウンタ17に同期して動作し、アンドゲート19からのハイレベルおよびローレベルからなる2値信号を、2値データとして、凹凸検出部2の各発熱素子6にそれぞれ対応するアドレスに順次記憶していくものである。このメモリ装置21には画像処理装置22が接続されている。画像処理装置22は、メモリ装置21に記憶されている2値データを用いた画像処理により、指紋を再現して画面表示したり、紙に印刷するものである。
この従来の凹凸パターン検出装置1の凹凸検出部2においては、列駆動回路4のスイッチングトランジスタ9と行駆動回路10のスイッチングトランジスタ12とは、列順次パルス発生器15と行順次パルス発生器16とからの順次パルスにより制御されて、列アドレス線4と行アドレス線5との交点に接続される発熱素子6に順次パルスのパルス幅分の電圧を順次印加する。このとき、凹凸検出部2の行アドレス線5は順次パルスのパルス幅分の時間だけ負荷抵抗13を介して接地されることになる。したがって、マトリクス状に配置されている多数の発熱素子6には、電流が順次パルスに等しい時間だけ順次流れる。各発熱素子6は、通電により発熱し、その温度を通電開始時から指数関数的に上昇させるとともに、通電停止時から指数関数的に下降させる。各発熱素子6の抵抗値は、温度の上昇に従ってほぼ線形的に減少するように設定されているので、通電開始時から指数関数的に減少するとともに、通電停止時から指数関数的に増加する。したがって、バッファアンプ14の出力信号Vout、すなわち発熱素子6と負荷抵抗13とによって分圧される電圧は、通電開始時から指数関数的に上昇するとともに通電停止時から指数関数的に下降し、図9にVOUTとして示すような各発熱素子6の温度(抵抗値)をそれぞれ表す時分割アナログ信号となる。
ここで、凹凸検出部2の上表面にヒトの指を押し当てると、多数の発熱素子6のあるものは指紋の山部に対向し、あるものは指紋の谷部に対向する。各発熱素子6をヒトの体温よりも高温に加温するように通電すると、指紋の山部に対向する発熱素子6は、熱伝導で指紋の谷部に対向する発熱素子6よりも温度が低くなる。バッファアンプ14の出力信号Voutは、指紋の山部に対応した振幅の小さな電圧信号と、指紋の谷部に対応した振幅の大きな電圧信号を混在させたアナログパルス列信号となる。
特開2000−97690号公報
特開2003−168107号公報
しかし、従来技術による凹凸パターン検出装置1の凹凸検出部2で用いられる発熱素子駆動方法は、順次走査法といわれるものであり、各発熱素子6を1つずつ選択しながら順次駆動する。この駆動方法では、発熱素子6がM列およびN行(M、Nは2以上の整数)のマトリクス構造の場合、少なくとも通電パルス幅に発熱素子総数を乗じた時間が走査時間として必要になる。たとえば、M=N=32とし、各発熱素子6を1msecずつ通電するとすれば、全部の発熱素子6を順次通電するのに、約1秒の時間を要する。この1秒の間には、ヒト脈拍による圧力変化が影響する可能性がある。長時間にわたって繰り返してパターン検出を行うとしても、ヒトの指が凹凸検出部2を一定の状態で押さえ続けることは困難である。このように、各素子毎に順次通電する方法では、検出装置として非常に低速であり、時間が経過すると温度も変化するので、発熱素子数が増えれば増えるほど、検出特性(検出精度)が悪くなるという問題がある。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、固体表面の凹凸パターンなどを簡単かつ精度よく高速に検出できるとともに、凹凸パターンを検出するための装置を小型かつ安価に製造することができる凹凸パターン検出装置および方法を提供することにある。
本発明は、複数の素子の各素子から、通電開始から一定時間経過後の通電状態変化を検出し、該検出の結果に基づき、通電状態の変化をもたらす原因となる固体表面の凹凸パターンを検出する凹凸パターン検出装置であって、
前記複数の素子の各素子に、1つの素子への通電の継続中に次の素子への通電が開始されていくように通電開始時期をずらしながら通電する通電手段と、
前記通電手段による通電開始から一定時間が経過した前記素子毎に、通電状態の変化を検出し、該検出の結果をシリアルに導出する検出手段とを含むことを特徴とする凹凸パターン検出装置である。
本発明に従えば、凹凸パターン検出装置は、複数の素子の各素子から、通電開始から一定時間経過後の通電状態変化を検出し、該検出の結果に基づき、通電状態の変化をもたらす原因となる固体表面の凹凸パターンを検出するために、通電手段と検出手段とを含む。通電手段は、複数の素子の各素子に、1つの素子への通電の継続中に次の素子への通電が開始されていくように通電開始時期をずらしながら通電するので、一定時間以上の通電を素子の数だけ繰り返すよりも短時間で、全部の素子に一定時間以上の通電を行うことができる。検出手段は、通電手段による通電開始から該一定時間が経過した前記素子毎に、通電状態の変化を検出し、該検出の結果をシリアルに導出するので、1つの検出手段で、複数の素子の通電状態変化を、シリアルに検出して、全体の素子に対する通電を短時間で行うことができ、検出手段の規模を小さくすることができる。したがって、たとえば素子として発熱素子を使用し、熱伝導の違いによって固体表面の凹凸パターンなどを簡単かつ精度よく高速に検出できるとともに、凹凸パターンを検出するための装置を小型かつ安価に製造することができる。
また本発明で、前記複数の素子は、M列N行(M,Nは2以上の整数)のマトリクス状に配列されており、
前記通電手段は、
第1列から第M列までの列毎に開始時期をずらせつつ、かつ各通電時間を列同士で一部重複させて通電するとともに、
第1行から第N行までの行毎に通電時間を重複させることなく通電させており、
前記検出手段は、前記通電手段によって選択して通電される1行毎に、第1列から第M列までの前記素子について通電状態の変化をシリアルに検出することを特徴とする。
本発明に従えば、複数の素子を、M列N行(M,Nは2以上の整数)のマトリクス状に配列されているので、各素子の配置を判り易くすることができる。通電手段は、第1列から第M列までの列毎に開始時期をずらせつつ、かつ各通電時間を列同士で一部重複させて通電するので、1つの列に対して通電を開始して一定時間が経過する前に、次の列への通電も、一部重複させて、順次行うことができ、全部の列への通電に要する時間を短縮することができる。第1行から第N行までは、行毎に通電時間を重複させることなく通電させるので、複数の列への通電が重複して行われても、行は重複して選択されず、特定の行のみ通電を行うことができる。検出手段は、通電手段によって選択して通電される1行毎に、第1列から第M列までの前記素子について通電状態の変化をシリアルに検出するので、各行毎に、第1列から第M列までの素子について、通電開始から一定時間経過後の通電状態の変化を、時間をずらせて、短時間で順次検出することができる。
また本発明で、前記素子は、抵抗素子であり、
前記通電手段は、前記各抵抗素子にパルス電流を通電して発熱させ、
前記検出手段は、前記抵抗素子の抵抗変化から、前記各素子の放熱状態の違いに基づいて固体表面の凹凸パターンを検出することを特徴とする。
本発明に従えば、前記各抵抗素子に順次パルス電流を通電して発熱させ、一定時間経過後の抵抗変化から、前記各抵抗素子の放熱状態の違いに基づいて固体表面の凹凸パターンを検出し、熱伝導方式による指紋検出などを行うことができる。
また本発明で、前記通電手段および前記検出手段は、シフトレジスタおよびスイッチ
ング素子をそれぞれ含み、
前記検出手段は、前記各素子の両端の電圧値の変化を検出することを特徴とする。
本発明に従えば、前記通電手段のシフトレジスタで、各素子に順次通電させるための制御信号を発生させ、スイッチング素子で通電の制御を行うことができる。前記検出手段は、シフトレジスタで、各素子を順次選択するための制御信号を発生させ、スイッチング素子で選択した素子の両端の電圧値の変化を検出するので、各素子を選択する順序と各素子の配置とに基づく凹凸パターン検出を行うことができる。
さらに本発明は、複数の素子の各素子から、通電開始から一定時間経過後の通電状態変化を検出し、該検出の結果に基づき、通電状態の変化をもたらす原因となる固体表面の凹凸パターンを検出する凹凸パターン検出方法であって、
前記複数の素子の各素子に、1つの素子への通電の継続中に次の素子への通電が開始されていくように通電開始時期をずらしながら通電し、
通電開始から一定時間が経過した前記素子毎に、通電状態の変化を検出し、該検出の結果をシリアルに導出することを特徴とする凹凸パターン検出方法である。
本発明に従えば、複数の素子を予め定める形状に配置しておき、各素子から、通電開始から一定時間経過後の通電状態変化を検出し、検出の結果に基づき、通電状態の変化をもたらす原因となる固体表面の凹凸パターンを検出する凹凸パターン検出方法で、各素子への通電と、各素子の通電状態の変化とを、迅速かつ簡単な構成で行うことができる。複数の素子の各素子には、1つの素子への通電の継続中に次の素子への通電が開始されていくように通電開始時期をずらしながら通電するので、一定時間以上の通電を素子の数だけ繰り返すよりも短時間で、全部の素子に一定時間以上の通電を行うことができる。通電開始から一定時間が経過した前記素子毎に、通電状態の変化を検出し、該検出の結果をシリアルに導出するので、1つの検出手段で、複数の素子の通電状態変化を、順次検出することができる。全体の素子に対する通電を短時間で行うことができ、各素子通電状態変化を順次検出して検出の結果をシリアルに導出すればよいので、検出手段の規模を小さくすることができる。
本発明によれば、一定時間以上の通電を素子の数だけ繰り返すよりも短時間で、全部の素子に一定時間以上の通電を行うことができる。1つの検出手段で、通電手段による通電開始から一定時間が経過した素子毎に、通電状態の変化をシリアルに検出することができる。全体の素子に対する通電を短時間で行い、各素子の通電状態変化を順次検出して検出の結果をシリアルに導出すればよいので、検出手段の規模を小さくすることができる。したがって、たとえば素子として発熱素子を使用し、熱伝導の違いによって固体表面の凹凸パターンなどを簡単かつ精度よく高速に検出できるとともに、凹凸パターンを検出するための装置を小型かつ安価に製造することができる。
また本発明によれば、複数の素子を、M列N行(M,Nは2以上の整数)のマトリクス状に配列し、第1行から第M行までの1行毎に、第1列から第M列までの前記素子について通電状態の変化を順次検出するので、通電開始から一定時間経過後の通電状態の変化を、時間をずらせて、短時間で順次検出することができる。
また本発明によれば、抵抗素子に順次パルス電流を通電して発熱させ、各抵抗素子の放熱状態の違いに基づく熱伝導方式の指紋検出などを行うことができる。
また本発明によれば、通電手段および検出手段のシフトレジスタとスイッチング素子とで、各素子に対する通電の制御と素子両端の電圧検出とを行うことができる。
さらに本発明によれば、複数の素子の各素子から、通電開始から一定時間経過後の通電状態変化を検出し、検出の結果に基づき、通電状態の変化をもたらす原因となる固体表面の凹凸パターンを検出するための各素子への通電と、各素子の通電状態の変化とを、迅速かつ簡単な構成で行うことができる。複数の素子の各素子には、一定時間以上の予め定める時間ずつ通電を行い、一定時間以上の通電を素子の数だけ繰り返すよりも短時間で、全部の素子に一定時間以上の通電を行うことができ、1つの検出手段で、複数の素子の一定時間経過後の通電状態変化を、シリアルに検出することができるので、全体の素子に対する通電を短時間で行うことができ、検出手段の規模を小さくすることができる。
図1は、本発明の基本的な考え方として、固体凹凸パターン検出装置の一つである指紋検出装置30について示す。図1(a)は、指紋検出装置30の使用状態を、部分的な断面構成として示す。ガラスやセラミックなどの電気絶縁性の基板30の表面に、ヒータ兼センサ層32が形成される。ヒータ兼センサ層32には、複数の抵抗素子33が配列される。抵抗素子33は、ダイオードやトランジスタとして形成し、抵抗として機能させることができる。このような場合の抵抗値の温度特性は、温度が上昇すると抵抗値が低下する負の温度特性となる。ヒータ兼センサ層32の表面に、指34を接触させると、指34の表面で指紋を形成する皮膚の山34aが各抵抗素子33に接触する。皮膚の谷34bは、対応する位置の抵抗素子33に接触しない。各抵抗素子33に通電して発熱させると、皮膚の山34aに接触している抵抗素子33は、皮膚の山34aへの熱伝導で、熱が逃げ、温度上昇の程度が、谷34bに対応する位置の抵抗素子33よりも小さくなる。
図1(b)は、各抵抗素子33を一定時間ずつ通電するタイミングを示す。各抵抗素子33を順次一定時間ずつ通電するのではなく、開始時間をずらしながら、順次一定時間の通電を行う。このため、複数の抵抗素子33で重複して通電され、全部の抵抗素子33に対する一定時間ずつの通電に要する時間は、各抵抗素子33毎に一定時間の発熱を順次繰り返すよりも短時間になる。
図1(c)は、各抵抗素子33の抵抗値を、通電開始時期から一定時間経過後で、各抵抗素子33毎に検出するタイミングを示す。各抵抗素子33への通電は、時間をずらしているので、各抵抗素子33毎の一定時間経過後の検出タイミングは、各抵抗素子33毎にずれる。このずれるタイミングに合わせて、サンプリングを切換えれば、1つの検出回路で、複数の抵抗素子33の抵抗値を順次検出することができる。各抵抗素子33の抵抗値の検出は、電圧の検出に基づく演算で行うことができ、通電時間に比較して短時間で済ますことができる。なお、サンプリングを行うタイミングは、1回の通電中に、複数回設定し、各回での抵抗値の変化状態を検出するようにしてもよい。
図2は、図1(a)の各抵抗素子33について、指34の山34aと谷34bとの凹凸への接触状態を判別するための電気的構成を示す。ここで、複数の抵抗素子33をマトリクス状に配列させ、各抵抗素子33を基準抵抗35と直列に接続する。基準抵抗35は、図1(a)の指34が接触しない位置に形成する。各抵抗素子33は通電によって発熱するので、発熱素子36として機能する。抵抗素子33の抵抗値の変化は、電源37の出力電圧VHを、基準抵抗35と発熱素子36とで分圧して得られる信号出力Voutの変化となる。1つの発熱素子37の通電と、その通電により温度を検知する部分、すなわち、列スイッチ38、行スイッチ39および出力スイッチ40によって、図1(b)および図1(c)に示すような動作を行わせることができる。
図3は、本発明の実施の一形態としての指紋検出装置41の指紋検出部42についての概略的な電気的構成を示す。この指紋検出装置41は、指紋画像を検出する凹凸検出部すなわち指紋検出部42と、出力電圧として検出された指紋凹凸出力信号を処理する信号処理回路43とを含む。ここで、この指紋検出装置41は、熱伝導方式によって指紋画像を取得し、指紋検出部42の矩形状の平面基板の下部に発熱素子と温度センサを兼用する複数の抵抗素子33をマトリクス状に作り込み、ラインごとに順次加熱して、その直後の温度上昇を複数の発熱素子すなわち温度センサで検出して指紋画像を得るようにしたものである。なお、温度検出原理については、先行技術と同様である。
次に、指紋検出装置41の構造についてさらに具体的に説明する。指紋検出部42は、たとえば矩形状の基板上において、X軸方向に等間隔かつX軸と垂直なY軸に平行に配置された導体からなるM本(Mは2以上の整数、本実施形態ではM=4)の列アドレス線44と、Y軸方向に等間隔かつX軸に平行に配置されて、列アドレス線44とは電気的に接続されることなく立体的に交差した導体からなるN本(Nは2以上の整数、本実施形態ではN=4)の行アドレス線45と、列アドレス線44および行アドレス線45の各交点に配置される抵抗素子33とを含む。各抵抗素子33は、一端を列アドレス線44、他端を行アドレス線45にそれぞれ電気的に接続した発熱素子36と温度センサとを兼用する。抵抗素子33のマトリクス状の配列上部を絶縁膜で覆うことにより、基板上に発熱素子兼温度センサ層を配設することになる。ここでは説明の便宜上、基板上に4列4行のマトリクス状の抵抗素子配列の場合を示すけれども、実際にはこの基板上にたとえば256×256個(合計65536個)の抵抗素子33をマトリクス状に形成することになる。
指紋検出部42の基板としては、石英、ガラス、ポリイミド、アルミナ、表面を絶縁化したSiなどが用いられる。ただし、これに限定されるものではなくその他の絶縁性材料を用いることもできる。
抵抗素子33は、検出面を加熱する発熱素子36と、温度を検出する温度センサとしての役割を果たしているので、この抵抗素子33には、発熱素子36としての特性と抵抗変化型の温度センサとしての特性が求められる。かかる抵抗素子33の材料としては、たとえばポリシリコン、アモルファスシリコンまたはITOなどの発熱素子材料がある。
そして、かかる温度の検出は、図2に示すように、この発熱素子36と基準抵抗35からなる回路に所定の電圧VHを印加し、その時発熱素子36に流れる電流の大きさによって発生する分圧を検出することによって行う(抵抗変化型温度検出素子)。なお、ここでは温度を検出する役割のみを果たす温度検出素子は設けていないので、指紋検出部42の内部構造が単純化され、検出面の表面状態(凹凸)を所望の状態とすることが容易となるという特徴がある。
また、ここでは指紋のピッチが数百μm程度であることを考慮して、抵抗素子33の配列ピッチを50〜100μm程度にするとともに、抵抗素子33の厚さを0.1〜1μm程度にしている。
指紋検出部42を覆う絶縁膜は、検出面を形成する層であり、抵抗素子33、列アドレス線44および行アドレス線45などを保護する。この絶縁膜は、その特性上できるだけ薄くすることが求められるが、ここでは絶縁膜自体の厚さを0.5〜2μm程度としている。なお、この絶縁膜の材料としては、たとえば、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの絶縁性材料があげられる。
指紋検出部42内には、抵抗素子33のマトリクス回路とともに、図2の列スイッチ38として機能する列駆動回路47が設けられる。列駆動回路47には、各列を順次的に駆動するタイミングを合わせるために、列数分のシフトレジスタ48およびスイッチングトランジスタ49が含まれる。また、行スイッチ39として機能する行駆動回路50も設けられる。行駆動回路50には、各行を順次選択的に駆動するタイミングを合わせるために、行数分のシフトレジスタ51およびスイッチングトランジスタ52が含まれる。さらに出力スイッチ40として機能する列分圧検出回路53も設けられる。列分圧検出回路53の出力は、バッファアンプ54を介して出力信号Voutとして導出される。列分圧検出回路53には、各列を順次的にサンプリングするタイミングを合わせるために、列数分のシフトレジスタ55およびスイッチングトランジスタ56が含まれる。
この図3に対応させて、図2の温度検知回路の動作原理を説明すると、まず、列駆動回路47内のスイッチングトランジスタ49と行駆動回路50内のスイッチングトランジスタ52とが同時にオンされると、1つの発熱素子36が通電状態となる。このとき、列駆動回路47内の基準抵抗35と発熱素子36は直列に接続されているので、印加されたパルス電源37の電圧VHがそれぞれの抵抗値に応じて分圧される。これに対し、列分圧検出回路53内のスイッチングトランジスタ56をオンすることにより、その発熱素子36の両端に発生する指紋の凹凸に対応した電圧変化を検知することができるのである。
結局、本実施形態としての凹凸パターン検出装置では、発熱素子36の一方が列駆動回路47のスイッチングトランジスタ49および基準抵抗35を介して発熱素子通電用のパルス電源37に接続されると同時に、列分圧検出回路53のスイッチングトランジスタ56とバッファアンプ54を介して分圧出力信号端子に接続され、他方は、行駆動回路50のスイッチングトランジスタ52を介して接地されている。
図4は、指紋検出装置41の全体的な回路構成を示す。発熱素子マトリクス回路60は、上述のような抵抗素子33、列アドレス線44および行アドレス線45を含む。このような発熱素子マトリクス回路60とともに、列駆動回路47、行駆動回路50および列分圧検出回路53を含んで指紋検出部42が構成される。すなわち、この発熱素子マトリクス回路60の列アドレス線44には列駆動回路47がそれぞれ接続されている。この列駆動回路47はシフトレジスタ48とオープンソース型のスイッチングトランジスタ49とを含み、列アドレス線44がスイッチングトランジスタ49のソース電極に接続され、ドレイン電極には基準抵抗35を介して発熱素子36に印加するパルス電源37からの電圧+VHが与えられる。また、行アドレス線45には行駆動回路50がそれぞれ接続されている。この行駆動回路50はシフトレジスタ51とオープンドレイン型のスイッチングトランジスタ52とを含み、行アドレス線45がスイッチングトランジスタ52のドレイン電極に接続され、ソース電極が共通に接地されている。
列分圧検出回路53は、マトリクス状に配置した各発熱素子36から温度に係るデータを受け取って温度を検知する回路である。具体的には、この列分圧検出回路53はシフトレジスタ55とオープンドレイン型のスイッチングトランジスタ56とを含み、列アドレス線44がスイッチングトランジスタ56のドレイン電極に接続され、ソース電極が共通に接続される。列分圧検出回路53からは、実質的に発熱素子36両端で発生し、変化する電圧(分圧出力信号)を、バッファアンプ54を介して指紋検出部42の出力信号Voutとして出力するようになっている。
ここで、さらに、上述の指紋検出部42の後段に接続される信号処理回路43について説明する。信号処理回路43は、指紋検出部42によって検出された温度信号(分圧出力信号)Voutに基づいて指紋画像を生成する処理部である。この信号処理回路43は、指紋検出装置制御部61、電圧パルス出力部62、凹凸認識部63、凹凸検出判定部64、および画像データ出力部65を含む。これら各部は指紋検出装置制御部61による制御の下、以下のように動作する。
矩形状の基板上面、いわゆる検出面へ指が載置された場合、検出装置制御部61は図示しない方法によりこれを検知し(たとえば、検出面に生体検知センサを設けて指が置かれたときの静電容量の変化により検知したり、別途押圧検知センサにより検出面に所定の圧力が加わったことを検知する)、この指の指紋画像を検出すべく、電圧パルス出力部62に測定開始の指示を送る。これを受けた電圧パルス出力部62は、指紋検出部42の各行アドレス線44、列アドレス線45へ定電圧パルスを印加するように、列駆動回路47、行駆動回路50および列分圧検出回路53に制御信号を送ることにより、発熱素子36を加熱し、温度検出を行う。その結果、選択された発熱素子36それぞれの温度に応じた信号(温度信号)が凹凸認識部63に出力される。
その後、この温度信号を得た凹凸認識部63は、該温度信号(温度分布)に基づいて指紋画像を形成し、凹凸検出判定部64が入力された指紋画像のコントラストを予め設定されているしきい値と比較し、コントラストがしきい値を越える場合には指紋画像が良好なものであると判定し、画像データ出力部65から指紋画像を出力する。もし、判定結果が良好でない場合には、(たとえば指が極度に乾燥している場合)、再度指紋検出制御部61より指紋検出部42への再測定の制御信号を、電圧パルス出力部62から出力する。この出力としては、たとえば、電圧パルスの印加電圧を上昇させたり、または電圧パルス通電時間を増加して、発熱素子36を加熱し、再測定することになる。
図5は、マトリクス状に配列された発熱素子36を有する指紋検出部42の動作のタイミングについて示す。まず、列駆動回路47によって、第1列目〜第4列目の列アドレス線44が順次選択される。具体的にはクロック信号CLK1(たとえばクロック周波数8kHz)に同期させて、所定発熱素子通電時間の幅(たとえば1.0msec)を有するスタートパルス信号SI−1をシフトレジスタ48に入力させることで、1クロック周期分(0.125msec)遅延しながら、それぞれのスイッチングトランジスタ49(SWx1,SWx2,SWx3,SWx4)がオンされ、4列の発熱素子R1、R2、R3、R4に、パルス電圧が順次印加される。
このとき、発熱素子R1、R2、R3、R4の接続された第1行目の行アドレス線45に接続されている行駆動回路50内のスイッチングトランジスタ52は、オン状態にされる。これによって、発熱素子36に通電することができる。そのため、具体的には、行駆動回路50のクロック信号CLK2の周波数は、実質的な4個の発熱素子36の通電時間の論理和(1msec+0.125msec×3=1.375msec)の逆数に設定し、列駆動回路47のスタート信号SI−1と同期させて行駆動回路50のスタート信号SI−2とともに、シフトレジスタ51に入力すればよい。
さらに、列分圧検出回路53においては、列駆動回路47に同期させて、該当発熱素子36の通電開始時の電圧と通電終了直前の電圧が測定されるように制御する。具体的には、クロック信号CLK3の周波数をCLK1と同じとし、スタート信号SI−3によって、4個の発熱素子36に接続されたスイッチングトランジスタ56を発熱素子通電開始時および通電終了直前で順次オンさせ、発熱素子両端に発生する電圧を検出する。
こうして、第1の行アドレス線45に対する制御処理を第2、第3、第4の行アドレス線45に対しても同様に繰り返せば、本実施形態においては、5.5msec(1.375msec×4=5.5msec)にて、指紋検出処理が終了し、16個全部の発熱素子36で発生する電圧を、バッファアンプ54を介して指紋検出部42の出力信号Voutとして出力するようになっている。
ここで、この指紋検出部42では、行アドレス線45を単に順々にずらしながら発熱素子マトリクス回路60へ電圧パルスを印加しているが、行間隔をあけながら各行に順次電圧パルスを印加してもよい。この行間隔をあける手法にて、隣接した発熱素子を順次加熱することにより生ずる平面的分解能の低下を防ぐことも可能である。
また、上述の実施形態では、基板上の発熱素子マトリクス回路60を1つのブロックとして説明したが、これに代えて、たとえば4ブロックに分割して、それぞれのブロックに対し列駆動回路47、行駆動回路50、列分圧検出回路53を設けてもかまわない。これにより、実質的に並列処理となるため、より高速な指紋検出が可能となることは言うまでもない。
さらに、列駆動回路47、行駆動回路50および列分圧検出回路53は、発熱素子マトリクス回路60に一体的に形成しても良い。この場合、矩形状の平面基板上にICを搭載する必要がなくなるので、指紋検出装置41を小型化できるメリットがある。
図6は、上述の凹凸認識部63についての構成を(a)で、動作タイミングを(b)でそれぞれ示す。図6(b)に示すように、図4の指紋検出部42からの分圧出力信号(出力信号)Voutは、発熱素子36に通電した直後(時刻t1)の温度が上がっていない状態での電圧値と、発熱素子36に通電をやめる直前(時刻t2)の温度が上がっている状態での電圧値とが、シリアル信号の形で出力されている。
そこで、まず、図4の信号処理回路43の凹凸認識部63に入力された出力信号Voutは、図6(b)に示すようにクロック信号CLK1に同期させて、図6(a)に示すアナログ/デジタル(以下、「A/D」と略称する)変換器70でA/D変換処理を行う。このとき同時にアドレスカウンタ71の動作に基き、A/D変換器70の出力として、通電直後の電圧値Vout−t1はt1メモリ72へ、通電をやめる直前の電圧値Vout−t2はt2メモリ73へ、それぞれ記憶される。そして、これらのt1メモリ72およびt2メモリ73に記憶されているデータは、減算回路74で処理され、通電直後と通電停止直前との電圧差信号、すなわち温度変動値として算出され、その後そのまま、グレースケール画像表示可能な多値の検出データとしてデジタル出力するのと並行して、比較器75を介して2値化し、指紋の山部谷部の検出結果としてのデジタル出力を行う。
なお、抵抗素子33への通電開始直後や通電終了直前でサンプリングを行うと、ノイズなどの影響を受けるおそれがあるので、時間をずらす方が好ましい。通電するパルス幅が必要な一定時間よりも長くなっても、全体の検出に要する時間への影響を小さくすることができる。
このように、上述の実施形態の指紋検出装置41においては、指紋検出部42にシフトレジスタ55とスイッチングトランジスタ56とを含む列分圧検出回路53を設け、後段の信号処理回路43においては、出力信号VoutをA/D変換してから、デジタルデータとして指紋画像データ処理を行うようになっている。一方、従来の指紋検出装置としては、特許文献2の先行技術に、出力信号Voutに相当する信号を、サンプルホールド回路と差動アンプによりアナログ演算処理を行う技術が開示されている。この場合、アナログの出力信号Voutに、これらサンプルホールド回路及び差動アンプの特性のばらつき、発熱そしの温度特性ばらつき等の劣化要因が付加されてしまうため、後段の画像デジタル処理でそれらに対して補正することは非常に困難である。本実施形態における凹凸認識部63の処理方法(出力信号Voutのデジタル化)は、凹凸検出部(指紋検出部42の構成と最適にマッチングしており、高精度の凹凸パターン検出装置を実現できる効果を奏するものである。
すなわち、本実施形態の凹凸パターン検出装置は、凹凸を有する被検出体を検出する凹凸パターン検出装置であって、M列N行(M、Nは2以上の整数)のマトリクス状に配列された複数の発熱素子36と、該複数の発熱素子36を独立して駆動するための列駆動回路47および行駆動回路50と、該発熱素子36に対して該列駆動回路47と並列に接続された列分圧検出回路53と、からなる凹凸検出部を有する凹凸パターン検出装置であって、前記列分圧検出回路53は、M個のシフトレジスタ55とM個のスイッチングトランジスタ56とからなる。
また、本実施形態の凹凸パターン検出装置は、前記発熱素子36の一方の端子は前記列駆動回路47のスイッチングトランジスタ49および基準抵抗35を介して発熱素子36への駆動電力の電源37に接続されると同時に、前記列分圧検出回路53のスイッチングトランジスタ56を介して分圧出力信号端子に接続され、他方の端子は、前記行駆動回路50のスイッチングトランジスタ52を介して接地されている。
また、さらに、凹凸パターン検出装置の凹凸検出部は、凹凸を有する被検出体を検出する凹凸パターン検出装置の一部であって、M列N行(M、Nは2以上の整数)のマトリクス状に配列された複数の発熱素子36と、該複数の発熱素子36を独立して駆動するための列駆動回路47および行駆動回路50と、該発熱素子36に対して該列駆回路47と並列に接続された列分圧検出回路53と、からなる凹凸検出部の制御方法において、列駆動回路47および行駆動回路50を制御することにより、1つの行配列ブロックにおける複数の発熱素子34に所定時間遅延させて順次パルス電流をそれぞれ通電して加熱すると同時に、列分圧検出回路53を列駆動回路47および行駆動回路50の制御に同期させて、前記複数の発熱素子36に対する各通電開始時および通電終了直前における分圧をそれぞれ前記遅延時間間隔で検出し、シリアルに分圧出力信号を出力することができる。
このような凹凸検出部を有する凹凸パターン検出装置によれば、固体表面の凹凸パターンを簡単かつ精度よく、高速に検出できるとともに、小型かつ安価に製造することができる。また、回路部が簡単な構成となるため集積回路として小型化が可能で、検出装置も小型化可能であり、製造も容易で生産性の高い装置となる。
図7は、指紋検出装置41をの主要部分の外観構成を、(a)で平面視、(b)で正面視してそれぞれ示す。指紋検出部42は、プリント配線基板(以下、「PCB」と略称する)80上に実装される。PCB80は大略的に矩形状であり、その一辺には、外部とのインタフェースのためのコネクタ81が設けられる。指紋検出部42は、たとえば1mm厚程度のガラス基板またはセラミック基板に、下部電極をアルミニウム(Al)で配線し、その上にアモルファスシリコン(a−Si)のダイオードを成膜して抵抗素子33による発熱素子マトリクス60を形成し、上部電極をAl配線と遮光導電膜で形成する。信号の読取りは、発熱素子マトリクス60の周辺に列駆動回路47、行駆動回路50および列分圧検出回路53となるドライバICを実装して行わせる。ドライバICの実装は、高さを低くするために、半田バンプで行うことが好ましい。
また各抵抗素子の抵抗値データの検出は通電中のいつでもよく、たとえば通電開始直後でもよい。更には、各検出データとの比較のための基準データが準備されていれば検出回数は各抵抗素子につき一回でもよい。すなわち、上述の場合では抵抗素子毎に通電開始直後に検出した抵抗値のデータを基準データとし、この基準データと通電終了直前に検出した抵抗値のデータとを比較していたが、これに換えて、たとえば全抵抗素子の抵抗値の平均値を割り出して、これを基準データとしてもよい。このようにすれば一抵抗素子あたり一回の抵抗値検出で、基準データと比較対象と成る個々の抵抗素子のデータとを得ることができる。この方法は抵抗素子同士の温度特性のバラツキが小さい場合に有効である。或は、各抵抗素子の温度特性の基準データを予め作成しておき、このデータと検出したデータとを比較してもよい。この場合も一抵抗素子あたりの抵抗値検出回数は一回で済む。
以上の実施形態では、凹凸を検出して指紋のパターンを熱伝導方式で検出する指紋検出装置41について説明しているけれども、平坦な部分が接触しても、部分的に熱伝導の状態が異なれば、熱伝導の状態の違いをパターンとして検出することができる。また、発熱素子36の配列は、2次元のマトリクス状ばかりではなく、たとえば1次元に配列させて、機械的に走査するような場合も、各素子の変化の検出に本発明を同様に適用することができる。さらに、指紋検出や他のパターン検出などでは、熱伝導方式とは異なる方式で検出する場合でも、各素子の選択的な駆動や出力の選択に、本発明を同様に適用することができる。