JP4525044B2 - マレイミド付加体およびそれを含有する組成物 - Google Patents
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Description
特に、チオール基を有する化合物を加硫促進剤としてゴム組成物に配合した場合には、配合時における低温での反応やロール混練時におけるゴムのやけが生起して作業性が低下したり、加硫時においてゴムの加硫が過度に進行して加硫戻りが生起したりする問題があった。
しかしながら、ビスマレイミド化合物をゴム組成物に配合した場合には、加硫時において、ビスマレイミド化合物の単独重合が生起したり、ビスマレイミド化合物により加硫反応が阻害されたり、ビスマレイミド化合物と加硫促進剤との反応によりビスマレイミド化合物自体が分解、ガス化したりする問題があった。
第1の態様に係るマレイミド付加体(以下、単に「本発明の第1のマレイミド付加体」という。)は、下記一般式(1)で表されるマレイミド付加体である。
炭素数5〜18の分岐していてもよい環状脂肪族基としては、具体的には、例えば、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等が挙げられ;
炭素数6〜18の分岐していてもよい芳香族基としては、具体的には、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2−メチル−1、4−フェニレン基、4−メチル−1,3−フェニレン、ビフェニル−4,4′−ジイル基、ジフェニルメタン−4,4′−ジイル基、ジフェニルスルホン−3,3′−ジイル基[スルホニルビス(1,3−フェニレン)基]、下記式(3)で表される置換基等が挙げられる。
また、これら以外に、上記一般式(1)中のR1 としては、後述するマレイミド化合物(B)の具体例からマレイミド基を除いた2価の残基であってもよい。
ここで、有機基とは、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルカノイルオキシ基、アラルキルオキシ基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子団により置換されていてもよい、アルキル基、シクロアルキル基もしくはアリール基等のことであり、オキシアルキル基、脂肪族炭化水素基、芳香族基、複素環基であることが好ましく、これらを組み合わせて形成される置換基であってもよい。これらのうち、後述する熱解離が生起し易いといった理由から、芳香族基または複素環基であることが好ましい。また、分岐して置換基を有する場合の置換基は、特に限定されないが、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
これらのうち、フェニル基、2−チアゾリン基、2−ベンゾチアゾール基、2−ベンゾオキサゾール基、2−ベンズイミダゾール基であることが好ましい。
上記チオール基含有化合物(A)は、活性水素基を有さない炭素数1〜24の分岐していてもよい有機基と1個のチオール基とで構成される化合物であれば特に限定されず、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいることが好ましい。
ここで、有機基は、上記一般式(1)中のR2 で説明したものと基本的に同一である。また、分岐して置換基を有する場合の置換基は、ビスマレイミド化合物(B)との反応に影響をおよぼさないものであれば特に限定されないが、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、5−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、5−メトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、5−ブロモ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−メトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−エトキシ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾールであることが、後述する熱解離後に加硫促進剤として働く理由からも好ましく、2−メルカプトベンゾチアゾールを用いることがより好ましい。
上記ビスマレイミド化合物(B)は、上記チオール基含有化合物(A)と反応し、上記一般式(1)で表されるマレイミド付加体が得られるビスマレイミド化合物であれば特に限定されない。
ここで、有機溶媒は、上記チオール基含有化合物(A)および上記ビスマレイミド化合物(B)がともに溶解するものであれば特に限定されず、その具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N, N−ジメチルホルムアミドが好適に挙げられる。これらのうち、メチルエチルケトン、N, N−ジメチルホルムアミドであることが溶解性が高い理由から好ましい。
反応終了後、減圧下で有機溶剤を濃縮除去することにより上記一般式(1)で表されるマレイミド付加体が得られる。
それらのうち、2−メルカプトベンゾチアゾールと1,6−ビスマレイミドへキサンとの反応物である下記式(4)に示される化合物、2−メルカプトベンゾチアゾールとN,N′−1,3−フェニレンジマレイミドとの反応物である下記式(5)に示される化合物、2−メルカプトベンゾチアゾールと4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミドとの反応物である下記式(6)に示される化合物および2−メルカプトベンゾチアゾールとN,N′−(スルホニルビス(1,3−フェニレン))ジマレイミドとの反応物である下記式(7)に示される化合物等が後述する熱解離し易い理由から好ましく挙げられる。
これらのうち、下記式(5)、(6)で示される化合物が経済的な理由から好ましい。
ここで、R1 は、上記一般式(1)中で説明したものと基本的に同一である。また、複数のR1 はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
R3 の炭素数1〜24の分岐していてもよい有機基としては、例えば、上記一般式(1)中のR2 で例示した活性水素基を有さない炭素数1〜24の分岐していてもよい有機基からさらに水素1原子を除いた基が挙げられる。
上記チオール基含有化合物(C)は、炭素数1〜24の分岐していてもよい有機基と2個のチオール基とで構成される化合物であれば特に限定されず、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいることが好ましい。
ここで、有機基は、上記一般式(2)中のR3 で説明したものと基本的に同一である。また、分岐して置換基を有する場合の置換基は、ビスマレイミド化合物(B)との反応に影響をおよぼさないものであれば特に限定されないが、アルキル基、ハロゲン原子が好ましい。
具体的には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンであることが、この化合物が個体で臭気がないため取り扱い易く、後述する熱解離し易いといった理由からより好ましい。
ここで、有機溶媒は、上記チオール基含有化合物(C)および上記ビスマレイミド化合物(B)がともに溶解するものであれば特に限定されず、その具体例としては、上記で例示した有機溶剤が挙げられる。
反応終了後、減圧下で有機溶剤を濃縮除去することにより上記一般式(2)で表されるマレイミド付加体が得られる。
それらのうち、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンと4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミドとの反応物である下記式(8)に示される化合物が後述する熱解離し易い理由から好ましく挙げられる。
この熱解離は、本発明のマレイミド付加体におけるマレイミド化合物からなる部位において生起するものであって、熱解離時間は、1〜60分であることが好ましく、1〜30分であることがより好ましい。
一方、上記一般式(10)で表される化合物は、ゴム加硫時に加硫を遅くしたり、単独重合反応を起こすなどの問題があった。
これに対し、本発明のマレイミド付加体をゴムもしくは樹脂組成物に配合した後に、熱解離により上記一般式(9)、(10)および(11)で表される化合物を分離生成させることにより、上述した配合時における低温での反応、ロール混練時におけるゴムのやけ、加硫戻りおよび単独重合反応等を防ぐことが可能となった。すなわち、上記一般式(1)および(2)で表されるマレイミド付加体は、熱解離温度以下においては、上記一般式(9)および(11)で表される化合物のチオール基の保護基として機能しているということになる。
本発明のゴム組成物の原料として用いるゴム成分は、特に限定されず、具体的には、天然ゴム(NR)系、イソプレンゴム(IR)系、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)系、天然ゴム/スチレン・ブタジエン共重合ゴム(NR/SBR)系、天然ゴム/ブタジエンゴム(NR/BR)系、天然ゴム/アクリロニトリルブタジエンゴム(NR/NBR)系、天然ゴム/クロロプレンゴム(NR/CR)系、ハロゲン化ブチルゴム、ポリ塩化ゴム、ハロゲン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴム、マレイン化ブチルゴム、マレイン化エチレンプロピレンゴム等が好適に例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
充填剤としては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土などのシリカ類;カーボンブラック、ホワイトカーボン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物の原料として用いる樹脂は、特に限定されず、具体的には、熱解離により分離生成する上記一般式(9)〜(11)で表される化合物のチオール基と反応して架橋形成し得るエポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、オキセタン基、酸無水物基を有する樹脂が好適に例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(参考例1)
メチルエチルケトン50g中に、4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミド35.8g(0.1mol)と2−メルカプトベンゾチアゾール16.7g(0.1mol)とトリエチルアミン1g(0.01mol)とを添加して、室温(25℃)で2時間反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを90℃で減圧除去し、下記式(6)で示されるマレイミド付加体(付加体1)を51.0g(反応収率97%)で得た。
得られた付加体1の化学シフトは、1 H−NMR(重クロロホルム)δ(ppm):3.1−3.5、4.0、4.5、6.9、7.2−7.6であった。
メチルエチルケトン100g中に、4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミド42.96g(0.12mol)と2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン27.20g(0.10mol)とトリエチルアミン1g(0.01mol)とを添加して、室温(25℃)で2時間反応させた。反応終了後、メチルエチルケトンを90℃で減圧除去し、下記式(8)で示されるマレイミド付加体(付加体2)を70.0g(反応収率100%)で得た。
得られた付加体2の化学シフトは、1 H−NMR(重クロロホルム)δ(ppm):0.9、1.3、1.7、3.2−3.6、4.0、4.5、6.9、7.3−7.6であった。
参考例1および実施例2で得られたマレイミド付加体(付加体1および付加体2)を、下記表1に示す組成成分(質量部)で、ポリイソプレンゴム(ゴム成分)、硫黄(加硫剤)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(加硫促進剤)と混合し、高粘度用混合ミキサーで均一に分散させて参考例3および実施例4のゴム組成物を得た。
また、マレイミド付加体を添加せずに、下記表1に示す組成成分(質量部)で、ポリイソプロピレンゴム、硫黄、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール(以下、単に「M」という。)、4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミド(以下、単に「BMI」という。)を混合し、高粘度用混合ミキサーで均一に分散させて比較例1〜4のゴム組成物を得た。
・ポリイソプレンゴム:Nipol IR2200(日本ゼオン社製)
・硫黄:粉末硫黄(軽井沢精錬所製)
・N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド:ノクセラーCZ−G(大内新興化学社製)
引張特性の評価は、得られた各ゴム組成物に180℃×10分の条件で加硫を施した加硫ゴム組成物について、加硫直後(ブランク)および耐熱老化(100℃×4日間間放置)後に行った。
この評価は、JIS K6301−1995に準拠して、引張試験(引張応力の測定)および硬さ試験を行い、100%モジュラス(M100 )[MPa]、200%モジュラス(M200 )[MPa]、300%モジュラス(M300 )[MPa]、破断強度(TB )[MPa]および破断伸び(EB )[%]を測定することにより行った。その結果を下記表1に示す。
下記表1に示すように、参考例3および実施例4のゴム組成物は、比較例1〜3に示す既存のタイヤに使う配合のゴム組成物や比較例4に示すゴム組成物よりも、引張特性に優れ、さらに老化後の変化率が小さいことから耐熱老化性に優れていることが分かった。
レオメータ試験は、比較例1、2、参考例3および実施例4で得られたゴム組成物に180℃×10分の条件で加硫を施した加硫ゴム組成物について、加硫時間(min)とトルク(Nm)との関係をSRIS−3102(日本ゴム協会規格)の試験法に準拠して測定することにより行った。
この試験により、参考例3および実施例4で得られたゴム組成物は、比較例1および2で得られたゴム組成物と比較して、トルクの減少を伴う加硫戻り(T−3)が抑えられた結果となった。ここで、「T−3」とは、加硫時間により変化するトルクが、最大トルクから3%下がった時間を表す。その結果を下記表2に示す。
Claims (3)
- 下記一般式(2)で表されるマレイミド付加体。
(式中、R1 は、炭素数1〜24の分岐していてもよい非環状脂肪族基、炭素数5〜18の分岐していてもよい環状脂肪族基、炭素数6〜18の分岐していてもよい芳香族基もしくは炭素数7〜24の分岐していてもよいアルキル芳香族基を表し、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいてもよい。R3 は、炭素数1〜24の分岐していてもよい有機基を表し、nは1〜5の整数を表す。また、複数のR1 およびR3 はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。前記有機基は、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルカノイルオキシ基、アラルキルオキシ基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子団により置換されていてもよい、アルキル基、シクロアルキル基もしくはアリール基である。) - 請求項1に記載のマレイミド付加体を含有するゴム組成物。
- 請求項1に記載のマレイミド付加体を含有する樹脂組成物。
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